説明

射出成形機用分割型マニホールド装置

【課題】マニホールドを分割可能にして各種構成部材を取り外し補修交換可能にした全体的に薄型のマニホールドの提供。
【解決手段】マニホールドを2分割し、それぞれの分割型1,1の相対向面に一対のランナ溝2,2を形成し、前記一対のランナ溝2,2内に溶融樹脂を流通させるパイプ状のランナ3を配設して成ることを特徴とする射出成形機用分割型マニホールド装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機において広く用いられている射出成形機用分割型マニホールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機において、二以上のゲートを有する場合、溶融樹脂の流路を分割するためにゲートの数に相当する分割流路を備えたマニホールドが知られている。
【0003】
そして、多くの場合、一つの金属ブロックに溶融樹脂の流路となるランナをドリル等で切削加工すると共に、必要のない加工上の穴に対しては止栓を用いて閉塞している。
【0004】
これに対して、溶融樹脂の流路を独立した配管とし、好みの金属、例えば銅,アルミニウム,鋼等で一体的に鋳造するマニホールドも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−299399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にあっては、配管を必要な金属で鋳込むものであるから配管の目詰まり、汚損などの場合、分割不能であり、メンテナンスが不自由で、作業上多くの問題がある。
【0007】
また、従来一般の構造のマニホールドでは、折曲部は直角に交わり、ランナ構成には制限があった。
【0008】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、マニホールドを2分割とし、合わせ面に溝を設けて、予め加工したパイプ状のランナを挟み込むと同時に同じ面にヒータを挟み込んで一体構造として成ることを特徴とする射出成形機用分割型マニホールド装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0010】
(1)マニホールドを2分割し、それぞれの分割型の相対向面に一対のランナ溝を形成し、前記一対のランナ溝内に溶融樹脂を流通させるパイプ状のランナを配設して成ることを特徴とする射出成形機用分割型マニホールド装置。
【0011】
(2)前記マニホールドには、ヒータ用溝を設けてヒータを挟持させるようにして成ることを特徴とする前項(1)記載の射出成形機用分割型マニホールド装置。
【0012】
(3)前記パイプ状のランナの屈曲部は、曲線状の溶融樹脂の流路として成ることを特徴とする前項(1)記載の射出成形機用分割型マニホールド装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マニホールドが分割構成であり、溶融樹脂の流通構成はパイプ状のランナであるので、メンテナンスの際、ランナを交換することが可能となり、マニホールドの掃除時間に成型操作が停止することがなくなり、また、予備のマニホールドを準備する際、安価なパイプ部分だけで良く、さらにランナの破損の場合、部分交換が可能であり、特にパイプによるランナ構成により、合わせ面から樹脂漏れが発生しないなどの効果を有する。
【0014】
さらに、マニホールドが2枚の分割型で形成するため、金型の薄型化が可能となり、シース型ヒータも挟み込むことが可能となり、既存品の上下面に配置していたヒータをランナに近い中心に配置でき、またランナに直接コイル状ヒータを巻き付けることも可能となり、さらにヒータが1段となりマニホールドをより薄くでき、所謂省エネとなり、マニホールドの上下面には溝がないので、ライザーパッド配置等の自由度が増えるという効果も有する。
【0015】
さらに、なお一層コーナに相当する屈曲部は、直角(90°)でなく緩やかなカープの曲線状とすることにより、樹脂の滞留が少なくなり、樹脂焼け,色替えに効果があり、ランナに直接センサを配置することにより、コントローラの設定値と樹脂の温度差が少なくなるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るマニホールド装置の分解斜面図
【図2】図1のマニホールド装置の組立状態の縦断面図
【図3】図2のA−A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0018】
図面について説明する。
【0019】
1,1は、マニホールド装置Aの中央を縦方向に縦断して示す左右一対の分割型、2,2は両分割型1,1の重ね合わせ面1a,1aに相対向して凹設したランナ溝で、溶融樹脂の流路となるパイプ状のランナ3が挿嵌される。そして、ランナ3は、射出操作で射出される溶融樹脂の導入口4を開口した樹脂導入管部5と二方向に分割される分岐管部6並びに左右の曲線状の屈曲部7,7を備え、それぞれの次段の流路に通ずる溶融樹脂の導出口8,8を開口させた樹脂導出管部9,9として形成してある。
【0020】
10は、一方の分割型1の中央外側に通ずる開口孔で、前記ランナ3の樹脂導入管部5を係入させるようになっており、11,11は他方の分割型1の左右の外側に通ずる小孔であって、それぞれランナ3の樹脂導出管部9の挿通孔として機能する。
【0021】
したがって、ランナ3の分岐管部6から、左右の屈曲部7,7に向う延長部12,12に相当する部分が左右の分割型1,1の重ね合わせ面1a,1aに形成されるランナ溝2,2に係入できるもので、他の樹脂導入管部5および樹脂導出管部9は、それぞれの分割型1,1の開口孔10、小孔11,11に挿通されて組み立てられる。
【0022】
そして、ランナ3全体の構成は一対の分割型1,1の重ね合わせ面1a,1aに対してランナ溝2,2を含んで直交方向X−Xに形成される。
【0023】
13,13は、チューブラヒータ14が係入できる一対の分割型1,1の重ね合わせて面1a,1aに沿って形成されるチューブラヒータ溝であって、両端子部15,15より環状の中央部16が一体に形成され、前記中央部16に相当するチューブラヒータ溝13,13が、ランナ3の分岐管部6から左右に向う延長部12,12が係入するランナ溝2,2の外周に沿って、ランナ溝2,2を包囲するように矩形状に形成されており、両端子部15,15は一対の分割型1,1の側面より導出される。
【0024】
即ち、チューブラヒータ14は、一対の分割型1,1の重ね合わせ面1a,1aに沿って平行方向Y−Yに形成される。
【0025】
17は、ランナ3の分岐管部6に挿通させた制御用センサを示し、両分割型1,1の重ね合わせ面1a,1aに沿って形成される僅かな大きさの溝18に係入されて両分割型1,1の側方より基端が導出され、樹脂の温度などの計測を可能としている。
【0026】
19は、両分割型1,1を緊締するための止ネジで、図示では四隅部に沿って配設してある。
【0027】
以上の構成より成るので、マニホールド内に配設されるランナ溝は勿論のこと、加熱用ヒータ,制御用センサなどは、従来のように金属ブロックにドリル等を用いて穿孔ないしは切削などの機械加工を施すことなく、2分割された分割型1,1の種々の溝構成内にパイプ状の独立したランナ3や、チューブラヒータ14、さらには制御用センサ17を係入配設することにより、効率よく組立てられ、かつ止ネジ19を緩めて2分割の分割型1,1を分離して内部に挟み込んだ各種部材の取り外し,取り替えなどの補修作業を能率良く行わせることができる。
【0028】
なお、ランナ3自体の外周にヒータを捲装させてチューブらヒータ14に代えることもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0029】
1 分割型
1a 重ね合わせ面
2 ランナ溝
3 ランナ
4 導入口
5 樹脂導入管部
6 分岐管部
7 屈曲部
8 導出口
9 樹脂導出管部
10 開口孔
11 小孔
12 延長部
13 チューブラヒータ溝
14 チューブラヒータ
15 両端子部
16 中央部
17 制御用センサ
18 溝
19 止ネジ
A マニホールド装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニホールドを2分割し、それぞれの分割型の相対向面に一対のランナ溝を形成し、前記一対のランナ溝内に溶融樹脂を流通させるパイプ状のランナを配設して成ることを特徴とする射出成形機用分割型マニホールド装置。
【請求項2】
前記マニホールドには、ヒータ用溝を設けてヒータを挟持させるようにして成ることを特徴とする請求項1記載の射出成形機用分割型マニホールド装置。
【請求項3】
前記パイプ状のランナの屈曲部は、曲線状の溶融樹脂の流路として成ることを特徴とする請求項1記載の射出成形機用分割型マニホールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−153014(P2012−153014A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14205(P2011−14205)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(390029218)世紀株式会社 (11)
【Fターム(参考)】