説明

射出成形機及び射出成形機の調整方法

【課題】射出スクリュが前進限位置にあるときの射出ノズルの内壁とスクリュヘッドとの間の隙間のばらつきを抑えることができる射出成形機を提供すること。
【解決手段】射出シリンダ10内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に配置される射出スクリュ20の軸方向位置を検出する射出スクリュ位置検出器32を備えた射出成形機は、射出シリンダ10の先端に配置された射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23との接触を検出する接触検出部50bと、接触検出部50bにより接触が検出された際の射出スクリュ位置検出器32の出力値に基づいて射出スクリュ位置検出器32の基準を決定する基準決定部50cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出シリンダ内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に配置される射出スクリュの軸方向位置を検出する位置検出部を備えた射出成形機及び射出成形機の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出シリンダ内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に配置される射出スクリュを備えた射出成形機が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
これら従来の射出成形機は、通常、射出スクリュを前進限位置に移動させたときに射出スクリュの先端と射出シリンダの先端内壁との間にある程度の隙間を形成できるように、射出スクリュの軸方向位置を検出するための射出モータ用エンコーダの出力値に基づいて射出スクリュを移動させる。射出スクリュの先端と射出シリンダの先端内壁との接触を防止するためである。
【0004】
具体的には、これら従来の射出成形機は、射出スクリュが後進限位置にあるときの射出モータ用エンコーダの出力値を基準値とし、射出モータ用エンコーダの出力値とその基準値との間の差が所定値に達した場合に射出スクリュが前進限位置にあると判断する。
【0005】
なお、上述の所定値は、射出スクリュが前進限位置まで移動したときに射出ノズルの内壁に接触しないような値に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−86516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の射出成形機において、その射出モータ用エンコーダが後進限位置を基準として調整される場合、各部品の公差の積み上げに起因して、前進限位置にある射出スクリュの先端と射出ノズルの内壁との間の距離が射出成形機毎にばらついてしまう。このため、成形安定性が低下する。
【0008】
上述の点に鑑み、本発明は、射出スクリュが前進限位置にあるときの射出ノズルの内壁とスクリュヘッドとの間の隙間のばらつきを抑えることができる射出成形機及び射出成形機の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る射出成形機は、射出シリンダ内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に配置される射出スクリュの軸方向位置を検出する位置検出部を備えた射出成形機であって、前記射出シリンダの先端に配置された射出ノズルの内壁と前記射出スクリュの先端との接触を検出する接触検出部と、前記接触検出部により接触が検出された際の前記位置検出部の出力値に基づいて該位置検出部の基準を決定する基準決定部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の実施例に係る射出成形機の調整方法は、射出シリンダ内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に配置される射出スクリュの軸方向位置を検出する位置検出部を備えた射出成形機の調整方法であって、前記射出シリンダの先端に配置された射出ノズルの内壁と前記射出スクリュの先端との接触を検出し、前記接触が検出された際の前記位置検出部の出力に基づいて該位置検出部の基準を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述の手段により、本発明は、射出スクリュが前進限位置にあるときの射出ノズルの内壁とスクリュヘッドとの間の隙間のばらつきを抑えることができる射出成形機及び射出成形機の調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る射出成形機における射出装置の構成例を示す側面図である。
【図2】図1の射出装置に搭載される射出スクリュ位置検出器調整システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】基準決定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】射出スクリュが射出シリンダ内を軸方向前方に直線駆動されている状態を示す図である。
【図5】射出ノズルの内壁とスクリュヘッドとが接触したときの状態を示す図である。
【図6】前進限位置記憶処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】射出スクリュが射出シリンダ内を軸方向後方に直線駆動されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る射出成形機における射出装置100の構成例を示す側面図であり、射出装置100は、主に、射出シリンダ10、射出スクリュ20、駆動部30及び制御部50で構成される。なお、図1は、射出シリンダ10を断面図で示すものとする。
【0015】
射出シリンダ10は、射出スクリュ20を回転可能に且つ軸方向に移動可能に受け入れる内部空間を有する機能要素であり、主に、射出シリンダ本体11、射出ノズル12、シリンダヒータ13及びホッパ14で構成される。
【0016】
なお、本実施例では、射出シリンダ10の射出ノズル12側を軸方向前方とし、射出シリンダ10のホッパ14側を軸方向後方とする。また、「軸方向」における「軸」は、射出スクリュ20の回転軸を意味する。
【0017】
射出シリンダ本体11は、ホッパ14から供給された樹脂ペレットを射出スクリュ20と協働して溶融混練するための部材であり、溶融混練した樹脂が軸方向前方の射出ノズル12に給送されるようにする。
【0018】
射出ノズル12は、射出シリンダ本体11の先端に取り付けられる部材であり、ノズル口を金型装置(図示せず。)に接触させ、金型装置内のキャビティ空間に溶融混練した樹脂を射出する。なお、射出ノズル12は、射出シリンダ本体11と一体的に形成されていてもよい。
【0019】
シリンダヒータ13は、射出シリンダ10の外周に設置されるヒータであり、射出シリンダ本体11を加熱するヒータ13a〜13dと、射出ノズル12を加熱するヒータ13eとで構成される。
【0020】
ホッパ14は、樹脂ペレットを射出シリンダ本体11に供給するための部材である。
【0021】
射出スクリュ20は、ホッパ14から供給される樹脂を溶融混練しながら射出シリンダ10の先端に給送する機能要素であり、主に、スクリュ軸21、フライト22及びスクリュヘッド23で構成される。
【0022】
スクリュ軸21は、駆動部30によって射出シリンダ10内で回転駆動され且つ直線駆動される部材である。
【0023】
フライト22は、スクリュ軸21に所定のピッチ間隔で配置される部材であり、フライト間にスクリュ溝を形成し、ホッパ14から供給される樹脂ペレットをそのスクリュ溝に受け入れ、スクリュ軸21の回転によりその樹脂ペレットを溶融混練しながら軸方向前方に給送する。
【0024】
スクリュヘッド23は、スクリュ軸21の先端に取り付けられる部材であり、駆動部30によって射出スクリュ20が軸方向前方に高速で移動させられたときに、射出ノズル12内に充填された溶融樹脂を金型装置のキャビティ空間内に押し出すようにする。
【0025】
駆動部30は、射出スクリュ20を駆動するための機能要素であり、主に、射出モータ31、射出モータ用エンコーダ32、ボールねじ機構33、計量モータ34、計量モータ用エンコーダ35及びロードセル36で構成される。
【0026】
射出モータ31は、射出シリンダ10内で射出スクリュ20を軸方向に移動させるための装置であり、制御部50からの制御信号に応じた回転方向及び回転速度で回転し、ボールねじ機構33を介して射出スクリュ20を軸方向に往復動させる。
【0027】
射出モータ用エンコーダ32は、射出モータ31の回転変位(アナログ量)を電気的なパルス信号(デジタル量)に変換する装置であり、そのパルス信号を制御部50に対して出力する。
【0028】
ボールねじ機構33は、射出モータ31によって回転駆動されるボールねじナット33aと、スクリュ軸21を回転可能に支持するボールねじ軸33bとで構成され、ボールねじナット33aの回転運動をボールねじ軸33bの直線運動に変換する。
【0029】
計量モータ34は、射出シリンダ10内で射出スクリュ20を回転させるための装置であり、制御部50からの制御信号に応じた回転方向及び回転速度でロータを回転させ、そのロータに結合された射出スクリュ20を回転させる。
【0030】
計量モータ用エンコーダ35は、計量モータ34の回転変位(アナログ量)を電気的なパルス信号(デジタル量)に変換する装置であり、そのパルス信号を制御部50に対して出力する。
【0031】
ロードセル36は、射出スクリュ20が受ける軸方向後方を向く力(以下、「背圧」とする。)を検出するための装置であり、検出した値を制御部50に対して出力する。
【0032】
制御部50は、射出装置100の動作を制御するための機能要素であり、駆動部30との間で各種情報をやり取りして射出スクリュ20を駆動する。
【0033】
また、制御部50は、射出スクリュ位置検出器として機能する射出モータ用エンコーダ32を調整するための射出スクリュ位置検出器調整システムSYSの主要部を構成する。
【0034】
図2は、射出装置100に搭載される射出スクリュ位置検出器調整システムSYSの構成例を示す機能ブロック図である。
【0035】
射出スクリュ位置検出器調整システムSYSは、主に、制御部50、入力装置51、射出モータ用エンコーダ32、ロードセル36、表示装置52及び射出モータ31で構成される。
【0036】
本実施例において、制御部50は、CPU、RAM、ROM、NVRAM等を備えたコンピュータである。制御部50は、調整動作制御部50a、接触検出部50b及び基準決定部50cのそれぞれに対応するプログラムをROM等の不揮発記憶媒体から読み出し、RAM等の揮発性記憶媒体に展開して各部に対応する処理をCPUに実行させる。
【0037】
入力装置51は、操作者が制御部50に対して各種情報を入力するために用いる装置であり、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス、リモートコントローラ等である。
【0038】
表示装置52は、各種情報を操作者に提示するための装置であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、LED等である。
【0039】
調整動作制御部50aは、射出スクリュ位置検出器の調整のための射出スクリュ20の動きを制御する機能要素であり、必要に応じて、射出スクリュ20を駆動する射出モータ31に対して制御信号を出力し、射出シリンダ10内で射出スクリュ20を往復動させる。
【0040】
接触検出部50bは、射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23との接触を検出する機能要素であり、例えば、接触検出器としてのロードセル36の出力に基づいて射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23との接触を検出する。
【0041】
基準決定部50cは、射出スクリュ位置検出器として機能する射出モータ用エンコーダ32の基準を決定する機能要素であり、例えば、接触検出部50bが接触を検出した時点における射出モータ用エンコーダ32の出力値を基準値として決定する。なお、射出モータ用エンコーダ32の出力値は、射出スクリュ20の軸方向移動距離に比例するものとする。また、射出モータ用エンコーダ32の出力値は、射出スクリュ20が軸方向前方に移動するにつれて増加し、射出スクリュ20が軸方向後方に移動するにつれて減少するものとする。
【0042】
次に、図3を参照しながら、射出スクリュ位置検出器調整システムSYSが射出モータ用エンコーダ32の基準を決定する処理(以下、「基準決定処理」とする。)の流れについて説明する。なお、図3は、基準決定処理の流れを示すフローチャートであり、射出スクリュ位置検出器調整システムSYSは、基準決定処理の開始を要求する操作者の入力を受け付けた場合に、この基準決定処理を開始する。なお、操作者が基準決定処理を実行するのは、典型的には、射出成形機を稼働させる前の段取り作業を行う際、或いは、射出シリンダ10や射出スクリュ20の部品交換を行った後に射出成形機を動作させる際であり、射出シリンダ10内には樹脂が存在しないものとする。また、射出スクリュ位置検出器調整システムSYSは、この基準決定処理を開始する前に、射出シリンダ10内に樹脂が存在しないことを操作者に確認させるための画面を表示装置52に表示させるようにしてもよい。射出シリンダ10内に樹脂が存在する状態で基準決定処理を開始させると、射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23との間に樹脂を挟み込んでしまい、射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23との接触を適切に検出できないおそれがあるためである。
【0043】
最初に、制御部50は、調整動作制御部50aにより、射出モータ31に対して制御信号を出力して射出モータ31を正転させ、射出シリンダ10内で射出スクリュ20を軸方向前方に一定速度で移動させるようにする(ステップS1)。なお、射出モータ31の正転は、射出シリンダ10内で射出スクリュ20を軸方向前方に移動させるための射出モータ31の回転方向を意味し、射出モータ31の逆転は、射出シリンダ10内で射出スクリュ20を軸方向後方に移動させるための射出モータ31の回転方向を意味する。また、射出モータ31の回転トルクは、スクリュヘッド23が射出ノズル12の内壁12aに接触したとしても射出シリンダ10や射出スクリュ20を損傷することがないよう、所定トルク未満に制限されるものとする。
【0044】
その後、制御部50は、接触検出部50bにより、ロードセル36の出力値が閾値PTH以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0045】
ロードセル36の出力値が閾値PTH未満であると判定した場合(ステップS2のNO)、制御部50は、スクリュヘッド23が射出ノズル12の内壁12aに接触していないと判断し、ステップS2の判定を再度実行する。また、制御部50は、ロードセル36の出力値が閾値PTH以上となるまで、ステップS2の判定を繰り返すようにする。
【0046】
図4は、図1の破線円の部分を拡大した図であり、射出スクリュ20が射出シリンダ10内を矢印AR1で示す方向に直線駆動されている状態を示す。図4で示す状態は、ロードセル36の出力値が閾値PTH未満であるときの状態である。スクリュヘッド23が射出ノズル12の内壁12aに接触しておらず、ロードセル36の出力値は、背圧がゼロであることを表す値(以下、「背圧ゼロ値」とする。)のまま変動しないためである。
【0047】
ロードセル36の出力値が閾値PTH以上であると判定した場合(ステップS2のYES)、制御部50は、スクリュヘッド23が射出ノズル12の内壁12aに接触したと判断し、調整動作制御部50aにより、射出モータ31に対して制御信号を出力して射出モータ31を停止させる(ステップS3)。
【0048】
その後、制御部50は、基準決定部50cにより、射出モータ用エンコーダ32の出力値を取得し、取得した値を基準値としてNVRAM等の不揮発性記憶媒体に記憶する(ステップS4)。
【0049】
図5は、図4に対応する図であり、スクリュヘッド23が射出ノズル12の内壁12aに接触した状態を示す。また、図5で示す状態は、ロードセル36の出力値が閾値PTH以上となるときの状態である。スクリュヘッド23が射出ノズル12の内壁12aに接触し、ロードセル36の出力値が背圧の増加と共に増加するためである。なお、このときの射出スクリュ20の位置が射出スクリュ20の基準位置として設定されることとなる。
【0050】
このようにして、射出スクリュ位置検出器調整システムSYSは、射出モータ用エンコーダ32の基準を決定する。
【0051】
次に、図6を参照しながら、射出スクリュ位置検出器調整システムSYSが、
射出スクリュ20が前進限位置にある場合における射出モータ用エンコーダ32の出力値を前進限位置指定値として記憶する処理(以下、「前進限位置記憶処理」とする。)の流れについて説明する。なお、図6は、前進限位置記憶処理の流れを示すフローチャートであり、射出スクリュ位置検出器調整システムSYSは、基準決定処理を実行した後に、この前進限位置記憶処理を実行するものとする。
【0052】
最初に、制御部50は、調整動作制御部50aにより、射出モータ31に対して制御信号を出力して射出モータ31を逆転させ、射出シリンダ10内で射出スクリュ20を軸方向後方に一定速度で移動させるようにする(ステップS11)。
【0053】
その後、制御部50は、射出モータ用エンコーダ32の出力値に基づいて射出スクリュ20の後退距離が所定距離Lに達したか否かを判定する(ステップS12)。
【0054】
具体的には、制御部50は、射出モータ用エンコーダ32の出力値が、不揮発性記憶媒体に記憶された基準値から所定値を差し引いた値に達したか否かを判定する。なお、射出モータ用エンコーダ32の出力値に関するこの所定値は、射出スクリュ20の後退距離における所定距離Lに対応する。また、所定距離Lは、射出スクリュ20が前進限位置にある場合におけるスクリュヘッド23と射出ノズル12の内壁12aとの間の隙間の大きさに相当し、その隙間に入り込んだ溶融樹脂による溶融樹脂の焼け付着や成形品質の低下を防止できる程度に小さい距離である。
【0055】
射出スクリュ20の後退距離が所定距離Lに達していないと判定した場合(ステップS12のNO)、制御部50は、ステップS12の判定を再度実行する。また、制御部50は、射出スクリュ20の後退距離が所定距離Lに達するまで、ステップS12の判定を繰り返すようにする。
【0056】
射出スクリュ20の後退距離が所定距離Lに達したと判定した場合(ステップS12のYES)、制御部50は、調整動作制御部50aにより、射出モータ31に対して制御信号を出力して射出モータ31を停止させる(ステップS13)。
【0057】
図7は、図4及び図5に対応する図であり、スクリュヘッド23が射出ノズル12の内壁12aに接触した後、射出スクリュ20が射出シリンダ10内を矢印AR2で示す方向に直線駆動され、スクリュヘッド23と射出ノズル12の内壁12aとの間の軸方向距離が所定距離Lに達した状態を示す。
【0058】
その後、制御部50は、ロードセル36の出力値が閾値P未満(背圧ゼロ値)であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0059】
ロードセル36の出力値が閾値P以上であると判定した場合(ステップS14のNO)、制御部50は、警告メッセージを表示装置52に表示し、射出スクリュ20の現在位置が前進限位置として適切でない旨を操作者に通知する(ステップS15)。
【0060】
一方、ロードセル36の出力値が閾値P未満であると判定した場合(ステップS14のYES)、制御部50は、射出スクリュ20の現在位置が前進限位置として適切であるとし、射出モータ用エンコーダ32の出力値を前進限位置指定値としてNVRAM等の不揮発性記憶媒体に記憶する(ステップS16)。
【0061】
以上の構成により、本実施例に係る射出成形機は、射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23とが接触した時点における射出モータ用エンコーダ32の出力値に基づいて射出モータ用エンコーダ32の基準値を決定して記憶する。また、本実施例に係る射出成形機は、その基準値に基づいて射出スクリュ20の前進限位置指定値を決定して記憶する。そのため、本実施例に係る射出成形機は、射出装置100を構成する各部品の公差に関係なく、射出スクリュ20の基準位置と前進限位置との間の距離を所定距離Lとすることができる。すなわち、本実施例に係る射出成形機は、射出装置100を構成する各部品の公差に関係なく、射出スクリュ20が前進限位置にあるときの射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23との間の隙間を所定距離Lとすることができる。その結果、本実施例に係る射出成形機は、射出装置100を構成する各部品の公差の積み上げに起因する隙間のばらつきを無くすことができ、成形安定性の低下を防止することができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0063】
例えば、上述の実施例において、接触検出部50bは、ロードセル36の出力に基づいて射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23との接触を検出する。しかしながら、接触検出部50bは、射出スクリュ20を軸方向前方に一定速度で移動させている際の射出モータ用エンコーダ32の出力値の変化速度に基づいて接触を検出するようにしてもよい。射出ノズル12の内壁12aとスクリュヘッド23とが接触した場合、射出モータ用エンコーダ32の出力値の変化速度は、ほぼゼロとなるためである。
【0064】
なお、特許請求の範囲における「位置検出部」は、上述の実施例における「射出スクリュ位置検出器」を含むものとする。
【符号の説明】
【0065】
10・・・射出シリンダ 11・・・射出シリンダ本体 12・・・射出ノズル 12a・・・射出ノズル内壁 13、13a〜13e・・・シリンダヒータ 20・・・射出スクリュ 21・・・スクリュ軸 22・・・フライト 23・・・スクリュヘッド 30・・・駆動部 31・・・射出モータ 32・・・射出モータ用エンコーダ 33・・・ボールねじ機構 33a・・・ボールねじナット 33b・・・ボールねじ軸 34・・・計量モータ 35・・・計量モータ用エンコーダ 36・・・ロードセル 50・・・制御部 50a・・・調整動作制御部 50b・・・接触検出部 50c・・・基準決定部 51・・・入力装置 52・・・表示装置 100・・・射出装置 SYS・・・射出スクリュ位置検出器調整システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出シリンダ内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に配置される射出スクリュの軸方向位置を検出する位置検出部を備えた射出成形機であって、
前記射出シリンダの先端に配置された射出ノズルの内壁と前記射出スクリュの先端との接触を検出する接触検出部と、
前記接触検出部により接触が検出された際の前記位置検出部の出力値に基づいて該位置検出部の基準を決定する基準決定部と、
を備えることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記基準決定部は、前記接触検出部により接触が検出された際の前記位置検出部の出力値を基準値とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記基準決定部は、前記接触検出部により接触が検出された際の前記位置検出部の出力値から所定距離後退させた位置を前記射出スクリュの前進限位置とする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
射出シリンダ内に回転可能に且つ軸方向に移動可能に配置される射出スクリュの軸方向位置を検出する位置検出部を備えた射出成形機の調整方法であって、
前記射出シリンダの先端に配置された射出ノズルの内壁と前記射出スクリュの先端との接触を検出し、
前記接触が検出された際の前記位置検出部の出力に基づいて該位置検出部の基準を決定する、
ことを特徴とする射出成形機の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192694(P2012−192694A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59877(P2011−59877)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】