説明

導電性標識に結合された無線周波数識別機能

本願は、無線周波応答機能を有する標識(50、100)の複数の実施形態、標識(50、100)の製造及び使用方法、並びに標識(50、100)のパフォーマンス特性に関する。これら実施形態は、RFIDタグ若しくはチップ(110)が中に配置される又は隣接して配置される導電性素子の切抜き、開口部、若しくは開口(108)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線周波応答機能を有する標識物品の複数の実施形態、標識物品を製造及び使用する方法、並びに標識物品のパフォーマンス特性に関する。
【背景技術】
【0002】
時にRFID技術と呼ばれる、無線周波数識別技術は、種々の商業的応用を有し、典型的には、物体認知及び追跡に使用される。
【0003】
最初に、典型的な無線周波識別(「RFID」)タグ及びリーダーの少なくとも一実施形態を記載し、記載の実施形態等は当該技術分野において周知のものである。図1は、典型的な無線周波数識別(「RFID」)タグ10を示す。RFIDタグ10は、第1の主表面14と、第1の主表面14の反対側の第2の主表面16とを有する基板12を備える。基板12は、対象物に巻き付けることができるラベルに使用できるような任意の可撓性基板であってもよい。可撓性基板12は種々の表面に適合し、物体を囲むように容易に曲がるよう、十分な可撓性を有し得る。例えば、基板12の厚みは25〜100マイクロメートルの範囲であってよく、ポリエステル、ポリエチレンナフサネート、ポリイミド、ポリプロピレン、紙、又は当業者には明らかであるその他の可撓性材料等の可撓性材料から作製することができる。
【0004】
RFID素子は、基板12の第1の主表面14に取り付けられる。RFID素子は、呼掛けシステム(interrogation system)が無線周波数応答素子からの情報を取得することができるように構成された情報記憶能力と送信能力とを有する。RFID素子は、典型的には、集積回路20とアンテナ18との2つの主な構成要素を含む。集積回路20は主要な識別機能を提供する。集積回路は、タグ識別やその他の所望の情報を恒久的に格納し、呼掛けハードウェアから受け取ったコマンドを解釈及び処理して、呼掛け装置からの情報要求に応答し、複数のタグが同時に呼掛けに応答することに起因する衝突を呼掛けハードウェアが解決するのを支援するような機能の回路を含む。所望により、集積回路は、単に情報を読み取る(読み取り専用)のではなく、メモリに格納された情報の更新(読み取り/書き込み)を提供することができる。RFIDタグ10で使用するのに好適ないくつかの代表的な集積回路には、数ある中でも、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)(登録商標)(商品名「TI−RFid(登録商標)」又は「TAG−IT(登録商標)」の製品系列)、フィリップス(Philips)、及び/又はNXPエレクトロニクス社(NXP Electronics Co.)(商品名「アイコード(I-CODE)(登録商標)」、「マイフェア(MIFARE)(登録商標)」及び「ハイタグ(HITAG)(登録商標)」の製品系列)から市販の集積回路が挙げられる。
【0005】
アンテナ18の形状及び特性は、RFIDタグ20の所望の動作周波数に依存する。例えば、915MHz又は2.45GHzのRFIDタグ10は、典型的には、リニアダイポールアンテナ又は折り畳みダイポールアンテナ(図示せず)のようなダイポールアンテナを含む。13.56MHz(又は類似周波数)のRFIDタグは、典型的には、図1に示されるようなスパイラル又はコイルアンテナ18を用いる。しかしながら、他のアンテナ設計も当業者には既知である。アンテナ18は、図2に概略的に示されるRFIDリーダー60のような呼掛け源から放射された無線周波数エネルギーを傍受する。無線周波数エネルギー62(参照番号62は、RFIDリーダー60が放射した無線周波数エネルギーを示す)は、電力とコマンドとの両方をタグ10に提供する。アンテナによりRF応答素子は、集積回路20に電力を供給し、それにより検知させたい応答を提供するのに十分なエネルギーを吸収することができる。このように、アンテナの特徴は、典型的には、アンテナが組み込まれるシステムに適合する。高い周波数(MHz〜GHz)範囲で動作するタグの場合、最も重要な特徴の1つは、典型的には、アンテナの寸法である。多くの場合、ダイポールアンテナの有効な長さは、それが呼掛け信号の半波長あるいは半波長の倍数に近い値であるように選択される。サイズの制約のため半波長アンテナが非実用的である低位〜中位の周波数範囲(例えば13.56MHz)で動作するタグの場合、重要な特徴は、典型的には、アンテナのインダクタンス及びアンテナコイルの巻数である。多くの場合、銅又はアルミニウム等の金属が用いられるが、印刷インクを含む他の導体も利用可能である。また、エネルギー伝送を最大にするために、選択された集積回路の入力インピーダンスがアンテナのインピーダンスと合致することも重要である。アンテナに関するその他の情報は、例えば、K.フィンケンツェラー(K. Finkenzeller)著、RFIDハンドブック、無線周波数識別原理及び応用(frequency Identification Fundamentals and Applications)(1999、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons Ltd,)、英国ウェストサセックス州チチェスター(Chichester, West Sussex, England))等の参考文献により当業者に既知である。
【0006】
RFIDタグ10の性能を向上させるために多くの場合コンデンサ22が含まれる。コンデンサ22が存在する場合、タグの動作周波数を特定の値にチューニングするのに役立つ。これは、最大動作範囲を達成するために望ましいことである。コンデンサは別個のコンポーネントであっても、アンテナ18内部に集積化されていてもよい。
【0007】
図2に、RFIDリーダー又は呼掛け装置60が概略的に図示されている。RFIDリーダーは、RFIDリーダーアンテナ64を有する。RFIDリーダー60は当該技術分野において周知である。例えば、市販のRFIDリーダーは、セントポール(St. Paul)に拠点を置く3M社(3M Company)から商品名「3M(登録商標)デジタル・ライブラリー・アシスタント(Digital Library Assistant)(登録商標)」のモデル番号702、703、802、及び803で入手可能である。市販のRFIDリーダーの他の例は、ワシントン州エバレット(Everett, WA)のインターメック・テクノロジー社(Intermec Technologies Corporation)から入手可能なインターメック(Intermec)(登録商標)700シリーズモバイル・コンピュータに取り付けられるモデルIP4ポータブルRFID(UHF)リーダーである。
【0008】
RFIDリーダー60とRFIDタグ10とでRFIDシステムを形成する。K.フィンケンツェラー(K. Finkenzeller)著の「RFIDハンドブック、無線周波数識別原理及び応用(frequency Identification Fundamentals and Applications)(1999年、英国ウェストサセックス州チェスター(Chichester, West Sussex, England)のジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons Ltd,)発刊)」の21ページによると、誘導結合のRFIDシステムは、RFIDリーダーのアンテナ・ループとRFIDトランスポンダのアンテナコイルとの間の近接場の磁気結合を基本としている。多数のRFIDシステムが利用可能であり、通信及びシステム性能のいくつかの規格の1つに従うことで可能になる。以下の議論では、主として、13.56MHzで動作するRFIDシステムを基本とするが、議論は、他の動作周波数での誘導結合RFIDシステムに及ぶこともあり、電磁的結合したRFIDシステムに導電性物体が引き起こす可能性のある干渉に対する見識も提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無線周波数応答タグは、能動的又は受動的のいずれであってもよい。能動的タグは、タグ構成に電池等の追加エネルギー源を組み込んでいる。能動的無線周波数応答タグは、追加エネルギー源により呼掛け無線周波数場が弱い領域においても強い応答信号を生成して伝送できるため、能動的RFIDタグはより広い範囲で検出することができる。しかしながら、電池の寿命が比較的短いため、タグの有効使用期間には制限がある。更に、電池によりタグの寸法とコストが増える。受動タグは、タグの給電に必要なエネルギーを呼掛け無線周波数場から得て、アンテナが呼掛け磁場に示すインピーダンスを変調することによりそのエネルギーを用いて応答コードを伝送し、それによりリーダーアンテナに返される反射信号を変調する。このように、その範囲は更に制限される。受動タグは多くの用途にとって好適であるため、この種のタグに限定して議論を続けることにする。しかしながら、当業者にはこれら2種類のタグは多くの特徴を共有し、両方とも本開示の実施例において使用できることが理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願の発明者らは、RFID機能を、例えば、金属製標識のような標識に結合させることにより、金属製標識に貼り付けられた又は金属製標識と一体化されたRFIDタグ若しくはチップに格納されたデータと標識を関連付けることができることを認識した。RFIDタグを金属製標識に取り付ける又は結合させるための従来技術の試みはある種の欠点を有する。しかしながら、本出願の発明者らは、RFID機能を導電性標識に正しく取り付ける又は結合させる様々な方法を見いだした。
【0011】
RFID機能を標識に取り付ける又は結合させる1つの方法は、機能性RFIDタグと導電性標識とを物理的に結合させる工程を包含する。得られた標識は、標識の中にはめ込まれた機能性RFIDタグを含む。
【0012】
RFID機能を標識に取り付ける又は結合させる代替方法は、標識にスロット、開口部(opening)、又は開口(aperture)を形成する工程と、標識に物理的に結合されたRFIDチップのために、アンテナとして機能させるように上記スロット、上記開口部、又は上記開口を使用する工程とを包含する。
【0013】
導電性のRFID対応可能標識の1つの例示の実施形態は、切抜きを有する導電性素子と、切抜きにはめ込まれるRFIDタグと、を含む。導電性素子は、導電性基板又は導電性シートの少なくとも1つを含む。例えば、導電性素子は、例えば、再帰反射性又は反射性シートのような非導電性又は導電性の光学的活性シートに隣接して位置決めされる金属製基板であってもよい。あるいは、導電性素子は、例えば、再帰反射性又は反射性シートのような導電性の光学的活性シートに隣接して位置決めされる非導電性基板であってもよい。したがって、標識物品の導電率は、導電性標識基板を使用することにより又は標識基板に隣接して位置決めされた導電性シートを使用することにより、得ることができる。
【0014】
導電性のRFID対応可能標識物品を形成する例示の方法は、導電性素子上で位置を選択する工程と、導電性素子内で、選択された位置に切抜きを形成する工程と、無線周波数識別(RFID)タグを切抜きの中に設置する工程と、を包含する。位置選択の工程は、RFIDタグが切抜きの中に配置されるときに形成される導電性のRFID対応可能標識物品の所望の放射パターンの考察を基本とする。
【0015】
別の例示の方法は、切抜き寸法と切抜き形状とを有する切抜きを、導電性部分寸法と導電性部分形状とを有する導電性素子の中に形成する工程と、無線周波数識別(RFID)タグを切抜きの中に設置して導電性のRFID対応可能標識物品を形成する工程と、を包含する。いくつかの実施形態において、切抜き寸法の選択は所望の放射パターンを基本とする。いくつかの実施形態において、切抜き形状の選択は所望の放射パターンを基本とする。いくつかの実施形態において、導電性部分寸法の選択は所望の放射パターンを基本とする。いくつかの実施形態において、導電性部分形状の選択は所望の放射パターンを基本とする。
【0016】
導電性の無線周波数識別(RFID)対応可能な標識物品の別の例示の実施形態は、開口部を有する導電性素子を含むスロットアンテナと、基板に結合されるRFID集積回路と、を含む。スロットアンテナはRFIDアンテナとして動作し、導電性素子は導電性基板又は導電性シートの少なくとも1つを含む。
【0017】
導電性の無線周波数識別(RFID)対応可能な標識物品を形成する1つの方法は、長さと幅とを有する導電性素子を選択する工程と、導電性素子内で、開口部を形成する工程と、無線周波数識別(RFID)集積回路を導電性素子の少なくとも一部分に結合させる工程と、を包含する。長さと幅とを有する導電性素子の選択に関する工程は、RFID集積回路が導電性素子に結合されると形成される導電性のRFID対応可能標識物品の所望の放射方向及び/又はパターンを基本とすることができる。
【0018】
別の方法は、導電性素子上で位置を選択する工程と、導電性素子の少なくとも一部分の選択された位置に開口部を形成する工程と、導電性素子の少なくとも一部分に無線周波数識別(RFID)集積回路を結合させる工程と、を包含する。導電性素子上で位置を選択する工程は、RFID集積回路が導電性素子に結合されると形成される導電性のRFID対応可能標識物品の所望の放射方向及び/又はパターンを基本とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】当該技術分野において既知である無線周波数識別(「RFID」)タグの平面図。
【図2】図1のRFIDタグとRFIDリーダーとの間の相互作用の概略図。
【図3】図1のRFIDタグと導電性物体との間の相互作用を示す図。
【図4】図3のRFIDタグ及び導電性物体とスペーサーとの間の相互作用を示す図。
【図5a】RFIDタグアンテナとして使用される交通標識物品の一実施形態の概略図。
【図5b】図5aのRFIDタグの分解図。
【図6a】RFIDタグを有する交通標識の別の実施形態の概略図。
【図6b】図6aのRFIDタグ領域の分解側面図。
【図7】切抜き位置の効果を試験するために様々なプレートから切り取られた複数の切抜きの位置の描写の図。
【図8A】図7に示される13個所の切抜きの位置が、4個の異なる金属プレートの個別片でどのように実施されるかを示す描写の図。
【図8B】図7に示される13個所の切抜きの位置が、4個の異なる金属プレートの個別片でどのように実施されるかを示す描写の図。
【図8C】図7に示される13個所の切抜きの位置が、4個の異なる金属プレートの個別片でどのように実施されるかを示す描写の図。
【図8D】図7に示される13個所の切抜きの位置が、4個の異なる金属プレートの個別片でどのように実施されるかを示す描写の図。
【図9】切抜きA〜Iの中のRFIDタグの有効放射パターンを示すグラフ図。
【図10】切抜き1〜5の中のRFIDタグの有効放射パターンを示すグラフ図。
【図11】切抜きのx軸及びy軸に沿って中心に配置され、切抜きのz軸に沿って異なる位置にあるRFIDタグを有する効果。
【図12】実施例3に記載された試料に関するモデル化された放射特性図。
【図13】実施例4に記載された試料に関するモデル化された放射特性図。
【図14】実施例5に記載された試料に関するモデル化された放射特性図。
【図15】スロット設計の概略図。
【図16a】図15のスロットアンテナのモデル化された放射特性の正面図。
【図16b】図15のスロットアンテナのモデル化された放射特性の側面図。
【図17a】実施例7のプレート#2のアンテナパターンの正面図。
【図17b】実施例7のプレート#2のアンテナパターンの側面図。
【図18a】実施例7のプレート#3のアンテナパターンの正面図。
【図18b】実施例7のプレート#3のアンテナパターンの側面図。
【図19】図16〜18に示すE面(YZ平面)でのアンテナパターンの比較図。
【図20】プレートにモデル化された様々なスロットの位置を示す概略図。
【図21】プレートにモデル化された様々なスロットの位置を示す概略図。
【図22】図20に示すスロット位置に関するE面(YZ平面)でのモデル結果を示す図。
【図23】モデリング座標系を示す図。
【図24】図20に示すスロット位置に関するH面(xy平面)でのモデル結果を示す図。
【図25a】整合回路を有する同一平面に実装された集積タグの概略図。
【図25b】整合回路を有する同一平面に実装された集積タグの概略図。
【図26】図25に示す整合回路の電気回路図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「RFIDラベル」は用語「RFIDタグ」と同じ意味で使用される。更に、用語「RFID素子」は、RFIDラベル又はタグ、並びにRFIDラベル又はタグを構成する任意のコンポーネント(例えば、RFID集積回路、アンテナ、又は電気相互接続ネットワーク)を指す場合がある。
【0021】
本特許出願の発明者らは、例えば、標識の識別及び追跡を容易にし、保守及び交換サービスを改善するために、RFIDラベルを標識に取り付けることが有益であることを認識した。RFIDラベルは、それが取り付けられる部品に関する、集積チップ上に格納された情報、例えば、標識の種類、製造日、製造者コード、実装及び保守の日付、標識の位置及び場所、標識の材料、標識の構成情報、反射率などの性能測定、最終点検日、並びに点検情報などを含んでもよい。こういった情報は、ライフサイクルが別の段階に移るごとに標識の点検履歴をRFIDラベル上に格納することができるため、標識の保守には特に有用である。更に、この情報は、一例では自動航法支援システムとして、道路上の車両に情報を電子的に提供するのに有用であり得る。
【0022】
しかしながら、金属ないしは別の導電性標識を含む多くの種類の標識、及び典型的なRFID素子は、一般に、互いに約0.64cm(4分の1インチ)又は15.24cm(6インチ)以内で動作させたときに正しく機能しない。つまり、RFIDタグ又はラベルが金属の交通標識のような導電性物体にごく近接すると、干渉問題が起こる傾向があり、その結果RFIDリーダーはRFIDタグをうまく読み取ることができなくなる。
【0023】
ここでは、RFIDタグとRFIDリーダーとの間の典型的な相互作用、及び典型的には、RFIDタグが導電性物体にごく近接した場合に直面する干渉問題を説明する。図2は、導電性物体の近くに配置されていないRFIDタグ10に呼掛け(interrogating)を行うRFIDリーダー60を図示している。図3は、ごく近接する導電性物体24へのRFIDタグ10からの呼掛けを図示している。導電性物体24の例には、金属、非金属物質(例えば、カーボンファイバーを基本とする複合材)、又は液体(例えば、瓶に入った水溶性イオン化溶液)を含有する物体が挙げられる。例えば、導電性物体には、金属製の自動車の一部や工具が含まれ得る。図4は、RFIDタグ10と導電性物体24との間に配置された従来技術のスペーサー層66を伴う、導電性物体24にごく近接するRFIDタグ10の呼掛けを図示する。
【0024】
図2に示されるように、RFIDリーダー60がRFIDタグ10に呼掛けを行おうとすると、RFIDリーダー60はRFIDリーダーアンテナ64内に時間的に変動する電流を生成する。電流の変動は、滑らかに変化する正弦波搬送周波数であることもあり、又は電流の変動は、符号化デジタルデータを示す、正弦波搬送周波数の振幅、周波数、若しくは位相における非周期性で非反復性の変化であることもある。時間的に変動する電流は電磁場を生じ、この電磁場は、空間を介して延びRFIDアンテナ18へ至る。RFIDアンテナ18を通る時間的に変動する磁束は、RFIDアンテナ18内で起電力(EMF)を誘導する。これは、ファラデーの誘導の法則に従っており、ジョンC.スレーター(John C. Slater)及びナサニエルH(Nathaniel H)著の「電磁気学(Electromagnetism)」(ニューヨーク州(New York)のドーバー出版(Dover Publications)、1969年発刊)の78〜80ページにより詳しく解説されている。誘導されたEMFは、RFIDアンテナ18の2つの端子間に有効な誘導電圧として出現し、当該技術分野で既知の「誘導結合のRFIDシステム」で区分される電圧である。誘導電圧は、RFID集積回路20を通じて時間的に変動する電流を駆動することにより、RFIDリーダー60からRFIDタグ10までのRFID通信リンクが完成する。
【0025】
図3に示されるように、RFIDアンテナ18は自由空間にないが、導電性物体24等の有限の導電率を有する品目(item)に隣接する場合、RFIDトランスポンダアンテナ内で誘導されるEMFは、概ねタグが応答できないレベルへと減少する。これは、図3で図示されるような状態、即ち、RFIDアンテナ18の面が導電性物体24の表面と実質的に平行かつ近傍にある状況の場合に発生する。これは例えば、物体を識別するためのラベルとして、RFIDタグ10が導電性物体24に取り付けられているような場合である。ファラデーの誘導法則によると、導電性物体内に渦電流23が誘導されるが、これは詳しくは、ジョンC.スレーター(John C. Slater)及びナサニエルH(Nathaniel H)著の「電磁気学(Electromagnetism)」(ニューヨーク州(New York)のドーバー出版(Dover Publications)、1969年発刊)の78〜80ページに論じられている。レンツの法則によると、渦電流23の実質的影響は導電性物体近くの磁束を減少させることである。これは、K.フィンケンツェラー(K. Finkenzeller)著の「RFIDハンドブック、無線周波数識別原理及び応用(Radio-Frequency Identification Fundamentals and Applications)(1999年、英国ウェストサセックス州チチェスター(Chichester, West Sussex, England)のジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons Ltd,)発刊)64ページに詳細に解説されている。導電性物体近くの実質的な磁束が減少すると、図2で図示されるRFIDアンテナ18が自由空間に置かれる最初の事例と比較して、RFIDトランスポンダアンテナ内のEMFを減少させる結果となる。
【0026】
RFIDタグ10のアンテナ18が、図4に示されるような直線的なアンテナである場合、アンテナ18を備える導体は、基本的に長い直線の導体で、隣の導体にその両端を接続し、コイルを自由に巻いたアンテナ形態を形成する。RFIDアンテナ18内の各導体の各長い直線部分の電流値Iは、次式に従い、各部それぞれから距離rだけ離れた位置に磁場Hを生じさせる。
【0027】
H=I/(2πr)
RFIDタグ10が導電性物体24に近接あるいは隣接しているとき、各導体セグメントで生成される磁場は、図中の時計回りの矢印で示されるように、導電性物体24内で逆回りの渦電流23を誘導する。誘導された渦電流23の強度は、導電性基板に結合する磁場エネルギーの量に応じて決まる。RFIDタグ10が、例えば、薄い粘着物質の層を用いて導電性物体10に取り付けられた場合、RFIDタグ10から導電性物体24へ結合するエネルギーが大きくなり、誘導された渦電流23は対応して大きくなる。渦電流23がRFIDタグ10の電流と同じ程度の大きさではあるが、方向が逆であると、トランスポンダ電流と渦電流の総和は基本的にはゼロとなり、RFIDタグ10はRFIDリーダー60によって検出されなくなる。RFIDタグが金属物体のような導電性物体にごく近接している場合に、当業者によってこの物理現象は、多くの場合「干渉問題」と呼ばれる。
【0028】
RFIDタグが、導電性物体に近接又は隣接している場合の上記の干渉問題を低減又は解消するための様々な試みがなされてきた。それらの方法の一部を使用することで、以下により詳細に説明がなされるように、RFIDリーダーは導電性物体の近くにあってもRFIDタグを適切に読み取ることが可能である。従来技術文献に記載されている様々な方法を、導電性表面からRFIDトランスポンダを電磁的に切り離すために使用できる。次の刊行物及び特許にそういった手法の一例が開示されている:国際公開第03/030093号(グスインヅ(Gschwindt))、「トランスポンダ・ラベル及びその製作方法(Transponder Label and Method for the Production Thereof)」;国際公開第03/067512号(スルカウ(Surkau))、「トランスポンダ・ラベル(Transponder Label)」、及び米国特許第6,371,380号(タニムラ(Tanimura))、「非接触型情報記憶デバイス(Non-Contacing-Type Information Storing Device」。国際公開第03/030093号は、フェライト粒子が埋め込まれたシールド層を記述している。国際公開第03/067512号は、フェライト粒子が埋め込まれたシールドフィルムについても記述している。フェライト粒子は、化学的に酸素と他の化学元素が接続する自然な酸化状態の1つにおける鉄(Fe3+)を含む無機化合物である。典型的には、フェライト粒子はその粒子の至るところで組成が均一で一様であり、例えば、フェライト化合物はその粒子の全深で同じである。米国特許第6,371,380号は、センダストから形成された磁性吸収プレートの使用について述べている。上記‘380特許には述べられていないが、センダストは第一鉄合金粉末から作られることが業界では既知である。基材はおよそ、85%が鉄、6%がアルミニウム、9%がシリコンである。(例えば、「ソフトマグネティックスアプリケーションガイド(Soft Magnetics Application Guide)」、ニューヨーク州ロチェター(Rochester,NY)のアーノルド・マグネティック・テクノロジー社(Arnold Magnetic Technologies Corporation)出版、2003年2月改訂B、30〜1ページを参照)
【0029】
干渉問題の軽減において従来技術に教示された他の解決法は、例えば、ポリマーフィルム、フォームテープ、又は同様の材料などの非導電性、非磁性誘電体物理的スペーサーを、導電性物体24とRFIDタグ10との間に挿入することである。物理的スペーサーはRFIDアンテナ18を備える導体と導電性物体24の基板との間の距離を広げる。以下の等式において、
H=I/(2πr)
RFIDアンテナ18と導電性物体24との間の基板の距離rが増加すると、導電性物体の表面における磁場強度Hはそれに応じて減少する。この状態において、導電性物体と結合する磁場エネルギーは、RFIDタグが導電性物体24に直接隣接する場合に比べて減少する。しかしながら、ここでも、このアプローチの欠点は、干渉問題を減少及び解消するためにRFIDタグと導電性物体との間の距離を適切に定めるための、ポリマーフィルム、フォームテープ、又は同様の素材により、厚みが増加してしまうことである。この例では、導電面の隣接するRFIDタグをRFIDリーダーで正しく読み取るために必要となる、フォームコア、紙、ポリマーフィルムなどの非導電性、非磁性的な、誘電体物理的スペーサーの典型的な厚みを図示している。
【0030】
これらの方法はそれぞれ欠点を有している。本発明者らは、RFIDタグ又はチップが導電性標識に取り付けられた場合の干渉問題を、減少及び解消する様々な代替的方法を提供する必要があることを認識した。本発明者らはまた、RFID機能を、金属の標識等の導電性標識を含む標識に関連付けることの利点も認識した。いくつかの好ましい解決策は比較的低い面質量密度であり、したがって標識全体の質量に与える衝撃が比較的小さい。更に、複数の標識は、実装前及び実装中に積み重ねられる場合があるので、本発明者らはまた、いくつかの好ましい実施形態が、あらゆるRFID対応可能な標識内のRFID素子に損傷を与えることなく、他のRFID対応可能な標識と積み重ねることができるRFID対応可能な標識を含み得ることを認識した。いくつかの実施形態において、RFID素子は標識の厚みの範囲内に配置され、又は標識の主表面と同一平面に配置される。更に又は別の方法としては、本発明者らはまた、いくつかの好ましい実施形態は、標識に永久に取り付けられる又は貼り付けられるRFID素子を含むことができ、いくつかの好ましい実施形態は、標識に取り外し可能に取り付けられる又は貼り付けられるRFID素子を含むことができることも認識した。
【0031】
本発明者らは、RFID機能を有する導電性標識の複数の構造、製造及び使用方法、並びに実施形態を発明した。1つの例示の構造及び/又は実施形態は、機能性RFIDタグを導電性標識の中に物理的に挿入することにより、RFID機能を標識に取り付けること又は結合させることを包含する。代替的な例示の構造及び/又は実施形態は、標識にスロット、開口部、又は開口を形成し、標識に物理的に結合したRFIDチップのアンテナとして、そのスロット、開口部、又は開口を用いることにより、RFID機能を標識に取り付けること又は結合させることを包含する。得られた標識は、スロットがRFID集積回路のアンテナとなるように標識に取り付けられたRFID集積回路を含む。これらの構造、実施形態、及び方法は、以下により詳細に説明される。
【0032】
例示の標識物品には、交通整理材料と、再帰反射性、非再帰反射性、反射性、及び非反射性の車両用マーク若しくは道路用マークと、再帰反射性の衣料品と、室内/屋外用標識製品と、こわれやすい保安用ステッカーと、製品認証材料と、店舗用ディスプレイパッケージと、書類と、在庫ラベル及び管理製品と、識別タグと、ラベルと、システムと、又はナンバープレートとが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
I.機能性RFIDタグと導電性基板とを有する標識構造
図6a及び図6bに本出願の例示の実施形態が示されている。図6aは、RFID対応可能導電性標識物品100の概略図を示す。標識物品100は、その中に切抜き、開口部、又は開口18が形成される標識基板101を含む。図6a及び図6bにおいて切抜き108は長方形の切抜きであるが、あらゆる形状の切抜きであり得る。図6bは、標識物品100の分解側面図である。図6bは、標識基板101の第1の主表面104と第2の主表面106とを示している。光学的活性シート102の層(再帰反射性又は反射性シートを含むがこれに限定されない)は、標識基板101の第1の主表面104の少なくとも一部分に隣接して位置決めされる。シート102は、標識基板101と直接接触してもよい。あるいは、例えば、接着剤層が保持シート102を標識基板101に隣接して保持する場合のように、シート102は標識基板101に隣接してもよい。
【0034】
図6a及び図6bにおいて、基板とシートの組み合わせが導電性素子を形成する。以下により詳細に記載されるように、導電性素子には多くの選択肢が存在する。導電性素子は基板101とシート102とを含んでもよく、又は基板101又はシート102の1つのみを含んでもよい。更に、基板101は導電性又は非導電性であってよく、シート102は導電性又は非導電性であってよい。例えば、基板101は導電性でありシート102は非導電性であってもよく、又は基板101は非導電性でありシート102は導電性であってもよく、又は基板101及びシート102の両方が導電性であってもよい。更に、切抜き108は、基板101及びシート102のいずれか又は両方に形成されてもよい。例えば、切抜き108は、基板101及びシート102の両方に形成されてもよく、基板101のみに形成されてもよく、又はシート102のみに形成されてもよい。しかしながら、切抜き108は、少なくとも導電性素子の導電性部分に形成されるのが好ましい。
【0035】
十分に機能するRFIDタグ110(例えば、集積回路、アンテナ、及び任意の電気的相互接続ネットワーク)が切抜き108の中にはめ込まれる。図6bにおいて、RFIDタグ110は、RFIDタグ110の第1の主表面105がシート102に隣接するように切抜きの中に位置決めされる。プラグ112は、RFIDタグ110の第2の主表面107に隣接するように切抜き108の中に位置決めされる。テープ114の層は、プラグ112及びRFIDタグ110を切抜き108内に保持する。
【0036】
図6a及び図6bに示される実施形態において、RFIDタグ110(タグのアンテナを含む)は標識基板101と概ね同一平面にあり、RFIDタグ110のいずれの部分も、複数の標識が互いに重なり合うのを妨げる程度に標識物品100の表面104、106から著しく突出しないように、テープ114は最小厚み(例えば、約12.7マイクロメートル(0.5ミル)〜約127マイクロメートル(5ミル)の厚み)であるのが好ましい。
【0037】
標識基板101は、導電性材料又は非導電性材料から形成され得る。例えば、例示の導電性材料には、アルミニウムプレートのような金属プレートが挙げられる。例示の非導電性材料には、例えば、木又はプラスチックが含まれる。標識基板101が非導電性材料を含む場合、RFID対応可能な導電性の完成標識物品の導電率は、標識物品の少なくとも一部分に配置された導電性シート、例えば、金属化された再帰反射性シート等によってもたらされてもよい。この応用において、金属(例えば、アルミニウム)蒸着コーティングされたシートは、伝導性レベルは最小ではあるが、伝導性があると考えることができる。例示の金属化シートには、例えば、全て3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul, Minnesota))製である次の市販の製品を挙げることができる:3290Tシリーズシート製品;CW80シリーズシート製品;例えば、3870シリーズシート製品等の高輝度ビード板;例えば、3810シリーズ、3840シリーズ、及び31xバリケードシート製品等の可撓性高輝度シート;及びナンバープレート又は認証シート。更に、例えば、3M社(3M Company)製の985顕著性シートのような蒸着コーティングを有する任意のプリズム型シート製品は導電性シートであると考えられる。例示の非導電性シート製品には、蒸着コーティングされていないプリズム型シート製品、例えば、HIP(登録商標)3930シリーズ、DG(登録商標)4000シリーズ、VIP(登録商標)3900シリーズ、顕著性983シリーズ、3910シリーズCWZ(登録商標)プリズム型、並びにロールアップ標識RS20及びRS30シリーズを挙げることができ、全て3M社(3M Company)製である。
【0038】
本発明の趣旨から逸脱することなく、図6a及び図6bに示される実施に多くの変更を行うことが可能であることは当業者には理解されよう。例えば、RFIDタグ110はシート102に隣接して位置決めされて示されているが、プラグ112をシート102に隣接させることが可能であり、RFIDタグ110をテープ114に隣接させることが可能である。あるいは、標識物品100は、1つはシート102に隣接し、1つは隣接テープ114に隣接し、それぞれがRFIDタグ110の異なる主表面に隣接する2個のプラグを有することができる。以下に詳細に記載するように、標識基板101の厚みに関連付けてRFIDタグ110を配置することは、タグの性能に影響をもたらす可能性がある。
【0039】
プラグ112は、例えば、プラスチック等の任意の非干渉性かつ非導電性の材料を含むが、これに限定されない任意の好適な材料から形成することができる。また、標識物品100に形成される切抜き108の形状は長方形である必要はなく、切抜き、開口部、又は開口は、任意の所望の形状又は寸法とすることができ、標識物品100上で任意の所望の位置に配置することができる。切抜きの形状及び寸法は、RFIDタグ110の性能に影響を与える可能性があり、RFIDタグ110が受ける干渉の量を増加又は減少させる可能性があることに留意されたい。更に、標識物品100は長方形の速度制限標識である必要はなく、任意の形状又は形態であることができる。この実施で使用されるテープ114は、切抜き中のプラグ112及びRFIDタグ110を保持することができるだけでなく、RFIDタグ110を保護する耐候性シールも提供することができる。テープ114はまた、テープ上に印刷されたバーコードを有してもよい。好適なテープ114は、これら利益の全てを満たすように選択され得る。また、プラグ112は、テープ114が不要であるように設計することもでき、この結果完全に同一平面の設計とすることができる。
【0040】
別の例示の実施形態において、単一の標識物品は1個以上のRFIDタグを有してもよい。例えば、実施例2に記載の技術を用いて、第1のRFIDタグを標識物品の前面に向かって最も強く放射するように配置し、第2のRFIDタグを標識物品の後面に向かって最も強く放射するように配置することができる。更に、標識物品に切抜きを含めることにより、オフ角で、並びに標識物品の前及び後ろから非常に良好に読み取ることができる標識物品を形成することが容易となる。
【0041】
また、上記実施形態及びその実施が、従来のRFIDタグ以外にも弾性表面波(SAW)RFIDタグを含み得ることは理解されよう。
【0042】
少なくともいくつかの実施形態において、導電性標識内の金属(例えば、金属標識基板の使用又は金属化シートの使用)は、RFIDタグの読み出し能力を促進する。このように、導電性シート及び/又は標識基板は、RFIDタグの性能を妨げるのではなく性能に貢献する。結果として、少なくともいくつかの実施形態において、(少なくともいくらかの角度範囲において)読取範囲性能が強化される。高い指向性に加えたとき、別の性能特性は、タグの読み取りが可能な角度範囲を少なくとも部分的に制限する能力となる。
【0043】
放射パターンの追加制御(即ち、ヌル制御及び/又はビームローブ制御)が所望である場合は、追加ビーム形成素子として機能する追加スロットを導電性シートに含ませるのが有用であり得る。これらスロットは、八木又はその他の多素子アンテナアレイ設計におけるようなビーム形成アレイを作るための受動アンテナとして用いることができる。例えば、アンテナ指向性を増加し、場合によっては最大放射角を制御するために、素子を素子のアレイに配列することができる。素子のアレイは、例えば、所望の放射パターンを生成するために、間隔調整及び/又は位相整合により電気的に調整された複数個のスロット又はインセットを含む。
【0044】
上記のRFIDアンテナを使用することの1つの利点は、金属物体上の従来のRFIDタグアンテナでは得ることが困難なパフォーマンス特性を生じさせる能力である。性能特徴の1つの典型例は高指向性であり、高指向性は、読取範囲を一層長い距離にする。
【0045】
以下の実施例は、本出願に記載の標識物品の様々な実施形態の、いくつかの構造の例を説明する。以下の実施例は、標識物品構造の性能結果の一部も報告している。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
標識物品を、非金属化プリズム型反射シートが接着された又は貼り付けられたプラスチック基板を用いて、作製した。トランスコア社(Transcore Co.)製のRFIDタグ(915MHz)を、厚みが2.54mm(1/10インチ)〜12.7mm(1/2インチ)である種々のプラスチック基板のそれぞれの一側面に貼り付けた。3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul, Minnesota))製再帰反射性非金属シートのダイヤモンドグレード(登録商標)を、各プラスチック基板の他側に適用した。各プラスチック基板上のRFIDタグを、およそ914.4cm(30フィート)の距離でインターメック社(Intermec)製の携帯読取装置を用いて読み取ることに成功した。
【0047】
(実施例2)
5.08cm(2インチ)×7.62cm(3インチ)のトランスコア社(Transcore)製の915MHz用受動FIDタグよりも、寸法が全側面でおよそ12.7mm(0.5インチ)大きな切抜きを、厚みが2.03mm(0.08インチ)で45.7cm(18インチ)×61cm(24インチ)のアルミニウム標識基板に切り込んだ。標識基板の主表面の1つを、3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul, Minnesota))製再帰反射性シートのダイヤモンドグレード(登録商標)で覆った。RFIDタグを切抜きの中に配置した。厚み及び形状が、除去された標識基板の厚み及び形状と概ね合致するプラスチックプラグを、プラスチックプラグがRFIDタグに隣接して位置決めされるように切抜きの中に配置した。このように、プラスチックプラグの寸法及び形状は切抜きの寸法及び形状と実質的に同じであった。非金属テープの一片を、切抜きを完全に覆いかつプラスチックプラグに隣接して位置決めされるように、標識基板の背面に配置した。RFIDタグを、実施例1に記載の導電性のRFID標識物品に相当する距離であるおよそ9.1メートル(30フィート)の距離で、インターメック社(Intermec)製の携帯読取装置を用いて読み取ることに成功した。
【0048】
更に、本出願の発明者らは、切抜き、開口部、若しくは開口及び/又は標識の切抜き、開口部、若しくは開口の中のRFIDタグの位置を注意深く制御及び選択することにより、RFIDタグの放射パターンを制御又は調整することができることを見出した。用語「位置」は、例えば、標識の切抜き、開口部、又は開口の位置決め、並びに標識の中へのRFIDタグの配置、又は切抜き、開口部、若しくは開口に対するRFID集積回路の配置を含む。放射パターンを制御することにより、放射を標識から道路に向けやすくなり、望ましくない又は効果のない方向に向かう放射の量を削減することができる。
【0049】
図7は、切抜き位置の効果を試験するために様々なプレートから切り取られた様々な切抜きのそれぞれの位置を示している。切抜き1〜5は、切抜きの短辺(短い方)を金属シートの垂直縁部に向けて移動させることによる効果を調べるために使用した。切抜きA〜Iは、切抜きの長辺(長い方)を金属シートの水平縁部に向けて移動させることによる効果を調べるために使用した。切抜きAは切抜き1と同一である。
【0050】
図8A、8B、8C、及び8Dは、図7の13個所の切抜きの位置が、4個の異なる金属プレートの個別片でどのように実施されるかを示す描写の図である。図8Aのプレートは切抜き位置A/1、E、及びHを含む。図8Bのプレートは、切抜き位置D、2、及びGを含む。図8Cのプレートは、切抜き位置C、3、5、及びFを含む。図8Dのプレートは、切抜き位置4、B、及びIを含む。
【0051】
各切抜きは、長さ11.4cm(4.5インチ)、高さ2.54cm(1インチ)であった。金属プレートは、0.317cm(1/8インチ)のアルミニウムストックから切り取った30.48cm(12インチ)×30.48cm(12インチ)の金属プレートであった。試験中、915MHzのRFIDタグ(長さ10.16cm(4インチ)、高さ1.27cm(1/2インチ)のエイリアン社(Alien Co.)製のスクイグル(Squiggle)(登録商標)RFIDタグ)を、単一金属プレートに配置された切抜きの1つの中心に配置した。特定の切抜きを試験する間、試験される各金属プレート上の使用しない切抜きは銅テープで覆われた。切抜き1〜5を試験するとき、金属プレートはy軸(図7に示す)を中心に回転し、90度でプレートに垂直であり、0度でプレートの左縁部から外れる。切抜きA〜Iを試験するとき、金属プレートはx軸(図7に示す)を中心に回転し、90度でプレートに垂直であり、0度でプレートの上縁部から外れる。各プレートの読取性能は、減衰器をRFIDリーダーとリーダーアンテナとの間に設置することにより測定した。減衰は、タグが読み取れなくなるまで1dBずつ増加させた。この試験は、円偏光リーダーアンテナとRFIDタグを含む金属プレートとの間の距離を一定にして、無響室で実施した。
【0052】
図9は、切抜きA、C、E、G、及びIの中に位置決めされたRFIDタグの有効放射パターンを示す。切抜きB、D、F、及びHの中に位置決めされたRFIDタグの有効放射パターンは試験しなかった。図9は、プレートの中心近傍の切抜き(例えば、切抜きA及びC)の中のRFIDタグの放射パターンがほぼ90度対称(プレートにほぼ垂直)であることを示している。切抜き位置をプレートの上部に向けて移動させるにつれて(例えば、切抜きE及びG)、放射パターンは90度から120度に向けてシフトする。切抜きIに関しては、放射パターンは15度で最大であり、プレートの縁部からほぼ外れる。
【0053】
これらの結果から、本発明者らは、切抜き及びRFIDタグの配置を制御することにより、意図された配置及び使用に合わせたRFID機能を有する標識を作ることができるという結論に至った。換言すれば、金属プレートの縁部と切抜きの辺/表面との間の間隔を制御することにより、放射パターンを制御することが可能である。例えば、切抜き及びRFIDタグを金属プレートの縁部の方、例えば、切抜きI位置に設置することにより、オフ角の位置から最もよく読み取れる標識を作ることができた。あるいは、切抜き及びRFIDタグを金属プレートの中央の方、例えば、切抜きA/1位置に設置することにより、標識に垂直な位置から最もよく読み取れる標識を作ることができた。
【0054】
図10は、切抜き1〜5の有効放射パターンを示す。これら切抜きの全てが、約90度でプレートに垂直な最大放射を得た。このように、切抜きのより小さい方の縁部とプレート縁部との間の位置を制御することが、放射パターンを制御する有効な方法であるとは考えられない。
【0055】
上記のように、図9及び図10に示される性能結果は、切抜き内でRFIDタグが中心に配置された金属標識(x軸及びy軸、並びに切抜きのZ軸に沿って中心に配置)を基本とする。金属プレートの厚みが0.317cm(1/8インチ)であるという事実に基づくと、これは、RFIDタグが、金属プレートの各主表面(前面及び背面の表面)から約0.15cm(1/16インチ)に位置決めされたことを意味する。
【0056】
図11は、切抜きのx軸及びy軸に沿って中心に配置(位置決めA/1)されるが、切抜きのz軸に沿って異なる位置にあるRFIDタグを有する場合の効果を示す。換言すれば、RFIDタグは切抜きA/1範囲内で異なる厚みの位置に配置されたことになる。図11に示される結果から、本発明者らは、タグが切抜きA/1の厚みの範囲(すなわちz軸に沿った厚みの範囲)内で中心に配置されたとき、タグが金属プレートの背面と同一平面にある場合よりも、プレートの前面からのタグの性能が約6dB優れているという結論に至った。この効果は放射パターンを制御するのに用いることができる。例えば、タグが切抜きの範囲内(z軸に沿った範囲)で中心に配置されると、タグは金属プレート(すなわち標識)の前面及び背面の両方に対してほぼ垂直に放射する。タグが金属プレート(すなわち標識)の前面と同一平面にある場合、タグはプレートの背面からよりもプレートの前面からよく放射する。タグが金属プレート(すなわち標識)の背面と同一平面にある場合、タグはプレートの前面からよりもプレートの背面からよく放射する。
【0057】
(実施例3)
タグを金属プレートに対してx及びy寸法の中心に配置し、かつプレートの前面(z寸法に沿った前面)と同一平面に配置した状態で、切抜きのy寸法を変化させる効果を測定するために、次の実施例をモデル化した。位置Aにある長さ11.43cm(4.5インチ)、高さ8.89cm(3.5インチ)の切抜きを、0.137cm(1/8インチ)アルミニウムストックから作製された金属プレート30.48cm(12インチ)×30.48cm(12インチ)の中にモデル化した。このモデルに使用された切抜きは、切抜きの上縁部を上方に移動させることでy寸法を8.89cm(3.5インチ)としたことを除いては切抜きAと同一であった。結果を図12に示す。図12は、切抜きのy寸法が拡大されると、指向性が低減して放射パターンが変化することを示している。このように、切抜きの寸法を用いて放射パターンを変化させる又は最適化することができる。
【0058】
(実施例4)
タグが金属プレートに対してx及びy寸法の中心に配置され、かつプレートの前面(z寸法に沿った前面)と同一平面に配置された切抜きを維持したまま、y寸法を変化させる効果を測定するために、次の実施例をモデル化した。寸法の異なる2個の個別の金属プレートをモデル化した。2個のプレートは共に0.137cm(1/8インチ)アルミニウムストックから作製され、各プレートの切抜きは長さ11.43cm(4.5インチ)、高さ2.54cm(1インチ)であった。プレートAの寸法は30.48cm(12インチ)×30.48cm(12インチ)、プレートBの寸法は15.24cm(6インチ)×15.24cm(6インチ)であった。モデル結果を図13に示す。図13は、切抜きのy寸法が拡大されると、指向性が低減して放射パターンが変化することを示している。このように、切抜きの寸法を用いて放射パターンを変化させる又は最適化することができる。
【0059】
(実施例5)
タグが金属プレートに対してx及びy寸法の中心に配置され、かつプレートの前面(z寸法に沿った前面)と同一平面に配置された切抜きを維持したまま、金属プレートの形状を変化させることの効果を測定するために、次の実施例をモデル化した。形状の異なる2個の個別の金属プレートをモデル化した。2個のプレートは共に0.137cm(1/8インチ)アルミニウムストックから作製され、各プレートの切抜きは長さ11.43cm(4.5インチ)、高さ2.54cm(1インチ)であった。モデル化されたプレートの形状は正方形及び三角形であった。正方形のプレートは30.48cm(12インチ)×30.48cm(12インチ)であった。三角形のプレートは、底辺が30.48cm(12インチ)、側辺が33.53cm(13.2インチ)、即ち、高さが30.48cm(12インチ)であった。モデル結果を図14に示す。図14は、金属プレートの形状が変化すると、放射パターンが変化することを示している。このように、金属プレートの形状を用いて放射パターンを変化させる又は最適化することができる。
【0060】
切抜き寸法、標識寸法、及び標識形状が放射パターンに与えるのと同じ効果が、基板に適用されるシートである導電性コンポーネントを用いて開発された標識にも当てはまることが見込まれる。
【0061】
II.スロットアンテナと導電性基板とを備える標識構造
本発明の別の例示の実施形態は、導電性基板が、基板に結合するRFID集積回路のアンテナとして動作するように、導電性基板に切抜き、開口部、スロット、又は開口を形成することを含む。この切抜き、開口部、又は開口は、ダイポールアンテナと同様の放射パターン特性を有する「スロットアンテナ」と称することができるものを作り出す。例えば、金属シートの標識等の導電性基板にRFIDチップが取り付けられると、スロットアンテナはRFIDチップと結び付けられる。こうして、RFID機能を、以下のことで導電性標識に付随させることができる。すなわち、(1)スロットアンテナを形成するために導電性基板に切抜き、開口部、スロット、又は開口を作る、並びに(2)RFIDチップを導電性基板に取り付けることにより、標識に形成されたスロットアンテナがRFIDアンテナとして機能し、及び得られた導電性基板がRFID機能を有するようにする。本発明者らは、開口が適切に設計され推進されれば、標識の比較的大きな形状因子が非常に効率的な放射体を作ることができることを認識した。
【0062】
シリコン集積チップは一般に、抵抗が小さく、負のリアクタンスが大きい。電力伝送を達成するには次の2つの方法があり、1つは、チップインピーダンスをアンテナインピーダンスに変換するための整合ネットワークを設計することであり、もう1つは、チップインピーダンスを直接マッチングさせるためのRFIDアンテナを設計することである。RFIDの多くの用途において、広さの制約により後者のアプローチを用いることになる。しかしながら、標識用途における形状因子は他の多くの用途よりも有意に大きいので、両方の選択肢が実行可能である。したがって、本発明者らは一体化された整合ネットワークのアプローチとアンテナによる直接マッチングアプローチの両方を調べ、その両方が本出願に含まれる。
【0063】
A.一体化整合ネットワークを有するスロットアンテナ
スロットアンテナを有する標識物品のこの実施において、スロットアンテナはチップインピーダンスと無関係に設計されてもよく、RFIDチップとアンテナとの間のインピーダンスを変換するために整合ネットワークを使用してもよい。この設計の1つの利点は、アンテナ設計が変わらないことである。しかしながら、整合ネットワークコンポーネントは、設計により実現される特定のRFIDチップに基づいて調整しなければならない。
【0064】
この実施形態の1つの例示の実施が図5a及び図5bに示される。図5aは、周波数応答素子52を有する金属製速度制限標識50の概略図である。図5bは、周波数応答素子52を有する標識50の分解図である。図5bにおいて、標識50は、上部主表面56と底部主表面58とを有する長方形の切抜き、開口部、又は開口54を有する。開口54は基板の主表面に形成される(基板は、本出願の「切抜き」の用途に関して上記されたものであってもよい)。RFIDタグ又はチップ82は、第1の長辺68と、第2の長辺70と、第1の短辺72と、第2の短辺74とを有するストラップ86(インターポーザーとも呼ぶ)に取り付けられた導電性相互接続84に取り付けられる。ストラップ86の第1の短辺72は、開口54の上部主表面56に隣接して位置決めされ、ストラップ86の第2の短辺74は、開口54の底部主表面58に隣接して位置決めされる。その結果、ストラップ86は、ストラップ86が水平開口内に垂直に位置決めされるように、及びRFIDチップ82が開口54の中に又は開口54に隣接して位置決めされるように、標識50に取り付けられる。ストラップ86は導電性標識と電気的に直接接触してもよく、標識に容量結合されてもよい。ストラップ86は好ましくは、RFIDチップと標識との電気的及び物理的接続を提供する可撓性基板である。これにより、ストラップ86は、標識50の金属をRFIDチップ82に物理的及び電気的に結合させる。ストラップ86は開口54を横切って直接配置することができ、開口54はスロットアンテナとして機能するので、別のタグアンテナを製造する必要はなくなる。
【0065】
RFIDリーダー(図示せず)は、開口に対して信号を生じさせ、ストラップがその信号をRFIDチップに送る。開口の中に又は開口を覆う金属が存在しないことが重要である。非金属製反射シート又はその他の誘電体材料のシート、例えば、ミネソタ州セントポール(St. Paul, Minnesota)の3M社(3M Company)製の反射性シートのダイヤモンドグレード(登録商標)をこの領域に使用することができる。別の方法としては、上記にて詳述したように、金属製反射シートに関連開口を切り込むことができる。
【0066】
この実施において、ストラップ86、相互接続84、及びRFIDチップ82は、標識50と概ね同一平面にあるのが好ましい。あるいは、これらは標識50の厚み内に位置決めされてもよい。こうすることで、標識に取り付けられる又は付随するRFIDチップに損傷若しくは破損を生じさせることなく、複数の標識を互いの上部に積み重ねやすくすることができる。ストラップ86は、例えば、約12.7マイクロメートル(0.5ミル)〜約127マイクロメートル(5ミル)の最小厚さを有するのが好ましい。
【0067】
発明の趣旨から逸脱することなく、図5a及び図5bに示される実施形態に多くの変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。例えば、図5a及び図5bでは、ストラップ86は標識50の正面に取り付けられて示されているが、ストラップ86は、標識50の裏面(図示せず)に又は標識50の厚みの中に取り付けることも可能である。また、開口54の形状は長方形である必要はなく、開口54は任意の所望の形状(例えば、テーパ形状のスロット及び環状のリング)であり得、複数のスロット又はスロットのアレイの使用を含め、標識50上の任意の所望の位置に配置することができる。更に、標識は開口のアレイを含んでもよく、これによりアンテナ指向性及び読取範囲を向上させることができ、加えて放射パターンに変更を加えることができる。更に、標識50は長方形の速度制限標識である必要はなく、あらゆる形状又は形態の標識であり得る。加えて、ストラップ86を図5a及び図5bに示されるのと異なる形状(例えば、より幅広に、より短く、より長く、より薄く)とすることができる。
【0068】
次の実施例は、上述した標識の1つの例示の構造を説明し、並びに標識構造の性能結果の一部を報告している。
【0069】
(実施例6)
標準スロットの設計式を用いて、915MHzで動作する50オームのスロットアンテナを設計した。アンテナを、CSTマイクロ波スタジオ(CST Microwave Studio)(登録商標)を用いてモデル化し、ネットワーク分析器により測定した。スロット設計の概略図が図15に示されている。15.24cm(6インチ)×30.48cm(12インチ)の片面金属化のFR4材のPCボード402を基板(標準の米国ナンバープレートに近似する寸法)として使用した。スロットアンテナ400は、20.32cm(8インチ)×1.02cm(0.4インチ)であり、PCボードの表面から銅を機械的にエッチングして作った。
【0070】
図16a及び図16bは、図15のスロットアンテナのモデル化された放射特性を示す。図16a及び図16bは、図15のスロットアンテナが6dBiの指向性で放射を集束させることを示す。ちなみに、典型的なRFIDアンテナ(即ち、ダイポールアンテナ)の指向性は、典型的には2dBiである。
【0071】
少なくともいくつかの実施形態において、導電性標識の金属を使用することでRFIDチップを読み取りやすくする。これら実施形態において、特定の種類の標識の導電性シート及び/又は金属基板はRFIDアンテナとして機能する。このように、金属の標識は、RFIDチップの性能を妨げるのではなくむしろその性能を補助することとなる。その結果、少なくともいくつかの実施形態において、読取範囲性能が強化される。
【0072】
放射パターンの追加制御(即ち、ヌル制御及び/又はビームローブ制御)が所望である場合は、追加ビーム形成素子として機能する追加のスロットを導電性標識に含めるのが有用であり得る。これらスロットは、例えば、八木又は他の多素子アンテナアレイ設計におけるようなビーム形成アレイを作るための受動アンテナとして用いることができる。例えば、素子を素子のアレイに配列して、アンテナ指向性を高め、場合によっては最大放射角を制御することができる。素子のアレイは、例えば、所望の放射パターンを作るために間隔調整及び/又は位相整合により電気的に調整された複数個のスロットを含む。
【0073】
本発明者らは、プレートの形状又は寸法を変えることは、放射パターンの方向を変える結果となり得ることを認識した。例えば、プレートの寸法及び形が変わると、プレートの縁部からの回折により放射パターンを変化させることができる。いくつかの実施形態において、無指向性アンテナパターンを作るのが望ましい場合があり、他の例ではより指向性の高いアンテナパターンを有するのが好ましい場合がある。例えば、対象にすることが意図される道路交通にアンテナパターンが向けられている沿道の標識が望ましい場合がある。スロットアンテナのパターンが実施される金属プレートの寸法によって、どのような影響を受けるかを調べるためにモデリングを使用した。様々な例示のプレートをモデル化し、結果を以下の実施例に示す。
【0074】
(実施例7)
900MHz、50オームのスロットアンテナを、様々な寸法の3つのプレートの中心に配置されるようにモデル化した。プレート#1は15.24cm(0.5フィート)×30.48cm(1フィート)、プレート#2は60.96cm(2フィート)×60.96cm(2フィート)、及びプレート#3は121.92cm(4フィート)×121.92cm(4フィート)のサイズが測定された。得られたアンテナパターンを図16〜図19に示す。具体的には、プレート#1のアンテナパターンは図16a及び図16b(図16aは正面図及び図16bは側面図)に示され、プレート#2のアンテナパターンは図17a及び図17b(図17aは正面図及び図17bは側面図)に示され、プレート#3のアンテナパターンは図18a及び図18b(図18aは正面図及び図18bは側面図)に示されている。最後に、図19は図16〜図17の比較を分かりやすく示している。
【0075】
図16〜19は、プレートの寸法を大きくするとプレートの側面方向から外れる放射が増加し、プレートの寸法が大きくなると放射パターンのリップルが増加することを示している。図19は、3種類のプレート寸法のモデル化のうち、15.24cm(0.5フィート)×30.48cm(1フィート)のプレートのスロットが、プレートに垂直な最も大きな読取範囲を生成するが、垂直から離れた角度では読取範囲が最も悪いことを示している。図19はまた、モデル化されたプレートのうち、最も大きなプレートは、垂直から約60度において最大読取範囲を生成することも示している。
【0076】
(実施例8)
標準スロットの設計式を用いて、915MHzで動作する50オームのスロットアンテナを設計した。15.24cm(6インチ)×30.48cm(12インチ)の片面金属化のFR4材のPCボードを基板として使用した。20.32cm(8インチ)×1.02cm(0.4インチ)スロットアンテナを、PCボードの表面から銅を機械的にエッチングして作った。図25a及び図25bに示すように、整合回路を同一平面に取り付け、かつ一体化するために、スロットアンテナの中心に回路基板の基板を貫いて穴を通し、小さな整合回路基板を挿入した。回路基板は整合回路のコンポーネントを含む。参照番号450はRFID集積回路を示している。異なるレイアウト及び素子を有する様々な回路設計を実施できることを当業者は認識するであろうが、この実施例で使用された回路設計は図26に示されている。図26に示されるように、この実施例で使用された整合回路は、直流を遮断するために複数のコンデンサを含む。多くの用途においてこれは必要ではなく、一部の用途では、例えば、インダクタ及びコンデンサを用いて達成することができる。整合回路の個々のコンポーネントの値は示されていないが、これらの値はチップモデル及び製造者によって異なることが当業者には認識されよう。個別の整合回路基板を形成することで、スロットアンテナとは無関係に整合回路を最適化することが可能となる。次に、整合回路及びスロットアンテナは別々の工程で一体化される。
【0077】
整合ネットワークはスタブチューニングを用いて実現可能であり、伝送線路構造を用いて実施される場合には非常に薄くすることができることは当業者には理解されよう。用語「伝送線路構造」は、ストリップ線路と、マイクロストリップと、共平面導波路と、を非限定的に含むことを意味する。また、適切なインピーダンス整合特性を提供するために、整合ネットワークはスロット内に非対称に配置され得る。
【0078】
B.チップに直接整合されるスロットアンテナ
この、スロットアンテナを含む標識の実施において、チップインピーダンスに直接整合されるスロット設計が形成される。この設計の1つの利点は、整合ネットワークがなくなるので、整合ネットワークをフィードに集積することによって生じる面倒がなくなることである。しかしながら、この設計に欠点が1つあるとすれば、それは、異なるインピーダンスを有するチップが実装される場合にアンテナを再度設計しなおさなければならないことである。
【0079】
スロットを直接チップに整合させるために、開口寸法をチップインピーダンスと整合するように定めなければならない。その結果、スロット又は開口の寸法は、実装される特定のチップモデルに基づいて異なる。本発明者らは、モデリング技法を用いて、フィリップス(Philips)製の市販のチップに最適なスロット寸法を決定した。実施例6に記載の通り、15.24cm(6インチ)×30.48cm(12インチ)の金属化FR4材のPCボードの片面上にスロットアンテナをエッチングした。長さ7.62cm(3インチ)×高さ2.03cm(0.8インチ)の開口又はスロットを、金属プレートの中心に形成した。使用する特定のRFID集積回路の適切な動作を確実なものとするために、上記のような直流遮断コンデンサを使用した。この種類のスロットアンテナを実装するときに、必ず直流遮断コンデンサが必要なわけではないことは当業者には理解されよう。上記のように形成された標識の読取範囲試験は無響室で実施された。無響室内部を銅シートで遮蔽することにより、外部電磁気的妨害を防止した又は最小限にした。無響室内の電磁反射は吸収コーンによって防止して、最小限にした。リーダーアンテナを無響室の一端に配置し、試験されるRFIDタグを含む標識を無響室の他端に配置した。リーダーアンテナとスロットアンテナとの間の端から端までの距離は、約152.4cm(5フィート)であった。リーダー出力を31dBmに設定した。ケーブル損失は1dBであると考えられ、したがって得られた出力は30dBmであった。読取範囲を判定するために、タグが読み取れなくなるまで、タグリーダー出力を1dBずつ減衰させた。全ての測定に関して、スロットタグの高さをリーダーアンテナとそろえた。結果を次の表Iに示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表Iは、整合ネットワーク及び直接整合されたスロットに関する読取範囲結果が同じであったことを示している。
【0082】
本発明者らはまた、切抜き、開口部、スロット、又は開口の形状、寸法、及び位置を変えることにより、放射パターンの方向を変えること、並びにアンテナインピーダンスを変えることができることを認識した。RFID対応可能標識を設計する場合、金属製の交通標識の寸法を変化させることは選択肢でなくてもよい。しかしながら、スロットアンテナの位置を制御することは、より実行可能な選択肢であり得る。スロットアンテナパターンを制御するための適時を更に調べるために、固定寸法のプレート内のスロットの様々な位置をモデル化した。評価されたスロット位置の場所を図20及び図21に示す。切り取られたアンテナパターンは、実施例7で説明したように同一面内に形成された。モデリングの結果を図22及び図23に示す。図22に示された結果は、図20に示されたスロットアンテナ位置に関し、図24に示された結果は、図21に示されたスロットアンテナ位置に関する。図23はモデリング座標系(x、y、z、θ(theta)、及びφ(phi))を示している。
【0083】
図20〜図24により、本発明者らは、スロットの長辺をプレートの上縁部に向けて移動させると(スロット1及び2)、放射パターンがプレートの底縁部に向かうという結論に至った。放射を主として金属プレートの縁部の外に向かわせるアンテナパターンを設計するために、図21に示されるように、スロットアンテナを、金属プレートの周辺部を打ち破るように位置決めするのが好ましくあり得る。この位置決めは、金属製の標識の縁部から外れた好ましい方向の放射を生成することができる。
【0084】
上述した実施形態の全ては、導電性標識とRFID素子とを含む標識識別システムを作る。標識は、例えば、情報を電子的にドライバーに伝えるための電光標識を作るために用いることができる。あるいは、製造中に標識を追跡するために、又は配置する、交換する、修理する、若しくは変更する必要のある標識を追跡するために、標識を使用することができる。また、上記実施形態及び実施は、従来のRFIDタグ以外に弾性表面波(SAW)RFIDタグを含むことができることは理解されよう。
【0085】
標識は光学面を含み、光学面上に入射する光は標識から反射又は再帰反射して光源に向かって戻る。無線周波数応答素子は、好ましくは情報記憶と伝搬性とを有する。無線周波数応答素子は、呼掛けシステムが素子から情報を取得できるようにするように構成されるのが好ましい。放射パターンは、標識及び/又は開口、開口部、スロット、若しくは切抜きの寸法の設計により選択することが可能である。
【0086】
上記のRFIDタグ及び/若しくはチップは製造時に取り付けられても若しくは貼り付けられてもよく、又は標識の耐用期間の後期の段階で適用されてもよい。
【0087】
基本的な原則から逸脱することなく、上記の実施態様の詳細に多くの変更を加えることができることは、当業者に明らかであろう。本出願の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ定められるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切抜き(108)を含む導電性素子と、
前記切抜き(108)にはめ込まれるRFIDタグ(110)と、を含み、
前記導電性素子が、導電性基板(101)又は導電性シート(102)の少なくとも1つを含む、導電性の無線周波数識別(RFID)対応可能標識物品(100)。
【請求項2】
前記導電性素子が、光学的活性シート(102)に隣接して位置決めされる導電性基板(101)である、請求項1に記載の標識物品。
【請求項3】
前記導電性素子が、導電性の光学的活性シート(102)に隣接して位置決めされる非導電性基板(101)である、請求項1に記載の標識物品。
【請求項4】
前記切抜き(108)にはめ込まれ、前記RFIDタグ(110)に隣接して位置決めされる第1のプラグ(112)を更に含む、請求項1に記載の標識物品。
【請求項5】
前記第1のプラグ(112)が、完全に前記切抜き(108)内に位置決めされる、請求項4に記載の標識物品。
【請求項6】
前記第1のプラグ(112)が非導電性である、請求項4に記載の標識物品。
【請求項7】
テープ(114)の層が前記第1のプラグ(112)及び前記RFIDタグ(110)を前記切抜き(108)の中に保持するように、前記基板(101)の主表面(104、106)に取り付けられる前記テープ(114)の層を更に含む、請求項4に記載の標識物品。
【請求項8】
前記切抜き(108)にはめ込まれる第2のプラグを更に含み、前記RFIDタグ(110)が前記第1のプラグ(112)と前記第2のプラグとの間に位置決めされる、請求項4に記載の標識物品。
【請求項9】
前記RFIDタグ(110)が、前記基板(101)の主表面と同一平面にある、請求項1に記載の標識物品。
【請求項10】
前記RFIDタグ(110)が、前記基板(101)と直接接触する、請求項1に記載の標識物品。
【請求項11】
前記RFIDタグ(110)が、直線的なアンテナを含む、請求項1に記載の標識物品。
【請求項12】
前記RFIDタグ(110)が、弾性表面波(SAW)RFIDタグである、請求項1に記載の標識物品。
【請求項13】
前記RFIDタグ(110)が、前記導電性素子に取り外し可能に取り付けられる、請求項1に記載の標識物品。
【請求項14】
前記RFIDタグ(110)が、前記標識物品(100)に関する情報を格納する集積回路を含む、請求項1に記載の標識物品。
【請求項15】
前記集積回路が、前記標識物品(100)の点検履歴を格納する、請求項14に記載の標識物品。
【請求項16】
前記標識物品が、交通整理材料、車両マーク、道路マーク、再帰反射性衣料品、室内/屋外用標識製品、こわれやすい保安用ステッカー、製品認証材料、店舗用ディスプレイパッケージ、書類、在庫ラベル及び管理製品、識別タグ、識別ラベル、識別システム、ナンバープレート、又は交通標識の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の標識物品。
【請求項17】
導電性素子上で位置を選択する工程と、
前記導電性素子内で、前記選択された位置に切抜き(108)を形成する工程と、
無線周波数識別(RFID)タグ(110)を前記切抜き(108)の中に設置する工程と、を含み、
前記導電性素子上で位置を選択する工程が、前記RFIDタグ(110)が前記切抜き(108)の中に配置されるときに形成される導電性のRFID対応可能標識物品(100)の所望の放射パターンを基本とする、導電性のRFID対応可能標識物品(100)の形成方法。
【請求項18】
前記導電性素子上で位置を選択する工程が、前記RFIDタグ(110)の所望の読取角度を基本として前記位置を選ぶ工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
切抜き寸法と切抜き形状とを有する切抜き(108)を、素子寸法と素子形状とを有する導電性素子の中に形成する工程と、
導電性のRFID対応可能標識物品(100)を形成するために、無線周波数識別(RFID)タグ(110)を前記切抜き(108)の中に設置する工程と、を含む方法。
【請求項20】
前記切抜き寸法の選択が、所望の放射パターンを基本とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記素子寸法の選択が、所望の放射パターンを基本とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記素子形状の選択が、所望の放射パターンに基づく、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記切抜き形状の選択が、所望の放射パターンを基本とする、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25a】
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【図25b】
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【図26】
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【公表番号】特表2010−525465(P2010−525465A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504281(P2010−504281)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060854
【国際公開番号】WO2008/131244
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】