説明

導電性の織布部材

【課題】電気部品の着脱を容易に行うことができる導電性の織布部材を提供する。
【解決手段】織布部材10を構成している多数の経糸、又は多数の緯糸のうち、複数の糸が導電性繊維の糸11、12によって形成される。複数の導電性繊維の糸11、12は、電気部品50のプラス側電極ピン51とマイナス側電極ピン52との間隔寸法Wに対応する間隔寸法Hを隔てて織布部材10の一端側から他端側にわたって連続して織り込まれる。複数の導電性繊維の糸11、12のうち、隣接する一方の導電性繊維の糸11が、バッテリー40のプラス極に接続線30を介して接続され、他方の導電性繊維の糸12が、バッテリー40のマイナス極に接続線31を介して接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用シートのカバー表皮、ルーフパネルの内装材、ドアトリムの内装材等に用いられる導電性の織布部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの周辺部を照明するために、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
これにおいては、車両用シートの着座面以外の適宜の位置に、樹脂フィルムを用いて可撓性に富むように形成されたEL発光素子が、貼着、溶着などの適宜の固定手段によって装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−125632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたものにおいては、シートの着座面以外の適宜の位置に、EL発光素子が、貼着、溶着などの適宜の固定手段によって装着される。
このため、EL発光素子を装着する作業や取り外す作業が厄介である。例えば、EL発光素子が故障した場合、EL発光素子を取り外し、その後、新たなEL発光素子を装着する作業に多くの手間や時間が必要となる。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、電気部品の着脱を容易に行うことができる導電性の織布部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る導電性の織布部材は、織布部材を構成している多数の経糸、又は多数の緯糸のうち、複数の糸が導電性繊維の糸によって形成され、
前記複数の導電性繊維の糸は、電気部品のプラス側電極ピンとマイナス側電極ピンとの間隔寸法に対応する間隔寸法を隔てて前記織布部材の一端側から他端側にわたって連続して織り込まれ、
前記複数の導電性繊維の糸のうち、隣接する一方の導電性繊維の糸が、バッテリーのプラス極に接続線を介して接続され、他方の導電性繊維の糸が、前記バッテリーのマイナス極に接続線を介して接続されることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、電気部品のプラス側電極ピンが、バッテリーのプラス極に接続され導電性繊維の糸に通電可能に接触された状態で織布部材に差し込まれ、電気部品のマイナス側電極ピンがバッテリーのマイナス極に接続される導電性繊維の糸に通電可能に接触された状態で織布部材に差し込まれることで、バッテリーの電流が電気部品に流れるようになる。
このようにして、電気部品のプラス側及びマイナス側電極ピンを導電性の織布部材に差し込んで、導電性繊維の糸に通電可能に接触させる簡単な作業によって、導電性の織布部材に電気部品を容易に装着することができる。
また、導電性の織布部材に対し電気部品のプラス側及びマイナス側電極ピンを引き抜く簡単な作業によって、導電性の織布部材から電気部品を容易に取り外すことができる。
さらに、導電性の織布部材の導電性繊維の糸が織り込まれている範囲において、電気部品の配設位置を自由に変更して使用することができる。
また、この発明の導電性の織布部材は、車両用シートのカバー表皮、ルーフパネルの内装材、ドアトリムの内装材等に用いることができる。
また、導電性の織布部材は剛体ではなく柔軟性を有するため、曲面への追従が容易で、例えば、ルーフパネルのサイド部の曲面に沿って導電性の織布部材を容易に装着することができる。
また、電気部品として例えば、LED等の発光部材を用いることによって、車室内を照明することができる。
【0008】
請求項2に係る導電性の織布部材は、請求項1に記載の導電性の織布部材であって、
導電性の織布部材の裏面には、電気部品のプラス側及びマイナス側の両電極ピンが差し込まれた状態で保持するための保持層が貼り付けられていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、導電性の織布部材の裏面に貼り付けられた保持層によって電気部品のプラス側及びマイナス側の両電極ピンを差し込み状態で保持することができる。
このため、導電性の織布部材から電気部品が不測に離脱することを防止することができる。
【0010】
請求項3に係る導電性の織布部材は、請求項2に記載の導電性の織布部材であって、
保持層は、発泡体によって形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、導電性の織布部材の裏面の保持層が発泡体によって形成されることによって、導電性の織布部材の裏面に対し保持層を発泡成形すると同時に導電性の織布部材の裏面に一体に貼り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例1に係る導電性の織布部材が車両用シートのカバー表皮に使用された状態を示す斜視図である。
【図2】同じく導電性の織布部材を示す斜視図である。
【図3】同じく図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】この発明の実施例1に係る導電性の織布部材がルーフパネルの内装材に使用させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0014】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、この実施例1に係る導電性の織布部材は、車両用シートのシートバック2のカバー表皮3の一部に使用される場合を例示するものであり、シートバック2のカバー表皮3の車内側の側部が導電性の織布部材10(以下単に織布部材という)によって形成されている。
【0015】
織布部材10は、多数の経糸と多数の緯糸とが相互に織り込まれて形成されている。
織布部材10を構成している多数の経糸、又は多数の緯糸のうち、複数の糸、この実施例1では、多数の緯糸のうち、複数の緯糸が導電性繊維の糸11、12によって形成されている。
複数の導電性繊維の糸11、12は、電気部品としての発光部材50(例えば発光ダイオード)のプラス側電極ピン51と、マイナス側電極ピン52との間隔寸法Wに対応する間隔寸法Hを隔てて織布部材10の左右方向の一端側から他端側にわたって連続して織り込まれている。
【0016】
図2に示すように、複数の導電性繊維の糸11、12において、上下に隣接する両導電性繊維の糸11、12のうち、一方(上側又は下側)の導電性繊維の糸11は、バッテリー40(例えば車載バッテリー)のプラス極に接続線30を介して接続されている。
また、他方(下側又は上側)の導電性繊維の糸12は、バッテリー40のマイナス極に接続線31を介して接続されている。
また、織布部材10の裏面には、単数又は複数の発光部材50のプラス側及びマイナス側の電極ピン51、52が織布部材10に差し込まれた状態で保持するための保持層20が貼り付けられている。
この実施例1において、保持層20は、発泡体(例えば、ポリオレフィン発泡体のような樹脂発泡体)によって形成されている。この場合、織布部材10の裏面に対し保持層20を発泡成形すると同時に織布部材10の裏面に保持層20が一体に貼り付けられる。
なお、バッテリー40と発光部材50とを繋ぐ電気回路には、オン・オフ用のスイッチSが必要に応じて配設される。
【0017】
この実施例1に係る導電性の織布部材は上述したように構成される。
したがって、電気部品としての単数又は複数の発光部材50のプラス側電極ピン51が、バッテリー40のプラス極に接続線30を介して接続された導電性繊維の糸11に通電可能に接触された状態で織布部材10に差し込まれる。
また、発光部材50のマイナス側電極ピン52が、バッテリー40のマイナス極に接続線31を介して接続された導電性繊維の糸12に通電可能に接触された状態で織布部材10に差し込まれる。
これによって、バッテリー40の電流が発光部材50に流れて発光部材50が点灯され、シートバック2の側方が照明される。
【0018】
前記したようにして、発光部材50のプラス側及びマイナス側電極ピン51、52を織布部材10に差し込んで、導電性繊維の糸11、12に通電可能に接触させる簡単な作業によって、織布部材10に、単数又は複数の発光部材50を容易に装着することができる。
また、織布部材10に対し発光部材50のプラス側及びマイナス側電極ピン51、52を引き抜く簡単な作業によって、織布部材10から発光部材50を容易に取り外すことができる。
【0019】
また、織布部材10の裏面に貼り付けられた保持層20によって発光部材50のプラス側及びマイナス側の両電極ピン51、52を差し込み状態で保持することができる。
このため、織布部材10から発光部材50が不測に離脱することを防止することができる。
【0020】
また、この実施例1において、織布部材10の裏面の保持層20が発泡体によって形成されることによって、織布部材10の裏面に対し保持層20を発泡成形すると同時に織布部材10の裏面に保持層20を一体に貼り付けることが可能となる。
【実施例2】
【0021】
次に、この発明の実施例2を図4にしたがって説明する。
この実施例2においては、図4に示すように、車両のルーフパネルの内装材の全て又は一部(例えば、左右両サイド部)が前記実施例1で述べた導電性の織布部材10と同一構造の導電性の織布部材110(以下単に織布部材という)によって構成されている。
そして、この実施例2においても、実施例1と同様にして、織布部材110は、多数の経糸と多数の緯糸とが相互に織り込まれて形成されている。そして、織布部材110を構成している多数の経糸、又は多数の緯糸のうち、複数の糸、この実施例2でも、多数の緯糸のうち、複数の緯糸が導電性繊維の糸111、112によって形成されている。
さらに、複数の導電性繊維の糸111、112は、電気部品としての発光部材150(例えば発光ダイオード)のプラス側及びマイナス側の両電極ピン(図示しない)の間隔寸法に対応する間隔寸法隔てて織布部材110の左右方向の一端側から他端側にわたって連続して織り込まれている。
この実施例2のその他の構成も実施例1と同様にして構成され、織布部材110の裏面には保持層(図示しない)が貼り付けられている。
【0022】
したがって、この実施例2においても、発光部材150のプラス側及びマイナス側電極ピンを織布部材110に差し込んで、導電性繊維の糸111、112に通電可能に接触させる簡単な作業によって、織布部材110に、単数又は複数の発光部材150を容易に装着することができる。
また、織布部材110に対し発光部材150のプラス側及びマイナス側電極ピンを引き抜く簡単な作業によって、織布部材110から発光部材150を容易に取り外すことができる。
また、織布部材110は、剛体ではなく柔軟性を有するため、ルーフパネルの両サイド部の曲面に沿って織布部材110を容易に装着することができる。
【0023】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、この発明の導電性の織布部材は、車両用シートのカバー表皮、ルーフパネルの内装材以外に、ドアトリムの内装材等に用いることができる。
そして、電気部品としては、プラス側及びマイナス側の電極ピンを有する電気部品であればよく、例えば、送風ファン等であってもよい。
また、織布部材10(110)の裏面に対し保持層20を発泡成形すると同時に織布部材10(110)の裏面に保持層20を一体に貼り付ける際に、所望とする立体形状に形成することもできる。
また、織布部材10(110)の裏面に対し接着剤によって保持層20を貼り付けてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 織布部材
11、12 導電性繊維の糸
20 保持層
30、31 接続線
40 バッテリー
50 発光部材(電気部品)
51 プラス側電極ピン
52 マイナス側電極ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布部材を構成している多数の経糸、又は多数の緯糸のうち、複数の糸が導電性繊維の糸によって形成され、
前記複数の導電性繊維の糸は、電気部品のプラス側電極ピンとマイナス側電極ピンとの間隔寸法に対応する間隔寸法を隔てて前記織布部材の一端側から他端側にわたって連続して織り込まれ、
前記複数の導電性繊維の糸のうち、隣接する一方の導電性繊維の糸が、バッテリーのプラス極に接続線を介して接続され、他方の導電性繊維の糸が、前記バッテリーのマイナス極に接続線を介して接続されることを特徴とする導電性の織布部材。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性の織布部材であって、
導電性の織布部材の裏面には、電気部品のプラス側及びマイナス側の両電極ピンが差し込まれた状態で保持するための保持層が貼り付けられていることを特徴とする導電性の織布部材。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性の織布部材であって、
保持層は、発泡体によって形成されていることを特徴とする導電性の織布部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107483(P2013−107483A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253589(P2011−253589)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】