説明

導通試験方法及び導通試験装置

【課題】配線基板に電子部品が実装されて成る配線基板ユニットに形成された電気回路に通電して、該配線基板ユニットにおける電子部品と配線基板との接合不良を検出する導通試験方法及び導通試験装置において、配線基板と電子部品とのはんだ接合部に接合不良が存在する場合に、確実にその接合不良を検出する。
【解決手段】、配線基板ユニット10を静止させた状態と、該配線基板ユニット10に具備される配線基板11と任意の電子部品13とを共振させた状態との双方において、該配線基板ユニット10に構成される回路に通電して該回路からの出力を電気的信号として検出し、これらの電気的信号を比較演算することにより、接合不良を検出する。また、配線基板11を保持すると共に加振する保持部材22・22・・・の保持位置を変更させることで、前記配線基板ユニット10の振動の腹と節の位置を変化させて、少なくとも複数回の導通抵抗の測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板と電子部品とのはんだ接合不良を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配線基板と該配線基板に実装された電子部品との接合不良を検出するため、導通試験(電気的特性試験)が行われている。導通試験では、例えば、電子部品がはんだ接合にて実装された配線基板(以下、配線基板ユニットと記載する)の回路を構成する配線パターンにプローブピンを接触させて電流を印加して回路を作動させるとともに、回路から出力される電気信号を検出し、該電気信号と良品から得られる電気信号とを比較することにより、配線基板と電子部品とが適切にはんだ接合されているかどうかの評価を行う。
【0003】
しかし、配線基板と電子部品とが適切にはんだ接合されていないが、電子部品と配線基板とがはんだを介して接触している場合には、該配線基板と電子部品との接合部に導電性が確保されるため、接合不良を検出することはできなかった。
【0004】
そこで、配線基板ユニットに振動を加えて配線基板を共振させることによって、瞬間的に配線基板と電子部品との接合部に導電性がない状態を強制的に形成して導通試験を行うことで、接合不良を検出する導通試験方法が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の検査装置では、配線基板ユニットを固定する検査治具と振動装置とを連結棒にて連結し、プローブピンを備えたプローバーユニットと配線基板ユニットとを同様に振動させることによって、配線基板ユニットに振動を与えながら、同時に配線基板の回路に電流を印加して検査を実施することができる構造としている。
【特許文献1】特開平8−159953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術に記載の導通試験では、配線基板に対して加振して共振を発生させ、該配線基板を瞬間的に反った(又は、撓んだ)状態にして、導電性のない状態を強制的に形成して導通試験を行うが、電子部品の形状や接合位置などによっては、接合不良が存在しても配線基板が反ったときに電子部品とはんだとの接触が維持されることがあった。
【0006】
そこで本発明では、配線基板と電子部品との接合部において、接合不良が存在する場合に、確実にその接合不良を検出することのできる導通試験方法、及び、これに供する導通試験装置について提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、配線基板に電子部品が実装されて成る配線基板ユニットにおける電子部品と配線基板との接合不良を検出する導通試験方法において、配線基板ユニットに具備される配線基板と任意の電子部品との双方を共振させた状態で、前記配線基板ユニットに構成される回路に通電して配線基板と任意の電子部品との接続部の接続状態を検査するものである。
【0009】
請求項2においては、配線基板に電子部品が実装されて成る配線基板ユニットにおける電子部品と配線基板との接合不良を検出する導通試験方法において、前記配線基板ユニットを静止させた状態と、前記配線基板ユニットに具備される配線基板と任意の電子部品とを共振させた状態との双方において、該配線基板ユニットに構成される回路に通電して配線基板と任意の電子部品との接続部の導通抵抗を測定し、これらの導通抵抗を比較演算することにより、接合不良を検出するものである。
【0010】
請求項3においては、前記配線基板および任意の電子部品の振動の腹と節の位置を変化させて、少なくとも複数回の導通抵抗の測定を行い、これらの導通抵抗を比較演算することにより、接合不良を検出するものである。
【0011】
請求項4においては、配線基板に電子部品が実装されて成る配線基板ユニットにおける電子部品と配線基板との接合不良を検出する導通試験を行うための導通試験装置において、前記配線基板の周縁部を保持する保持部材と、前記配線基板ユニットに具備される配線基板および任意の電子部品の双方が共振する発振周波数にて前記保持部材を振動させる加振手段と、前記配線基板ユニットに構成される回路に通電し、該回路から出力される電気信号を検出し、配線基板と任意の電子部品との接続部の導通抵抗を測定する電気信号測定手段とを、備えるものである。
【0012】
請求項5においては、前記配線基板ユニットを静止させた状態と、該配線基板ユニットに具備される配線基板と任意の電子部品とを共振させた状態との双方において、該配線基板ユニットに構成される回路に通電して配線基板と任意の電子部品との接続部の導通抵抗を測定し、これらの導通抵抗を比較演算することにより、接合の良・不良を判定する判定手段を、さらに備えるものである。
【0013】
請求項6においては、前記配線基板または電子部品の変位を測定する変位測定手段と、前記変位変位測定手段の測定結果より、前記配線基板ユニットに具備される配線基板と任意の電子部品とが共振しているかを判定する共振確認手段とを、さらに備えるものである。
【0014】
請求項7においては、前記配線基板の周縁部における、前記保持部材の保持位置を可変とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、配線基板のみならず電子部品をも共振させるので、配線基板のみを共振させる時と比較して、はんだと電子部品との離間距離をより増大できる。よって、電子部品の形状や配置により配線基板が反ってもはんだから離れなかった場合や、はんだにて電子部品が不完全に接合されている場合などの、配線基板のみを共振させて導通試験を行うときに検出できなかったような接合不良をも、検出できる可能性が高まる。
【0017】
請求項2においては、配線基板のみならず電子部品をも共振させるので、配線基板のみを共振させる時と比較して、はんだと電子部品との離間距離をより増大できる。よって、電子部品の形状や配置により配線基板が反ってもはんだから離れなかった場合や、はんだにて電子部品が不完全に接合されている場合などの、配線基板のみを共振させて導通試験を行うときに検出できなかったような接合不良をも、検出できる可能性が高まる。
さらに、配線基板ユニットの個体差や、計測機器の精度差を解消し、より精密に接続状態を検査することができる。
【0018】
請求項3においては、一の測定で節近傍に配置されている電子部品を、他の測定で節近傍以外の変位の大きい箇所に位置させることができ、より確実に接合不良を検出することができる。
【0019】
請求項4においては、配線基板のみならず電子部品をも共振させるので、配線基板のみを共振させる時と比較して、はんだと電子部品との離間距離をより増大できる。よって、電子部品の形状や配置により配線基板が反ってもはんだから離れなかった場合や、はんだにて電子部品が不完全に接合されている場合などの、配線基板のみを共振させて導通試験を行うときに検出できなかったような接合不良をも、検出できる可能性が高まる。
【0020】
請求項5においては、配線基板ユニットの個体差や、計測機器の精度差を解消し、より精密に接続状態を検査することができる。
【0021】
請求項6においては、配線基板や電子部品の個体差により予め設定された周波数で共振が発生しない場合があるので、確実に共振が発生しているかを確認したうえで導通検査を行うことができる。
【0022】
請求項7においては、配線基板が振動する際の腹と節の位置を可変とすることができるので、一の測定で節近傍に配置されている電子部品を、他の測定で節近傍以外の変位の大きい箇所に位置させることができ、より確実に接合不良を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1ははんだ接合不良が発生している配線基板と電子部品との接合部を示す図、図2ははんだと電子部品との変位の様子を示す図、図3は導通試験装置の全体構成を示す図、図4は導通試験装置の構成を示す側面図、図5は保持部材の移動と配線基板の振動との関係を示す図、図6は導通試験における演算制御部による処理の流れ図である。
【0024】
本発明は、図1に示すように、配線基板11と、該配線基板11にはんだ12にて接合された電子部品13との、接合不良を検出するための導通試験方法及びこれに供する導通試験装置20に関するものである。
導通試験では、電子部品13が実装された配線基板11(以下、配線基板ユニット10と記載する)に構成される回路に電流を印加するとともに、該回路から出力される電気信号を検出し、該電気信号を評価することにより、配線基板と電子部品とが適切にはんだ接合されているかどうかの評価を行う。
評価を行う電気信号としては、例えば抵抗値を表わす電気信号を用いる。
【0025】
図1aに示すように、配線基板11に電子部品13が適切には接合されていないが、電子部品13と配線基板11とがはんだ12を介して接触している場合には、配線基板11と電子部品13との接合部に導電性が確保される。
上記のような接合不良を検出するために、本発明に係る導通試験方法では、配線基板ユニット10を加振して、配線基板11及び電子部品13の双方を共振させながら、電気回路の導電性を検査する。
加振されることによって、配線基板11と接合不良が存在する電子部品13とは独立して挙動し、図1a及び図2に示すように、はんだ12と電子部品13とが離れて導電性が無くなる瞬間が存在する。導通試験では、この現象を検出することにより、配線基板11と電子部品13との接合不良を検出する。
【0026】
図2では、配線基板11と電子部品13とをそれぞれ共振させたときの、はんだ12と電子部品13とが接触しているはんだ側の点12Aと、同じく電子部品側の点13Aとの変位を示している。
【0027】
図2の図表より、配線基板11と電子部品13とが振動するうちに、点12Aと点13Aとが離れた状態となることがわかる。同じく図2の図表より、配線基板11のみならず電子部品13をも共振させれば、配線基板11のみを共振させる場合と比較して、はんだ12と電子部品13との離間距離がより増大することがわかる。
よって、電子部品13の形状や配置により配線基板11が反ってもはんだ12から離れなかった場合や、はんだ12にて電子部品13が不完全に接合されている場合などの、配線基板11のみを共振させて導通試験を行うときに検出できなかったような接合不良も、配線基板11と電子部品13の双方を共振させることによって検出できる可能性が高まる。
【0028】
ここで、導通試験装置20の構成について説明する。
図3及び図4に示すように、導通試験装置20は、大概して、配線基板ユニット10を保持するとともに加振する加振部7と、配線基板ユニット10に形成される電気回路に電流を印加して抵抗値を測定する測定部8と、前記加振部7や測定部8の動作を制御したり前記測定部8の測定結果に基づいて演算を行ったりする演算制御部9とで構成される。
【0029】
前記加振部7は、配線基板ユニット10のうち配線基板11の周縁部を保持する複数の保持部材22・22・・・と、該保持部材22に振動を与える振動子23と、該振動子23を発振させ当該振動を調節する発振器24とで構成される。
前記振動子23と発振器24とで、保持部材22を介して配線基板ユニット10を加振する、加振手段として機能する。
【0030】
前記発振器24では、各振動子23の発振のON/OFFを、独立して調整することが可能であり、この結果、全ての保持部材22・22・・・を振動させたり、又は、特定の保持部材22・22・・・を振動させたりすることが可能である。
上記のようにして振動する保持部材22は、配線基板11を保持するのみならず、該配線基板11に振動を与える機能を併せて備え持つこととなる。
【0031】
また、前記発振器24では、各振動子23の発振周波数や振幅の調整を行うことができる。該発振周波数は、配線基板11と、任意の電子部品13との双方を共振させることのできる周波数となるように、調整される。
配線基板11と任意の電子部品13は、通常、固有振動数について基本振動は異なるが、いくつかの倍振動において重複する場合があり、この倍振動にあたる周波数で配線基板11と任意の電子部品13とを振動させれば、双方に共振が生じる。
【0032】
なお、一つの配線基板11には、複数の電子部品13が実装され、電子部品13ごとに固有振動数が異なる。
そこで、発振器24では、配線基板11に実装された全ての電子部品13と配線基板11とが順に共振するように、振動子23の発振する発振周波数を変化させる制御を行うことができる。
また、発振器24では、経験的に接合不良が発生しやすい幾つかの電子部品と、配線基板11とが順に共振するように、振動子23の発振する発振周波数を変化させる制御を行うことができる。
さらに、発振器24では、接合不良を検出しようとする特定の電子部品と、配線基板11とが順に共振するように、振動子23の発振する発振周波数を定めることができる。
【0033】
前記保持部材22・22・・・は、例えば、リニアスライド等の可動支持手段にて、前後左右に移動可能に支持され、配線基板11に相対して移動することができる。すなわち、配線基板11の周縁部において、保持部材22にて保持される位置を変更することができる。なお、本実施例においては、保持部材22・22・・・は、略矩形状の配線基板11の各辺のそれぞれに、加振することによって配線基板11にねじれが生じないように配置される。
【0034】
上述の通り保持部材22・22・・・の位置が可変であるので、図5に示すように、振動する配線基板11の、振動の腹と節の位置を自在に変更することができる。
これにより、例えば、図5bに示すように、振動の節近傍に相当する位置に接合されていた電子部品13は、接合不良が存在しても配線基板11が反ったときにはんだ12から離れることはないが、図5cに示すように、振動の節及び腹の位置を適宜変更させることによって、配線基板11が反ったときに接合不良の電子部品13がはんだ12から離れる位置となるように調整することができる。
このように、保持部材22・22・・・を位置可変として、配線基板11の振動の腹と節の位置を可変としたので、振動の腹と節の位置を移動させることによって、振動の腹と節の位置が不動である場合には検出できなかった接合不良も、検出できる可能性が高まる。
【0035】
前記測定部8は、検査プローブ25aを備えたプローブユニット25と、測定器26と、変位計測手段27とで構成される。
前記プローブユニット25と測定器26とで、配線基板ユニットに構成される回路に通電し、該回路から出力される電気信号を検出して、導通抵抗等の電気信号を測定する、電気信号測定手段として機能する。
【0036】
前記検査プローブ25aは、配線基板ユニット10の回路を構成する配線パターンに接触して、該配線基板ユニット10に構成される回路と前記測定器26とを電気的に接続するものである。
本実施例においては、配線基板11には、配線基板ユニット10に構成される回路への電気信号の出入力部となるコネクタ14が設けられており、該コネクタ14に検査プローブ25aが接続される。
【0037】
なお、上記実施例においては、配線基板11上のコネクタ14と検査プローブ25aとを電気的に接続しているが、配線基板11上の配線パターンに直接検査プローブ25を接触させて電気的に接続することもできる。
【0038】
前記検査プローブ25aが備えられたプローブユニット25は、配線基板11を支持する単数又は複数の保持部材22・22・・・に固設される。これにより、検査プローブ25aが配線基板11と同様に加振されて、検査プローブ25aと配線基板11とが一体的に振動するので、検査プローブ25aとコネクタ14との相対変位が略一定となり、検査プローブ25aの振動等に起因するノイズの発生が抑制され、測定の安定性向上に寄与することができる。
【0039】
また、前記測定器26は、検査プローブ25aに流す電流値を制御したり、検査プローブ25を通じて検出した電気信号に基づいて配線基板ユニット10に構成される回路の抵抗値を測定したりするものである。
なお、プローブユニット25及び測定器26は、本実施例の形態に限定されるものではなく、一般に導電試験に用いられる測定器等を採用することができる。例えば、測定器26にて導電率を測定するように構成したり、検査プローブ25aにおいて定電圧を流して電流値を検出するように構成したりできる。
【0040】
前記変位計測手段27は、配線基板11及び(又は)電子部品13の変位を検出するためのものであって、本実施例においては、カメラ装置と画像処理装置を採用している。但し、変位計測手段27は、レーザー変位計や超音波変位計などの非接触式変位計や、接触式変位計などの各種変位計を採用することができる。
【0041】
前記演算制御部9は、動作させる振動子23及び該振動子23の発振周波数を調整するために前記発振器24の制御を行う加振制御手段41と、前記検査プローブ25aより与える電流値を調整するために測定器26の制御を行う測定器制御手段42と、前記測定器26にて測定された抵抗値に基づいて接合不良の有無を判定する判定手段43と、前記変位計測手段27の計測結果に基づいて共振状態を確認する共振確認手段44とを備える。
【0042】
本実施例において、前記加振制御手段41、測定器制御手段42、判定手段43、共振確認手段44は、表示出力手段としてのモニタ31や入力手段としてのキーボード32等を備えた汎用コンピュータ30にて機能させている。但し、前記加振制御手段41、測定器制御手段42、判定手段43、共振確認手段44のうち、いずれか一つ又は複数を、独立した電子計算機にて構成することもできる。
【0043】
続いて、上記構成の導通試験装置20を用いた、導通試験の流れについて、図6に示す流れ図を用いて説明する。
【0044】
導通試験の前処理として、配線基板11の端部を保持部材22・22・・・で保持させる。
先ず、配線基板11及び電子部品13により形成される回路の所定箇所の抵抗値を、静止状態で測定する(S1)。
演算制御部9の測定器制御手段42では、検査プローブ25aにて、配線基板ユニット10に構成される回路に所定の電流を流すとともに、該回路から出力される電気信号を検出し、この検出信号を受けた測定器26にて抵抗値を測定するように、該測定器26を動作させる。
測定された抵抗値は、測定器26より演算制御部9に伝達され、静止時抵抗値として取得される(S2)。
【0045】
続いて、配線基板ユニット10を加振する(S3)。
演算制御部9の加振制御手段41では、所定の振動子23を所定の発振周波数にて振動させるように、発振器24を動作させる。
【0046】
そして、配線基板ユニット10の振動が安定したのち、該配線基板ユニット10の振動状態が良好であるかを判定する(S4)。
配線基板11及び任意の電子部品13が共振する共振周波数を予め測定し、振動子23の発振周波数として設定するが、保持部材22・22・・・の保持位置や、配線基板11及び電子部品13の個体差により、共振する周波数に差異が生じるため、設定された発振周波数で共振が発生しない場合も生じるため、確実に共振が発生しているかを確認するのである。
【0047】
演算制御部9の共振確認手段44では、変位計測手段27の測定結果を取得し、配線基板11及び電子部品13の変位と予め設定された基準値とを比較して共振発生の有無を判断し、配線基板11及び電子部品13の振動状態が良好であるかを判定する。つまり、配線基板11及び電子部品13が、共振していれば振動状態が良であると判定し、共振していなければ振動状態が不良であると判定する。
【0048】
配線基板11の振動状態が良好でなければ、配線基板11及び電子部品13を共振させるために、発振器24にて振動子23の発振周波数を所定の調整幅だけ微調整するように加振制御手段41を動作させる(S21)。
なお、発振器24にて振動子23の発振周波数を調整することにて、配線基板11及び電子部品13を共振させることに加え、保持部材22・22・・・の位置を調整することにより振動の腹と節の位置を移動させて、接合不良を検出しようとする箇所の変位がより大きくなるように調整することができる。
【0049】
そして、振動子23の発振周波数を微調整して、配線基板11の振動が安定したのち、再び、配線基板11の振動状態が良好であるかを判定する(S4)。
上記振動状態の判定(S4)→振動数端数の調整(S21)→振動状態の判定(S4)の、各処理工程は、配線基板11の振動状態が良好と判定されるまで繰り返される。
【0050】
配線基板11の振動状態が良好であれば、振動状態での配線基板11及び電子部品により形成される回路の所定箇所の(静止状態で測定した箇所と同じ箇所の)抵抗値を測定する(S5)。
演算制御部9の測定器制御手段42では、検査プローブ25aにて、配線基板11及び電子部品13により形成される回路に所定の電流を流すとともに、該回路から出力される電気信号を検出し、この検出信号を受けた測定器26にて抵抗値を測定するように、該測定器26を動作させる。
測定された抵抗値は、測定器26より演算制御部9に伝達され、振動時抵抗値として取得される(S6)。
【0051】
測定が終われば、配線基板11の振動を停止させる。
演算制御部9の加振制御手段41では、振動子23の発振を停止させるように、発振器24を動作させる。但し、配線基板11の振動を継続した状態で以下に示す過程に移行することもできる。
【0052】
そして、演算制御部9の判定手段43では、前記静止時抵抗値と、前記振動時抵抗値とを比較演算するとともに(S7)、これらの差異が所定の許容範囲内にあるかどうかを演算し(S8)、許容範囲内であれば良判定をし(S9)、許容範囲内でなければ不良判定をし(S10)、導通試験を終了する。
【0053】
上述の導通試験では、同一の試験対象について、静止状態と、振動状態との双方において、抵抗値の測定を行っている。従って、配線基板ユニット10の個体差や、計測機器の精度差を解消し、より精密に接合不良を検出することができる。
【0054】
なお、上述の導通試験において、振動子23の発振周波数を変化させて抵抗値の測定を行うことが、確実に接合不良を検出するうえで、より望ましい。
振動子23の発振周波数を変化させて抵抗値の測定を行うことにより、配線基板11に実装された電子部品13のうち、共振している電子部品13を特定することができ、どの電子部品13において接合不良が生じているかを追求することができる。さらに、共振させることのできる電子部品13の割合を増大させることができるので、より確実に接合不良の検出を行うことができる。
【0055】
さらに、上述の導通試験において、配線基板11の保持部材22・22・・・による保持位置を変化させて、複数回の抵抗値の測定を行うことが、確実に接合不良を検出するうえで、より望ましい。
配線基板11の保持部材22・22・・・による保持位置を変化させて抵抗値の測定を行うことにより、配線基板11の振動の腹と節の位置が変化するので、一の測定で節近傍に配置されている電子部品を、他の測定で節近傍以外の変位の大きい箇所に位置させることができ、より確実に接合不良を検出することができる。
例えば、一度目の測定においては節近傍に配置されていた電子部品13を、保持部材22・22・・・の位置を変化させて行う二度目の測定において変位の大きい腹近傍の位置に配置することができ、この場合、一度目の測定において検出できなかった接合不良を二度目の測定において検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】はんだ接合不良が発生している配線基板と電子部品との接合部を示す図。
【図2】はんだと電子部品との変位の様子を示す図。
【図3】導通試験装置の全体構成を示す図。
【図4】導通試験装置の構成を示す側面図。
【図5】保持部材の移動と配線基板の振動との関係を示す図。
【図6】導通試験における演算制御部による処理の流れ図。
【符号の説明】
【0057】
11 配線基板
12 はんだ
13 電子部品
14 コネクタ
20 導通試験装置
22 保持部材
23 振動子
24 発振器
25 プローブユニット
25a 検査プローブ
26 測定器
27 変位計測手段
41 加振制御手段
42 測定器制御手段
43 判定手段
44 共振確認手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に電子部品が実装されて成る配線基板ユニットにおける電子部品と配線基板との接合不良を検出する導通試験方法において、
配線基板ユニットに具備される配線基板と任意の電子部品との双方を共振させた状態で、前記配線基板ユニットに構成される回路に通電して配線基板と任意の電子部品との接続部の接続状態を検査することを特徴とする
導通試験方法。
【請求項2】
配線基板に電子部品が実装されて成る配線基板ユニットにおける電子部品と配線基板との接合不良を検出する導通試験方法において、
前記配線基板ユニットを静止させた状態と、前記配線基板ユニットに具備される配線基板と任意の電子部品とを共振させた状態との双方において、該配線基板ユニットに構成される回路に通電して配線基板と任意の電子部品との接続部の導通抵抗を測定し、
これらの導通抵抗を比較演算することにより、接合不良を検出することを特徴とする
導通試験方法。
【請求項3】
前記配線基板および任意の電子部品の振動の腹と節の位置を変化させて、少なくとも複数回の導通抵抗の測定を行い、これらの導通抵抗を比較演算することにより、接合不良を検出することを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の導通試験方法。
【請求項4】
配線基板に電子部品が実装されて成る配線基板ユニットにおける電子部品と配線基板との接合不良を検出する導通試験を行うための導通試験装置において、
前記配線基板の周縁部を保持する保持部材と、
前記配線基板ユニットに具備される配線基板および任意の電子部品の双方が共振する発振周波数にて前記保持部材を振動させる加振手段と、
前記配線基板ユニットに構成される回路に通電し、該回路から出力される電気信号を検出し、配線基板と任意の電子部品との接続部の導通抵抗を測定する電気信号測定手段とを、備えることを特徴とする
導通試験装置。
【請求項5】
前記配線基板ユニットを静止させた状態と、該配線基板ユニットに具備される配線基板と任意の電子部品とを共振させた状態との双方において、該配線基板ユニットに構成される回路に通電して配線基板と任意の電子部品との接続部の導通抵抗を測定し、これらの導通抵抗を比較演算することにより、接合の良・不良を判定する判定手段を、
さらに備えることを特徴とする、
請求項4に記載の導通試験装置。
【請求項6】
前記配線基板または電子部品の変位を測定する変位測定手段と、
前記変位変位測定手段の測定結果より、前記配線基板ユニットに具備される配線基板と任意の電子部品とが共振しているかを判定する共振確認手段とを、
さらに備えることを特徴とする、
請求項4又は請求項5に記載の導通試験装置。
【請求項7】
前記配線基板の周縁部における、前記保持部材の保持位置を可変とすることを特徴とする、
請求項4から請求項6までの何れか一項に記載の導通試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−178339(P2007−178339A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378820(P2005−378820)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】