説明

導電性基材の製造方法

【課題】導電性に優れた導電性基材をより簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】
仮支持体と、該仮支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを備えた導電性フイルムから、該導電層を基材に転写することを含む導電性基材の製造方法であって、
該金属銀部は、ハロゲン化銀及びバインダーを含有する銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものであり、
該導電性フイルムと該基材とを、該導電性フイルムの該仮支持体が外側となるように張り合わせる工程、及び
該導電層から該仮支持体を剥離する工程
を含む、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フイルムの導電層を基材に転写することを含む導電性基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性フイルムは、表示デバイス、センサー、太陽光発電素子等に広く用いられている。導電性フイルムの製造方法として、めっき法、真空成形法、印刷法等が知られ、これらの方法により支持体上に導電層を形成し、導電性フイルムを得ることができる。
しかし、上記方法で得られる導電性フイルムは、製造に時間を要する上に製造コストも比較的高く、面内での厚みの均一性も十分でなかった。
一方、銀塩方式で製造される導電性フイルムも知られている。この導電性フイルムは、支持体に設けられたハロゲン化銀含有乳剤層を、金属銀からなる導電部を形成するように露光して製造され、生産性も高い(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
導電性フイルムには、当該フイルムが有する導電層を被転写体に転写するための転写用導電性フイルムも知られている。例えば特許文献5には、仮支持体上に金属層と透明導電層と接着層とを有する転写フィルムが開示され、該仮支持体を剥離することで被転写体に導電性を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2004−221565号公報
【特許文献3】特開2007−95408号公報
【特許文献4】特開2006−332459号公報
【特許文献5】特開2011−20333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、導電性に優れた導電性基材をより簡便に製造する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、下記の手段によって達成された。
<1>仮支持体と、該仮支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを備えた導電性フイルムから、該導電層を基材に転写することを含む導電性基材の製造方法であって、
該金属銀部は、ハロゲン化銀及びバインダーを含有する銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものであり、
該導電性フイルムと該基材とを、該導電性フイルムの該仮支持体が外側となるように張り合わせる工程、及び
該導電層から該仮支持体を剥離する工程
を含む、製造方法。
<2>仮支持体と、該仮支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを備えた導電性フイルムから、該導電層を基材に転写することを含む導電性基材の製造方法であって、
該金属銀部は、ハロゲン化銀及びバインダーを含有する銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものであり、
該導電性フイルムと該基材とを、該導電性フイルムの該仮支持体が外側となるように張り合わせる工程、
該導電層と水とを接触させて該導電層を膨潤させ、これにより該仮支持体と該導電層との接着力を低下させる工程、及び
該導電層から該仮支持体を剥離する工程
を含む、製造方法。
<3>導電層と30℃以上の水とを接触させて導電層を膨潤させる、<2>に記載の製造方法。
<4>導電性フイルムを30℃以上の水中、90℃以上の水蒸気中、又は90℃以上かつ相対湿度60%以上の雰囲気中に保持し、これにより導電層を膨潤させる、<3>に記載の製造方法。
<5>膨潤していない導電層と仮支持体との剥離接着力が100〜10000N/cmである、<1>〜<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6>膨潤していない導電層と仮支持体との剥離接着力が200〜2000N/cmである、<5>に記載の製造方法。
<7>膨潤させた後の導電層と仮支持体との剥離接着力が99N/cm以下である、<2>〜<6>のいずれかに記載の製造方法。
<8>銀塩含有乳剤層がラテックスを含有する、<1>〜<7>のいずれかに記載の製造方法。
<9>導電性フイルムの表面抵抗率が100Ω/sq以下である、<1>〜<8>のいずれかに記載の製造方法。
<10>転写された導電層と基材との接触抵抗が100Ω以下である、<1>〜<9>のいずれかに記載の製造方法。
<11>バインダーがゼラチンである、<1>〜<10>のいずれかに記載の製造方法。
<12>ラテックスがアクリル系ラテックスである、<8>〜<11>のいずれかに記載の製造方法。
<13>銀塩含有乳剤層における銀とバインダーの体積比(銀/バインダー)が1/1以上である、<1>〜<11>のいずれかに記載の製造方法。
<14>銀塩含有乳剤層におけるラテックスとバインダーの質量比(ラテックス/バインダー)が0.1/1以上である、<8>〜<13>のいずれかに記載の製造方法。
<15>銀塩含有乳剤層が少なくとも2層からなり、最下層にラテックスを含有する、<1>〜<14>のいずれかに記載の製造方法。
<16>導電層及び/又は基材に粘着層が設けられている、<1>〜<15>いずれかに記載の製造方法。
<17>金属銀部のパターンが、細線にて構成された多数の格子の交点を有するメッシュ状パターンである、<1>〜<16>のいずれかに記載の製造方法。
<18>仮支持体と、該仮支持体に設けられた、金属部を含む導電層とを備えた導電性フイルムから、該導電層を基材に転写することを含む導電性基材の製造方法であって、
該導電性フイルムと該基材とを、該導電性フイルムの該仮支持体が外側となるように張り合わせる工程、及び
該導電層から該仮支持体を剥離する工程
を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法に用いる導電性フイルムは、導電性フイルムの導電層がバインダーを含有し、柔軟性に優れるために、導電層と仮支持体との密着性が良好である一方、導電層と仮支持体との剥離も容易に行うことができる。本発明の製造方法によれば、上記導電性フイルムから導電層を基材に転写するため、導電性フイルムにおける導電層の形状を保った状態で当該導電層を容易に転写することができ、これにより導電性に優れた導電性基材を製造することができる。
また、本発明の製造方法で製造した導電性フイルムは、抗菌・防カビ効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に用いる導電性フイルムの一形態を示す模式図である。
【図2】本発明に用いる導電性フイルムと粘着層を形成させた基材とを張り合わせた後、導電層から仮支持体を剥離して導電性基材を製造する工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いる導電性フイルムについて以下に詳細に説明する。
【0010】
本発明に用いる導電性フイルムは、仮支持体上に銀塩方式で形成された導電層を有する。本発明に用いる導電性フイルムは、導電層を被転写体である基材に転写し、該基材に導電性を付与するのに用いられる。
本発明の導電性フイルムの各層の構成について以下に説明する。
【0011】
[仮支持体]
本発明に用いる導電性フイルムの仮支持体としては、プラスチックフイルム、プラスチック板などを挙げることができる。上記プラスチックフイルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができるが、良好な加工性、密着性及び剥離性を得る観点からはPETを好適に用いることができる。上記仮支持体は、目的に応じて着色されていてもよい。
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組合わせた多層フイルムとして用いることもできる。
仮支持体の厚みは10〜500μmであることが好ましく、50〜250μmであることがより好ましい。
【0012】
本発明に用いる仮支持体には、該支持体に対する導電層の密着性をより高める目的で、予め、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザ処理、混酸処理、オゾン酸処理等の表面活性処理を施しておいてもよい。
【0013】
本発明に用いる導電性フイルムでは、仮支持体と導電層との間に下塗り層は存在しないことが好ましい。すなわち、仮支持体上に導電層が直接設けられていることが好ましい。
【0014】
[導電層]
本発明に用いる導電性フイルムにおいて、上記仮支持体上に設けられる導電層は、仮支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する銀塩含有乳剤層を所望の形状パターンで露光及び現像処理することで形成される。前記パターンを細線からなる多数の格子の交点を有するメッシュ状パターンとすることで、細線状の導電部分とそれ以外の開口部分とを含む導電層を形成させることができ、これにより、導電層の光透過性を向上させることもできる。
上記銀塩含有乳剤層は、ハロゲン化銀とバインダーの他、溶媒や染料等の添加剤を含んでもよい。上記銀塩含有乳剤層は1層でもよく、2層以上設けてもよい。乳剤層の厚さは、好ましくは0.05〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。
本発明に用いる導電性フイルムにおいて、仮支持体と導電層との剥離接着力(剥離接着強さ)は、100〜10000N/cmであることが好ましく、100〜5000N/cmであることがより好ましく、200〜2000N/cmであることがさらに好ましく、300〜1600N/cmであることが特に好ましく、350〜1000N/cmであることが殊更に好ましい。当該剥離接着力は、後述するような導電層の膨潤が引き起こされていない状態における剥離接着力であり、より具体的には、25℃、相対湿度45%における値である。
本発明において、剥離接着力は、JISK6854に準じて測定した値であり、引張速度50mm/minの条件下で測定した90°剥離接着力である。剥離接着力は、電動式タテ型フォースゲージスタンド(FGS−VCシリーズ、日本電産シンポ社製)を用いて測定することができる。
【0015】
(銀塩)
上記銀塩含有乳剤層における銀塩はハロゲン化銀である。本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀を好適に用いることができる。また、塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀を主体としたハロゲン化銀も好適に用いることができる。ここで、「AgBrを主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成物中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。すなわち、AgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに、沃化物イオン、塩化物イオン等を含有してもよい。他のハロゲン化銀(AgCl、AgI等)を主体としたハロゲン化銀についても、上記「AgBr」を当該他のハロゲン化銀に置き換えて解釈する。
銀塩含有乳剤層中のハロゲン化銀の含有量に特に制限はないが、銀に換算して0.1〜40g/m2であることが好ましく、0.5〜25g/m2であることがより好ましく、さらに3〜25g/m2、特に5〜25g/m2、殊更7〜25g/m2であることが好ましい。
【0016】
(バインダー)
上記銀塩含有乳剤層には、ハロゲン化銀粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダーが含まれる。当該バインダーとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれを用いてもよいが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等を銀塩含有乳剤層のバインダーとして用いることができる。
本発明においては、上記銀塩含有乳剤層のバインダーとして、ゼラチンが好適に用いられる。
上記銀塩含有乳剤層中のバインダーの含有量に特に制限はなく、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができるが、銀(Ag)/バインダー(体積比)で1/1以上であることが好ましく、1/1〜4/1であることがより好ましく、1/1〜2.3/1であることがさらに好ましい。
【0017】
(溶媒)
上記銀塩含有乳剤層の形成に用いられる溶媒に特に制限はなく、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
上記銀塩含有乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、銀塩含有乳剤層に含有される溶媒以外の成分の合計100質量部に対して30〜90質量部の範囲であり、50〜80質量部の範囲であることが好ましい。
【0018】
(ラテックス)
上記銀塩含有乳剤層には、支持体との密着性を向上させる観点からラテックスを用いることが好ましいが、中でもアクリル系ラテックスを好適に含有させることができる。アクリル系ラテックスとしては、アクリル酸のアルキルエステル及びメタクリル酸のアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含む重合体の水系媒体中の分散物を好適に用いることができる。なかでもアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含む重合体の水系媒体中の分散物が好ましい。
上記銀塩含有乳剤層におけるラテックス/バインダー(質量比)は0.1/1以上であることが好ましく、0.2/1〜1/1であることがより好ましく、0.3/1〜0.8/1であることがさらに好ましく、0.3/1〜0.6/1であることが特に好ましい。
銀塩含有乳剤層を2層以上設ける場合には、ラテックスは少なくとも最下層に含有させることが好ましい。ラテックスを最下層に含有させることで、露光後の導電層と仮支持体との密着性が向上しうる。
【0019】
(その他の添加剤)
上記銀塩含有乳剤層には、さらに各種添加剤が含まれてもよい。当該添加剤として、例えば、増粘剤、酸化防止剤、マット剤、滑剤、帯電防止剤、造核促進剤、分光増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤などを挙げることができる。
【0020】
[保護層]
本発明に用いる導電性フイルムには、導電層上に保護層が設けられていてもよい。保護層を設けることで、導電性フイルムからの導電層の脱落をより抑制することができる。保護層は、ゼラチンや高分子ポリマー等からなることが好ましい。保護層の厚みは0.02〜0.2μmであることが好ましく、0.05〜0.1μmであることがより好ましい。また、保護層は、導電層上に直接設けられていてもよいし、導電層上に下塗り層を設けてからその上に設けてもよい。
【0021】
[粘着層]
本発明に用いる導電性フイルムには、仮支持体から最も遠い層、すなわち、導電層又は保護層上に、さらに粘着層が設けられていてもよい。粘着層を設けることで、該粘着層と被転写体である基材とを密着させることができ、その後仮支持体を剥離することで、導電層を基材に転写することができる。なお、基材上に粘着層が形成されている場合には、通常、導電性フイルムに粘着層を設ける必要はない。
粘着層に特に制限はないが、例えば、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらは架橋性官能基を有することが好ましい。架橋性官能基として、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。
粘着層は、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を含有してもよい。
粘着層の厚みは1〜1000μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
【0022】
[導電性フイルムの作製]
本発明に用いる導電性フイルムは、仮支持体上に設けられた銀塩含有乳剤層を所望のパターンに露光した後現像処理し、該仮支持体上に、所望の形状の金属銀部を含む導電層を形成させることで得られる。露光は銀塩含有乳剤層全体に行ってもよく、この場合には、支持体上全体に金属銀部が形成される。本発明において、露光、現像処理によって形成されるパターンは、メッシュ状で、且つ、直線が略直交した形態の直線格子パターンや、交差部間の導電部分が少なくとも1つの湾曲を有する波線格子パターン等であることが好ましい。導電層の金属銀部の形状がメッシュパターンである場合において、メッシュパターンのピッチ(金属銀部の線幅と開口部の幅の合計)に特に制限はないが、100〜600μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。また、金属銀部の形状がメッシュパターンである場合において、金属銀部の線幅は、30μm以下であることが好ましく、0.5〜30μmであることがより好ましく、1〜20μmであることがさらに好ましい。
【0023】
(パターン露光)
銀塩含有乳剤層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光等の露光方式を用いることができる。
【0024】
(現像処理)
銀塩含有乳剤層は、露光がなされた後、さらに現像処理が施される。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。バインダーの膨潤を防ぎ、仮支持体と導電層との密着性を向上させる観点から、現像処理は25℃以下で行うことが好ましく、10〜25℃で行うことが好ましい。
本発明では、露光及び現像処理を行うことによって、露光部分に導電部分(金属銀部)が形成されると共に、未露光部に開口部(光透過性部)が形成される。乳剤層への現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。乳剤層に対する定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
得られた導電性フイルムには、上述の保護層や粘着層を常法により設けることができる。
【0025】
本発明の導電性フイルムの表面抵抗率は100Ω/sq以下であることが好ましく、50Ω/sq以下であることがより好ましく、35Ω/sq以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明に用いる導電性フイルムでは、以下に列挙する公知文献に記載の技術を必要により適宜組合わせて使用することができる。
特開2004-221564号公報、特開2004-221565号公報、特開2007-200922号公報、特開2006-352073号公報、WO2006/001461A1号パンフレット、特開2007-129205号公報、特開2007-235115号公報、特開2007-207987号公報、特開2006-012935号公報、特開2006-010795号公報、特開2006-228469号公報、特開2006-332459号公報、特開2007-207987号公報、特開2007-226215号公報、WO2006/088059A1号パンフレット、特開2006-261315号公報、特開2007-072171号公報、特開2007-102200号公報、特開2006-228473号公報、特開2006-269795号公報、特開2006-267635号公報、特開2006-267627号公報、WO2006/098333号パンフレット、特開2006-324203号公報、特開2006-228478号公報、特開2006-228836号公報、特開2006-228480号公報、WO2006/098336A1号パンフレット、WO2006/098338A1号パンフレット、特開2007-009326号公報、特開2006-336057号公報、特開2006-339287号公報、特開2006-336090号公報、特開2006-336099号公報、特開2007-039738号公報、特開2007-039739号公報、特開2007-039740号公報、特開2007-002296号公報、特開2007-084886号公報、特開2007-092146号公報、特開2007-162118号公報、特開2007-200872号公報、特開2007-197809号公報、特開2007-270353号公報、特開2007-308761号公報、特開2006-286410号公報、特開2006-283133号公報、特開2006-283137号公報、特開2006-348351号公報、特開2007-270321号公報、特開2007-270322号公報、WO2006/098335A1号パンフレット、特開2007-088218号公報、特開2007-201378号公報、特開2007-335729号公報、WO2006/098334A1号パンフレット、特開2007-134439号公報、特開2007-149760号公報、特開2007-208133号公報、特開2007-178915号公報、特開2007-334325号公報、特開2007-310091号公報、特開2007-311646号公報、特開2007-013130号公報、特開2006-339526号公報、特開2007-116137号公報、特開2007-088219号公報、特開2007-207883号公報、特開2007-207893号公報、特開2007-207910号公報、特開2007-013130号公報、WO2007/001008号パンフレット、特開2005-302508号公報、特開2005-197234号公報、特開2008-218784号公報、特開2008-227350号公報、特開2008-227351号公報、特開2008-244067号公報、特開2008-267814号公報、特開2008-270405号公報、特開2008-277675号公報、特開2008-277676号公報、特開2008-282840号公報、特開2008-283029号公報、特開2008-288305号公報、特開2008-288419号公報、特開2008-300720号公報、特開2008-300721号公報、特開2009-4213号公報、特開2009-10001号公報、特開2009-16526号公報、特開2009-21334号公報、特開2009-26933号公報、特開2008-147507号公報、特開2008-159770号公報、特開2008-159771号公報、特開2008-171568号公報、特開2008-198388号公報、特開2008-218096号公報、特開2008-218264号公報、特開2008-224916号公報、特開2008-235224号公報、特開2008-235467号公報、特開2008-241987号公報、特開2008-251274号公報、特開2008-251275号公報、特開2008-252046号公報、特開2008-277428号公報、特開2009-21153号公報。
【0027】
[転写]
本発明の製造方法では、導電性フイルムから被転写体となる基材へと導電層が転写される。
【0028】
(基材)
被転写体となる基材に特に制限はないが、プラスチックフイルム、プラスチック板及びガラス板等を挙げることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。上記基材は、平板でもよく、曲面形状や凹凸形状等の3次元形状であってもよい。また、上記基材は、目的に応じて着色されていてもよい。
基材の厚みに特に制限はないが、通常には10〜1000μmである。
上記基材には導電層を密着させるために粘着層が設けられていてもよい。粘着層の組成と厚みに特に制限はないが、例えば上述した粘着層の構成と同様のものを用いることができる。
【0029】
(転写方法)
本発明の製造方法において、導電性フイルムから基材への導電層の転写は、導電性フイルムと基材とを、当該導電性フイルムの仮支持体側が外側となるように張り合わせる工程と、張り合わせた導電性フイルムの導電層から仮支持体を剥離する工程とを少なくとも含む方法により行われる。
導電性フイルムと基材とを張り合わせた後に、導電性フイルムの導電層と水とを接触させると、導電層中のバインダーを膨潤させることができる。バインダーが膨潤すると、仮支持体と該導電層との剥離接着力は低下する(弱まる)ため、導電層と仮支持体との剥離をより容易に行うことが可能になる。したがって、仮支持体の剥離前に予め導電層を水と接触させておくことが好ましい。ゼラチンは適度な膨潤性を有するため、この観点からも、銀塩含有乳剤層中のバインダーとしてゼラチンを用いることが好ましい。
導電層と水との接触は、基材と張り合わせた導電性フイルムを水中、水蒸気中、又は相対湿度60〜100%の雰囲気中に保持することで行うことができる。密着させた導電性フイルムと基材をまるごと水中、水蒸気中、又は相対湿度60〜100%の雰囲気中に保持してもよい。
導電性フイルムを水中に保持する場合においては、水温は30℃以上であることが好ましく、30〜100℃であることが好ましい。水温が低すぎると、バインダーが十分膨潤しない場合がある。
導電性フイルムを水蒸気中に維持する場合においては、水蒸気温度は90℃以上であることが好ましく、90〜150℃であることがより好ましい。水蒸気温度が低すぎると、バインダーが十分膨潤しない場合がある。
導電性フイルムを相対湿度60〜100%の雰囲気中に維持する場合においては、当該雰囲気の温度は90℃以上であることが好ましく、90〜150℃であることがより好ましい。雰囲気中の温度が低すぎると、バインダーが十分膨潤しない場合がある。
【0030】
上記のように膨潤させた導電層と仮支持体との剥離接着力は、膨潤前に比べて低下していることが好ましく、具体的には、99N/cm以下であることが好ましく、1〜99N/cmであることがより好ましく、1〜50N/cmであることがさらに好ましく、1〜40N/cmであることが特に好ましい。
【0031】
基材に張り合わせた導電性フイルムから仮支持体を剥離することで、導電層が転写された導電性基材を得ることができる。
【0032】
上記導電性基材の表面抵抗率は、100Ω/sq以下であることが好ましく、50Ω/sq以下であることがより好ましく、35Ω/sq以下であることがさらに好ましい。
また、上記導電性基材において、導電層と基材との接触抵抗は100Ω以下であることが好ましく、50Ω以下であることがより好ましく、35Ω以下であることがさらに好ましい。当該接触抵抗の測定の際には、通常、導電層と基材との間に粘着層が存在しており、さらに保護層が存在する場合もある。
【0033】
本発明の製造方法で得られた導電性基材は、パーソナルコンピュータやワークステーション等から発生する電波、マイクロ波(極超短波)等の電磁波の遮断用途に用いることができ、静電気を防止する電磁波遮断ネットとして、パソコンや電子医療機器等のシールド・カバーに用いたり、ビル内の部屋等を電磁波シールドするカーテンとしても使用できる。
【0034】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において成分組成を表す%は特に断りのない限り質量%を意味する。

【実施例】
【0035】
調製例1 導電性フイルムの調製
[乳剤の調製]
・1液:
水 750mL
フタル化処理ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液:
水 300mL
硝酸銀 150g
・3液:
水 300mL
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5mL
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7mL
【0036】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0037】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0038】
・4液:
水 100mL
硝酸銀 50g
・5液:
水 100mL
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0039】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=4000μS/cm、密度=1.4×103kg/m3、粘度=20mPa・sとなった。
【0040】
[乳剤層塗布液の調製]
上記乳剤に下記化合物(Cpd−1)8.0×10-4モル/モルAg、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAgを添加しよく混合した。次いで、膨潤率調製のため必要により、下記化合物(Cpd−2)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0041】
【化1】

【0042】
また、下記式に示すエチルアクリレートを単量体単位とする重合体からなるラテックスを、乳剤に含まれるゼラチン(バインダー)に対し、ラテックス/ゼラチン(質量比)が0.3/1になるように添加した。
【0043】
【化2】

【0044】
[仮支持体の調製]
厚さが75〜180μmのPETフイルムの両面にコロナ放電処理を行ったものを仮支持体として用いた。
【0045】
[感光フイルムの調製]
上記の仮支持体に、上記の乳剤層塗布液をAg7.8g/m、ゼラチン1g/m、ラテックス0.3g/m(ラテックス/ゼラチン(質量比)0.3/1)になるように塗布した。
【0046】
得られた感光フイルムは、乳剤層の銀/バインダー体積比率(銀/GEL比(vol))が1/1であった。
【0047】
[露光・現像処理]
次いで、上記感光フイルムにライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、引き続き現像、定着、水洗、乾燥という工程を含む処理を行った。
【0048】
(現像液の組成)
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 15g/L
亜硫酸ナトリウム 30g/L
炭酸カリウム 40g/L
エチレンジアミン・四酢酸 2g/L
臭化カリウム 3g/L
ポリエチレングリコール2000 1g/L
水酸化カリウム 4g/L
pH10.5に調整
【0049】
(定着液の組成)
定着液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
チオ硫酸アンモニウム(75%) 300ml
亜硫酸アンモニウム・一水塩 25g/L
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8g/L
酢酸 5g/L
アンモニア水(27%) 1g/L
ヨウ化カリウム 2g/L
pH6.2に調整
【0050】
[還元処理]
上記のように現像処理したサンプルを20℃に保温した亜硫酸ナトリウム(10wt%)水溶液に10分浸漬した。
【0051】
上記により導電性フイルムを得た。
【0052】
また、ラテックス/ゼラチン(質量比)を0/1;0.1/1;0.2/1;0.4/1;0.5/1;0.6/1とした各乳剤層塗布液を上記と同様にして調製し、各々を、ゼラチン1g/m、ラテックス0g/m;ゼラチン1g/m、ラテックス0.1g/m;ゼラチン1g/m、ラテックス0.2g/m;ゼラチン1g/m、ラテックス0.4g/m;ゼラチン1g/m、ラテックス0.5g/m;ゼラチン1g/m、ラテックス0.6g/m;となるように仮支持体に塗布した。
塗布後のサンプルを上記と同様に露光、現像、還元処理に付し、導電層のラテックス/ゼラチン比の異なる導電性フイルムを得た。
【0053】
試験例1 導電性フイルムから基材への導電層の転写
[基材]
被転写体としての基材には、厚さが100μmのPETフイルムを用いた。この基材の片面に、ソーラーエバRのRC02B(三井化学ファブロ社製)を用いて粘着層を設けた。
【0054】
[転写]
上記粘着層に、仮支持体側が外側になるように導電性フイルムを張り合わせた後、張り合わされた状態の基材及び導電性フイルムを、90℃、相対湿度90%の雰囲気中に1分間保持することで、導電層と水とを接触させた。
次いで、仮支持体を導電層から剥離することで、導電層を基材上に転写し、導電性基材を作製した。
【0055】
上記各導電性フイルム及び各導電性基材を評価した結果を下記表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1中、仮支持体と導電層との密着性は下記基準で評価した。
A:導電層の90%以上が仮支持体と密着している。
B:導電層の70%以上90%未満が仮支持体と密着している。
C:導電層の50%以上70%未満が仮支持体と密着している。
D:導電層の50%以上が仮支持体からはがれている。
また、表1中、転写性は下記評価基準で評価した。
A:導電層と仮支持体との剥離が容易で、転写後の導電層において金属銀部のメッシュ形状が崩れていない。
B:導電層と仮支持体とを剥離する際に、導電層における金属銀部のメッシュ形状が崩れてしまう。
また、表1中、表面抵抗率及び接触抵抗は、25℃、相対湿度45%の条件下で、ロレスタGP(三菱化学アナリック社製)を用いて測定した。
また、表1中、「仮支持体と導電層との剥離接着力」は、25℃、相対湿度45%、引張速度50mm/minの条件下での90°剥離接着力であり、「膨潤後の導電層と仮支持体との剥離接着力」は、90℃、相対湿度90%の雰囲気中から取り出した導電性フイルムを、25℃、相対湿度45%雰囲気下に5分間静置した後、引張速度50mm/minで測定した90°剥離接着力である。剥離接着力は、電動式タテ型フォースゲージスタンド(FGS−VCシリーズ、日本電産シンポ社製)を用いて測定した。
【0058】
上記表1の結果から、バインダーを含有する銀塩含有乳剤層を露光して導電層を形成させることで、当該導電層と仮支持体との密着性に優れると同時に、導電層と仮支持体との剥離も容易に行える導電性フイルムが得られうることがわかった。そして、この導電性フイルムを用いることで、導電層を容易に、しかもきれいに基材表面に転写でき、導電性に優れた導電性基材が得られることがわかった。
また、本発明に用いる導電性フイルムは、転写前は金属銀部が開口部に対して凸状に膨らんだ形状となっていたが、当該導電性フイルムを用いて製造した導電性基材は、導電層の転写面に設けられた接着層が金属銀部の膨らみを吸収し、表面が平坦な導電層を有するものとなった。
【0059】
試験例2 抗菌性試験
本発明の製造方法において基材に転写される導電層の抗菌活性を調べた。上記調製例1において、乳剤層塗布液中のラテックス/ゼラチン(質量比)を0.3/1として調製した導電性フイルムを50mm×50mmの大きさにカットし、エタノールを吸収させた脱脂綿でフイルム全面を軽く2〜3回ふいて乾燥させた導電性フイルムを本発明品とした。また、上記調製例1に記載の仮支持体そのものを50mm×50mmの大きさにカットし、エタノールを吸収させた脱脂綿でフイルム全面を軽く2〜3回ふいて乾燥させたものを比較品とした。
試験菌種としては、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus subsp. aureus NBRC 12732株)及び大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972株)を用い、それぞれ4×10CFU/mLの濃度に培養した菌液を用意した。これらの菌液を上記本発明品の導電層側及び比較品の片側にそれぞれ0.4mL接種し、35℃で培養し、生菌数(CFU/mL)を調べた。
結果を下記表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
上記表2の結果から、本発明品が優れた抗菌活性を示すことがわかった。
【0062】
さらに、本発明品の抗菌活性を下記式により与えられる値を抗菌活性値として評価した。抗菌活性値が高いほど、抗菌作用が強い。
【0063】
R=(U−U)−(A−U)=U−A
R:抗菌活性値
:比較品への菌の接種直後の生菌数(/cm)の対数値の平均値
:比較品への菌の接種後24時間経過した後の生菌数(/cm)の対数値の平均値
:本発明品への菌の接種後24時間経過した後の生菌数(/cm)の対数値の平均値
【0064】
抗菌活性値の結果を下記表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
一般に抗菌活性値が2以上であると、明らかな抗菌効果があると判断できるが、本発明品の抗菌活性値は2を大きく超えていた。本発明の製造方法において基材に転写される導電層は、導電層に占める金属銀部領域の割合が非常に小さくても、抗菌性に優れることがわかった。したがって、本発明の製造方法により製造される導電性基材は、抗菌性に優れることが示された。
【0067】
試験例3 導電性基材の成形
上記調製例1において、乳剤層塗布液中のラテックス/ゼラチン(質量比)を0.3/1として調製したものを上記試験例1に記載の方法で基材に転写して得た導電性基材を、30mm×100mmサイズにカットし、テンシロン万能試験機RTFシリーズ(エーアンドデイ社製)にセットして下記の条件下で長軸方向に引張延伸した。得られた導電性基材の評価結果を下記表4に示す。
なお、表4における延伸率(%)は、延伸前の長軸方向のメッシュピッチを100%としたときの延伸後の当該長軸方向のメッシュピッチである。メッシュピッチはマイクロスコープで測定した。
また、金属銀部の破断の有無は、マイクロスコープによる観察により評価した。
また、表面抵抗率は、上記と同様に測定した。
【0068】
【表4】

【0069】
表4の結果から、本発明の製造方法で得られた導電性基材は、高度に延伸しても金属銀部の破断が生じにくく低い表面抵抗率を示し、導電性に優れることがわかった。また、延伸された導電性基材は、導電層と基材との密着性が維持されていた。
【符号の説明】
【0070】
10:導電性フイルム
11:導電層
12:仮支持体
21:粘着層
22:基材(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、該仮支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを備えた導電性フイルムから、該導電層を基材に転写することを含む導電性基材の製造方法であって、
該金属銀部は、ハロゲン化銀及びバインダーを含有する銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものであり、
該導電性フイルムと該基材とを、該導電性フイルムの該仮支持体が外側となるように張り合わせる工程、及び
該導電層から該仮支持体を剥離する工程
を含む、製造方法。
【請求項2】
仮支持体と、該仮支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを備えた導電性フイルムから、該導電層を基材に転写することを含む導電性基材の製造方法であって、
該金属銀部は、ハロゲン化銀及びバインダーを含有する銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものであり、
該導電性フイルムと該基材とを、該導電性フイルムの該仮支持体が外側となるように張り合わせる工程、
該導電層と水とを接触させて該導電層を膨潤させ、これにより該仮支持体と該導電層との接着力を低下させる工程、及び
該導電層から該仮支持体を剥離する工程
を含む、製造方法。
【請求項3】
導電層と30℃以上の水とを接触させて導電層を膨潤させる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
導電性フイルムを30℃以上の水中、90℃以上の水蒸気中、又は90℃以上かつ相対湿度60%以上の雰囲気中に保持し、これにより導電層を膨潤させる、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
膨潤していない導電層と仮支持体との剥離接着力が100〜10000N/cmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
膨潤していない導電層と仮支持体との剥離接着力が200〜2000N/cmである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
膨潤させた後の導電層と仮支持体との剥離接着力が99N/cm以下である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
銀塩含有乳剤層がラテックスを含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
導電性フイルムの表面抵抗率が100Ω/sq以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
転写された導電層と基材との接触抵抗が100Ω以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
バインダーがゼラチンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
ラテックスがアクリル系ラテックスである、請求項8〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
銀塩含有乳剤層における銀とバインダーの体積比(銀/バインダー)が1/1以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
銀塩含有乳剤層におけるラテックスとバインダーの質量比(ラテックス/バインダー)が0.1/1以上である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
銀塩含有乳剤層が少なくとも2層からなり、最下層にラテックスを含有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
導電層及び/又は基材に粘着層が設けられている、請求項1〜15いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
金属銀部のパターンが、細線にて構成された多数の格子の交点を有するメッシュ状パターンである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
仮支持体と、該仮支持体に設けられた、金属部を含む導電層とを備えた導電性フイルムから、該導電層を基材に転写することを含む導電性基材の製造方法であって、
該導電性フイルムと該基材とを、該導電性フイルムの該仮支持体が外側となるように張り合わせる工程、及び
該導電層から該仮支持体を剥離する工程
を含む、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−10262(P2013−10262A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144702(P2011−144702)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】