説明

導電性接着剤及び太陽電池モジュール

【課題】高い耐熱性を有する導電性接着剤及び太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池セルの表面のバスバー電極11と、隣接する他の太陽電池セルのAl裏面電極13とが、導電性接着剤を介してタブ線と電気的に接続され、導電性接着剤として、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下であるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が分散された導電性接着剤及びそれを太陽電池セルの電極とタブ線との接続に用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルの電極とタブ線との接続に、比較的低い温度での熱圧着処理による接続が可能な導電性接着フィルムが用いられる(例えば、特許文献1参照。)。タブ線は、その一端側を一の太陽電池セルの表面電極と接続し、他端側を隣接する他の太陽電池セルの裏面電極と接続することにより、各太陽電池セルを直列に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−283606号公報
【特許文献2】特開2007−214533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池モジュールは、夏場などの外気温が高い状態で稼動した場合、モジュール温度は70〜80℃程度まで上昇するといわれている。また、ホットスポット現象が発生すれば、周囲よりも10〜20℃以上も異常発熱することがある。
【0005】
このような異常発熱が起こる可能性のある環境においては、JIS C8917にある温度サイクル試験(−40⇔90℃)、又は環境試験条件(−40⇔100℃)をクリアした導電性接着フィルムを用いた太陽電池モジュールであっても、現在望まれている20〜30年の保証期間を達成できない可能性がある。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高い耐熱性を有する導電性接着剤及び太陽電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る導電性接着剤は、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、一の太陽電池セルの表面電極と、該一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルの裏面電極とが、導電性接着剤を介してタブ線と電気的に接続され、前記導電性接着剤が、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、耐熱性の高いアクリル樹脂を用い、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下であることにより、優れた耐熱性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】導電性接着フィルムの製品形態の一例を模式的に示す図である。
【図2】太陽電池モジュールの構成例を示す図である。
【図3】太陽電池セルの概略断面図である。
【図4】減圧ラミネーターの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.導電性接着剤
2.導電性接着剤の製造方法
3.太陽電池モジュール
4.太陽電池モジュールの製造方法
5.実施例
【0012】
<1.導電性接着剤>
先ず、太陽電池セルの表面電極又は裏面電極とタブ線とを電気的に接続するための導電性接着剤について説明する。なお、導電性接着剤の形状は、フィルム形状に限定されず、ペーストであってもよい。
【0013】
本実施の形態における導電性接着剤は、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有する。また、その他の添加組成物として、膜形成樹脂、熱可塑性エラストマー、シランカップリング剤、無機フィラーなどを含有することが好ましい。
【0014】
アクリル樹脂は、アクリル酸エステル(アクリレート)又はメタクリル酸エステル(メチルメタクリレート)の重合体である。アクリル樹脂としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
また、アクリル樹脂として、リン酸エステル基含有アクリレートを用いることが好ましい。リン含有アクリル酸エステルとしては、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アッシドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシプロピル)アッシドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエブチル)アッシドホスフェートなどが挙げられる。リン酸エステル基含有アクリレートを配合することにより、金属等の無機物表面での接着性を向上させることができる。
【0016】
ラジカル重合開始剤は、公知のものを使用することができ、中でも有機過酸化物を用いることが好ましい。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等を挙げることができる。
【0017】
導電性粒子としては、例えば、ニッケル、金、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したものなどを用いることができる。導電性粒子の平均粒径は、接続信頼性の観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。また、導電性粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは500〜50000個/mm、より好ましくは1000〜30000個/mmである。
【0018】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の種々の樹脂を使用することができ、その中でも膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0019】
熱可塑性エラストマーは、熱を加えると軟化して流動性を示し、冷却するとゴム状弾性体に戻る挙動を示す。熱可塑性エラストマーとしては、アクリルゴム(ACR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)などのゴム系弾性体が用いられる。これらの弾性体は、接続時に内部応力を吸収することができ、また、硬化阻害を起こさないため、高い接続信頼性を与えることができる。
【0020】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。シランカップリング剤により、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0021】
無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどを用いることができる。無機フィラーの含有量により、流動性を制御し、粒子捕捉率を向上させることができる。
【0022】
本実施の形態における導電性接着剤は、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下であることにより、優れた耐熱性を有する。硬化後のガラス転移温度が150℃未満の場合は耐熱性が低下し、例えば太陽電池セルの電極とタブ線との接続に用いた場合、熱衝撃試験において発電効率が低下してしまう。また、硬化後のガラス転移温度が180℃を超えると、熱衝撃試験において発電効率が低下してしまう。また、硬化後のtanδピーク値が0.25未満の場合、接着強度が悪化し、また、硬化後のtanδピーク値が0.6を超える場合、耐熱性が低下し、熱衝撃試験において発電効率が低下してしまう。
【0023】
ここで、tanδ(損失正接)は、tanδ=E”/E’で表される式により算出され、0以上かつ1未満の値である。E”は損失弾性率であり、E’は貯蔵弾性率である。tanδは、粘弾性試験機により、所定の周波数で所定の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)の粘弾性スペクトルと、損失弾性率(E”)の粘弾性スペクトルとを測定することにより、上記式から算出される。また、ガラス転位温度(Tg)は、tanδのピーク値の温度として示される。
【0024】
また、導電性接着剤の硬化前のアスカーC2硬度は、45以上80以下であることが好ましい。アスカーC2硬度が45以上であることにより、導電性接着剤をフィルム形状にした際、接着剤組成物が流動してフィルムの周縁からにじみ出るウージングを防止することができる。また、アスカーC2硬度が80以下であることにより、熱圧着時に導電性粒子を十分に押し込むことができ、低抵抗の導通を得ることができる。なお、アスカーC2硬度は、SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に規定されたデュロメータ(スプリング式硬度計)を用いて測定することができる。
【0025】
このような導電性接着剤によれば、比較的低い温度の熱圧着処理にてタブ線と電極とを強固に接続させることができ、高い接続信頼性を得ることができる。
【0026】
<2.導電性接着剤の製造方法>
次に、前述した導電性接着剤の製造方法について説明する。ここでは、導電性接着剤が膜状に形成された導電性接着フィルムの製造方法について説明する。本実施の形態における導電性接着フィルムの製造方法は、剥離基材上に、前述したアクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子と、膜形成樹脂と、熱可塑性エラストマーと、シランカップリング剤と、無機フィラーとを含む組成物を塗布する塗布工程と、剥離基材上の組成物を乾燥させる乾燥工程とを有する。
【0027】
塗布工程では、前述したアクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子と、膜形成樹脂と、熱可塑性エラストマーと、シランカップリング剤と、無機フィラーとを含む組成物を、前述した硬化後のガラス転移温度及びtanδピーク値が所定値となるように有機溶剤を用いて調整した後、この組成物を剥離基材上にバーコーター、塗布装置等を用いて塗布する。
【0028】
有機溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶剤、その他各種有機溶剤を用いることができる。また、剥離基材は、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布した積層構造からなり、組成物の乾燥を防ぐとともに、組成物のフィルム形状を維持する。
【0029】
次の乾燥工程では、剥離基材上の組成物を熱オーブン、加熱乾燥装置などにより乾燥させる。これにより、前述した導電性接着剤が膜状に形成された導電性接着フィルムを得ることができる。
【0030】
図1は、導電性接着フィルムの製品形態の一例を模式的に示す図である。この導電性接着フィルム20は、剥離基材21上に前述した導電性接着剤層が積層され、テープ状に成型されている。このテープ状の導電性接着フィルムは、リール22に剥離基材21が外周側となるように巻回積層される。剥離基材21としては、特に制限はなく、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などを用いることができる。また、導電性接着フィルム20は、導電性接着剤層上に透明なカバーフィルムを有する構成としてもよく、導電性接着剤層上に貼付されるカバーフィルムとしてタブ線を用いてもよい。このように予めタブ線と導電性接着フィルム20とを積層一体化させておくことにより、実使用時においては、剥離基材21を剥離し、導電性接着フィルム20の導電性接着剤層をバスバー電極や裏面電極のタブ線接続部上に貼着することによりタブ線と各電極との接続を図ることができる。
【0031】
図1に示すように導電性接着フィルム20が巻き取られたリール製品として提供される場合、導電性接着フィルム20のアスカーC2硬度は、48以上76以下であることが好ましい。アスカーC2硬度が48以上であることにより、接着剤組成物が流動してフィルムの周縁からにじみ出るウージングを防止することができる。また、アスカーC2硬度が76以下であることにより、熱圧着時に導電性粒子を十分に押し込むことができ、低抵抗の導通を得ることができる。また、導電性接着フィルム20が短冊形状で2枚以上積層された場合も同様に硬度を前述の範囲とすることにより、変形を防止し、所定の寸法を維持することができる。
【0032】
<3.太陽電池モジュール>
次に、本発明が適用された太陽電池モジュールについて説明する。本発明が適用された太陽電池モジュール1は、光電変換素子として、単結晶型シリコン光電変換素子、多結晶型光電変換素子を用いる結晶シリコン系太陽電池モジュールや、アモルファスシリコンからなるセルと微結晶シリコンやアモルファスシリコンゲルマニウムからなるセルとを積層させた光電変換素子を用いた薄膜シリコン系太陽電池である。
【0033】
図2に示すように、太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池セル2がインターコネクタとなるタブ線3によって直列に接続されたストリングス4を有し、このストリングス4を複数配列したマトリクス5を備える。そして、太陽電池モジュール1は、このマトリクス5が封止接着剤のシート6で挟まれ、保護基材として受光面側に設けられた表面カバー7及び裏面側に設けられたバックシート8とともに一括してラミネートされ、最後に、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム9が取り付けられることにより形成される。
【0034】
封止接着剤としては、例えばエチレンビニルアルコール樹脂(EVA)等の透光性封止材が用いられる。また、表面カバー7としては、例えば、ガラスや透光性プラスチック等の透光性の材料が用いられる。また、バックシート8としては、ガラスやアルミニウム箔を樹脂フィルムで挟持した積層体等が用いられる。
【0035】
太陽電池モジュールの各太陽電池セル2は、図3に示すように、シリコン基板からなる光電変換素子10を有する。光電変換素子10は、受光面側に表面電極となるバスバー電極11と、バスバー電極11とほぼ直交する方向に形成された集電極であるフィンガー電極12が設けられている。また、光電変換素子10は、受光面と反対の裏面側に、アルミニウムからなるAl裏面電極13が設けられている。
【0036】
そして、太陽電池セル2は、タブ線3によって、表面のバスバー電極11と、隣接する太陽電池セル2のAl裏面電極13とが電気的に接続され、これにより直列に接続されたストリングス4を構成する。タブ線3とバスバー電極11及びAl裏面電極13との接続は、導電性接着フィルム20によって行う。
【0037】
タブ線3は、従来の太陽電池モジュールで使用されているタブ線を利用することができる。タブ線3は、例えば、50〜300μm厚のリボン状銅箔を使用し、必要に応じて金メッキ、銀メッキ、スズメッキ、ハンダメッキ等を施すことにより形成される。また、タブ線3に、予め前述した導電性接着フィルムが積層されたものを用いてもよい。
【0038】
バスバー電極11は、Agペーストを塗布し、加熱することにより形成される。太陽電池セル2の受光面に形成されるバスバー電極11は、入射光を遮る面積を小さくし、シャドーロスを抑えるために、例えば1mm幅でライン状に形成されている。バスバー電極11の数は、太陽電池セル2のサイズや抵抗を考慮して適宜設定される。
【0039】
フィンガー電極12は、バスバー電極11と同様の方法により、バスバー電極11と交差するように、太陽電池セル2の受光面のほぼ全面に亘って形成されている。また、フィンガー電極12は、例えば約100μm程度の幅を有するラインが、所定間隔、例えば2mmおきに形成されている。
【0040】
Al裏面電極13は、アルミニウムからなる電極が例えばスクリーン印刷やスパッタ等により太陽電池セル2の裏面に形成される。
【0041】
なお、太陽電池セル2は、バスバー電極11を必ずしも設ける必要はない。この場合、太陽電池セル2は、フィンガー電極12の電流が、フィンガー電極12と交差するタブ線3によって集められる。また、Al裏面電極13にタブ線と接続不良にならない程度に開口部を形成してもよく、これによって接着強度を確保してもよい。
【0042】
<4.太陽電池モジュールの製造方法>
次に、太陽電池モジュールの製造方法について、図2を参照して説明する。本実施の形態における太陽電池モジュールの製造方法は、一の太陽電池セルの表面電極と、一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルの裏面電極とを導電性接着材料を介してタブ線で電気的に接続させる太陽電池モジュールの製造方法において、タブ線を、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下である導電性接着剤を介して表面電極及び裏面電極上に配置し、熱加圧するものである。
【0043】
具体的には、先ず、光電変換素子10の表面にAgペーストの塗布、焼成によってフィンガー電極12及びバスバー電極11を形成し、裏面にAlスクリーン印刷等によってタブ線3の接続部にAl裏面電極13を形成し、太陽電池セルを作製する。
【0044】
次いで、光電変換素子10表面のバスバー電極11及び裏面のAl裏面電極13に導電性接着フィルム20を貼着し、この導電性接着フィルム20上にタブ線3を配設する。
【0045】
そして、タブ線3の上から所定の圧力で加熱押圧することにより、タブ線3とバスバー電極11及びAl裏面電極13を電気的に接続する。このとき、タブ線3は、導電性接着フィルム20のバインダ樹脂がAgペーストにより形成されたバスバー電極11と良好な接着性を備えることから、バスバー電極11と機械的に強固に接続される。また、タブ線3は、Al裏面電極13と電気的に接続される。
【0046】
太陽電池セル2が接続されたマトリクス5を封止接着剤のシート6で挟み、保護材として受光面側に設けられた表面カバー7及び裏面側に設けられたバックシート8とともに一括してラミネートすることにより、太陽電池モジュール1が製造される。
【0047】
このような太陽電池モジュールの製造方法によれば、前述した導電性接着フィルムが、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下であるため、加熱押圧ヘッドによる押圧時に、200℃以下の比較的低い温度の熱圧着処理にてタブ線と電極とを強固に結合させることができ、高い接続信頼性を得ることができる。
【0048】
また、前述した太陽電池モジュールの製造方法に限らず、一の太陽電池セルの表面電極とタブ線、及び他の太陽電池セルの裏面電極とタブ線とを、前述した導電性接着フィルムを介在させて仮固定し、太陽電池セルの上下面に封止材、保護基材を順に積層し、保護基材の上面からラミネート装置(減圧ラミネーター)にてラミネート圧着させ、封止材を硬化させるとともに表面電極とタブ線及び裏面電極とタブ線とを接続させてもよい。
【0049】
図4は、減圧ラミネーターの構成を示す図である。減圧ラミネーター30は、上部ユニット31と下部ユニット32とから構成される。これらのユニットは、Oリングなどのシール部材33を介して分離可能に一体化される。上部ユニット31には、シリコンラバーなどの可撓性シート34が設けられており、この可撓性シート34により、減圧ラミネーター30が第1室35と第2室36とに区画される。
【0050】
また、上部ユニット31及び下部ユニット32のそれぞれには、各室がそれぞれ独立的に内圧調整、すなわち、真空ポンプやコンプレッサーなどにより、減圧、加圧、さらに大気開放も可能となるように、配管37、38が設けられている。配管37は、切替バルブ39により配管37aと配管37bとの2方向に分岐しており、配管38は、切替バルブ40により配管38aと配管38bとの2方向に分岐している。また、下部ユニット32には、加熱可能なステージ41が設けられている。
【0051】
次に、この減圧ラミネーター30を用いた具体的な接続方法について説明する。先ず、上部ユニット31と下部ユニット32とを分離し、ステージ41上に、タブ線が仮固定された太陽電池セルの上下面に封止材、保護基材(表面カバー7、バックシート8)を順に積層した積層物を載置する。
【0052】
そして、上部ユニット31と下部ユニット32とをシール部材33を介して分離可能に一体化し、その後、配管37a及び配管38aのそれぞれに真空ポンプを接続し、第1室35及び第2室36内を高真空にする。第2室36内を高真空に保ったまま、切替バルブ39を切り替えて、配管37bから第1室35内に大気を導入する。これにより、可撓性シート34が第2室36に向かって押し広げられ、結果、積層物がステージ41で加熱されつつ、可撓性シート34で押圧される。
【0053】
熱圧着後、切替バルブ40を切り替え、配管38bから第2室36内に大気を導入する。これにより、可撓性シート34が第1室35に向かって押し戻され、最終的に第1室35及び第2室36の内圧が同じとなる。
【0054】
最後に、上部ユニット31と下部ユニット32とを引き離し、ステージ41上から熱圧着処理された太陽電池モジュールを取り出す。これにより、封止樹脂の硬化と、電極とタブ線との接続とを同時に行うことができる。
【0055】
このような太陽電池モジュールの製造方法によれば、前述した導電性接着フィルムが、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下であるため、熱圧着処理時に、200℃以下の比較的低い温度の熱圧着処理にてタブ線と電極との間を強固に結合させることができ、高い接続信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0056】
<5.実施例>
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
ここでは、先ず、組成がそれぞれ異なるフィルム形成用樹脂組成物を調製し、硬化物のガラス転位温度及びtanδピーク値を測定した。そして、各フィルム形成用樹脂組成物を用いて、アクリル系熱硬化型の導電性接着フィルム作製し、この導電性接着フィルムを用いて太陽電池モジュールを作製し、発電効率について評価した。
【0058】
また、各フィルム形成用樹脂組成物の硬度を測定した。また、各フィルム形成用樹脂組成物を用いて接着剤リールを作製し、ウージングの発生量について評価した。
【0059】
ガラス転位点及びtanδピーク値の測定、発電効率の評価、硬度の測定、及びウージングの評価は、次のように行った。
【0060】
<ガラス転位点及びtanδピーク値の測定>
フィルム形成用樹脂組成物を所定の大きさに切り出し、160℃、10分の条件で硬化させ、測定用サンプルとした。この測定用サンプルについて、DMA(ダイナミックアナライザー)粘弾性測定装置(商品名:レオバイブロンDDV−01FP、オリエンテック社製)を用い、チャック間距離5cm、測定周波数11Hz、昇温速度3℃/minの条件で弾性率を測定した。この弾性率測定時のtanδのピーク温度をガラス転位温度(Tg)とし、そのtanδピーク値を求めた。
【0061】
<発電効率の評価>
フィルム形成用樹脂組成物を、剥離処理された基材フィルム上にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンで5分乾燥させ、厚さ25μmのアクリル系熱硬化型の導電性接着フィルムを作製した。
【0062】
次に、6インチ多結晶Siセル(寸法:15.6cm×15.6cm、厚さ:180μm)のAgからなる表面電極部分及びAlからなる裏面電極部分に導電性接着フィルムを張り合わせ、導電性接着フィルム上にハンダが被覆されたCuタブ線(幅:2mm、厚さ:0.15mm)をヒーターヘッドにより熱加圧(160℃、5秒、1MPa)して固定させた。
【0063】
そして、タブ線が固定された太陽電池セルを封止接着剤のシートで挟み、受光面側に設けられた表面カバー及び裏面側に設けられたバックシートとともに一括してラミネートした。
【0064】
この太陽電池モジュールの光電変換効率の測定を、ソーラーシミュレーター(日清紡メカトロニクス社製、PVS1116i)を用いて、JIS C8913(結晶系太陽電池セル出力測定方法)に準拠して行った。
【0065】
太陽電池モジュールにおける初期発電効率を100%としたとき、熱衝撃試験(TCT:−40℃、3時間←→110℃、3時間、1000サイクル)後の発電効率が97%以上のものを○、95%以上97%未満のものを△、及び95%未満のものを×とした。
【0066】
<硬度の測定>
前記調製されたフィルム形成用樹脂組成物を、タイプCデュロメータ(アスカー社製アスカーゴム硬度計C2型)にセットし、押針の接触から300秒後に硬度を室温にて測定した。
【0067】
<ウージングの評価>
前記調製されたフィルム形成用樹脂組成物を、剥離処理された基材フィルム上にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンで5分乾燥させ、厚さ25μmのアクリル系熱硬化型の導電性接着フィルムを作製した。導電性接着フィルムの基材フィルム側とは反対側の面に対して垂直に1.0mm幅でスリット刃を入れ、導電性接着フィルムを切断しながら、0.1m/sの速度で導電性接着フィルムからなるテープを300m巻き取り、接着剤リールを作製した。
【0068】
そして、接着剤リールが回転しないように固定し、接着剤リールから引き出したテープの先端に50gfの荷重を加えた状態で、30℃の恒温槽中に2時間保持した。リール巻芯からのウージング(はみ出し)の発生量が2層未満のものを○、3層未満のものを△、3層以上のものを×とした。なお、判定は、マイクロスコープによる目視によって行った。
【0069】
[実施例1]
膜形成樹脂としてフェノキシ樹脂(商品名:FX280、新日鐵化学(株)製)を20質量部用いた。熱可塑性エラストマーとしてアクリルゴム(商品名:SGシリーズ、長瀬ケムテックス(株)製)を3質量部、及びSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)(商品名:タフテックシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製)を12質量部用いた。アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を22質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を37質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。シランカップリング剤としてメタクリロキシシラン(商品名:KBE503、信越化学(株)製)を1質量部用いた。無機フィラーとしてシリカ(商品名:アエロジルシリーズ、日本アエロジル(株)製)を5質量部用いた。重合開始剤として有機過酸化物(商品名:ナイパーBMT、日油(株)製)を5質量部用いた。導電性粒子としてNi粉を5質量部用いた。これら膜形成樹脂、熱可塑性エラストマー、アクリレート、シランカップリング剤、無機フィラー、重合開始剤、及び導電性粒子を配合し、フィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0070】
この実施例1のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が150℃、及びtanδピーク値が0.46であった。また、実施例1のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は△であった。また、実施例1のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は52であった。また、実施例1のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は○であった。表1に、これらの結果を示す。
【0071】
[実施例2]
アクリレートとしてジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を37質量部、トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300、新中村化学(株)製)を22質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0072】
この実施例2のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が168℃、及びtanδピーク値が0.27であった。また、実施例2のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は△であった。また、実施例2のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は50であった。また、実施例2のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は○であった。表1に、これらの結果を示す。
【0073】
[実施例3]
熱可塑性エラストマーとしてアクリルゴム(商品名:SGシリーズ、長瀬ケムテックス(株)製)を5質量部、及びSEBS(商品名:タフテックシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製)を15質量部用いた。アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を5質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を24質量部、カプロラクトン変性トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300−1CL、新中村化学(株)製)15質量部、トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300、新中村化学(株)製)を10質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0074】
この実施例3のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が165℃、及びtanδピーク値が0.60であった。また、実施例3のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は△であった。また、実施例3のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は53であった。また、実施例3のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は○であった。表1に、これらの結果を示す。
【0075】
[実施例4]
熱可塑性エラストマーとしてアクリルゴム(商品名:SGシリーズ、長瀬ケムテックス(株)製)を5質量部、及びSEBS(商品名:タフテックシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製)を15質量部用いた。アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を5質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を24質量部、トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300、新中村化学(株)製)を25質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。無機フィラーとしてシリカ(商品名:アエロジルシリーズ、日本アエロジル(株)製)を1質量部用いた。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0076】
この実施例4のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が172℃、及びtanδピーク値が0.50であった。また、実施例4のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は○であった。また、実施例4のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は48であった。また、実施例4のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は△であった。表1に、これらの結果を示す。
【0077】
[実施例5]
熱可塑性エラストマーとしてアクリルゴム(商品名:SGシリーズ、長瀬ケムテックス(株)製)を5質量部、及びSEBS(商品名:タフテックシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製)を15質量部用いた。アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を5質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を24質量部、トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300、新中村化学(株)製)を25質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。無機フィラーとしてシリカ(商品名:アエロジルシリーズ、日本アエロジル(株)製)を3質量部用いた。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0078】
この実施例5のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が172℃、及びtanδピーク値が0.51であった。また、実施例5のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は○であった。また、実施例5のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は53であった。また、実施例5のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は○であった。表1に、これらの結果を示す。
【0079】
[実施例6]
熱可塑性エラストマーとしてアクリルゴム(商品名:SGシリーズ、長瀬ケムテックス(株)製)を5質量部、及びSEBS(商品名:タフテックシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製)を15質量部用いた。アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を5質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を24質量部、トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300、新中村化学(株)製)を25質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。無機フィラーとしてシリカ(商品名:アエロジルシリーズ、日本アエロジル(株)製)を9質量部用いた。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0080】
この実施例6のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が172℃、及びtanδピーク値が0.51であった。また、実施例6のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は△であった。また、実施例6のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は76であった。また、実施例6のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は○であった。表1に、これらの結果を示す。
【0081】
[比較例1]
アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を27質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を32質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。無機フィラーを用いなかった。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0082】
この比較例1のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が147℃、及びtanδピーク値が0.46であった。また、比較例1のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は×であった。また、比較例1のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は42であった。また、比較例1のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は×であった。表2に、これらの結果を示す。
【0083】
[比較例2]
アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を15質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を22質量部、トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300、新中村化学(株)製)を22質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。無機フィラーを用いなかった。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0084】
この比較例2のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が170℃、及びtanδピーク値が0.24であった。また、比較例2のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は×であった。また、比較例2のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は43であった。また、比較例2のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は×であった。表2に、これらの結果を示す。
【0085】
[比較例3]
熱可塑性エラストマーとしてアクリルゴム(商品名:SGシリーズ、長瀬ケムテックス(株)製)を5質量部、及びSEBS(商品名:タフテックシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製)を15質量部用いた。アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を5質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を24質量部、カプロラクトン変性トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300−1CL、新中村化学(株)製)25質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。無機フィラーを用いなかった。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0086】
この比較例3のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が161℃、及びtanδピーク値が0.66であった。また、比較例3のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は×であった。また、比較例3のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は44であった。また、比較例3のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は×であった。表2に、これらの結果を示す。
【0087】
[比較例4]
熱可塑性エラストマーとしてアクリルゴム(商品名:SGシリーズ、長瀬ケムテックス(株)製)を5質量部、及びSEBS(商品名:タフテックシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製)を15質量部用いた。アクリレートとしてジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を24質量部、トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300、新中村化学(株)製)を30質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。無機フィラーを用いなかった。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0088】
この比較例4のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が182℃、及びtanδピーク値が0.43であった。また、比較例4のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した太陽電池モジュールの発電効率の評価結果は×であった。また、比較例4のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は42であった。また、比較例4のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は×であった。表2に、これらの結果を示す。
【0089】
[比較例5]
熱可塑性エラストマーとしてアクリルゴム(商品名:SGシリーズ、長瀬ケムテックス(株)製)を5質量部、及びSEBS(商品名:タフテックシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製)を15質量部用いた。アクリレートとしてエポキシアクリレート(商品名:V#540、大阪有機化学工業(株)製)を5質量部、ジメタクリレート(商品名:NKエステルDCP、新中村化学(株)製)を24質量部、トリアクリレート(商品名:NKエステルA9300、新中村化学(株)製)を25質量部、及びリン酸エステル基含有アクリレート(商品名:PMシリーズ、日本化薬(株)製)を2質量部用いた。無機フィラーとしてシリカ(商品名:アエロジルシリーズ、日本アエロジル(株)製)を11質量部用いた。その他は、実施例1と同様にしてフィルム形成用樹脂組成物を調製した。
【0090】
この比較例5のフィルム形成用樹脂組成物の弾性率測定を行った結果、ガラス転位点(Tg)が172℃、及びtanδピーク値が0.52であった。また、比較例5のフィルム形成用樹脂組成物を用いて太陽電池モジュールを作製したところ、フィルムが硬いため、導電性粒子を押し込めず、導通の確保が困難であった。比較例5のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度は81であった。また、比較例5のフィルム形成用樹脂組成物を用いて作製した接着剤リールのウージングの評価結果は○であった。表2に、これらの結果を示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
実施例1〜6に示すように、フィルム形成用樹脂組成物の硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下であることにより、優れた耐熱性を得ることができる。したがって、フィルム形成用樹脂組成物からなる導電性接着フィルムを太陽電池セルの電極とタブ線との接続に用いることにより、太陽電池モジュールにおいて良好な発電効率を得ることができる。
【0094】
比較例1に示すようにフィルム形成用樹脂組成物の硬化後のガラス転移温度が150℃未満の場合、及び比較例4に示すように硬化後のガラス転移温度が180℃を超える場合、熱衝撃試験後の発電効率の低下が大きかった。また、比較例2に示すようにフィルム形成用樹脂組成物の硬化後のtanδピーク値が0.25未満の場合、及び比較例3に示すように硬化後のtanδピーク値が0.6を越える場合も、熱衝撃試験後の発電効率の低下が大きかった。
【0095】
また、実施例1〜6に示すように、硬化前(未硬化)のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度が45以上80以下であることにより、ウージングの発生を抑制することができた。一方、比較例1〜4に示すように、硬化前(未硬化)のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度が45未満の場合、多くの層でウージングが発生した。また、比較例5に示すように、硬化前(未硬化)のフィルム形成用樹脂組成物のアスカーC2硬度が80を超える場合、熱圧着時に導電性粒子を十分に押し込むことができず、初期段階で導通の確保が困難であった。
【符号の説明】
【0096】
1 太陽電池モジュール、 2 太陽電池セル、 3 タブ線、 4 ストリングス、 5 マトリクス、 6 シート、 7 表面カバー、 8 バックシート、 9 金属フレーム、 10 光電変換素子、 11 バスバー電極、 12 フィンガー電極、 13 Al裏面電極、 20 導電性接着フィルム、 21 剥離基材、 22 リール、 30 減圧ラミネーター、 31 上部ユニット、 32 下部ユニット、 33 シール部材、 34 可撓性シート、 35 第1室、 36 第2室、 37、38 配管、 39、40 切替バルブ、41 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、
硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下である導電性接着剤。
【請求項2】
硬化前のアスカーC2硬度が45以上80以下である請求項1記載の導電性接着剤。
【請求項3】
無機フィラーを含有する請求項1又は2記載の導電性接着剤。
【請求項4】
前記アクリル樹脂が、リン酸エステル基含有アクリレートを含有し、
前記ラジカル重合開始剤が、有機過酸化物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項5】
一の太陽電池セルの表面電極と、該一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルの裏面電極とが、導電性接着剤を介してタブ線と電気的に接続され、
前記導電性接着剤が、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下である太陽電池モジュール。
【請求項6】
一の太陽電池セルの表面電極と、該一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルの裏面電極とを導電性接着材料を介してタブ線で電気的に接続させる太陽電池モジュールの製造方法において、
前記タブ線を、アクリル樹脂と、ラジカル重合開始剤と、導電性粒子とを含有し、硬化後のガラス転移温度が150℃以上180℃以下、且つtanδピーク値が0.25以上0.60以下である導電性接着剤を介して上記表面電極及び上記裏面電極上に配置し、熱加圧する太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−45853(P2013−45853A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181953(P2011−181953)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】