説明

導電ペースト

【課題】高解像度の印刷パターンが得られ、かつ良好な導電性を付与できる導電ペーストを提供することを目的とする。
【解決手段】表面に金属膜12を設けた球状のガラスフリット11からなる第1の導電性フィラー10と、球状の金属からなる第2の導電性フィラー23と、有機系ビヒクルとを主成分とする混合物から構成され、第1の導電性フィラー10と第2の導電性フィラー23の総含有量は、導電ペースト100重量%に対して85重量%以上とし、第2の導電性フィラー23である球状の金属は、一次粒子の平均粒径が0.003mm以下の球状金属粉体とした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路の電極を形成するための導電ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される電子機器は、薄型化や小型化の進化が著しく、それに伴い、電気配線の高密度化・高精細化に対する要求が高まり、高密度・高精細な電極形成方法がいろいろ提案されている。
【0003】
中でも、導電性フィラーとガラスフリットを含む導電ペーストを用いてスクリーン印刷法で電極パターンを印刷し、その後、焼成して電極を形成する厚膜印刷法が、広く用いられている。なぜなら、この圧膜印刷法は、めっき法やスパッタ法などの乾式法に比べて製造プロセスや設備が簡便だからである。
【0004】
しかし、一般に、圧膜印刷法は、乾式法と比較して電極パターンの解像度が低く、しかも電極幅を極小化すると、導電性フィラー間の接触点が少なくなり、電極の電気抵抗が高くなるという問題があった。
【0005】
そこで、この問題を解決するために、導電性フィラーを球状にするとともに鱗片状の金属粉末を添加した導電ペーストが提案されている。このような構成によると、導電ペーストがスクリーン版のメッシュ開口部をスムーズに通過できるようになる。したがって、メッシュの細かなスクリーン版を適用できるので、解像度の高い電極パターンを印刷することが可能となる。また、鱗片状の金属粉を添加することによって、導電性フィラー間の接触点が多くなるので、焼結後における電極の電気抵抗を低下させることができる。
【0006】
なお、このような構成は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3798979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の導電ペーストでは、電気抵抗の問題は改善されるもののメッシュの細かなスクリーン版を使用できず、解像度を向上させるという問題は依然として解決されていなかった。これは、解像度を上げるためにメッシュの細かなスクリーン版を用いると、鱗片状の金属粉末がスクリーン版の開口部に目詰まりを起こすからである。
【0009】
本発明は上記問題を解決し、良好な導電性を発現し、かつ、スクリーン印刷法においても高い解像性を発現できる導電ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、球状のガラスフリットの表面に金属膜を設けた第1の導電性フィラーと、球状の金属からなる第2の導電性フィラーと、有機系ビヒクルとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、導電ペーストの焼成時に、第1の導電性フィラーのガラスフリットが溶融して、ガラスフリットの表面に設けた金属膜が破砕する。この破砕した金属膜は、互いに隣接する第2の導電性フィラーの間に介在するので、隣接する第2の導電性フィラーどうしの電気的な接続点が多くなる。したがって、焼結後の電極パターンの電気抵抗を低下させることができる。
【0012】
また、第1および第2の導電性フィラーを球状にすることにより、スクリーン印刷法による成膜時において、スクリーン版の開口部(メッシュ)の通過が容易になるので、メッシュの細かなスクリーン版の適用が可能となり、高解像度のスクリーン印刷が実現できる。
【0013】
すなわち、本発明によれば、良好な導電性と、高解像度のスクリーン印刷とを同時に可能とする導電ペーストを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施の形態における導電性ペーストに用いる第1の導電性フィラーの断面図
【図2】同第1の導電性フィラーの球状のガラスフリットの溶融前後を示す断面図
【図3】同導電ペーストの焼成後を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一実施の形態における導電性ペーストに用いる第1の導電性フィラーの断面図、図2は、同第1の導電性フィラーの球状のガラスフリットの溶融前後を示す断面図、図3は同導電ペーストの焼成前後を示す断面図である。
【0017】
本発明の導電ペーストは、図1〜図3に示すように、表面に金属膜12を設けた球状のガラスフリット11からなる第1の導電性フィラー10と、球状の金属からなる第2の導電性フィラー23と、有機系ビヒクルとを主成分とする混合物から構成されている。第1の導電性フィラー10と第2の導電性フィラー23の総含有量は、導電ペースト100重量%に対して85重量%以上である。第2の導電性フィラー23である球状の金属は、一次粒子の平均粒径が0.003mm以下の球状金属粉体で構成されている。
【0018】
この球状金属粉体は、導電性の高い球状金属粉体であればいずれでも適用できる。好ましくは銀を主成分とする球状銀系粉体が有用である。
【0019】
本実施の形態に用いられる球状のガラスフリット11は、融点が600℃以下、望ましくは400〜600℃で溶融可能なものであればいずれでも適用できる。図2(a)は、第1の導電性フィラー10の溶融前の状態を示す断面図であり、図2(b)は、第1の導電性フィラー10の溶融後の状態を示す断面図である。ガラスフリット11が溶融すると、図2(b)に示すようになる。
【0020】
このような第1の導電性フィラー10を構成する球状のガラスフリット11の材料としては、硼珪酸鉛ガラス、硼珪酸ビスマスガラス等が挙げられる。球状のガラスフリット11の粒径は、一次粒子の平均粒径が0.005mm以下のものを用いる。この球状のガラスフリット11の表面には金属膜12を形成するが、この形成方法としては、スパッタ法、めっき法、蒸着法などが適用できる。中でも、スパッタ法や蒸着法などの乾式法が望ましい。
【0021】
本実施の形態に用いられる金属膜12の材料としては、一般によく知られている導電性の高い金属であればいずれも適用できるが、中でも銀が好適である。
【0022】
金属膜12の膜厚は、導電ペーストの焼成工程で、球状のガラスフリット11が溶融したときに破砕しやすい厚さであればよい。用いる金属の破砕特性により、膜厚は異なるが、例えば、銀を用いた場合は、0.0005〜0.003mmにすればよい。
【0023】
このような第1の導電性フィラー10と第2の導電性フィラー23を用いた場合、導電ペーストの焼成時に、図2(b)において、球状のガラスフリット11が溶融して破砕した金属膜12が、図3に示すように、球形金属粉体である第2の導電性フィラー23の間に介在する。すなわち、第2の導電性フィラー23どうしの電気的な接触点が増加し、導電性の良好な焼結体が得られる。
【0024】
本実施の形態において用いる有機系ビヒクルは、樹脂と溶剤との混合物である。この有機系ビヒクルとしては、第1の導電性フィラー10と、第2の導電性フィラー23とが均一に分散混合され、かつ沈降しづらい分散安定性に優れるものがよい。このような樹脂としては、ニトロセルロース、エチルセルロース、カルボキメチルセルロース等のセルロース系樹脂;アクリル系樹脂;ブチラール系樹脂;フェノール樹脂;アルキッド樹脂;ロジンエステル樹脂等、あるいはこれら樹脂の混合物が挙げられる。以上に説明した樹脂を溶剤に溶解したものを有機系ビヒクルとしている。
【0025】
溶剤としては、樹脂が可溶のものであればよく、例えば、N−メチルー2−ピロリドン、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、コエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ターピネオール、フタル酸ジエチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、あるいは、これらの溶剤を2種以上混合した混合用材が挙げられる。
【0026】
以上に説明した導電ペーストを用いてスクリーン印刷法でガラスやセラミックなどの基板上に配線電極を形成するには、導電ペーストからなる配線パターンを基板上に印刷したのち、基板を例えば400〜600℃に加熱して導電ペーストを焼成することによって得られる。本発明の導電ペーストを用いることにより、配線幅が0.03〜0.20mm、配線間隔が0.05mmの高解像度の配線電極を基板上に形成することができる。
【実施例1】
【0027】
(導電ペーストの調製)
エチルセルロースをαテルピネオールに溶解させた有機系ビヒクルに、一次粒子の平均粒径が0.005mmの球状銀粉体を第1の導電性フィラー10として加えて回転攪拌脱泡機を用いて混合する。さらに、表面に厚さ0.003mmの銀を成膜した硼珪酸鉛ガラスからなる球状のガラスフリット11を第2の導電性フィラー23として加えて混合したものを3本ロールミルに通した後、目開き0.05mmのステンレス製フィルタを用いて濾過して導電ペーストを調製した。なお、球状銀粉体と球状のガラスフリット11との合計含有率は、導電ペースト100重量%に対して85重量%とした。
【0028】
ここで、球状銀粉体と球状のガラスフリット11との配合比を以下のように変えたA、B、C3種類の導電ペーストを用意した。
(A)球状銀粉体:球状のガラスフリット=70:15
(B)球状銀粉体:球状のガラスフリット=60:25
(C)球状銀粉体:球状のガラスフリット=50:35
【0029】
(スクリーン印刷と焼成)
用意した3種類の導電性ペーストを、ガラス基板(旭硝子(株)製の「PD200」基板)の上に、スクリーン印刷法にて配線間隔0.05mm、配線幅が0.02〜0.20mmの範囲において0.02mm間隔の配線パターンを印刷した。
【0030】
次に、配線パターンを印刷したガラス基板を恒温槽に入れ、150℃で30分加熱して溶剤を揮発させた後に、600℃の焼結炉に移して30分間加熱焼結した。焼結後の配線電極の電気抵抗を測定した。
【0031】
その結果、A、B、C3種類の導電ペーストで形成した配線電極は、いずれも配線幅が0.03mmの良好な解像度が得られた。
【0032】
(比較例)
本発明の導電ペーストと、従来の導電ペーストとを比較するために、以下に示す組成からなる導電ペースト(D)を実施例1と同様の調整方法で作成したのち、それを用いて実施例1と同様の方法で基板上に配線電極を形成した。なお、有機系ビヒクルは実施例1と同様のものを用いた。また、球状銀粉体とガラスフリットと鱗片状銀粉体の合計含有率は、導電性ペースト100重量%に対して85重量%とした。
(D)球状銀粉体:ガラスフリット:鱗片状銀粉体(平均粒径0.03mm)=60:15:10
【0033】
導電ペーストDを用いて作成した配線電極の解像度を測定したところ、配線幅0.07mm以上では解像するが、それ以下の配線幅ではつぶれて解像していなかった。また、配線電極の電気抵抗を測定したところ、実施例1の導電ペースト(A、B,C)で作成したものと比較して30%低かった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、電子機器に用いる電気回路の電極材料として有用である。
【符号の説明】
【0035】
10 第1の導電性フィラー
11 ガラスフリット
12 金属膜
23 第2の導電性フィラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状のガラスフリットの表面に金属膜を設けた第1の導電性フィラーと、球状の金属からなる第2の導電性フィラーと、有機系ビヒクルとを含むことを特徴とする導電ペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−192441(P2011−192441A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55732(P2010−55732)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】