説明

導電性接着性組成物

導電性接着性組成物は、架橋性で接着性の成分、融剤、及び金属酸化物が存在する表面を持つ導電性金属を含む。該接着性成分は、エポキシ樹脂を含み、また該融剤は、フェノールを含む。このフェノールは、該導電性金属表面上の金属酸化物と反応性であって、該導電性金属表面から、少なくとも部分的に該金属酸化物を除去する。結果として、該導電性接着性組成物の導電率は増大する。この組成物は、電気又は電子部品間の界面において特に有用であり、そこで該組成物は、所定の部品を物理的に固定し、かつこれらを電気的に接続し、しかも金属酸化物の生成を継続的に阻止するように機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に導電性接着性組成物に関する。より具体的には、本発明は、とりわけ、電気又は電子部品を印刷回路基板(PCB)に、物理的に固定しかつ電気的に接続して、電気又は電子アセンブリーを製造するために利用される、導電性接着性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気又は電子アセンブリー工業全体において、鉛を主成分とする半田に対する、適当な代替品を見出そうとの要望があることは公知である。多くの異なる、鉛を含まない導電性接着性組成物を包含する、鉛を含まない系が、時として当分野において知られていた。一般に、これらの導電性接着性組成物は、電気又は電子部品を基板、例えばPCBに、物理的に固定しかつ電気的に接続して、電気又は電子アセンブリーを製造するために利用され、またこれらの導電性接着性組成物の多くは、該鉛を主成分とする半田に対する代替品として認識されている。
不幸なことに、公知技術の導電性接着性組成物の多くは、加工性に関する付随的な問題を発生し、また他の重大な限界をこうむっている。
まず、鉛を主成分とする半田を組込んだPCBの典型的な加工は、約200-205℃なる加工温度を必要とする。公知技術の導電性接着性組成物を包含する、鉛を含まない多くの系は、250-265℃までの範囲に及ぶ、より高い加工温度を必要とする。このレベルにおける高い加工温度は、しばしば他の部品に有害であって、溶融及びその他の損傷を引起す。従って、この高い加工温度に対して抵抗性の、他の材料を使用する必要があり、またこれらの材料は、通常より高価であり、その使用は望ましくない。
第二に、最良の導電性接着性組成物であっても、その抵抗性は、PCBに対する電気部品の電気的接続のための、他の形態、例えば鉛を主成分とする半田の持つ抵抗性程良好なものではない。例えば、工業界全体に渡り入手可能な、一般に普及している銀及び金は、硬化後に、約50 mΩ/□(milliohm per square)なる抵抗を持ち、これに対して、鉛を主成分とする半田は、硬化後に約2.5 mΩ/□なる抵抗を持つ。
【0003】
第三に、従来技術の導電性接着性組成物を用いて製造した電気接続の抵抗は、経時と共に望ましからぬ増大を起こす。明らかに、この抵抗率における増大は、導電性にとって有害である。一例として、該導電性接着性組成物は、(i) 集積回路チップ等の電気部品の錫メッキした鉛を、(ii) PCB上の銅製パッドに、電気的に接続するのに有用である可能性がある。典型的には、電気部品をPCBに機械的に固定するのに必要とされる、導電性接着剤の薄膜は、該錫メッキした鉛と、銅製パッドとの間に堆積され、かつ硬化される。この電気又は電子アセンブリーの有効寿命中、大気中の酸素及び水分が、該硬化された導電性接着性組成物に浸透し、またこれを透過する。導電性を付与するために、該接着性組成物に配合された金属粒子は、酸化をこうむることになる。例えば、該導電性金属粒子が、銀の粉末又は銀のフレークであった場合には、金属酸化物、特に酸化銀が、酸化のために生成するであろう。更に、該導電性接着性組成物の該金属粒子と、該錫メッキした鉛又は銅製パッド何れかとの間の界面は、これらが貴金属で構成されていないために、特に酸化され易い。該電気又は電子アセンブリーの有効寿命中の、この導電性接着性組成物内及び該界面における金属酸化物の生成は、抵抗の段階的な増大及びこれに応じた導電性の低下をもたらし、最終的に、該導電性接着性組成物の電気的な接続に依存している、該アセンブリーにおけるあらゆる電気回路の、でたらめな性能をもたらし、又は完全な故障、破損を起こす恐れのあるレベルにまで達する。
【0004】
公知技術において、金属酸化物の蓄積に関連する問題を軽減するための、幾つかの試みがあるが、全て役に立たないことは述べておく価値がある。K. Galleo等は、クックソン(Cookson)社のアルファメタルディビジョン(Alpha Metal Division)に譲渡された特許において、該界面の機械的接続を可能とするように、該導電性接着性組成物に、極めて硬い金属-被覆セラミックを付加することを提案している。この方法は、一般的に該金属粒子と、該電気又は電子部品との間に発生する酸化物のために失敗であった。
別の方法では、酸が、該公知技術の該導電性接着性組成物に配合されている。これらの酸は、初めは清浄で、金属酸化物を除去するが、該酸が様々な成分と反応して、該組成物の樹脂状の成分となり、該酸が中和され、結果的には、最早該金属粒子からその酸化物を溶融する、融剤として有効では無くなる。更に、過剰の酸の使用は、その型又は量によって、硬化を阻害する恐れがあり、またそうでなくても、該導電性接着性組成物が、水分による攻撃及び劣化を受け易くなってしまう。
上に列挙した技術を含む、従来技術の該導電性接着性組成物と関連する上記所欠点のために、溶融によって、該導電性接着性組成物自体において、又は該組成物を使用している、電気又は電子部品間の界面において生じるあらゆる金属酸化物を、継続的に除去する能力を持つことによって、改善された導電性を示す、導電性接着性組成物を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【0005】
導電性接着性組成物は、導電性金属、架橋性で接着性の成分及び融剤を含む。該導電性金属は、50〜90質量部なる範囲の量で存在し、かつ金属酸化物が存在する表面を持ち、また該架橋性で接着性の成分は、7〜24質量部なる範囲の量で存在し、かつエポキシ樹脂を含む。
該融剤は、1〜20質量部なる範囲の量で存在し、かつ該導電性金属の上記表面における、該金属酸化物と反応性のフェノールを含む。この反応は、少なくとも部分的に、該導電性金属の上記表面から該金属酸化物を除去する。それ故、該導電性接着性組成物の導電率は、増大する。
本発明は、低い初期接触抵抗を達成するように、導電性接着性組成物内に融剤を配置することのみを意図するものではなく、該導電性接着性組成物が組込まれている、電気又は電子アセンブリーの寿命全体に渡り、継続して溶融を行うのに適した環境を維持することをも意図している。換言すれば、該導電性接着性組成物は、溶融作用の長期に渡る持続を可能とし、その硬化段階全体でさえ持続する。本発明の導電性接着性組成物は、電気又は電子アセンブリー内の、電気又は電子部品(リード線、パッド等)を、金属酸化物のない状態に保って、抵抗率を下げ、結果的に導電率を高める。
従って、本発明は、導電性接着性組成物を提供するものであり、この導電性接着性組成物は、溶融によって、該組成物自体において、又は該組成物を使用している電気又は電子部品間の界面において生じる、あらゆる金属酸化物を持続的に除去する能力を持つことによって、改善された導電率を呈する。
本発明のその他の利点は、添付した図面を考慮して、以下の詳細な説明を参照することによって、本発明を更に良く理解した場合に、容易に理解されるであろう。該添付図面及び詳細な説明は、例示のみの目的で与えられるものであり、何等本発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下の説明は、本発明を実施するための、現時点において最良の形態である。この説明は、本発明の一般的な原理を示すために行われ、また本発明を限定する意味でなされるものではない。本発明の範囲は、最良には、添付した特許請求の範囲を参照することによって決定される。
本発明は、導電性接着性組成物26、又は単に組成物26を開示する。好ましくは、本発明の組成物26は、電気又は電子部品20を、非-導電性印刷回路基板(PCB)等の基板16に、物理的に固定し、かつ電気的に接続して、電気又は電子アセンブリー24を製造するために使用される。PCB16は、特に極端に高い加工温度にて加熱するには理想的とは言えない、ポリスチレン等の低融点プラスチック製であり得る。
特に図1を参照すると、従来技術の電子アセンブリー10が示されている。図1は、従来技術の導電性接着性組成物12の、電気的接続を行う際の、一般的な利用に焦点を合わせてある。そこでは、電子アセンブリー10が、老化されておらず、即ち図2を参照しつつ以下に記載されるように、金属酸化物22は、まだ形成されていない。より具体的には、電気的に伝導性のパッド14は、PCB16等の基板の表面にある特徴として形成される。外部の電気又は電子部品20に対するリード線18は、従来技術の硬化された導電性接着性組成物12の作用によって、該パッド14に永続的に接着されている。図2においては、図1の従来技術の電子アセンブリー10が老化されて、金属酸化物22が、全面に形成されている。より具体的には、該金属酸化物22は、該組成物12と該パッド14との界面に、また該組成物12と該リード線18との間にも形成されている。この金属酸化物22は、該パッド14又は該リード線18の何れかを形成する金属よりも、高い抵抗を持つものである。
【0007】
図3を参照すると、本発明による電気又は電子アセンブリー24が示されている。このアセンブリー24では、該リード線18と該パッド14との間に電気的な接続を確立するために、本発明の組成物26が組込まれている。より詳しくは、該組成物26は、該電気又は電子アセンブリー26のリード線18と、該基板16上の導電性パッド14との間の界面に堆積されている。図3では、老化が生じており、また金属酸化物は、まだ生成していない。次いで、該組成物26は、必要に応じて、該リード線18と該パッド14とを電気的に接続するために、硬化される。
該組成物26は、導電性金属、架橋性で接着性の成分、及び融剤を含む。典型的には導電性金属粒子である、該導電性金属は、50〜90質量部なる範囲の量、好ましくは70〜85質量部なる範囲の量で、該組成物26中に存在する。ここで使用する用語「粒子」とは、導電性金属粉末、導電性金属フレーク等を包含するものとする。
好ましくは、この導電性金属は、銅、銀、アルミニウム、金、プラチナ、パラジウム、ベリリウム、ロジウム、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、モリブデン、イリジウム、レニウム、水銀、ルテニウム、オスミウム、及びこれらの組合わせからなる群から選択される。より好ましくは、この導電性金属は、貴金属を含む。本発明の最も好ましい態様では、該貴金属は、粒子状態にある、特にフレーク状の銀である。本発明の組成物26において使用するのに適した2種の銀フレークは、フェロメット(FerroMet)から市販品として入手できる、シルバーフレーク(Silver Flake) 1及びシルバーフレーク(Silver Flake) 26 LVである。単に説明の目的で、残りの説明は、該導電性金属として、銀のフレークについて行われる。この説明の形態は、便宜的なものであって、限定的なものと理解すべきではない。
【0008】
該導電性金属は表面を有し、その上には金属酸化物が存在する。当業者には理解されるように、この金属酸化物は、該導電性金属と、空気中の水分及び酸素との酸化反応の結果として、該表面上に形成される。この金属酸化物は、抵抗を高める傾向を持ち、そのため純粋な導電性金属に比して、電導度にとって、比較的有害である。好ましい銀のフレークとは、各フレークが、表面を持ち、しかも該金属酸化物が、典型的に酸化銀であることを意味する。この直前で説明したように、該金属酸化物は導電性であるものの、純粋な該導電性金属、即ち好ましい態様における純粋な、酸化されていない銀フレーク程に、導電性である訳ではない。
この銀フレークが、またその表面に潤滑剤を含むこともできることは、述べておく価値がある。この潤滑剤、典型的にはステアリン酸銀は、銀粉末からの該銀フレークの圧延による製造中に、ステアリン酸が、該銀フレークの表面と反応した際に形成される。以下において更に詳しく説明する、本発明の融剤は、該銀フレークの表面から、あらゆる潤滑剤を除去する機能をも併せ持ち、これにより該組成物26の導電性は、更に増大する。ここで使用する用語「潤滑剤」とは、一般に該ステアリン酸銀を意味するが、銀粉末の銀フレークへの圧延処理の結果として残された、あらゆるステアリン酸をも意味する。
本明細書において接着性成分という、該架橋性で接着性の成分は、7〜24質量部なる範囲、好ましくは11〜19質量部なる範囲の量で存在する。この接着性成分は硬化性であって、該電気又は電子部品20を、該リード線18及び該パッド14を介して、該基板16に物理的に接着することができる。
【0009】
該接着性成分は、エポキシ樹脂を含む。このエポキシ樹脂の幾つかの物性、特に平均エポキシ官能価及びエポキシ当量が、理想的なエポキシ樹脂に関する、重要な選択基準である。より具体的には、このエポキシ樹脂は、少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3.0なる、平均のエポキシ官能価を持つことが好ましい。また、このエポキシ樹脂は、60〜200なる範囲、より好ましくは90〜180g/eqなる範囲のエポキシ当量を持つことが好ましい。
本発明の最も好ましい態様においては、このエポキシ樹脂は、p-アミノフェノールのトリグリシジル及びエポキシフェノールノボラック樹脂の少なくとも一方を含む。即ち、最も好ましい態様においては、該エポキシ樹脂は、p-アミノフェノールのトリグリシジル、エポキシフェノールノボラック樹脂、又はこれらエポキシ樹脂両者のブレンドを含むことができる。適当な一種のp-アミノフェノールのトリグリシジルは、現在ユタ州ソルトレークシティー、ハンツマン(Huntsman)の一部門である、バンチコ社(Vantico, Inc.)から市販品として入手できる、アラルダイト(AralditeTM) MY 0510エポキシレジン(Epoxy Resin)である。適当な一種のエポキシフェノールノボラック樹脂は、同様にハンツマン社から市販品として入手できるアラルダイト(AralditeTM) EPN 9850エポキシレジン(Epoxy Resin)である。
【0010】
エポキシ反応において、このエポキシ樹脂は架橋する。より具体的には、約150℃なる温度にて、約3〜15分間、該組成物16を加熱した場合、このエポキシ樹脂は、自発的に架橋して、結果的にエステル結合を生成し、硬化する。該組成物16の加熱は、任意の公知の加熱機構によって行うことができ、該加熱機構は、例えば公知の炉及びオーブン及びマイクロ波オーブン、例えば可変周波数マイクロ波輻射に基づくマイクロ波オーブン等を含むが、これらに限定されない。このエポキシ反応においては、多大な発熱が起こり、また該導電性金属、該接着性成分及び該融剤が硬化して、硬化された導電性接着性組成物26を生成する。他の化学的成分、例えばアミン-及びカルボキシ-含有化合物を含むが、これらに限定されない成分を、該接着性成分に配合して、該エポキシ樹脂と架橋することが可能であることを、当業者は理解している。
該接着性成分は、場合により反応性の希釈剤及び触媒を含むことができる。事実、必須ではないが、本発明の好ましい態様は、該エポキシ樹脂と共に、該接着性成分に、これら反応性の希釈剤及び触媒両者を配合する。
【0011】
該反応性希釈剤が含まれる場合、これは、好ましくは2〜14質量部なる範囲の量で存在し、また好ましくはアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及びこれらの組合わせからなる群から選択される。より好ましくは、この反応性希釈剤は、アクリレートを主成分とし、かつ少なくとも2官能性のモノマーを含む。最も好ましい反応性希釈剤は、ペンシルバニア州、エクストンの、サルトマー社(Sartomer Company, Inc.)から、SR494エトキシレーテッド(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Ethoxylated (4) Pentaerythritol Tetra-acrylate)として、市場で入手できる、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレートである。その他の適当なモノマーとしては、1官能性、2官能性、3官能性、4官能性及びそれ以上の官能性を持つモノマーが含まれ、これらのモノマーは、エトキシル化及びプロポキシル化されていても、されていなくても良い。多くのこのような適当なモノマーも、サルトマー社から市販品として入手できる。
ここで使用する用語「反応性希釈剤」とは、活性物質の相対的な濃度を減じて、所定の有利な効果を達成するのに使用する成分を意味する。この特別な反応性希釈剤は、本発明の接着性成分において、上記のエポキシ樹脂と共に使用して、エポキシ反応の相対的濃度を減じ、かつこのエポキシ反応の作用を和らげる(例えば、エポキシ架橋の際の粘度を調節する)。更に、このエポキシ反応からの発熱は、該反応性希釈剤、即ち好ましい態様における該エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレートを活性化して、自身と補足的に架橋を行うものと考えられる。換言すれば、第二の架橋反応が起こるものと考えられる。この第二の架橋反応は、該接着性成分のエポキシ樹脂と関連する一次架橋とは、相互作用しない。
【0012】
該触媒を含む場合、この触媒は、好ましくは0.05〜2質量部なる範囲の量で存在し、また好ましくはイミダゾールである。この接着性成分にとって最も好ましい型のイミダゾールは、2-エチル-4-メチルイミダゾールであり、これはペンシルバニア州、アレンタウンの、エアープローダクツ&ケミカルズ社(Air Products and Chemicals, Inc.)から、イミキュア(IMICURETM) EMI-24として市場で入手できる。
該反応性希釈剤及び該触媒両者に関連して、広範な化学的代替品が、該エポキシ樹脂と共に使用するのに適したものである限りにおいて、これら代替品を、この接着性成分に配合することが可能であるものと理解すべきである。
本発明の組成物26は、また融剤をも含む。この融剤は1〜20質量部なる範囲、好ましくは1〜10質量部なる範囲内の量で存在する。この融剤は、該導電性金属の表面上の、金属酸化物と反応性のフェノールを含む。当業者には理解されるように、1又はそれ以上のヒドロキシル基が、直接ベンゼンリングに結合している、大きな1群の芳香族有機化合物の任意の一種である。1〜20質量部において、この融剤、特にフェノールは、該接着性成分、即ち該組成物26の化学的骨格を、如何なる様式においても劣化することはない。その代わりに、このフェノールは該エポキシ樹脂を可塑化する機能を持ち、結果的に該組成物26の加工を容易にし、かつ該硬化された組成物26の可撓性及び靭性を高めるものと考えられている。
【0013】
該融剤のフェノールと、該導電性金属の表面における金属酸化物との反応性は、少なくとも部分的に導電性金属の表面から、該金属酸化物を除去する。該純粋な、即ち未-酸化状態の金属に対して、より高い抵抗率を持つ金属酸化物を、該導電性金属から除去することにより、該組成物26の導電性は増大する。一般に、該組成物26の抵抗は、公知技術の導電性接着性組成物、即ち半田代替物、例えばEPO-TEKTM E2116-4及びE2116-5(これらは、両者共に、MA州、ビレリカの、エポキシテクノロジー(Epoxy Technology)社から市販品として入手できる)等と比較して、少なくとも50%減少する。これらE2116-4及びE2116-5両者は、0.0001〜0.0005Ω-cmなる範囲の抵抗率を持ち、この抵抗率は、ほぼ40〜200mΩ/□なる範囲の値に相当する。公知技術の導電性接着性組成物と比較して、本発明の組成物の抵抗率における減少は、対応する導電率における改善をもたらす。一般に、本発明の導電性接着性組成物26の抵抗は、15mΩ/□以下、好ましくは10mΩ/□以下である。ここで使用する用語「〜との反応性」及び「反応性」とは、該導電性金属の表面から、該金属酸化物及び/又は該潤滑剤と反応すること、又は単に浄化し、洗浄し、又は該金属酸化物及び/又は潤滑剤の幾分かの量を除去することを意味する。
【0014】
本発明の組成物26に配合されるフェノールは酸性である。それ故に、これは、該酸化銀に対して苛性、即ち腐食性であり、また連続的な溶融を介して、該銀フレークから該酸化銀を除去するように機能する。このフェノールは、主として未反応状態で該組成物26に残り、未反応の融剤として機能して、リード線18、パッド14等の上記電気又は電子部品20上で起こる、酸化を連続的に排除し、即ち生成する金属酸化物を連続的に除去する。該フェノールは、また絶えず該金属酸化物が生成されるのを防止するように機能する。該金属酸化物を連続的に溶融し、かつ絶えず該金属酸化物が生成されるのを防止することによって、該組成物26の及びこの組成物26を配合したあらゆる電子アセンブリー24の、より低い抵抗を、永続的に保存できる。
【0015】
本発明の組成物26において使用するのに、最も好ましいフェノールは、ノニルフェノール(C9H19C6H4OH又はC15H24O)である。しかし、他のフェノール、例えばフェノール、レゾルシノール、4-(t-オクチル)フェノール、2,5-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2-(1-メチルブチル)フェノール、2-t-ブチル-6-メチルフェノール、及び様々なビスフェノール類、例えばビスフェノールAを含むが、これらに限定されない他のフェノールが、本発明の組成物26における該融剤として使用するのに適したものであり得る。あるいはまた、このフェノールは、更に式:CxHyC6H4OHで表されるフェノールとして定義することができ、該式においてxは3〜12であり、かつyは該フェノールを飽和するように選択される。例えば、このフェノールは、o-sec-ブチルフェノール、即ちC2H5(CH3)CHC6H4OH、o-t-ブチルフェノール、即ち(CH3)3C C6H4OH、p-t-ブチルフェノール、即ち(CH3)3CC6H4OH、p-t-ヘキシルフェノール、即ちC6H13C6H4OH、ドデシルフェノール、即ちC12H25C6H4OH等であり得る。全体として、このフェノールは、その型及びその量において、該接着性成分の該エポキシ樹脂を劣化させないように、添加される。
【0016】
該組成物26は、場合によりこの組成物26を該基板16に適用するための溶媒を含む。従って、該溶媒が、その型及びその量において、該接着性成分及び該融剤を溶解して溶液とするのに十分な場合が理想的である。該溶媒が該組成物26に含まれる場合、この溶媒は、好ましくは該接着性成分及び該融剤を溶解するために、1〜20質量部なる範囲の量で存在する。好ましくは、該溶媒の型は、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びこれらの組み合わせから選択される。エチレングリコールモノブチルエーテルは、ブチルセロソルブとして市場から入手でき、またジエチレングリコールモノブチルエーテルは、ブチルカルビトールとして市場から入手でき、これらは、両者共に、ミシガン州、ミッドランドのダウケミカル(Dow Chemical)社から入手できる。勿論、他の溶媒も、該組成物26中に配合するのに適したものであり得る。
【実施例】
【0017】
ここに提示するような、該導電性接着性組成物を例示する、以下の実施例は、本発明を例示するものであって、本発明を何等限定するためのものではない。本件特許出願における、質量部に関する全ての言及は、該導電性接着性組成物26の100質量部を基準とするものである。
以下の表を参照すると、該導電性接着性組成物26は、以下に規定する質量部(pbw)にて、各成分を添加し、かつ反応させることにより製造された。ここに概説した各成分のpbw、特に該導電性金属、該接着性成分、及び該融剤のpbwは、硬化のための最適の反応、及びより低い抵抗率、即ち高い導電性を得るために重要である。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
上記表において、「エポキシ樹脂#1」は、アラルダイト(AralditeTM) MY 0510エポキシレジン(Epoxy Resin)(ハンツマンの一部門である、バンチコ社製)であり;「エポキシ樹脂#2」は、アラルダイト(AralditeTM) EPN 9850エポキシレジン(Epoxy Resin) (ハンツマンの一部門である、バンチコ社製)であり;「反応性希釈剤」は、SR494エトキシレーテッド(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Ethoxylated (4) Pentaerythritol Tetra-acrylate)(サルトマー社製)であり;「触媒」は、イミキュア(IMICURETM) EMI-24(エアープローダクツ&ケミカルズ社製) であり;「導電性金属#1」は、シルバーフレーク1(フェロメット社製)であり;「導電性金属#2」は、シルバーフレーク26LV(フェロメット社製)であり;「融剤」は、ノニルフェノール(アルドリッチ/ペニンシュラポリマーズ(Aldrich/Peninsula Polymers)社製)であり;また「溶媒」は、ブチルセロソルブ(ダウケミカル(Dow Chemical)社製)である。
上記実施例1〜3の組成物は、基板16、特にFR4上に堆積し、オーブン内で150℃にて30分間加熱することにより、硬化した。
明らかに、上記の教示に照らせば、本発明の多数の改良並びに変更が可能である。本発明は、添付した特許請求の範囲に具体的に記載されたもの以外で、実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来技術の電子アセンブリーを示す図であり、電気的接続の製造における、導電性接着性組成物の一般的な使用に着眼したものであり、ここでは該電子アセンブリーは、老化していない。
【図2】老化後の、図1に示した、従来技術の電子アセンブリーを示す図であり、ここでは、金属酸化物が、全面に渡り形成されている。
【図3】老化を伴う、本発明の導電性接着性組成物を使用した、電子アセンブリーを示す図であり、ここでは、金属酸化物形成されていない。
【符号の説明】
【0022】
14・・・パッド
16・・・基板
18・・・リード線
20・・・電気又は電子部品
24・・・電気又は電子アセンブリー
26・・・導電性接着性組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性接着性組成物であって、
50〜90質量部なる範囲の量で存在し、かつ金属酸化物が存在する表面を持つ導電性金属と、
7〜24質量部なる範囲の量で存在し、かつエポキシ樹脂を含む、架橋性で接着性の成分と、
1〜20質量部なる範囲の量で存在し、かつ該導電性金属の上記表面における、該金属酸化物と反応性であって、少なくとも部分的に該金属酸化物を、該導電性金属の上記表面から除去して、該導電性接着性組成物の導電率を増大させる融剤と、
を含有し、上記全ての質量部が、該導電性接着性組成物100質量部を基準とするものであることを特徴とする、導電性接着性組成物。
【請求項2】
該導電性金属が、銅、銀、アルミニウム、金、プラチナ、パラジウム、ベリリウム、ロジウム、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、モリブデン、イリジウム、レニウム、水銀、ルテニウム、オスミウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項3】
該導電性金属が、貴金属を含む、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項4】
該貴金属が、粒子状態にある銀を含む、請求項3記載の導電性接着性組成物。
【請求項5】
該導電性金属が、70〜85質量部なる範囲の量で存在する、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項6】
該エポキシ樹脂が、少なくとも2.5なる平均エポキシ官能価を持つ、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項7】
該エポキシ樹脂が、少なくとも3.0なる平均エポキシ官能価を持つ、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項8】
該エポキシ樹脂が、60〜200 g/eqなる範囲のエポキシ当量を持つ、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項9】
該エポキシ樹脂が、90〜180 g/eqなる範囲のエポキシ当量を持つ、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項10】
該エポキシ樹脂が、p-アミノフェノールのトリグリシジル及びエポキシフェノールノボラック樹脂の少なくとも一方を含む、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項11】
該接着性成分が、11〜19質量部なる範囲の量で存在する、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項12】
該架橋性で接着性の成分が、更に反応性の稀釈剤を含む、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項13】
該反応性の稀釈剤が、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12記載の導電性接着性組成物。
【請求項14】
該反応性の稀釈剤が、アクリレートを主成分とし、かつ少なくとも2-官能性のモノマーを含む、請求項12記載の導電性接着性組成物。
【請求項15】
該モノマーが、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む、請求項14記載の導電性接着性組成物。
【請求項16】
該架橋性、接着性成分が、更に触媒をも含む請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項17】
該触媒が、イミダゾールを含む、請求項16記載の導電性接着性組成物。
【請求項18】
該フェノールが、ノニルフェノールを含む、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項19】
該フェノールが、ビスフェノールを含む、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項20】
該フェノールが、レゾルシノールを含む、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項21】
該フェノールが、更に式:CxHyC6H4OHで表されるフェノールとして定義され、該式においてxは3〜12であり、かつyは該フェノールを飽和するように選択される、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項22】
該フェノールが、酸性である、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項23】
該融剤が、1〜10質量部なる範囲の量で存在する、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項24】
更に、該架橋性、接着性成分及び該融剤を溶解するために、1〜20質量部なる範囲の量で存在する、溶媒をも含む、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項25】
該溶媒が、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24記載の導電性接着性組成物。
【請求項26】
15mΩ/□以下の抵抗を持つ、請求項1記載の導電性接着性組成物。
【請求項27】
請求項1記載の該導電性接着性組成物から製造した、電気的接続を持つことを特徴とする、基板。
【請求項28】
導電性接着性組成物であって、本質的に、
50〜90質量部なる範囲の量で存在し、かつ金属酸化物が存在する表面を持つ導電性金属と、
7〜24質量部なる範囲の量で存在し、かつエポキシ樹脂、反応性の稀釈剤、及び触媒を含む、架橋性で接着性の成分と、
1〜20質量部なる範囲の量で存在し、かつ該導電性金属の上記表面における、該金属酸化物と反応性であって、少なくとも部分的に該金属酸化物を、該導電性金属の上記表面から除去して、該導電性接着性組成物の導電率を増大させる融剤と、
からなり、上記質量部の全ては、該導電性接着性組成物100質量部を基準とするものであることを特徴とする、導電性接着性組成物。
【請求項29】
該エポキシ樹脂が、p-アミノフェノールのトリグリシジル及びエポキシフェノールノボラック樹脂の少なくとも一方を含む、請求項28記載の導電性接着性組成物。
【請求項30】
該反応性の稀釈剤が、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28記載の導電性接着性組成物。
【請求項31】
該反応性の稀釈剤が、アクリレートを主成分とし、かつ少なくとも2-官能性のモノマーを含む、請求項28記載の導電性接着性組成物。
【請求項32】
該触媒が、イミダゾールを含む、請求項28記載の導電性接着性組成物。
【請求項33】
該フェノールが、ノニルフェノールを含む、請求項28記載の導電性接着性組成物。
【請求項34】
更に、該架橋性、接着性成分及び該融剤を溶解するために、1〜20質量部なる範囲の量で存在する、溶媒をも含む、請求項28記載の導電性接着性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−514144(P2006−514144A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569678(P2004−569678)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/029681
【国際公開番号】WO2004/083332
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】