説明

導電体

【課題】放熱性を向上させることが可能な導電体を提供する。
【解決手段】本発明の導電体10は、電線12と、前記電線12の外周面と密着しつつ当該電線12を収容する鞘管14と、前記鞘管14の配置姿勢における上面に設けられ、当該鞘管14の上方から降りかかる粒子状物質の安息角θr以上の角度θdで水平面に対して傾斜する傾斜面26と、を備える。このような傾斜面26には、粒子状物質が堆積層を形成することができず、鞘管14からの放熱が阻害されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電体としては、下記特許文献1に記載のものが知られている。この導電体は、複数の電線と、この電線を包囲する編組線と、電線及び編組線を包囲するコルゲートチューブを備えている。かかる導電体は、例えば電気自動車に搭載して、インバータやモータなどの機器間を電気的に接続する。
【特許文献1】特開2004−172476公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の導電体においては、通電時に電線で発生する熱は、電線から編組線、コルゲートチューブへと伝達されて、コルゲートチューブから導電体の外部に放散される。しかしながら、上記構成によると、電線と編組線との間、及び編組線とコルゲートチューブとの間に空気層が存在する。空気層は熱伝導率が比較的小さいため、電線で発生した熱がコルゲートチューブの内部にこもって、電線が高温となることが懸念される。
【0004】
電線の温度上昇値に上限が定められている場合には、電線の直径を大きくすることにより通電時の発熱量を低減させることが考えられる。しかし、導電体全体が大型化してしまうという課題が新たに生じてしまう。
【0005】
さらに、当該導電体を車両の床下に配置する場合には、車両の走行に伴って巻き上げられた砂や泥などの塵埃が、導電体の配置上面に降りかかって堆積層を形成し得る。この場合、導電体の表面が塵埃により被覆されるため、導電体の外部への熱放散が阻害されることとなる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであって、放熱性を向上させることが可能な導電体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、導電体であって、電線と、前記電線の外周面と密着しつつ当該電線を収容する鞘管と、前記鞘管の配置姿勢における上面に設けられ、当該鞘管の上方から降りかかる粒子状物質の安息角以上の角度で水平面に対して傾斜する傾斜面と、を備える。
【0008】
本発明によれば、通電時に電線で発生した熱は、当該電線から鞘管へ伝達され、鞘管から導電体の外部に放散される。ここで、電線と鞘管とは密着しているため、両者の間に隙間が形成されている場合に比べて、電線から鞘管への熱伝導率を向上させることができ、導電体の放熱性を向上させることができる。
【0009】
さらに、本発明によれば、鞘管の配置姿勢における上面は傾斜面となっており、この傾斜面が水平面に対して傾斜する角度は、鞘管の上方から降りかかる粒子状物質の安息角(粒子状物質が自発的に崩れることなく安定を保つ傾斜の限界角度)以上となっている。これにより、例えば当該導電体を車両の床下に配置した場合にも、鞘管の上面に降りかかる砂や泥などの粒子状物質は堆積層を形成することができず、傾斜面に沿って滑り落ちることとなる。その結果、鞘管の表面が粒子状物質により被覆されることがないため、導電体からの放熱が阻害されることはない。
【0010】
本発明の実施態様としては、以下の構成が好ましい。
前記傾斜面が水平面に対して傾斜する角度は40度以上としてもよい。
【0011】
鞘管の上方から降りかかる粒子状物質のうち比較的安息角が大きいものとして、砂(ウェット状態)、セメントなどが考えられる。一般に、砂(ウェット状態)やセメント(ポルトランドセメント)の安息角は40度とされている。したがって、本発明の構成のように、傾斜面が水平面に対して傾斜する角度を40度以上とすることにより、当該傾斜面に降りかかった砂やセメントなどの粒子状物質は堆積層を形成することができない。その結果、鞘管の表面が砂やセメントにより被覆されることがなく、導電体からの良好な放熱を実現することができる。
【0012】
また、前記電線は、芯線と、前記芯線の外周面を覆う絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外周面を覆う編組線と、を含むものとしてもよい。
【0013】
上記構成によれば、通電時に電線から生じ得る電磁波を編組線が遮断することができ、他の機器への影響を防止することができる。
【0014】
また、前記編組線は、前記絶縁被覆と密着しているものとしてもよい。
このような構成によれば、絶縁被覆と編組線とが密着して両者の間に隙間が形成されないため、芯線で発生した熱を、絶縁被覆を介して編組線、ひいては鞘管へ良好に伝達することができる。
【0015】
また、前記鞘管は合成樹脂製としてもよい。
これにより、導電体を軽量化及び低コスト化することができる。
【0016】
また、前記鞘管は、その外周面から突出し、水平面に対して傾斜する角度が前記傾斜面の傾斜角度以上である放熱フィンを有しているものとしてもよい。
【0017】
このように、鞘管の外周面から突出する放熱フィンを設けることにより、導電体からの放熱性を一層向上させることができる。ここで、放熱フィンが水平面に対して傾斜する角度を、鞘管の傾斜面の傾斜角度以上とすることにより、当該放熱フィン上に粒子状物質が堆積層を形成することがなく、良好な放熱を実現することができる。
【0018】
また、前記鞘管は、一対の半割鞘体が合体された構成としてもよい。
このような構成によれば、例えば管状に形成された鞘管に電線を挿通する場合に比べて、手間を掛けることなく電線を鞘管に収容することができる。
【0019】
また、前記一対の半割鞘体は、互いに対向する部位から外周側に突出する鍔部をそれぞれ有し、当該鍔部同士が固定されているものとしてもよい。
【0020】
上記構成によれば、半割鞘体の外周側に突出した鍔部同士を固定するため、当該固定作業を行うに際し、電線を破損するおそれがない。
【0021】
また、前記半割鞘体同士は、互いの前記鍔部同士が超音波溶着されることにより固定されているものとしてもよい。
【0022】
上記構成によれば、鍔部同士を固定するために、別途固定部材を設ける必要がなく、半割鞘体同士を簡便に固定することができる。
【0023】
また、前記一対の半割鞘体のうちいずれか一方には、他方側に突出する嵌合凸部が形成され、他方には前記嵌合凸部と嵌合可能な嵌合凹部が形成され、前記嵌合凸部は、前記嵌合凸部の突出する方向と交差する方向に突出する係合部を有し、前記嵌合凹部の内面には、前記嵌合凸部が嵌合した状態において、前記係合部よりも前記嵌合凸部の嵌合方向の後側に位置して、前記嵌合凸部に離脱する方向の力が加えられたときに、前記係合部と当接する係合受部が形成されていてもよい。
【0024】
上記構成によれば、嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合した状態において、嵌合凸部に離脱する方向の力が加えられたときに、係合部と係合受部が当接する。このため、嵌合凸部と嵌合凹部との抜け止めがされる。この結果、半割鞘体同士を簡便に固定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の導電体によれば、放熱性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3を参照して説明する。
図1は、導電体10の全体構成を示す斜視図である。図1に示すように、導電体10は、電線12と、電線12を収容する鞘管14とを備えている。この導電体10は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両(図示せず)の床下に設置され、インバータ装置(図示せず)やモータ(図示せず)などの機器同士を電気的に接続するものである。なお、図1においては、2つの導電体10,10が、互いに離間した状態で、クランプ40に把持された構成を示している。
【0027】
電線12は、中心に配される芯線16と、当該芯線16の外周面を覆う絶縁被覆18と、当該絶縁被覆18の外周面を覆う編組線20とから構成されている。芯線16は、例えばアルミニウム合金や銅合金などの金属からなる。この芯線16は、複数本の細線を螺旋状に撚り合わせた撚り線、又は棒状の単線とされる。一方、絶縁被覆18は、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの合成樹脂からなる筒状体である。
【0028】
編組線20は、全体として筒状をなしており、金属細線をメッシュ状に編み込んだものである。この編組線20は、金属細線の有する可撓性により、径方向及び長手方向に対して伸縮が可能となっている。
【0029】
図2は、導電体10の構成を示す断面図である。図2に示すように、電線12を構成する芯線16、絶縁被覆18、及び編組線20は、円形状の断面を有している。絶縁被覆18は、芯線16の外周面に密着した状態で当該芯線16を覆っている。また、編組線20は、絶縁被覆18の外周面に密着した状態で当該絶縁被覆18を覆っている。
【0030】
電線12を収容する鞘管14は、例えばナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、PBTなどの合成樹脂からなる略筒状体である。鞘管14は、その中央部に電線12を収容するための収容部15を有している。収容部15は、円形状の断面を有し、鞘管14の長手方向に沿って延びる空隙を有している。この収容部15の直径は、電線12の直径とほぼ同一となっている。
【0031】
鞘管14は、図2に示すように、一対の半割鞘体22,24が合体された構成となっている。より詳細には、一対の半割鞘体22,24は、鏡面対称をなす構成を有し、図2における左右方向から互いに合体されることで鞘管14を構成している。
【0032】
したがって、導電体10は、電線12を中央に挟む形で、半割鞘体22,24を合体させることで形成される。このとき、電線12が鞘管14の収容部15に収容されると、編組線20の外周面と収容部15の内周面とが密着した状態となる。言い換えれば、鞘管14は、電線12との間に隙間を設けることなく当該電線12を収容部15に収容していることとなる。
【0033】
半割鞘体22,24は、互いに対向する部位から外周側(図2における上端部側と下端部側)に突出する鍔部22a,24aをそれぞれ有している。鍔部22a,24aは、矩形状の断面を有し、半割鞘体22,24の長手方向に沿って延設されている(図1参照)。これら鍔部22a,24aがその長手方向全体に亘って超音波溶着されることで、半割鞘体22,24同士は固定されている。
【0034】
上記した鍔部22a,24aは、図2に示すように、クランプ40に設けられた嵌合受部42に嵌め込まれている。これにより、導電体10はクランプ40に把持された状態となっている。なお、導電体10は、鞘管14のうち鍔部22a,24a以外の部分は、クランプ40の内側面との間に隙間が形成されており、外気に晒された状態となっている。
【0035】
図3は、鞘管14の構成を説明する模式図である。図3に示すように、本実施形態の導電体10は、鞘管14の上端部側の鍔部22a,24aと下端部側の鍔部22a,24aとを結ぶ直線が鉛直面VPと一致した姿勢で、車両の床下に取り付けられている。言い換えれば、導電体10は、その長手方向が水平面HPにほぼ平行をなす姿勢で、車両(図示せず)の床下に設置されている。
【0036】
鞘管14は、図3に示す配置姿勢における上面が傾斜面26を構成している。傾斜面26は、半割鞘体22,24のそれぞれに設けられており、鞘管14の上端部中央から径方向外縁(図3における左右方向の縁部)にかけて下向きに傾斜している。この傾斜面26は、水平面HPに対する傾斜角度θdが40度となっている。この傾斜角度θd=40度は、以下に示す実験及びデータに基づいて設定されている。
【0037】
導電体10を車両の床下に設置した場合、車両の走行に伴って地表から巻き上がった粒子状物質が、鞘管14の上方から降りかかることが予想される。そこで、鞘管14に降りかかることが想定される粒子状物質のうち、安息角が比較的大きく堆積し易い砂(ウェット状態)やポルトランドセメントを、傾斜面26に降りかける実験を行った。その結果、傾斜面26が水平面HPに対して傾斜する傾斜角度θdを40度以上とすることで、砂(ウェット状態)やポルトランドセメントは傾斜面26上に堆積層を形成することなく下方に滑り落ちた。一般に、砂(ウェット状態)やポルトランドセメントの安息角θrは40度とされており、上記実験結果を支持するものである。この実験結果等に基づき、鞘管14の傾斜面26の傾斜角度θdを40度に設定した。
【0038】
また、鞘管14には、図3に示すように、その外周面から突出する放熱フィン28が形成されている。放熱フィン28は、半割鞘体22,24ごとにそれぞれ設けられている。この放熱フィン28は、鞘管14の配置姿勢における上部側から順に第1放熱フィン28a、第2放熱フィン28b、第3放熱フィン28cが所定の間隔を空けて配置された構成となっている。各放熱フィン28a,28b,28cは、断面略矩形状の板状部材であり、鞘管14の長手方向に沿って延設されている(図1参照)。
【0039】
第1放熱フィン28aは、鞘管14の上面から下方に傾斜する形で突出している。第1放熱フィン28aの上面は、傾斜面26が鞘管14の外周側に延長されることで構成されている。この第1放熱フィン28aが水平面HP1に対して傾斜する角度θ1は、傾斜面26の傾斜角度θdと同じ40度である。
【0040】
第2放熱フィン28bは、鞘管14の高さ方向のほぼ中央部から下方に傾斜する形で突出している。この第2放熱フィン28bが水平面HP2に対して傾斜する角度θ2は、傾斜面26の傾斜角度θdと同じ40度となっている。
【0041】
第3放熱フィン28cは、鞘管14の下面から下方に傾斜する形で突出している。この第3放熱フィン28cが水平面HP3に対して傾斜する角度θ3は、傾斜面26の傾斜角度θdと同じ40度となっている。
【0042】
次に、本実施形態の作用、効果について説明する。
本実施形態に係る導電体10では、電線12に通電することにより当該電線12で発生した熱は、電線12から鞘管14へ伝達され、鞘管14から導電体10の外部に放散される。ここで、本実施形態では、電線12と鞘管14とが密着している。これにより、電線12と鞘管14との間に隙間が形成されている場合に比べて、電線12から鞘管14への熱伝導率を向上させることができる。その結果、電線12で発生した熱は、電線12から鞘管14へ良好に伝達されるため、鞘管14内にこもることがなく、導電体10の放熱性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、鞘管14の配置姿勢における上面を構成する傾斜面26は、水平面HPに対する傾斜角度θdが当該鞘管14の上方から降りかかる粒子状物質の安息角θr以上となっている。これにより、導電体10を車両の床下に設置した場合に、鞘管14の上方から降りかかる粒子状物質が、傾斜面26上に堆積層を形成することがない。その結果、鞘管14の表面が粒子状物質により被覆されることがなく、導電体10からの放熱が阻害されることはない。
【0044】
また、本実施形態では、傾斜面26の水平面HPに対する傾斜角度θdが40度となっている。これに対して、鞘管14の上方から降りかかる粒子状物質のうち比較的安息角が大きい、つまり比較的堆積し易い、砂(ウェット状態)やセメント(ポルトランドセメント)の安息角θrは40度とされている。したがって、傾斜面26の傾斜角度θdを40度とすることにより、当該傾斜面26に降りかかった砂やセメントなどの粒子状物質が堆積層を形成することを確実に防止することができる。なお、本実施形態では傾斜面26の傾斜角度θdを40度に設定したが、傾斜角度θdは40度以上であれば、いずれの角度に設定しても同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、電線12は、芯線16と、芯線16の外周面を覆う絶縁被覆18と、絶縁被覆18の外周面を覆う編組線20とから構成されている。これにより、通電時に芯線16から生じ得る電磁波を編組線20が遮断することができ、他の機器への影響を防止することができる。
【0046】
特に、本実施形態では、編組線20は、絶縁被覆18の外周面と密着した状態となっているため、芯線16で発生した熱を、絶縁被覆18を介して編組線20、ひいては鞘管14へ良好に伝達することができる。
【0047】
また、本実施形態では、鞘管14は合成樹脂製とされているため、導電体10全体として軽量化及び低コスト化することができる。
【0048】
また、本実施形態では、鞘管14には、その外周面から突出する放熱フィン28が設けられているため、導電体10からの放熱性を一層向上させることができる。さらに、各放熱フィン28a,28b,28cがそれぞれ水平面HP1,HP2,HP3に対して傾斜する角度θ1,θ2,θ3は、傾斜面26の傾斜角度θdと同じ40度とされている。したがって、当該放熱フィン28に砂やセメントなどの粒子状物質が堆積層を形成することがない。
【0049】
また、本実施形態では、鞘管14は、一対の半割鞘体22,24が合体した構成とされているため、例えば管状に形成された鞘管に電線を挿通する場合に比べて、手間を掛けることなく電線12を鞘管14に収容することができる。
【0050】
また、本実施形態では、半割鞘体22,24は、互いに対向する部位から外周側に突出する鍔部22a,24aをそれぞれ有しており、これら鍔部22a,24a同士が固定されている。このような構成によれば、鍔部22a,24aが半割鞘体22,24の外周側に突出してなるため、鍔部22a,24a同士、つまりは半割鞘体22,24同士を固定する際に、電線12を破損するおそれがない。
【0051】
特に、本実施形態では、鍔部22a,24a同士が超音波溶着されているため、別途固定部材を設ける必要がなく、半割鞘体22,24同士を簡便に固定することができる。
【0052】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る導電体10Aの構成を示す断面図である。本実施形態においては、鞘管14Aは、第1放熱フィン28aのみからなる放熱フィン60を有している。上記以外の構成については、前記実施形態1と同様である。前記実施形態1と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0053】
本実施形態によれば、鞘管14Aに設けられた放熱フィン60が、一組の第1放熱フィン28aのみからなるため、構造が簡略化され、導電体10Aのコスト削減に寄与することができる。このような鞘管14Aは、実施形態1の鞘管14ほど大きな放熱性を必要としない場合に好適に用いられる。
【0054】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る導電体10Bの構成を示す断面図である。本実施形態においては、鞘管14Bは、その外周面から突出する放熱フィンを有していない構成となっている。上記以外の構成については、前記実施形態1と同様である。前記実施形態1と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0055】
本実施形態によれば、鞘管14Bは放熱フィンを有しておらず、極めて単純な構造となっている。したがって、導電体10Bのコスト削減に大きく貢献することができる。このような鞘管14Bは、例えば通電時の電線12からの発熱量が小さい場合などに好適に用いられる。
【0056】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る導電体10Cの構成を示す断面図である。本実施形態においては、鞘管14Cは、その配置姿勢における上端部側の鍔部62,64の側面62a,64aが傾斜した構成となっている。上記以外の構成については、前記実施形態1と同様である。前記実施形態1と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0057】
鍔部62,64の側面62a,64aは、当該鍔部62,64の上端部から下端部にかけて図6における左右方向に裾広がりに傾斜している。つまり、鍔部62,64は、上端部が尖った三角形の断面を有している。ここで、鍔部62,64の側面62a,64aが水平面HP4に対して傾斜する角度θ4は、傾斜面26の傾斜角度θdより大きい角度となっている。
【0058】
上記構成によれば、鞘管14Cの上方から降りかかる粒子状物質が、鍔部62,64においても堆積層を形成することがない。その結果、導電体10Cは、鞘管14C全体から良好な放熱を実現することができる。
【0059】
<実施形態5>
次に、本発明の実施形態5を図7を参照して説明する。図7は、実施形態5に係る導電体10Dの構成を示す断面図である。実施形態1では、鍔部22a,24aの対向面がその長手方向全体に亘って超音波溶着されることで、半割鞘体22,24同士が固定されている構成とした。
【0060】
これに対して、本実施形態においては、鍔部22a,24aの対向面に、嵌合凹部72d及び嵌合凸部74dがそれぞれ形成され、両者が嵌合されることで、半割鞘体22,24同士が固定される構成とした。上記以外の構成については、前記実施形態1と同様である。前記実施形態1と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0061】
図7における上側の鍔部24aには、鍔部22a(一対の半割鞘体のうち他方側)に向かって突出する嵌合凸部74dが形成されている。嵌合凸部74dは鍔部24aの長手方向全体に延びている。一方、図7における上側の鍔部22aには、鍔部22aの表面を凹設することで嵌合凹部72dが形成されている。嵌合凹部72dは、嵌合凸部74dと対向するように、鍔部22aの長手方向全体に延びて形成され、嵌合凸部74dと嵌合可能となっている。
【0062】
また、図7における下側の鍔部24aには、嵌合凹部72dが形成され、これと対向する下側の鍔部22aには、嵌合凸部74dが形成されている。
【0063】
図8は、嵌合凸部74dと嵌合凹部72dとが嵌合した状態を示す拡大図である。嵌合凸部74dの図8に示す上下方向(嵌合凸部74dの突出する方向と交差する方向)の両端には、上下方向にそれぞれ突出する係合部84がそれぞれ形成されている。これにより、嵌合凸部74dは全体として断面円形状をなしている。
【0064】
一方、嵌合凹部72dの内面において、嵌合凹部72dの先端側(図8の左側)には、嵌合凹部72dの内側(嵌合時において嵌合凸部74dに向かう方向)に突出する係合受部82がそれぞれ対向して形成されている。これにより、嵌合凹部72dは全体として断面円形状をなしている。
【0065】
図8の上下方向において、対向する両係合受部82の突出端同士の間隔bは、両係合部84を含む嵌合凸部74dの長さaより小さく設定されている。また、突出端同士の間隔bは嵌合凸部74dの基端部の長さcとほぼ同じ又は長さcより若干大きく設定されている。
【0066】
上記構成によって、半割鞘体22,24同士を固定するには次のようにする。まず、嵌合凸部74dと嵌合凹部72dとが対向するように鍔部24aと鍔部22aとを位置合わせする。次に、鍔部24a,鍔部22a同士を押圧する。これによって、嵌合凸部74dは嵌合凹部72dの幅(係合受部82の突出端同士の間隔b)を広げるように鍔部22aを弾性変形させつつ、嵌合凹部72dに押し込まれていく。さらに嵌合凸部74dが嵌合凹部72dに押し込まれていくと、鍔部22aが弾性復帰し、嵌合凸部74dとの嵌合が完了する。
【0067】
嵌合が完了した状態においては、係合受部82は係合部84よりも図8の左側(嵌合凸部74dの嵌合方向の後側)に位置する。これにより、嵌合凸部74dに嵌合凹部72dから離脱する方向の力が加えられたときには、係合部84の左側の面が係合受部82の右側の面に当接し、嵌合凸部74dと嵌合凹部72dとの抜け止めがされる。以上の動作により、嵌合凸部74dと嵌合凹部72dとを嵌合させることで、半割鞘体22,24同士を簡便に固定することが可能である。
【0068】
また、本実施形態においては、嵌合凹部72dと嵌合凸部74dとは、鍔部24a又は鍔部22aに形成されている。このため、嵌合凹部72dと嵌合凸部74dとを嵌合させるためには、鍔部22a,24a同士を押圧してやればよいから、嵌合作業時に電線12を破損するおそれがない。
【0069】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電線12を、芯線16と絶縁被覆18と編組線20とからなる構成としたが、電線の構成はこれに限られるものではない。例えば、電線は、芯線16と絶縁被覆18とからなるものとしてもよく、芯線16のみからなるものとしてもよい。また、編組線20に代えて、絶縁被覆18の外周面に金属テープを巻きつける構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、放熱フィン28a,28b,28cの傾斜角度θ1,θ2,θ3が、傾斜面26の傾斜角度θdと同一である構成を例示したが、傾斜面26の傾斜角度θd以上であれば任意の角度とすることができる。また、放熱フィン28a,28b,28cごとに異なる角度で傾斜するものとしてもよい。
(3)上記実施形態では、鍔部22a,24a同士を超音波溶着により固定するものとしたが、固定手段はこれに限られず、例えば他の溶接法を用いたり、接着剤や接着シートを用いたりしてもよい。
(4)上記実施形態では、導電体10の軽量化を図るため合成樹脂製の鞘管14を採用したが、金属製の鞘管を用いてもよい。金属製の鞘管を用いることにより、車両の走行に伴い地表から跳ね上がる砂利などから電線12をより強固に保護することができる。
(5)上記実施形態では、導電体10を車両の床下に設置する場合を例示したが、本発明の導電体10の使用態様はこれに限られるものではない。
(6)上記実施形態5では、嵌合凹部72dと嵌合凸部74dとを嵌合させることで、半割鞘体22,24同士を固定する構成としたが、鍔部22a,24a同士を固定するために溶着、接着を併用しても良い。
(7)上記実施形態5では、嵌合凹部72d,嵌合凸部74dを鍔部22a,24aにそれぞれ形成する構成としたが、鍔部22a,24a以外の箇所に形成されていてもよく、半割鞘体22,24の対向面にそれぞれ形成されていればよい。
(8)嵌合凸部74d及び嵌合凹部72dはそれぞれ断面円形状をなす構成としたが、これに限定されない。例えば、嵌合凸部74d及び嵌合凹部72dはそれぞれ断面菱形状をなす構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態1に係る導電体の全体構成を示す斜視図
【図2】導電体の構成を示す断面図
【図3】鞘管の構成を説明する模式図
【図4】本発明の実施形態2に係る導電体の構成を示す断面図
【図5】本発明の実施形態3に係る導電体の構成を示す断面図
【図6】本発明の実施形態4に係る導電体の構成を示す断面図
【図7】本発明の実施形態5に係る導電体の構成を示す断面図
【図8】嵌合凸部と嵌合凹部とが嵌合している状態を示す拡大図
【符号の説明】
【0071】
10…導電体
12…電線
14…鞘管
16…芯線
18…絶縁被覆
20…編組線
22,24…半割鞘体
22a,24a…鍔部
26…傾斜面
28…放熱フィン
72d…嵌合凹部
74d…嵌合凸部
82…係合受部
84…係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、前記電線の外周面と密着しつつ当該電線を収容する鞘管と、前記鞘管の配置姿勢における上面に設けられ、当該鞘管の上方から降りかかる粒子状物質の安息角以上の角度で水平面に対して傾斜する傾斜面と、を備える導電体。
【請求項2】
前記傾斜面が水平面に対して傾斜する角度は40度以上である請求項1に記載の導電体。
【請求項3】
前記電線は、芯線と、前記芯線の外周面を覆う絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外周面を覆う編組線と、を含む請求項1又は請求項2に記載の導電体。
【請求項4】
前記編組線は、前記絶縁被覆と密着している請求項3に記載の導電体。
【請求項5】
前記鞘管は合成樹脂製とされる請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の導電体。
【請求項6】
前記鞘管は、その外周面から突出し、水平面に対して傾斜する角度が前記傾斜面の傾斜角度以上である放熱フィンを有している請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の導電体。
【請求項7】
前記鞘管は、一対の半割鞘体が合体された構成である請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の導電体。
【請求項8】
前記一対の半割鞘体は、互いに対向する部位から外周側に突出する鍔部をそれぞれ有し、当該鍔部同士が固定されている請求項7に記載の導電体。
【請求項9】
前記半割鞘体同士は、互いの前記鍔部同士が超音波溶着されることにより固定されている請求項8に記載の導電体。
【請求項10】
前記一対の半割鞘体のうちいずれか一方には、他方側に突出する嵌合凸部が形成され、他方には前記嵌合凸部と嵌合可能な嵌合凹部が形成され、前記嵌合凸部は、前記嵌合凸部の突出する方向と交差する方向に突出する係合部を有し、前記嵌合凹部の内面には、前記嵌合凸部が嵌合した状態において、前記係合部よりも前記嵌合凸部の嵌合方向の後側に位置して、前記嵌合凸部に嵌合凹部から離脱する方向の力が加えられたときに、前記係合部と当接する係合受部が形成されている請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の導電体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−56058(P2010−56058A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302875(P2008−302875)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】