説明

導電性組成物、パターン形成方法及び電気光学装置

【課題】 熱に弱い基板や下層に熱ダメージを与えることなく、感光性樹脂が十分に分解・除去される導電性組成物、パターン形成方法及び該パターン形成方法によって製造される電気光学装置を提供する。
【解決手段】 ガラスで構成された基板上に形成された低耐熱性であるアクリル樹脂のバンク上に、銀20A、感光性樹脂20B、光触媒として作用する二酸化チタン20C、及び溶剤20Dからなる感光性導電ペースト20を印刷し、露光・現像した。そして、紫外線光を同感光性導電ペースト20に照射しながら焼成することで、バンク上に補助電極層を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、パターン形成方法及び電気光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)、パーソナルコンピュータ、携帯電話等といった電子機器に関しては、小型化、高密度化、高精細化等の要求が高まっている。特に、フラットパネルディスプレイにおいては、表示画像の高精細化に伴って各種駆動回路や画素回路を構成する配線パターンや電極パターンの微細化が求められている。
【0003】
この種の配線パターンや電極パターンの形成方法としては、フォトリソグラフィーを用いた方法、導電性組成物としての非感光性導電ペーストを用いた方法及び感光性導電ペーストを用いた方法が知られている。
【0004】
フォトリソグラフィーを用いた方法は、スパッタ、蒸着等によりアルミニウム、銅等の金属薄膜を基板全面に成膜した後に、レジストの塗布・露光・現像を行い、その後、ドライエッチングやウエットエッチングによって前記金属薄膜のエッチングを行った後、前記レジストを剥離することで、所望のパターン形成を行う方法である。しかし、このフォトリソグラフィーを用いた方法で厚膜の配線パターンを形成するには、成膜時間を長くする必要がある。このため、形成する膜厚に応じて時間・製造に要するエネルギー及びコストがかかってしまうため製造効率が良くないという欠点がある。
【0005】
非感光性導電ペーストを用いた方法は、主として、金属粉末と樹脂(バインダー)、溶剤よりなるペーストまたはインクを印刷法(スクリーン印刷等)でパターン印刷し、その後、焼成して溶剤を除去することで所望のパターン形成を行う方法である。従って、厚膜の配線パターンを形成するには、印刷する非感光性導電ペーストの量をその膜厚に応じて多くするだけでよいので、フォトリソグラフィーを用いて膜厚を形成する場合と比較して成膜時間が短時間で済み、エネルギー・コストを低減することができるという利点がある。しかし、形成する配線パターンの膜厚が厚くなればなるほど、印刷法の解像性が悪くなり、一定幅の配線パターンの形成が困難となったり、また、配線パターンの断面形状が蒲鉾状になり電気特性の設計が困難になったりするという欠点がある。
【0006】
感光性導電ペーストを用いた方法は、主として、金属粉末と感光性樹脂(バインダー)、溶剤よりなるペーストを、上記非感光性導電ペーストを用いた方法と同様に、印刷法(スクリーン印刷等)で基板全面に印刷・乾燥をし、その後、マスク露光→現像→焼成を行うことで感光性樹脂及び溶剤をそれぞれ分解・除去し所望のパターン形成を行う方法である。これにより、高解像度の膜厚且つ矩形断面形状のパターン形成を得ることが可能となることが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−134528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記感光性導電ペーストを用いた場合であっては、印刷・露光・現像された感光性樹脂及び溶剤をそれぞれ十分に分解・除去するために、焼成温度を500℃以上といった高温に設定して行う必要がある。このとき、配線パターンが形成される層(配線層)の下層や基板がアクリル樹脂といった耐熱性の低い材料で構成されている場合では、500℃といった高温で焼成すると、前記配線層の下層や基板が変質してしまう虞れがある。このため、より低温での焼成が望まれる。しかし、500℃以下で焼成すると、印
刷・露光・現像された感光性樹脂が十分に分解・除去されないため、導電性が悪くなり、所望の電気特性が得られないという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、熱に弱い基板や下層に熱ダメージを与えることなく、感光性樹脂が十分に分解・除去される導電性組成物、パターン形成方法及び及び該パターン形成方法によって製造される電気光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の導電性組成物は、金属粉末と感光性樹脂と光触媒とを含有する。
これによれば、感光性樹脂は、光を照射することによって酸化反応が促進されるため分解される。従って、たとえば、導電性組成物に光を照射しながら焼成するようにすることで、同導電性組成物に含有される感光性樹脂を、光触媒を含有しないものに比べて低い焼成温度であっても十分に分解・除去することができる。
【0010】
この結果、低耐熱温度の材料(たとえば、アクリル樹脂)上であっても、その材料を変質させることなく導電性が良好な所望の電気特性を有した導電性部材(配線パターン)を形成することができる。
【0011】
この導電性組成物において、前記光触媒は、紫外線が照射されることによって前記感光性樹脂の酸化・分解反応が促進されるものであってもよい。
これによれば、導電性組成物に照射する光は、紫外線光であればよいので、容易に導電性組成物に含有される感光性樹脂を酸化・分解させることができる。
【0012】
この導電性組成物において、前記光触媒は、二酸化チタンであってもよい。
これによれば、光触媒は、既存の二酸化チタンであればよい。従って、導電性組成物を容易に作製することができる。
【0013】
この導電性組成物において、前記金属粉末、感光性樹脂及び光触媒は、ペースト状の溶剤に分散していてもよい。
これによれば、印刷・露光・現像法によって所望の形状を成した配線パターンを容易に形成することができる。また、厚膜の配線パターンを形成する場合においても、スパッタや蒸着によって形成するときに比べてその印刷する導電性組成物の量を適宜調整することで短時間で行うことができる。さらに、印刷法によって導電性組成物を印刷した後に光を照射しながら加熱させ乾燥させるだけで所望の導電性部材(配線パターン)を形成することができるので、真空チャンバといった大型の装置は不要となる。この結果、真空チャンバを取り扱う煩わしさを無くすことができる。
【0014】
本発明のパターン形成方法は、金属粉末と感光性樹脂と光触媒とを含む導電性組成物を基板上に塗布する塗布工程と、前記基板上に塗布された前記導電性組成物に光を照射する光照射工程と、前記導電性組成物を焼成する焼成工程とを含んでいる。
【0015】
これによれば、感光性樹脂は、光を照射することによって酸化・分解反応が促進されるため分解される。従って、たとえば、導電性組成物に光を照射しながら焼成するようにすることで、同導電性組成物に含有される感光性樹脂を、光触媒を含有しないものに比べて低い焼成温度であっても十分に分解・除去することができる。
【0016】
この結果、低耐熱温度の材料(たとえば、アクリル樹脂)上であっても、その材料を変質させることなく導電性が良好な所望の電気特性を有した導電性部材(配線パターン)を形成することができる。
【0017】
このパターン形成方法において、前記導電性組成物は、ペースト状であり、前記塗布工程は、ペースト状の前記導電性組成物を前記基板上に印刷するようにしてもよい。
これによれば、印刷・露光・現像法によって所望の形状を成した配線パターンを容易に形成することができる。また、厚膜を形成する場合においても、スパッタや蒸着によって形成するときに比べてその印刷する導電性組成物の量を適宜調整することで短時間で行うことができる。さらに、印刷法によって導電性組成物を印刷した後に光を照射しながら加熱させ乾燥させるだけで所望の導電性部材(配線パターン)を形成することができるので、真空チャンバといった大型の装置は不要となる。この結果、真空チャンバを取り扱う煩わしさを無くすことができる。
【0018】
このパターン形成方法において、前記光照射工程にて前記導電性組成物に照射される前記光は、紫外線光であってもよい。
これによれば、導電性組成物に照射する光は、紫外線光であればよいので、容易に導電性組成物に含有される感光性樹脂を分解させることができる。
【0019】
このパターン形成方法において、前記光照射工程と前記焼成工程とは同時に行われるようにしてもよい。
これによれば、光照射による感光性樹脂の分解と、焼成による感光性樹脂の除去が同時に行われるので、配線パターン形成に要する時間を短くすることができる。
【0020】
本発明の電気光学装置は、上記記載のパターン形成方法で製造されている。
これによれば、電気光学装置の各種配線のパターン形成は、上記の導電性組成物によって形成されているので、例えば、基板等が低耐熱温度の材料で構成されてあっても、その材料を変質させることなく導電性が良好な所望の電気特性を有したパターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の導電性組成物を使用して製造された電気光学装置の一例としてのフラットパネルディスプレイ(FPD)である有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、「有機ELディスプレイ」という)の上面図であり、図2は、その有機ELディスプレイの図1中a−a線での断面図である。
【0022】
図1に示すように、有機ELディスプレイ1は、ディスプレイ部Dと、該ディスプレイ部Dの下側部(図1中Y矢印方向)に接続されたフレキシブル回路基板FCとから構成されている。
【0023】
ディスプレイ部Dは、基板2を備えている。基板2は、本実施形態では、ガラスで構成されたものである。基板2は、図1及び図2に示すように、その略中央に略四角形状の表示領域Rを備えている。表示領域Rには、図1に示すように、m×n個の画素3がマトリクス状に形成されている。基板2上であって、表示領域R以外の領域(以下、非表示領域Qという)には、一対の走査線駆動回路5及び検査回路6が形成されている。
【0024】
表示領域Rには、1行当りm個の画素3群がn行、また、1列当りn個の画素3群がm列形成されている。各画素3には、赤色の光を出射する赤色用有機EL素子4R、緑色の光を出射する緑色用有機EL素子4G、青色の光を出射する青色用有機EL素子4Bが、図1中X矢印方向に沿って赤色用有機EL素子4R、緑色用有機EL素子4G、青色用有機EL素子4Bの順に配置されている。即ち、各色用有機EL素子4R,4G,4Bは、図1中X矢印方向(行方向)に沿っては、赤色用有機EL素子4R、緑色用有機EL素子4G、青色用有機EL素子4B、赤色用有機EL素子4R、緑色用有機EL素子4G、…
の順に繰り返して配置されている。また、図1中Y矢印方向(列方向)に沿っては、同色の有機EL素子4R,4G,4Bが配置されている。そして、各色用有機EL素子4R,4G,4Bは、隣接する各色用有機EL素子4R,4G,4Bと等ピッチで配置されている。各色用有機EL素子4R,4G,4Bは、本実施形態においては、X,Y方向ともに70μmの間隔で配置されている。
【0025】
図2に示すように、各色用有機EL素子4R,4G,4Bは、基板2上に形成された回路形成層2b上に形成されている。この回路形成層2bは、表示領域Rに形成される前記各画素3を駆動させるための薄膜トランジスタ9等といった回路素子や、非表示領域Qに形成される走査線駆動回路5または検査回路6を構成する回路素子の一部または全部が形成された層である。また、回路形成層2b上の表示領域Rに対応した領域には、各有機EL素子4R,4G,4Bをマトリクス状に区画するバンクBが形成されている。本実施形態では、バンクBを構成する材料としてアクリル樹脂が用いられている。従って、バンクBは、低耐熱材料である。
【0026】
バンクBは、その表面が撥液性を有している。このバンクBは、元来撥液性を備えた材料、例えば、フッ素系樹脂で構成されたものであってもよい。また、撥液性を備えていないものであっても、通常用いられる、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等の有機樹脂をパターン形成し、CF4プラズマ処理等により表面を撥液化されたものであってもよい。また
、バンクBの高さは、1〜2μm程度あれば十分である。
【0027】
各バンクB上には、補助配線層Sが形成されている。補助配線層Sは、本実施形態では、主に銀といった高導電率の金属で構成されている。そして、この補助配線層Sが後記する本発明の導電性組成物としての感光性導電ペースト20(図3参照)によって形成される電極層である。
【0028】
また、前記回路形成層2b上であって、バンクBによって区画された凹状領域の各底部には画素電極10が形成されている。各画素電極10は、対応する薄膜トランジスタ9とコンタクトホールHを介して電気的に接続されている。各画素電極10上には、本実施形態においては、正孔輸送層11、発光層12R,12G,12Bの順に積層されてなる機能層13が形成されている。発光層12Rは、赤色の光を出射する有機発光材料で構成され発光層であり、発光層12Gは、緑色の光を出射する有機発光材料で構成され発光層であり、発光層12Bは、青色の光を出射する有機発光材料で構成され発光層である。
【0029】
機能層13及び補助配線層S上全面に渡って陰極14が形成されている。また、陰極14の一部は、前記非表示領域Q上を覆うように形成されている。陰極14は、光透過性を有する導電性材料で構成されている。本実施形態においては、陰極14は、インジウムー錫化合物(ITO)で構成されている。インジウムー錫化合物(ITO)は、アルミニウムといった金属に比べて導電率が低いが、前記したように、陰極14に接する各バンクB上には、高導電率を有する補助配線層Sが形成されているので、表示領域R内の陰極14の電位は均一となる。
【0030】
そして、前記した画素電極10、正孔輸送層11、赤色用有機EL素子4R及び陰極14が積層されて図1に示した赤色用有機EL素子4Rが構成される。また、画素電極10、正孔輸送層11、緑色用有機EL素子4G及び陰極14が積層されて緑色用有機EL素子4Gが構成される。同様に、画素電極10、正孔輸送層11、青色用有機EL素子4B及び陰極14が積層されて青色用有機EL素子4Bが構成される。
【0031】
また、回路形成層2bの外周縁部には陰極14全面を覆うように、光透過性を有した材料で構成された封止部材15が形成されている。
また、図1に示すように、基板2上であって、前記表示領域Rを挟むように非表示領域Qには、一対の走査線駆動回路5が配置されている。各走査線駆動回路5は、前記したn行の画素3群のうちの所望の1行の画素3群を選択する走査信号を出力する。
【0032】
さらに、図1に示すように、基板2上であって、前記表示領域Rより反Y矢印方向側の非表示領域Qには検査回路6が形成されている。検査回路6は、有機ELディスプレイ1を出荷される前に駆動され、各色用有機EL素子4R,4G,4Bが正常に駆動するか否かを検査するための回路である。
【0033】
一方、フレキシブル回路基板FC上にはデータ線駆動回路7と制御回路8とが形成されている。データ線駆動回路7は、前記走査線駆動回路5が出力した走査信号によって選択された行の画素3群に対して、その各色用有機EL素子4R,4G,4Bのデータ信号を出力する。データ信号は、図示しない配線を介して薄膜トランジスタ9(図2参照)に供給され、前記画素電極10から正孔輸送層11を介して各色用発光層12R,12G,12Bに注入されるキャリア密度を決定する信号である。このデータ信号によって、各色用有機EL素子4R,4G,4Bの発光輝度が決定される。
【0034】
制御回路8は、各走査線駆動回路5及びデータ線駆動回路7の駆動を制御するための各種制御信号を生成し、その生成した制御信号を各駆動回路5,7にそれぞれ出力する。
そして、このように構成された有機ELディスプレイ1は、制御回路8から出力される各種制御信号によって走査線駆動回路5及びデータ線駆動回路7が駆動制御され、各画素3の有機EL素子4R,4G,4Bの発光輝度が制御される。その結果、表示領域R上に所望の画像が表示されるようになっている。
【0035】
次に、前記のような構成を有する有機ELディスプレイ1の製造方法の一例について図3〜図6に従って説明する。有機ELディスプレイ1は、その補助配線層Sが本発明の導電性組成物によって形成されるものであり、同補助配線層S以外の各層の形成方法は、公知の方法によって形成されるものである。例えば、本実施形態においては、機能層13は液滴吐出法(インクジェット法)によって形成される。ここで、液滴吐出法(インクジェット法)とは、機能層13を構成する有機物からなる機能層材料(本実施形態では、正孔輸送層材料及び発光層材料)をそれぞれ所定の溶媒に溶解または分散させた液滴(インク滴)をインクジェットヘッドから吐出させてパターニング塗布する方法をいう。
【0036】
詳しくは、まず、基板2を洗浄した後、蒸着法等により所定の位置に各種トランジスタ等といった回路素子を形成することで、基板2上に前記回路形成層2bを形成する。
その後、回路形成層2b上の表示領域RにバンクBを形成し、さらにバンクBによって区画された凹状領域の各底部に画素電極10を、たとえば蒸着法により形成して、図4(a)に示すような断面構造を有する画素基板16を形成する。このとき、画素電極10が、隣接する画素電極10と70μm間隔で等ピッチに形成されるようにバンクBが形成される。尚、画素基板16とは、本明細書においては、基板2上に回路形成層2b、バンクB及び画素電極10が形成された基板をいう。
【0037】
続いて、図4(b)に示すように、回路形成層2b、バンクB及び画素電極10上に渡って、感光性導電ペースト20をスクリーン印刷法によって印刷する(塗布工程)。図3に示すように、この感光性導電ペースト20は、本実施形態においては、金属粉末としての粉末状の銀20A、感光性樹脂20B、光触媒としての二酸化チタン20Cが溶剤20Dに分散されてなる導電性組成物である。尚、図3においては、感光性樹脂20Bの形状は球状であるが、特に球状である必要はなく、他の形状(例えば、繊維のような糸状)である場合も考えられる。
【0038】
感光性樹脂20Bは、本実施形態では、例えば、セルロース系樹脂及びアクリル酸系モノマーを含んでいる。溶剤20Dは、本実施形態では、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、224トリメチル3ヒドロキシベンタイソブチレートを含んだペースト状の形態を成している。
【0039】
また、感光性導電ペースト20は、前記したように、二酸化チタン20Cを含んでいる。この二酸化チタン20Cは、415nm以下の波長を有する光(紫外線光)が照射されると感光性導電ペースト20中の感光性樹脂20B及び溶剤20Dの酸化・分解反応を促進する光触媒として作用する。
【0040】
そして、室温においては、感光性導電ペースト20は、ペースト状の形態を成している。このため、感光性導電ペースト20は、前記スクリーン印刷法によって所定のパターン形状に印刷(塗布)することが可能となる。また、感光性導電ペースト20中の二酸化チタン20Cは、同ペースト20中に含有される銀20Aの量に対して微量である。
【0041】
次に、図4(c)に示すように、印刷した感光性導電ペースト20のうち、バンクB上に印刷された感光性導電ペースト20を除いた領域にマスクMを配置する。そして、この状態で、マスクMを介してi線(波長=365nm)、h線(波長=405nm)、g線
(波長=436nm)等の光を各バンクB上の感光性導電ペースト20に照射する。すると、光が照射された感光性導電ペースト20が感光し、各バンクB上に感光性導電ペースト20が密着する。
【0042】
その後、マスクMを取り除き、感光性導電ペースト20に反応する公知の溶液(たとえば、炭酸ナトリウム水溶液または純水に浸漬する。すると、図5(a)に示すように、バンクB以外に塗布された感光性導電ペースト20が取り除かれる。この結果、バンクB上にのみ感光性導電ペースト20が付着される。
【0043】
続いて、バンクB上に感光性導電ペースト20が付着された画素基板16を、図示しないオーブン中に配置し、例えば200℃で加熱してバンクB上に印刷された感光性導電ペースト20を焼成する(焼成工程)。すると、感光性樹脂20Bが分解・除去される。また、このとき、同時に、バンクB上に印刷された感光性導電ペースト20に光を照射する(光照射工程)。本実施形態では、照射する光は、その波長が254nmの波長を有する紫外線光である。
【0044】
すると、二酸化チタン20Cの触媒作用が発揮され感光性樹脂20B及び溶剤20Dの酸化・分解反応が促進される。このため、焼成温度が200℃であっても十分に感光性樹脂20B及び溶剤20Dがそれぞれ分解・除去される。そして、バンクB上から除去される。この結果、図5(c)に示すように、各バンクB上には、銀20A及び二酸化チタン20Cからなる導電性部材(配線パターン)が形成される。そして、この導電性部材(配線パターン)が補助配線層Sとなる。このとき、感光性導電ペースト20中の二酸化チタン20Cは、同ペースト20中に含有される銀20Aの量に対して微量であるので、補助配線層Sは銀20Aの導電率に応じた高い導電率を有することになる。
【0045】
続いて、インクジェット法によって画素電極10上に機能層13を形成する。詳しくは、図6(a)に示すように、バンクBによって区画された凹状領域の底部に形成された各画素電極10上にインクジェットヘッド17が配置される。このインクジェットヘッド17は、図6中X方向に沿って複数のノズル(図6(a)では、3つのノズル)17aが形成されたインクジェットヘッドである。各ノズル17a間のピッチは、隣接する画素電極10のピッチと同じ値である。つまり、本実施形態においては、各ノズル17a間のピッチは70μmである。そして、インクジェットヘッド17は、ガイド部材Gに案内されて
X矢印方向に沿って移動しながら、対応する画素電極10上に正孔輸送材料インク滴I1をそのノズル17aから吐出する。尚、正孔輸送材料インク滴I1とは、正孔輸送層材料を所定の溶媒に溶解または分散させたインクである。
【0046】
その後、全ての画素電極10上に正孔輸送材料インク滴I1を吐出した後、正孔輸送材料インク滴I1が吐出された画素基板16を乾燥させる。この乾燥は、真空及びまたは熱処理あるいは窒素ガスフローにより溶媒を除去する。例えば、本実施形態においては、真空中(1torr(133.3Pa))、室温、20分という条件で溶媒を除去する。
【0047】
続いて、赤色用発光材料が溶媒に溶解または分散させた赤色用インク滴を吐出するインクジェットヘッド(図示略)を用いて、図6中左隅の正孔輸送層11上及び該左隅の正孔輸送層11から数えて3つの正孔輸送層11毎に赤色用インク滴を吐出する。
【0048】
次に、前記と同様にして、緑色用発光材料が溶媒に溶解または分散させた緑色用インク滴を吐出するインクジェットヘッドを用いて、図6中左隅の正孔輸送層11から数えて2つ目の正孔輸送層11上及び該正孔輸送層11から数えて3つ目の正孔輸送層11毎に緑色用インク滴を吐出する。続いて、前記と同様にして、青色用発光材料が溶媒に溶解または分散させた青色用インク滴を吐出するインクジェットヘッドを用いて、図6中左隅の正孔輸送層11から数えて3つ目の正孔輸送層11上及び該正孔輸送層11から数えて3つ目の正孔輸送層11毎に青色用インク滴を吐出する。
【0049】
その後、正孔輸送層11上に各色用インク滴が吐出された画素基板16を乾燥させて溶媒を除去し、赤色用発光層12R、緑色用発光層12G及び青色用発光層12Bを対応する各正孔輸送層11上に形成する。
【0050】
次に、図6(c)に示すように、蒸着法によって各色用発光層12R,12G,12B上、補助配線層S上、及び回路形成層2b上に渡ってインジウムー錫化合物(ITO)を蒸着させる。このインジウムー錫化合物(ITO)が前記陰極14に相当する。さらに、陰極14上に光透過性を有した材料で構成された封止部材15を形成する。これにより、ディスプレイ部Dが作製される。
【0051】
最後に、別途作製されたデータ線駆動回路7及び制御回路8を備えたフレキシブル回路基板FCとディスプレイ部Dとを接続して、有機ELディスプレイ1を製造する。
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ガラスで構成された基板2上に形成された低耐熱性であるアクリル樹脂で構成されたバンクB上に、銀20A、感光性樹脂20B、光触媒として作用する二酸化チタン20C、及び溶剤20Dからなる感光性導電ペースト20を印刷・露光・現像した。そして、紫外線光を同感光性導電ペースト20に照射しながら焼成することで、バンクB上に補助配線層Sを形成するようにした。このとき、紫外線光を照射することによって二酸化チタン20Cの触媒作用が発揮され、感光性導電ペースト20中の感光性樹脂20B及び溶剤20Dの酸化・分解反応が促進される。この結果、感光性樹脂20B及び溶剤20Dが光触媒を含有しない従来の感光性導電ペーストに比べて低い焼成温度(たとえば、200℃)であっても十分に分解・除去される。従って、有機物で構成された耐熱性の低いバンクBを変質させることなく導電性が良好な補助配線層Sを形成することができる。
(2)本実施形態によれば、光触媒は、二酸化チタンである。従って、感光性導電ペースト20自体を容易に作製することができる。
(3)本実施形態によれば、感光性導電ペースト20に含有される光触媒は、二酸化チタンである。従って、紫外線光を照射することで容易に感光性樹脂20B及び溶剤20Dを分解・除去させることができる。
(4)本実施形態によれば、感光性樹脂20Bは、セルロース系樹脂及びアクリル酸系モノマーを含んでいる。また、溶剤20Dは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、224トリメチル3ヒドロキシベンタイソブチレートを含んでいる。従って、室温においては、感光性導電ペースト20は、ペースト状の形態を成している。この結果、感光性導電ペースト20は、スクリーン印刷法によって基板全面に印刷することが可能となる。
【0052】
また、厚膜を形成する場合においても、スパッタや蒸着によって形成するときに比べてその印刷する感光性導電ペースト20の量を適宜調整することで容易に形成することができる。さらに、スクリーン印刷法によって感光性導電ペースト20を基板全面に印刷→露光・現像・焼成によりパターン形成できるので、真空チャンバを使用せずに所望の配線パターンを形成することができる。
(5)本実施形態によれば、バンクB上に感光性導電ペースト20が付着された画素基板16を焼成しながら、同時にバンクB上に印刷された感光性導電ペースト20に光を照射するようにした。従って、紫外線光照射による感光性樹脂20B及び溶剤20Dの分解と、焼成による感光性樹脂20B及び溶剤20Dの除去が同時に行われるので、短時間で効率良く補助配線層Sを形成することができる。
【0053】
尚、発明の実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように実施してもよい。
○上記実施形態では、感光性導電ペースト20に含有される光触媒としては二酸化チタン20Cであったが、特に限定されるものではなく、二酸化チタン以外のものであってもよい。
【0054】
○上記実施形態では、導電性組成物としての感光性導電ペースト20は、ペースト状であったが、特に限定されるものではなく、例えば液状の形態であってもよい。例えば、導電性組成物が液状の形態である場合では、上記実施形態のスクリーン印刷法ではなく、インクジェット法によって導電性組成物をバンクB上に塗布するようにしてもよい。
【0055】
○上記実施形態では、バンクB上に感光性導電ペースト20を密着させた後に紫外線光を照射しながら焼成するようにした。これを、紫外線光の照射と感光性導電ペースト20の焼成をそれぞれ独立に行うようにしてもよい。
【0056】
○上記実施形態では、感光性導電ペースト20に含有される金属粉末としては銀20Aであったが、特に限定されるものではなく、銀以外のものであってもよい。例えば銅・金であってもよい。
【0057】
○上記実施形態では、基板2は、ガラスで構成されていたが、そうではなく、プラスティックであってもよい。
○上記実施形態では、有機ELディスプレイ1の補助配線層Sの形成に感光性導電ペースト20を使用したが、そうではなく、有機ELディスプレイ1の他の導電性部材(配線パターン)の形成に使用してもよい。
【0058】
○上記実施形態では、感光性導電ペースト20が使用される電気光学装置として、フラットパネルディスプレイである有機ELディスプレイ1に適応したが、これ限定されるものではなく、他の電気光学装置を構成する導電性部材(配線パターン)の形成に使用してもよい。
【0059】
○上記実施形態では、感光性導電ペースト20が使用される装置として電気光学装置に適応したが、これに限定されるものではなく、要は、感光性導電ペーストが使用される装置であれば、どんなものであってもよい。たとえば、半導体装置等を構成する導電性部材
(配線パターン)の形成に適用してもよいし、また、その実装分野のW-CSPにおける再配
置配線の形成に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の感光性導電ペーストを使用して製造された有機ELディスプレイの上面図。
【図2】有機ELディスプレイの断面図。
【図3】感光性導電ペーストの構成図。
【図4】(a),(b),(c)は、それぞれ有機ELディスプレイの製造方法を説明するための図。
【図5】同じく、(a),(b),(c)は、それぞれ有機ELディスプレイの製造方法を説明するための図。
【図6】同じく、(a),(b),(c)は、それぞれ有機ELディスプレイの製造方法を説明するための図。
【符号の説明】
【0061】
1…電気光学装置としての有機ELディスプレイ、2…基板、20…導電性組成物としての感光性ペースト、20A…金属粉末としての銀、20B…感光性樹脂、20C…光触媒としての二酸化チタン、20D…溶剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末と感光性樹脂と光触媒とを含有することを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性組成物において、
前記光触媒は、紫外線が照射されることによって前記感光性樹脂の酸化・分解反応が促進されることを特徴とする導電性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の導電性組成物において、
前記光触媒は、二酸化チタンであることを特徴とする導電性組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の導電性組成物において、
前記金属粉末、感光性樹脂及び光触媒は、ペースト状の溶剤に分散していることを特徴とする導電性組成物。
【請求項5】
金属粉末と感光性樹脂と光触媒とを含む導電性組成物を基板上に塗布する塗布工程と、
前記基板上に塗布された前記導電性組成物に光を照射する光照射工程と、
前記導電性組成物を焼成する焼成工程と
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン形成方法において、
前記導電性組成物は、ペースト状であり、
前記塗布工程は、ペースト状の前記導電性組成物を前記基板上に印刷することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のパターン形成方法において、
前記光照射工程にて前記導電性組成物に照射される前記光は、紫外線光であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記光照射工程と前記焼成工程とは同時に行われることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
請求項5乃至7のいずれか一つに記載のパターン形成方法で製造されたことを特徴とする電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−216269(P2006−216269A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25475(P2005−25475)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】