説明

射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた大型薄肉射出成形体

【課題】再生塩化ビニル系樹脂を含有しながらも強度と射出成形性のバランスがよく、低コスト化が図れる樹脂組成物を提供し、該樹脂組成物を射出成形してなる低コストの大型薄肉射出成形体を提供する。
【解決手段】上記樹脂組成物を、(A)平均重合度900〜3000の再生塩化ビニル系樹脂と、(B)平均重合度が300〜800であって、かつ再生塩化ビニル系樹脂成分(A)の平均重合度より100以上小さい塩化ビニル系樹脂及び/又は再生塩化ビニル系樹脂とからなり、かつ(A)と(B)との配合割合が、質量基準で1:9〜9:1であるものとする。組成物全体の平均重合度は450〜950とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた大型薄肉射出成形体に関し、さらに詳しくは、再生塩化ビニル系樹脂を含有しながらも、可塑剤を多量には用いずとも強度と射出成形性のバランスがよく、かつ低コスト化が図れる射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた大型薄肉射出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル業界においても、環境破壊問題、産業廃棄物処理問題などから、循環型社会を目指してリサイクルが推進されているが、埋め立て等の廃棄処分になっているものがまだまだ多い。例えば、廃塩化ビニル管は年間約3万6千トン生じているが、その内の約2万トンが再生樹脂とされて塩化ビニル管などに再利用され、残りの約1万6千トンが埋めたて処分されている。押出成形により成形される塩化ビニル管の廃材粉砕樹脂や塩化ビニル管と継手の混合した廃材粉砕樹脂は溶融粘度が高く、それ単独では、成形加工性が極めて悪く射出成形は不可能である。また、廃塩化ビニルは塩ビ再生プロセスにおいて、温度を約220℃の融点以上に上昇させれば、流動性を高め、成形性を良くすることができるが、190℃を越えると、短時間で熱分解を起こし、塩素ガスを発生したり、炭化してしまう。
【0003】
そこで、産業廃棄物の硬質塩化ビニル系樹脂の射出成形に当っては、可塑剤、内滑剤などを添加する方法、例えば、廃管類や管継手混合類などの再生硬質塩ビ成分に可塑剤を多量に含んだ再生軟質塩ビ樹脂成分を混合して射出成形に使用する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、可塑剤を多量に混合すると成形体の強度が低下するし、また耐熱性低下に伴う高温での物性が低下してしまい、さらには、その溶出の問題から用途が限られてしまうという問題がある。
【0004】
他方、雨水貯留部材のような強度が必要な大型射出成形体には、ポリプロピレンが一般に使用されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、近年の石油原価の高騰に伴い、その成形材料のポリプロピレンもコスト高を免れず、そのため低コストで高強度な大型射出成形用材料が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−348435号公報
【特許文献2】特開2003−147813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、再生塩化ビニル系樹脂を含有しながらも、可塑剤を多量には用いずとも強度と射出成形性のバランスがよく、かつ低コスト化が図れる射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた大型薄肉射出成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の平均重合度をもつ再生塩化ビニル系樹脂と、それよりも低い特定の平均重合度をもつ塩化ビニル系樹脂及び/又は再生塩化ビニル系樹脂とを、特定の割合で配合したところ、強度と射出成形性のバランスに優れ、かつ、低コスト化を図れる射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(A)平均重合度600〜3000の再生塩化ビニル系樹脂(再生塩化ビニル系樹脂成分(A)という)と、(B)平均重合度が300〜800であって、かつ再生塩化ビニル系樹脂成分(A)の平均重合度より100以上小さい塩化ビニル系樹脂及び/又は再生塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル系樹脂成分(B)という)とからなり、かつ再生塩化ビニル系樹脂成分(A)と塩化ビニル系樹脂成分(B)との配合割合が、質量基準で1:9〜9:1であることを特徴とする射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、再生塩化ビニル系樹脂成分(A)が平均重合度900〜2000であることを特徴とする射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、組成物全体の平均重合度が450〜900であることを特徴とする射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1から3のいずれかの発明において、組成物全体の平均重合度が450〜600であることを特徴とする射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1から4のいずれかの発明において、再生塩化ビニル系樹脂成分(A)と塩化ビニル系樹脂成分(B)との配合割合が、質量基準で2:8〜8:2であることを特徴とする射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、第1から5のいずれかの発明において、組成物全体に含まれる可塑剤の含有量レベルが、得られる成形体の強度低下や耐熱性低下を起こしたり、又は、可塑剤の溶出を生じたりしない程度の量であることを特徴とする射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、塩化ビニル系樹脂成分(B)には、可塑剤を配合しないことを特徴とする射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第8の発明によれば、第1から7のいずれかの発明における射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形してなる再生塩化ビニル系樹脂製大型薄肉射出成形体が提供される。
【0016】
なお、本発明において、平均重合度とは粘度平均重合度を意味する。
【0017】
すなわち、本発明の組成物は、この再生塩化ビニル系樹脂成分(A)と塩化ビニル系樹脂成分(B)を組み合わせ併用してなるものであって、平均重合度が高い塩化ビニル系樹脂と比較して、強度はほぼ同等に維持しつつ、溶融粘度を低下させることができ、従って、射出成形性を向上させることができるように、両成分の平均重合度を上述のとおり規定するとともに、両成分を特定の割合で配合したものである。この平均重合度が低すぎると十分な強度が得られないし、また、高すぎても通常の成形条件下では高粘度となりすぎて成形加工性が低下する。
また、組成物全体の平均重合度を450〜900の範囲とすると成形性や成形体の外観が良好になり、特に該平均重合度を450〜600の範囲とすると成形性が一層よくなり、大型薄肉の射出成形体の作製にさらに適するようになる。
【0018】
本発明の組成物の構成成分、製造法、用途等について詳細に説明する。
<組成物を構成する成分>
(1)再生塩化ビニル系樹脂
本発明の再生塩化ビニル系樹脂組成物に樹脂成分(A)として用いられる再生塩化ビニル系樹脂としては、比較的重合度が高いもの、例えば、廃塩化ビニル管や廃塩化ビニル継手やそれらの混合廃材等の塩化ビニル系押出成形品の廃材等より再生したもの、好ましくは廃塩化ビニル管由来の粉砕樹脂が挙げられ、その重合度としては、平均重合度が、通常、600〜3000、好ましくは900〜2000、より好ましくは900〜1500の範囲であるのがよい。この平均重合度が600より低いとその成形体の強度が低下し、中でも大型薄肉品の成形が困難となるし、また、平均重合度が高すぎると通常の成形条件下では該樹脂自体が高粘度となりすぎて成形加工性が低下する。
【0019】
(2)塩化ビニル系樹脂成分(B)
本発明の再生塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる上記樹脂成分(B)としては、比較的重合度が低いものであれば特に限定されず、バージンすなわち未使用の塩化ビニル系樹脂であってもよいし、また、再生塩化ビニル系樹脂であってもよいし、また両者の併用でもよいが、好ましくはバージンすなわち未使用の塩化ビニル系樹脂である。
樹脂成分(B)の重合度としては、再生塩化ビニル系樹脂成分(A)の平均重合度より100以上小さいものであって、通常300〜800、好ましくは400〜700、より好ましくは400〜650の範囲であるのがよい。この平均重合度が低すぎると十分な強度が得られないし、また、高すぎても通常の成形条件下では該樹脂自体が高粘度となりすぎて成形加工性が低下する。
【0020】
また、本発明の組成物において、再生塩化ビニル系樹脂成分(A)と塩化ビニル系樹脂成分(B)との配合割合は、質量基準で、通常1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは3:7〜7:3の範囲とするのがよい。この配合割合が1:9より小さくなると廃塩化ビニル樹脂製品のリサイクル化が不十分となるし、また9:1より大きくなると組成物の成形加工性が低下する。
【0021】
(3)任意添加成分
本発明の組成物には、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、充填剤、可塑剤等の添加成分を配合してもよい。
【0022】
上記熱安定剤としては、特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記安定化助剤としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記滑剤としては、特に限定されず、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記加工助剤としては、特に限定されず、例えば、平均重合度10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記光安定剤としては、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記顔料としては、特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、本発明の組成物には、成形時の加工性を向上させる目的で可塑剤を添加してもよいが、組成物全体に含まれる可塑剤の含有量レベルは、得られる成形体の強度低下や耐熱性低下を起こしたり、又は、可塑剤の溶出を生じたりしない程度の量であるように用量を制御するのが好ましく、組成物全量に対し、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下とするのがよく、特に塩化ビニル系樹脂成分(B)には可塑剤を配合しないのが好ましい。可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
上記した各種配合剤を、本発明の組成物に混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0031】
比較的高重合度の塩化ビニル系再生樹脂やそれと併用される比較的低重合度の塩化ビニル系樹脂あるいは再生塩化ビニル系樹脂の形態は、粗粉砕片、微粉砕片、粉体など、形態は限られない。
【0032】
<再生塩化ビニル系樹脂組成物の製造>
本発明の再生塩化ビニル系樹脂組成物の製造は、上記の構成成分を均一に混合、混練することによって得られる。その手法は特に限定されないが、一般に用いられているヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機でドライブレンドを行い、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等を用いて、混練することにより製造される。これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
【0033】
<再生塩化ビニル系樹脂組成物の用途>
本発明の再生塩化ビニル系樹脂組成物は、再生塩化ビニル系樹脂を利用し、低コスト化が図られているにもかかわらず、強度と射出成形性のバランスに優れている。したがって、構造材料、施工部材、貯留水槽等の土木建築部材の用途に好ましく用いることができる。
特に、雨水等を貯留及び/又は浸透する施設の充填部材の材料として好ましく用いることができる。
【0034】
本発明の組成物の成形方法は特に限定されないが、好ましくは射出成形法が適用され、特に射出成形法は構造材料、施工部材、雨水貯留部材、貯留水槽等の土木建築部材のような形状が複雑である大型薄肉射出成形体の製造に用いて好適である。
【0035】
本発明の組成物は、再生塩化ビニル系樹脂を利用しているので、低コスト化でき、強度と成形性のバランスに優れていることから、これを成形加工して得られる成形体は、強度が必要な成形体、中でも大型成形体、特に大型薄肉射出成形体、例えば従来ポリプロピレンなどが主に使用されている雨水貯留部材(特開2003−147813号公報)のように強度が必要な大型薄肉射出成形体を低コストで代替することが可能な成形体であり、しかも、その強度は従来のポリプロピレン製のものより十分に大きい。
【0036】
本発明は、本発明の組成物を射出成形して得られた大型薄肉射出成形体をも包含する。
大型薄肉射出成形体の一例として、雨水等を貯留及び/又は浸透する施設の充填部材について以下説明する。
この充填部材は、例えば特開2004−19122号公報等に記載されたものなどであって、施設内に流入した雨水等を貯留及び/又は浸透させる施設に使用し、雨水等を貯留する貯留部内に縦横かつ上下に連接して充填する部材である。該充填部材は、平面略正方形の板状で、四隅には該充填部材を上下方向に積み重ねる連結部と、該連結部に固定され、前記貯留部に流入した雨水等を所定方向に誘導する傾斜板とから構成される。
【0037】
雨水等を貯留及び/又は浸透する施設及び充填部材の一例を図1及び2に示す。図1において、該施設は、地面1を掘り下げて形成した掘削部2の中に、貯留部10と、貯留部10内に水平方向に並べて設置されると共に、上下方向に重ねられた充填部材30から構成されるものである。この充填部材30は、図2に示すように、貯留部10の上部を覆う部材の垂直荷重、及び水圧による水平荷重を支持し、貯留部10の空間を確保する4本の柱状の連結部31と、4本の連結部31に固定され、流入した雨水、砂等を所定方向に誘導するように水平に対して極めて緩やかに、例えば5°程度の角度等で傾斜する傾斜板32とから構成される。傾斜板32は、例えば厚さが4〜5mm程度の肉厚の板材で形成される。
【実施例】
【0038】
以下に実施例および比較例を示すことにより、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
なお、各例で用いた試験方法は以下の通りである。
【0039】
<試験方法>
(1)引張降伏強さ:樹脂組成物又は比較のためのポリプロピレンについて、射出成形機(ファナック社製オートショット75)によりJIS K 7113の1号ダンベルを作成し、このダンベルについてJIS K 7113に準拠して引張降伏強さを測定した。
【0040】
(2)溶融粘度:樹脂組成物又は比較のためのポリプロピレンについて、キャピログラフ(東洋精機製作所社製)を使用して200℃で30mm×2mmの壁面の滑りを抑制するために内面に凹凸を持つ溝付ダイスを用い、100mm/分の速度でピストンを降下させたときの粘度を計測した。
(3)射出成形性:樹脂組成物又は比較のためのポリプロピレンについて、射出成形機(ファナック社製オートショット75)を使用して190℃の樹脂温度で40℃に温度調節された可動式コアを有し、キャビティ深さが可変である直径200mmの円盤形状金型に射出成形し、肉厚3mmで充填できないものを×、肉厚3mmで充填できるものを△、肉厚2mmで充填できるものを○、肉厚1mmで充填できるものを◎とした。
また成形品の外観の評価は、表面を観察して、外観に問題が無いものを○、外観に問題があるものを×とした。
【0041】
実施例1〜5
(再生塩化ビニル系樹脂組成物の作成)
可塑剤を用いることなく、連鎖移動剤と重合温度を変化させることにより平均重合度を調整したPVCを懸濁重合法によって重合し、平均重合度が800と400の2種類の低重合度塩化ビニル系樹脂を作製した。これと、塩化ビニル系樹脂製廃パイプの微粉砕品(平均重合度1000)と、表1に示す添加成分とを、表1に示す割合で、押出機(プラスチック工学研究所社製、型式「BT−40」)で溶融混練し、再生塩化ビニル系樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について上記試験方法による試験を行った。その評価結果を表1に示す。
【0042】
比較例1
比較のため、低重合度塩化ビニル系樹脂を混合することなく、塩化ビニル系樹脂製廃パイプの微粉砕品を樹脂成分として単独で用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について上記試験方法による試験を行った。その評価結果を表1に示す。
【0043】
比較例2
比較のため、従来のポリプロピレン(日本ポリプロ社製BC03B)について、実施例と同様の試験を行った。その評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表中、材料欄のPは重合度を示し、評価結果欄の×*は成形体表面の平滑性不良を示し、評価結果後欄の強度欄の比較例1における57.6*は表1所定の材料を押出機(プラスチック工学研究所社製、型式「BT−40」)で溶融混練したのち押圧成形により1号ダンベル(JIS K7113準拠)を作成し、このダンベルについてJIS K7113に準拠して測定した引張降伏強さを示すものである。
【0046】
(評価結果)
表1より、樹脂成分に再生塩化ビニル系樹脂の廃パイプ微粉砕品を単独使用した比較例1の樹脂組成物では、溶融粘度が高く成形性に難があるのに対し、各実施例の樹脂組成物は比較例1のものに比しほとんど強度を低下させることなく、溶融粘度を低下させ、成形性を向上させることができることが分かる。
さらに、実施例1の再生塩化ビニル系樹脂組成物は、その効果が著しく、その溶融粘度を比較例1のものに比し半減強大幅に低下させることができ、この再生塩化ビニル系樹脂組成物を用いると、500mm×500mm、厚さ3mmの大型の雨水貯留部材を射出成形することができた。また、比較例2のポリプロピレンの引張降伏強さが28.0MPaであるのに比較し、廃パイプ等の再生塩化ビニル樹脂を使用しても、十分に高い強度を有する成形体を射出成形により成形することができた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の組成物は、再生塩化ビニル系樹脂を含有しながらも粘度低下が可能となり、強度低下もほとんどなくなるので、強度と射出成形性のバランスがよくなるし、可塑剤を多量に用いる必要がないのでその溶出のおそれもなくなり、その用途が制約されることもなくなる上に、低コスト化が図れ、従来、射出成形用途に使用することができなかった塩化ビニル製パイプあるいは塩化ビニル製パイプと継手等の混合された比較的重合度の高い再生塩化ビニル系樹脂も利用可能にすることができる。
また、本発明の大型薄肉射出成形体は、成形時の射出成形性と得られた射出成形体の強度とのバランスがよく、低コストが図れるので、従来のポリプロピレン製大型成形体に代わるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】雨水等を貯留及び/又は浸透する施設の一実施形態の断面図。
【図2】図1の施設に使用する充填部材の一実施形態の斜視図。
【符号の説明】
【0049】
1 地面
2 掘削部
10 貯留部
30 充填部材
31 連結部
32 傾斜板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均重合度600〜3000の再生塩化ビニル系樹脂(再生塩化ビニル系樹脂成分(A)という)と、(B)平均重合度が300〜800であって、かつ再生塩化ビニル系樹脂成分(A)の平均重合度より100以上小さい塩化ビニル系樹脂及び/又は再生塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル系樹脂成分(B)という)とからなり、かつ再生塩化ビニル系樹脂成分(A)と塩化ビニル系樹脂成分(B)との配合割合が、質量基準で1:9〜9:1であることを特徴とする射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
再生塩化ビニル系樹脂成分(A)が平均重合度900〜2000であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
組成物全体の平均重合度が450〜900であることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
組成物全体の平均重合度が450〜600であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
再生塩化ビニル系樹脂成分(A)と塩化ビニル系樹脂成分(B)との配合割合が、質量基準で2:8〜8:2であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項6】
組成物全体に含まれる可塑剤の含有量レベルが、得られる成形体の強度低下や耐熱性低下を起こしたり、又は、可塑剤の溶出を生じたりしない程度の量であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項7】
塩化ビニル系樹脂成分(B)には、可塑剤を配合しないことを特徴とする請求項6に記載の射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の射出成形用再生塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形してなる再生塩化ビニル系樹脂製大型薄肉射出成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−277396(P2007−277396A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105151(P2006−105151)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】