説明

導電性パターンの形成方法

【課題】あらかじめ回路基板上に凸形状が付されていても、この凸形状の近傍に導電性パターンを形成できる導電性パターンの形成方法を提供すること。
【解決手段】回路基板11上において、ハンダ18の形成領域に開口4が形成された弾性シート2でICチップ12の少なくとも一部を覆った状態で、ハンダペースト16をスクリーン印刷により塗布する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば回路基板上に電子部品を実装する際に用いられるハンダペーストなどの導電性パターンの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板上にコンデンサなどの電子部品を実装する際に用いられるハンダペーストの塗布方法としては、所定形状の開口が形成されたメタルマスクを用いてスクリーン印刷する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この塗布方法では、回路基板上にICチップなどがあらかじめ実装されている場合において、メタルマスクにICチップメタルマスクが接触したりハンダペーストが塗布されないようにしている。
【特許文献1】特開平5−206689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の導電性パターンの形成方法においても、以下の課題が残されている。すなわち、あらかじめ回路基板上に搭載されているICチップは、封止材により封止されていることがある。そのため、封止材の供給量などによって封止材の形状にバラツキが生じる。したがって、マスクに形成される凹部の形状は、封止材の形状バラツキを見越して設計される。これにより、マスクにおいてICチップ近傍となる領域には、ハンダペーストを塗布するための開口を形成できないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、あらかじめ回路基板上に凸形状が付されていても、この凸形状の近傍に導電性パターンを形成できる導電性パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかる導電性パターンの形成方法は、部材が搭載され前記部材が表面から突出する突出部が形成された回路基板上に、導電性パターンを形成する導電性パターンの形成方法であって、前記回路基板上において、前記導電性パターンの形成領域に開口が形成された弾性シートで前記突出部の少なくとも一部を覆った状態で、パターン形成ペーストをスクリーン印刷により塗布する工程を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明では、回路基板にあらかじめ付されている突出部形状に応じて弾性シートが変形するため、部材や部材の近傍にパターン形成ペーストを塗布するための開口を形成できる。すなわち、弾性シートが弾性変形するため、弾性シートと回路基板との間に間隙が発生することを防止できる。また、マスクが弾性体であるため、部材に機械的な損傷が発生しない。このため、部材や部材の近傍であっても弾性シートと回路基板とが密着可能となる。したがって、部材や部材の近傍においても導電性パターンを精度よく形成できる。
【0007】
また、本発明の導電性パターンの形成方法は、前記凸部材が、電子部品であることが好ましい。
この発明では、電子部品の形状に応じて弾性シートが変形するため、電子部品上や電子部品の近傍に導電性パターンを形成できる。
【0008】
また、本発明の導電性パターンの形成方法は、塗布した前記パターン形成ペースト上に、他の電子部材を配置する工程を備えることが好ましい。
この発明では、電子部品の近傍に導電性パターンを形成できるため、回路基板上にあらかじめ搭載されている電子部品の近傍に他の電子部品を実装することができる。したがって、電子部品を高密度で実装可能となる。
【0009】
また、本発明の導電性パターンの形成方法は、前記弾性シートが、枠体に形成された複数の開口部それぞれにおいて張設されていることが好ましい。
この発明では、弾性シートを複数の開口部それぞれに対応する領域に分割することで、複数の開口部により分割しない場合と比較してスクリーン印刷時における弾性シートの伸び量を小さくすることができる。これにより、弾性シートの弾性変形による導電性パターンの形成精度の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明における導電性パターンの形成方法の第1の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。ここで、図1はマスクを示す斜視図、図2はハンダの形成方法を示す工程図である。
【0011】
まず、本発明における導電性パターンの形成方法に用いられるマスク1について説明する。マスク1は、図1に示すように、弾性シート2と、弾性シート2が張設される枠体3とを備えている。
弾性シート2は、例えばフッ素系樹脂やポリイミドなどの弾性を有する樹脂材料により形成されている。そして、弾性シート2には、複数の開口4が形成されている。これら複数の開口4は、後述するハンダ18の形成領域に対応して形成されている。
【0012】
次に、マスク1を用いた導電性パターンの形成方法について説明する。
まず、マスク1を回路基板11上に配置する(図2(a))。回路基板11上には、あらかじめICチップ(電子部品、部材)12が搭載されており突出部が形成されている。また、回路基板11上には、後述するコンデンサチップやインダクタチップなどのチップ部品(他の電子部品)17を搭載するためのランド13や配線(図示略)が形成されている。このICチップ12は、例えば厚さが150μm〜200μm程度や625μm程度となっている。そして、ICチップ12は、樹脂材料で形成された封止材14により封止されている。このとき、マスク1の開口4とランド13との位置合わせを行う。
そして、マスク1と回路基板11とを接近させ、弾性シート2と回路基板11とを接触させる(図2(b))。このとき、弾性シート2は、ICチップ12及び封止材14により形成された突出部の形状に合わせて弾性変形する。このため、弾性シート2は、ICチップ12を被覆する。
【0013】
続いて、スキージ15を用いてスクリーン印刷をする(図2(c))。ここでは、スキージ15を弾性シート2の上面において弾性シート2を押し付けながら一方向に移動させ、弾性シート2上に配置された導電性を有するハンダペースト(パターン形成ペースト)16を複数の開口4それぞれに充填する。このとき、弾性シート2がICチップ12及び封止材14それぞれに倣って弾性変形するため、ICチップ12及び封止材14を含めた回路基板11と弾性シート2との間に間隙が発生することが抑制される。このため、ICチップ12の近傍であっても、ハンダペースト16が形状精度よく塗布される。
ここで、複数の開口4それぞれにハンダペースト16をより確実に充填するため、スキージ15を往復移動させる、垂直方向に移動させるなど、スキージ15の移動方向を適宜変更してもよい。
【0014】
そして、複数の開口4それぞれにハンダペースト16を充填した後、マスク1を回路基板11から離間させる(図2(d))。
その後、塗布したハンダペースト16上に例えばコンデンサチップやインダクタチップ、抵抗チップのようなあらかじめ回路基板11に搭載されているICチップ12以外のチップ部品17を搭載する。そして、ハンダペースト16を溶融、固化してハンダ(導電性パターン)18とする(図2(e))。以上のようにして、チップ部品17と回路基板11上に形成された配線とを接続するハンダ18を形成する。
【0015】
以上のように、本実施形態における導電性パターンの形成方法によれば、ICチップ12及び封止材14により回路基板11に設けられた突出部の形状に応じて弾性シート2が弾性変形するため、封止材14による形状バラツキによらず、ICチップ12の近傍にハンダ18を形成できる。
また、回路基板11上にあらかじめ実装されているICチップ12と隣り合う他のチップ部品17との間には、従来の導電性パターンの形成方法において0.8mm程度の距離が必要となるが、本発明における導電性パターンの形成方法によれば0.2mm程度まで短縮できる。したがって、ICチップ12及びチップ部品17の高密度な集積化が可能となる。
【0016】
ここで、弾性シート2は、ポリ4フッ化エチレンで形成されることが好ましい。これにより、ハンダペースト16が弾性シート2に付着しにくくなるため、スクリーン印刷後にマスク1を回路基板11から離間させた際に塗布したハンダペースト16がマスク1に付着してハンダ18の形状が変化することを抑制できる。また、マスク1を回路基板11から離間させた際において、弾性シート2にハンダペースト16が付着することを防止するための被覆膜を弾性シート2の表面に形成してもよい。
【0017】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明における導電性パターンの形成方法の第2の実施形態を、図面に基づいて説明する。ここで、図3はマスクを示す平面図、図4は接続配線の形成方法を示す工程図である。なお、本実施形態では、上述した第1の実施形態と弾性シートの開口形状が異なるため、この点を中心に説明すると共に、上記実施形態で説明した構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0018】
本実施形態における導電性パターンの形成方法では、図3に示すように、マスク50の弾性シート51に形成された複数の開口52それぞれが回路基板11上にあらかじめ実装されているICチップ12と重なるように形成されている。
複数の開口52それぞれは、ICチップ12の端子と回路基板11上に形成されている配線とにわたる領域と重なるように形成されている。
【0019】
次に、マスク50を用いた導電性パターンの形成方法について説明する。
まず、上述した第1の実施形態と同様に、弾性シート51と回路基板11とを接触させる。このとき、弾性シート51は、開口52が形成されていない領域においてICチップ12を被覆している。そして、スキージ15を用いてスクリーン印刷をし、配線ペースト(パターン形成ペースト)53を複数の開口52それぞれに充填する(図4(a))。このとき、開口52が形成されている弾性シート51が弾性変形するため、チップ部品17を含めた回路基板11と弾性シート51との間に間隙が発生することが抑制される。このため、チップ部品17により形成された段差においても、開口52がICチップ12により形成される凸形状に沿って配置されるので、配線ペースト53が形状精度よく塗布される。
その後、塗布した配線ペースト53を加熱して接続配線(導電性パターン)54とする(図4(b))。以上のようにして、ICチップ12の上面に形成されている端子と回路基板11上に形成されている配線とを接続する接続配線54を形成する。
【0020】
以上のように、本実施形態における導電性パターンの形成方法においても、上述した第1の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
なお、本実施形態において、ICチップ12の上面に接続配線54を形成しているが、回路基板11上の他の領域における配線を形成してもよい。
【0021】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明における導電性パターンの形成方法の第3の実施形態を、図面に基づいて説明する。ここで、図5は、マスクを示す平面図である。なお、本実施形態では、上述した第1の実施形態とマスクの構成が異なるため、この点を中心に説明すると共に、上記実施形態で説明した構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0022】
本実施形態における導電性パターンの形成方法では、図5に示すようなマスク60を用いてハンダ18を形成する。
マスク60は、格子状に形成された枠体61と、枠体61により区画された各領域において張設された複数(図5では6枚)の弾性シート2とを備えている。
枠体61には、格子状に形成されることによって区画された複数(図5では6つ)の開口部62が形成されている。ここで、複数の開口部62それぞれは、平面視矩形状に形成されており、回路基板11の平面形状とほぼ同等となっている。
【0023】
次に、マスク60を用いた導電性パターンの形成方法について説明する。本実施形態における導電性パターンの形成方法では、複数の回路基板11それぞれに対してほぼ同時にハンダ18を形成する。
まず、マスク60における複数の弾性シート2の配列と同様に、複数(6枚)の回路基板11を配列する。そして、上述した第1の実施形態と同様に、複数の弾性シート2それぞれと複数の回路基板11それぞれとを接触させる。さらに、スキージ15を用いてスクリーン印刷をし、ハンダペースト16を各弾性シート2における複数の開口4それぞれに充填する。
【0024】
このとき、枠体61が複数の回路基板11それぞれに対応して区画されており、複数の開口部62それぞれに各弾性シート2が張設されている。このため、各弾性シート2が複数の回路基板11それぞれに対応して設けられている。これにより、枠体61を区画せずに複数の回路基板11すべてを1枚の弾性シートで対応させることと比較して、弾性シート2における延び量が小さくなるため、ハンダ18の形成精度の低下が抑制される。
以上のようにして、各回路基板11上に対してほぼ同時にハンダ18を形成する。
【0025】
以上のように、本実施形態における導電性パターンの形成方法においても、上述した第1の実施形態と同様の作用、効果を奏するが、複数の回路基板11に対してほぼ同時にハンダ18を形成するときにおいて弾性シート2の伸び量を抑制してハンダ18の形成精度の低下を抑制できる。
なお、本実施形態において、枠体61と同様の平面形状を有する1枚の弾性シートによって複数の開口部62それぞれを張設する構成としてもよい。
また、上述した第2の実施形態と同様に、枠体61に弾性シート51を張設して接続配線54を形成してもよい。
そして、1つの開口部62が1つの回路基板11と対応して形成されているが、枠体61に2以上の開口部62が形成されていれば、2以上の開口部62で1つの回路基板11と対応する構成としてもよく、1つの開口部62で2以上の回路基板11と対応する構成としてもよい。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、導電性パターンとしてハンダや接続配線を形成しているが、他の導電性パターンを形成してもよい。
また、回路基板上には、あらかじめICチップが搭載されているが、何らかの凸部材が付されていればよく、他の部材が搭載されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるマスクを示す斜視図である。
【図2】ハンダの形成方法を示す工程図である。
【図3】本発明の第2の実施形態におけるマスクを示す平面図である。
【図4】接続配線の形成方法を示す工程図である。
【図5】本発明の第3の実施形態におけるマスクを示す平面図である。
【符号の説明】
【0028】
2,51 弾性シート、4,52 開口、11 回路基板、12 ICチップ(電子部品、部材)、16 ハンダペースト(パターン形成ペースト)、17 チップ部品(他の電子部品)、18 ハンダ(パターン)、53 配線ペースト(パターン形成ペースト)、54 接続配線(パターン)、61 枠体、62 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材が搭載され前記部材が表面から突出する突出部が形成された回路基板上に、導電性パターンを形成する導電性パターンの形成方法であって、
前記回路基板上において、前記導電性パターンの形成領域に開口が形成された弾性シートで前記突出部の少なくとも一部を覆った状態で、パターン形成ペーストをスクリーン印刷により塗布する工程を備えることを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項2】
前記部材が、電子部品であることを特徴とする請求項1に記載の導電性パターンの形成方法。
【請求項3】
塗布した前記パターン形成ペースト上に、他の電子部材を配置する工程を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性パターンの形成方法。
【請求項4】
前記弾性シートが、枠体に形成された複数の開口部それぞれにおいて張設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−111127(P2009−111127A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281393(P2007−281393)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】