説明

導電性部材及びその製造方法、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】螺旋状の溝が電気抵抗調整層表面に形成された、長尺状の導電性支持体の周囲に、円筒形状の電気抵抗調整層を有し、かつ、該円筒形状の電気抵抗調整層の両端に空間保持部材を有する導電性部材において、螺旋状の溝形成時のばりや糸状の切りくずが電気抵抗調整層表面に残留することによる問題発生のおそれのない、導電性部材、及び、このような導電性部材からなる帯電ローラを有するを提供する。
【解決手段】長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の周囲に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材において、
前記電気抵抗調整層の表面に螺旋状の溝が形成されており、かつ、該螺旋状の溝と隣り合う溝との間に、平坦部が形成されていることを特徴とする導電性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において用いられる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(感光体ドラム)に対して帯電処理を行う帯電性部材、及び、像担持体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。図9は、従来の帯電ローラを有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【0003】
図9において、120は、従来の電子写真方式の画像形成装置である。従来の電子写真方式の画像形成装置120は、静電潜像が形成される像担持体101、像担持体101に接触して帯電処理を行う帯電ローラ102、レーザ光等の露光手段103、像担持体101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104、帯電ローラ102にDC電圧を印加するためのパワーパック105、像担持体101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106、転写処理後の像担持体101をクリーニングするためのクリーニング装置108、及び、像担持体101の表面電位を測定する表面電位計109から構成されている。
【0004】
また、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、プロセスカートリッジ着脱方式の装置となっている。即ち、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、像担持体101、帯電ローラ102、現像ローラ104、及び、クリーニング装置108を含むプロセス機器を一括して画像形成装置本体に対して着脱自在のプロセスカートリッジ110としている。このプロセスカートリッジ110は、少なくとも、像担持体101及び帯電ローラ102を備えていればよい。このプロセスカートリッジ110は、画像形成装置に対して所定の箇所に装着されることにより、画像形成装置本体側の駆動系及び電気系と接続状態となる。なお、図9では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、本明細書において必要としないので、省略してある。
【0005】
次に、従来の電子写真方式の画像形成装置120の基本的な作像動作について説明する。
【0006】
像担持体101に接触された帯電ローラ102に対してDC電圧をパワーパック105から給電すると、像担持体101の表面は、一様に高電位に帯電する。その直後に、画像光が像担持体101の表面に露光手段103により照射されると、像担持体101の照射された部分は、その電位が低下する。このような帯電ローラ102による像担持体101の表面への帯電メカニズムは、帯電ローラ102と像担持体101との間の微少空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。
【0007】
画像光は、画像の白/黒に応じた光量の分布であるので、かかる画像光が照射されると、画像光の照射によって像担持体101の面に記録画像に対応する電位分布、即ち、静電潜像が形成される。このように静電潜像が形成された像担持体101の部分が現像ローラ104を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電画像を可視像化したトナー像が形成される。かかるトナー像が形成された像担持体101の部分に、記録紙107が所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により搬送され、前記トナー像に
重なる。そして、このトナー像が転写ローラ106によって記録紙107に転写された後、該記録紙107は、像担持体101から分離される。分離された記録紙107は、搬送経路を通って搬送され、定着ユニット(図示せず)によって、加熱定着された後、機外へ排出される。このようにして転写が終了すると、像担持体101は、その表面がクリーニング装置108によりクリーニング処理され、さらに、クエンチングランプ(図示せず)により、残留電荷が除去されて、次回の作像処理に備えられる。
【0008】
従来の帯電ローラを用いた帯電方式には、像担持体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式のものがある(特許文献1,2を参照。)が、このような従来の接触帯電方式には、
(1)帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、これが被帯電体の表面に付着移行して帯電ローラ跡を残すこと、
(2)帯電ローラに交流電圧を印加したときに、被帯電体に接触している帯電ローラが振動するので、帯電音が発生すること、
(3)像担持体上のトナーが帯電ローラに付着する(特に、上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる。)ので、帯電ローラの帯電性能が低下すること、
(4)帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、
(5)像担持体を長期停止したときに、帯電ローラが永久変形すること、
といった問題があった。
【0009】
このような問題を解決する技術として、帯電ローラを像担持体に近接させるようにした近接帯電方式による帯電装置(特許文献3,4及び5を参照。)が提案されている。この近接帯電方式による帯電装置は、帯電ローラを像担持体に最近接距離(50〜300μm)になるように対向させて、帯電ローラに電圧を印加することにより、像担持体の帯電を行うようにしたものである。この近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラと像担持体とが接触していないので、従来の接触帯電方式による帯電装置において問題となっていた、帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、像担持体が長期停止したときに永久変形すること、といった問題はない。また、この近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるので、像担持体上のトナー等が帯電ローラに付着することが少ない。したがって、近接帯電方式による帯電装置は、優れた帯電装置といえる。
【0010】
このような近接帯電方式による帯電装置に用いる帯電ローラは特許文献5に記載されているように、前記半導電性樹脂組成物を導電性支持体(ローラ軸)の上に押出成形、射出成形等の手段により被覆することによって行うことができ、その表面を任意の段階で、切削加工等を施して、必要とされる径寸法及び表面精度を得る。
【0011】
ここで、成形等により形成された電気抵抗調整層に対して切削加工を行う場合、切削バイトなどの切削工具を用いて、被加工材料を回転させながら螺旋状に切削加工を行い必要な寸法に仕上げる。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−267667号公報
【特許文献3】特開2003−330249号公報
【特許文献4】特開2003−337464号公報
【特許文献5】特開2004−354477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者等が詳細に検討を行ったところ、上記切削加工の際に、「ばり」や糸状の切削屑が発生し、本来は図11(a)に表面付近の部分拡大断面図に示すような形状の表面になるべきはずが、図11(b)に表面付近の部分拡大断面図に示すように、ばりや糸状の切りくずが電気抵抗調整層に残った形状となってしまい、その結果、所定の帯電ローラと像担持体との上記最近接距離が確保されずに、より短い距離の箇所が部分的に形成され、その結果、画像形成装置に応用した場合に、画像むらが発生し、高品質の画像が得られないなどの不都合が発生することが判った。なお、帯電ローラの電気抵抗調整層の表面にさらに、トナーの付着を防止する表面層を形成する場合があるが、このような場合であっても上記ばりや糸状の切りくずによる問題は依然として残る。
【0013】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、即ち、螺旋状の溝が電気抵抗調整層表面に形成された、長尺状の導電性支持体の周囲に、円筒形状の電気抵抗調整層を有し、かつ、該円筒形状の電気抵抗調整層の両端に空間保持部材を有する導電性部材において、螺旋状の溝形成時のばりや糸状の切りくずが電気抵抗調整層表面に残留することによる問題発生のおそれのない、導電性部材、及び、このような導電性部材からなる帯電ローラを有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の導電性部材は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の周囲に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材において、前記電気抵抗調整層表面に螺旋状の溝が形成されており、かつ、該螺旋状の溝と隣り合う溝との間に、平坦部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の導電性部材は請求項2に記載の通り、請求項1に記載の導電性部材において、電気抵抗調整層の外径が、中央部から端部に向かって徐々に小さくなっていることを特徴とする。
【0016】
本発明の導電性部材は請求項3に記載の通り、請求項1に記載の導電性部材において、電気抵抗調整層の外径が、前記円筒形状の中央部から端部に向かって徐々に大きくなっていることを特徴とする。
【0017】
本発明の導電性部材は請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電性部材において、上記導電性部材が帯電性部材であることを特徴とする。
【0018】
本発明の導電性部材の製造方法は、請求項5に記載の通り、長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の周囲に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材の製造方法において、上記電気抵抗調整層表面を切削して螺旋状の溝を形成する切削加工工程と、該切削加工工程により形成された尾根線部を平坦にする溝間平坦部を形成する溝間平坦部形成工程とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の導電性部材の製造方法は、請求項6に記載の通り、長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の周囲に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材の製造方法において、上記電気抵抗調整層表面を切削して螺旋状の溝を形成する切削加工工程と、該切削加工によって生じたばり・切削屑を除去するばり・切削屑除去工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明のプロセスカートリッジは請求項7に記載の通り、請求項4に記載の導電性部材を帯電性部材として有することを特徴とする。
【0021】
本発明の画像形成装置は請求項8に記載の通り、請求項7に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る本発明の導電性部材によれば、ばりや糸状の切りくずによる問題が発生しない、高品質の画像が得られる帯電ローラとすることができる。
【0023】
請求項2に係る本発明の導電性部材によれば、請求項1に係る発明の効果に加え、帯電ローラとして感光体の下方に設置した場合に、帯電性部材表面と帯電ローラとの距離をローラ幅方向に均一、ないし、ほぼ均一とすることが可能となるので、より高品質の画像が得られる。
【0024】
請求項3に係る本発明の導電性部材によれば、請求項1に係る発明の効果に加え、帯電ローラとして感光体の上方に設置した場合に、帯電性部材表面と帯電ローラとの距離をローラ幅方向に均一、ないし、ほぼ均一とすることが可能となるので、より高品質の画像が得られる。
【0025】
請求項4に係る本発明の導電性部材によれば、ばりや糸状の切りくずによる問題が発生しない、高品質の画像が得られる帯電ローラとすることができる。
【0026】
請求項5に係る本発明の導電性部材の製造方法によれば、ばりや糸状の切りくずによる問題が発生しない、高品質の画像が得られる帯電ローラ用の導電性部材を得ることができる。
【0027】
請求項6に係る本発明の導電性部材の製造方法によれば、ばりや糸状の切りくずによる問題が発生しない、高品質の画像が得られる帯電ローラ用の導電性部材を得ることができる。
【0028】
請求項7に係る本発明のプロセスカートリッジによれば、画像形成装置に用いた場合に、むらのない、高品質の画像が得られる。
【0029】
請求項8に係る本発明の画像形成装置によれば、むらのない、高品質の画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の断面図である。図2は図1の導電性部材(帯電ローラ)の電気抵抗調整層表面付近の拡大モデル断面図、図3は、本発明の導電性部材(帯電性部材、帯電ローラ)10が、像担持体に任意の圧力で当接されて配置される状態を示す図である。図4は本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)を形成する方法を示す説明図である。図5は、振れ止めと導電性部材との位置関係を示す部分拡大モデル断面図、図6は振れ止め材が平坦部を形成する状態を示すモデル説明図である。
【0032】
図1において、10は、導電性部材(帯電ローラ)である。導電性部材(帯電ローラ)10は、長尺状の導電性支持体201と、該導電性支持体201の周囲に形成された電気抵抗調整層202と、該電気抵抗調整層202と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材203と、を有する導電性部材である。そして、前記電気抵抗調整層202は導電性支持体201に接着剤で固定されている。図1において、204はトナーの付着を防止するための表面層である。
【0033】
このように、電気抵抗調整層202が導電性支持体201に接着剤で固定されていると、導電性支持体201と電気抵抗調整層202との間の隙間の発生を防止すると共に、これに起因する電気抵抗調整層202の強度低下及び電気抵抗値の変動を防止することができ、それらのために、初期及び長期間にわたって使用しても、像担持体と導電性部材10との間に安定した空隙を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材10を提供することができる。
【0034】
ここで、図2に示すように上記電気抵抗調整層202の表面には細かい螺旋状の溝が形成されており、かつ、螺旋状の溝と隣り合う溝との間に、平坦部が形成されている。
【0035】
図3に示されているように、本発明の導電性部材(帯電性部材)10は、像担持体に任意の圧力で当接されて配置される。前記空隙保持部材203は、画像形成領域を外した非画像形成領域に形成されている。この状態で帯電性部材に電圧を印加することにより、像担持体の帯電を行うことができる。導電性部材10を転写部材として使用する場合も、同様の形態で行うことができる。導電性部材10と像担持体との間の空隙Gは、所定の値に保つ必要があり、好ましくは、100μm以下である。空隙Gが大きくなると、導電性部材10への電圧印加条件を高くする必要があるので、像担持体の電気的劣化や異常放電が発生しやすくなる。
【0036】
前記接着剤は、好ましくは、導電性接着剤である。そして、前記導電性接着剤は、例えば、金、銀、ニッケル及びカーボンから選ばれる導電性粒子を含有しているものである。かかる導電性接着剤のベース樹脂は、好ましくは、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等がある。前記接着剤は、一液性・二液性共に使用可能であり、特に限定されるものではないが、一液性のほうが作業性が高い。
【0037】
前記接着剤が導電化されていない場合には、導電性部材10の抵抗上昇を招くので、使用時の帯電能力や転写能力が不足してしまう。したがって、前記接着剤2が導電性接着剤であると、導電性部材10の電気抵抗の上昇を防止することができる。
【0038】
前記接着剤は、好ましくは、予め、導電性支持体201に塗布されている。このように、前記接着剤が、予め、導電性支持体201に塗布されていると、導電性支持体201と電気抵抗調整層202との界面全面にわたり容易に接着することができる。したがって、かかる導電性部材10の製造段階において、また、かかる導電性部材10を長期間に渡って使用した際において、導電性支持体201と電気抵抗調整層202との剥離・隙間の発生を避けることができ、そのために、電気抵抗調整層202の強度低下及び電気抵抗値の変動が発生しなくなり、よって、使用時の機械的・電気的ストレス、及び、経時や環境での体積変動によるクラックが生じにくくなる。
【0039】
前記導電性支持体201の表面は、好ましくは、粗面化処理されている。このように、前記導電性支持体201の表面が粗面化処理されていると、粗面化表面と接着剤とによる接着の相乗効果でより強固に導電性支持体201と電気抵抗調整層202とを接着することができる。粗面化処理としては、サンドブラスト処理、リン酸亜鉛処理等が挙げられる。
【0040】
前記導電性支持体201と前記空隙保持部材203とは、前記接着剤で固定されている。このように、前記導電性支持体201と前記空隙保持部材203とが前記接着剤で固定されていると、接着剤の二度塗りを避けて容易に空隙保持部材203を導電性支持体201に接着固定することができる。
【0041】
前記空隙保持部材203の接着面は、好ましくは、予め、活性ガスで表面処理されている。このように、前記空隙保持部材203の接着面が、予め、活性ガスで表面処理されていると、前記導電性支持体201と前記空隙保持部材203とをより強固に接着することができる。
【0042】
空隙保持部材203は、体積固有抵抗が1013Ω・cm以上の絶縁性の樹脂で構成されていることが望ましい。このような絶縁性の樹脂が必要となる理由は、像担持体との間に流れるショート電流の発生を無くすためである。空隙保持部材203に必要な特性は、像担持体との空隙を環境及び長期(経時)に渡って安定して形成することであるので、空隙保持部材203を構成する材料としては、吸湿性及び耐摩耗性の小さい材料が好ましい。また、空隙保持部材203は、トナー及びトナー添加剤が付着しにくい像担持体と当接して摺動するので、像担持体を摩耗させないということも重要である。このような空隙保持部材203を構成する材料は、種々の条件に応じて適宜選択されるが、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、フッ素樹脂等の樹脂があげられる。本発明における空隙保持部材203は、このような樹脂を成型加工することにより成形される。ここで空隙保持部材203の材質としては、種々の検討を行った結果、分子量100万以上、HDD60〜70度、密度が0.96以上の高密度ポリエチレン(PE)樹脂が、耐磨耗性が良好で、感光体を傷つけず、摩耗させずかつ、トナー及び、トナー添加剤が付着しにくいであることが望ましい。
【0043】
本発明においては、電気抵抗調整層202の体積固有抵抗は、好ましくは、10〜10Ω・cmである。電気抵抗調整層202の体積固有抵抗が10Ω・cmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、また、電気抵抗調整層202の体積固有抵抗が10未満であると、像担持体全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。しかしながら、電気抵抗調整層202の体積固有抵抗が10〜10Ω・cmであると、充分な帯電能力及び転写能力を確保することができると共に、像担持体への電力集中による異常放電の発生を防止することができ、それらのために、均一画像が得られる。
【0044】
電気抵抗調整層202に用いられる樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂があげられる。これらの樹脂は、加工性が良いので好ましい。かかる樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミドを含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であるので、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う電気抵抗値のばらつきが生じない。また、ポリエーテルエステルアミドは、高分子材料であるので、ブリードアウトが生じ難い。電気抵抗値を所望の値にするためには、それらの配合量は、好ましくは、熱可塑性樹脂30〜70重量%、及び、高分子型イオン導電剤70〜30重量%である。
【0045】
また、導電材料をマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散させるためには、相溶化剤を添加することにより、導電材料のミクロ分散が可能になる。このような相溶化剤を適宜使用しても構わない。
【0046】
このような樹脂で構成される電気抵抗調整層202の厚みは、好ましくは、100μm以上、500μm以下である。電気抵抗調整層202の厚みが100μm未満となると、薄すぎとなってリークによる異常放電が発生し、また、電気抵抗調整層202の厚みが500μmを越えると、厚すぎとなって表面精度の維持が困難となる。
【0047】
このような材料で構成される半導電性樹脂組成物は、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。電気抵抗調整層202としての導電性支持体201上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体201に前記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。導電性支持体201上に電気抵抗調整層202のみを形成して導電性部材10を構成すると、電気抵抗調整層202にトナー及びトナーの添加剤等が固着して性能低下する場合があるが、本発明においては、電気抵抗調整層202上に表面層204が形成されているので、トナー、及び、トナーに添加されている添加剤が長期に渡って導電性部材表面に付着することを防止することができる。
【0048】
図3に示されているように、本発明の導電性部材(帯電ローラ)10には、空隙保持部材203の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材10の外周面との間に空隙が形成されるように、前記電気抵抗調整層202の外周面に対する前記空隙保持部材203の外周面の高低差が設けられている。このように、空隙保持部材203の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と電気抵抗調整層202の外周面との間に空隙Gが形成されるように、該電気抵抗調整層202の外周面に対する前記空隙保持部材203の外周面の高低差が設けられていると、像担持体との間の空隙を精度良く一定に保つことができ、しかも、空隙保持部材203が配置されている電気抵抗調整層202が環境変動で寸法変化しても、電気抵抗調整層202の変化に追従することができ、そのために、空隙変動を抑えることができる。
【0049】
前記電気抵抗調整層202の外周面に対する前記空隙保持部材203の外周面の高低差は、図4に示されているように、前記導電性部材10上に設置された該空隙保持部材203の外周面と前記導電性支持体201上に設置された該電気抵抗調整層202の外周面とに施された切削加工による除去加工により一体加工で形成される。
【0050】
切削加工は、バイトなどの切削工具を用いて、電気抵抗調整層が形成された被加工材料を回転させながら螺旋状に切削加工を行う切削加工工程によって、必要な寸法に仕上げる。
【0051】
このような切削加工において、前記電気抵抗調整層202の外周面に対する前記空隙保持部材203の外周面の高低差が、前記導電性部材10上に設置された該空隙保持部材203の外周面と前記導電性支持体201上に設置された該電気抵抗調整層202の外周面とに施された切削加工の除去加工による一体加工で形成されると、像担持体の外周面と電気抵抗調整層202の外周面との間に形成される空隙Gの変動(振れ)を小さくして空隙Gの精度をより高めることができる。
【0052】
このとき、電気抵抗調整層202表面には切削加工により微視的に螺旋状の溝が形成されるが、上記のように必要な寸法に仕上げることを目的として加工するため、元々の電気抵抗調整層202の表面は残らず、従って隣り合う螺旋状の溝は互いに接し合い、その結果、螺旋状の溝同士の間には稜線(尾根線)が形成される(図11(a)参照)。
【0053】
ここで、本発明の導電性部材の製造方法では、このような電気抵抗調整層202表面を切削して螺旋状の溝を形成する切削加工工程で、該切削加工工程で電気抵抗調整層202表面を螺旋状に切削したのち、切削により形成された溝と溝との間に残留するばりや切削屑を除去するばり・切削屑除去工程を実施する。
【0054】
このばり・切削屑除去工程の具体的な一例として、該切削加工工程により形成された尾根線部を平坦にして溝間平坦部を形成する(図2にこのような溝間平坦部を形成した状態を示す部分拡大モデル断面図を示す)。
【0055】
このような溝間平坦部は、例えば、電気抵抗調整層202が切削されて表面に螺旋状の溝が形成された被加工材料を回転させながら、その表面に物体を接触させることにより形成させることができる。
【0056】
ここで溝間平坦部は、一般に、円筒状の電気抵抗調整層202の軸を軸として共有する円筒面として形成されることが、最終的に帯電ローラとして用いられるときに帯電ローラと像担持体との距離が一定に保たれることから望ましい。
【0057】
なお、このように切削加工工程及び溝間平坦部形成工程とは別に行っても良いが、これら2つの工程は共に電気抵抗調整層202が形成された導電性支持体201を回転させながら行うことができるので、同時的に行っても良い。すなわち電気抵抗調整層202表面に対して螺旋状の溝を部分的に形成しながら、すでに螺旋状の溝が形成されている電気抵抗調整層202表面部分に対して溝間平坦部を形成することができる。
【0058】
ここでこのように切削加工工程と溝間平坦部形成工程とを同時的に行う場合の一例について図4を用いて説明する。図4(a)は円筒状の電気抵抗調整層を側面からみた正面図、図4(b)は側面図である。
【0059】
この図では長尺状の導電性支持体201及び導電性支持体201の周囲に形成された円筒状の電気抵抗調整層202(中間材)は回転され、その側面の表面はバイトが当接して切削加工が行われて電気抵抗調整層202の表面に螺旋状の溝が形成されつつある状態を示す。
【0060】
一方、すでに、螺旋状の溝が形成された電気抵抗調整層202の表面部分には、この例ではばり・切削屑除去部材として金属からなる振れ止め部材が押し当てられ、切削加工工程により形成された尾根線部を平坦にされて溝間に平坦部が形成される。振れ止め部材はこの図に示すようにバイトの当接とは180°異なる方向から当接されることが望ましい。
【0061】
このようにして形成される、平坦部の形成の目的は溝間の尾根線部に残留するばり、及び、糸状切りくずの除去であるため、その幅はこれらばり、及び、糸状切りくずが完全にできる程度とすれば良く、必ずしも全体が平滑となる必要はなく、従って電気抵抗調整層202の表面に螺旋状の溝が残留していて良い。
【0062】
このような、切削加工によって生じたばり・切削屑を除去するばり・切削屑除去工程で用いられる振れ止めの、電気抵抗調整層202の表面に当接する部分には、弧状に凹部が形成され、電気抵抗調整層202の表面と面による接触が行われるようになり、その時の接触角は図5に示すように測定される。この例では130°程度となっているが、この接触角度は、130°に限定されず、例えば90°〜180°の範囲で適宜変更することができる。ここで、振れ止めは、溝間の平坦部の形成機能を有するほか、バイトでの切削による中間材の振れを防止し、加工精度を向上させる働きもする。この例では振れ止めはバイトの中間材軸に平行な一方向(図中矢印方向)の移動に従って、同方向に(図中矢印方向)に移動する。このときの振れ止めによる、尾根線部を平坦にして、溝間平坦部が形成される状態をモデル的に拡大した、部分拡大モデル断面図を図6に示す。なお、このように形成された平坦部は表面粗さ計でその存在を確認することができる。また、上記では振れ止め機能をも有するために、電気抵抗調整層202の表面と面による接触を行うものとしたが、螺旋状の溝が形成された電気抵抗調整層202の表面部分からのばり・切削屑が充分に除去できれば、ばり・切削屑除去部材の形状は上記に限定されるものではない。
【0063】
このように振れ止めにより溝間に平坦部が形成されると、同時に「ばり」や糸状の切り屑が中間材から除去される。しかし、ばり・切削屑除去工程で、振れ止めの当接力や突き出し量を微妙に制御することで、ばり・切削屑除去工程により充分にばりや切削屑が除去できる場合には、平坦部が形成されなくても良く、この場合も本発明に含まれる。
【0064】
本発明においては、前記電気抵抗調整層202上にトナーの付着を防止する表面層204が形成することが望ましい。このように、前記電気抵抗調整層202上にトナーの付着を防止する表面層204が形成されていると、トナー固着防止性に優れた導電性部材10が得られる。
【0065】
本発明においては、表面層204の体積固有抵抗は、電気抵抗調整層202の体積固有抵抗より大きくされている。このように、表面層204の体積固有抵抗が電気抵抗調整層202の体積固有抵抗より大きくされていると、像担持体欠陥部への電圧集中及び異常放電の発生を防止することができる。但し、表面層204の電気抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうので、表面層204と電気抵抗調整層202との電気抵抗値の差を10以下にすることが好ましい。表面層204を形成する材料は、好ましくは、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル等の樹脂である。これらの樹脂は、非粘着性に優れているので、トナーの固着防止の面で好ましい。また、かかる樹脂は、電気的に絶縁性であるので、樹脂に対して各種導電材料を分散することによって表面層204の電気抵抗を調整することができる。表面層204の電気抵抗調整層202上への形成は、上記表面層204を構成する樹脂材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、この塗料をスプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の手段によって行う。表面層204の膜厚は、好ましくは、10〜30μmである。
【0066】
表面層204を構成する樹脂は、1液性及び2液性のどちらも使用可能であるが、硬化剤を併用する2液性塗料を使用すると、耐環境性、非粘着性を高めることができる。2液性塗料の場合には、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的である。しかしながら、電気抵抗調整層202は、熱可塑性樹脂とすると、高い温度で加熱することができない。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤、及び、水酸基と架橋反応を起こすイソシアネート系樹脂を用いることが好ましい。イソシアネート系樹脂を用いると、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。ここで、トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂でトナーの非粘着性が高い樹脂であることを確認し、特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好であることが見出されている。
【0067】
導電性部材は、電気特性(電気抵抗値)が重要であるので、表面層204を導電性にする必要がある。導電性にした表面層204は、表面層204を構成する樹脂材料中に導電剤を分散することにより形成される。導電剤は、特に制約を受けるものではないが、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、及び、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーが挙げられる。また、導電性付与材としては、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質がある。
【0068】
本発明においては、前記導電性部材10が円筒形状である。このように前記導電性部材10が円筒形状であと、該導電性部材10を回転駆動させることができ、そのために、同一箇所からの連続放電を防止して通電ストレスによる表面の化学的劣化を低減することができ、よって、長寿化をはかることができる。
【0069】
ここで、上記導電性部材10の形状である円筒形状は中央部の径と端部の径とが部分的にその径が異なっていることが望ましい。
【0070】
すなわち、画像形成装置において、その像担持体の下方に本発明の導電性部材を帯電ローラとして配置した場合、重力により、帯電ローラの中央部が自重により下方に僅かに撓む(イメージ図を図7(a)に示す)。このため、帯電ローラと像担持体との距離は、帯電ローラ中央部と帯電ローラ端部とでは異なり、中央部での距離が僅かに大きくなる。この距離の差は画像へ影響を及ぼし、その結果、良好な画像が得られなくなる。
【0071】
そこで、本発明の導電性部材としては帯電ローラとして画像形成装置において像担持体の下に配置する場合には、図7(b)にモデル的に示すように、その中央部の直径を両端部の直径に比して大きくするようにすることが好ましい。
【0072】
このように導電性部材としてその中央部の直径を両端部の直径に比して大きくする、云い換えると電気抵抗調整層の外径が、中央部から端部に向かって徐々に小さくなっているようにすることにより、帯電ローラとして画像形成装置において像担持体の下に配置した場合には、図7(c)にモデル的に示すように、帯電ローラとして用いたときにいずれの箇所でも像担持体との距離を一定とすることができる。
【0073】
一方、画像形成装置において、その像担持体の上方に本発明の導電性部材を帯電ローラとして配置した場合、重力により、帯電ローラの中央部が自重により下方に僅かに撓む(イメージ図を図8(a)に示す)。このため、帯電ローラと像担持体との距離は、帯電ローラ中央部と帯電ローラ両端部とでは異なり、中央部での距離が僅かに小さくなる。この距離の差が上記同様画像へ影響を及ぼし、その結果、良好な画像が得られなくなる。
【0074】
そこで、本発明の導電性部材としては帯電ローラとして画像形成装置において像担持体の上に配置する場合には、図8(b)にモデル的に示すように、その中央部の直径を両端部の直径に比して小さくするようにすることが好ましい。
【0075】
このように導電性部材としてその中央部の直径を両端部の直径に比して小さくする、すなわち、電気抵抗調整層の外径が、前記円筒形状の中央部から端部に向かって徐々に大きくなっているようにすることにより、帯電ローラとして画像形成装置において像担持体の上に配置した場合には、図8(c)にモデル的に示すように、帯電ローラとして用いたときにいずれの箇所でも像担持体との距離を一定とすることができる。
【0076】
これらのように、帯電ローラにおいて、両端と中央との直径の大きさを変化させるには本発明の導電性部材の製造時(図4(a)及び図4(b)参照)に、バイトの突き出し量を、中央部加工時と端部加工時とで異なるよう制御することで容易に行うことができる。なお、このように導電性部材の表面を切削加工する際にバイトの突き出し量を変化させると、その加工後の面に振れ止めを押し当てて形成する平滑部の面は僅かに糸巻き状、あるいは、樽状となるが、直径の調整量は極めて少ないため、このようなバイト突き出し量を制御しない場合と同様、真円の円筒面を構成していると考えられる。
【0077】
本発明においては、前記導電性部材10は、好ましくは、帯電性部材とされる。このように、前記導電性部材10が帯電性部材とされると、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電性部材の汚れ等を防止すると共に、帯電性部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0078】
本発明においては、像担持体の形状は特に限定されず、ベルト状、円筒状いずれの形式もとることができる。ここで像担持体と導電性部材とが常に同一面で対向していると、通電ストレスによる表面の化学的劣化が生じてしまうが、両者を円筒形状として回転駆動させると、同一箇所からの連続放電を防止することができ、そのために、通電ストレスによる表面の化学的劣化を低減させることができる。例えば、図3に示すように、導電性部材10の回転方向は、像担持体と同方向、逆方向どちらも選択することができる。また、像担持体との周速差をつける(像担持体より速く回転させる、遅く回転させる)ことも可能である。また、像担持体の回転に対して、間欠回転させることも機能を損なわない範囲において可能である。導電性部材10と像担持体と間の空隙Gは、所定の値に保つ必要があり、好ましくは、100μm以下である。空隙Gが大きくなると導電性部材10への電圧印加条件を高くする必要があり、像担持体の電気的劣化や異常放電が発生しやすいためである。
【0079】
請求項1〜4のいずれかに記載された導電性部材10は、好ましくは、帯電性部材とされる。このような導電材は、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電性部材の汚れ等を防止すると共に、帯電性部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0080】
請求項6に記載の導電性部材(帯電性部材)10は、被帯電体上に近接配置されるように設けられた着脱可能なプロセスカートリッジ(図9における110を参照。)とする。このように、請求項6に記載の導電性部材(帯電性部材)10が被帯電体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとすると、長期に渡って安定した画質を得ることができ、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0081】
本発明においては、請求項7に記載のプロセスカートリッジ(図9における110を参照。)を有する画像形成装置とする。このように、請求項7に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置とすると、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることが
できる。
【0082】
図10に示すように、本発明の画像形成装置においては、装置本体内の下部に給紙部22、その上方に像担持体を有する作像部、及び、さらにその上方に排紙部となる対の排紙ローラ26,27をそれぞれ設けて、給紙部22から給紙した転写紙Pの左側の面に対応する作像部で画像を形成し、そして、その転写紙Pを排紙ローラ26,27によりビントレイ20あるいは排紙トレイ21に排出するようにしている。給紙部22には、上下2段にトレイ28,29が設けられていて、その各給紙段には給紙ローラ30がそれぞれ配設されている。23は書込みユニットであり、そこから像担持体の一様に帯電された表面に光を照射して、そこに画像を書き込む。また、その像担持体に対して転写紙搬送方向上流側には、転写紙のスキューを補正すると共に、像担持体上の画像と転写紙の搬送タイミングを合わせるためのレジストローラ対13を設けている。
【0083】
さらに、像担持体に対して転写紙搬送方向下流側には、定着ユニット25を設けている。作像部には、図10に示すように、前述した像担持体が矢示A方向に回転可能に設けられており、その周囲には帯電装置(図9における102を参照。)と、その帯電装置により帯電された面に書込みユニット23により書込まれた像担持体上の静電潜像を顕像化してトナー像とする現像装置(図9における104を参照。)と、そのトナー像を転写紙Pに転写する転写搬送ベルト7と、そのトナー像の転写後に像担持体上に残った残留トナーを除去するクリーニング装置(図9における108を参照。)と、像担持体上の不要な電荷を除電する除電ランプ(図示せず)とを、それぞれ配設している。この画像形成装置は、画像形成動作を開始させると、図10に示した像担持体が矢印A方向に回転し、その表面が除電ランプにより除電されて基準電位に平均化される。次に、その像担持体の表面は、帯電ローラ(図9における102を参照。)により一様に帯電され、その帯電面は、書込みユニット23から画像情報に応じた光の照射を受け、そこに静電潜像が形成される。その潜像は、像担持体が矢示A方向に回転することにより現像装置(図9における104を参照。)の位置まで移動されると、そこで現像スリーブ(図示せず)によりトナーが付着されてトナー像(顕像)となる。
【0084】
一方、図10に示した給紙部22のトレイ28,29の何れかから給紙ローラ30により転写紙Pが給紙され、それがレジストローラ対13で一旦停止されて、その転写紙Pの先端と像担持体上の画像の先端とが一致する正確なタイミングで搬送され、その転写紙Pに転写搬送ベルト7により像担持体上のトナー像が転写される。その転写紙Pは、転写搬送ベルト7により搬送され、駆動ローラ部7aで転写紙Pの腰による曲率分離で、その転写搬送ベルト7から分離されて、定着ユニット25へ搬送され、そこで熱と圧力が加えられることによりトナーが転写紙Pに融着され、それが指定された排紙場所、すなわち排紙トレイ21あるいはビントレイ20の何れかに排出される。その後、像担持体上に残った残留トナーは、次工程であるクリーニング位置まで回転移動し、クリーニング装置のクリーニングブレード(図9における108を参照。)により掻き取られ、再び次の作像工程に移る。
【0085】
なお、本発明において、導電性部材の回転方向は、像担持体(感光体)と同方向、逆方向どちらも選択することができる。また、像担持体との周速差をつける(感光体より速く回転させる、遅く回転させる)ことも可能である。また、感光体の回転に対して、間欠回転させることも機能を損なわない範囲において可能である。
【0086】
上記本発明の画像形成装置の例では、感光体と等速で回転させている。なお、スリップ防止のために、導電性部材も駆動ギアにより独自に駆動回転を行っている。
【実施例】
【0087】
以下、本発明の導電性部材についての実施例について示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
ステンレスからなる芯軸(胴部外径10mm、軸受け部径6mm)上に、抵抗調整層(幅318mm)としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2.1×10Ωcm)を、射出成形により成形した。
【0089】
次いでこの抵抗調整層の両端部に、空隙保持部材として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材をそれぞれ1個ずつ、挿入接着し、次いで、切削によって空隙保持部材の外径を12.12mm、抵抗調整層の外径を12.00mmとした。
【0090】
抵抗調整層の切削条件は、
・バイト:先端ノーズr2mm(曲率半径)の多結晶焼結ダイヤモンドバイトで回転数3000rpm、送り量0.2mm/rev、
・振れ止め部材:材質:鉄鋼。抵抗調整層に対する当接面半径:6.05mm、接触角120度、幅4mmでバイト後方5mmに配置。(図4及び図5参照)
とした結果、図2に示したような、電気抵抗調整層の表面に螺旋状の溝が形成されており、かつ、該螺旋状の溝と隣り合う溝との間に、平坦部が形成されている表面形状(表面粗さ形状)が得られた。このときの溝の最大深さは約3μmで、幅が約0.1μmの平坦部が形成され、詳細な観察にの結果、ばりや糸状切り屑の残留がないことが確認された。
【0091】
このような導電性材料を画像形成装置の帯電ローラとして、感光体の下部に配置したところ、自重により中央部が下方に撓み、そのたわみ量は10μmでなった。そこで、上記でのバイトによる切削加工で、電気抵抗調整層の外径が、中央部から端部に向かって徐々に小さくなっているように加工し、中央部の外径と端部の外径との差を20μmとした導電性材料を画像形成装置の帯電ローラとして、感光体の下部に配置したところ、自重による撓みに起因する帯電ローラと感光体との距離の不均一が解消した。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る導電性部材は、螺旋状の溝が電気抵抗調整層表面に形成された、長尺状の導電性支持体の周囲に、円筒形状の電気抵抗調整層を有し、かつ、該円筒形状の電気抵抗調整層の両端に空間保持部材を有する導電性部材において、螺旋状の溝形成時のばりや糸状の切りくずが電気抵抗調整層表面に残留することによる問題発生のおそれのない、導電性部材であり、及び、このような導電性部材を帯電ローラとして画像形成装置に組み込むことにより高品質の画像形成が可能となるので、電子写真複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の断面図である。
【図2】図1の導電性部材(帯電ローラ)の電気抵抗調整層表面付近の拡大モデル断面図である。
【図3】本発明の導電性部材(帯電性部材、帯電ローラ)10が、像担持体に任意の圧力で当接されて配置される状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)を形成する方法を示す説明図である。
【図5】振れ止めと導電性部材との位置関係を示す部分拡大モデル断面図である。
【図6】振れ止め材が平坦部を形成する状態を示すモデル説明図である。
【図7】(a)通常の帯電ローラを感光体の下方に配した状態を示す説明図である。(b)及び(c)改良された帯電ローラを感光体の下方に配した状態を示す説明図である。
【図8】(a)通常の帯電ローラを感光体の上方に配した状態を示す説明図である。(b)及び(c)改良された帯電ローラを感光体の上方に配した状態を示す説明図である。
【図9】帯電ローラを有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【図10】本発明の画像形成装置を示すモデル図である。
【図11】(a)導電性部材の表面付近の部分拡大モデル断面図である。(b)従来の導電性部材の表面付近の部分拡大モデル断面図である。
【符号の説明】
【0094】
201 長尺状の導電性支持体
202 電気抵抗調整層
204 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の周囲に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材において、
前記電気抵抗調整層の表面に螺旋状の溝が形成されており、かつ、該螺旋状の溝と隣り合う溝との間に、平坦部が形成されていることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
電気抵抗調整層の外径が、中央部から端部に向かって徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
電気抵抗調整層の外径が、前記円筒形状の中央部から端部に向かって徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項4】
上記導電性部材が帯電性部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電性部材。
【請求項5】
長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の周囲に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材の製造方法において、上記電気抵抗調整層表面を切削して螺旋状の溝を形成する切削加工工程と、該切削加工工程により形成された尾根線部を平坦にする溝間平坦部を形成する溝間平坦部形成工程とを有することを特徴とする導電性部材の製造方法。
【請求項6】
長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の周囲に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材の製造方法において、上記電気抵抗調整層表面を切削して螺旋状の溝を形成する切削加工工程と、該切削加工によって生じたばり・切削屑を除去するばり・切削屑除去工程とを有することを特徴とする導電性部材の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の導電性部材を帯電性部材として有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−47322(P2007−47322A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229950(P2005−229950)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】