説明

導電性微粒子、異方性導電材料、及び、接続構造体

【課題】高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供する。
【解決手段】基材微粒子の表面に、低融点金属層が形成されている導電性微粒子であって、前記低融点金属層は、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を基材微粒子に接触させ、せん断圧縮によって溶融軟化させることにより形成されたものである導電性微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板において、ICやLSIは、電極をプリント基板にハンダ付けすることによって接続されていた。しかし、ハンダ付けでは、プリント基板と、ICやLSIとを効率的に接続することはできなかった。また、ハンダ付けでは、ICやLSIの実装密度を向上させることが困難であった。
これを解決するためにハンダを球状にした、いわゆる「ハンダボール」でICやLSIを基板に接続するBGA(ボールグリッドアレイ)が開発された。この技術によれば、チップ又は基板上に実装されたハンダボールを高温で溶融し基板とチップとを接続することで高生産性、高接続信頼性を両立した電子回路を製造することができる。
【0003】
しかし、近年、基板の多層化が進み、多層基板は使用環境の影響を受けやすいことから、基板に歪みや伸縮が発生し、基板間の接続部に断線が発生するという問題があった。
【0004】
このような問題に対し、特許文献1には、樹脂微粒子の表面に、導電性の高い金属が含まれる金属層が形成され、さらに、金属層の表面に、錫等の金属からなる低融点金属層が形成された導電性微粒子が開示されている。このような導電性微粒子を用いれば、柔軟な樹脂微粒子が導電性微粒子に加わる応力を緩和することができ、かつ、最表面に低融点金属層が形成されているため、電極間を容易に導電接続することができる。
【0005】
一方、導電性微粒子を電極に配置して接続する場合は、通常、電極表面の油脂汚れや酸化皮膜を除去することで、ハンダのぬれ性を改善させることを目的として、電極表面にフラックスを塗布することが行われている。
しかしながら、電極に塗布されたフラックスは、電極が接続された後は不要となるばかりか、余分のフラックスは種々の弊害をもたらすことがあるので、洗浄を行ってフラックスの除去を行う必要があった。そのため、フラックスを洗浄するための工程が別途必要となる上に、洗浄工程に有機溶剤を使用しなければならないという問題点があった。
また、経時変化等によって、導電性微粒子の表面が酸化している場合には、導電性微粒子を用いて実装を行う際に、酸化皮膜とフラックスとの反応が起こることによって、水素が発生し、これが溶融した低融点金属内に取り込まれることによってボイドとなり、接合強度低下の原因となっていた。
【0006】
これに対して、特許文献2には、基材微粒子の外表面に形成された金属層に、フラックスを内包するマイクロカプセルを固着させたフラックス付き導電性微粒子が記載されている。しかしながら、このような導電性微粒子を作製するためにはフラックスを内包するマイクロカプセルを作製する工程や、マイクロカプセルを付着させる工程を別途行う必要があり、製造工程の煩雑化を招いていた。また、フラックスを内包するマイクロカプセルの外殻が残存することによる弊害も生じていた。更に、実装工程においてボールマウンタを用いて吸引する際に、導電性微粒子を吸引できなくなるという不具合も発生していた。
【0007】
更に、表面にフラックスを塗布したマイクロカプセルを用いる方法も検討されているが、フラックスを塗布できる量は限られており、ハンダのぬれ性を改善させるために充分な量のフラックスを塗布することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−220691号公報
【特許文献2】特開2003−247083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材微粒子の表面に、低融点金属層が形成されている導電性微粒子であって、前記低融点金属層は、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を基材微粒子に接触させ、せん断圧縮によって溶融軟化させることにより形成されたものである導電性微粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の導電性微粒子は、低融点金属層が形成されている導電性微粒子であって、前記低融点金属層は、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を基材微粒子に接触させ、せん断圧縮によって溶融させることにより形成されたものである。
【0012】
図1は、本発明の導電性微粒子の一例を示す断面図である。図1に示すように、本発明の導電性微粒子は、基材微粒子1と低融点金属層2とフラックス3とから構成されており、変形した低融点金属微粒子2´が堆積することで、フラックス3が低融点金属層2の表面を被覆すると同時に、フラックス3が低融点金属層2に内包された構造となっている。
図2は、本発明の導電性微粒子を電極に接続した場合の状態を示す断面図である。図2に示すように、低融点金属層2が熱で溶融すると、フラックス3´が電極4上に溶出する。この場合、フラックス3´の量は必要最低限となり、電極4付近上にのみ存在する構成となる。
【0013】
本発明の導電性微粒子は、上述の図1に示すように、低融点金属微粒子が堆積することで、フラックスが低融点金属層の表面を被覆する構造となり、長期の保管等による低融点金属層の酸化を防止することができる。これにより、導電性微粒子の表面に酸化皮膜が形成されることを効果的に抑制することができる。
また、低融点金属層を溶融させて導電接続を行う場合、内包されていたフラックスが外部に溶出する。その結果、従来行われていたフラックスの塗布工程が不要となり、更に、必要最低限のフラックスしか溶出しないため、余剰フラックスの洗浄工程も不要となる。その結果、電極の接続工程を大幅に簡略化することができる。また、余分のフラックスが生じることによって、作業環境の悪化等を招くこともない。
【0014】
上記基材微粒子は特に限定されず、例えば、樹脂微粒子、無機微粒子、有機無機ハイブリッド微粒子、金属微粒子等が挙げられる。上記基材微粒子としては、特に樹脂微粒子が好ましい。
【0015】
上記樹脂微粒子は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等で構成される樹脂微粒子が挙げられる。
上記ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。上記アクリル樹脂は特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリメチルアクリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
上記樹脂微粒子を作製する方法は特に限定されず、例えば、重合法による方法、高分子保護剤を用いる方法、界面活性剤を用いる方法等が挙げられる。
上記重合法は特に限定されず、乳化重合、懸濁重合、シード重合、分散重合、分散シード重合等の重合法が挙げられる。
【0017】
上記無機微粒子は特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ等の金属酸化物で構成される微粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド微粒子は特に限定されず、例えば、オルガノシロキサン骨格の中にアクリルポリマーを含有するハイブリッド微粒子が挙げられる。
上記金属微粒子は特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、金、銀等の金属からなる微粒子が挙げられる。なかでも、銅微粒子が好ましい。上記銅微粒子は、実質的に銅金属のみで形成された銅微粒子であってもよく、銅金属を含有する銅微粒子であってもよい。なお、上記基材微粒子が銅微粒子である場合は、後述する導電層を形成しなくてもよい。
【0018】
上記基材微粒子が樹脂微粒子である場合、上記樹脂微粒子の10%K値の好ましい下限は1000MPa、好ましい上限は15000MPaである。上記10%K値が1000MPa未満であると、樹脂微粒子を圧縮変形させると、樹脂微粒子が破壊されることがある。上記10%K値が15000MPaを超えると、導電性微粒子が電極を傷つけることがある。上記10%K値のより好ましい下限は2000MPa、より好ましい上限は10000MPaである。
【0019】
なお、上記10%K値は、微小圧縮試験器(例えば、島津製作所社製「PCT−200」)を用い、樹脂微粒子を直径50μmのダイアモンド製円柱の平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、最大試験荷重10gの条件下で圧縮した場合の圧縮変位(mm)を測定し、下記式により求めることができる。
K値(N/mm)=(3/√2)・F・S−3/2・R−1/2
F:樹脂微粒子の10%圧縮変形における荷重値(N)
S:樹脂微粒子の10%圧縮変形における圧縮変位(mm)
R:樹脂微粒子の半径(mm)
【0020】
上記基材微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は2000μmである。上記基材微粒子の平均粒子径が1μm未満であると、基材微粒子が凝集しやすく、凝集した基材微粒子の表面に低融点金属層を形成した導電性微粒子を用いると、隣接する電極間を短絡させることがある。上記基材微粒子の平均粒子径が2000μmを超えると、回路基板等の電極間の接続に適した範囲を超えることがある。上記基材微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は3μm、より好ましい上限は1000μmである。
なお、上記基材微粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の基材微粒子の粒子径を測定し、測定した粒子径を算術平均することにより求めることができる。
【0021】
上記基材微粒子の平均粒子径の変動係数は特に限定されないが、10%以下であることが好ましい。上記変動係数が10%を超えると、導電性微粒子の接続信頼性が低下することがある。なお、上記変動係数とは、粒子径分布から得られる標準偏差を平均粒子径で除して得られる値を百分率(%)で示した数値である。
【0022】
上記基材微粒子の形状は、対向する電極の間隔を維持できる形状であれば特に限定されないが、真球形状であることが好ましい。また、上記基材微粒子の表面は平滑であってもよいし、突起を有していてもよい。
【0023】
本発明の導電性微粒子において、上記低融点金属層は、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を基材微粒子に接触させ、せん断圧縮によって溶融軟化させることにより形成されたものである。上記低融点金属層は、リフロー工程により溶融して電極に接合するため、接続信頼性を高めることができる。
【0024】
上記フラックスは特に限定されず、例えば、ロジン、ロジン誘導体等のロジン類を主成分とする非活性ロジンフラックス、上記ロジン類と活性化剤とを主成分とする活性ロジンフラックス、カルボン酸、ジカルボン酸を主成分とするフラックス等が挙げられる。
上記活性化剤は特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン塩酸塩、トリエチレンテトラミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、塩酸アニリンなどのアミン化合物の有機酸又は無機酸の塩等が挙げられる。
上記カルボン酸は特に限定されず、例えば、ステアリン酸、アジピン酸、アントラニル酸、ラウリン酸、グリコール酸、アゼライン酸、コハク酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0025】
上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子において、上記フラックスからなる層は低融点金属表面の酸化皮膜形成防止、及び溶融時の酸化皮膜除去の効果が得られるならば単分子吸着層でも良い。
【0026】
上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、低融点金属微粒子が凝集しやすくなるため、低融点金属層を形成することが困難となることがある。上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子の平均粒子径が100μmを超えると、せん断圧縮時に溶融しきらず、低融点金属層を形成することが困難となることがある。なお、上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の低融点金属微粒子の粒子径を測定し、測定した粒子径を算術平均することにより求めることができる。
また、上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子の平均粒子径は、上記基材微粒子の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子の平均粒子径が、上記基材微粒子の平均粒子径の1/10を超えると、せん断圧縮時に上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を上記基材微粒子に付着、皮膜化させることができないことがある。
【0027】
本発明の導電性微粒子を構成する低融点金属層は、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を基材微粒子に接触させ、せん断圧縮によって溶融軟化させること(乾式被覆法)により形成される。
【0028】
上記乾式被覆法では、例えば、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)を用いる方法等が挙げられる。上記シータコンポーザは、楕円形のキャビティを備えるベッセルと、キャビティ内でこのベッセルと同一軸上において別個に回転されるローターとを備えており、混合に際しては、ベッセルとローターとを逆回転させることにより、キャビティの短径とローターの長径とが一致する付近の間隙内で、せん断圧縮力を作用することができる。このせん断圧縮によって、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子の低融点金属を溶融軟化させ、低融点金属微粒子を基材微粒子に付着させることを繰り返すことにより、基材微粒子の表面に、フラックスが内包された低融点金属層が形成された導電性微粒子を製造することができる。
【0029】
また、上記表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子は、例えば、フラックスをエタノール等の溶媒に溶解させ、フラックス溶液を調製した後、基材微粒子を該フラックス溶液に浸漬し、ろ過、乾燥させることにより製造することができる。
【0030】
上記低融点金属層は、錫又は錫と他の金属の合金からなる。上記合金は特に限定されず、例えば、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、形成される低融点金属層の融点を低下させることができることから、錫−銀合金が好適である。
【0031】
更に、上記低融点金属層と電極との接合強度を向上させるために、上記低融点金属層に、ニッケル、アンチモン、アルミニウム、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、ガリウム、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム、インジウム等の金属を含有させてもよい。なかでも、上記低融点金属層と電極との接合強度を向上させる効果に優れていることから、上記低融点金属微粒子にニッケル、アンチモン、アルミニウムを含有させることが好適である。
上記低融点金属層に含有される金属の合計に占める上記金属の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.0001重量%、好ましい上限は2重量%である。上記金属の含有量が0.0001重量%未満であると、上記低融点金属層と電極との接合強度が充分に得られないことがある。上記金属の含有量が2重量%を超えると導電性微粒子の融点が変わることがある。
【0032】
上記低融点金属層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は200μmである。上記低融点金属層の厚さが0.1μm未満であると、リフローして溶融させても充分に電極に接合できないことがあり、上記低融点金属層の厚さが200μmを超えると、上記低融点金属層を形成する際に凝集が生じやすく、凝集した導電性微粒子は隣接電極間の短絡を引き起こすことがある。上記低融点金属層の厚さのより好ましい下限は0.2μm、より好ましい上限は50μmである。
なお、上記低融点金属層の厚さは、無作為に選んだ10個の導電性微粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して測定し、測定値を算術平均した厚さである。
【0033】
上記低融点金属層は、上記基材微粒子の表面に直接形成されていてもよい。また、上記低融点金属層は、上記低融点金属層と上記基材微粒子との間に、更に、導電層(下地金属層)が形成されていてもよい。
上記導電層を形成する金属は特に限定されず、例えば、金、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等が挙げられる。なかでも、導電性に優れることから、上記導電層を形成する金属は、金、銅又はニッケルであることが好ましい。
【0034】
上記基材微粒子の表面に、上記導電層を形成させる方法は特に限定されず、例えば、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンスパッタリング法等が挙げられる。
【0035】
上記導電層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。上記導電層の厚さが0.1μm未満であると、導電性が充分に得られないことがある。上記導電層の厚さが100μmを超えると、導電性微粒子の柔軟性が低下することがある。上記導電層の厚さのより好ましい下限は0.2μm、より好ましい上限は50μmである。
なお、上記導電層の厚さは、無作為に選んだ10個の導電性微粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して測定し、これらを算術平均した厚さである。
【0036】
本発明の導電性微粒子は、例えば、基材微粒子に、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を接触させ、せん断圧縮によって前記低融点金属微粒子を溶融軟化させることにより、前記基材微粒子に低融点金属層を形成する工程を有する方法で製造することができる。
このような製造方法で得られた低融点金属層は、低融点金属微粒子が堆積することで、フラックスが低融点金属層の表面を被覆する構造となり、長期の保管等による低融点金属層の酸化を防止することができる。これにより、導電性微粒子の表面に酸化皮膜が形成されことを効果的に抑制することができる。
また、同時に低融点金属層中にフラックスを内包するものとなるため、低融点金属層を溶融させて導電接続を行う場合、内包されていたフラックスが外部に溶出し、従来行われていたフラックスの塗布工程が不要となる。また、必要最低限のフラックスしか溶出しないため、余剰フラックスの洗浄工程も不要となり、電極の接続工程を大幅に簡略化することができる。更に、余分のフラックスが生じることによる作業環境の悪化等を招くことを防止することができる。
【0037】
本発明の導電性微粒子をバインダー樹脂に分散させることにより異方性導電材料を製造することができる。このような異方性導電材料もまた、本発明の1つである。
【0038】
本発明の異方性導電材料として、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等が挙げられる。
【0039】
上記バインダー樹脂は特に限定されないが、絶縁性の樹脂が用いられ、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体、エラストマー等が挙げられる。
上記ビニル樹脂は特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
上記硬化性樹脂は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は硬化剤と併用してもよい。
上記熱可塑性ブロック共重合体は特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。
上記エラストマーは特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
本発明の異方性導電材料は、本発明の導電性微粒子、及び、上記バインダー樹脂の他に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で、例えば、増量剤、可塑剤、粘接着性向上剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等を含有してもよい。
【0041】
本発明の異方性導電材料の製造方法は特に限定されず、例えば、上記バインダー樹脂に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に混合して分散させ、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤等を製造する方法が挙げられる。また、上記バインダー樹脂に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に分散させるか、又は、加熱溶解させて、離型紙や離型フィルム等の離型材の離型処理面に所定のフィルム厚さとなるように塗工し、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電シート等を製造する方法も挙げられる。
また、上記バインダー樹脂と、本発明の導電性微粒子とを混合することなく、別々に用いて異方性導電材料としてもよい。
【0042】
本発明の導電性微粒子又は本発明の異方性導電材料を用いてなる接続構造体もまた、本発明の1つである。
【0043】
本発明の接続構造体は、一対の回路基板間に、本発明の導電性微粒子又は本発明の異方性導電材料を充填することにより、一対の回路基板間を接続させた導電接続構造体である。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の導電性微粒子の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の導電性微粒子を電極に接続した場合の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0047】
(実施例1)
テトラメチロールメタンテトラアクリレートとジビニルベンゼンとの共重合体からなる樹脂微粒子(平均粒子径260μm)の表面に、電気めっきにより厚さ10μmの銅層を形成することにより、基材微粒子を得た。
一方、錫96.5銀3.5合金組成の低融点金属微粒子(粒子径分布5〜15μm)を、オクタデカン二酸の0.5重量%エタノール溶液中に2時間浸漬し、ろ過、乾燥させることでフラックス積層低融点金属微粒子を得た。
得られた基材微粒子50g及びフラックス積層低融点金属微粒子75gをシータコンポーザ(徳寿工作所社製)に投入して、混合した。これにより、フラックス積層低融点金属微粒子を基材微粒子に付着、皮膜化させて、基材微粒子の表面に厚さ25μmの錫96.5銀3.5合金層を形成し、導電性微粒子を得た。
なお、シータコンポーザを用いて混合する際には、回転容器(ベッセル)を3000rpm、回転翼(ローター)を30rpmで逆回転させ、フラックス積層低融点金属微粒子にせん断圧縮力が作用するようにした。混合時間は120分間とした。
【0048】
(比較例1)
低融点金属微粒子(粒子径分布5〜15μm)を、オクタデカン二酸の0.5重量%エタノール溶液中に2時間浸漬させる工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
【0049】
(比較例2)
比較例1で得られた導電性微粒子をオクタデカン二酸の0.5重量%エタノール溶液中に2時間浸漬し、ろ過、乾燥させることで導電性微粒子を作製した。
【0050】
(比較例3)
市販のフラックス(ガンマラックス360、千住金属工業)を分散させた水分散液中でアクリル酸エチル、アクリロニトリル及びメタクリルロニトリルを共重合して、フラックスを内包するマイクロカプセル(平均粒子径5μm)を作製した。次いで、基材微粒子50gとフラックス内包マイクロカプセル0.6g、低融点金属微粒子75gをシータコンポーザに投入して混合し、基材微粒子に付着、皮膜化させて、基材微粒子の表面に、フラックス内包カプセルを導電性微粒子全体に対し5vol%含む、厚さ25μmの錫96.5銀3.5合金層を形成した以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
【0051】
(比較例4)
比較例1で得られた導電性微粒子50gと、ホットメルト接着剤を表面に塗布したフラックス内包カプセル1gとを加熱しながら混合し、導電性微粒子表面にフラックス内包カプセルを固着させた以外は実施例1と同様にして、導電性微粒子を作製した。
【0052】
<評価>
実施例及び比較例で得られた導電性微粒子について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0053】
(1)シェア試験
得られた導電性微粒子を、気温25℃、湿度50%の大気雰囲気中に100時間放置し、酸化皮膜形成を促進させた。次いで、銅電極を有するシリコンチップ上に112個搭載し、270℃に設定したリフロー炉に投入し溶融させた。その後、シリコンチップ上に実装された各導電性微粒子に対して、シェア試験機(デイジ社製「シリーズ4000」)を用いて、250gfの横応力を印加し、銅電極表面において、破壊が生じたものの総数を計測した。
なお、比較例1で得られた導電性微粒子を用いた場合は、電極上が濡れずバンプを形成不可であった。また比較例3で得られた導電性微粒子に関しては、ボールマウンタで吸引できず実装不可であった。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材微粒子の表面に、低融点金属層が形成されている導電性微粒子であって、
前記低融点金属層は、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を基材微粒子に接触させ、せん断圧縮によって溶融軟化させることにより形成されたものである
ことを特徴とする導電性微粒子。
【請求項2】
低融点金属層は、錫又は錫と他の金属との合金からなることを特徴とする請求項1記載の導電性微粒子。
【請求項3】
基材微粒子は、樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性微粒子。
【請求項4】
基材微粒子は、銅微粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性微粒子。
【請求項5】
基材微粒子は、更に、基材微粒子と低融点金属層との間に導電層を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の導電性微粒子。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の導電性微粒子がバインダー樹脂に分散されてなることを特徴とする異方性導電材料。
【請求項7】
請求項1、2、3、4或いは5記載の導電性微粒子、又は、請求項6記載の異方性導電材料を用いてなることを特徴とする接続構造体。
【請求項8】
請求項1、2、3、4又は5記載の導電性微粒子を製造する方法であって、
基材微粒子に、表面にフラックスからなる層を有する低融点金属微粒子を接触させ、せん断圧縮によって前記低融点金属微粒子を溶融させることにより、前記基材微粒子に低融点金属層を形成する工程を有する
ことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−76940(P2011−76940A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228721(P2009−228721)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】