説明

導電ロールの製造方法、ならびに導電ロールを有する電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】 シリコーンゴムのように低分子のオリゴマーを揮発する場合、長期にわたりそのオリゴマーが付着して積層すると固化して被膜を形成することによって照射効率が著しく阻害されるなどの問題を生じる。
【解決手段】 芯金の周囲に未加硫状態のゴムを被覆させた状態のロールを加熱硬化させる方法において、前記ゴムロールの中心が、赤外線ヒータの重力方向にない位置に配置され、回転させた状態で赤外線照射し加熱硬化することを特徴とする導電ロールの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に使用される円筒体形状の導電ロールおよびその製造方法に関する。詳しくは、赤外線ランプを使用し弾性体を加熱硬化する製造方法であり、赤外線ランプを長期にわたり照射効率を落とすことなく効率的に使用するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いたプリンターにおいては、画像形成体である感光ドラムが帯電ロールにより均一に帯電され、レーザー等により静電潜像を形成する。次に、現像容器内の現像剤が現像剤塗布ロール及び現像剤規制部材により適正電荷で均一に現像ロール上に塗布され、感光ドラムと現像ロールとの接触部で現像剤の転写(現像)が行われる。その後感光ドラム上の現像剤は、転写ロールにより記録紙に転写され、熱と圧力(加圧ロールと定着ロール)により定着され、感光ドラム上に残留した現像剤はクリーニングブレードによって除かれ、一連のプロセスが完了する。
【0003】
電子写真装置においては、種々の弾性ローラが使用されており、それらのローラは加硫ゴムにより構成されている。導電ゴムロールなどは、加硫によるゴム部の温度上昇や温度分布によって、ゴム部内における硬化速度や分布の均一性が大きく変化し、その物性に大きな影響がある。例えば、現像ロールは、その外周部の円周方向に均一な電気抵抗値が要求されており、硬化速度や硬化時における圧力分布の均一性がその物性に大きく作用していた。そのために、ゴムロールの加熱方法においては、電気抵抗値などの物性を均一にするなどの目的で従来より様々な工夫がされている。
【0004】
例えば、特許文献1は、未加硫のゴムロールを移動させながら加熱槽内で加熱して、このゴムロールを加硫するゴムロールの加硫装置において、前記ゴムロールの軸方向と水平方向に、このゴムロールを搬送経路に沿って搬送するコンベヤを設け、前記搬送経路の上方及び下方から前記ゴムロールの前方及び後方に向けて、所定角度だけ傾斜させて遠赤外線を照射しゴムロールの外表面からゴム層をさらに加熱することにより加硫する加熱装置を設けたことを特徴とするゴムロールの加硫装置を紹介し、これによりゴムロールの周方向より均一に加熱することができる、としている。
【0005】
しかし、加硫ゴムは加熱硬化するときに低分子成分を揮発し、発ガスするものも多くその種類によっては加熱装置の工夫を必要とする。たとえば、シリコーンゴムのように低分子のオリゴマーを揮発する場合、長期にわたりそのオリゴマーが付着して積層すると固化して被膜を形成するなどを生じる。その場合、熱源がハロゲンランプのようなものの場合揮発成分がランプ表面に直接被膜を形成したり、ランプカバーなど熱源と加硫物の間に位置するものに被膜を形成するによって照射効率が著しく阻害されるなどの問題を生じる。とくにコンベヤー型の加硫設備とした場合、ゴム加硫物がヒータの真下を通過することがあるために熱源の汚染は避けることができない。また、熱源を汚さないように吸気や排気により上昇気流を上下左右に乱す方法も取ることができるが、過剰に吸気や排気をおこなうことで熱効率が悪くなるなどの問題が生じる。
【特許文献1】特開2000−271937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、低分子成分を揮発し発ガスするような種類のゴムを加硫した場合にも、熱発生源を汚すことが無く長期にわたり良好な状態で加硫を継続できる製造方法を提供することにあり、その製造方法によって得られる弾性ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は芯金の周囲に未加硫状態のゴムを被覆させた状態のロールを加熱硬化させる方法において、前記ゴムロールの中心が、赤外線ヒータの重力方向にない位置に配置され、回転させた状態で赤外線照射し加熱硬化することを特徴とする導電ロールの製造方法である。
【0008】
前記赤外線ヒータと未加硫ゴムロールを略平行に配置し、ゴムロールの軸芯長手方向と水平線方向のなす角γが90度以上270度以下である位置に設置され、加熱硬化することを特徴とする導電ロールの製造方法である。
【0009】
また、前記赤外線ヒータと未加硫ゴムロールを略平行に配置し、ゴムロールの軸芯長手方向が水平方向に設置され、かつ赤外線ヒータからゴムローラの中心位置を結ぶ線と赤外線ヒータから重力方向のなす角θが15度以上345度以下である位置に設置し、加熱硬化することを特徴とする導電ロールの製造方法である。さらには、ゴムロールの中心が、排気ダクトの吸気部から重力方向に配置されていることを特徴とする導電ロールの加熱装置が好ましい。前記の加熱方法により、加熱硬化したことを特徴とする導電ロールである。現像ロールが装着されてなり、該現像ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像ロールを画像形成体に接触させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、該現像ロールが、前記導電ロールを用いていることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジである。現像ロールが装着されてなり、該現像ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像ロールを画像形成体に接触させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、該現像ロールが、前記導電ロールを用いることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、従来の技術である加硫設備のように、低分子成分を揮発し発ガスするような種類のゴムを加硫した場合にも、熱発生源を汚すことが無く長期にわたり良好な状態で加硫を継続する製造方法を実現する。これらにより、低コストで品質の良い導電ロールを成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
これまで加硫ゴムを加熱硬化するときには、低分子成分を揮発し、発ガスする種類のゴムの場合、加熱装置の吸気や排気を強化することで発生熱源や加熱炉を汚さないように加熱装置の工夫を必要としてきた。しかしながら、吸気や排気を強化することで熱効率が悪くなり、必要以上に電力を消費してしまいそれが直接コストに反映するなどの問題を含んでいた。
【0012】
本発明者らは先述の目的を達成するために鋭意研究を行なった結果、未加硫状態のゴムを被覆させた状態のロールを加熱硬化させる方法において、加硫物と熱源である赤外線ヒータの位置関係を適切に配置することで、前述の諸問題を解決できることを見出した。
【0013】
本発明に従えば、芯金の周囲に未加硫状態のゴムを被覆させた状態のロールを加熱硬化させる方法において、前記ゴムロールの中心が、赤外線ヒータの重力方向にない位置に配置され、回転させた状態で赤外線照射し加熱硬化することで、熱発生源を汚すことが無く長期にわたり良好な状態で加硫を継続する製造方法を実現することを特徴としている。赤外線ヒータと未加硫ゴムロールを略平行に配置し、ゴムロールの軸芯長手方向と水平線方向のなす角γが90度以上270度以下である位置に設置され、加熱硬化することを特徴とする導電ロールの製造方法である(加熱法1)。図1に、「ゴムロールの軸芯長手方向と水平線方向のなす角γ」について図示する。赤外線ヒータの長手方向が水平方向になるようにし、赤外線照射面が重力方向に向くように配置する。赤外線ヒータの長手方向とゴムロールの長手方向が略平行であり、ゴムロールの中心が赤外線ヒータの重力方向に位置するときγ=0°とする。ゴムロールの長手方向が水平線方向からずれた角度をγとする。γが90度以上270度以下であるときに良好な加熱硬化条件を長時間にわたり維持することができる。γが90度未満、または270度より大きいと未加硫ゴムからの揮発成分が上昇気流に流され、赤外線ヒータまたは赤外線ヒータカバーなどに付着するため照射効率が悪くなってしまう。このとき、赤外線ヒータと未加硫ゴムロール表面との距離は10mmから150mmにセットして加硫をおこなう。未加硫ゴムロールの表面温度は50℃から300℃になるように調整し、必要であれば温度制御をしながら照射をおこなう。好ましくは100℃から250℃である。赤外線ヒータと未加硫ゴムロールがともに垂直方向に平行に配置して照射する場合、未加硫ゴムロール表面の上下方向に温度むらが生じることがある。そこでゴムロール周囲の気流を制御することやハロゲンランプの設計で温度勾配を設けるなどの工夫が必要である。また、赤外線ヒータと未加硫ゴムロールを略平行に配置し、ゴムロールの軸芯長手方向が水平方向に設置され、かつ赤外線ヒータからゴムローラの中心位置を結ぶ線と赤外線ヒータから重力方向のなす角θが15度以上345度以下である位置に設置し、加熱硬化することを特徴とする導電ロールの製造方法である(加熱法2)。図2に「赤外線ヒータからゴムローラの中心位置を結ぶ線と赤外線ヒータから重力方向のなす角θ」について図示する。赤外線ヒータの長手方向が水平方向になるようにし、赤外線照射面が重力方向に向くように配置する。赤外線ヒータの長手方向とゴムロールの長手方向が略平行であり、ゴムロールの中心が赤外線ヒータの重力方向に位置するときθ=0°とする。このときγ=0°とθ=0°は同じ状態である。赤外線ヒータからゴムローラの中心位置を結ぶ線と赤外線ヒータから重力方向のなす角をθとしている。θが15度以上345度以下であるときに良好な加熱硬化条件を長時間にわたり維持することができる。好ましくは、θが30度以上330度以下のときである。θが15度未満、または345度より大きいと未加硫ゴムからの揮発成分が上昇気流に流され、赤外線ヒータまたは赤外線ヒータカバーなどに付着するため照射効率が悪くなってしまう。上昇気流に巻き込まないようにするには少なくとも15度以上345度以下の傾斜角が必要であり、好ましくは30度以上330度以下である。このときゴムローラ表面と赤外線ヒータの距離によってその影響に差が出ることになるが、通常ワーク表面とヒータの距離は10mmから150mm、好ましくは30mmから80mmの距離であるので15度以上の傾斜角度をつけることで、その距離の影響を極めて小さくすることができる。さらには、ゴムロールの中心が、排気ダクトから重力方向に配置されていることを特徴とする導電ロールの加熱装置である。図2、図3に「ゴムロールの中心が、排気ダクトから重力方向に配置されていること」の一例を図示する。ゴムロールの中心が、排気ダクトから重力方向に配置されることで揮発成分の上昇気流が乱されることが無くそのまま排気ダクト内に到達する。そのために、最小限の吸気力で揮発成分の除去を行なうことができる。ゴムロールの中心が、排気ダクトから重力方向以外の方向に配置されると、上昇気流を排気ダクト内に吸気するためには大きな吸気力を必要とし無駄な電力を費やすことになる。さらに、ゴムロールの周囲に対流が発生するために、ゴムロールの温度低下を促すことになる。尚図中では、赤外線ヒータとゴムロールが1対1の構成になっているが、かならずしもこれに限定されるものではなく、本発明の条件を満たすものであれば、赤外線ヒータを複数並べるなどを施した連続の加熱装置にも対応することができる。さらには前記の加熱方法により、加熱硬化したことを特徴とする導電ロールである。本発明の方法に係わる未加硫ゴム組成物は常温で液状のゴム材料を用いることができる。例えば、オレフィン系ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムが挙げられる。なかでも、液状のシリコーンゴム材料を好適に用いることができる。未加硫状態のゴム材料の降伏応力が50Pa以上600Pa以下であり、少なくともカーボンブラックを含むシリコーンゴムであることを特徴とする導電ロールの製造方法である。降伏応力のより好ましい範囲は、100Pa以上400Pa以下である。この範囲にある場合、前述の加硫方法で加熱硬化を行なうと寸法精度を維持し、良好な導電ロールを製造することができる。
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態である加熱法1が適用された装置を示す概略図である。「ゴムロールの軸芯長手方向と水平線方向のなす角γ」を示している。
【0016】
図2は、本発明の実施形態である加熱法2が適用された装置を示す概略図である。「赤外線ヒータからゴムローラの中心位置を結ぶ線と赤外線ヒータから重力方向のなす角θ」を示している。
【0017】
図3は、本発明の実施形態が適用された装置を示す概略図である。ゴムロールの軸芯長手方向と水平線方向のなす角γが90度であり、ゴムロールの中心が、排気ダクトから重力方向に配置されている状態の一例を示している。
【0018】
図4に本発明の製造方法にて成形された表面層付き弾性ロールの構造の一例を模式図に図示する。本発明の製造方法により成形された弾性ロールは中心に軸芯体として、通常、金属などの導電性材料で形成される軸芯体101を有し、軸芯体101の外周面上に弾性層(基層)102が固定され、この弾性層102の外周面に導電性表面層(表面層)103を積層した構造に構成される。
【0019】
図5に赤外線ヒータで加熱したときのローラ表面の昇温状態を示す。矢印は成形初期の昇温到達温度から1万本成形後における昇温到達温度の減衰率を表す。
【0020】
図6は、本発明の実施形態の塗工方法が適用された装置を示す概略図である。
【0021】
コラム1には円筒状の軸芯体101の外周面に塗布液を吐出するリング形状の塗工ヘッド4が取り付けられている。ワーク下保持軸2とワーク上保持軸3がローラの軸芯体101を直立に保持した状態で塗工ヘッド4の中心を上下動するのと同時に塗工ヘッド4から材料が供給され軸芯体上にゴム層5が形成される。図では上方に移動と同時にゴム層が形成されているが、必ずしもこの限りではない。
【0022】
図7は、本発明の弾性ロールを現像ロールとして用いた現像装置として用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0023】
この画像形成装置では、潜像担持体としての感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電ロール22によってそこを通過した感光ドラム21の領域が一様に帯電され、更にこの帯電領域において、静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能な現像装置35によって現像剤たるトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化(顕在化)される。
【0024】
現像には、露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像などの方式が利用できる。可視化された感光ドラム21上のトナー像(画像)は、転写ロール29によって紙などの転写材33に転写される。トナー像を転写された転写材33は、定着ロール32と加圧ロール36により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。転写ロール29は、感光ドラム21のトナー像を保持する領域に、転写材33をその裏面から押当てて、トナー像を転写紙の表面に転写させるもので、感光ドラムのトナー像を保持する領域と逆に帯電していることで、トナー像の転写が促進される。転写材33の感光ドラム21の表面への押し当ては、感光ドラム21と転写ロール29とが接触している部分に、これらの回転に伴って、転写材33が自動的に挿入されることにより達成される。
【0025】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21に対して上記のプロセスを繰り返すことで、同一画像のコピーや、新たな画像の転写を行なうことができる。
【0026】
図示した例では、現像装置35は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像容器34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像ロール25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0027】
尚、現像ロール25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置35においては、弾性を有する現像剤供給ロール26が、現像容器34内で、弾性ブレード27の現像ロール25表面との当接部に対し現像ロール25の回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。現像剤供給ロール26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ロール25へのトナー28供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。本実施形態においては、芯金上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの現像剤供給ロール26を用いた。
【0028】
この現像剤供給ロール26の現像ロール25に対する当接幅としては、1〜8mmが有効であり、また、現像ロール25に対してその当接部において相対速度をもたせることが好ましく、本実施形態においては、当接幅を3mmに設定し、現像剤供給ロール26の周速として現像動作時に50mm/s(現像ロール25との相対速度は130mm/s)となるように駆動手段(図示せず)により所定タイミングで回転駆動させている。
【0029】
通常、現像容器34と現像ロール25、現像剤供給ロール26、トナー28、弾性ブレード27などが一体となったプロセスカートリッジとして使用され、部品交換等はプロセスカートリッジの状態でおこなわれる。さらに、感光ドラム21、廃トナー容器31、帯電ロール22を含んだ現像装置35のようなプロセスカートリッジも用いられる。
【0030】
<各種測定方法>
<未加硫ゴムローラ表面温度測定法>
回転したゴムロールの長手方向中央部に放射温度計(ジャパンセンサー社製:焦点距離100mm、スポット径φ1)の焦点スポットが当たるようにセッティングし、温度上昇カーブを測定した
<降伏応力測定法>
粘弾性測定装置による液状ゴム材料の降伏応力測定法を以下に記す。
【0031】
粘弾性測定装置にはHaake社製RheoStress600を用いた。
【0032】
材料約1gを採取し試料台の上にのせ、コーンプレートを徐々に近づけて、試料台から約50μmの位置で測定ギャップを設定した(コーンプレートにはφ35mm、傾斜角度1°のモノを用いた)。そのとき、まわりに押し出された材料を奇麗に除去し測定に影響の出ないようにした。
【0033】
材料温度が25℃になるようにプレート台の温度は設定され、試料をセットしてから10分間放置後、測定を開始した。
【0034】
試料にかける応力は0.00Paからスタートし50000Paまでの範囲(周波数は1Hz)を、180秒かけて変動させ、そのときのG'貯蔵弾性率、G"損失弾性率、位相差tanδの変化を32ポイント測定した。G'ははじめ線形粘弾性領域で一定の値となり、その後G'貯蔵弾性率とG"損失弾性率が交差する点の応力値を読み取り、降伏応力とした。
【実施例1】
【0035】
〔弾性層ゴム材料〕
弾性層の形成には液状のシリコーンゴムを用いた。
【0036】
液状シリコーンゴム材料(DY35−1265) 100質量部
カーボンブラック (三菱化学製MA11) 10質量部
上記の配合物を自公転型ミキサーを用いて5分間混合脱泡し成形に用いた。このときの材料の降伏応力を測定したところ300Paであった。
【0037】
〔製造方法〕
軸芯体には鉄表面に化学ニッケルメッキを施したものを使用し、表面にプライマーを塗布(DY39−051:東レダウコーニングシリコーン社製)し、電気炉で150度、30分の熱処理を行った。プライマー処理後の軸芯体(ワーク)の周囲にリング塗工機を用いて被覆厚み3mm、長さ250mmの液状ゴム材料層を形成した。
【0038】
未加硫ゴム層を形成後、ゴムロールの軸芯長手方向と水平方向の傾斜角γが90度なるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。
【0039】
同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。
【0040】
さらに、成形したローラを電気炉で200℃×2時間の加硫を行ない画像評価用のローラとした。
【0041】
〔表面層の形成〕
ポリオール 100質量部
(商品名:タケラック(登録商標)TE5060;三井武田ケミカル社製)
イソシアネート 77質量部
(商品名:コロネート(登録商標)2521;日本ポリウレタン株式会社製)
カーボンブラック 24質量部
(商品名:MA100;三菱化学社製)
ウレタン粒子 24質量部
(商品名:C400;根上工業社製)
上記原料混合液にMEKを加えサンドミルで1時間分散した。分散後さらにMEKを加え固形分20%〜30%の範囲で(膜厚が20μmとなるように)調整したものを導電性表面層の原料液とした。この導電性表面層の原料液中に弾性ロールを浸漬して、導電性弾性層の外表面をコーティングした後、引上げて自然乾燥させた。次いで、140℃にて60分間加熱処理することで、コーティングされた導電性表面層の原料の硬化を行ない、導電性表面層を導電性弾性層の外周面上に積層させて、9点平均の表面粗さ(Rz)9.2μmの導電性表面層を形成したのち、ゴムの両端部から10mmをカットして現像ロールとし、画像形成装置に組み込み画像評価をおこなった。
【実施例2】
【0042】
実施例1と同様にして未加硫ゴム層を形成後、ゴムローラの中心位置と赤外線ヒータの重力方向のなす角θが30°になるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。
【実施例3】
【0043】
実施例1と同様にして未加硫ゴム層を形成後、ゴムローラの中心位置と赤外線ヒータの重力方向のなす角θが15°になるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。
【実施例4】
【0044】
実施例1と同様にして未加硫ゴム層を形成後、ゴムローラの中心位置と赤外線ヒータの重力方向のなす角θが90°になるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。
【実施例5】
【0045】
実施例1と同様にして未加硫ゴム層を形成後、ゴムローラの中心位置と赤外線ヒータの重力方向のなす角θが180°になるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。
【実施例6】
【0046】
弾性層の形成には以下の材料を用いた。
【0047】
液状シリコーンゴム材料(DY35−1265) 100質量部
カーボンブラック (三菱化学製MA11) 16質量部
上記の配合物を自公転型ミキサーを用いて5分間混合脱泡し成形に用いた。このときの材料の降伏応力を測定したところ600Paであった。
【0048】
実施例1と同様の成形方法で未加硫ゴム層を形成後、ゴムロールの軸芯長手方向と水平方向の傾斜角γが90度なるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。
【実施例7】
【0049】
弾性層の形成には以下の材料を用いた。
【0050】
液状シリコーンゴム材料(DY35−1265) 100質量部
このときの材料の降伏応力を測定したところ10Paであった。
【0051】
実施例1と同様の成形方法で未加硫ゴム層を形成後、ゴムロールの軸芯長手方向と水平方向の傾斜角γが90度なるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。
【実施例8】
【0052】
弾性層の形成には以下の材料を用いた。
【0053】
液状シリコーンゴム材料(DY35−1265) 100質量部
カーボンブラック (三菱化学製MA11) 5質量部
上記の配合物を自公転型ミキサーを用いて5分間混合脱泡し成形に用いた。このときの材料の降伏応力を測定したところ50Paであった。
【0054】
実施例1と同様の成形方法で未加硫ゴム層を形成後、ゴムロールの軸芯長手方向と水平方向の傾斜角γが90度なるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。
【0055】
(比較例1)
未加硫ゴム層を形成後、赤外線ヒータから重力方向にむかう直線からなす角0°に配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。このとき到達温度の減衰率は16%であった。画像評価においては、ローラ表面に弾性層からの染み出しと思われる個所にトナーが付着し、画像上にがさつきがみられた。
【0056】
(比較例2)
未加硫ゴム層を形成後、赤外線ヒータと平行になるようにして、ゴムロールの軸芯長手方向と水平方向の傾斜角γが40度なるように配置して30rpmで回転させ、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)で4分間加熱硬化させて肉厚3mmの導電性弾性層を形成した。同様にして1万本の成形を繰り返し、昇温効率の評価をおこなった。1万本成形後のローラを実施例1と同様にして表面層を形成し画像評価をおこなった。このとき到達温度の減衰率は12%であった。画像評価においては、比較例1と同様にローラ表面上にトナーが付着し、画像上にがさつきがみられた。
【0057】
<実施例及び評価結果>
実施例1〜4、ならびに比較例1〜2における1万本成形後の昇温カーブ到達温度における減衰率を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
A:到達温度の減衰率は1%未満であるもの
B:到達温度の減衰率は1%以上3%未満のもの
C:到達温度の減衰率は3%を超えるもの
<画像評価方法・評価結果>
得られた現像ローラの画像評価は、現像カートリッジに現像ローラとして組み込み、HP社製 Color Laser Jet3700を用いて評価用画像を出力し、画像評価に用いた。
【0059】
なお、評価用画像には、ベタ画像、ハーフトーン画像を使用し、以下の内容で評価した。
【0060】
○:画像上全く問題の無いもの
×:画像にがさつきが見られ問題となるもの
【0061】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態の加熱方法1が適用された装置を示す概略図である。
【図2】実施形態の加熱方法2が適用された装置を示す概略図である。
【図3】比較例2で用いた加熱方法を適用した装置を示す概略図である。
【図4】実施形態の製造方法における現像ロールの2層構造を模式的に表す図である。
【図5】実施形態の加熱方法における昇温状態を示す概略図である。
【図6】実施形態の成形法方を適用した装置を示す概略図である。
【図7】本発明の現像装置および本発明のプロセスカートリッジを用いた画像形成装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0063】
1 コラム
2 ワーク下保持軸
3 ワーク上保持軸
4 リング形状の塗工ヘッド
5 ゴム層
101 軸芯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の周囲にゴム材料を被覆させた状態のロールを加熱硬化させる方法において、前記ゴムロールの軸中心が、赤外線ヒータの重力方向に投影した範囲からはずれた位置に配置され、回転させた状態で赤外線照射し加熱硬化することを特徴とする導電ロールの製造方法。
【請求項2】
ゴム材料の降伏応力が50Pa以上600Pa以下であり、少なくともカーボンブラックを含むシリコーンゴムであることを特徴とする請求項1記載の導電ロールの製造方法。
【請求項3】
前記赤外線ヒータと未加硫ゴムロールを略平行に配置し、ゴムロールの軸芯長手方向と水平線方向のなす角γが90度以上270度以下である位置に設置され、加熱硬化することを特徴とする請求項1記載の導電ロールの製造方法。
【請求項4】
前記赤外線ヒータと未加硫ゴムロールを略平行に配置し、ゴムロールの軸芯長手方向が水平方向に設置され、かつ赤外線ヒータからゴムローラの中心位置を結ぶ線と赤外線ヒータから重力方向のなす角θが15度以上345度以下である位置に設置し、加熱硬化することを特徴とする請求項1記載の導電ロールの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4記載の加熱方法において、前記ゴムロールの中心が、排気ダクトから重力方向に配置されていることを特徴とする導電ロールの加熱装置。
【請求項6】
請求項1〜5記載の加熱方法により、加熱硬化したことを特徴とする導電ロール。
【請求項7】
現像ロールが装着されてなり、該現像ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像ロールを画像形成体に接触させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、該現像ロールが、請求項6に記載の導電ロールを用いていることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項8】
現像ロールが装着されてなり、該現像ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像ロールを画像形成体に接触させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、該現像ロールが、請求項6に記載の導電ロールを用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−334029(P2007−334029A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166071(P2006−166071)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】