説明

導光板

【課題】入射光線の出射角を制御することによって、夏場は、太陽光による車内の温度上昇を抑えることができ、冬場は、車内に光を取り込んで車内の温度を高めることができる、新たな導光板を提供する。
【解決手段】透明樹脂板2の下面側に、三角柱状の単位プリズム3aが単位プリズムの幅方向に連続して並設されてなる構成を有するプリズム面3を備え、当該プリズム面3を構成する単位プリズム3aの頂部角度が60°以上120°未満であることを特徴とする導光板を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にテラスやカーポートなどの屋根材として使用するのに適した導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テラスやカーポートの屋根材には、軽量性、透明性、耐衝撃性などの観点から、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などからなる透明樹脂板を耐候処方してなるものが多く使用されてきた。透明な熱可塑性樹脂は、紫外線を吸収する傾向があるため、長期に亘り太陽光に晒されると紫外線によって劣化を生じるようになるばかりか、太陽光に含まれる紫外線が建築資材を透過して、室内や車内に置かれた物品の劣化、変色、変質等を引き起こすため、このような紫外線の悪影響を抑えるべく、その表面に、有機系紫外線吸収剤を配合した塗料や、酸化チタンあるいは酸化亜鉛を配合した塗料を塗布し、紫外線遮断性塗膜を形成してなる樹脂板が使用されていた(特許文献1参照)。
【0003】
テラスやカーポートなどの屋根材には、雨や雪から車などをまもる役割のほか、明るさを確保しつつ、太陽光による車内等の温度上昇を防ぐことが求められる。特にカーポートの屋根材には、冷暖房の節約並びに短時間で車内を快適な温度にすることができるように、夏場は、車内の温度上昇を抑えることが求められる。
【0004】
そこで、太陽からの熱を遮ることができる採光材用透明樹脂として、近赤外線を吸収し、可視光線を透過する透明樹脂が開示されている。例えば特許文献2には、チウラム系化合物および/またはジチオカルバメート系化合物と銅化合物とを含有した透明樹脂が開示されており、特許文献3には、ジチオカルバミン酸銅系化合物と銅化合物とを含有した透明樹脂が開示されており、特許文献4には、イオウと所定の銅化合物とを含有させてなる透明樹脂組成物が開示されている。
【0005】
他方、テラスやカーポートの屋根材とは求められる機能が異なるが、家屋の窓材において窓に入射する太陽光を室内まで導く導光材として、透光性の支持体の少なくとも一方の面に、複数の単位プリズムと平坦面とを備えた採光フィルムが提案されている(特許文献5)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−63647号公報
【特許文献2】特開平11−181302号公報
【特許文献3】特開平11−349828号公報
【特許文献4】特開2005−97577号公報
【特許文献5】特開2008−40021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーポートの屋根材についてみると、従来、屋根材を透過した太陽光線の出射角を制御することによって、夏場は、太陽光による車内の温度上昇を抑えることができ、逆に冬場は、車内に光を取り込んで車内の温度を高めることができるようなものは開示されていなかった。
【0008】
そこで本発明は、入射光線の出射角を制御することによって、夏場は、太陽光による車内の温度上昇を抑えることができ、冬場は、車内に光を取り込んで車内の温度を高めることができる、新たな導光板を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、透明樹脂板の下面側に、三角柱状の単位プリズムが単位プリズムの幅方向に連続して並設されてなる構成を有するプリズム面を備え、当該プリズム面を構成する単位プリズムの頂部角度が60°以上120°未満であることを特徴とする導光板を提案する。
【0010】
このような構成を備えた導光板であれば、例えばカーポートの屋根材として使用することにより、夏場は、太陽光によって車内の温度上昇を抑えることができ、逆に冬場は、車内に光を取り込んで車内の温度を高めることができるように、導光板を透過する太陽光の出射角を制御することができる。すなわち、夏場、太陽が南に位置して高度が最も高くなった時、この角度で入射してくる太陽光線をプリズム面において反射するため、太陽光線を導光板下側に透過させないようにすることができる。その一方、太陽の角度から徐々に低くなると、太陽光線が導光板下側に透過するようになり、冬場、太陽の角度が最も低くなった時に、導光板下側に透過する太陽光線量が十分に多くすることができ、駐車中の車内に光を取り込んで車内の温度を高めることができる。よって、冷暖房を効かせるためのアイドリング運転を抑制することが可能であり、環境面に対して非常に有意義である。
以上のように、本発明の導光板は、カーポートの屋根材として特に好適であるが、その他、テラス等の屋根材やその他の採光材としても利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、実施形態に基づいて本発明を説明する。但し、以下に説明する実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明の範囲が以下の実施形態に制限されるものではない。
【0012】
<本導光板の構成>
本実施形態の導光板(「本導光板」という)1は、図1及び図2に示すように、透明樹脂板2の下面側にプリズム面3を備え、透明樹脂板2の上面側に紫外線吸収層4を備えた板体乃至シート体である。但し、紫外線吸収層4は必ずしも備えてなくてもよい。
【0013】
(透明樹脂板2)
透明樹脂板2の材料については、特に制限はない。一般に外装建材として使用されている透明樹脂を使用することができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の透明な樹脂材料を使用することができる。これらを1又は2種以上混合してもよい。これらの樹脂の中で、透明性、耐熱性、耐衝撃性などの点で、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0014】
ポリカーボネート系樹脂とは、主鎖中に炭酸エステル結合を含む線状高分子であり、例えば種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとをホスゲン法により反応させたり、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとをエステル交換法で反応させたりして得ることができる重合体などである。具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂を挙げることができるが、これに限るものではない。
ポリカーボネート系樹脂の分子量は特に制限するものではない。通常の押出成形によりシート成形可能な粘度平均分子量が1.5万〜3万程度のものが好ましい。
【0015】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0016】
メタクリル系樹脂としては、メタクリル酸の各種エステルからなる重合体又は他の単量体との共重合体等が挙げられる。例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の各種メタクリル酸エステルの単独重合体、及びこれらのメタクリル酸エステルと各種アクリル酸エステル、アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン等との共重合体等が挙げられる。
【0017】
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体からなる重合体又はスチレン系単量体と共重合可能な単量体を用いた共重合体等が挙げられる。スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンゼン核の水素原子がハロゲン原子や炭素数1〜2のアルキル基で置換されたスチレン誘導体等があり、具体的には、スチレン、o−クロルスチレン、p−クロルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、t−ブチルスチレン等がある。また、共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等のアクリロニトリル系単量体や、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルブチル、(メタ)アクリル酸−β−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸や、これらの各種エステル類又は酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイミド等が挙げられる。
【0018】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体、少量のコモノマーを共重合させた塩化ビニル系共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。これらと塩化ビニリデン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン等とのポリマーブレンドでもよい。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体又はα−オレフィンと他の共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。このうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体、酢酸ビニル含量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が透明性及び耐候性に優れている。なかでも、酢酸ビニルの含量が5重量%〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体は透明性、柔軟性及び耐候性が特に優れている。
【0020】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、ナイロン−46等が挙げられる。
【0021】
透明樹脂板2は、近赤外線を吸収する物質、例えばイオウ、硫黄系化合物、銅系化合物およびその他の近赤外線吸収物質のうちの一種又は2種以上を含有してもよい。但し、含有しなくてもよい。
この際、イオウは、市販のイオウ粉末などを使用できる。例えば、鶴見化学(株)製(JIS2級相当品)のイオウ粉末などが挙げられる。
硫黄系化合物としては、硫化鉛、チオ尿素誘導体等が挙げられる。
銅系化合物としては、ステアリン酸銅、硫化銅、フタロシアニル銅等が挙げられる。
他の近赤外線吸収物質としては、六塩化タングステン、塩化スズ、クロム、コバルト錯塩、アントラキノン誘導体等が挙げられる。
このような近赤外線吸収物質の含有量は特に制限されるものではないが、透明樹脂100重量部に0.01〜6重量部を含有させるのが好ましい。含有量が0.01〜6重量部、好ましくは0.01〜2重量部、特に好ましくは0.01〜1重量部であれば、近赤外線領域の光線吸収性能に優れ、可視光線の透過率が高いものとなる。
【0022】
また、透明樹脂板は、本発明の効果を損なわない限度において、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、蛍光増白剤、離型剤、アンチブロッキング剤(シリカ、架橋ポリスチレンビーズ等)、軟化材、帯電防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0023】
(プリズム面3)
プリズム面3は、図1及び図2に示すように、透明樹脂板2の下面側、すなわち導光板1に光線が入射する側とは反対側に設けられ、断面三角状で長尺な三角柱状の単位プリズム3aがその幅方向に連続して並設された構成を備えている。
【0024】
単位プリズム3aは、その長さ方向と直交する断面にみて、断面二等辺三角形状を呈するのが好ましく、単位プリズム3aの頂部角度は60°以上120°未満であるのが好ましい。
本導光板1をカーポートの屋根材に加工して使用することを想定すると、日本国では、夏場、太陽が南に位置して最も高度が高くなった時(夏至)、太陽光線の角度は70〜88°であるから、単位プリズム3aの頂部角度を60°以上120°未満の範囲内で調整することにより、図3(A)に示すように、入射してくる太陽光線を反射して導光板1の下側に透過する光線量を顕著に低下させることができ、車内の温度上昇を抑制することができる。また、太陽の角度が夏至から徐々に低くなると、導光板1の下側に透過する光線量が増加し、図3(B)に示すように、冬場、太陽の角度が最も低くなると(冬至)、導光板下側に透過する太陽光線量が十分に多くなり、駐車中の車の車内に光を取り込んで車内の温度を高めることができる。
かかる観点から、単位プリズム3aの頂部角度は、70〜100°であるのが特に好ましく、中でも70〜80°であるのがさらに好ましい。
なお、導光板1は、図4に示すように、単位プリズム3aの長さ方向と直交する断面にみて、上側に湾曲して膨らんでいてもよい。この場合、単位プリズム3aの頂部角度は60°以上120°未満の範囲内の一定角度であってもよいし、また、かかる範囲内で適宜角度を変えてもよい。
【0025】
単位プリズム3aの頂部は、図5に示すように、丸みを帯びていてもよく、その際、頂部の曲率半径Rは0mmより大きく0.5mm以下であるのが好ましい。導光板1に入射する光線の角度を曲げる導光性の点からすると、頂部の曲率半径はできるだけ小さい方が好ましく、0.5mmを超えると所望の導光性能を得られない可能性がある。かかる観点から、特に0.3mm以下、中でも特に0.2mm以下であるのがさらに好ましい。
【0026】
また、隣接する単位プリズム3a、3a間の間隔(プリズムピッチ)Lは0.5mm〜3mmが好ましい。プリズムピッチは、0.5mm未満になると、曲部(R部)の割合が大きくなるため導光性能が低下する可能性があるばかりか、プリズムを賦形するための金型のピッチが増加するのに伴い、金型の製作に微細な加工が必要となるため、加工が行い難くなる。他方、プリズムピッチが3mmを超えると、単位プリズム3a、3a間の溝が深くなり、導光板の強度が低下してしまう。
かかる観点から、プリズムピッチは、0.6mm〜1.5mmであるのが特に好ましく、中でも特に0.6mm〜1.2mmであるのがさらに好ましい。
【0027】
単位プリズム3aの高さHは、単位プリズム3aの頂部角度とプリズムピッチによって決定されるものであるが、0.2mm〜1.5mmであるのが好ましく、特に0.2mm〜1.0mmであるのが好ましく、中でも特に0.2mm〜0.7mmであるのがより好ましい。
【0028】
(紫外線吸収層4)
紫外線吸収層4は、透明樹脂に紫外線吸収物質を混合して形成することができる。
【0029】
この際、透明樹脂としては、透明樹脂板2の材料として挙げた透明樹脂を使用することができる。中でも、接着性や界面での光散乱などを考慮すると、透明樹脂板2と同じ樹脂を使用するのが好ましい。
【0030】
また、紫外線吸収物質としては、紫外線吸収性能を有すれば特に制限はなく、例えばベンゾトリアゾールやトリアジンなどを好適に使用できる。但し、これらに限定するものではない。
【0031】
(層構成)
透明樹脂板2および紫外線吸収層4の各層の厚みは、表面硬度、成形性に問題が無ければ制限するものではなく、厚み比も同様である。一般的には、透明樹脂板2の厚みは0.5mm〜5.0mm、特に1.0mm〜3.5mm、中でも特に1.5mm〜3.0mmであるのが好ましく、紫外線吸収層4の厚みは10μm〜100μm、特に20μm〜70μm、中でも特に20μm〜40μmであるのが好ましい。
【0032】
なお、本導光板1は、上述のように透明樹脂板2および紫外線吸収層4を備えていれば、他の層を備えていてもよい。例えば、近赤外線吸収層を備えていてもよく、この場合、透明樹脂板2の材料として挙げた透明樹脂に、前述の紫外線吸収物質を混合して形成することができる。
また、シート体の一面側にプリズム面3を備えたプリズムシートを透明樹脂板2とは別体として形成し、このプリズムシートを透明樹脂板2に積層するようにしてもよい。
【0033】
<製造方法>
透明樹脂板2と紫外線吸収層4の積層方法としては、予めプリズム面3を賦形してなる透明樹脂板2に、紫外線吸収層4を備えたシートを積層するようにしてもよいし、また、透明樹脂板2を構成する樹脂(「透明樹脂板構成樹脂」という)と紫外線吸収層4を構成する樹脂(「紫外線吸収層構成樹脂」という)とを共押出しして積層した後、プリズム面3を賦形するようにしてもよい。
【0034】
透明樹脂板構成樹脂と紫外線吸収層構成樹脂とを共押出する場合は、例えば、透明樹脂板構成樹脂を押出すメイン押出機と、紫外線吸収層構成樹脂を押出すサブ押出機(通常はメイン押出機より小型)とを使用するのが好ましい。
この際、透明樹脂板構成樹脂並びに紫外線吸収層構成樹脂の主成分樹脂としてポリカーボネート樹脂を使用する場合であれば、メイン押出機の温度条件は、通常250〜290℃、特に260〜280℃とするのが好ましく、サブ押出機の温度条件は、通常250〜290℃、特に260〜280℃とするのが好ましい。
樹脂中の異物を除去するために、押出機のTダイより上流側にポリマーフィルターを設置することが好ましい。
【0035】
また、2種の溶融樹脂を共押出により積層する方法としては、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式などの公知の方法を用いることができる。
フィードブロック方式の場合、フィードブロックで積層された溶融樹脂を、Tダイなどのシート成形ダイに導き、シート状に成形し後、表面を鏡面処理された成形ロール(ポリシングロール)に流入させてバンクを形成すると共に成形ロール通過中に鏡面仕上げと冷却を行い、積層体を形成することができる。
他方、マルチマニホールド方式の場合には、マルチマニホールドダイ内で積層された溶融樹脂を、上記同様にダイ内部でシート状に成形し後、成形ロールにて表面仕上げ及び冷却を行い、積層体を形成することができる。
ダイの温度としては、透明樹脂板構成樹脂並びに紫外線吸収層構成樹脂の主成分樹脂としてポリカーボネート樹脂を使用する場合であれば、通常230〜290℃、好ましくは250〜280℃であり、成形ロール温度としては、通常100〜190℃、好ましくは110〜180℃である。ロールは縦型ロールまたは、横型ロールを適宜使用することができる。
【0036】
プリズム面3を賦形する方法としては、例えば、透明樹脂板2を押出成形する際に、或いは、透明樹脂板2と紫外線吸収層4の積層シートを共押出成形する際に、所定のプリズム面3を刻印できるように彫刻された金属ロールを、押し出された透明樹脂板2に押し当て冷却することによりプリズム面3を賦形することができる。
【0037】
<用途>
本導光板1は、カーポートの屋根材に加工して使用するのに特に適している。本導光板1のプリズム面3を、光線入射側とは反対側に位置させるように配置すると、夏場は、太陽光によって車内の温度上昇を抑えることができ、逆に冬場は、車内に光を取り込んで車内の温度を高めることができるように、導光板を透過する太陽光の出射角を制御することができる。日本国では、夏場、太陽が南に位置して最も高度が高くなった時(夏至)、太陽光線の角度は70〜88°であるから、図3(A)に示すように、入射してくる太陽光線を反射して導光板1の下側に透過する光線量を顕著に低下させることができる。また、太陽の角度が夏至から徐々に低くなると、導光板1の下側に透過する光線量が増加し、図3(B)に示すように、冬場、太陽の角度が低くなると(冬至)、導光板下側に透過する太陽光線量が多くなり、駐車中の車の車内に光を取り込んで車内の温度を高めることができる。
この際、本導光板1の設置方向を特に限定するものではないが、単位プリズム3aの長さ方向を東西方向に向けるのが好ましい。但し、この場合の「東西方向」とは、真東或いは真西から±30°の範囲内でずれている場合も包含する意であり、好ましくは±20°、特に好ましくは±10°の範囲内でずれている場合を包含する意味である。
また、本導光板1は、傾斜させて設置してもよい。例えば単位プリズム3aの長さ方向と直交する断面において、導光板が2〜22°傾斜するように、好ましくは南を向いて傾斜するように配置するのが好ましい。このように傾斜させた場合に同様の効果が得られることが確認されている。
【0038】
本導光板1は、上記のように太陽光線の角度を変えることができるから、カーポートの屋根材のほか、テラスの屋根材やその他の採光材として好適に利用することができる。
【0039】
<用語の説明>
本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意であり、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であるのが好ましい」旨の意図も包含する。
【0040】
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明について説明するが、これらの実施例に本発明が限定されるものではない。
【0042】
<実施例1−3>
紫外線吸収層構成樹脂としての紫外線吸収剤含有ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製「パンライト5250ZS」)と、透明樹脂板構成樹脂としてのポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバレックス7027U」)を、それぞれ別々の押出機のホッパーに投入し、いずれも温度280℃で溶融し、次いで、マルチマニホールドダイを用いて共押出しした後、紫外線吸収層のポリカーボネート樹脂の側を鏡面金属ロール側とし、反対面を、予め頂角が60°、75°または115°の二等辺三角形、高さ508μmのプリズム形状に彫刻された金属ロールに接触させて、当該反対面にプリズム面を付与して冷却固化した。
【0043】
得られたシートは、全厚さが2.5mm、紫外線吸収層/透明樹脂層の厚さ比が40/2460である2種2層構成であった。
また、形成されたプリズム面は、断面二等辺三角形からなる三角柱状の単位プリズムがその幅方向に連続して並設されており、各単位プリズムの頂部角度は60°、75°又は115°であり、いずれの単位プリズムの頂部も丸みを帯び、その曲率半径はいずれも0.2mmであり、隣接する単位プリズム間の頂点間隔(プリズムピッチ)は順に0.58mm、0.66mm、1.06mmであった。また、単位プリズムの高さは300μmであった。
【0044】
<比較例1>
上記実施例1−3において、プリズム形状を付与しないシートを作製した。
すなわち、紫外線吸収層構成樹脂としての紫外線吸収剤含有ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製「パンライト5250ZS」)と、透明樹脂板構成樹脂としてのポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバレックス7027U」)を、それぞれ別々の押出機のホッパーにそれぞれ投入し、いずれも温度280℃で溶融し、次いで、マルチマニホールドダイを用いて共押出した後、2つの鏡面金属ロール間に通して冷却固化してシートを得た。
【0045】
<比較例2>
上記実施例1−3において、プリズム面を賦形する金属ロールのプリズム形状の頂角を55°、高さ508μmに変更した以外は、上記実施例1−3と同様にシートを得た。
得られたシートは、全厚さが2.5mm、紫外線吸収層/透明樹脂層の厚さ比が40/2460である2種2層構成であった。
また、単位プリズムの頂部角度は55°であり、頂部の曲率半径は0.2mm、隣接する単位プリズム間の頂点間隔(プリズムピッチ)は0.56mm、単位プリズムの高さは300μmであった。
【0046】
<比較例3>
上記実施例1−3において、プリズム面を賦形する金属ロールのプリズム形状の頂角を120°、高さ508μmに変更した以外は、上記実施例1−3と同様にシートを得た。
得られたシートは、全厚さが2.5mm、紫外線吸収層/透明樹脂層の厚さ比が40/2460である2種2層構成であった。
また、単位プリズムの頂部角度は120°であり、頂部の曲率半径は0.2mm、隣接する単位プリズム間の頂点間隔(プリズムピッチ)は1.15mm、単位プリズムの高さは300μmであった。
【0047】
<シミュレーション試験>
シミュレーションソフトを用いて、上記実施例及び比較例で得られたシートをカーポートの屋根材として使用することを想定し、条件を変えてシミュレーションを行い、単位プリズムの頂部角度の好ましい範囲を検討した。
【0048】
より具体的には、照明設計解析ソフトウェア(製品名「Light Tools」)を使用して、上記実施例及び比較例で得られたシートを、図6(A)(B)に示す寸法のカーポート屋根材(屋根材面積:12m2)に加工して使用することを想定し、平均照度及び照度分布を測定した。
この際、カーポート直下の範囲(「有効範囲」ともいう)を南北方向20マス、東西方向に10マスに測定間隔を区切り、更にカーポート直下の範囲から東西南北方向にそれぞれ2マスずつ測定範囲を広げ、各マスの照度を測定し、全マスを対象として、次の式(1)で平均照度を算出した。
(1)・・平均照度=(全マスの照度平均値)×100/(プリズム面なし(比較例1)の全マスの照度平均値)
また、照度分布を示す表中の図では、完全な影を黒、太陽光そのままの照度を白で表し、照度分布を示した。
【0049】
(シミュレーション1)
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたシートを、そのプリズム面が光線入射側とは反対側に向き、プリズム面の単位プリズムの長さ方向が東西方向に向き、さらに南を向いて12°高くなるように傾斜するように、すなわち東側縁が西側縁より12°高くなるように傾けて配置することを想定し、東京での夏至における南中高度(78°)および同じく東京での冬至における南中高度(31°)の時の平均照度及び照度分布をシミュレーションして結果を表1に示し、単位プリズムの頂部角度の好ましい範囲を検討した。
【0050】
・太陽南中高度:71°又は31°
・屋根材傾斜角度:12°
・設置方角:単位プリズムの長さ方向がクロックポジション3時
【0051】
【表1】

【0052】
この結果、単位プリズムの頂部角度を60°以上115°、すなわち60°以上120°未満とすれば(実施例1〜3)、夏場で太陽が南に位置して高度が最も高くなった時(夏至)、いずれの場合も平均照度が、プリズム面を形成しない場合(比較例1)の80%以下となり、この角度で入射してくる太陽光線をプリズム面において反射して導光板下側に透過させないように遮断できることが分かった。
同時に、単位プリズムの頂部角度を60°以上115°、すなわち60°以上120°未満とすれば、冬場、太陽の角度が最も低くなった時(冬至)には、いずれの場合も平均照度が、プリズム面を形成しない場合(比較例1)の100%より大きくなり、この角度で入射してくる太陽光線をプリズム面において屈折させて導光板下側に透過する太陽光線量を多くすることができることが分かった。
【0053】
他方、単位プリズムの頂部角度が55°である比較例2の場合には、夏場での平均照度は73%であったが、プリズム面で屈折した太陽光が有効範囲内の一部に集まり、太陽光を十分に遮断できない場所ができることが判明した。
また、単位プリズムの頂部角度が120°である比較例3の場合には、夏場での平均照度が93%であり、プリズム面を形成した効果が明確でないことに加え、プリズム面で屈折した太陽光が有効範囲内の一部に集まり、太陽光を十分に遮断できない場所ができることが判明した。
【0054】
以上の観点および上記試験以外の経験から、単位プリズムの頂部角度は60°以上120°未満とするのが好ましく、中でも70〜100°、その中でも特に70〜80°であるのが好ましいと考えることができる。
なお、上記結果は、ポリカーボネート(屈折率1.58)から透明樹脂板を用いた場合の結果であるが、ポリカーボネートの屈折率は透明樹脂の中で特に大きいため、上記範囲内で頂部角度を調整すれば同様の効果を得ることができるものと考えられる。
【0055】
(シミュレーション2)
上記実施例1で得られたシート(頂部角度75°)を、そのプリズム面が光線入射側とは反対側に向き、プリズム面の単位プリズムの長さ方向が東西方向に向き(プリズム方向3時)、さらに南を向いて12°高くなるように傾斜するように、すなわち東側縁が西側縁より12°高くなるように傾けて配置することを想定すると共に、その状態から設置方角を30°毎ずらして配置することを想定し、それぞれにおいて東京での夏至における南中高度(78°)および同じく東京での冬至における南中高度(31°)の時の平均照度及び照度分布をシミュレーションし、夏至の結果を表2に示し、冬至の結果を表3に示した。
【0056】
・太陽南中高度:71°又は31°
・屋根材傾斜角度:12°
・設置方角:単位プリズムの長さ方向がクロックポジション3〜2時
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
この結果、いずれの場合の平均照度も、夏場で太陽が南に位置して高度が最も高くなった時(夏至)、プリズム面を形成しない場合(比較例1)の80%以下となったことから、設置方角には関係なく効果を発揮することが確認された。
【0060】
(シミュレーション3)
上記実施例1で得られたシート(頂部角度75°)を、そのプリズム面が光線入射側とは反対側に向き、プリズム面の単位プリズムの長さ方向が東西方向に向き(プリズム方向3時)、さらに南を向いて2〜22°高くなるように傾斜するように、すなわち東側縁が西側縁より2〜22°高くなるように傾けて配置することを想定し、それぞれにおいて東京での夏至における南中高度(78°)および同じく東京での冬至における南中高度(31°)の時の平均照度及び照度分布をシミュレーションし、結果を表4に示した。
【0061】
・太陽南中高度:71°又は31°
・屋根材傾斜角度:2〜22°
・設置方角:単位プリズムの長さ方向がクロックポジション3時
【0062】
【表4】

【0063】
この結果、いずれの場合の平均照度が、夏場で太陽が南に位置して高度が最も高くなった時(夏至)、プリズム面を形成しない場合(比較例1)の80%以下となったことから、屋根材傾斜角度(2〜22°)には関係なく効果を発揮することが確認された。
【0064】
(シミュレーション4)
上記実施例1で得られたシート(頂部角度75°)を、そのプリズム面が光線入射側とは反対側に向き、プリズム面の単位プリズムの長さ方向が東西方向に向き(プリズム方向3時)、さらに南を向いて12°高くなるように傾斜するように、すなわち東側縁が西側縁より12°高くなるように傾けて配置することを想定し、全国各地での夏至における南中高度(73〜82°)および全国各地での冬至における南中高度(26〜35°)における平均照度及び照度分布をシミュレーションし、結果を表5に示した。
【0065】
・太陽南中高度:73〜82°又は26〜35°
・屋根材傾斜角度:12°
・設置方角:単位プリズムの長さ方向がクロックポジション3時
【0066】
【表5】

【0067】
この結果、青森から鹿児島のどの地域にカーポートを設置しても、夏場で太陽が南に位置して高度が最も高くなった時(夏至)、いずれの場合も平均照度が、プリズム面を形成しない場合(比較例1)の80%以下となり、この角度で入射してくる太陽光線をプリズム面において反射して導光板下側に透過させないように遮断することができることが分かった。
同時に、太陽の角度が最も低くなった時(冬至)には、いずれの場合も平均照度が、プリズム面を形成しない場合(比較例1)の100%より大きくなり、この角度で入射してくる太陽光線をプリズム面において屈折させて導光板下側に透過する太陽光線量を多くすることができることが分かった。
【0068】
<透過率試験>
上記実施例1及び比較例1で得られたシートについて、CR−200(村上色彩技術研究所)を使用して、プリズムの向きを入射角度に対してプリズム形状のピッチが垂直となるように、光源から入射光8°〜54°(南中高度82°〜26)で光を入射させ、JIS K 7136に準じて透過光の強度を測定した。実施例1の結果を表6に示し、比較例1の結果を表7に示す。
【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
表6および表7より、実施例1で得られた透明樹脂板は、夏至の日は、透過率が6.99〜7%、冬至の日は22.3〜25.6%となり、夏は冬の日に対して、27%〜31%の透過率となる。このことから、夏は光を遮り、冬は光を透過する透明樹脂板であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の導光板の一例を示した断面図である。
【図2】同じく本発明の導光板の一例を示した斜視図である。
【図3】本発明の導光板に太陽光線が入射した際に当該光線が進む角度のモデル例を示した断面図であり、(A)は夏のモデル、(B)は冬のモデルである。
【図4】本発明の導光板の変形例を示した断面図である。
【図5】本発明の導光板の単位プリズムの一例を拡大して示した断面図である。
【図6】実施例のシミュレーション試験において想定したカーポートの屋根材の寸法等を示した図である。
【符号の説明】
【0073】
1 導光板
2 透明樹脂板
3 プリズム面
3a 単位プリズム
4 紫外線吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂板の下面側に、三角柱状の単位プリズムがその幅方向に連続して並設されてなる構成を有するプリズム面を備え、当該プリズム面を構成する単位プリズムの頂部角度が60°以上120°未満であることを特徴とする導光板。
【請求項2】
プリズム面を構成する単位プリズムの頂部角度が70〜100°であることを特徴とする請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
プリズム面を構成する単位プリズムの頂部は丸みを帯び、且つ頂部の曲率半径が0mmより大きく0.5mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導光板。
【請求項4】
隣接する単位プリズム間の頂点間隔が0.5mm〜3mmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の導光板。
【請求項5】
光線入射側とは反対側にプリズム面を位置させるように使用することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の導光板。
【請求項6】
透明樹脂板の上面側に、紫外線吸収層を備えた請求項1〜5の何れかに記載の導光板。
【請求項7】
カーポートの屋根材として使用することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の導光板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−85905(P2010−85905A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257285(P2008−257285)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】