説明

導電性ローラ

【課題】 安価で安定的な電気抵抗値を得ることができ、加工性、耐永久歪性を向上することができ、また、オイルブリード性を制御でき、表面張力、耐摩擦性を向上した導電性ローラを提供する。
【解決手段】 導電性ローラの軸芯の外周に形成した導電性ゴム層がエチレンオキサイド―プロピレンオキサイド―アリルグリシジルエーテル(EO−PO−AGE)とエチレンプロピレンゴム(EPDM)を架橋した導電性組成物と、リチウムイオン導電剤を配合して形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターなどのOA機器に使用される導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性ローラは、低硬度であっても耐永久歪性を損なわず、また、高い寸法精度、電気抵抗安定性が要求され、その要求機能は年々高まっている。低硬度で耐永久歪性を損なわずに、高い寸法精度を確立するため、例えば、特許文献1にはシリコーンの低粘度グレードを用いた記載があり、また、エチレンプロピレンゴム(EPDM)若しくは可塑剤により低粘度化した材料を用いていた。また、電気抵抗に関しては導電付与を目的とした薬品を多量に添加することが通例であった。
【特許文献1】特開平5−134516
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
EPDMは電気抵抗制御が困難であり、電気抵抗制御を目的とした様々な薬品を多量に添加していた。そして、さらに、一般的に、加工性が悪く、加工性改良のため、多くの充填剤を多量に添加することが必要であった。このことは、他の物性面の特性を劣化させるなどの弊害を生んでいた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、導電性ゴム層を従来全く考えられていなかった、導電性組成物とイオン系導電剤を配合して形成することにより、種々の特性に優れた導電性ローラを得ることができることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0005】
すなわち、本発明は、軸芯の外周に導電性ゴム層を形成したローラであって、前記導電性ゴム層がエチレンオキサイド―プロピレンオキサイド―アリルグリシジルエーテル(EO−PO−AGE)とエチレンプロピレンゴム(EPDM)を架橋した導電性組成物と、イオン系導電剤を配合して形成されている。また、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が、5‐Ethylidene‐2‐norbonene(ENB)の反応基を有し、前記反応基と主鎖の比率が4wt%以上である。また、導電性組成物がプロセスオイルを配合して形成されている。また、導電性ゴム層がウレタン系塗料、アクリル系塗料、ナイロン系塗料、フッ素系塗料、またはシリコーン系塗料から選択した塗料により、少なくとも1層以上塗布して被覆層を形成している。
【0006】
本発明は、従来のEPDMでは考えられなかった導電性ゴム層がエチレンオキサイド―プロピレンオキサイド―アリルグリシジルエーテル(EO−PO−AGE)とエチレンプロピレンゴム(EPDM)を架橋した導電性組成物と、イオン系導電剤を配合して形成した特殊な導電性ローラであるため、低抵抗化が可能となり、抵抗ばらつきは小さく、電圧依存性は大きいものとなり、優れた電気特性を発揮し、良好な画像を得ることができ、さらに、EPDMの5‐Ethylidene‐2‐norbonene(ENB)の量が4wt%以上であるとき、優れた電気特性を維持したまま、耐永久歪性が向上し、長期的に良好な画像を得ることができ、さらに、導電性組成物にプロセスオイルを配合することにより、安価に低硬度化ができ、耐永久歪性とオイルブリード性を損なわず、優れた材料物性を発揮し、導電性ローラとして好適なものを得ることができ、さらに、導電性ゴム層をウレタン系塗料、アクリル系塗料、ナイロン系塗料、フッ素系塗料、またはシリコーン系塗料から選択した塗料により、少なくとも1層以上塗布することにより、オイルブリード性を制御でき、表面張力、耐摩擦性を向上することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安価で安定的な電気抵抗値を得ることができ、加工性、耐永久歪性を向上することができる。また、オイルブリード性を制御でき、表面張力、耐摩擦性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明による導電性ローラについて実施例、比較例を参照して説明する。
【実施例】
【0009】
図1は本発明の導電性ローラの実施例を示した全体図であり、導電性ローラ1は導電性ゴム層2と軸芯3で構成されている。
【0010】
図2は図1の断面図であり、導電性ローラ1を構成する軸芯3の外周に導電性ゴム層2が形成されている。
【0011】
(実施例1)導電性ゴム層2はEO−PO−AGEとENB4.5%含有のEPDMを架橋した導電性組成物、プロセスオイル、イオン系導電剤としてリチウムイオン導電剤、Medium Thermal(MT)カーボンを配合して形成している。導電性組成物は100重量部配合している。導電性組成物に含まれるAGEは1重量部配合している。また、AGEについては10重量部以下、好ましくは5重量部以下配合することができる。プロセスオイルは40重量部配合している。リチウムイオン導電剤は0.2重量部配合している。MTカーボンは10重量部配合している。
【0012】
これらを混練して、次いで150℃に加熱した金型に注入し、15分硬化させて軸芯3の外周に導電性ゴム層2を形成して導電性ローラを得た。得られたローラの表面を研磨し、所定の表面状態とした。
【0013】
(比較例1)導電性ゴム層2はEPDM、プロセスオイル、イオン系導電剤としてリチウムイオン導電剤、MTカーボンを配合して形成している。EPDMは100重量部配合している。プロセスオイルは20重量部配合している。リチウムイオン導電剤は0.2重量部配合している。MTカーボンは10重量部配合している。また、実施例1と同様の方法で導電性ローラを得た。
【0014】
(比較例2)導電性ゴム層2はEPDM、プロセスオイル、イオン系導電剤としてリチウムイオン導電剤、MTカーボンを配合して形成している。EPDMは100重量部配合している。プロセスオイルは60重量部配合している。リチウムイオン導電剤は0.2重量部配合している。MTカーボンは10重量部配合している。また、実施例1と同様の方法で導電性ローラを得た。
【0015】
(比較例3)導電性ゴム層2はEO−PO−AGEとENB4.5%含有のEPDMを架橋した導電性組成物、プロセスオイル、イオン系導電剤としてリチウムイオン導電剤、MTカーボンを配合して形成している。導電性組成物100は重量部配合している。AGEは1重量部配合している。プロセスオイルは60重量部配合している。リチウムイオン導電剤は0.2重量部配合している。MTカーボンは10重量部配合している。また、実施例1と同様の方法で導電性ローラを得た。
【0016】
(比較例4)導電性ゴム層2はEO−PO−AGEとENB4.5%含有のEPDMを架橋した導電性組成物、プロセスオイル、イオン系導電剤としてリチウムイオン導電剤、MTカーボンを配合して形成している。導電性組成物は100重量部配合している。AGEは10重量部配合している。プロセスオイルは40重量部配合している。リチウムイオン導電剤は0.2重量部配合している。MTカーボンは10重量部配合している。また、実施例1と同様の方法で導電性ローラを得た。
【0017】
上記実施例1及び比較例1から4で得た導電性ローラについて、特性試験を行った。結果を表1に示す。
【0018】
[ローラ抵抗値]ローラ抵抗値は、金属ローラ電極法により測定した。すなわち、アルミを基材としニッケルメッキを施した金属ローラ上に試験するローラを接触させ、この試験するローラの両端に荷重1kgで押圧し、この状態で試験するローラの一端に所定の電圧を印加して電気抵抗を測定した。
【0019】
[抵抗ばらつき]抵抗ばらつきは、ローラ抵抗値と同じ装置を用い、同じ条件にて、金属ローラとローラを回転させ、ローラ一周期当たりの電気抵抗の最大値及び、最小値を測定し、その最大値を最小値で除した値を抵抗ばらつきとした。
【0020】
[電圧依存性]電圧依存性は、ローラ抵抗値と同じ装置を用い、同じ条件にて測定を行い、500V印加時及び、1000V印加時の電気抵抗を測定し、500V印加時の電気抵抗を1000V印加時の電気抵抗で除した値を電圧依存性とした。
【0021】
[アスカーC硬度]SRIS 0101に準拠して、アスカーC硬度計(高分子計器社製)を用いて導電性ゴム層の硬度を測定した。
【0022】
[耐永久歪性]JIS K 6301に準拠して、温度70℃、試験時間22時間、圧縮率25%の条件で導電性ゴム層の圧縮永久歪を測定した。
【0023】
[加工性]加熱成形されたローラを、研磨加工し、その表面状態を目視にて確認し、次のように評価した。ウネリやヒケ、ワレ、研磨痕(スパイラル模様)等が無い:○、少々のウネリやヒケ、ワレ、研磨痕(スパイラル模様)等がある:△、多くのウネリやヒケ、ワレ、研磨痕(スパイラル模様)等がある:×。
【0024】
[オイルブリード性]導電性ゴム層を形成した状態で、温度0℃、圧縮率25%の条件で1ヶ月間放置した後、非圧縮面からの液状物の滲み出しを目視にて確認し、次のように評価した。滲み出しが無い:○、少々の滲み出しがある:△、多くの滲み出しがある:×。
【0025】
【表1】

【0026】
上記表1から、実施例1の導電性ローラは、耐永久歪性がほとんど損なわれることなく、ローラ抵抗値が低抵抗化されており、抵抗ばらつきも良好、加工性およびオイルブリード性も良好であることがわかる。
【0027】
これに対し、比較例1の導電性ローラは、EO−PO−AEGとの架橋が無いため、ローラ抵抗値が高く、抵抗ばらつきが大きく、電圧依存性が小さい。さらに、加工性が悪く、アスカーC硬度が高いことがわかる。
【0028】
比較例2の導電性ローラは、比較例1に比べ、プロセスオイルを多く添加しているため、アスカーC硬度は低く好ましいが、ローラ抵抗値がさらに高くなり、そして、抵抗ばらつきも大きくなっていることがわかる。
【0029】
比較例3の導電性ローラは、比較例2に比べ、EO−PO−AEGとの架橋があるため、ローラ抵抗値が低くなり、そして、抵抗ばらつきも小さく、電圧依存性が大きくなっている。さらに、加工性が良好であり耐永久歪性も損なわれていないことがわかる。
【0030】
比較例4の導電性ローラは、比較例3に比べ、EO−PO−AEGとの架橋が多いこととプロセスオイル量が少ないことで、ローラ抵抗値が低くなり、そして、抵抗ばらつきも小さく、電圧依存性が大きくなり好ましい、さらに、加工性も同等であり、耐永久歪性も良好であるが、オイルブリード性が劣ることがわかる。
【0031】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、図3に示した本発明の他の実施例の導電性ローラの断面図のように、導電性ローラ1は軸芯3の外周に形成した導電性ゴム層2の外周にウレタン系塗料を塗布して被覆層4を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の導電性ローラの実施例を示す全体図。
【図2】図1の断面図。
【図3】本発明の導電性ローラの他の実施例を示す断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 導電性ローラ
2 導電性ゴム層
3 軸芯
4 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯の外周に導電性ゴム層を形成したローラであって、前記導電性ゴム層がエチレンオキサイド―プロピレンオキサイド―アリルグリシジルエーテル(EO−PO−AGE)とエチレンプロピレンゴム(EPDM)を架橋した導電性組成物と、イオン系導電剤を配合して形成されている導電性ローラ。
【請求項2】
前記EPDMが、5‐Ethylidene‐2‐norbonene(ENB)の反応基を有し、前記反応基と主鎖の比率が4wt%以上である請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記導電性組成物がプロセスオイルを配合して形成されている請求項1または請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記導電性ゴム層上にウレタン系塗料、アクリル系塗料、ナイロン系塗料、フッ素系塗料、またはシリコーン系塗料から選択した塗料により、少なくとも1層以上塗布して被覆層を形成した請求項1、請求項2または請求項3に記載の導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−77088(P2006−77088A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261114(P2004−261114)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】