説明

導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置

【課題】像担持体との間に高精度に形成された空隙の変動確実に防止し、導電性支持体に設けられた固定溝に対する空隙保持部材の胴部の位置決めを容易に行うことができる導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性部材において、(イ)導電性支持体1が、その両端近傍に、周方向に設けられた連続または不連続の固定溝1aを有し、(ロ)電気抵抗調整層2が、その両端近傍に、その両端方向に設けられた段差部を1段以上有し、そして、(ハ)前記空隙保持部材5が、前記段差に対応するように設けられた該空隙保持部材のリング状部3の側面3a及び内面3並びに胴部4の内面4aと、前記電気抵抗調整層2の段差部を構成する面2a,2b,2cと、にそれぞれ接すると共に、該空隙保持部材5の胴部4の中央に設けられた前記導電性支持体1の挿入孔を形成する面4bと前記固定溝1aの底面とに接して、固定されているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において用いられる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材、及び、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。図9は、従来の帯電部材(帯電ローラ)を有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【0003】
図9において、300は、従来の電子写真方式の画像形成装置である。従来の電子写真方式の画像形成装置300は、静電潜像が形成される像担持体211、像担持体211に接触して帯電処理を行う帯電ローラ212、レーザ光等の露光手段213、像担持体211の静電潜像にトナー215を付着させるトナー担持体(現像ローラ)214を有する現像装置220、像担持体211上のトナー像を記録媒体217に転写処理する転写部材(転写ローラ)216、及び、転写処理後の像担持体211をクリーニングするクリーニング部材(クリーニングブレード)218を有するクリーニング装置221から構成されている。図9において、219は、排トナーである。
【0004】
次に、従来の電子写真方式の画像形成装置300の基本的な作像動作について説明する。
【0005】
像担持体211に接触された帯電ローラ212に対してDC電圧をパワーパック(図示せず)から給電すると、像担持体211の表面は、一様に高電位に帯電する。その直後に、画像光が像担持体211の表面に露光手段213により照射されると、像担持体211の照射された部分は、その電位が低下する。このような帯電ローラ212による像担持体211の表面への帯電メカニズムは、帯電ローラ212と像担持体211との間の微少空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。
【0006】
画像光は、画像の白/黒に応じた光量の分布であるので、かかる画像光が照射されると、画像光の照射によって像担持体211の面に記録画像に対応する電位分布、即ち、静電潜像が形成される。このように静電潜像が形成された像担持体211の部分が現像ローラ214を通過すると、その電位の高低に応じてトナー215が付着し、静電画像を可視像化したトナー像が形成される。かかるトナー像が形成された像担持体211の部分に、記録媒体217が所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により搬送され、前記トナー像に重なる。そして、このトナー像が転写ローラ216によって記録媒体217に転写された後、該記録媒体217は、像担持体211から分離される。分離された記録媒体217は、搬送経路を通って搬送され、定着ユニット(図示せず)によって、加熱定着された後、機外へ排出される。このようにして転写が終了すると、像担持体211は、その表面がクリーニング装置221におけるクリーニングブレード218によりクリーニング処理され、さらに、クエンチングランプ(図示せず)により、残留電荷が除去されて、次回の作像処理に備えられる。
【0007】
従来の帯電ローラを用いた帯電方式には、像担持体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式のもの(特許文献1,2を参照。)があるが、このような従来の接触帯電方式には、
(1)帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、これが被帯電体の表面に付着移行して帯電ローラ跡を残すこと、
(2)帯電ローラに交流電圧を印加したときに、被帯電体に接触している帯電ローラが振動するので、帯電音が発生すること、
(3)像担持体上のトナーが帯電ローラに付着する(特に、上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる。)ので、帯電ローラの帯電性能が低下すること、
(4)帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、
(5)像担持体を長期停止したときに、帯電ローラが永久変形すること、
といった問題があった。
【0008】
このような問題を解決する技術として、帯電ローラを像担持体に近接させるようにした近接帯電方式による帯電装置(特許文献3,4を参照。)が提案されている。この近接帯電方式による帯電装置は、帯電ローラを像担持体に最近接距離(50〜300μm)になるように対向させて、帯電ローラに電圧を印加することにより、像担持体の帯電を行うようにしたものである。この近接帯電方式による帯電装置では、ローラと像担持体とが接触していないので、従来の接触帯電方式による帯電装置において問題となっていた、帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、像担持体が長期停止したときに永久変形すること、といった問題はない。また、この近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるので、像担持体上のトナー等が帯電ローラに付着することが少ない。したがって、近接帯電方式による帯電装置は、優れた帯電装置といえる。
【0009】
前記特許文献3,4に記載された近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラと像担持体との間に空隙を保持するために、スペーサリングが帯電ローラの両端部に設けられている。しかしながら、これらの近接帯電方式による帯電装置では、空隙を精密に設定する工夫がなされていないので、帯電ローラ及びスペーサリングの寸法精度がばらつくことによって空隙が変動し、そのために、像担持体の帯電電位が均一にならずに変動するという問題があった。
【0010】
かかる問題を解決するために、所定の厚みを持ったテープ状の空隙保持手段を備えた帯電装置(特許文献5を参照。)が提案されたが、このテープ状の空隙保持手段を備えた帯電装置では、これを長期間にわたって使用すると、テープ状の空隙保持手段が磨耗するという問題があった。そのうえ、トナーが帯電ローラとテープ状の空隙保持手段との間に進入し、テープ状の空隙保持手段からはみ出した粘着剤によって固着するので、像担持体の表面と帯電ローラの表面との間に空隙を保持できないという問題もあった。
【0011】
図10は、本発明者らにより提案されている帯電部材(帯電ローラ)の断面図である。そこで、本発明者らは、図10に示されているように、導電性支持体301と、該導電性支持体301上に形成された電気抵抗調整層302と、該電気抵抗調整層302の両端に形成されたスペース部材303,303と、を有する帯電部材310において、前記スペース部材303,303が、(イ)デュロメータ硬さ:HDD30〜HDD70、及び、(ロ)テーバー式磨耗試験機の磨耗質量:10mg/1000サイクル以下、を満たす熱可塑性樹脂で構成されている帯電部材310を提案した(特許文献6を参照。)。
【0012】
前記帯電部材310においては、電気抵抗調整層302の両端部にスペース部材(空隙保持部材)303を圧入する構成になっている。この帯電部材310においては、電気抵抗調整層302の端部にスペース部材303が形成され、スペース部材303は、電気抵抗調整層302の端面及び導電性支持体301と接している。このことにより、テープ状の空隙保持部材より長期の信頼性が向上した。また、最近では、電気抵抗調整層302とスペース部材(空隙保持部材)303とを同時加工(除去加工)を行うことにより、空隙を精密に制御することが可能となった。
【0013】
この帯電部材310においては、トナー固着性を考慮して、スペース部材(空隙保持部材)303と電気抵抗調整層302とは、異なった材質で構成されているが、イオン導電剤が電気抵抗調整層302の電気抵抗調整剤として使用されているので、電気抵抗調整層302の吸水性が高くなり、そのために、電気抵抗調整層302が高温高湿時に吸湿して、電気抵抗調整層302の寸法変動が発生するという問題があった。そして、この帯電部材310におけるスペース部材(空隙保持部材)303は、オレフィン系樹脂で構成されているので、その絶縁性及び耐トナー固着性が向上するが、電気抵抗調整層302に比べ高温高湿時の寸法変動量が小さいので、帯電部材310と像担持体(図5における61を参照。)との間に高精度に形成された空隙(図5におけるGを参照。)が環境変動で変動するといった問題があった。
【0014】
図11は、本発明者らにより提案されている他の帯電部材(帯電ローラ)の断面図である。前記した問題を解決するために、本発明者らは、図11に示すように、導電性支持体401と、該導電性支持体401上に形成された電気抵抗調整層402と、該電気抵抗調整層402の両端に設けられた空隙保持部材405と、を有する導電性部材410であって、該導電性部材401が、該電気抵抗調整層402及び/又は該空隙保持部材405に面する該導電性支持体401の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝401aと、該固定溝401aに入り込ませるように該電気抵抗調整層402及び/又は該空隙保持部材405の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条402aと、を有する導電性部材410を提案した(特許文献7を参照。)。
【0015】
この空隙保持部材405においては、その内表面に周方向の凸条402aが設けられているので、この凸条402aが固定溝401aに入り込み、そのために電気抵抗調整層402の寸法変動により発生する空隙保持部材405の軸方向への移動が防止され、よって、前記環境変動による空隙Gの変動はかなり改善された。しかしながら、その空隙保持部材405における凸条402aが設けられている部分と設けられていない部分とでは、残留応力による収縮量が異なるので、その分だけ像担持体と接する空隙保持部材405の面の形状が不均一となり、そのために、前記環境変動による空隙の変動は多少残るといった問題があった。また、この空隙保持部材405に設けられた凸条402aを前記固定溝401aにはめ込むために位置決めすることが難しく、しかも、前記導電性支持体401の固定溝401aにはめ込まれたことを確認することも難しいので、該凸条402aを該固定溝401aにはめ込むことに熟練を要するという問題があった。
【0016】
図12は、本発明者らにより提案されている他の帯電部材(帯電ローラ)の断面図である。また、本発明者らは、図12に示すように、長尺状の導電性支持体501と、該導電性支持体501上に形成された電気抵抗調整層502と、該電気抵抗調整層502の両端に設けられたキャップ状の空隙保持部材505と、を有する導電性部材510であって、(イ)前記電気抵抗調整層502が、その両端近傍に、その両端方向に設けられた段差部を1段以上有し、(ロ)前記空隙保持部材505が、前記電気抵抗調整層502の両端と該電気抵抗調整層502の段差部を構成する2面以上に接して固定され、そして、(ハ)前記空隙保持部材505の外周面が像担持体(図5における61を参照。)と当接したときに、該像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層502の外周面との間に一定間隔の空隙(図5におけるGを参照。)が形成されるように、該空隙保持部材505の外周面に、該電気抵抗調整層502の外周面に対する高低差が設けられている導電性部材510を提案した(特許文献8を参照。)。
【0017】
この空隙保持部材505においては、空隙保持部材505の表面に施される除去加工の時に発生する端部剥がれ、むしれ等による空隙保持部材505の形状の変形を防止して異常放電を発生させることなく像担持体の表面を均一に帯電させる導電性部材510とすることができるが、前記特許文献6に記載された発明と同様に、導電性部材510と像担持体(図5における61を参照。)との間に高精度に形成された空隙(図5におけるGを参照。)が、環境変動により発生する電気抵抗調整層502の寸法変動により生じる空隙保持部材501の軸方向への移動によって、変動するという問題があった。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−267667号公報
【特許文献3】特開平3−240076号公報
【特許文献4】特開平4−358175号公報
【特許文献5】特開2002−139893号公報
【特許文献6】特開2004−354477号公報
【特許文献7】特開2006−78967号公報
【特許文献8】特開2006−330483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0019】
本発明は、初期及び長期にわたって使用しても、像担持体との間に高精度に形成された空隙の変動をいっそう確実に防止することができると共に、導電性支持体に設けられた固定溝に対する空隙保持部材の胴部の位置決めを容易に行うことができ、しかも、前記固定溝に前記空隙保持部材の胴部をはめ込んだことを視認して確認することができる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端部に設けられたキャップ状の空隙保持部材と、を有する導電性部材において、
(イ)前記導電性支持体が、その両端近傍に、周方向に設けられた連続または不連続の固定溝を有し、
(ロ)前記電気抵抗調整層が、その両端近傍に、その両端方向に設けられた段差部を1段以上有し、
(ハ)前記空隙保持部材が、前記段差に対応するように設けられた該空隙保持部材のリング状部の側面及び内面並びに胴部の内面と、前記電気抵抗調整層の段差部を構成する面と、にそれぞれ接すると共に、該空隙保持部材の胴部の中央に設けられた前記導電性支持体の挿入孔を形成する面と前記固定溝の底面とに接して、固定され、そして、
(ニ)前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、該電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている
ことを特徴とする導電性部材である。
【0021】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記空隙保持部材のリング状部が、前記電気抵抗調整層の段差部に圧入されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記空隙保持部材が、前記電気抵抗調整層及び/又は前記導電性支持体に接着剤で固着されていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、前記空隙保持部材が、該空隙保持部材に施されたプライマーを介して、前記電気抵抗調整層及び/又は前記導電性支持体に接着剤で固定されていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記空隙保持部材の少なくとも像担持体と当接する部分が、電気絶縁性樹脂材料で構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載された発明において、前記空隙保持部材の体積固有抵抗が、1013Ω・cm以上であることを特徴とするものである。
【0026】
請求項7に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載された発明において、前記電気抵抗調整層の体積固有抵抗が、106 〜109 Ωcmであることを特徴とするものである。
【0027】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載された発明において、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と前記導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項9に記載された発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載された発明において、前記電気抵抗調整層上に表面層が形成されていることを特徴とするものである。
【0029】
請求項10に記載された発明は、請求項9に記載された発明において、前記表面層の体積固有抵抗が、前記電気抵抗調整層の体積固有抵抗より大きいことを特徴とするものである。
【0030】
請求項11に記載された発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載された発明において、前記導電性部材が円筒形状にされていることを特徴とするものである。
【0031】
請求項12に記載された発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載された発明において、前記導電性部材を帯電部材としたことを特徴とするものである。
【0032】
請求項13に記載された発明は、請求項12に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置さて設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0033】
請求項14に記載された発明は、請求項13に記載のプロセスカートリッジを有していることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0034】
請求項1に記載された発明によれば、(イ)前記導電性支持体が、その両端近傍に、周方向に設けられた連続または不連続の固定溝を有し、(ロ)前記電気抵抗調整層が、その両端近傍に、その両端方向に設けられた段差部を1段以上有し、(ハ)前記空隙保持部材が、前記段差に対応するように設けられた該空隙保持部材のリング状部の側面及び内面並びに胴部の内面と、前記電気抵抗調整層の段差部を構成する面と、にそれぞれ接すると共に、該空隙保持部材の胴部の中央に設けられた前記導電性支持体の挿入孔を形成する面と前記固定溝の底面とに接して、固定され、そして、(ニ)前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、該電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられているので、初期及び長期にわたって使用しても、像担持体との間に高精度に形成された空隙の変動をいっそう確実に防止することができると共に、導電性支持体に設けられた固定溝に対する空隙保持部材の胴部の位置決めを容易に行うことができ、しかも、前記固定溝に前記空隙保持部材の胴部をはめ込んだことを視認して確認することができる導電性部材を提供することができる。また、請求項1に記載された発明によれば、前記空隙保持部材の胴部の中央に設けられた前記導電性支持体の挿入孔を形成する面と前記固定溝の底面とに接して固定されているので、耐トルク性が従来のものに比べていっそう向上して、位相ズレに強いものとなる。
【0035】
請求項2に記載された発明によれば、前記空隙保持部材のリング状部が前記電気抵抗調整層の段差部に圧入されているので、該段差部と該空隙保持部材との接触精度が多少悪くなっても、樹脂同士の保持力により長期にわたって該空隙保持部材を固定することができ、しかも、該電気抵抗調整層と該空隙保持部材とを一体で除去加工する場合には、加工時の力により、該空隙保持部材が回転することを防止することができる。
【0036】
請求項3に記載された発明によれば、前記空隙保持部材が、前記電気抵抗調整層及び/又は前記導電性支持体に接着剤で固着されているので、前記段差部と前記空隙保持部材との精度が多少悪くなっても、樹脂同士の保持力と接着剤の接着力とにより長期にわたって該空隙保持部材を確実に固定して該空隙保持部材が脱離することを防止することができ、しかも、該電気抵抗調整層と該空隙保持部材とを一体で除去加工する場合には、加工時の力により、該空隙保持部材が回転することを防止することができる。
【0037】
請求項4に記載された発明によれば、前記空隙保持部材が、該空隙保持部材に施されたプライマーを介して、前記電気抵抗調整層及び/又は前記導電性支持体に接着剤で固定されているので、極性部分と非極性部分を持つプライマー有効成分が空隙保持部材に浸透、配向することにより接着面の表面改質が起こり、そのために、前記段差部と前記空隙保持部材との精度が多少悪くなっても、樹脂同士の保持力とプリマーを介してより強固にされた接着剤の接着力とにより長期にわたって該空隙保持部材をいっそう確実に固定することができ、しかも、該電気抵抗調整層と空隙保持部材とを一体で除去加工する場合には、加工時の力により、該空隙保持部材が回転することを防止することができる。
【0038】
請求項5,6に記載された発明によれば、前記空隙保持部材の少なくとも像担持体と当接する部分が電気絶縁性樹脂材料で構成されているので、前記導電性部材に高電圧を印加したときに、前記空隙保持部材と像担持体の基層との間に異常放電(リーク)電流が発生するのを防止することができる。
【0039】
請求項7に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層の体積固有抵抗が106 〜109 Ωcmであるので、十分な帯電能力及び転写能力を確保することができると共に、像担持体への電力集中による異常放電の発生を防止することができ、それらのために、均一画像が得られる。
【0040】
請求項8に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と前記導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されているので、該空隙保持部材と該電気抵抗調整層との高低差の形成を一体加工で行うことができ、そのために、像担持体の外周面と電気抵抗調整層の外周面との間に形成される空隙Gの変動(振れ)を小さくして空隙Gの精度をより高めることができる。
【0041】
請求項9に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層上に表面層が形成されているので、トナー、及び、トナーに添加されている添加剤が長期にわたって導電性部材表面に付着することを防止することができる。
【0042】
請求項10に記載された発明によれば、前記表面層の体積固有抵抗が前記電気抵抗調整層の体積固有抵抗より大きいので、像担持体欠陥部への電圧集中及び異常放電の発生を防止することができる。
【0043】
請求項11に記載された発明によれば、前記導電性部材が円筒形状にされているので、該導電性部材を回転することができ、そのために、同一箇所から連続放電を防止して長寿命化を図ることができる。
【0044】
請求項12に記載された発明によれば、前記導電性部材を帯電部材としたので、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0045】
請求項13に記載された発明によれば、請求項12に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されて設けられたプロセスカートリッジとしたので、長期にわたって安定した画質を得ることができ、且つ、交換もユーザーメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0046】
請求項14に記載された発明によれば、請求項13に記載のプロセスカートリッジを有している画像形成装置としたので、高画質を得ることができると共に、長期にわたって安定した画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0048】
図1は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の縦断面図である。図2は、図1で示される導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図であって、(a)は、その端部の一部拡大縦断面図であり、(b)は、それを構成する電気伝導調整層の一部拡大縦断面図であり、そして、(c)は、それを構成する空隙保持部材の一部拡大横断面図である。図3は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における電気抵抗調整層と空隙保持部材との取り付け工程を示す説明図である。図4は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における電気抵抗調整層と空隙保持部材とに除去加工を施す状態を示す説明図である。図5は、導電性部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。図6は、本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の説明図である。図7は、図6に示される像形成装置における画像形成部の説明図である。図8は、本発明の一実施の形態を示すプロセスカートリッジの説明図である。
【0049】
図1において、10は、導電性部材(帯電性ローラ)である。導電性部材10は、長尺状の導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層2と、該電気抵抗調整層2の両端部に設けられたキャップ状の空隙保持部材5と、を有している。図2,5に示されているように、前記導電性部材10においては、(イ)前記導電性支持体1が、その両端近傍に、周方向に設けられた連続または不連続の固定溝1aを有し、(ロ)前記電気抵抗調整層2が、その両端近傍に、その両端方向に設けられた段差部を1段以上有し、(ハ)前記空隙保持部材5が、前記段差に対応するように設けられた該空隙保持部材5のリング状部3の側面3a及び内面3b並びに胴部4の内面4aと、前記電気抵抗調整層2の段差部を構成する面2a,2b,2cと、にそれぞれ接すると共に、該空隙保持部材5の胴部4の中央に設けられた前記導電性支持体1の挿入孔6を形成する面4bと前記固定溝1aの底面とに接して、固定され、そして、(ニ)前記空隙保持部材5の外周面が像担持体61と当接したときに、該像担持体61の外周面と前記電気抵抗調整層2の外周面との間に一定間隔の空隙Gが形成されるように、該電気抵抗調整層2の外周面に対して高低差が設けられている。
【0050】
このように、(イ)前記導電性支持体1が、その両端近傍に、周方向に設けられた連続または不連続の固定溝1aを有し、(ロ)前記電気抵抗調整層2が、その両端近傍に、その両端方向に設けられた段差部を1段以上有し、(ハ)前記空隙保持部材5が、前記段差に対応するように設けられた該空隙保持部材5のリング状部3の側面3a及び内面3b並びに胴部4の内面4aと、前記電気抵抗調整層2の段差部を構成する面2a,2b,2cと、にそれぞれ接すると共に、該空隙保持部材5の胴部4の中央に設けられた前記導電性支持体1の挿入孔6を形成する面4bと前記固定溝1aの底面とに接して、固定され、そして、(ニ)前記空隙保持部材5の外周面が像担持体61と当接したときに、該像担持体61の外周面と前記電気抵抗調整層2の外周面との間に一定間隔の空隙Gが形成されるように、該電気抵抗調整層2の外周面に対して高低差が設けられていると、初期及び長期にわたって使用しても、像担持体61との間に高精度に形成された空隙Gの変動をいっそう確実に防止することができると共に、導電性支持体1に設けられた固定溝1aに対する空隙保持部材5の胴部4の位置決めを容易に行うことができ、しかも、前記固定溝1aに前記空隙保持部材5の胴部4をはめ込んだことを視認して確認することができる導電性部材10を提供することができる。また、前記空隙保持部材5の胴部4の中央に設けられた前記導電性支持体1の挿入孔6を形成する面4bと前記固定溝1aの底面とに接して固定されているので、耐トルク性が従来のものに比べていっそう向上して、位相ズレに強いものとなる。
【0051】
本発明においては、前記空隙保持部材5のリング状部3は、前記電気抵抗調整層2の段差部に圧入されている。このように、前記空隙保持部材5のリング状部3が前記電気抵抗調整層2の段差部に圧入されていると、該段差部と該空隙保持部材5との接触精度が多少悪くなっても、樹脂同士の保持力により長期にわたって該空隙保持部材5を固定することができ、しかも、該電気抵抗調整層2と該空隙保持部材5とを一体で除去加工する場合には、加工時の力により、該空隙保持部材5が回転することを防止することができる(図4を参照。)。
【0052】
前記空隙保持部材5は、好ましくは、前記電気抵抗調整層2及び/又は前記導電性支持体1に接着剤で固着されている。このように、前記空隙保持部材5が前記電気抵抗調整層2及び/又は前記導電性支持体1に接着剤で固着されていると、前記段差部と前記空隙保持部材5との精度が多少悪くなっても、樹脂同士の保持力と接着剤の接着力とにより長期にわたって該空隙保持部材5を確実に固定して該空隙保持部材5が脱離することを防止することができ、しかも、該電気抵抗調整層2と該空隙保持部材5とを一体で除去加工する場合には、加工時の力により、該空隙保持部材5が回転することを防止することができる。
【0053】
前記空隙保持部材5は、好ましくは、該空隙保持部材5に施されたプライマーを介して、前記電気抵抗調整層2及び/又は前記導電性支持体1に接着剤で固定されている。このように、前記空隙保持部材5が、該空隙保持部材5に施されたプライマーを介して、前記電気抵抗調整層2及び/又は前記導電性支持体1に接着剤で固定されていると、極性部分と非極性部分を持つプライマー有効成分が空隙保持部材5に浸透、配向することにより接着面の表面改質が起こり、そのために、前記段差部と前記空隙保持部材5との精度が多少悪くなっても、樹脂同士の保持力とプリマーを介してより強固にされた接着剤の接着力とにより長期にわたって空隙保持部材5をいっそう確実に固定することができ、しかも、該電気抵抗調整層2と該空隙保持部材5とを一体で除去加工する場合には、加工時の力により、該空隙保持部材5が回転することを防止することができる。
【0054】
前記空隙保持部材5の少なくとも像担持体61と当接する部分は、電気絶縁性樹脂材料で構成されている。前記空隙保持部材5の体積固有抵抗は、好ましくは、1013Ω・cm以上である。このように、前記空隙保持部材5の少なくとも像担持体61と当接する部分が電気絶縁性樹脂材料で構成されていると、導電性部材10に高電圧を印加したときに、該空隙保持部材5と像担持体61の基層との間に異常放電(リーク)電流が発生するのを防止することができる。
【0055】
前記空隙保持部材5の必要な特性は、前記像担持体61との間の微少な空隙Gを環境及び長期(経時)に渡って安定して形成することであるので、前記空隙保持部材5を構成する材料は、吸湿性及び耐摩耗性が小さいものが好ましい。また、前記空隙保持部材5を構成する材料は、トナー及びトナー添加剤が付着しにくいものであることが好ましい。さらに、前記空隙保持部材5を構成する材料は、像担持体61と当接して摺動するので、像担持体61を摩耗させないということも重要である。したがって、前記空隙保持部材5を構成する材料には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)及びその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ウレタン、フッ素(PTFE)があげられる。前記空隙保持部材5は、絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で1013Ω・cm以上であることが好ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体とのリーク電流の発生を無くすためである。空隙保持部材5は、成型加工により成形されたものである。
【0056】
前記電気抵抗調整層2は、高分子型イオン導電材料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成されている。前記高分子型イオン導電材料として、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であるので、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う電気抵抗値のばらつきが生じない。また、ポリエーテルエステルアミドは、高分子材料であるので、ブリードアウトが生じ難いポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、感光体へのリークが起こり難く、また表面へのブリードアウトが生じ難い。
【0057】
前記電気抵抗調整層2の体積固有抵抗は、109 Ωcmを越えると帯電量の不足により、均一画像を得る為の十分な帯電電位を得ることができなくなり、また、106 未満であると、像担持体61の欠陥部への電圧集中(リーク)、異常放電が生じてしまう。それ故、本発明においては、前記電気抵抗調整層2の体積固有抵抗は、好ましくは、106 〜109 Ωcmである。このように、前記電気抵抗調整層2の体積固有抵抗が106 〜109 Ωcmであると、十分な帯電能力及び転写能力を確保することができると共に、像担持体への電力集中による異常放電の発生を防止することができ、それらのために、均一画像が得られる。
【0058】
本発明においては、前記電気抵抗調整層2を構成する材料は、絶縁性の熱可塑性樹脂と高分子型イオン導電材料とのブレンドしてもよい。前記熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンおよびその共重合体等の汎用樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチック等があげられる。その配合量については、熱可塑性樹脂が0〜70重量%に対し、高分子型イオン導電材料が30〜100重量%とすることで所望の体積抵抗率を得ることができる。更に、抵抗値を調整するために、電解質(塩)を添加することも可能である。塩としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩が挙げられる。導電剤は物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。導電材料をマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散させるために、相溶化剤として、高分子型イオン導電材料及び熱可塑性樹脂組成物の双方に親和性を有するグラフトコポリマーを用いることも可能である。
【0059】
前記電気抵抗調整層の厚みは、薄すぎるとリークによる異常放電が発生し、また、厚すぎると表面精度の維持が困難となるので、好ましくは、100〜500μm以下である。
【0060】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法には、特に制限は無く、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。前記電気抵抗調整層2を導電性支持体1の周面部に形成する工程は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体1に上記熱可塑性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。押出成形により形成した円筒状の熱可塑性組成物を、導電性支持体1に圧入する方法によれば、高精度かつ薄肉の電気抵抗調整層2を容易に得ることができる。
【0061】
図1に示すように、本発明の導電性部材(帯電部材)10は、導電性支持体1上に形成された、電気抵抗調整層2の両端に、キャップ状の空隙保持部材5を配置している。この帯電部材10の形状は、好ましくは、円柱状であるが、本発明の目的に反しない限り、ベルト状、ブレード(板)状、半円柱状であってもかまわない。本発明の導電性部材(帯電部材)10は、その両端をギア又は軸受で回転可能に支持されていても良い。このように、帯電部材101は、像担持体61への最近接部から、像担持体61移動方向の上下流に漸次離間する曲面で形成されていると、像担持体61をより均一に帯電させることができる。像担持体61に対向する帯電部材10が、先鋭な部分があると、その部分の電位が高くなるために優先的に放電が開始され、像担持体61の均一な帯電が困難になる。それ故、前記導電性部材(帯電部材)10は、円柱状の形状であって、曲面を有するものとすることにより、均一な像担持体61の帯電が可能になる。また、帯電部材10の放電している表面は強いストレスを受ける。放電が常に同じ面で発生するので、その劣化が促進され、さらに、削り落ちることがある。そのために、帯電部材101の全面を放電する面として使用できるのであれば、回転させることで、早期の劣化を防止することで、長期にわたって使用することができる。
【0062】
本発明の導電性部材(帯電部材)10においては、導電性支持体1の両端近傍に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝1aが設けられ、電気抵抗調整層2の両端近傍に両端方向に設けられた段差部が1段以上設けられ、そして、キャップ状の空隙保持部材5が導電性支持体1の固定溝1aと電気抵抗調整層2の段差部を構成する2面以上(図2では、2a,2b,2c)に接して固定されている。この固定された空隙保持部材5が、導電性支持体1と電気抵抗調整層2の軸方向の位置ずれを抑止する効果があり、環境や経時において形状変動の少ない導電性部材とすることができる。さらに、電気抵抗調整層2の環境変動による半径方向の寸法変化に対しても、空隙保持部材5の外周面が追従し変化することで、空隙変動を抑止することが可能である。
【0063】
図3〜4に示されているように、本発明の導電性部材(帯電部材)10は、予め任意の形状に形成された空隙保持部材5を両端近傍に段差部を有する電気抵抗調整層2の両端部に挿入して、導電性支持体1の固定溝1aと電気抵抗調整層2の段差部を構成する2面以上(図2では、2a,2b,2c)に接触固定する。この際、前記空隙保持部材5は、前記固定溝1aに嵌合する。次いで、切削加工等の除去加工をバイト等を用いて、空隙保持部材5、電気抵抗調整層2と連続して行うことで、高低差を形成する。その結果、高低差のばらつきを±10μ以下の高精度にすることが可能である。
【0064】
本発明においては、前記電気抵抗調整層2の外周面に対する前記空隙保持部材5の外周面の高低差は、前記導電性支持体1上に設置された該空隙保持部材5の外周面と前記導電性支持体1上に設置された該電気抵抗調整層2の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されている。このように、前記電気抵抗調整層2の外周面に対する前記空隙保持部材5の外周面の高低差が、前記導電性支持体1上に設置された該空隙保持部材5の外周面と前記導電性支持体1上に設置された該電気抵抗調整層2の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていると、該空隙保持部材5と該電気抵抗調整層2との高低差の形成を一体加工で行うことができ、そのために、像担持体61の外周面と電気抵抗調整層2の外周面との間に形成される空隙Gの変動(振れ)を小さくして空隙Gの精度をより高めることができる。
【0065】
前記空隙保持部材5の電気抵抗調整層2と隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層2の高さと同一又は低く形成することで、空隙保持部材5と像担持体61との接触幅が低減され、導電性部材(帯電性部材)10と像担持体61との間の微少な空隙Gを高精度にすることができる。また、空隙保持部材5の電気抵抗調整層2側の端部の外表面が像担持体61に当接することを防止することができ、この端部を介して隣接する電気抵抗調整層2が像担持体61に接触してリーク電流が発生してしまうことを防止することが可能となる。また、空隙保持部材5の電気抵抗調整層2側の端部を低く加工することによって、この部分を、除去加工を行う際の切削刃等の逃げ代(逃げ加工)とすることができる。なお、逃げ代(逃げ加工)の形状は、空隙保持部材5の端部の外表面が像担持体61に当接しないような形状であるならばどのような形状であっても良い。
【0066】
前記空隙保持部材5は、電気抵抗調整層2の両端段差部の外周面から端部側面を覆うように設置できるような形状をしているので、除去加工時の刃具の応力による空隙保持部材5の端部剥がれ、むしれ等が発生しにくく、空隙保持部材5の表面形状の変形、それに伴う空隙変動を抑止することができる。
【0067】
導電性支持体1上に電気抵抗調整層2のみを形成して導電性ローラ10を構成すると、電気抵抗調整層2にトナー等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層2に表面層(図示せず)を形成することで、無くすことができる。本発明においては、表面層の体積固有抵抗は、好ましくは、電気抵抗調整層2の体積固有抵抗より大きくされている。このように、表面層の体積固有抵抗が電気抵抗調整層2の体積固有抵抗より大きくされていると、感光体欠陥部への電圧集中及び異常放電の発生を防止することができる。ただし、表面層の電気抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうので、表面層と電気抵抗調整層2との電気抵抗値の差を103 以下にすることが好ましい。表面層を形成する材料は、好ましくは、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル等の樹脂である。これらの樹脂は、非粘着性に優れているので、トナーの固着防止の面で好ましい。また、かかる樹脂は、電気的に絶縁性であるので、樹脂に対して各種導電材料を分散することによって表面層の電気抵抗を調整することができる。表面層の電気抵抗調整層2,12上への形成は、上記表面層を構成する樹脂材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、この塗料をスプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の手段によって行う。表面層の膜厚は、好ましくは、10〜30μmである。
【0068】
本発明においては、前記導電性部材10は、円筒形状にされている。このように、前記導電性部材10が円筒形状にされていると、該導電性部材10を回転することができ、そのために、同一箇所から連続放電を防止して長寿命化を図ることができる。
【0069】
本発明においては、前記導電性部材10を帯電部材とする。このように、前記導電性部材10を帯電部材とすると、像担持体61の表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0070】
本発明においては、請求項12に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されて設けられているプロセスカートリッジとする。このように、請求項12に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されて設けられているプロセスカートリッジとすると、長期にわたって安定した画質を得ることができ、且つ、交換もユーザーメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0071】
図8に示されているように、本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも、像担持体61と帯電装置100、及び、クリーニング装置64を含むものであるが、現像装置63が含まれていてもよい。プロセスカートリッジは、それ自体が一体で画像形成装置に着脱自由なものである。本発明のプロセスカートリッジにおいては、像担持体61の表面は画像形成領域が非接触で配置された帯電部材10により一様に帯電され、潜像画像が形成された後に、その潜像画像がトナーによる現像によって可視化されてトナー像とされ、そして、その可視化されたトナー像が記録媒体に転写される。記録媒体に転写されずに像担持体61上に残ったトナーは、補助クリーニング部材64dによって回収される。次に、像担持体61の表面へのトナー及びトナー構成材料の付着を防止するために、固体潤滑剤64aを塗布部材64bで像担持体61上に一様に塗布し滑剤層を形成する。その後、クリーニング部材64cで回収しきれなかったトナーを補助クリーニング部材64dで回収し排トナー回収部へ搬送する。補助クリーニング部材64dは、ローラ形状、ブラシ形状があり、固体潤滑剤64aとしては、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、ポリテトラフルオロエチレン等、像担持体61上の摩擦係数を低減して、非粘着性を付与できるものであれば良い。クリーニング部材はシリコン、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等が挙げられる。
【0072】
前記帯電装置100は、帯電部材10の汚染を除去するためのクリーニング部材102を備える。クリーニング部材102の形状は、ローラ状、パッド形状でもよいが、本発明ではローラ形状とした。クリーニング部材102は、帯電装置100の図示しないハウジングに設けられる軸受に嵌合され、回転可能に軸支される。このクリーニング部材102は、帯電部材10に当接して、外周面をクリーニングする。帯電部材10の表面にトナー、紙粉、部材の破損物等の異物が付着すると、電界が異物部分に集中するために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。逆に、電気的絶縁性の異物が広い範囲に付着すると、その部分では放電が生じないために、像担持体61に帯電斑が生ずる。このために、帯電装置100には帯電部材10の表面をクリーニングするクリーニング部材102を設けることが好ましい。クリーニング部材102としては、ポリエステル等の繊維によるブラシ、メラミン樹脂等の多孔質(スポンジ)のようなものを用いることができる。クリーニング部材102は、帯電部材10に連れ回り、線速差を持って回転、離間して間欠等の形式で回転させても良い。
【0073】
また、帯電装置100は、帯電部材10に電圧を印加する電源を備える。電圧としては、直流電圧だけでも良いが、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧が好ましい。帯電部材10の層構成が不均一な部分がある場合には、直流電圧のみを印加すると像担持体61の表面電位が不均一になることがある。重畳した電圧では、帯電部材10表面が等電位となり、放電が安定して像担持体61を均一に帯電させることができる。重畳する電圧における交流電圧は、ピ−ク間電圧を像担持体61の帯電開始電圧の2倍以上にすることが好ましい。帯電開始電圧とは、帯電部材10に直流のみを印加した場合に像担持体61が帯電され始めるときの電圧の絶対値である。これにより、像担持体61から帯電部材10への逆放電が生じ、そのならし効果で像担持体61をより安定した状態で均一に帯電させることができる。また、交流電圧の周波数は像担持体の周速度(プロセススピード)の7倍以上であることが好ましい。7倍以上の周波数にすることにより、モアレ画像が(目視)認識できなくなる。
【0074】
本発明の一実施の形態では、補助クリーニング部材64dはブラシローラとし、滑剤はステアリン酸亜鉛をブロック状に形成したものとして、これらを塗布部材であるブラシローラにバネ等の加圧部材で加圧することにより、塗布ローラで固体潤滑剤ブロックから削り取った固体潤滑剤を像担持体へ塗布するような構成になっている。そして、クリーニング部材102は、ウレタンブレードを用いカウンター方式とし、また、帯電部材10のクリーニング部材は、メラミン樹脂のスポンジローラを用いて、帯電部材10と連れ回りで回転させる方式として、帯電部材10の表面の汚れを良好にクリーニングできるものとなっている。
【0075】
本発明においては、請求項13に記載のプロセスカートリッジ(図8を参照)を有する画像形成装置1とする。このように、請求項13に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置1とすると、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることができる。
【0076】
図6,7に示されているように、本発明の画像形成装置1は、表面に感光体層を有するドラム状であってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応する分の個数分の像担持体61と、各像担持体61をほぼ一様に帯電する帯電装置100と、帯電された像担持体61にレーザ光で露光して静電潜像を形成する露光装置70と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を収容し、像担持体61上の静電潜像に対応するトナー像を形成する現像装置63と、像担持体61上のトナー像を転写する1次転写装置62と、像担持体61上のトナー像が転写されるベルト状の中間転写体50と、中間転写体50のトナー像を転写する2次転写装置51と、中間転写体50のトナー像が転写される記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置80と、さらに、像担持体61上に転写後残留するトナーを除去するクリーニング装置64とを備える。記録媒体は、記録媒体を収納する給紙装置21、22のひとつから、1枚ずつ搬送経路を搬送ローラでレジストローラ23まで搬送され、ここで、像担持体61上のトナー像と同期を計って転写位置に搬送される。
【0077】
画像形成装置1における露光装置70は、帯電装置100により帯電された像担持体61に光を照射して、光導電性を有する像担持体61上に静電潜像を形成する。光Lは、蛍光灯、ハロゲンランプ等のランプ、LED、LD等の半導体素子によるレーザ光線等であっても良い。ここでは、図示しない画像処理部からの信号により像担持体61の回転速度に同期して照射される場合は、LDの素子を用いる。
【0078】
現像装置63は、現像剤担持体を有し、現像装置63内に貯蔵されたトナーを供給ローラで攪拌部に搬送されて、キャリアを含む現像剤と混合・攪拌され、像担持体61に対向する現像領域に搬送される。このときに、正又は負極性に帯電されたトナーは、像担持体61の静電潜像に転移して現像される。現像剤は、磁性又は非磁性の一成分現像剤又はこれらを併せて使用するものであっても良いし、湿式の現像液を用いるものであっても良い。1次転写装置62は、像担持体61上の現像されたトナー像を中間転写体50の裏側からトナーの極性と反対の極性の電場を形成して、中間転写体50に転写する。1次転写装置62は、コロトロン、スコロトロンのコロナ転写器、転写ローラ、転写ブラシのいずれの転写装置であっても良い。その後、給紙装置22から搬送されてくる記録媒体と同期させて、再度2次転写装置51による転写で記録媒体上にトナー像を転写する。ここで、最初の転写が中間転写体50ではなく、記録媒体に直接転写する方式であっても良い。定着装置80は、記録媒体上のトナー像を、加熱及び/又は加圧して記録媒体上にトナー像を固定して定着させる。ここでは、1対の加圧・定着ローラの間を通過させ、このときに熱・圧力をかけて、トナーの結着樹脂を溶融しながら定着させる。定着装置80は、ローラ状ではなく、ベルト状であっても良いし、ハロゲンランプ等で熱照射により定着させるものであっても良い。像担持体61のクリーニング装置64は、転写されずに像担持体61上に残留したトナーをクリーニングして除去し、次の画像形成を可能にする。クリーニング装置64は、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等のいずれの方式であっても良い。
【0079】
以下、本発明の画像形成装置1の動作について説明する。読み取り部30は、原稿搬送部36の原稿台上に原稿をセットするか、又、原稿搬送部36を開いてコンタクトガラス31上に原稿をセットし、原稿搬送部36を閉じて原稿を押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿搬送部36に原稿をセットしたときは原稿をコンタクトガラス31上へと搬送して後、他方コンタクトガラス31上に原稿をセットしたときは直ちに、第1読み取り走行体及び第2読み取り走行体32、33を走行する。そして、第1読み取り走行体32で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2読み取り走行体33に向け、第2読み取り走行体33のミラーで反射して結像レンズ34を通して読取りセンサであるCCD35に入れ、画像情報を読み取る。読み取った画像情報をこの制御部に送る。制御部は、読み取り部30から受け取った画像情報に基づき、画像形成部60の露光装置70内に配設された図示しないLD又はLED等を制御して像担持体61に向けて、書き込みのレーザ光Lを照射させる。この照射により、像担持体61の表面には静電潜像が形成される。
【0080】
給紙部20は、多段に備える給紙カセット21から給紙ローラにより記録媒体を繰り出し、繰り出した記録媒体を分離ローラで分離して給紙路に送り出し、画像形成部60の給紙路に記録媒体を搬送ローラで搬送する。この給紙部20以外に、手差し給紙も可能となっており、手差しのための手差しトレイ、手差しトレイ上の記録媒体を手差し給紙路に向けて一枚ずつ分離する分離ローラも装置側面に備えている。レジストローラ23は、それぞれ給紙カセット21に載置されている記録媒体を1枚だけ排出させ、中間転写体50と2次転写装置51との間に位置する2次転写部に送る。画像形成部60では、読み取り部30から画像情報を受け取ると、上述のようなレーザ書き込みや、現像プロセスを実施させて像担持体61上に潜像を形成させる。現像装置63内の現像剤は、図示しない磁極により汲み上げて保持され、現像剤担持体上に磁気ブラシを形成する。さらに、現像剤担持体に印加する現像バイアス電圧により像担持体61に転移して、その像担持体61上の静電潜像を可視化して、トナー像を形成する。現像バイアス電圧は、交流電圧と直流電圧を重畳させている。次に、トナー像に応じたサイズの記録媒体を給紙させるべく、給紙部20の給紙ローラのうちの1つを作動させる。また、これに伴なって、駆動モータで支持ローラの1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体50を回転搬送する。同時に、個々の画像形成ユニットでその像担持体61を回転して像担持体61上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体50の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体50上に合成トナー像を形成する。
【0081】
一方、給紙部20の給紙ローラの1つを選択回転し、給紙カセット21の1つから記録媒体を繰り出し、分離ローラで1枚ずつ分離して給紙路に入れ、搬送ローラで画像形成装置1の画像形成部60内の給紙路に導き、この記録媒体をレジストローラ23に突き当てて止める。そして、中間転写体50上の合成トナー像にタイミングを合わせてレジストローラ23を回転し、中間転写体50と2次転写装置51との当接部である2次転写部に記録媒体を送り込み、この2次転写部に形成されている2次転写バイアスや当接圧力などの影響によってトナー像を2次転写して記録媒体上にトナー像を記録する。ここで、2次転写バイアスは、直流であることが好ましい。画像転写後の記録媒体は、2次転写装置51の搬送ベルトで定着装置80へと送り込み、定着装置80で加圧ローラによる加圧力と熱の付与によりトナー像を定着させた後、排出ローラ41で排紙トレイ40上に排出する。
【0082】
本実施の形態においては、導電性部材10を具体化した帯電ローラについて主として説明したが、本発明における導電性部材10は、本発明の目的に反しない限り、それを具体化した現像ローラ又は転写ローラとしてもかまわない。
【0083】
(実施例1)
(イ)ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物を押出成形によりパイプ形状の樹脂成形物とする工程、
(ロ)前記樹脂成形物に、図2で示されるB部2mm、D部0.5mmの固定溝を両端に有するステンレスで構成される外径8mmの導電性支持体(芯軸)を挿入して、該導電性支持体上に外径14mm、両端の段差部の外径11.3mmの電気抵抗調整層を形成する工程、
(ハ)前記電気抵抗調整層の両端の段差部に、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)で構成されるキャップ状の空隙保持部材を圧入すると共に、その胴部の中央に設けられた前記導電性支持体の挿入口の設けられた部分を前記固定溝に嵌合させて、前記電気抵抗調整層と空隙保持部材と前記導電性支持体とを接着固定する工程、
(ニ)この接着固定されたローラの表面を切削して前記空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mmとすると共に、前記電気抵抗調整層の外径を12.00mmして、図2に示されるA部厚み0.4mm、B部厚み2mm、及び、C部幅8mmの空隙保持部材とする工程、
(ホ)この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる樹脂組成物(表面抵抗:2×1010Ω)をスプレーコーティングすることにより膜厚約10μmの表面層を形成する工程、並びに、
(ヘ)この表面層を形成したローラをオーブン中において80℃で1時間にわたり加熱硬化させる工程、
を順次経て導電性部材を得た。
【0084】
(実施例2)
前記(ロ)工程において、前記電気抵抗調整層の両端の段差部の外径を11.3mmとし、そして、前記(ニ)工程において、図2に示される前記空隙保持部材のA部厚みを0.5mmとした以外は、実施例1と同様にして導電性部材を得た。
【0085】
(実施例3)
前記(ロ)工程において、前記電気抵抗調整層の両端の段差部の外径を10.9mmとし、そして、前記(ニ)工程において、図2に示される前記空隙保持部材のA部厚みを0.6mmとした以外は、実施例1と同様にして導電性部材を得た。
【0086】
(実施例4)
前記(ロ)工程において、固定溝のB部を1.5mmとすると共に前記電気抵抗調整層の両端の段差部の外径を10.9mmとし、そして、前記(ニ)工程において、図2に示される前記空隙保持部材のA部厚みを0.5mmとし、B部厚みを1.5mmとし、C部厚みを7.5mmとした以外は、実施例1と同様にして導電性部材を得た。
【0087】
(比較例1)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層として、エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG、ダイソー社製)100重量部に過塩素酸アンモニウム3重量部を配合したゴム組成物(体積抵抗率:4×108 Ωcm)を、押出成形、加硫工程を経て被覆し、研削により外径12mmに仕上げた。次いでこの表面に、ポリビニルブチラール樹脂(デンカブチラール3000−K、電気化学工業社製)、イソシアネート系硬化剤、及び酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)により膜厚10μmの表面層を形成した。次いで、この両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)からなるリング状の空隙保持部材(外径12.1mm)を挿入接着して、導電性部材を得た。
【0088】
(比較例2)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層としてエピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG、ダイソー社製)100重量部に過塩素酸アンモニウム3重量部を配合したゴム組成物(体積抵抗率:4×108 Ωcm)を、押出成形、加硫工程を経て被覆し、研削により外径12mmに仕上げた。次いで、この表面に、ポリビニルブチラール樹脂(デンカブチラール3000−K、電気化学工業社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)により膜厚10μmの表面層を形成した。次いでこの両端部周囲に、空隙保持部材としてテープ状部材(ダイタックPF025−H、大日本インキ社製)幅8mm、厚さ60μmを被覆し、導電性部材を得た。
【0089】
(比較例3)
電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)を押出成形によりパイプ形状にした。そして、ステンレスからなる芯軸(外径8mm)を挿入し、外径14mm、両端段差部外径11.3mmの電気抵抗調整層を形成した。この両端部に、空隙保持部材としてポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチック社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入接着した。次に、切削によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.1mm、電気抵抗調整層の外径を12.0mmに同時仕上げを行い、図10に示す形状とした。この表面にポリビニルブチラール樹脂(デンカブチラール3000−K、電気化学工業社製)、イソシアネート系硬化剤、及び酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)により膜厚10μmの表面層を形成し、導電性部材を得た。
【0090】
以上、実施例1〜4及び比較例1〜3で得た導電性部材を図6に示す画像形成装置に搭載して、室温環境下(23℃、60%RH)において、帯電部材の全長、及び、帯電部材と像担持体と間の空隙量を測定した。次いで、LL;10℃、65%RH、HH;30℃、90%RHの各環境下に24h放置し、各環境下での帯電部材の全長と、帯電部材と像担持体との間の空隙量を測定し、その変化量を算出した。評価結果は、次の表1に示される。表1における判定基準は、
○:三環境間の全長変動量が0.1mm以下であり、かつ、空隙変動量が0.01mm以下であるもの
×:三環境間の全長変動量が0.1mmより大きいか、又は、空隙変動量が0.01mmより大きいもの
とした。
【0091】
【表1】

【0092】
表1より、実施例1〜4で得られた帯電部材は、比較例1〜3で得られた帯電部材よりも、帯電部材の全長及び空隙の各環境間での変化量が小さい結果が得られたことがわかる。
【0093】
印加する電圧をDC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2kHz)に設定して、600,000枚を通紙した後、帯電部材と像担持体との間の空隙量、帯電部材(帯電ローラ)の表面の状態、及び、画像について評価を行った。評価環境は、10,000枚ごとに23℃、65%RH、LL;10℃、65%RH、HH;30℃、90%RHの各環境を切り替えて行った。評価結果は、次の表2に示される。表2における判定基準は、
○:初期及び6000000枚通紙後の画像が良好であもの
×:初期及び6000000枚通紙後の画像に画像ムラがあるもの
とした。
【0094】
【表2】

【0095】
表2より、実施例1〜4で得られた帯電部材は、全項目で良好な結果が得られたが、比較例1〜3では不具合が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の縦断面図である。
【図2】図1で示される導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図であって、(a)は、その端部の一部拡大縦断面図であり、(b)は、それを構成する電気伝導調整層の一部拡大縦断面図であり、そして、(c)は、それを構成する空隙保持部材の一部拡大横断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における電気抵抗調整層と空隙保持部材との取り付け工程を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における電気抵抗調整層と空隙保持部材とに除去加工を施す状態を示す説明図である。
【図5】導電性部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の説明図である。
【図7】図6に示される像形成装置における画像形成部の説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態を示すプロセスカートリッジの説明図である。
【図9】従来の帯電部材を有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【図10】本発明者らにより提案されている帯電部材(帯電ローラ)の断面図である。
【図11】本発明者らにより提案されている他の帯電部材(帯電ローラ)の断面図である。
【図12】本発明者らにより提案されている他の帯電部材(帯電ローラ)の断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 導電性支持体
1a固定溝
2 電気抵抗調整層
2a,2b,2c 電気抵抗調整層の段差部を構成する面
3 リング状部
3a リング状部の側面
3b リング状部の内周面
4 胴部
4a 胴部の内面
4b 胴部の中央に設けられた孔の内面
5 空隙保持部材
6 胴部の中央に設けられた挿入孔
9 軸受け
10 導電性部材(帯電ローラ)
11 加圧部材
G 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端部に設けられたキャップ状の空隙保持部材と、を有する導電性部材において、
(イ)前記導電性支持体が、その両端近傍に、周方向に設けられた連続または不連続の固定溝を有し、
(ロ)前記電気抵抗調整層が、その両端近傍に、その両端方向に設けられた段差部を1段以上有し、
(ハ)前記空隙保持部材が、前記段差に対応するように設けられた該空隙保持部材のリング状部の側面及び内面並びに胴部の内面と、前記電気抵抗調整層の段差部を構成する面と、にそれぞれ接すると共に、該空隙保持部材の胴部の中央に設けられた前記導電性支持体の挿入孔を形成する面と前記固定溝の底面とに接して、固定され、そして、
(ニ)前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、該電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている
ことを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記空隙保持部材のリング状部が、前記電気抵抗調整層の段差部に圧入されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記空隙保持部材が、前記導電性支持体及び/又は前記導電性支持体に接着剤で固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記空隙保持部材が、該空隙保持部材に施されたプライマーを介して、前記電気抵抗調整層及び/又は前記導電性支持体に接着剤で固定されていることを特徴とする請求項3に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記空隙保持部材の少なくとも像担持体と当接する部分が、電気絶縁性樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記空隙保持部材の体積固有抵抗が、1013Ω・cm以上であることを特徴とする請求項5に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記電気抵抗調整層の体積固有抵抗が、106 〜109 Ωcmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と前記導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記電気抵抗調整層上に表面層が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記表面層の体積固有抵抗が、前記電気抵抗調整層の体積固有抵抗より大きいことを特徴とする請求項9に記載の導電性部材。
【請求項11】
前記導電性部材が円筒形状にされていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項12】
前記導電性部材を帯電部材としたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項13】
請求項12に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されて設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスカートリッジを有していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−281865(P2008−281865A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127130(P2007−127130)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】