説明

導電性エンドレスベルトおよびそれを用いた画像形成装置

【課題】難燃性だけでなく、耐折れ性にも優れた導電性エンドレスベルトおよびそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を基材樹脂として形成された導電性エンドレスベルトにおいて、基材樹脂としてポリアミド12を含有し、かつ、ハロゲン系難燃剤を添加してなる導電性エンドレスベルトおよびそれを用いた画像形成装置である。基材樹脂中に、ポリアミド12を50質量%以上含有することが好ましく、基材樹脂中に、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等の電子写真装置や静電記録装置等における静電記録プロセスにおいて、表面に静電潜像を保持した潜像保持体等の画像形成体表面に現像剤を供給して形成されたトナー像を、紙等の記録媒体へと転写する際に用いられる導電性エンドレスベルト(以下、単に「ベルト」とも称する)およびそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンター等における静電記録プロセスでは、まず、感光体(潜像保持体)の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙、OHP、印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
この場合、カラープリンターやカラー複写機においても、基本的には前記プロセスに従ってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね合わせて必要な色調を得るための工程が必要であり、この工程を行うためにいくつかの方式が提案されている。
【0004】
まず、第1には、モノクロ印刷を行う場合と同様に、感光体上にトナーを供給して静電潜像を可視化する際に、前記マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを順次重ねていくことにより現像を行い、感光体上にカラーのトナー像を形成する多重現像方式がある。この方式によれば比較的コンパクトに装置を構成することが可能であるが、この方式では階調の制御が非常に難しく、高画質が得られないという問題点がある。
【0005】
第2に、4つの感光ドラムを設け、各ドラムの潜像を夫々マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのトナーで現像することにより、マゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像の4つのトナー像を形成し、これらトナー像が形成された感光ドラムを1列に並べて各トナー像を紙等の記録媒体に順次転写して記録媒体上に重ねることにより、カラー画像を再現するタンデム方式がある。この方式は、良好な画像が得られるものの、4つの感光ドラムと、各感光ドラムごとに設けられた帯電機構および現像機構が1列に並べられた状態となり、装置が大型化するとともに高価なものとなる。
【0006】
図2にタンデム方式の画像形成装置の印字部構成例を示す。感光体ドラム1、帯電ロール2、現像ロール3、現像ブレード4、トナー供給ロール5およびクリーニングブレード6で構成する印字ユニットをイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBの各トナーに対応して4個並べており、駆動ローラ(駆動部材)9により循環駆動されて転写搬送ベルト10で搬送した用紙上に、トナーを順次転写しカラー画像を形成する。転写搬送ベルトの帯電および除電は夫々帯電ロール7および除電ロール8で行う。また、用紙をベルトへ吸着させるための用紙帯電には吸着ローラ(図示せず)が使用される。これらの対応により、オゾンの発生を抑えることができる。吸着ローラでは、用紙を搬送路から転写搬送ベルトに乗せるとともに、転写搬送ベルトへの静電吸着を行う。また、転写後の用紙分離は、転写電圧を低くすることにより用紙と転写搬送ベルトの吸着力を弱くして、曲率分離のみで行うことができる。
【0007】
転写搬送ベルト10の材料としては抵抗体と誘電体があり、夫々に長所、短所を持っている。抵抗体ベルトは電荷の保持が短時間であるため、タンデム型の転写に用いた場合、転写での電荷注入が少なく4色の連続する転写でも比較的電圧の上昇が少ない。また、次の用紙の転写に繰り返して使用されるときも電荷が放出されており、電気的なリセットは必要としない。しかし、環境変動により抵抗値が変化するため、転写効率に影響すること、用紙の厚さや幅の影響を受けやすいことなどが短所となっている。
【0008】
一方、誘電体ベルトの場合は注入された電荷の自然放出はなく、電荷の注入、放出とも電気的にコントロールしなければならない。しかし、安定に電荷が保持されるので、用紙の吸着が確実で高精度な紙搬送が行える。誘電率は温湿度への依存性も低いため、環境に対しても比較的安定な転写プロセスとなる。欠点は、転写が繰り返されるごとにベルトに電荷が蓄積されるため、転写電圧が高くなることである。
【0009】
第3に、紙等の記録媒体を転写ドラムに巻き付けてこれを4回転させ、周回ごとに感光体上のマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックを順次記録媒体に転写してカラー画像を再現する転写ドラム方式もある。この方式によれば比較的高画質が得られるが、記録媒体が葉書等の厚紙である場合には、これを前記転写ドラムに巻き付けることが困難であり、記録媒体種が制限されるという問題点がある。
【0010】
前記多重現像方式、タンデム方式および転写ドラム方式に対して、良好な画質が得られ、かつ装置が特に大型化するようなこともなく、しかも記録媒体種が特に制限されるようなこともない方式として、中間転写方式が提案されている。
【0011】
即ち、この中間転写方式は、感光体上のトナー像を一旦転写保持するドラムやベルトからなる中間転写部材を設け、この中間転写部材の周囲にマゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像を形成した4つの感光体を配置して4色のトナー像を中間転写部材上に順次転写することにより、この中間転写部材上にカラー画像を形成し、このカラー画像を紙等の記録媒体上に転写するものである。従って、4色のトナー像を重ね合わせて階調を調整するものであるから、高画質を得ることが可能であり、かつタンデム方式のように感光体を1列に並べる必要がないので装置が特に大型化することもなく、しかも記録媒体をドラムに巻き付ける必要もないので記録媒体種が制限されることもないものである。
【0012】
中間転写方式によりカラー画像の形成を行う装置として、中間転写部材として無端ベルト状の中間転写部材を用いた画像形成装置を図3に例示する。
【0013】
図3中、11はドラム状の感光体であり、図中矢印方向に回転するようになっている。この感光体11は、一次帯電器12によって帯電され、次いで画像露光13により露光部分の帯電が消去され、第1の色成分に対応した静電潜像がこの感光体11上に形成され、更に静電潜像が現像器41により第1色のマゼンタトナーMで現像され、第1色のマゼンタトナー画像が感光体11上に形成される。次いで、このトナー画像が、駆動ローラ(駆動部材)30により循環駆動されて感光体11と接触しながら循環回転する中間転写部材20に転写される。この場合、感光体11から中間転写部材20への転写は、感光体11と中間転写部材20とのニップ部において、中間転写部材20に電源61から印加される一次転写バイアスにより行われる。この中間転写部材20に第1色のマゼンタトナー画像が転写された後、前記感光体11はその表面がクリーニング装置14により清掃され、感光体11の1回転目の現像転写操作が完了する。以降、感光体が3回転し、各周回ごとに現像器42〜44を順次用いて第2色のシアントナー画像、第3色のイエロートナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次感光体11上に形成され、これが周回ごとに中間転写部材20に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が中間転写部材20上に形成される。なお、図3の装置にあっては、感光体11の周回ごとに現像器41〜44が順次入れ替わってマゼンタトナーM、シアントナーC、イエロートナーY、ブラックトナーBによる現像が順次行われるようになっている。
【0014】
次に、前記合成カラートナー画像が形成された中間転写部材20に転写ローラ25が当接し、そのニップ部に給紙カセット19から紙等の記録媒体26が給送される。これと同時に二次転写バイアスが電源29から転写ローラ25に印加され、中間転写部材20から記録媒体26上に合成カラートナー画像が転写されて加熱定着され、最終画像となる。合成カラートナー画像を記録媒体26へと転写した後の中間転写部材20は、表面の転写残留トナーがクリーニング装置35により除去され、初期状態に戻り次の画像形成に備えるようになっている。
【0015】
また、タンデム方式と中間転写方式とを組み合わせた中間転写方式もある。図4に、無端ベルト状の中間転写部材を用いてカラー画像の形成を行う中間転写方式の画像形成装置を例示する。
【0016】
図示する装置においては、感光体ドラム52a〜52d上の静電潜像を夫々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックにより現像する第1現像部54a〜第4現像部54dが、中間転写部材50に沿って順次配置されており、この中間転写部材50を図中の矢印方向に循環駆動させて、各現像部54a〜54dの感光体ドラム52a〜52d上に形成された4色のトナー像を順次転写することにより、この中間転写部材50上にカラーのトナー像を形成し、このトナー像を紙等の記録媒体53上に転写することにより、プリントアウトを行う。ここで、上記いずれの装置においても、現像に用いるトナーの配列順は特に制限されるものではなく、任意に選択可能である。
【0017】
なお、図中、符号55は、中間転写部材50を循環駆動するための駆動ローラ若しくはテンションローラを示し、符号56は記録媒体送りローラ、符号57は記録媒体送り装置、符号58は記録媒体上の画像を加熱等により定着させる定着装置を示す。また、符号59は中間転写部材50に電圧を印加する電源装置(電圧印加手段)を示し、この電源装置59は、トナー像を、感光ドラム52a〜52dから上記中間転写部材50に転写する場合と、中間転写部材50から記録媒体53上に転写する場合とで、印加する電圧の正負を反転させることができるようになっている。
【0018】
従来、かかる無端ベルト状の転写搬送ベルト10や中間転写部材20,50等として使用される導電性エンドレスベルトとしては、半導電性の樹脂フィルムベルトまたは繊維補強体を有するゴムベルトが主に用いられている。このうち樹脂フィルムベルトとしては、例えば、ポリカーボネート(PC)にカーボンブラックを混合したものや、ポリアルキレンテレフタレートを主たる樹脂として用いるもの、熱可塑性ポリイミドを主たる樹脂として用いるものなどが知られている。その中でも、ポリイミド樹脂やフッ素樹脂で作製されたベルトは、樹脂そのものが難燃樹脂のため、ベルト自体に難燃性を付与できている。
【0019】
しかしながら、ポリイミド樹脂やフッ素樹脂で作製されたベルトは、高価であり、さらに量産性が悪いという問題点がある。一方、一般的な熱可塑性樹脂で作られたベルトは材料、製法共に安価に作製することができるため、消費者のニーズに応えやすく、かかる一般的な熱可塑性樹脂に難燃性を付与することができれば装置自体の安全性が高まり、火災などのリスクを低減できる。また、ベルト物性(特に耐久性について)が難燃剤添加により低下する傾向にあり、耐久性と難燃性は相反する傾向にある。そこで、例えば、特許文献1には、難燃性が付与された耐久性に富む導電性シームレスベルトを提供することを目的として、カーボンブラック及び難燃剤を含有する層と、カーボンブラックを含有し且つ難燃剤を含有しない耐久性外側層とを有する積層体よりなるシームレスベルトが開示されている。
【0020】
また、ベルトには、耐久性などについて良好な物性が求められる。その方法として、例えば、特許文献2には、良好な屈曲耐久性に優れた導電性エンドレスベルトを提供することを目的として、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリアミドと熱可塑性エラストマーとのポリマーアロイ、または熱可塑性ポリアミドと熱可塑性エラストマーとのポリマーブレンドを基材とする導電性エンドレスベルトが開示されている。さらに、特許文献3には、剛性と柔軟性とを高度に両立させ、耐久時における割れの発生を防止しつつ、特に、高温高湿時における特性をより向上した導電性エンドレスベルトを提供することを目的として、熱可塑性ポリアミドとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」と称す)とのポリマーアロイ若しくはポリマーブレンド、または、これらのうちいずれかとポリアミド系熱可塑性エラストマーとのポリマーアロイ若しくはポリマーブレンドを基材とし、カーボンブラックが添加されてなる導電性エンドレスベルトが開示されている。
【特許文献1】特開平5−213504号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2001−350347号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2005−274752号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上記特許文献1では、耐折れ性向上のためエラストマーを配合しているが、ハロゲン系難燃剤を添加しているため物性が低下する。そのため、多層構成として、表層に難燃剤を非添加として剛性を保持しているものの、ポリエステル系の樹脂を使用しているため、耐折れ性に問題があった。
【0022】
また、ハロゲン系難燃剤添加時にアンチモン化合物を入れると難燃効果がアップすることが知られているが、アンチモン化合物はポリエステルの重合時に使用する触媒と同等の性質を有しており、ポリエステル系の樹脂を使用した場合、加水分解による分子量低下が発生し、剛性が下がるため、耐久性に難があり、特に、高温高湿下でより顕著にその傾向が出てしまうという問題点があった。
【0023】
また、特許文献2は、ポリアミドベースの導電性エンドレスベルトに関するものではあるが、難燃剤が無添加であり、さらに、特許文献3は、ポリアミドベースとABS樹脂のアロイ化した導電性エンドレスベルトに関するものではあるが、難燃剤が無添加であり、いずれも十分な難燃性が得られるものではなかった。
【0024】
そこで本発明の目的は、上記従来技術における問題を解消して、難燃性だけでなく、耐折れ性にも優れた導電性エンドレスベルトおよびそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者は、鋭意検討した結果、ポリアミド12を含有する基材樹脂に、特定の難燃剤を添加することで、難燃性に加えて、良好な耐折れ性についても確保できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0026】
すなわち、本発明の導電性エンドレスベルトは、熱可塑性樹脂を基材樹脂として形成された導電性エンドレスベルトにおいて、前記基材樹脂としてポリアミド12を含有し、かつ、ハロゲン系難燃剤を添加してなることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の他の導電性エンドレスベルトは、前記基材樹脂中に、ポリアミド12を50質量%以上含有することが好ましく、前記基材樹脂中に、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を含有することが好ましい。
【0028】
さらに、本発明においては、前記基材樹脂中に、エラストマー成分を含有することが好ましく、難燃助剤として、アンチモン化合物を含有することが好ましい。
【0029】
さらにまた、本発明においては、前記基材樹脂100質量部に対し、難燃剤と難燃助剤の総量として10〜50質量部含有することが好ましく、少なくとも基層と表層とを内側から順次備える積層構造を有する場合には、前記基層中にポリアミド12およびハロゲン系難燃剤を含有することが好ましい。
【0030】
本発明の画像形成装置は、前記記載の導電性エンドレスベルトを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、上記構成としたことにより、難燃性だけでなく、耐折れ性にも優れた導電性エンドレスベルトおよびそれを用いた画像形成装置を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
導電性エンドレスベルトには、一般に、ジョイントありのものとジョイントなしのもの(いわゆるシームレスベルト)とがあるが、本発明においてはいずれのものであってもよく、好ましくはシームレスベルトである。本発明の導電性エンドレスベルトは、前述したように、タンデム方式および中間転写方式の転写部材等として用いることができるものである。
【0033】
本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図2に参照符号10で示す転写搬送ベルトの場合、駆動ローラ9等の駆動部材により駆動され、これに伴い搬送される記録媒体上にトナーが順次転写され、カラー画像が形成される。
【0034】
また、本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図3に参照符号20で示す中間転写部材の場合、これを駆動ローラ30等の駆動部材により循環駆動させ、感光体ドラム(潜像保持体)11と紙等の記録媒体26との間に配設することで、前記感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体26へと転写する。なお、図3の装置は、上述したように、中間転写方式によりカラー印刷を行うものである。
【0035】
さらに、本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図4に参照符号50で示す中間転写部材の場合、感光体ドラム52a〜52dを備える現像部54a〜54dと紙等の記録媒体53との間に配設されて、駆動ローラ55等の駆動部材により循環駆動され、各感光体ドラム52a〜52dの表面に形成された4色のトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体53へと転写することで、カラー画像を形成する。なお、上記ではトナーが4色の場合について説明しているが、いずれの装置においても、トナーの色数が4色に限られないことは言うまでもない。
【0036】
本発明の導電性エンドレスベルトに用いることのできるポリアミド12は、耐摩耗性のよい材料として最も古くから使われている樹脂の一つであり、強度や耐衝撃性等にも優れており、市場で容易に入手することができる。ポリアミド12としては、例えば、宇部興産(株)製、商品名:UBESTA 3024U、東レ(株)製、商品名:リルサンAESN O TLおよびダイセル・ヒュルス(株)製、商品名:ダイアミドL2101などを好適に用いることができる。ポリアミド12(以下「PA12」と称する)は他のポリアミドに比べ環境変動における寸法安定性に優れ、加水分解し難く、難燃剤・難燃助剤を添加しても加水分解による物性劣化が生じ難い。特に、高温高湿環境下で、加水分解を抑制できる。かかるPA12を導電性エンドレスベルトの基材とすることで、抵抗のバラツキがなく、かつ、強度、特には屈曲耐久性に優れる導電性エンドレスベルトが得られる。尚、本発明に用いるPA12としては、好適には数平均分子量7000〜100000、より好適には13000〜40000の範囲内のものである。
【0037】
また、本発明の導電性エンドレスベルトにおいては、基材樹脂中に、ABS樹脂を含むことが好ましく、PA12とABS樹脂とのポリマーアロイまたはポリマーブレンドとして含まれることがさらに好ましく、特に、PA12とABS樹脂とのポリマーアロイとして含まれることが好ましい。これにより、剛性を高めることができる。本発明に使用できるABS樹脂は、耐衝撃性、寸法安定性に優れる熱可塑性樹脂であり、市場で容易に入手することができる。具体的には、例えば、ダイセルポリマー(株)製、商品名:セビアンV320、セビアンV680などを代表的に用いることができる。かかるABS樹脂を導電性エンドレスベルトの基材とすることで、抵抗のバラツキがなく、強度、特には耐屈曲性に優れ、かつ、高い寸法精度を有する導電性エンドレスベルトが得られる。
【0038】
さらに、PA12とABS樹脂とのポリマーアロイとしては、公知の方法で製造でき、また、PA12とABS樹脂を含むものであれば、他に添加される物質等も限定されるものではない。
【0039】
なお、基材樹脂におけるPA12とABS樹脂との好適配合比としては、質量比で99:1〜55:45の範囲内程度である。PA12とABS樹脂との配合比を上記範囲内とすることで、本発明による両樹脂の併用効果をより良好に得ることができる。
【0040】
本発明においては、基材樹脂中に、PA12を50質量%以上含有することが好ましく、PA12は、単独でも、ABS樹脂とのポリマーアロイまたはポリマーブレンドでもよい。PA12の含有量が50質量%未満であると、耐折れ性が低下することがあり、好ましくない。
【0041】
また、本発明の導電性エンドレスベルトに用いることのできるハロゲン系難燃剤としては、ベルト物性を落とさないで難燃性を達成できるものであれば特に限定されないが、例えば、臭素化フェノキシ系、臭素化ポリスチレン系、芳香族低分子型系、臭素化エポキシ系、臭素化エポキシ変性系が挙げられる。かかるハロゲン系難燃剤の具体例としては、例えば、臭素化フェノキシ化合物(三酸化アンチモン含有)として、(株)鈴裕化学製、商品名:ヒロマスター−F101、臭素化ポリスチレン化合物として、アルベマール日本(株)製、商品名:SAYTEX HP7010、芳香族低分子型難燃剤として、アルベマール日本(株)製、商品名:SAYTEX 8010、(株)鈴裕化学製、商品名:FCP1590(難燃助剤含有)、臭素化エポキシ化合物として、阪本薬品工業(株)製、商品名:SR−T3040等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、上記難燃剤の中でも、ベルトの物性を考慮すると臭素系難燃剤が好ましい。さらに、本発明においては、基材樹脂100質量部に対し、かかるハロゲン系難燃剤を8〜60質量部添加することが好ましい。難燃剤の添加量が8質量部未満であると、十分な難燃効果が得られない場合があり、一方、難燃剤の添加量が60質量部を超えると、ベルトの物性を損なう場合があり、好ましくない。さらに、本発明においては、上記ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤を添加することもできる。
【0042】
本発明のベルトでは、基材樹脂中にPA12およびハロゲン系難燃剤を含有することで、UL94規格においてVTM−2以上の難燃性を達成することができるものである。また、耐久性は難燃剤無添加のものに比べ悪化するが、ポリエステル系樹脂の場合と比較して、耐久性および耐折れ性が高いものである。
【0043】
本発明の導電性エンドレスベルトにおいては、エラストマー成分を含有することが好ましい。かかるエラストマー成分としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、例えば、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、スチレン系、アクリル系、ポリジエン系等の各種のものを挙げることができる。これにより、ベルトの柔軟性をアップできる。PA系熱可塑性エラストマーとして、例えば、宇部興産(株)製、商品名:PAE1201U(ポリアミドエラストマー)を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
また、本発明において、難燃助剤を配合することが好ましい。難燃助剤としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、アンチモン化合物を配合することが好ましい。これにより、効率よく難燃性を付与することができ、難燃効果を向上できる。かかるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、四酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)、アンチモン酸ソーダ等を挙げることができる。
【0045】
さらに、本発明においては、基材樹脂100質量部に対し、難燃剤と難燃助剤の総量として10〜50質量部含有することが好ましい。難燃剤と難燃助剤の総量が10質量部未満であると、十分な難燃効果が得られない場合があり、一方、難燃剤と難燃助剤の総量が50質量部を超えると、ベルトの物性を損なう場合があり、好ましくない。
【0046】
さらにまた、本発明のベルトは、単層構造および多層構造の何れもとることができるが、製造の容易性から単層であることが好ましい。また、少なくとも基層と表層とを内側から順次備える積層構造を有する多層構造の場合は、基層−表層間または基層の内層側に、他の層を含んでもよい。かかる他の層としては、例えば、表層と同様の構成の層を、基層の内層側に積層して用いることができる。また、基層と表層との間に接着層を設けてもよい。
【0047】
かかる少なくとも基層と表層とを内側から順次備える積層構造を有する多層構造の場合は、基層中にPA12およびハロゲン系難燃剤を含有させることが好ましい。これにより、基層に難燃性を付与し、表層により物性向上させることができ、柔軟性とその他の物性との両立が容易になる。さらに、単層の場合と比較して良好な表面性を有するベルトを実現することが可能となる。
【0048】
また、本発明のベルトにおいて、多層構造の基層が難燃性を付与する機能を有する層である場合は、かかる機能を十分に発揮させるために、基層の厚みは、好適にはベルト総厚みの70〜99%、より好適には80〜99%を占めるものとする。
【0049】
本発明のベルトにおける単層構造または多層構造を構成する各層には、その他の樹脂成分としては、ベルト材料として公知の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等を、1種単独または2種以上の混合にて適宜用いることができ、特に制限されるものではない。
【0050】
また、本発明のベルトを構成する各層には、さらに、相溶化剤が添加されていることが好ましく、これにより、PA12とABS樹脂とのアロイ/ブレンド性を高め、耐折れ性を向上することができる。かかる相溶化剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、グリシジルメタクリレート(GMA)または無水マレイン酸(MAH)を含むものの効果が大きく、好適である。具体的には例えば、日油(株)製、商品名:モディパーA4200、A4400、A8400等を挙げることができる。相溶化剤は、その他の特性を損なわない範囲で添加することができ、基材樹脂100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは1〜20質量部の範囲内である。
【0051】
さらに、本発明のベルトを構成する各層には、導電性を調整するために導電剤を配合することができる。かかる導電剤としては、特に制限されるものではなく、公知の電子導電剤やイオン導電剤等を適宜用いることができる。このうち電子導電剤としては、具体的には例えば、ケッチェンブラック,アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラ−(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウイスカー、黒鉛ウイスカー、炭化チタンウイスカー、導電性チタン酸カリウムウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカー、導電性酸化チタンウイスカー、導電性酸化亜鉛ウイスカー等の導電性ウイスカー等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、具体的には例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。
【0052】
また、高分子イオン導電剤としては、例えば、特開平9−227717号公報、特開平10−120924号公報、および、特開2000−327922号公報、特開2005−60658号公報等に記載されているものを用いることができるが、特に限定されない。
【0053】
具体的には例えば、(A)有機ポリマー材料、(B)イオン導電可能なポリマーまたはコポリマー、および、(C)無機または低分子量有機塩、からなる混合物を挙げることができ、ここで、成分(A)は、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアミド6等のポリアミド、ポリウレタンまたはポリエステルであり、成分(B)は、オリゴエトキシ化アクリレートもしくはメタクリレート、芳香族環についてオリゴエトキシ化されたスチレン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドまたはポリエステル−エーテルブロックコポリマーであり、また、成分(C)は、無機または低分子量有機プロトン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛またはアンモニウム塩であり、好ましくは、LiClO、LiCFSO、NaClO、LiBF、NaBF、KBF、NaCFSO、KClO、KPF、KCFSO、KCSO、Ca(ClO、Ca(PF、Mg(ClO、Mg(CFSO、Zn(ClO、Zn(PFまたはCa(CFSO等である。
【0054】
これらの中でも、成分(B)として、ポリエーテルアミド成分、ポリエーテルエステルアミド成分またはポリエステル−エーテルブロックコポリマー成分を含有する高分子イオン導電剤が好適であり、さらに、これに加えて成分(C)として低分子イオン導電剤成分を含有することが好ましい。また、かかるポリエーテルアミド成分およびポリエーテルエステルアミド成分としては、ポリエーテル成分が(CH−CH−O)を含有し、ポリアミド成分がポリアミド12またはポリアミド6を含有するものが特に好ましく、さらに、成分(C)の低分子イオン導電剤成分としてはNaClOを含有する高分子イオン導電剤が特に好適である。かかる高分子イオン導電剤は、例えば、Irgastat(登録商標)P18およびIrgastat(登録商標)P22(共に、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレーテッド製)として市場で容易に入手可能である。
【0055】
また、ポリオレフィンのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合等を介して繰り返し交互に結合してなるブロック共重合体も、本発明における高分子イオン導電剤として好適に用いることができる。かかるポリオレフィンとしては、ポリマーの両末端にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有するポリオレフィンが挙げられ、特には、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好適である。
【0056】
また、親水性ポリマーとしては、官能基として水酸基を有するポリオキシアルキレン等のポリエーテルジオール、両末端カルボキシル基のポリアミドとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルエステルアミド、ポリアミドイミドとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルアミドイミド、ポリエステルとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルエステル、ポリアミドとポリエーテルジアミンとから構成されるポリエーテルアミド等が使用でき、中でも、水酸基を有するポリオキシアルキレンが好ましい。例えば、両末端水酸基のポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレン(ポリプロピレングリコール)等である。
【0057】
本発明において高分子イオン導電剤として使用できるかかるブロック共重合体は、ペレスタット230,300,303(三洋化成(株)製)等として市場で容易に入手可能である。また、上記ブロック共重合体にリチウム化合物LiCFSOを含有させることで添加量を少なくしても帯電防止効果を維持する効果を得ることができ、かかるブロック共重合体とリチウム化合物との混合物として、サンコノールTBX−310(三光化学工業(株)製)が市販されている。
【0058】
なお、導電剤として高分子イオン導電剤を用いる場合には、基材樹脂と高分子イオン導電剤との相溶性を高めるために、相溶化剤を添加してもよい。相溶化剤としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0059】
これら導電剤は、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、例えば、電子導電剤とイオン導電剤とを組み合わせて用いることもでき、この場合、印加される電圧の変動や環境の変化に対しても安定して導電性を発現させることができる。
【0060】
導電剤の配合量は、電子導電剤については、樹脂成分100質量部に対し、通常100質量部以下、例えば、1〜100質量部、特には1〜80質量部、とりわけ5〜50質量部である。また、イオン導電剤については、樹脂成分100質量部に対し、通常0.01〜10質量部、特には0.05〜5質量部の範囲である。さらに、高分子イオン導電剤については、樹脂成分100質量部に対し、通常1〜500質量部、好ましくは10〜400質量部程度である。本発明においては特に、導電剤としてカーボンブラックを用いて、これを樹脂成分100質量部に対し、5〜30質量部添加することが好ましい。
【0061】
また、本発明のベルトには、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の成分に加えて他の機能性成分を適宜添加することも可能であり、例えば、各種充填材、カップリング剤、酸化防止剤、滑剤、表面処理剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤等を適宜配合することができる。さらに、着色剤を添加して着色を施してもよい。
【0062】
本発明の導電性エンドレスベルトの総厚さは、転写搬送ベルトまたは中間転写部材等の形態に応じて適宜選定されるものであるが、好ましくは50〜200μmの範囲内である。また、その表面粗さとしては、好適には、JIS10点平均粗さRzで10μm以下、特に6μm以下、更には3μm以下とする。
【0063】
また、本発明の導電性エンドレスベルトには、図1に一点鎖線で示すように、図2の画像形成装置における駆動ローラ9または図3の駆動ローラ30などの駆動部材と接触する側の面に、該駆動部材に形成した嵌合部(図示せず)と嵌合する嵌合部を形成してもよく、本発明の導電性エンドレスベルトは、このような嵌合部を設け、これを駆動部材に設けた嵌合部(図示せず)と嵌合させて走行させることにより、導電性エンドレスベルトの幅方向のずれを防止することができる。
【0064】
この場合、前記嵌合部は、特に制限されるものではないが、図1に示すように、ベルトの周方向(回転方向)に沿って連続する凸条とし、これを駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した溝に嵌合させるようにすることが好ましい。
【0065】
なお、図1(a)では、1本の連続する凸条を嵌合部として設けた例を示したが、この嵌合部は多数の凸部をベルトの周方向(回転方向)に沿って一列に並べて突設してもよく、また嵌合部を2本以上設けたり(図1(b))、ベルトの幅方向中央部に設けてもよい。更に、嵌合部として図1に示した凸条ではなく、ベルトの周方向(回転方向)に沿った溝を設け、これを前記駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した凸条と嵌合させるようにしてもよい。
【0066】
本発明の導電性エンドレスベルトは、積層構造を構成する各層の共押出により好適に製造することができ、この場合、各層の界面の接着性についても良好に確保できる。ここで、共押出とは、例えば2層の場合、基層用の材料と表層用の材料とをそれぞれ押出す2台の押出機と、一つの2層用環状ダイを用い、溶融させた各層の材料を同時に環状ダイに送り込み、ダイ中で積層して押出す方法であり、一工程で、かつ、短時間に積層ベルトを得ることができるものである。3層以上の場合は、層数に応じた押出機とダイを用いればよい。また、ダイ内の流路を工夫することで、材料種以上の層数を積層することも可能である。さらに、本発明のベルトは、静電塗装等の粉体塗装法、ディップ法または遠心成型法でも製造することが可能である。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表1〜4中にそれぞれ示す配合および下記の表5〜8中にそれぞれ示す成形条件にて、各実施例および比較例の導電性エンドレスベルトを作製した。下記表中の配合量は、いずれも質量部を示す。具体的には、各層の配合成分を二軸混練機により溶融混練して、得られた混練物を所定の環状ダイスを用いて押出し成形することにより、内径220mm、幅250mmの寸法を有する導電性エンドレスベルトを得た。難燃剤および難燃助剤については、いずれも混練装置の材料投入口より投入した。
【0068】
得られた各実施例および比較例のベルトにつき、下記の手順に従い、評価を行った。これらの結果を下記の表5〜8中に示す。
【0069】
<難燃性の評価>
UL94規格に準拠して、難燃性を評価した。
【0070】
<体積抵抗測定>
体積固有抵抗率を下記条件にて測定した。
測定環境:温度20℃、相対湿度50%、測定電圧:100V、500V、測定装置:アドバンテスト社製、抵抗計R8340AとサンプルチャンバーR12704Aとを接続したもの。
【0071】
<耐折れ性の評価>
各ベルトから長さ100mm、幅15mmの試験片を切り出し、東洋精機(株)製のMIT耐揉疲労試験機を用いて、折り曲げ速度175回/min、回転角度135度、引張荷重14.7N(1.5kgf)の条件で耐折り曲げ回数を測定した。数値が大なるほど結果は良好である。
【0072】
<画像性、耐久でのベルト引き裂き、汚染性の評価>
各ベルトを図2に示す転写搬送ベルトを用いたタンデム方式の画像形成装置に装着し、転写操作を繰り返してA4用紙1万枚の耐久試験を行った。この試験の結果を画像性、耐久時のベルト引き裂きの有無および汚染性につき評価した。
【0073】
【表1】

*1)PA12(商品名UBESTA 3024U:宇部興産(株)製)
*2)ABS樹脂(商品名セビアン V680:ダイセルポリマー(株)製)
*3)エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(EGMA)−g−ポリメチルメタクリレート(PMMA)、組成比70/30(質量%)(商品名モディパー A4200:日油(株)製)
*4)EGMA−g−アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、組成比70/30(質量%)(商品名モディパー A4400:日油(株)製)
*5)エチレン・エチルアクリレート・無水マレイン酸共重合体(E/EA/MAH)−g−AS、組成比70/30(質量%)(商品名モディパー A8400:日油(株)製)
*6)ポリエステル樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)(商品名ノバデュラン5020:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
*7)ポリエステル樹脂、ポリカーボネート(商品名ユービロンE2000:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
*8)デンカブラック粒状:電気化学工業(株)製
*9)臭素化フェノキシ化合物(三酸化アンチモン含有)(商品名ヒロマスター−F101:(株)鈴裕化学製)
*10)臭素化ポリスチレン化合物(商品名SAYTEX HP7010:アルベマール日本(株)製)
*11)芳香族低分子型難燃剤(商品名SAYTEX 8010:アルベマール日本(株)製)
*12)芳香族低分子型難燃剤(難燃助剤含有)(商品名FCP1590:(株)鈴裕化学製)
*13)臭素化エポキシ(商品名SR−T3040:阪本薬品工業(株)製)
*14)臭素化エポキシ(商品名ファイヤーガード7000:帝人化成(株)製)
*15)三酸化アンチモン(商品名PATOX−MZ:日本精鉱(株)製)
【0074】
【表2】

※は、難燃剤自体に難燃助剤を含有しているものを示す。
【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
【表8】

【0081】
上記表5〜8に示すように、各実施例のベルトにおいては、難燃性を維持しつつ、優れた耐折れ性および耐久性が得られていることが確かめられた。それに対して、比較例1および2は、難燃剤未添加であるため難燃性が悪く、比較例3は、難燃性は良好であるが、耐折れ性および耐久性が極めて悪いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施の形態に係る導電性エンドレスベルトの幅方向断面図である。
【図2】画像形成装置の一例としての転写搬送ベルトを用いたタンデム方式の画像形成装置を示す概略図である。
【図3】画像形成装置の他の例としての中間転写部材を用いた中間転写装置を示す概略図である。
【図4】画像形成装置のさらに他の例としての中間転写部材を用いた他の中間転写装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0083】
1,11,52a〜52d 感光体ドラム
2,7 帯電ロール
3 現像ロール
4 現像ブレード
5 トナー供給ロール
6 クリーニングブレード
8 除電ロール
9,30,55 駆動ローラ(駆動部材)
10 転写搬送ベルト
12 一次帯電器
13 画像露光
14,35 クリーニング装置
19 給紙カセット
20,50 中間転写部材
25 転写ローラ
26,53 記録媒体
29,61 電源
41,42,43,44 現像器
54a〜54d 第1現像部〜第4現像部
56 記録媒体送りローラ
57 記録媒体送り装置
58 定着装置
59 電源装置(電圧印加手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を基材樹脂として形成された導電性エンドレスベルトにおいて、前記基材樹脂としてポリアミド12を含有し、かつ、ハロゲン系難燃剤を添加してなることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
【請求項2】
前記基材樹脂中に、ポリアミド12を50質量%以上含有する請求項1記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項3】
前記基材樹脂中に、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を含有する請求項1または2記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項4】
前記基材樹脂中に、エラストマー成分を含有する請求項1〜3のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項5】
難燃助剤として、アンチモン化合物を含有する請求項1〜4のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項6】
前記基材樹脂100質量部に対し、難燃剤と難燃助剤の総量として10〜50質量部含有する請求項1〜5のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項7】
少なくとも基層と表層とを内側から順次備える積層構造を有し、前記基層中にポリアミド12およびハロゲン系難燃剤を含有する請求項1〜6のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルトを用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−145557(P2009−145557A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321979(P2007−321979)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】