説明

導電性ペースト

【課題】高融点半田に対し耐半田溶解性を改善する。
【解決手段】本発明に係る導電性ペーストは、
(A)導電性粉末と、
(B)酸化物換算で下記の組成からなる成分を合計で85重量%以上含有し、かつ、実質的に鉛を含まないガラスフリットと、
(C)有機ビヒクルと、
を含むことを特徴とする導電性ペースト。
ガラスフリット中の割合として、SiO2…16〜47重量%、Al23…33〜52重量%、MgO…3〜15重量%、B23…15〜45重量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板や金属基板等の各種基板又は電子部品などに対し、高温で焼付けすることにより、電極や導体を形成するのに適した、鉛フリーの導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストは、通常、銀や銀−パラジウム、銅、ニッケルなどの金属を主成分とする導電性粉末と、無機結合剤としてのガラスフリットとを、樹脂及び溶剤を含む有機ビヒクルに均一に分散させてペースト状にしたものであり、必要に応じて酸化ビスマス、酸化銅などの金属酸化物などが添加される。
【0003】
当該導電性ペーストは、スクリーン印刷、ディッピング、刷毛塗り等の種々の方法で、所定のパターン形状になるよう各種基板上あるいは電子部品の端子部に塗布され、その後700〜950℃程度の高温で焼成され、導体膜(厚膜導体)が形成される。
【0004】
近年の環境に対する関心の高まりにより、導電性ペーストに使用されるガラスフリットは鉛を含まない鉛フリーのガラスフリットであることが要求されることが多くなっている。鉛フリーのガラスフリットは、鉛(PbO)を全く含有しない、若しくは不可避不純物として鉛を極僅か(例えば50ppm以下)のみ含有するガラスである。かかる鉛フリーのガラスフリットとして、例えばアルミノホウケイ酸系ガラスを用いる導電性ペーストが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
導体膜上にリード線や各種電子部品を取付けたり、電子部品をプリント基板等に半田で実装する場合、あるいは防湿、防塵処理が必要な場合、当該導体膜上には、必要によりめっき処理を施した後、半田層が形成される。半田層は、通常、前記基板を溶融半田浴に浸漬するか、又は半田ペーストを導体膜上の所定位置に印刷することにより形成される。この後、実際の半田接合を行うにあたっては、加熱して半田層をリフローさせる。
【0006】
このような厚膜導体回路や電極の形成に用いられる導電性ペーストには、導電性、基板との接着強度及び耐半田溶解性(半田耐熱性)等、様々の特性を満たすことが要求される。
【0007】
特に、近年のマイクロエレクトロニクス分野においては、半田材料においても鉛フリー化が強く要請されており、従来最も一般的に使用されている鉛−錫系半田に代わって、種々の鉛フリー半田が用いられ始めている。鉛フリー半田は、様々な融点を有するものが存在するが、例えば、260℃程度の高温で溶融される錫−銀−銅系半田(Sn/3Ag/0.5Cu)が広く知られている。
【0008】
しかしながら、上記錫−銀−銅系半田のような高融点半田の使用に際して下記のような不都合が生じている。すなわち、従来、導電性ペーストの設計・開発は、半田付け温度が230〜240℃程度の鉛−錫系半田を用いることを前提としておこなわれているため、高融点半田を使用すると、導電性ペースト中に導電性粉末として含有された金属が、溶融した半田中に拡散・溶解してしまい、所謂「半田食われ」という現象を引き起こす可能性が高くなってしまう。
【0009】
そこで、例えば特許文献2においては、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末及びアルミナ粉末を用いることにより、焼成後の導体膜の耐半田溶解性を向上させて半田食われを抑制する導電性ペーストが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭50−161692号公報
【特許文献2】特開2006−228572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、さらに厳しい条件が要求される用途では、導体膜の耐半田溶解性をさらに向上させなければならないという課題があった。
【0012】
本発明の目的は、特に半田付けされる導体膜や電極の形成に用いたときに耐半田溶解性を向上させ得る導電性ペーストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(A)導電性粉末と、
(B)酸化物換算で下記の組成からなる成分を合計で85重量%以上含有し、かつ、実質的に鉛を含まないガラスフリットと、
(C)有機ビヒクルと、
を含む。
ガラスフリット中の割合として、SiO2…16〜47重量%、Al23…33〜52重量%、MgO…3〜15重量%、B23…15〜45重量%
【0014】
本発明において、好ましくは、
上記(A)導電性粉末は、
銀を主成分とする銀系金属粉末である。
【0015】
本発明において、好ましくは、
さらに、(D)酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選ばれる少な くとも1種の金属酸化物を含む。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、耐半田溶解性に優れた導体膜や電極を得ることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、導電性成分として半田食われが生じやすい銀を主成分とするため、より一層本発明による耐半田溶解性の作用効果を享受することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の作用により、導体膜の耐半田溶解性を一段と向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る導電性ペーストは、(A)導電性粉末、(B)ガラスフリット及び(C)有機ビヒクルを必須成分として含むものである。
【0020】
以下、(A)導電性粉末、(B)ガラスフリット、(C)有機ビヒクルについてそれぞれ詳細に説明する。
【0021】
(A)導電性粉末
本発明においては、導電性粉末は特に限定されないが、例えば、銀、パラジウム、白金、金等の貴金属粉末、銅、ニッケル、コバルト、鉄等の卑金属粉末、又はこれら金属を含む合金粉末や、表面が他の導電性材料で被覆された複合粉末等を用いることができる。
【0022】
本発明においては、導電性粉末として、半田食われの生じやすい銀を主成分とする粉末を用いた場合でも、耐半田溶解性が極めて優れている。特に、導電性粉末中に占める銀の配合比率が70重量%以上の銀系導電性粉末を用いた場合でも、銀の半田食われを効果的に抑制することができる。また、銀の含有量が例えば1〜30重量部と少量であっても、表面に銀が露出した銀被覆銅粉末などに対しては、耐半田溶解性を顕著に改善できる。
【0023】
銀を主成分とする粉末から構成された銀系導電性粉末において、耐半田溶解性、導電性、銀マイグレーション防止の点から、銀以外の他の成分として、パラジウム、白金、金、銅、ニッケル等の成分を配合することができるが、導電率やコスト面からは、他の成分の配合量を0.1〜30重量%とすることが好ましい。特に、他の成分としてパラジウムが配合されることが好ましく、銀系導電性粉末として、銀及び他の成分の混合粉末又は合金粉末、複合粉末、若しくはこれらの混合粉末を用いることができる。なお、本明細書において、0.1〜30重量%とは、0.1重量%以上、30重量%以下を意味する。以下、同様の意味で記号「〜」を使用する。
【0024】
導電性粉末としては平均粒径が0.1〜10μmのものを使用することができ、平均粒径の異なる2種類以上の導電性粉末を混合することも可能である。導電性粉末の形状は特に制限されず、球状粉及びフレーク状粉などを適宜使用することができ、形状の異なる2種類以上の導電粉末を混合することも可能である。
【0025】
(B)ガラスフリット
本発明に係るガラスフリットは、SiO2とAl23とMgOとB23とを主成分として含有するアルミノホウケイ酸系ガラスフリットであって、緻密な金属−ガラス焼成膜構造を作るべく組成選択されたものである。具体的にガラスフリットは、酸化物換算で下記の組成からなる成分を合計で85重量%以上含有し、かつ、実質的に鉛を含まないものである。
【0026】
SiO2…16〜47重量%、Al23…33〜52重量%、MgO…3〜15重量%、B23…15〜45重量%。
なお、「SiO2、Al23、MgO、B23」の各成分の含有量は、ガラスフリット中に占める割合である。
【0027】
また、各成分は、上記の酸化物換算の量がガラスフリット中に含有されていればよく、ガラスフリット中に上記酸化物として存在していることを意味するものではない。一例として、SiO2はSiOとして含まれていてもよい。
【0028】
ガラスフリットとして、平均粒径1.0〜5.0μm程度のものを使用するのが好ましい。ガラスフリットは、導電性粉末100重量部に対して1〜15重量部配合することが好ましい。ガラスフリットが1重量部未満であると、耐半田溶解性及び基板との密着性が低下する傾向がある。また、ガラスフリットが15重量部を超えると、導体膜として導電性が低下しすぎる傾向がある。さらに好ましいガラスフリットの配合量は、2〜10重量部である。
【0029】
下記に、ガラスフリットの組成の限定理由について成分ごとにそれぞれ説明する。
【0030】
SiO2に関しては含有量が16〜47重量%の範囲内である。SiO2は、含有量が16重量%を下回ると、緻密な焼成膜が形成されず、耐半田溶解性も低下する。また、SiO2の含有量が16〜47重量%の範囲外であるものは、ガラス化が困難となるので望ましくない。ガラス化容易性の観点から、SiO2の含有量が20〜40重量%、特に20〜33重量%の範囲内であることが、さらに好ましい。
【0031】
Al23に関しては含有量が33〜52重量%の範囲内である。Al23の含有量は、33重量%を下回ると耐半田溶解性が低下し、52重量%を上回るとガラス製造時に高融になりすぎてガラス化が困難となる。ガラス化容易性の観点から、Al23の含有量は48重量%以下であることが、さらに好ましい。また、Al23の含有量が多いと耐薬品性などの特性が向上する傾向があることから、Al23の含有量は35重量%以上であることが、特に好ましい。
【0032】
MgOは、ガラス化範囲を広げる効果を有するものであり、その含有量は、3〜15重量%の範囲内である。MgOの含有量が3重量%を下回るとガラス化が困難となり、15重量%を上回っても、ガラス化範囲がそれ以上拡大されず、耐半田溶解性も低下する。特に優れた耐半田溶解性を得るためには、MgOの含有量を10重量%以下にすることが好ましい。
【0033】
23はガラスフリット中で融剤として作用するものであり、その含有量は15〜45重量%の範囲内である。B23は含有量が15重量%を下回ると融剤としての効果が小さく、45重量%を上回ると耐半田溶解性が低下する。また、B23は含有量が増大すると耐薬品性などを低下させる傾向があるため、含有量が40重量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
さらに、ガラスフリットには、必要に応じてSiO2、Al23、MgO、B23以外の他の成分を含有させることができる。
【0035】
この場合、他の成分の総量は、酸化物換算で0〜15重量%の範囲内であることが好ましい。他の成分の含有量が15重量%を超えると、本発明のアルミノホウケイ酸系ガラスが有する優れた耐半田溶解性を変化させてしまい、耐半田溶解性が低下してしまうおそれがあるため好ましくない。
【0036】
他の成分として、耐半田溶解性や耐薬品性を低下させない範囲で他の金属酸化物やハロゲンなどを含有させることができる。例えば、金属酸化物として、BaO、CaO、SrO、Li2Oなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物を含有させると、MgOと同様にガラス化範囲を広げる他、軟化温度を調整する効果を有する。また、他の成分として、TiO2、ZrO2を配合することにより、基板との密着性や導体膜の緻密性を向上させ、耐半田溶解性を向上させる効果を有する。本発明に係るガラスフリットには、さらに、他の成分として、Cu2O、MoO3、La23等の各種酸化物が含有されてもよいが、前述したように環境に対する観点から、実質的に鉛成分は含まれず、さらにはビスマス成分も含まれないことが望ましい。
【0037】
ガラスフリットは、ガラスフリットを構成する各成分の原料化合物を混合し、その混合物を溶融、急冷、粉砕することで所望のガラスフリットを製造することができる。この通常の製造方法の他に、ゾルゲル法、噴霧熱分解法、アトマイズ法等の種々の方法で所望のガラスフリットを製造することもできる。
【0038】
(C)有機ビヒクル
有機ビヒクルとしては有機バインダや溶剤等を用いることができる。有機バインダとしては、セルロース類、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ロジンエステル等を用いることができる。他方、溶剤としては、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、炭化水素系等の有機溶剤や水、これらの混合溶剤を用いることができる。
【0039】
有機ビヒクルの配合量は特に限定されるものではなく、無機成分をペースト中に保持し得る適切な量で用途や塗布方法に応じて適宜調整される。
【0040】
さらに、本発明の導電性ペーストは、基板との密着性や導体膜の緻密性を向上させたり、耐半田溶解性を向上させるために、任意の成分として(D)金属酸化物を含有しても良い。金属酸化物は、1種類のみ配合されても、2種類以上組み合わせて配合することもできる。
【0041】
金属酸化物としては、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化銅、ジルコン、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ランタン等、従来から導電性ペーストに配合される種々の金属酸化物が挙げられるが、特に、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2、TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、等を用いるのが好ましい。金属酸化物としては、平均粒径5.0μm以下の粉末を用いるのが好ましい。また金属酸化物は、有機金属化合物などのように金属酸化物の前駆体として配合されていても良い。
【0042】
その他、本発明の導電性ペーストには、印刷特性などを調整するために、通常添加されるような可塑剤、高級脂肪酸や脂肪酸エステル系等の分散剤、界面活性剤、さらには樹脂ビーズなどの固形樹脂など、(A)〜(D)以外の添加剤を適宜配合することができる。
【0043】
本発明の導電性ペーストは、例えば次のように製造される。
(A)導電性粉末と、(B)ガラスフリットと、必要に応じて(D)金属酸化物及び他の添加剤とを、適切な配合比率で調合・混合し、(C)有機ビヒクル中に均一に分散させてペースト状とする。
【0044】
(A)導電性粉末、(B)ガラスフリット、及び必要に応じて配合される金属酸化物の比率は特に限定されず、目的・用途に応じて通常使用される範囲内で適宜調整される。好ましくは、(A)導電性粉末100重量部に対し、(B)ガラスフリットを1〜15重量部、(D)金属酸化物を合計量で0〜10重量部程度配合する。
【0045】
本発明の導電性ペーストは、基板や電子部品に形成される導体や電極形成に使用されるが、ここでは一例として、基板上に電極を形成する場合について説明する。
【0046】
導電性ペーストは、スクリーン印刷やディッピング、刷毛塗り等の適宜な方法によって基板上に所望のパターンで塗布され、その後、700〜950℃程度の高温で焼成される。焼成工程において、本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリットは昇温過程で軟化して流動し、膜全体に拡散して導電性粉末の表面を濡らして焼結を促進する。これにより、焼成後に形成される導体膜は、緻密な金属焼成膜構造を形成する。さらに、ガラスフリットは、温度上昇による粘度降下に伴って少なくともその一部が基板との界面に移行し、導体膜と基板を強固に接着させる。
【0047】
また、焼成工程において、ガラスが流動化し、導電性粉末が焼結を開始する時点で膜中にビヒクルなどの有機物が残留していると、その後、高温で分解して発生するガスが膜中に閉じ込められてブリスタ(気泡)を生じる一因となり、外観不良となるばかりか、焼成後の導体膜の緻密性を損なうことになる。本発明に係るガラスフリットは、その焼成時の流動性などから、ブリスタを効果的に抑制することができる。
【0048】
本発明の導電性ペーストによれば、特に、焼結した金属粒子間の界面に残存するガラスの存在により、金属の焼成膜が強固に保持され、緻密な金属焼成膜構造を形成するため、半田食われがなく、かつ、接着強度の大きい導体膜が得られ、仮に焼成膜の表面の一部が半田食われを起こしても、下部まで溶解が進行しにくく、そのため耐半田溶解性が格段に向上するものと推測される。
【0049】
なお、本発明の導電性ペーストによって得られた導体膜をSEM観察すると、その導体膜中に、ガラスフリットに由来していると推測される微細な結晶が網目状に析出し、極めて緻密な膜構造を形成している例が幾つか確認された。この結晶が析出している導体膜においては、導電性粉末が特に強固に保持され、その結果、耐半田溶解性の著しい改善が得られたと推測しているが、例えSEM観察では結晶の存在を明確に確認できない導体膜であっても、従来のものと比較するとはるかに良好な耐半田溶解性が得られていることから、本発明に係るガラス組成を完成するに至った。
【0050】
また、上記の膜構造は、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタンを添加すると、さらに形成され易くなり、導体膜の緻密性が一層強化され、より確実に半田食われを防止することができる。
【0051】
更に、本発明に係る導電性ペーストでは、耐半田溶解性の他にも、耐酸性及び基板との接着強度等の特性に優れており、例えば、アルミナ、チタン酸バリウム等のセラミック基板、ガラス基板、ガラスセラミック基板等の絶縁性基板や、表面に絶縁層を形成したステンレス等の金属基板等の各種基板のいずれに対しても、接着強度が高く、優れた厚膜導体を形成することができる。
【0052】
なお、本発明に係る導電性ペーストは、各種基板に対して厚膜導体回路や電極等を形成するのに適しているが、特にチップ抵抗、積層チップコンデンサ、積層チップインダクタ等のセラミックチップ部品やその他の電子部品の電極形成、セラミック多層基板の表面導体層の形成等に好ましく使用することができる。特に、本発明に係る導電性ペーストを焼成して得られる導体膜は、耐半田溶解性に優れることから、例えば半田付けや半田コートがなされる電子部品の端子電極や当該電子部品を接続する基板上の電極に好適である。また、本発明から得られる導体膜は、必ずしも半田付けされる必要はなく、例えば、基板の裏面や異なる位置に形成された電極に対して半田を付着させるために基板ごと半田浴に浸漬されるような基板上の導体パターンにも好適に使用することができる。特に、本発明から得られる導体膜は、チップ抵抗器の1次電極として好適に用いられる。さらに、本発明から得られる導体膜は、耐酸性にも優れることが確認されているため、例えばめっき処理が施される電極にも好適に使用することができる。
【実施例】
【0053】
本実施例では、導電性ペーストの組成が互いに異なる複数種の試料を作製し、各試料の性質・特性等を評価した。
【0054】
(1)試料の作製
(1.1)ガラスフリットの作製
ガラス原料を下記表1に示すガラス組成となるように混合し、各混合物を1600℃で1〜1.5時間溶融させ、溶融させた各混合物をグラファイト上に流出させて急冷した。急冷後に得られたガラス質物質を、アルミナボールを用いたボールミルで48時間粉砕して、平均粒径約2.5μmのガラスフリットA〜を作製した。平均粒径は、レーザ式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布の重量基準の積算分率50%値(D50)である。なお、ガラスフリットBについては、1600℃において溶融せず、ガラスフリットBの作製ができなかった。下記の表では、本発明の範囲外のガラスフリットに対し、*を付加して示している。
【0055】
【表1】

【0056】
(1.2)試料1の作製
平均粒径が0.4μmと2.5μmの球状の銀粉末を重量比1:1で混合した混合銀粉末、ガラスフリットFを4重量部、並びにエチルセルロース6重量%、エポキシ樹脂4重量%及びブチルカルビトール90重量%からなる有機ビヒクル35重量部を混合し、3本ロールミルを用いて混練し、更にブチルカルビトールを希釈剤として添加し、10rpmにおける粘度が300〜600Pa・sになるように粘度調整を行って、導電性ペーストを製造した。
【0057】
その後、250メッシュのスクリーンを用いてアルミナ基板上に上記導電性ペーストをスクリーン印刷し、そのアルミナ基板をピーク温度850℃で10分間保持して焼成し、所定パターンの導体膜が形成されたアルミナ基板(試験片)を得た。そしてその試験片を「試料1」とした。
【0058】
(1.3)試料2〜15、比較試料1〜6の作製
金属粉末、ガラスフリットA及びC〜O、各種金属酸化物を表2及び3に示す比率で混合し、(1.2)と同様にして導電性ペーストを製造した。但し、試料5、12は、銀粉末に代えて、銀粉末とニッケル粉末、又は銀粉末とパラジウム粉末をそれぞれ表に示す比率で用いたものである。ビヒクルおよび希釈剤は試料1と同じものを用い、10rpmにおける粘度が300〜600Pa・sになるよう粘度調整を行った。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
得られたそれぞれの導電性ペーストにつき、上記(1.2)の項目と同様の処理を施して複数種の試験片を作製し、それら各試験片を「試料2〜15」、「比較試料1〜6」とした。
【0062】
(2)各試料の性質・特性等の評価
各試料1〜15、比較試料1〜6に対し、面積抵抗値、耐半田溶解性を測定・評価した。各測定・評価項目の詳細を下記に示し、各試料1〜15、比較試料1〜6の測定・評価結果を試料ごとに上記表2、表3に示した。
【0063】
(2.1)ブリスタの評価
各試料を目視で観察し、ブリスタが確認できない場合に「○」、ブリスタが確認できた場合に「×」と評価した。
【0064】
(2.2)面積抵抗値の測定(導電性の評価)
各試料において、0.6mm×62.5mmパターンの両端間の抵抗値をデジタルマルチメータ(KEEITHLEY社製、Model2002、測定レンジ:0〜20Ω)で測定し、導体膜の膜厚を10μmに補正したときの値を面積抵抗値とした。
【0065】
(2.3)耐半田溶解性の評価
各試料をフラックスに浸漬し、その後各試料を260℃のSn/3Ag/0.5Cu半田浴中に10秒間浸漬し、試料を取り出した。この半田浴への浸漬を合計3回繰り返して行った。当該半田浴から取り出した後の各試料における導体膜の抵抗値を測定し、その測定結果から各試料の耐半田溶解性を評価した。具体的には、抵抗値が測定できた場合に「○」と評価し、抵抗値が測定レンジの上限を超えた場合に「×」と評価した。
【0066】
本発明の範囲内のガラスフリットF〜I、L〜Oが配合された試料1〜15では、いずれも耐半田溶解性が良好であったが、本発明の範囲外となるガラスフリットA、C〜Dが配合された比較試料1〜3では耐半田溶解性が「×」となった。
【0067】
また、ガラスフリットE、J及びKが配合された比較試料4〜6では、耐半田溶解性が良好であったが、導体膜表面にブリスタが観察された。
【0068】
また、試料6〜試料15のように、導電性ペーストに金属酸化物を配合した場合であっても、耐半田溶解性が良好であった。さらに試料5及び12の結果から、導電性粉末としてAg以外の金属粉を配合した場合であっても、本発明の効果を十分に得られることがわかる。
【0069】
試料4、5、8〜11、13〜15のように、ガラスフリットに他の成分(BaOやLi2O、TiO2、ZrO2)を配合した場合であっても、耐半田溶解性が良好であった。
【0070】
さらに、ガラスフリットOを用いた試料4、試料13〜15について、(2.3)と同様にして、抵抗値が測定レンジを超えるまで試料の半田浴への浸漬及び抵抗値の測定を繰り返し行い、評価結果が「○」だった合計回数を耐半田回数として表4に示した。
【0071】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)導電性粉末と、
(B)酸化物換算で下記の組成からなる成分を合計で85重量%以上含有し、かつ、実質的に鉛を含まないガラスフリットと、
(C)有機ビヒクルと、
を含むことを特徴とする導電性ペースト。
ガラスフリット中の割合として、SiO2…16〜47重量%、Al23…33〜52重量%、MgO…3〜15重量%、B23…15〜45重量%
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ペーストにおいて、
上記(A)導電性粉末は、
銀を主成分とする銀系金属粉末である
ことを特徴とする導電性ペースト。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性ペーストにおいて、
さらに、(D)酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含むことを特徴とする導電性ペースト。

【公開番号】特開2012−22841(P2012−22841A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158793(P2010−158793)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000186762)昭栄化学工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】