説明

導電性コーティング組成物及び成形物

【課題】 保存安定性に優れた導電性コーティング組成物であり、該組成物を用いて形成した膜は、強度が高く、導電性に優れ、透明性が高いものを提供する。
【解決手段】 (a)電子伝導性ポリマーと、(b)電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物とを含有し、並びに、(c)前記(a)電子伝導性ポリマーと前記(b)電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物に対して相溶性を有するブロック共重合体を含有する導電性コーティング組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電離放射線硬化性導電性膜形成用の導電性コーティング材料に関し、特に、電子デバイスや光学デバイス等の導電性材料或いは帯電防止材料として使用できる導電性コーティング組成物及び該組成物を用いて成形した成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性コーティング組成物は、帯電防止膜の形成材料、電磁波シールド膜、電極材料等の用途に期待されている。透明基材フィルム上に金属酸化物を含有させた帯電防止性コーティング組成物を塗布することにより形成した帯電防止性反射防止フィルムは特開2003−301018号公報(特許文献1)により知られている。金属酸化物を導電性材料として用いる場合には、導電性を出すためにはベースポリマー組成物に対して金属酸化物の密度を高くする必要があるが、その場合に金属酸化物の過剰添加の影響からベースポリマー組成物本来の物性(例えば、透明性、耐久性、硬度等)が影響を受けるという問題がある。
【0003】
一方、電子伝導性ポリマー等の導電性ポリマーを、塗膜の強度を高めることが可能な光硬化性樹脂と配合することにより、膜強度及び透明性を改善することができる導電性コーティング組成物が特開2002−179954号公報(特許文献2)により知られている。また、電子伝導性ポリマーの塗膜の強度を高めるのに、電子伝導性ポリマーに電離放射線硬化性樹脂を含有させた帯電防止性ハードコート層は、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、帯電防止性に優れていることが特開2004−91618号公報(特許文献3)により知られている。しかしながら、電子伝導性ポリマーは親水性のものが多いため、水分散形態或いは水溶液の形態で用いられているが、他の樹脂、例えば、高架橋性の電離放射線硬化型樹脂との相溶性が低いため、混合した場合には、保存中に凝集物が発生する等の保存安定性が悪いという問題がある。
【0004】
電子伝導性ポリマーと電離放射線硬化性樹脂との相溶を図るために、水性の電離放射線硬化性樹脂を使用する方法も考えられるが親水性の基を導入すると、硬度が低下するという問題がある。
【0005】
一方、第3成分として、アクリル酸アルキルエステル系重合体を分散して、電子伝導性ポリマーと電離放射線硬化性樹脂の相溶性を図ることが、特開平7−278399号公報(特許文献4)、特開平7−278470(特許文献5)により知られている。しかしながら、分散性が十分ではないため、コーティング組成物の保存安定性において満足できず、さらに、該コーティング組成物を用いて形成した膜は、全光線透過率が透明性が80%前後と低いという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−301018号公報
【特許文献2】特開2002−179954号公報
【特許文献3】特開2004−91618号公報
【特許文献4】特開平7−278399号公報
【特許文献5】特開平7−278470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情を鑑みてなし遂げられたものであり、その目的とするところは、前記した従来技術の不都合を解消することであり、さらに具体的には、コーティング組成物の保存安定性に優れ、該コーティング組成物を用いて形成された膜の強度が高く、導電性に優れ、透明性の高い膜を提供することができる、導電性コーティング組成物、及び該組成物を用いて形成した成形物、特に、膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための、本発明の導電性コーティング組成物は、(a)電子伝導性ポリマーと、(b)電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物とを含有し、並びに、(c)前記(a)電子伝導性ポリマーと前記(b)電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物に対して相溶性を有するブロック共重合体を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の導電性コーティング組成物は、前記(c)成分であるブロック共重合体が、少なくとも親水性セグメントと、疎水性のセグメントを有することにより、(a)成分である電子伝導性ポリマーと(b)成分である電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物の双方に対して相溶性が発揮される。
【0010】
前記ブロック共重合体は、電離放射線硬化性反応性官能基を有するセグメントを有することが望ましく、ブロック共重合体の電離放射線硬化性反応性基と、前記(b)成分の電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物とが架橋反応することにより、本発明の導電性コーティング組成物による膜は強固なものとなる。
【0011】
前記ブロック共重合体における、前記電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物が水に不溶である場合に、本発明の導電性コーティング組成物は、特に、相溶化において効果的である。
【0012】
前記電子伝導性ポリマーには、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリンまたはポリピロールが挙げられる。
【0013】
本発明の導電性膜の製造方法は、前記導電性コーティング組成物を、被塗物にコーティングし、電離放射線で硬化させることを特徴とする。
【0014】
本発明の成形物は、前記導電性コーティング組成物を用いて成形したものであり、例えば、成形物の表面上に塗布或いは成形することにより、導電性膜、或いは帯電防止膜を形成したものであり、透明基材フィルム上に製膜し、さらに最表面に低屈折率層を形成して、膜の強度が高く、導電性或いは帯電防止性に優れ、透明性の高い積層構造体(光学フィルム)とすることができる。本発明において単に「導電性」という場合、導電性或いは帯電防止性の何れかを意味する。本発明において単に「導電性膜]という場合、導電性膜或いは帯電防止性膜の何れかを意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性コーティング組成物において、(c)成分であるブロック共重合体は、(a)成分である電子伝導性ポリマーと、(b)成分である電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物に対して、相溶化剤として機能するため、本発明の導電性コーティング組成物は、(a)成分と(b)成分が均一に相溶化するため、保存時に凝集物の発生がなく安定しているという特徴を有する。並びに、該導電性コーティング組成物を用いて形成した成形物、特に、塗膜は、膜の強度が高く、導電性に優れ、且つ、透明性が高い特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の高強度が付与できる導電性コーティング組成物を用いた成形物の一例であり、第1の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。図1は、透明基材1上に、本発明の導電性コーティング組成物を用いた導電性膜2が形成されている。導電性膜2は、膜の強度が高いため、傷付防止作用があり、導電性に優れ、且つ、透明性が高い。図1の積層体は、例えば、帯電防止性及び傷付防止性の積層体になる。さらに具体的には、導電性膜2が印刷層である場合には、傷付防止性の導電性印刷層とすることができる。
【0017】
図2は、本発明の成形物の他の一例であり、第2の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。図2は、図1の層構成における導電性膜2上にさらにハードコート層3が積層されたものであり、図1の積層体にさらに強度が付与された積層体である。図2の積層体の用途は図1と同様である。
【0018】
図3は、本発明の成形物の他の一例であり、第3の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。図3は、本発明の第1の形態の図1の層構成における導電性膜2のさらに上に光学機能層4(例えば、低屈折率層)が形成された光学機能性積層体(光学フィルム)である。特に、透明基材がフィルムである場合には、帯電防止性及び傷付防止性が付与された反射防止フィルムとして使用できる。
【0019】
図4は、本発明の成形物の他の一例であり、第4の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。図4は、本発明の第2の形態の図2の層構成におけるハードコート層3のさらに上に光学機能層4(例えば、低屈折率層)が形成された光学機能性積層体である。特に、透明基材がフィルムである場合には、帯電防止性及び傷付防止性が付与された反射防止フィルムとして使用できる。
【0020】
図5は、本発明の成形物の他の一例であり、第5の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。図5は、透明基材1上に、ハードコート層3が形成され、さらにその上に本発明の導電性コーティング組成物を用いた導電性膜2が形成されたものである。
【0021】
図6は、本発明の成形物の他の一例であり、第6の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。図6は、本発明の第5の形態の図5の層構成における導電性膜2のさらに上に光学機能層4(例えば、低屈折率層)が形成されたものであり、帯電防止性及び傷付防止性が付与された光学機能性積層体(光学フィルム)であり、特に、透明基材がフィルムである場合には反射防止フィルムとして使用できる。
【0022】
ブロック共重合体構成ユニット
本発明の導電性コーティング組成物に含まれる(c)成分としてのブロック共重合体は、少なくとも親水性を有するセグメントと疎水性を有するセグメントの2つのセグメントを有するものが好ましく用いられる。ブロック共重合体における親水性セグメントと疎水性セグメントの重量比は、導電性コーティング組成物中に配合される(a)成分としての電子伝導性ポリマーと、(b)成分としての電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物の配合比にもよるが、各々のセグメントが10重量%以上であることが好ましい。また、ブロック共重合体は、2つ以上のセグメントのブロック共重合体であってもよい。また、ブロック共重合体には、電離放射線硬化性反応性官能基を有するセグメントが含まれていてもよい。
【0023】
このようなブロック共重合体は、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合等の公知の方法により合成することができる。
【0024】
i)親水性セグメント
本発明におけるブロック共重合体の構成要素の一部としての親水性セグメントには、イオン性の置換基を有する構造、エーテル結合を有する構造、水酸基を有する構造などを挙げることができる。
【0025】
a.イオン性の置換基を有する構造
前記「イオン性の置換基を有する構造」には、例えば、ポリマー中にカチオン性の置換基を持つカチオン性ポリマー、ポリマー中にアニオン性の置換基を持つアニオン性ポリマー、ポリマー中にエーテル骨格を有するポリマー等が挙げられる。
【0026】
カチオン性ポリマー:
カチオン性ポリマーは、分子中にカチオン性基と反応性の不飽和結合を有するモノマーを重合させて得ることができる。カチオン性基としては、例えば、第1〜3級アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等の置換基を有するポリマーが挙げられる。このようなカチオン性ポリマーの例としては、ビニルアミン、アリルアミン、アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等の重合体が挙げられる。
【0027】
本明細書において、(メタ)アクリレートなる表記は、アクリレートまたはメタクリレートを、(メタ)アクリルなる表記は、アクリルまたはメタクリルを、(メタ)アクリロイルなる表記は、アクリロイルまたはメタクリロイルをそれぞれ意味する。
【0028】
4級アンモニウム塩基としては、例えば、脂肪族アンモニウム塩として、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩、トリヘキシルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジメチルオクチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩、メトキシエチルジメチルアンモニウム塩、エトキシエチルジメチルアンモニウム塩等のアルコキシアルキル基を有するアンモニウム塩等の、4級アンモニウム塩の置換基が挙げられる。
【0029】
脂環式アンモニウムカチオン塩基としては、ピロリジニウム塩類、ピペリジニウム塩類、ピラゾリジニウム塩類、イミダゾリジニウム塩類、ピペラジニウム塩類等が挙げられる。
【0030】
芳香族アンモニウムカチオン塩基としては、メチル2−ピリジニウム、メチル4−ピリジニウム塩、エチル4−ピリジニウム等のピリジニウム塩類、ピリミジニウム塩類、ピラジニウム塩類、イミダゾリウム塩類、オキサゾリウム塩類等の、アンモニウム塩の置換基が挙げられる。
【0031】
また、ジアリルアミンの4級化物等、主鎖に環状構造を持つアンモニウム塩等の置換基が挙げられる。
【0032】
4級アンモニウム塩の置換基を有するポリマーは、これらの置換基を持つモノマーを重合して得られるが、アミノ基を有するモノマーを重合し、重合後にアルキル化剤等で4級化反応を行っても得ることができる。
【0033】
反応性の不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
これらのカチオンに対する対アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨードニウムイオン、過塩素酸イオン、フッ素系アニオン等が挙げられる。
【0034】
アニオン性ポリマー:
アニオン性ポリマーは、分子中にアニオン性基と反応性の不飽和結合を有するモノマーを重合させて得ることができる。アニオン性基としては、例えば、スルホン基、カルボキシル基、リン酸基等とその塩が挙げられ、このようなアニオン性ポリマーの例としては、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート等の重合体や、それらモノマーのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩の重合体を挙げることができる。
【0035】
b.エーテル結合を有する構造
前記「エーテル結合を有する構造」には、例えば、ポリエーテル系化合物、例えば、エチレンオキシド単位などのアルキレンオキシド骨格を有するポリマーが挙げられ、アルキレンオキシド骨格は、主鎖に有していても、側鎖に有していてもよい。このようなポリマーとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の重合体を挙げることができる。
【0036】
c.水酸基を有する構造
前記「水酸基を有する構造」には、下記のモノマーを重合することにより得られるポリマーを挙げることができる。即ち、該モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有アクリルアミド;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル等のα−ヒドロキシアルキルアクリル酸エステル;ビニルアルコール、ビニルフェノール等が挙げられる。
【0037】
ii) 疎水性セグメント
ブロック共重合体の構成要素の一部としての疎水性セグメントには、例えば、疎水性のモノマーを重合した構造が挙げられる。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−スチレン、ビニルカプロラクトン等の環状構造を有するモノマ一等を使用することができる。
【0038】
iii) 電離放射線硬化性反応性官能基を有するセグメント
本発明において、ブロック共重合体の構成要素の任意のセグメントとして、電離放射線硬化性反応性基を有するセグメントが含まれていてもよい。ブロック共重合体を電離放射線硬化性とする目的のためには、電離放射線硬化性官能基を導入することが好ましく、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基等のエチレン性二重結合、エポキシ基、オキセタン骨格、ビニルエーテル基等のエーテル結合が挙げられる。反応性の導入方法については、グリシジルメタクリレートのような、反応性官能基を有するモノマーを直接重合して導入してもよいし、エステル変性、ウレタン変性、エポキシ変性等の変性で、反応後に反応性官能基を導入することも可能である。該電離放射線硬化性反応性官能基を有するセグメントは、前記した疎水性セグメントに導入することが望ましい。
【0039】
電子伝導性ポリマー
本発明の導電性コーティング組成物に含まれる(a)成分としての電子伝導性のポリマーには、公知の電子伝導性のポリマーを使用することができる。電子伝導性ポリマーは、導電機構が電子伝導性であるため、イオン性ポリマーと比較して湿度依存性がなく、乾燥した環境下でも安定した導電性を得ることができる。このような電子伝導性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフルオレン等やそれらの共重合体が挙げられる。これらのポリマーは、単独でも使用することができるが、適切なドーパントをドーピングすることで、高い導電性が得られる。
【0040】
ドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸等が用いられ、ハロゲン化合物としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等が挙げられる。また、ルイス酸としては五フッ化リン、五フッ化砒素、五フッ化アンチモンが挙げられる。プロトン酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸、有機カルボン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。中でも、プロトン酸は高導電性が得られるため好ましく用いられる。
【0041】
ドーパントとしてプロトン酸を使用すると、プロトン酸が水溶性であるために、電子伝導性ポリマーを水溶性、あるいは水分散体とする必要がある。
【0042】
ポリチオフェンを構成するユニットとしては、3−メチルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ブチルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−チオフェン−β−エタンスルフォネート、3, 4−エチレンジオキシチオフェン等とその誘導体が挙げられる。その他、スルホン基を共有結合させた自己ドープ型ポリチオフェン類、ポリ(3, 4−エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)の分散体等が、高導電性を示すポリチオフェンとして挙げられる。
【0043】
ポリアニリンを構成するユニットとしては、アニリン類、スルホン化アニリン類、アルキル化アニリン類等が挙げられる。
【0044】
ポリピロールを構成するユニットとしては、N−メチルピロール、N−エチルピロール、3−メチルピロール、3−メトキシピオール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3, 4−ジメチルピロール、3―ヘキシルピロール、3−メチル−4−ピロールカルボン酸メチル等とその誘導体が挙げられる。
【0045】
電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物
本発明の導電性コーティング組成物に含まれる(b)成分としての、電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物には、分子中に反応性官能基を2個以上、好ましくは3個以上有するモノマー、オリゴマーが好ましい。
【0046】
前記反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物は、ガラス転移温度が40℃以下であることが好ましい。
【0047】
電離放射線硬化性を有する反応性官能基としては、硬化に光ラジカル重合を利用する場合には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有する官能基、光カチオン重合を利用する場合には、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のエーテル基を挙げることができる。
【0048】
反応性官能基を2個以上有するモノマーとしては、例えば、2官能のモノマーとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等;3官能のモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート等;4官能のモノマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等;5官能のモノマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等;6官能のモノマーとしては、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
環状エーテル基を2個以上有するモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等のエポキシ系モノマーや、オキセタン系モノマーを挙げることができる。
【0050】
エチレン性不飽和結合を2個以上有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0051】
ウレタンアクリレートとしては、例えば、分子中にウレタン結合と、反応性二重結合を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物が使用できる。このような化合物は、例えば、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基を有する化合物と、1個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタンアクリレート、または、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と1個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応して得ることができる。
【0052】
エポキシアクリレートとしては、分子中にエポキシ樹脂骨格、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック等の構造と、反応性二重結合を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物が使用できる。このような化合物は、例えば、エポキシ基を持つグリシジル化合物と、1個以上の(メタ)アクリロイル基と1個以上のカルボキシル基を持つ化合物とを反応して得ることができる。
【0053】
ポリエステルアクリレートとしては、例えば、分子中にエステル結合と、反応性二重結合を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物を使用することができる。このような化合物は、例えば、2個以上の水酸基を有する化合物または環状エステル化合物と多塩基酸とから合成したポリエステル化合物に、さらに(メタ)アクリロイル基を持つ化合物を反応させて得ることができる。
【0054】
ポリエーテルアクリレートとしては、例えば、分子中にエーテル結合と、反応性二重結合を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物を使用することができる。このような化合物は、ポリオール化合物と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の化合物を反応して得られるポリエーテル化合物に対し、エステル交換反応により(メタ)アクリロイル基を導入して得ることができる。
【0055】
エーテル結合を2個以上を有するオリゴマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ系オリゴマー、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系オリゴマー、オキセタン骨格を有するオリゴマー等が挙げられる。
【0056】
以上のモノマー、オリゴマーは2種以上を混合して使用することもできる。その総量は、電離放射線硬化性組成物における総固形分中の95質量%以下、好ましくは90質量%以下で用いることができる。
【0057】
(a)成分と(b)成分の合計量における(a)成分の配合比
(a)成分としての電子伝導性ポリマーと(b)成分としての電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物との合計量において、(a)成分の割合は、固形分比で0.01〜60%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50%である。(a)成分の割合が0.01未満では、導電性が不十分であり、60%を超えると硬度が不十分となる。
【0058】
(a)成分、(b)成分、(c)成分の合計量における(c)成分の配合比
(a)成分としての電子伝導性ポリマーと、(b)成分としての電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物と、(c)成分としてのブロック共重合体の合計量において、(c)成分の割合は、固形分比において、0.1〜80%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。(c)成分が0.1%未満であると分散性が不十分となり、80%を超えると導電性、硬度が低下する。
【0059】
熱可塑性ポリマー
本発明の導電性コーティング組成物は、任意成分として、ブロック共重合体ではない成分の、熱可塑性ポリマーが含まれていてもよい。該ポリマーは塗膜の成膜性を高めたり、脆質性を改善したりするために用いることができる。熱可塑性ポリマーには、例えば、ポリオレフイン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリル−スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。
【0060】
熱可塑性ポリマーが、導電性コーティング組成物の全固形分において全く含まれていないか、或いは80質量%以下含有されていることが望ましい。熱可塑性ポリマーの量が、80質量%以上では、導電性能が十分に発現されない。
【0061】
光重合開始剤
本発明の導電性コーティング組成物には、必要に応じて、光重合開始剤を添加してもよい。光重合開始剤には、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0062】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベイゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、アントラキノン、メチルアントラキノン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、ベンジルジアセチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムスルフィド、α−クロロメチルナフタレン、アントラセン、ヘキサクロロブタジエン、ペンタクロロブタジエン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。
【0063】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等が挙げられる。
【0064】
添加剤
本発明の導電性コーティング組成物には、更に添加剤として増感剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0065】
溶剤
本発明の導電性コーティング組成物は、必要に応じて溶剤に溶解させて用いることができる。溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエトルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−ピロリドン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。さらに、高極性、高沸点の溶剤を使用、或いは前記した溶剤に混合すると、高導電性を得ることができる。このような高極性、高沸点の溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、アセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、3−ブタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ソルビトール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ジオキサン等が挙げられる。
【0066】
溶剤は、ブロック共重合体を構成する各セグメントの良溶剤であるものが好ましい。それぞれのセグメントのどちらかの貧溶剤であると、透明性が失われる等の問題が生じることがある。
【0067】
透明基材の種類
本発明の導電性コーティング組成物を成形するために用いられる基材としては、透明なガラス又はプラスチック等からなるシート、板状成形体等を挙げることができる。プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、トリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0068】
また、成形した帯電防止膜の密着性をより向上させるためのアンカー層、ハードコート層、ガスバリア層、及び/又は光学性能を有する層等を積層した後に、本発明のコーティング組成物を用いて成形した層を積層することができる。
【0069】
また、本発明の導電性コーティング組成物を用いて成形した層の上に、更に、ハードコート層及び/又は低屈折率層等の層を積層することもできる。各層の硬化前に積層する方法、硬化後に積層する方法、或いは、半硬化させてから積層後、更に硬化させる方法等がある。
【0070】
成形方法
本発明の導電性コーティング組成物を用いた成形物の成形には、一般的には、コーティング法により塗膜を形成し、硬化することが行われるが、プラスチック成形の技法、例えば、押出成形法、中空形成法、射出成形法、ロール成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法等の一般的な成形法によっても成形物を得ることができる。
【0071】
前記コーティング方法には、ダイレクトグラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、スライドダイコート法、スリットダイコート法、コンマコート法、スピンコート法、バーコート法等、公知の塗工手段を用いることができる。
【0072】
コーティング時の乾燥条件
本発明の導電性コーティング組成物のコーティング後は、使用する溶剤の沸点及び透明基材の耐熱性を考慮した温度、条件で乾燥させることが好ましい。
【0073】
電離放射線
本発明の導電性コーティング組成物が電離放射線硬化性であるので、成形後に電離放射線によって硬化させる。そのため、導電性膜にハード性を付与することができる。電離放射線としては、紫外線、高エネルギー電離放射線を使用することができる。紫外線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、炭素アーク灯等から発生するものを使用することができる。また、高エネルギー電離放射線としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニアアクセレータ、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線、γ線、X線、α線等の放射線等を使用することができる。
【0074】
適切な膜厚
本発明の導電性コーティング組成物を用いて形成した導電性膜の厚みは、例えば、0.05〜30μmとすることができる。また、得られた導電性膜をさらにハードコート層として使用する場合には、1μm以上の膜厚とすることが好ましい。
【0075】
ハードコート層
図2、図4、図5、図6に示される積層体に用いられるハードコート層には、JIS5600−5−4:1999で示される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を示すものが使用されることが望ましい。
【0076】
ハードコート層を形成するのに好適な電離放射線硬化型樹脂組成物としては、好ましくはアクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエーテル樹脂、多価アルコール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート誘導体やジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどの多官能化合物などのモノマー類やエポキシアクリレートやウレタンアクリレートなどのオリゴマーなどを使用することができる。
【0077】
ハードコート層は硬化後の膜厚が0.1〜100μm、好ましくは0.8〜20μmの範囲にあることが望ましい。膜厚が0.1μm以下の場合は充分なハードコート性能が得られず、100μm以上の場合は外部からの衝撃に対して割れやすくなるため好ましくない。
【0078】
光学機能層
図3、図4、図6に示される積層体に用いられる光学機能層には、屈折率が1.6未満、好ましくは1.5未満、さらに好ましくは1.45以下の層であり、積層体における他の層に比べて相対的に低屈折率の層である。反射防止フィルムの目的のために用いられる低屈折率の光学機能層は、一般的に用いられている低屈折層を形成する公知の方法により形成することができる。例えば、シリカやフッ化マグネシウム等の低屈折率無機微粒子とバインダー樹脂を含む塗工液、或いはフッ素系樹脂等を含有する塗工液を用いて塗膜を形成するか、又は低屈折率無機微粒子を蒸着にて薄膜を形成することにより光学機能層を得ることができる。
【0079】
本発明の導電性膜が形成された成形体の導電性は、1.0×1013 Ω/□以下の導電性を有する。1.0×1013 Ω/□〜1.0×1012 Ω/□は帯電するが静電荷が蓄積しない範囲のため、フィルムなどに埃付着防止性を付与する範囲として有用である。帯電防止性の範囲は、好ましくは、静電荷が帯電するが、すぐ減衰する範囲即ち、1.0×1012 Ω/□〜1.0×1010 Ω/□からなる範囲以下、より好ましくは帯電しない範囲1.0×1010 Ω/□以下であり、最も好ましくは1.0×108 Ω/□以下である。
【実施例】
【0080】
[実施例1]
導電性コーティング組成物(1)の調製
下記の配合成分の通り混合して3時間撹拌し、本実施例1の導電性コーティング組成物(1)を得た。
【0081】
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートの水分散液(商品名:Baytron P、H.C.スタルク社製)20重量部 ペンタエリスリトールトリアクリレート 20重量部
親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体(モディパーHM−18:商品名、日本油脂株式会社製、アクリル系疎水性モノマーと水酸基を有する親水性アクリル系モノマーをリビングラジカル重合により合成してなるブロック共重合体) 10重量部(固形分換算:7.5重量部)
溶剤(イソプロパノールとメチルエチルケトンの混合溶剤) 50重量部
【0082】
塗膜の形成
100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:メリネックス705、帝人デュポンフィルム株式会社製)上に、前記工程で調製した導電性コーティング組成物(1)を乾燥塗布厚が2μmとなるようにバーコーターで塗布し、120℃で1分間溶剤を乾燥させて塗膜を形成した。次いで、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源:Hバルブ)で積算露光量が600mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、塗膜を硬化させて、本実施例1の塗膜を形成した。
【0083】
[実施例2]
導電性コーティング組成物(2)の調製
下記の配合成分の通り混合して3時間撹拌し、本実施例2の導電性コーティング組成物(2)を得た。
【0084】
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートの水分散液(商品名:Baytron P、H.C.スタルク社製)20重量部 ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名:サートマーSR399E、サートマー社製) 20重量部
親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体(モディパーHM−18:商品名、日本油脂株式会社製、アクリル系疎水性モノマーと水酸基を有する親水性アクリル系モノマーをリビングラジカル重合により合成してなるブロック共重合体) 10重量部(固形分換算:7.5重量部)
溶剤(イソプロパノールとメチルエチルケトンの混合溶剤) 50重量部
【0085】
塗膜の形成
本実施例2の導電性コーティング組成物(2)を用い、前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例2の塗膜を形成した。
【0086】
[実施例3]
導電性コーティング組成物(3)の調製
下記の配合成分の通り混合して3時間撹拌し、本実施例3の導電性コーティング組成物(3)を得た。
【0087】
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートの水分散液(商品名:Baytron P、H.C.スタルク社製)20重量部 ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−1700B、日本合成化学工業株式会社製) 20重量部
親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体(モディパーHM−18:商品名、日本油脂株式会社製、アクリル系疎水性モノマーと水酸基を有する親水性アクリル系モノマーをリビングラジカル重合により合成してなるブロック共重合体) 10重量部(固形分換算:7.5重量部)
溶剤(イソプロパノールとメチルエチルケトンの混合溶剤) 50重量部
【0088】
塗膜の形成
本実施例3の導電性コーティング組成物(3)を用い、前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例3の塗膜を形成した。
【0089】
[実施例4]
導電性コーティング組成物(4)の調製
下記の配合成分の通り混合して3時間撹拌し、本実施例4の導電性コーティング組成物(4)を得た。
【0090】
導電性ポリマー:スルホン化ポリアニリン水溶液(商品名:aquaPASS−01x、三菱レイヨン株式会社製) 20重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20重量部
親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体(モディパーHM−18:商品名、日本油脂株式会社製、アクリル系疎水性モノマーと水酸基を有する親水性アクリル系モノマーをリビングラジカル重合により合成してなるブロック共重合体) 10重量部(固形分換算:7.5重量部)
溶剤(イソプロパノールとメチルエチルケトンの混合溶剤) 50重量部
【0091】
塗膜の形成
本実施例4の導電性コーティング組成物(4)を用い、前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例4の塗膜を形成した。
【0092】
[実施例5]
導電性コーティング組成物(5)の調製
下記の配合成分の通り混合して3時間撹拌し、本実施例5の導電性コーティング組成物(5)を得た。
【0093】
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートの水分散液(商品名:Baytron P、H.C.スタルク社製)20重量部 ペンタエリスリトールトリアクリレート 20重量部
親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体(P1200−MMAMANa:商品名、ポリマーソース社製、数平均分子量7200メチルメタクリレートと数平均分子量7800のメタクリル酸ナトリウムをリビングアニオン重合により合成してなるブロック共重合体) 5重量部
溶剤(イソプロパノールとジメチルスルホキシドの混合溶剤) 50重量部
【0094】
塗膜の形成
本実施例5の導電性コーティング組成物(5)を用い、前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例5の塗膜を形成した。
【0095】
[実施例6]
導電性コーティング組成物(6)の調製
下記の配合成分の通り混合して3時間撹拌し、本実施例6の導電性コーティング組成物(6)を得た。
【0096】
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートの水分散液(商品名:Baytron P、H.C.スタルク社製)20重量部 ペンタエリスリトールトリアクリレート 20重量部
親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体(P2747−MMAHEMA:商品名、ポリマーソース社製、数平均分子量24300のメチルメタクリレートと数平均分子量16700の2−ヒドロキシエチルメタクリレートをリビングアニオン重合により合成してなるブロック共重合体) 5重量部
溶剤(イソプロパノールとメチルセロソルブの混合溶剤) 50重量部
【0097】
塗膜の形成
本実施例6の導電性コーティング組成物(6)を用い、前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例6の塗膜を形成した。
【0098】
[実施例7]
前記実施例1の導電性コーティング組成物(1)の調製において、溶剤をイソプロパノールとジメチルスルホキシドの1:1の混合溶媒に変更した以外は、全て前記実施例1と同様にして、本実施例7の導電性コーティング組成物(7)を調製し、さらに、前記実施例1と同様にして本実施例7の塗膜を形成した。
【0099】
[比較例1]
導電性コーティング組成物(比較例1)の調製
下記の配合成分の通り混合して3時間撹拌し、比較例1の導電性コーティング組成物(A)を得た。
【0100】
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートの水分散液(商品名:Baytron P、H.C.スタルク社製)20重量部 ペンタエリスリトールトリアクリレート 20重量部
溶剤(イソプロパノールとメチルエチルケトンの混合溶剤) 50重量部
【0101】
塗膜の形成
本比較例1の導電性コーティング組成物(A)を用い、前記実施例1の塗膜の形成と同様にして比較例1の塗膜を形成した。
【0102】
[比較例2]
導電性コーティング組成物(比較例2)の調製
下記の配合成分の通り混合して3時間撹拌し、比較例2の導電性コーティング組成物(B)を得た。
【0103】
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートの水分散液(商品名:Baytron P、H.C.スタルク社製)20重量部 ペンタエリスリトールトリアクリレート 20重量部
ポリメチルメタクリレート(商品名:ダイヤナールBR−82、三菱レイヨン株式会社製) 5重量部
溶剤(イソプロパノールとメチルエチルケトンの混合溶剤) 50重量部
【0104】
塗膜の形成
比較例2の導電性コーティング組成物(B)を用い、前記実施例1の塗膜の形成と同様にして比較例2の塗膜を形成した。
【0105】
[実施例と比較例の塗膜の評価]
表面抵抗:
表面抵抗は、表面抵抗計(三菱油化(株)製 Hiresta Model HT−210:商品名)を使用し、印加電圧500Vでの抵抗値を測定した。
【0106】
ヘイズ測定:
ヘイズ測定は、JIS K7316に規定される方法により、濁度計(日本電色工業(株)製 NDH2000:商品名)を使用して測定した。
【0107】
耐擦傷性試験:
耐擦傷性は、表面をスチールウール#0000を用いて200gの摩擦荷重で10往復し、傷の有無により評価した。
【0108】
鉛筆硬度試験:
膜表面の硬度は、JIS K5600−5−4に規定される引っかき硬度(鉛筆法)により鉛筆硬度として評価した。
【0109】
前記実施列1〜6、比較例1、2についての塗膜の評価を下記の表1に示す。
【0110】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等の光学物品の表面の帯電防止、フィルムの帯電防止、或いは電気、電子機器の帯電防止、電子デバイスや光学デバイス等の導電性材料に適用することができる導電性コーティング組成物、及び該組成物を成形してなる成形物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第3の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第4の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第5の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第6の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0113】
1 透明基材
2 導電性膜
3 ハードコート層
4 光学機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)電子伝導性ポリマーと、
(b)電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物と、
(c)前記(a)電子伝導性ポリマーと前記(b)電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物とに相溶性を有するブロック共重合体と、
を含有することを特徴とする、導電性コーティング組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体が、少なくとも親水性セグメントと、疎水性のセグメントを有することを特徴とする、請求項1記載の導電性コーティング組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体が、電離放射線硬化性反応性官能基を有するセグメントを有することを特徴とする、請求項1又は2記載の導電性コーティング組成物。
【請求項4】
前記電離放射線硬化性反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物が、水に不溶であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項記載の導電性コーティング組成物。
【請求項5】
前記電子伝導性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアニリンまたはポリピロールである請求項1乃至4の何れか1項記載の導電性コーティング組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載の導電性コーティング組成物を、被塗物にコーティングし、電離放射線で硬化させることを特徴とする、導電性膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項記載の導電性コーティング組成物を用いて成形した成形物。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか1項記載の導電性コーティング組成物を用いて膜状に成形した導電性膜。
【請求項9】
請求項1乃至5の何れか1項記載の導電性コーティング組成物を用いて膜状に成形した帯電防止膜。
【請求項10】
請求項1乃至5の何れか1項記載の導電性コーティング組成物を用いて成形した膜を有する積層構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−176681(P2006−176681A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372115(P2004−372115)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】