説明

射出成形装置

【課題】成形品の品質向上を図ることができる射出成形装置の提供。
【解決手段】第一の型21をそのパーティング面21aの方向を除いて覆う第一の部材30および第二の型23をそのパーティング面23aの方向を除いて覆う第二の部材31を有し型締め状態でこれら第一の部材30および第二の部材31の突合面30a,31a同士を突き合わせるベース13と、第一の型21のパーティング面21aの方向を除く他の全外面方向の第一の部材30との間に袋小路にならないように一つの連続する空間部38を形成しつつ第一の部材30に第一の型21を固定する座部35と、第二の型23のパーティング面23aの方向を除く他の全外面方向の第二の部材31との間に袋小路にならないように一つの連続する空間部39を形成しつつ第二の部材31に第二の型23を固定する座部36とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置には、キャビティと加熱媒体および冷却媒体を交互に流入させる流路が形成された入れ子を、冷却媒体を常時流入させる流路が形成された母型で囲み、これらの間に空気または熱伝導率の低い材料からなる断熱層を設けるものがある(例えば、特許文献1参照)。また、型板に取り付けられたキャビティブロックの周囲をシール壁で囲み、スキン層を除去するためにキャビティブロックとシール壁との隙間を真空引きするものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−191378号公報
【特許文献2】特開平10−86192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形品の品質向上を目指して成形サイクル中に金型を加熱および冷却する射出成形装置において、さらなる成形品の品質向上が要望されている。
【0005】
したがって、本発明は、さらなる成形品の品質向上を図ることができる射出成形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、パーティング面同士を突き合わせる型締め状態でキャビティを形成する第一の型および第二の型を有する金型と、該金型に形成された通路穴に繋がる配管とを有し、該配管を介して前記通路穴に熱媒体を流すことで前記金型を加熱および冷却する射出成形装置であって、前記第一の型をそのパーティング面方向を除いて覆う第一の部材および前記第二の型をそのパーティング面方向を除いて覆う第二の部材を有し前記型締め状態でこれら第一の部材および第二の部材の突合面同士を突き合わせるベースと、前記第一の型のパーティング面方向を除く他の全外面方向の前記第一の部材との間に袋小路にならないように一つの連続する空間部を形成しつつ前記第一の部材に前記第一の型を固定する座部と、前記第二の型のパーティング面方向を除く他の全外面方向の前記第二の部材との間に袋小路にならないように一つの連続する空間部を形成しつつ前記第二の部材に前記第二の型を固定する座部とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、さらなる成形品の品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の各工程の状態を示す図表である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の射出成形動作を示すタイミングチャート図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る射出成形装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を図1〜図4を参照して以下に説明する。
【0010】
第1実施形態に係る射出成形装置は、合成樹脂や金属を射出成形するものであり、金型を成形サイクル内で加熱および冷却する射出成形装置となっている。この射出成形装置は、図1に示すように、型締め状態でキャビティ11を画成する金型12と、型締め状態の金型12の全外面方向を覆うベース13と、キャビティ11から成形品を離脱させる図示略の製品離脱装置と、キャビティ11内に溶融樹脂を射出する図示略の樹脂射出装置と、金型12を加熱および冷却する図示略の金型加熱冷却装置とを有している。
【0011】
金型12は、図2に示すように全体として直方体形状をなしており、図1に示すように、凸部20を有する凸型(第一の型)21と、凸部20を覆う凹部22を有する凹型(第二の型)23とから構成されている。これらの凸型21および凹型23は、一方が固定型とされ他方が可動型となっている。これらの凸型21および凹型23は、相互近接方向に相対移動して図1に示すようにパーティング面21a,23a同士を突き合わせる型締め状態で、凸部20と凹部22との間にキャビティ11を形成する状態になる。また、これらの凸型21および凹型23は、相互離間方向に相対移動してパーティング面21a,23a同士を離間させることでキャビティ11内に成形された成形品を取り出し可能な状態となる。
【0012】
凸型21には、パーティング面21aと平行な方向に一本の通路穴26が形成されている。凹型23にも、パーティング面23aと平行な方向に一本の通路穴27が形成されている。
【0013】
ベース13は、図2に示すように全体として直方体の箱状をなしており、図1に示すように凸型21をそのパーティング面21aの方向を除いて覆うベース部材(第一の部材)30と、凹型23をそのパーティング面23aの方向を除いて覆うベース部材(第二の部材)31とを有している。ベース部材30には、凸型21を収容する収容凹部32が形成されており、ベース部材31には、凹型23を収容する収容凹部33が形成されている。
【0014】
凸型21のパーティング面21aの方向を除く他の全外面には、座部35が凸型21と同一の素材で一体に突出形成されており、これら座部35を介して凸型21がベース部材30の収容凹部32に固定されている。この固定状態で、凸型21のパーティング面21aの方向を除く他の全外面方向のベース部材30との間に、袋小路にならないように一つのみの連続する空間部38が形成されることになる。つまり、凸型21のパーティング面21aとは反対の外面およびパーティング面21aと直交する四つの外面のすべてに座部35が形成されており、また、凸型21のパーティング面21aとは反対の外面およびパーティング面21aと直交する四つの外面のすべてと、ベース部材30との間に、袋小路にならないように一つの連続する空間部38が形成されている。また、凸型21とベース部材30とのすべての接続位置には、座部35が設けられている。
【0015】
凹型23のパーティング面23aの方向を除く他の全外面には、座部36が凹型23と同一の素材で一体に突出形成されており、これら座部36を介して凹型23がベース部材31の収容凹部33に固定されている。この固定状態で、凹型23のパーティング面23aの方向を除く他の全外面方向のベース部材31との間に、袋小路にならないように一つのみの連続する空間部39が形成されることになる。つまり、凹型23のパーティング面23aとは反対の外面およびパーティング面23aと直交する四つの外面のすべてに座部36が形成されており、また、凹型23のパーティング面23aとは反対の外面およびパーティング面23aと直交する四つの外面のすべてと、ベース部材31との間に、袋小路にならないように一つの連続する空間部39が形成されている。また、凹型23とベース部材31とのすべての接続位置には、座部36が設けられている。
【0016】
ここで、凸型21が固定されるベース部材30および凹型23が固定されるベース部材31が、突合面30a,31a同士を突き合わせると、金型12の凸型21および凹型23がパーティング面21a,23a同士を突き合わせる型締め状態となる。これにより、型締め状態では、空間部38,39が繋がることになり、ベース部材30,31は、空間部38,39の突合面30a,31a側を閉塞することになる。
【0017】
凹型23およびこれを覆うベース部材31には、凹型23の凹部22の底面に開口する射出口41が、凸型21および凹型23の相対移動方向に沿って形成されており、射出口41を介して図示略の樹脂射出装置からキャビティ11内に溶融樹脂が充填される。ここで、射出口41は座部36を貫通しており、その結果、空間部39から座部36によって隔離されている。
【0018】
凸型21を覆うベース部材30には、空間部38に連通する吸引口43が形成されており、この吸引口43がポンプ等の真空発生手段44に接続されている。凹型23を覆うベース部材31には、空間部39に連通する吸引口46が形成されており、この吸引口46がポンプ等の真空発生手段47に接続されている。吸引口43,46は、図2に示すように、ベース13の対角位置近傍に配置されている。
【0019】
凸型21を覆うベース部材30には、二本の配管50,51が貫通しており、一方の配管50は、ベース部材30に凸型21を固定する一の座部35の中央を貫通して凸型21に形成された通路穴26の一端に接続されており、他方の配管51は、ベース部材30に凸型21を固定する他の座部35の中央を貫通して凸型21に形成された通路穴26の他端に接続されている。その結果、配管50,51も、空間部38から座部35によって隔離されている。これらの配管50,51は図示略の金型加熱冷却装置に接続されており、金型加熱冷却装置から送られた熱媒体を通路穴26に流し通路穴26から金型加熱冷却装置に戻す。
【0020】
凹型23を覆うベース部材31には、二本の配管52,53が貫通しており、一方の配管52は、ベース部材31に凹型23を固定する一の座部36の中央を貫通して凹型23に形成された通路穴27の一端に接続されており、他方の配管53は、ベース部材31に凹型23を固定する他の座部36の中央を貫通して凹型23に形成された通路穴27の他端に接続されている。その結果、配管52,53も、空間部39から座部36によって隔離されている。これらの配管52,53は図示略の金型加熱冷却装置に接続されており、金型加熱冷却装置から送られた熱媒体を通路穴27に流し通路穴27から金型加熱冷却装置に戻す。
【0021】
次に、第1実施形態に係る射出成形装置による射出成形の各工程について、図3および図4を参照しつつ説明する。図3は射出成形装置の成形1サイクルの各工程の状態を示すものであり、図4は射出成形装置の成形1サイクルの各工程と金型の温度変化とを示している。
【0022】
型締めされ、真空発生手段44,47によりベース13と金型12との間の空間部38,39が真空の雰囲気とされ、金型12の温度が図4に示すように所定の射出成形温度とされた状態で、図示略の樹脂射出装置から金型12のキャビティ11内に溶融樹脂を射出する射出工程を実施する(t0〜t1)。この射出工程では、ベース13と金型12との間の空間部38,39を真空の雰囲気としたまま、図示略の金型加熱冷却装置で、配管50,51を介して通路穴26に加熱媒体を循環させるとともに、配管52,53を介して通路穴27に加熱媒体を循環させることになる。
【0023】
この射出工程後に、ベース13と金型12との間の空間部38,39を真空の雰囲気としたまま、図示略の金型加熱冷却装置で、配管50,51を介して通路穴26に冷却媒体を循環させるとともに、配管52,53を介して通路穴27に冷却媒体を循環させて、金型12を冷却する冷却工程を行う(t1〜t2)。
【0024】
そして、冷却工程で金型12の温度が所定の温度まで低下すると(t2)、次に、凸型21および凹型23を離間させて金型12を型開きし、図示略の製品離脱装置で、成形品を凸型21から離脱させる取出工程を行う(t2〜t3)。この取出工程では、真空発生手段44,47の作動を停止させる。
【0025】
その後、型締めを行った後、真空発生手段44,47によりベース13と金型12との間の空間部38,39を真空の雰囲気とし、図示略の金型加熱冷却装置で、配管50,51を介して通路穴26に加熱媒体を循環させるとともに、配管52,53を介して通路穴27に加熱媒体を循環させて、金型12を所定の射出成形温度まで加熱する昇温待ち工程を行う(t3〜t4)。金型12の温度が所定の射出成形温度付近に到達すると、金型12の温度を所定の射出成形温度に維持しつつ、次の成形サイクルに備える。
【0026】
以上に述べた第1実施形態に係る射出成形装置によれば、座部35によって、凸型21のパーティング面21aの方向を除く他の全外面方向のベース部材30との間に袋小路にならないように一つの連続する空間部38を形成しつつベース部材30に凸型21を固定することになり、また、座部36によって、凹型23のパーティング面23aの方向を除く他の全外面方向のベース部材31との間に袋小路にならないように一つの連続する空間部39を形成しつつベース部材31に凹型23を固定することになる。よって、型締め状態にある金型12はその全外面とベース13との間に真空の空間部38,39が形成されて全外面方向が断熱されるため、金型12からベース13への伝熱が抑制される。したがって、配管50〜53を介して通路穴26,27に導入される熱媒体による金型12の温度制御が好効率となり、加熱および冷却に必要な時間を短縮することができる。また、熱媒体による金型12の温度制御が高精度となり、さらなる成形品の品質向上を図ることができる。
【0027】
また、型締め状態にある金型12とベース13との間の空間部38,39が真空状態とされるため、より高い断熱性能を得ることができる。つまり、熱伝導率が低い空気あるいは空気以外の断熱層による断熱では、時間がたてば熱が伝わってしまうことになるが、空間部38,39を真空とすることで、このような伝熱を抑制できる。
【0028】
なお、座部35,36は、上記のように金型12に一体に突出形成する以外に、ベース13に一体に突出形成しても良く、金型12およびベース13とは別体のこれらより断熱性の高い部材で形成しても良い。
【0029】
本発明の第2実施形態に係る射出成形装置を図5を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。
【0030】
第2実施形態に係る射出成形装置においては、凸型21のパーティング面21aとベース部材30の突合面30aとの間の空間部38の開口部を封止部材(第一の封止部)55で封止するとともに、凹型23のパーティング面23aとベース部材31の突合面31aとの間の空間部39の開口部を封止部材(第二の封止部)56で封止するようになっている。つまり、空間部38,39が分離されている。
【0031】
このような第2実施形態に係る射出成形装置によれば、凸型21とベース部材30との間の空間部38が封止部材55で封止されており、凹型23とベース部材31との間の空間部39も封止部材56で封止されているため、金型12が型開きされても、空間部38,39の真空状態を維持することができる。したがって、金型12が型開きされても、真空状態の空間部38,39による断熱性能を維持することができる。したがって、金型12の温度制御がさらに好効率となる。
【0032】
なお、第1,2実施形態において、空間部38,39に断熱性の高いガスまたは液体等を充填しても良い。
【符号の説明】
【0033】
11 キャビティ
12 金型
13 ベース
21 凸型(第一の型)
21a パーティング面
23 凹型(第二の型)
23a パーティング面
26,27 通路穴
30 ベース部材(第一の部材)
30a 突合面
31 ベース部材(第二の部材)
31a 突合面
35,36 座部
38,39 空間部
44,47 真空発生手段
50〜53 配管
55 封止部材(第一の封止部)
56 封止部材(第二の封止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーティング面同士を突き合わせる型締め状態でキャビティを形成する第一の型および第二の型を有する金型と、
該金型に形成された通路穴に繋がる配管とを有し、
該配管を介して前記通路穴に熱媒体を流すことで前記金型を加熱および冷却する射出成形装置であって、
前記第一の型をそのパーティング面方向を除いて覆う第一の部材および前記第二の型をそのパーティング面方向を除いて覆う第二の部材を有し前記型締め状態でこれら第一の部材および第二の部材の突合面同士を突き合わせるベースと、
前記第一の型のパーティング面方向を除く他の全外面方向の前記第一の部材との間に袋小路にならないように一つの連続する空間部を形成しつつ前記第一の部材に前記第一の型を固定する座部と、
前記第二の型のパーティング面方向を除く他の全外面方向の前記第二の部材との間に袋小路にならないように一つの連続する空間部を形成しつつ前記第二の部材に前記第二の型を固定する座部とが設けられていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記第一の型のパーティング面と前記第一の部材の突合面との間の開口部を封止する第一の封止部と、
前記第二の型のパーティング面と前記第二の部材の突合面との間の開口部を封止する第二の封止部とを備えることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記空間部を真空引きする真空発生手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66494(P2012−66494A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213362(P2010−213362)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】