説明

導波路素子およびその作製方法

【課題】パッシブコア層をエッチングすることなく光回路を形成できる導波路素子の製造方法の提供。
【解決手段】下部クラッド層を形成する工程と、前記下部クラッド層の表面に電気光学的効果を示すアクティブコア層を形成する工程と、前記アクティブコア層の表面にアクティブコア層の屈折率よりも小さく、下部クラッド層の屈折率よりも大きな屈折率を有する保護層を形成する工程と、前記保護層の表面に、パッシブコア層を形成する工程と、パッシブコア層を所定のパターンで露光して光回路を形成する工程と、前記光回路が形成されたパッシブコア層の表面に上部クラッド層を形成する工程と、上部クラッド層の表面に上部電極を形成する工程と、上部電極形成後に分極配向処理を行う工程と、を有する導波路素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路素子およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料からなる導波路素子として、コアが二層構造を有し、光機能性高分子材料からなるコア下層部と、該コア下層部に装架され、その屈折率がコア下層部よりも低く、厚さがコア下層部よりも厚いコア上層部からなる二層コア部と、二層コア部よりも屈折率の低いクラッド部で構成された二層コア構造を有する導波路素子がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−075255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、二層コア構造を有する導波路素子においては、ある特定の電気光学的特性を有するコア下層部を形成後、コア上層部を形成し、このコア上層部を所定の形状にエッチングして光回路を形成するのが一般的である。
【0004】
しかし、前記導波路素子において、コア上層部のエッチング精度が低いと、コア下層部の表面に達する深さまでコア上層部をエッチングできなかったり、コア上層部だけでなくコア下層部までエッチングされたりして得られる導波路素子の特性がばらつくから、コア上層部をエッチングする際に、コア下層部までエッチングしないように、エッチング深さを高精度で制御する必要がある。
【0005】
エッチング深さを高精度で制御する方法として、コア下層部にガラス質材料のようにエッチング耐性の高い材料を使用する方法が考えられるが、ガラス質材料において電気光学的性質を有するものは極めて限定されるという問題がある。
【0006】
また、エッチングプロセスは高い真空を要するので、導波路素子の製造設備が高価になるという問題もある。
【0007】
本発明は、電気光学的特性を有するアクティブコア層と、前記アクティブコア層に光を導入し、または前記アクティブコア層からの光を導出する光回路を形成するパッシブコア層とを有する導波路素子において、パッシブコア層をエッチングすることなく光回路を形成できる導波路素子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、表面または側面に下部電極を形成した基板上に屈折率n1を有する下部クラッド層を形成する工程と、前記下部クラッド層の表面に、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n2を有し、電気光学的効果を示すアクティブコア層を形成する工程と、前記アクティブコア層の表面に、前記アクティブコア層の屈折率n2よりも小さく、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n4を有する保護層を形成する工程と、前記保護層の表面に、露光で屈折率が変化すると共に、露光後の屈折率n3が前記保護層の屈折率n4よりも小さく、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きなパッシブコア層を形成する工程と、前記パッシブコア層を所定のパターンで露光して前記アクティブコア層に光を導入し、または前記アクティブコア層を通過した光を導出する光回路を形成する工程と、前記光回路が形成されたパッシブコア層の表面に、前記パッシブコア層の露光後の屈折率n3よりも小さな屈折率n5を有する上部クラッド層を形成する工程と、上部クラッド層の表面に、前記アクティブコア層に電場を印加するための上部電極を形成する工程と、上部電極形成後に、前記アクティブコアを軟化状態または流動状態にして電場を印加しつつ硬化させる分極配向処理を行う工程と、を有する導波路素子の製造方法に関する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の導波路素子の製造方法において、前記上部クラッド層として前記下部クラッド層と同一の屈折率n1を有する光学材料を使用するものに関する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の導波路素子の製造方法において、保護層として水溶性ポリマー、アルコール可溶性ポリマー、およびガラス系材料から選択された材料を使用するものに関する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、基板と、基板の表面または側面に形成した下部電極と、基板上に形成され、屈折率n1を有する下部クラッド層と、前記下部クラッド層の表面に形成され、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n2を有し、電気光学的効果を示すアクティブコア層と、前記アクティブコア層の表面に形成され、前記アクティブコア層の屈折率n2よりも小さく、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n4を有する保護層と、前記保護層の表面に形成され、前記保護層の屈折率n4よりも小さく、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n3を有し、前記アクティブコア層に光を導入し、または前記アクティブコア層を通過した光を導出する光回路が所定のパターンで露光することにより形成されたパッシブコア層と、前記光回路が形成されたパッシブコア層の表面に形成され、前記パッシブコア層の露光後の屈折率n3よりも小さな屈折率n5を有する上部クラッド層と、上部クラッド層の表面に形成された前記アクティブコア層に電場を印加するための上部電極と、を有する導波路素子に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、パッシブコア層をエッチングすることなく光回路を形成できる導波路素子の製造方法が提供される。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記上部クラッド層として前記下部クラッド層の屈折率n1と異なる屈折率を有する光学材料を用いる場合と異なり、前記上部クラッド層として前記下部クラッド層と同一の光学材料を使用でき、光学材料の選択が容易な導波路素子の製造方法が提供される。
【0014】
請求項3の発明によれば、保護層として脂溶性の樹脂を使用する場合とは異なり、アクティブコア層の表面に樹脂溶液を流延してそれを乾燥させて保護層を形成する際にアクティブコア層が前記樹脂溶液によって侵される危険性を実質的に排除できる。
【0015】
請求項4の発明によれば、パッシブコア層をエッチングすることなく光回路が形成される故に素子間の特性のバラツキがない導波路素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る導波路素子の製造方法の手順の最初の部分を示す流れ図である。
【図2】実施形態1に係る導波路素子の製造方法の手順の中ほどの部分を示す流れ図である。
【図3】実施形態1に係る導波路素子の製造方法の手順の最後の部分を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.実施形態1
【0018】
以下、本発明の導波路素子の製造方法の一例について説明する。
【0019】
実施形態1に係る導波路素子の製造方法は、図1の(A)〜図1の(C)、図2の(A)〜図2の(C)、および図3の(A)、(B)に示すように、
a.基板7の表面に下部電極8を形成する工程(工程1、図1(A))、
b.その上に屈折率n1を有する下部クラッド層5を形成する工程(工程2、図1(B))、
c.下部クラッド層5の表面に、屈折率n2を有し、電気光学的効果を示すアクティブコア層1を形成する工程(工程3、図1(C))、
d.アクティブコア層1の表面に、屈折率n4を有する保護層4を形成する工程(工程4、図1(D))、
e.保護層4の表面に、露光で屈折率が変化すると共に、露光後の屈折率がパッシブコアの周囲よりも高い屈折率n3となるパッシブコア層3を形成する工程(工程5、図2(A))、
f.パッシブコア層3を所定のパターンで露光して光回路2を形成する工程(工程6、図2(B)、図2(C))、
g.光回路2が形成されたパッシブコア層3の表面に、屈折率n1を有する上部クラッド層6を形成する工程(工程7、図3(A))、
h.上部クラッド層6の表面に上部電極9を形成する工程(工程8、図3(B))
を有する。
【0020】
そして、このようにして作製された導波路素子全体を加熱してアクティブコア層1を軟化状態または流動状態にして電場を印加しつつ硬化させる分極配向処理を施し、アクティブコア層1を分極化させる(工程9)。
【0021】
なお、下部クラッド層5および上部クラッド層6の屈折率n1、光回路2の屈折率n3、アクティブコア層1の屈折率n2、および保護層4の屈折率n4の間には、
n1<n3<n4<n2
の関係がある。なお、保護層4の屈折率n4と光回路2の屈折率n3とアクティブコア層1の屈折率n2との間には、
n2−n4=0.00〜0.03
n4−n3=0.00〜0.03
の関係があることが好ましい。
【0022】
以下、各工程について詳説する。
【0023】
(1)工程1
工程1において使用される基板7はとくに限定されないが、平坦性に優れたものが好ましい。具体的には、金属基板、シリコン基板、透明基板などが挙げられ、これらは作製しようとする導波路素子の形態に応じて適宜選択できる。基板7として金属基板を用いる場合は、基板そのものが導電性を有しているため、下部電極8を省略することができる。
【0024】
金属基板としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の基板が好ましい。透明基板としては、石英、ガラス、透明合成樹脂などの基板が挙げられる。また、基板7として透明基板を用いるときは、基板7を下部クラッド層5と兼用してもよい。
【0025】
工程1において基板7として透明基板のような電気絶縁性の基板を用いるときは、基板7に下部電極8を形成する。実施形態1に示す例においては、基板7の表面に下部電極8を形成しているが、基板7の側面に下部電極8を形成してもよい。下部電極8は接地してもよく、また、基板7を貫通する配線や基板7の側面に設けられた配線によって基板7の裏側の電気配線に接続してもよい。
【0026】
下部電極8は、金属を蒸着させた金属蒸着電極であってもよく、インジウム錫酸化物やジルコニウム錫酸化物のような透明電極であってもよい。金属蒸着電極に使用される金属としては金、銀、銅、アルミニウム等が挙げられる。
【0027】
(2)工程2
工程2で基板7の表面、または基板7の表面に下部電極8を形成したときは下部電極8の表面に形成される下部クラッド層5の材料は、パッシブコア層3やアクティブコア層1に使用される材料よりも屈折率の低い材料であれば特に制限はなく、具体的には、ポリイミド樹脂、弗素化ポリイミド樹脂、光硬化型アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂などのポリマーが好ましい。
【0028】
これらのポリマーを塗布する方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、印刷コーティング法など各種の方法を採用でき、特にスピンコーティング法が簡便性の故に好ましい。
【0029】
(3)工程3
工程3で形成されるアクティブコア層1の材料としてはバインダーとなるポリマーに電場の強度に応じて屈折率が変化する電気光学的効果を有する低分子化合物を分散させたものや、電気光学的効果を有するポリマーを使用することができる。
【0030】
バインダーとなるポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリスルホン樹脂が、溶解性と態様財政とのバランスがよい故に好ましい。なお、作製される導波路素子の長期信頼性の観点からはガラス転移点が200℃以上のポリマーが好ましい。
【0031】
これらのポリマーに配合される低分子化合物としては、電子供与性基と電子吸引性基とを有するアゾ色素や、メロシアニン系色素などが挙げられる。中でも好適な例としては、Disperse Red 1(DR1)や、2−メチル−6−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−4H−ピラン−4−イリデンプロパニルや、4−{[4−(ジメチルアミノ)フェニル]イミノ}−2,5−シクロヘキサジエン−1−オンなどが挙げられる。
【0032】
電気光学的効果を有するポリマーの例としては、ポリ[(メチルメタクリレート)−Co−(DR1アクリレート)](Aldrich社製)が挙げられる。
【0033】
アクティブコア層1は、上記の材料を有機溶媒に溶解させ、または溶融させた状態で下部クラッド層5の表面に所定の厚みに塗布して乾燥または硬化させて形成することができる。塗布方法としては、下部クラッド層の場合と同様にスピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、印刷コーティング法など各種の方法を採用でき、特にスピンコーティング法が簡便性の故に好ましい。
【0034】
(4)工程4
工程4で形成される保護層は、体積抵抗率が10〜1013Ω・cmであることが好ましい。このような材料としては、水溶性ポリマー、アルコール可溶性ポリマー、およびガラス材料が好ましい。
【0035】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、水溶性フェノール樹脂などが挙げられる。アルコール可溶性ポリマーとしては、アルコール可溶性ポリウレタン樹脂、N−メチルメトキシ化ナイロン、アルコール可溶性ロジン樹脂、アルコール可溶性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0036】
これらの水溶性ポリマーおよびアルコール可溶性ポリマーは、水溶液またはアルコール溶液として塗布することができる。なお、保護層の体積抵抗率を上記の範囲とするため、塩化ナトリウムや塩化テトラブチルアンモニウムなどの塩をこれらの水溶液やアルコール溶液に添加することができる。
【0037】
また、保護層としてガラス材料を用いるときは、ゾル−ゲル法を用いて保護層を形成できる。この場合、ゲルにチタニウムやジルコニウムなどの金属を添加することにより、屈折率を調整できる。但し、石英は体積抵抗率が高すぎるから保護層の材料としては好ましくない。
【0038】
(5)工程5
工程5で形成されるパッシブコア層3の材料としては、バインダーとなるポリマーに光反応性を有する、換言すれば露光によって屈折率を変化させる反応剤を添加したものが挙げられる。
【0039】
バインダーとなるポリマーとしては、工程3のところで挙げたものと同様のものが使用される。
【0040】
また、反応剤は単一の化合物であってもよく、複数の化合物の組合せであってもよい。単一の化合物としては、DNQ(ジアゾナフトキノン)が挙げられる。複数の化合物の組合せとしては、アクリル酸エステルとα−ヒドロキシケトン誘導体との組合せや、エポキシド化合物と芳香族スルホニウム塩との組合せなどが挙げられる。
【0041】
パッシブコア層3は、バインダーポリマーの溶媒溶液に反応剤を配合したもの、または溶融状態としたバインダーポリマーに反応剤を配合したものを保護層4の上に塗布し、これを乾燥または硬化させて形成できる。塗布方法については、工程2および工程3のところで述べたとおりである。
【0042】
(6)工程6
前述のように、工程6においては、工程5で形成されたパッシブコア層3を露光して光回路2を形成する。工程6で形成できる光回路2としては、マッハツェンダ型変調器のような分岐干渉型変調器や、多モード干渉型導波路素子など、各種のものが上げられる。
【0043】
パッシブコア層3を露光する方法としては、図2の(B)に示すように、パッシブコア層3に所定のパターンを印刷したマスク10を被せて光回路2を形成すべき箇所以外に光が当たらないようにしてステッパやアライナで露光する方法のほか、レーザ光によって直接描画する方法もある。
【0044】
なお、反応剤として低沸点のアクリル酸エステルとα−ヒドロキシケトンとの組合せを用いたときは、露光に引き続いて加熱処理を行って未反応のアクリル酸エステルを除去すれば、パッシブコア層3に形成された光回路1の信頼性、安定性が格段に向上するから好ましい。
【0045】
実施形態1においては、下からアクティブコア層1、保護層4、パッシブコア層3の順に形成してから光回路2を形成していたが、最初にパッシブコア層3を形成して光回路2を形成してから保護層4およびアクティブコア層1を形成してもよい。
【0046】
(7)工程7
工程7においてパッシブコア層3の表面に形成される上部クラッド層6の材料は、パッシブコア層3やアクティブコア層1に使用される材料よりも屈折率の低い材料であれば特に制限はなく、具体的には、下部クラッド層5を形成するのに使用されるポリマーが好ましい。また、塗布方法についても工程2のところで説明したとおりである。
【0047】
(8)工程8
工程8においては、上部クラッド層6の全面、または図3の(B)に示すように上部クラッド層6の表面の一部に上部電極9を形成する。上部電極9に使用される材料および形成方法については下部電極8と同様である。
【0048】
(9)工程9
工程9においては、アクティブコア層1に電気光学的効果を付与するために分極配向処理を施す。
【0049】
分極配向処理は、工程1〜工程9によって作製された積層体を、アクティブコア層1が軟化または流動状態になる温度に加熱して厚さ方向に電場を印加し、この状態で積層体全体を冷却してアクティブコア層1を固化させることにより施すことができる。電場を印加する方法としては、下部電極8を設置し、上部電極9を直流電源に接続して積層体に厚さ方向に直流電圧を印加する方法、およびコロナ放電を行う方法がある。
最後に、この積層体をダイシングし、または劈開させて所望の導波路素子を切り出す。
【実施例】
【0050】
1.実施例
基板7としてシリコン基板を用い、このシリコン基板に下部電極8として金をスパッタした。
【0051】
ついで、下部電極8の表面に、屈折率n1=1.50の紫外線硬化型樹脂を塗布し、これに紫外線を照射して硬化させて下部クラッド層5を形成した。
【0052】
下部クラッド層5の上に、屈折率n2=1.64のポリマー溶液を塗布、加熱して硬化させてアクティブコア層1を形成し、その上にポリにビルアルコール水溶液を塗布し、加熱乾燥して保護層4を形成した。
【0053】
続いて保護層4の上に、屈折率1.53のポリマー溶液を塗布し、70℃でベークして溶剤を除去し、パッシブコア層3を形成した。パッシブコア層3の表面をアライナで露光してマッハツェンダ型変調器を含むチャネルをパターニングし、150℃でベークして光回路2を形成した。
【0054】
次に、下部クラッド層5と同様の手順に従って上部クラッド層6を形成し、リフトオフ・プロセスによって上部電極9を形成した。そして、得られた積層体に、コロナ放電により分極配向処理を行って導波路素子100を作製した。
【0055】
得られた導波路素子に波長1550nmの光を導入したところ、光の伝送を確認できた。また、下部電極8を接地して上部電極9に電圧を印加して応答を調べたところ、光の変調を確信できた。
【0056】
なお、パッシブコア層3を形成するのに使用した屈折率1.53のポリマー溶液は、ポリカーボネート樹脂とメタクリル酸ブチルとIrgacure184とをテトラヒドロフランに溶解させた溶液であり、アクティブコア層1を形成するのに使用した屈折率n2=1.64のポリマー溶液は、ポリスルホン樹脂とDR1とをシクロヘキサノンに溶解させた溶液であった。
【0057】
2.比較例1
基板7への下部電極8の形成、下部クラッド層5の形成、およびアクティブコア層1の形成は、実施形態1と同様に実施した。アクティブコア層1を形成後、実施例1と同様の手順でパッシブコア層3を形成し、パッシブコア層3の表面にレジストを塗布し、アライナで露光してマッハツェンダ型変調器を含むチャネルをパターニングした後にリアクティブイオンエッチング(RIE)でエッチングして光回路2を形成した以外は実施例1と同様の手順で導波路素子を作製した
【0058】
得られた導波路素子を観察したところ、アクティブコア層1までエッチングされている箇所やエッチングがパッシブコア層3内部で停まっている箇所が認められ、設計どおりに断面が形成されていないことが判った。
【0059】
3.比較例2
アクティブコア層1を形成後、保護層4を形成することなく、パッシブコア層3となる屈折率1.64のポリマー溶液を塗布したところ、アクティブコア層1が溶解してしまい、導波路素子として使用できる状態にはなかった。
【符号の説明】
【0060】
1 アクティブコア層
2 光回路
3 パッシブコア層
4 保護層
5 下部クラッド層
6 上部クラッド層
7 下部電極
7 基板
8 下部電極
9 上部電極
10 マスク
100 導波路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面または側面に下部電極を形成した基板上に屈折率n1を有する下部クラッド層を形成する工程と、
前記下部クラッド層の表面に、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n3を有し、電気光学的効果を示すアクティブコア層を形成する工程と、
前記アクティブコア層の表面に、前記アクティブコア層の屈折率n2よりも小さく、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n4を有する保護層を形成する工程と、
前記保護層の表面に、露光で屈折率が変化すると共に、露光後の屈折率が前記保護層の屈折率n4よりも小さく、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n3であるパッシブコア層を形成する工程と、
前記パッシブコア層を所定のパターンで露光して前記アクティブコア層に光を導入し、または前記アクティブコア層を通過した光を導出する屈折率がn3の光回路を形成する工程と、
前記光回路が形成されたパッシブコア層の表面に、前記パッシブコア層の露光後の屈折率n3よりも小さな屈折率n5を有する上部クラッド層を形成する工程と、
上部クラッド層の表面に、前記アクティブコア層に電場を印加するための上部電極を形成する工程と、
上部電極形成後に、前記アクティブコアを軟化状態または流動状態にして電場を印加しつつ硬化させる分極配向処理を行う工程と、
を有する導波路素子の製造方法。
【請求項2】
前記上部クラッド層として前記下部クラッド層と同一の屈折率n1を有する光学材料を使用する請求項1に記載の導波路素子の製造方法。
【請求項3】
保護層として水溶性ポリマー、アルコール可溶性ポリマー、およびガラス系材料から選択された材料を使用する請求項1または2に記載の導波路素子の製造方法。
【請求項4】
基板と、
基板の表面または側面に形成した下部電極と、
基板上に形成され、屈折率n1を有する下部クラッド層と、
前記下部クラッド層の表面に形成され、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n2を有し、電気光学的効果を示すアクティブコア層と、
前記アクティブコア層の表面に形成され、前記アクティブコア層の屈折率n2よりも小さく、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n4を有する保護層と、
前記保護層の表面に形成され、前記保護層の屈折率n4よりも小さく、前記下部クラッド層の屈折率n1よりも大きな屈折率n3を有し、前記アクティブコア層に光を導入し、または前記アクティブコア層を通過した光を導出する光回路が所定のパターンで露光することにより形成されたパッシブコア層と、
前記光回路が形成されたパッシブコア層の表面に形成され、前記パッシブコア層の露光後の屈折率n3よりも小さな屈折率n5を有する上部クラッド層と、
上部クラッド層の表面に形成された前記アクティブコア層に電場を印加するための上部電極と、
を有する導波路素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−210830(P2010−210830A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55659(P2009−55659)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】