説明

導電性ゴムローラの製造方法及び転写ローラ

【課題】ゴム層成形が効率的に行われ、ゴム層のチューブ内外径の縦横比や発泡状態が均一で、硬度や抵抗のムラの無い導電性ゴムローラとその製造方法を提供する。
【解決手段】発泡体ゴム層形成用ゴム材料を押出し機のヘッドからチューブ状に押し出す押し出し工程と押し出されたチューブ状ゴム材料を加熱して発泡及び加硫を行う加熱発泡加硫工程とを有する導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、加熱発泡加硫工程での加熱をマイクロ波加硫炉を用いてマイクロ波照射及び加熱空気により行い、押出し工程後加熱発泡加硫工程前に押し出されたチューブ状ゴム材料を近赤外線照射により加熱する加熱工程を有し、加熱工程で近赤外線照射後のチューブ状ゴム材料の表面温度T(℃)、近赤外線の照射時間t(秒)が次式を満たす。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラおよび導電性ゴムローラの製造方法に関する。より詳しくは、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体もしくは転写材に転写させる転写装置の転写ローラ等の導電性ゴムローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置の多くに帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。これらのゴムローラは、装置の高速化、良画質化に応えるために、感光体との当接により一様なニップ幅を保つことが要求され、発泡セルが緻密かつ均一であることが望まれている。従来これらのゴムローラの製造方法として高圧蒸気による加硫缶加硫(特許文献1)、金型を用いた加硫方法(特許文献2)、マイクロ波照射によるUHF加硫(特許文献3)などが挙げられる。
【0003】
例えば加硫缶加硫では比較的微細なセルを得ることは容易であるが、加硫チューブの径方向で発泡体のセルが不均一になりやすく、所望のセルを表面に出すために多量の研磨が必要になってしまうことがあった。
【0004】
金型加硫においては、発泡ゴムローラを型内(割型)発泡法で作製する場合、二つの金型の合わせ目が存在する。化学発泡剤を含むゴム組成物をこのような割型を使用して加硫発泡を行った場合、この合わせ目からゴム組成物の漏れ(パーティングライン)が生じ、脱型後の発泡ゴムにはこの影響が現れやすい。このため、例えば電気抵抗、硬度、セル形状などにおいて、この割型合わせ面で異常が発生しやすい。したがって、これらの特性が均質であることが望まれる発泡ゴムローラにおいては、これら特性の不均質化は大きな問題となりうる。さらに段取りに時間が掛かり、且つ金型洗浄を行う必要があるため量を数多く作るのには不向きであった。
【0005】
またUHF加硫では、押し出し直後に連続してマイクロ波を用いて加硫発泡を行うため非常に効率の良い生産が可能であるが、ゴムが軟化した時にチューブが潰れてしまい、チューブ内外径の縦横比が不均一となりやすい。更にこのチューブの不均一に起因して周方向の硬度ムラや抵抗ムラが大きくなってしまうこともあった。上記特許文献3においては押し出し機から押し出されたチューブを連続加硫中に1/2回転以上回転させることにより、ローラの周方向の加硫密度のばらつきを低減して、物理的に非常に均一で良好な導電性ローラを得ることが開示されている。しかしながら、これらの方法ではチューブを回転させる機構が別途必要となり、装置のコストが上昇することにより、ローラコストが上昇してしまうという問題が考えられる。電子写真用の導電性ゴムローラにおいては、発泡体のセルやチューブ内外径の縦横比が均一で、ローラの発泡状態、抵抗値、硬度が均一であり、かつローコストで製造可能な導電性ゴムローラの製造方法を確立することが望まれている。
【特許文献1】特開平11−114978号公報
【特許文献2】特開平11−201140号公報
【特許文献3】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、マイクロ波を照射し短時間で加熱し加硫発泡を行う工程によってゴム層の成形が効率的に行われるとともに、ゴム層のチューブ内外径の縦横比が均一で、発泡状態が均一で、硬度ムラや抵抗ムラの無い導電性ゴムローラを製造することのできる方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、上記のような優れた特性を有する転写ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、
発泡体ゴム層形成用のゴム材料を押出し機のヘッドからチューブ状に押し出すゴムチューブ押し出し工程と、押し出されたチューブ状ゴム材料を加熱して発泡および加硫を行う加熱発泡加硫工程とを有する、導電性芯材の周面上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
該発泡体ゴム層形成用のゴム材料が、アクリロニトリルブタジエンゴム及び/又はエピクロルヒドリンゴムを含み、かつ発泡剤としてp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドのみを含み、
該加熱発泡加硫工程における加熱を、マイクロ波加硫炉を用いてマイクロ波照射及び加熱空気によって行い、
該ゴムチューブ押出し工程の後、加熱発泡加硫工程の前に、ゴムチューブ押出し工程で押し出されたチューブ状ゴム材料を近赤外線照射によって加熱する加熱工程を有し、
該加熱工程において、近赤外線照射後のチューブ状ゴム材料の表面温度をT(℃)、近赤外線の照射時間t(秒)とするとき、式(1)および(2)
【0009】
【数1】

【0010】
が成立することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法が提供される。
【0011】
前記加熱工程において用いる近赤外線が1.15±0.4μmをピークに持つ近赤外線スペクトルを有することが好ましい。
【0012】
本発明により、電子写真画像形成装置に用いる転写ローラであって、
上記方法によって製造された導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、マイクロ波を照射し短時間で加熱し加硫発泡を行う工程によってゴム層の成形が効率的に行われるとともに、ゴム層のチューブ内外径の縦横比が均一で、発泡状態が均一で、硬度ムラや抵抗ムラの無い導電性ゴムローラを製造することのできる方法が提供される。
【0014】
本発明により、上記のような優れた特性を有する転写ローラが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、導電性ゴムローラは、図1に示すように、導電性芯材61の周面上に発泡体ゴム層62を有する。導電性芯材には芯金を用いることができる。
【0016】
本発明では、発泡体ゴム層のゴム材料が少なくともアクリロニトリルブタジエンゴム、及び/又はエピクロルヒドリンゴムを含み、発泡剤としてp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドのみを含むものである。
【0017】
本発明の導電性ゴムローラの製造方法は、発泡体ゴム層形成用のゴム材料を押出し機のヘッドからチューブ状に押し出すゴムチューブ押し出し工程と、押し出されたチューブ状ゴム材料を加熱して発泡および加硫を行う加熱発泡加硫工程とを有する。
【0018】
この製造方法では、加熱発泡加硫工程における加熱を、マイクロ波加硫炉を用いてマイクロ波照射及び加熱空気によって行う。
【0019】
この製造方法は、ゴムチューブ押出し工程の後、加熱発泡加硫工程の前に、ゴムチューブ押出し工程で押し出されたチューブ状ゴム材料を近赤外線照射によって加熱する加熱工程を有する。
【0020】
そして、加熱工程において、近赤外線照射後のチューブ状ゴム材料の表面温度をT(℃)、近赤外線の照射時間t(秒)とするとき、式(1)および(2)
【0021】
【数2】

【0022】
が成立する。
【0023】
以下、本発明の形態について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0024】
〔電子写真画像形成装置〕
図2に、本発明に係る導電性ゴムローラを電子写真画像形成装置の転写ローラに利用した一例を示す。同図に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用したレーザプリンタであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。また、同図に示す画像形成装置には転写ローラを有する転写装置が装着されている。
【0025】
同図に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0026】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、例えば−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vlは例えば−150V)が形成される。
【0027】
その静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナー5が付着され、トナー像として反転現像される。
【0028】
一方、給紙部Pから給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアス印加電源により転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9のクリーニングブレード8によって除去される。
【0029】
転写部Tを通った転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置外部に排出される。以上が画像形成装置の動作概略である。
【0030】
〔ゴム材料〕
発泡体ゴム層形成用のゴム材料は、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムから選ばれる少なくとも一種を含み、発泡剤としてp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドのみを含む。従って、尿素系発泡助剤を含まない。
【0031】
アクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムはその配合比率の調整によって抵抗値を容易に調整可能なことや、加工性に優れている点から好適に用いることができる。
【0032】
例えば、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いると、アゾジカルボンアミドの分解生成物としてアンモニアやシアン酸等の物質が生成し、これらの分解生成物が材料中でイオン導電材として作用したり、材料中の極性を変化させたりすることがある。これにより経時でローラ抵抗値が上昇してしまう場合がある。特に高温高湿環境(例えば32.5℃、80%RH)におけるローラ抵抗値の上昇が大きくなる場合がある。なおRHは相対湿度を表す。
【0033】
また尿素系発泡助剤を用いた場合もアンモニア等が生成し、アゾジカルボンアミドを用いた場合と同様に経時でローラ抵抗値が大きく上昇してしまい実用には適さない場合がある。
【0034】
その他の発泡剤としては、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンや炭酸水素ナトリウムが挙げられる。N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンは分解時にホルムアルデヒドが発生することが指摘されており、またそのもの自体が変異原性を疑われている。炭酸水素ナトリウムは均一な発泡を得難く、ローラ抵抗値の環境変動を増大させる場合がある。
【0035】
ゴム材料には、酸化亜鉛、ステアリン酸やカーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填材や硫黄等の加硫剤を配合することができる。また、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、またはその数種の混合物の加硫促進剤を配合することができる。
【0036】
〔導電性ゴムローラの製造〕
本発明では、ゴム材料を発泡および加硫する加熱発泡加硫工程を、マイクロ波照射及び加熱空気によって加熱を行うことが可能なマイクロ波加硫炉を用いて行う。
【0037】
また、ゴム材料を押出す押出し機ヘッドとマイクロ波加硫炉の間で、加熱工程を行う。加熱工程ではチューブ状に押し出されたゴム材料を、近赤外線照射装置を用いて加熱する。近赤外線照射によって、チューブ状ゴム材料の表面を加熱することができる。
【0038】
図3に導電性ローラの近赤外線およびマイクロ波を用いた連続加硫による製造装置(押出し加硫装置)の例を示す。この装置は、押出機11、近赤外線照射装置12、マイクロ波加硫装置(UHF)13、熱風加硫装置(HAV)14、引取機15、定尺切断機16で構成される。
【0039】
図4に近赤外線照射装置の例の断面図を示す。17は赤外線ランプユニット、20は押出しされたゴムチューブ(チューブ状ゴム材料)である。赤外線ランプユニット17がゴムチューブの中心から等しい距離、かつ各々が等間隔になるよう6箇所に配置されており、押出し出されたゴムチューブ20表面を均一に加熱可能な構成となっている。
【0040】
図5に赤外線ランプユニット17の例の斜視図を示す。赤外線ランプユニット17は赤外線ランプ18と反射面19とから構成されている。反射面19は放物面となっており、近赤外線は平行に反射される。赤外線ランプユニット6台を管状に組み合わせることにより、円筒状の均熱領域が形成されている。
【0041】
上記マイクロ波加硫装置(UHF)13は、テフロンでコーティングされたメッシュのベルト又はテフロン樹脂を被服したコロによって、上記押出機11より押出され近赤外線照射装置12で表面を加熱されたゴムチューブを搬送する。熱風加硫装置(HAV)14はテフロン樹脂を被服したコロで搬送を行っている。マイクロ波加硫装置(UHF)13と熱風加硫装置(HAV)14間は、テフロン樹脂を被服したコロで連結されている。
【0042】
導電性ゴムローラ製造装置(押出し加硫装置)は、例えば、全長14mからなり、装置11、12、13および14の長さは、順に、0.4m、4m、6m、1mとなっている。近赤外線照射装置12とマイクロ波照射装置13間、マイクロ波加硫装置(UHF)13と熱風加硫装置(HAV)14間、及び熱風加硫装置(HAV)14と引取機15間は0.1〜1.0mとなるように設定されている。
【0043】
バンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機を用いゴム材料の原料を混練した後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形したゴム材料を、上記押出機11に投入する。
【0044】
押出機11より、例えば、外径φ8〜φ15mm、内径φ2〜8mmのチューブ状に成形され押出されたゴムチューブが得られる。このゴムチューブは、押出機11より押し出された直後に近赤外線出力25〜30Aに設定した近赤外線照射装置12内を1.5〜6分間の間に通過し表面が加熱される。なお、本明細書において、φは直径を意味する。
【0045】
加熱工程において用いる近赤外線が1.15±0.4μmをピークに持つ近赤外線スペクトルを有することが、チューブ表面だけを効率的に加熱できるという点から好ましい。
【0046】
その後、例えば、マイクロ波強度0.5〜3.0kW、炉内温度(加熱空気による加熱)160〜230℃、搬送速度1.5〜4.0m/minに設定したマイクロ波加硫装置(UHF)13内にゴムチューブが搬送され加硫発泡が行われる。
【0047】
つづいてこれを160〜230℃に設定した熱風加硫装置(HAV)14に連続的に搬送し加硫発泡を完了させる。
【0048】
近赤外線照射装置を用いた加熱工程において、ゴムチューブの加熱が式(1)および(2)を満たす条件で行われた場合、ゴムチューブ表面のみが適度に加硫し、ゴムチューブ形状を保持することが可能となる。このため、加硫発泡後のゴムチューブの内径、外径の変形を抑制することが可能となる。
【0049】
押出し出されたゴムチューブに近赤外線を照射する時間tが長すぎたり、ゴムチューブ表面の温度Tがtに対して高くなりすぎると、ゴムチューブのスキン層が硬くなりすぎたり、スキン層の厚さが大きくなりすぎたりし易くなる。さらにはマイクロ波加硫装置内で加硫発泡する際にスキン層が硬いために十分に外側に発泡できず、内側に向かって発泡するため、内径が潰れやすくなる。tが短い場合や、ゴムチューブの温度Tがtに対して十分に高くならない場合は、マイクロ波加硫装置内でゴムチューブが軟化した時にゴムチューブが潰れてしまい、加硫発泡後のゴムチューブ内外径の縦横比が不均一になりやすい。さらにこのチューブの不均一に起因して周方向の硬度ムラや抵抗ムラが発生しやすい。
【0050】
加硫発泡後に引取機15より排出された直後に、加硫発泡を終えたゴムチューブを定尺切断機16により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物を作成する。次いで必要に応じてホットメルト接着剤、又は加硫接着剤を所望の領域に塗布した例えばφ4〜10mmの導電性芯材を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体を得る。この成形体を、例えば研磨砥石GC80(商品名。(株)テイケン製)を取り付けた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として例えば回転速度2000RPM、送り速度500mm/分で外径がφ15mmになるように研磨し、導電性発泡ゴムローラを作成する。
【0051】
本発明の導電性ゴムローラは、転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラ等の電子写真装置用ローラとして用いることができ、特に転写ローラとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0052】
まず、各種測定方法について説明する。
【0053】
〔チューブ状ゴム材料表面温度Tの測定方法〕
近赤外線照射装置直後に温度計(キーエンス社製、商品名:赤外放射温度計IT2−02)を取り付け、近赤外線照射装置通過直後の押出されたゴムチューブ(チューブ状ゴム材料)表面温度を測定した。
【0054】
〔チューブ内外径の縦横比測定方法〕
熱風加硫装置(HAV)通過後の加硫発泡が完了したチューブを任意の場所で切断した。その断面を投影機(ニコン社製、商品名:プロファイルプロジェクターV−12B)にて、内外径各々について最大部(a)と最小部(b)を測定し、その比b/aを測定した。このときb/aは1.05以内が好ましい。
【0055】
〔硬度ムラの測定方法〕
硬度計(アスカーC型、4.9N荷重)を使い、加硫発泡が完了したチューブに軸芯対を挿入し、導電性ローラにしたチューブの任意の場所を周方向に90°毎4箇所測定し、その最大値と最小値の差を表した。硬度ムラは2以内が好ましい。
【0056】
〔ローラの電気抵抗ムラの測定方法〕
導電性ローラを、N/N(23℃、55%RH)環境下において48時間放置した。その後、導電性ローラの軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにして外径30mmのステンレス製のドラムに圧着し、回転させた状態で、軸体とステンレスドラムとの間に2kVの電圧を印加して抵抗を測定した。この時の抵抗値の最大値を最小値で除した値を電気抵抗ムラとした。電気抵抗ムラは1.2以下が好ましい。
【0057】
各実施例及び比較例で使用した資材は以下の通りである。各例における配合は、表1および2に質量部で示す。
・アクリロニトリルブタジエンゴム[商品名:ニポールDN401LL、日本ゼオン(株)]。
・エピクロルヒドリンゴム[商品名:ハイドリンT3106S、日本ゼオン(株)]。
・酸化亜鉛[商品名:酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)]。
・ステアリン酸[商品名:ルナックS−20、花王(株)]。
・カーボンブラック[商品名:旭#35、旭カーボン(株)]。
・p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド[商品名:ネオセルボンN#1000S、永和化成工業(株)]。
・ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)[商品名:ノクセラーDM−P 大内新興化学(株)]。
・テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)[商品名:ノクセラーTOT−N 大内新興化学(株)]。
・硫黄(S)[商品名:サルファックスPMC 鶴見化学(株)]。
【0058】
各実施例及び比較例において、ゴム材料は、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、又はその混合物を含み、さらにp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを含むゴム組成物である。
【0059】
ゴム材料を加硫および発泡させる加硫発泡工程は、マイクロ波照射及び加熱空気によって行われるマイクロ波加硫炉を用いて行った。
【0060】
使用した導電性ゴムローラ製造装置では、ゴム材料を押出す押出し機ヘッド部分とマイクロ波加硫炉の間に、押出されたゴムチューブ表面が加熱されるように近赤外線照射装置が配置されている。近赤外線によってゴムチューブ表面が式(1)および(2)を満たすような条件で加熱されている例を複数設定し実施例とした。
【0061】
実施例における近赤外線照射時間t(秒)および近赤外線照射後のチューブ(チューブ状ゴム材料)表面温度T(℃)、ならびに評価結果を表1に示す。
【0062】
実施例1は近赤外線を3秒間照射し、近赤外線照射後のゴムチューブ表面温度が160℃になった事例である。ゴムチューブ表面の加熱が式(1)および(2)の条件を満たしているため、ゴムチューブの内径、外径の縦横比、抵抗ムラ、硬度ムラが小さく、良好な結果を得ることができた。
【0063】
実施例2、4は近赤外線を1.5秒間照射した場合の事例である。近赤外線照射後のゴムチューブ表面温度がそれぞれ205℃、161℃で、式(1)および(2)を満たしているため、ゴムチューブの内径、外径の縦横比、抵抗ムラ、硬度ムラが小さく、良好な結果を得ることができた。
【0064】
実施例3、5は近赤外線を6.0秒間照射した場合の事例である。近赤外線照射時間と近赤外線照射後のゴムチューブ表面温度が式(1)および(2)を満たしているため、ゴムチューブの内径、外径の縦横比、抵抗ムラ、硬度ムラが小さく、良好な結果を得ることができた。
【0065】
〔比較例〕
比較例としては、マイクロ波照射はあるが近赤外線照射装置による加熱がない事例や、式(1)もしくは(2)が成立しない条件で近赤外線を照射した事例を挙げた。比較例における近赤外線照射時間t(秒)および近赤外線照射後のチューブ(チューブ状ゴム材料)表面温度T(℃)、ならびに評価結果を表2に示す。
【0066】
比較例1は、近赤外線を照射していない事例である。近赤外線を照射していないため、チューブの内径に縦横比が大きくなってしまった。
【0067】
比較例2、4は近赤外線照射時間がそれぞれ5秒、1秒の場合であるが、近赤外線を照射している時間に対して、チューブ表面温度が高くなりすぎてしまったため、チューブのスキン層が硬くなりすぎ、内径が潰れてしまった。
【0068】
比較例3、5は近赤外線照射時間がそれぞれ6秒、1.5秒の場合であるが、近赤外線を照射している時間に対して、チューブ表面温度が十分に高くならなかったため、外径、内径の縦横比が大きすぎる結果となった。
【0069】
比較例6は、近赤外線照射時間が7秒の場合で、近赤外線を照射している時間が長すぎるため、チューブの表面温度が高くなりすぎたため、外径、内径の縦横比が大きすぎる結果となった。
【0070】
この結果から、本発明の導電性ゴムローラの製造方法によれば、加硫発泡後のゴムチューブ内外径の縦横比が1.05以内であり、また周方向の抵抗ムラも1.2以下となり、周方向の硬度ムラが2以下になることがわかる。
【0071】
また比較例の場合には、加硫発泡後のゴムチューブ内径、外径の縦横比、周方向の抵抗ムラ、硬度ムラが実施例よりも悪くなることがわかる。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】導電性ゴムローラを説明するための模式図である。
【図2】画像形成装置を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明の導電性ゴムローラの製造方法を実施することのできる加硫成形装置の例を示す模式図である。
【図4】本発明の導電性ゴムローラの製造方法に用いることのできる近赤外線照射装置の例を示す模式的断面図である。
【図5】赤外線ランプユニットの例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0075】
1・・・感光ドラム
2・・・帯電ローラ
3・・・レーザ光
4・・・現像装置
5・・・トナー
6・・・転写ローラ
7・・・転写材
8・・・クリーニングブレード
9・・・クリーニング装置
10・・・定着装置
11・・・押出機
12・・・近赤外線照射装置
13・・・マイクロ波加硫装置(UHF)
14・・・熱風加硫装置(HAV)
15・・・引取機
16・・・定尺切断機
17・・・赤外線ランプユニット
18・・・赤外線ランプ
19・・・反射面
20・・・ゴムチューブ(チューブ状ゴム材料)
61・・・導電性芯材(芯金)
62・・・発泡体ゴム層(弾性層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体ゴム層形成用のゴム材料を押出し機のヘッドからチューブ状に押し出すゴムチューブ押し出し工程と、押し出されたチューブ状ゴム材料を加熱して発泡および加硫を行う加熱発泡加硫工程とを有する、導電性芯材の周面上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
該発泡体ゴム層形成用のゴム材料が、アクリロニトリルブタジエンゴム及び/又はエピクロルヒドリンゴムを含み、かつ発泡剤としてp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドのみを含み、
該加熱発泡加硫工程における加熱を、マイクロ波加硫炉を用いてマイクロ波照射及び加熱空気によって行い、
該ゴムチューブ押出し工程の後、加熱発泡加硫工程の前に、ゴムチューブ押出し工程で押し出されたチューブ状ゴム材料を近赤外線照射によって加熱する加熱工程を有し、
該加熱工程において、近赤外線照射後のチューブ状ゴム材料の表面温度をT(℃)、近赤外線の照射時間t(秒)とするとき、式(1)および(2)
【数1】

が成立することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程において用いる近赤外線が1.15±0.4μmをピークに持つ近赤外線スペクトルを有することを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
電子写真画像形成装置に用いる転写ローラであって、
請求項1または2に記載の方法によって製造された導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−192067(P2009−192067A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36452(P2008−36452)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】