説明

導電性重合体、導電性重合体組成物、およびそれらの使用

本発明は、導電性材料でドーピングした、導電性アルカリ塩を含む、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を含んでなる電極、電解質および/またはセパレータプレートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、導電性重合体および導電性重合体電極組成物、およびそれらの使用、とりわけ重合体で接合した炭素電極に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性重合体および導電性重合体組成物には、電気化学的電池における電極、セパレータ、双極性プレート、電磁遮蔽物、帯電防止製品などの工業的な用途がある。
【0003】
炭素電極材料は、燃料電池、バッテリー、エネルギー貯蔵コンデンサー、触媒担体、金属およびコンクリートの腐食防止、水精製、水滅菌、脱塩、スラッジ処理、酸性鉱床(acid mine)廃水処理、煙道ガス脱硫、土壌改良、金属回収、電気化学的センサーおよび電気合成を包含する、多くの電気化学的用途および工業的処理に使用されているか、または使用の可能性を有する。
【0004】
電気化学的水処理方法は、従来の物理的、化学的および生物学的方式より有益であるため、益々重要になっている。電気的に駆動されるので、急速な反応速度を達成することができ、より小型で、より効率的な設備を設計することができる。電気化学的方法は、化学的処理および生物系の必要性に取って代わり、他の有益性、例えばスラッジ形成の減少および危険な薬品を輸送する必要性の軽減できるという利点を示す。
【0005】
2002年のWater UKからの報告(ENDS報告書339 1/4/03)では、英国における水処理は、品質標準向上のために、より経費がかかるようになっている。飲料水および廃水処理の両方に使用されるエネルギーが増加している。飲料水は、現在、クリプトスポリジウム規制に適合させるために必要な追加の処理およびポンプ輸送のために、メガリットルあたり600キロワット時間を処理および供給に必要とし、1998年以降28%上昇している。廃水側でも、エネルギー使用は1998年における437kWh/Mlから598kWh/Mlに、37%増加している。この理由は、環境の質に関する必要条件が益々厳しくなり、会社はより多くの二次処理および紫外線滅菌設備を導入する義務を負い、処理および廃棄する下水スラッジ量が増大しているためである。
【0006】
より効率的で、低コストの水処理が必要なことは明らかである。広く普及はしていないが、電気化学的水処理装置が開発され、市販されている。電極に使用されている既存の炭素材料は、典型的にはグラファイト、多孔質炭素、例えば炭素フェルト、エーロゲル、ナノフォームおよび網状ガラス質炭素である。グラファイトは、多孔質炭素材料より比較的安価であるが、脆い材料であり、設計形状を達成するには高温機械加工技術を必要とする。
【0007】
多孔質炭素電極は、熱硬化性樹脂から、樹脂を特定の形状に予備形成し、次いで完全な炭素化が起こるまで高温に長時間暴露する製法により製造される。形成される炭素の体積は、元の樹脂サイズよりはるかに小さく、このために製品の収率が下がる。これは、特定の幾何学的形状またはサイズが必要な場合には重大な問題である。この製造技術にも、材料コストが高く、前駆物質炭素が高い炭化温度で「収縮」するために材料強度が弱いという欠点がある。
【0008】
高表面積の立体的な炭素電極は、ゾル−ゲル技術を使用して有機化合物を炭素化することにより製造される。熱分解製法により、高表面積および高導電性を有するガラス質炭素材料を製造できる。しかしながら、この製造技術は、極めて高い製造コストがかかり、特定の幾何学的形状を製造するには追加の処理が必要になろう。
【0009】
炭素粉末と混合した重合体状結合剤から製造された多孔質炭素電極は、一般的に不良導体である。重合体状結合剤を使用して炭素電極を形成する際の欠点は、ほとんどの結合剤が非導電性であるために、電極の導電性が悪化することである。
【0010】
炭素電極の製造が少量生産技術に制限されること、および得られる製品は、機械加工の必要性、処理コスト、または両方のために、高価になることは明らかである。
【0011】
炭素電極の製造に使用される製造技術は改良することができ、より効率的で、安価な、融通性がより高く、大量の炭素電極を製造する方法が求められている。
【発明の概要】
【0012】
これらの問題に対する解決策が求められている。
【0013】
本発明により、
(a)負電極、
(b)正電極、および
(c)電解質手段、および所望により
(d)セパレータおよび/または双極性プレート
を含んでなる電気装置であって、一個以上の電極および/またはセパレータもしくは双極性プレートが、導電性アルカリ塩を含み、導電性材料でドーピングした、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を含んでなる、電気装置を提供する。
【0014】
本発明の電気装置に使用する双極性および/またはセパレータプレートは、好ましくは本発明のセパレータプレートである。無論、電気装置が双極性プレートを含んでなる場合、その装置は負電極(a)および正電極(b)を含んでなる必要はない。これは、双極性プレートが負および正電極を包含するためである。
【0015】
本発明により、一個以上のガス向流フローフィールドを有する燃料電池で使用するのに好適なセパレータプレートであって、該プレートが、導電性アルカリ塩を含み、導電性材料でドーピングした、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を含んでなる、セパレータプレートを提供する。
【0016】
本発明により、導電性アルカリ塩を含み、導電性材料でドーピングした、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系樹脂を含んでなる、電極をさらに提供する。
【0017】
硬化させたフェノール系樹脂は、熱硬化性重合体であり、それらの良好な熱的および機械的安定性、およびそれらの耐炎性のために、他の樹脂系よりも優れている。通常、これらの樹脂は、電気的絶縁能力も優れている。従って、エステル硬化させたアルカリ性レゾール樹脂が電極として有用であることは、驚くべきことである。
【0018】
フェノール系樹脂が、アルカリ性条件下で、有機エステルとの反応により硬化し得ることは公知である。そのようなアルカリ性フェノール系レゾール樹脂のエステル硬化は、DE−C No.1,065,605、DE−C No.1,171,606、JP−A No.49−16793およびJP−A No.50−130627に記載されている。これらの文献によれば、水溶液中の高アルカリ性フェノール系レゾール樹脂は、常温で、有機エステルとの反応で、樹脂を液体または気体の形態にあるエステルと接触させることにより、硬化させることができる。そのような技術は、耐火用途、例えば鋳型およびコアの製造、における砂の接合に使用される(米国特許第4,426,467号、第4,68,359号および第4,474,904号)。この種の製法は、ヨーロッパ特許第0241156号にも記載されており、そこでは水性のアルカリ性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂をエステル硬化剤で硬化させ、湿った石炭粉末を凝集させ、続いて凝集物を乾燥および硬化させている。
【0019】
エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂は、工業界で20年以上も使用されている。工業用途は、この急速な室温重合反応の恩恵を受けている。この重合体は、重合反応の副生成物としてその場で形成される高レベルの電解塩を含む点で独特である。我々は、重合体中に塩が存在するために、この重合体は、他の熱硬化性重合体よりもはるかに高い導電特性を有することを見出した。
【0020】
我々は、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂の導電性が、重合体組成物に導電性材料を添加することにより、強化されることも見出した。どのような導電性材料でも、その材料が重合体成分と相容性であり、硬化機構を妨害しない限り、樹脂またはエステル成分に添加して導電性を改良することができる。炭素、特にグラファイトの形態にある炭素、は、この重合体系の樹脂およびエステル成分と非常に相容性であり、反応の化学に影響を及ぼさない。
【0021】
導電性を改良するために優先的に選択される炭素の形態は、好ましくは天然または合成のグラファイト粉末またはフレークである。炭素の主な必要条件は、樹脂との相容性、炭素の湿潤性および導電性である。2種類以上の炭素を異なった炭素、例えば活性炭粉末、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維およびカーボンブラックの混合物との組合せで使用できる。炭素と、金属および金属酸化物粉末等の非炭素導電性充填材、ならびに、ニッケル被覆されたグラファイトおよび銀被覆されたガラス等の金属被覆されたグラファイトやガラスの組合せを使用できる。あるいは、一種以上の非炭素導電性充填材自体も使用できる。
【0022】
樹脂および導電性混合物のエステル成分と相容性があり、重合反応を抑制しない非炭素導電性充填材、例えば金属および金属酸化物粉末および金属被覆されたグラファイトおよびガラス、例えばニッケル被覆されたグラファイトおよび銀被覆されたガラス、は、導電性充填材として使用できる。
【0023】
樹脂は、好ましくは導電性材料で、樹脂と導電性材料の重量比が好ましくは少なくとも0.001:1、より好ましくは少なくとも0.002:1、最も好ましくは少なくとも1:1であり、好ましくは最高100:1、より好ましくは最高20:1、最も好ましくは最高10:1になるような量で、ドーピングする。
【0024】
エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾールは、硬化したアルカリ性フェノール系組成物の重合体マトリックスが高レベルのアルカリ性塩を含む点で、酸硬化させたレゾールと区別できる。カルボン酸の塩を分散または溶解させることは、液体レゾールにおいては、フェノール系樹脂が溶解性を失い、溶液から沈殿することがあるので、非常に困難である。第二に、分散したカルボン酸の塩を含むフェノール系レゾールを酸性化すると、塩が酸と反応することによりCOが発生する。従って、硬化させたアルカリ性レゾール組成物の独特な特徴は、硬化反応中に形成された、硬化した重合体マトリックス中に大量のカルボン酸塩が存在することである。
【0025】
本発明において、導電性アルカリ塩を含み、導電性材料でドーピングした、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を使用することの利点としては、
・組成物を室温で成形できるので、製造工程がより迅速に、簡単に、安価になり、
・組成物を低および高圧下で成形でき、
・樹脂が、炭素の結合に通常使用する結合剤より高い導電性を有するので、導電性の低下が最小に抑えられ、
・樹脂が、室温で硬化し、収縮が最小限に抑えられるので、機械加工を必要とせず、良好な材料強度を有する、耐久性の高い製品が得られ、
・樹脂を水で無限に希釈でき、加えられた水は炭素またはグラファイトの粉末またはフレークの濡れ性を改良し、炭素含有量の高い電極材料を製造することができ、
・樹脂を発泡させ、立体的な、高表面積の多孔質導電性構造を製造することができ、
・樹脂を導電性充填材でドーピングすることができ、
・出発材料が比較的安価で、製造コストを節約でき、
・大量生産が可能で、
・反応が穏やかに発熱するだけであり、大規模な、かさの大きな製品を形成することができる
ことが挙げられる。
【0026】
コスト節約を例示するために、下記の数値を提供する。市販の炭素RF[レゾルシノール−ホルムアルデヒド]エーロゲル材料は、Marketech International Inc.からブロック、顆粒、粉末および紙の形態で供給されている。2003年11月で、100g量のRFエーロゲルの価格は、機械加工前でUS$185である。RFエーロゲル紙シート(3.5インチx10x0.01)の価格は、100シートあたりUS$665である。炭素エーロゲルはより高価で、100gUS$275であり、100紙シートは$100である。本発明で使用する炭素ドーピングした樹脂材料の成形形態100gは約US$0.42になろう。
【0027】
低コスト電極材料、例えばグラファイトおよび銅に対して、この材料コストは、電極製造総コストのほんの僅かな部分を占めるだけである。グラファイトおよび銅は、精密な形状を製造するには高温機械加工工具を必要とする。製造時間、機械加工時間、労力およびスクラップは、全体的なコストにとって非常に重要である。本発明で使用する炭素ドーピングした樹脂は、機械加工を行わずに精密な形状に成形し、硬化させることができ、労力およびスクラップを減少させることができる。
【0028】
本発明の電気装置で与えられるコスト節約の結果、現在のところ、他の工業的処理である、塩素処理、オゾン処理および凝析等の水精製技術とコスト的に競合できない工業的電気化学的処理を経済的に使用することができる。
【0029】
本発明の電気装置は、好ましくは2個以上の電池を含むバッテリー、またはコンデンサー(特に電解コンデンサー)である。電気装置が燃料電池である場合、その装置は、少なくとも一個の双極性プレートおよび電池を通る酸素および水素の流れを制御する入口および出口を含む。
【0030】
本発明のセパレータは、単一のフローフィールドを有する。これは、集電装置として、特に燃料電池において有用である。双極性プレートは、積層構造中の個々の燃料電池同士間の、平らで、ガスに対して不透過性で、導電性のセパレータである。双極性プレートは、両側にフローフィールドを有する。フローフィールドは、好ましくはプレート中に機械加工または成形された少なくとも一個の通路である。フローフィールドは、片側で燃料(通常は水素)、反対側で酸化体を、燃料電池中の入口地点から出口地点に運ぶのに好適である。
【0031】
本発明の電気装置の電解質手段は、所望により電解質の形態にあるか、または電解質を受け入れるように配置される。例えば、電解質手段は、電池が作動する際に電解質が中を通って流れることができる導管の形態でも、あるいは電解質手段は、少なくとも電池が作動する際に電解質を入れることができる容器の形態でもよい。
【0032】
本発明は、炭素ドーピングした、エステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂の電極としての使用も提供する。
【0033】
本発明は、導電性のエステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂または組成物の、電磁遮蔽材料としての、またはある場所における静電気放電を阻止するための使用も提供する。本発明で使用する樹脂の電磁遮蔽材料としての用途の例には、電子製品、例えばコンピュータ、金銭登録機、携帯電話、その他の日用電子装置、用のハウジング、あるいは電子部品、または静電気放電により引き起こされる粉塵爆発の危険性がある微粉、例えば食品、に使用する帯電防止包装材料が挙げられる。
【0034】
本発明は、製品中で電磁的干渉を抑制する方法であって、導電性のエステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂または組成物で該製品を遮蔽することを包含する、方法をさらに提供する。この遮蔽には、好ましくは製品に、少なくとも部分的に導電性のエステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂または組成物で構築したハウジングを備えることが関与する。製品は、電気または電子製品でよい。
【0035】
本発明は、任意の場所における静電気放電を防止する方法であって、導電性のエステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂または組成物をその場所に備えることを含む方法も提供する。好適な場所は、微粉用または電子装置または部品、例えばマイクロチップまたはプリント回路基板用の包装物であるか、あるいは、床被覆材、ガスメーター部分、水ポンプシールまたは自己潤滑性軸受け、あるいは静電気放電に対して敏感な装置または部品を操作または加工する作業台または類似の場所でよい。
【0036】
導電性材料でドーピングした、エステル硬化させた塩含有アルカリ性フェノール系レゾール樹脂は、好ましくはエステル硬化剤と、フェノール系レゾールおよび塩基の反応生成物である。フェノール系レゾールは、好ましくはフェノール反応性アルデヒドと式
【化1】

(式中、Rは、直鎖状または分岐鎖状の、所望により不飽和の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望によりハロゲン原子(好ましくは塩素)またはヒドロキシ基により置換されたアルキル基、ハロゲン原子(好ましくは塩素)、ヒドロキシ基、および/またはフェニルまたはベンジル基(所望によりヒドロキシ基および/または直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望によりハロゲン原子(好ましくは塩素)またはヒドロキシ基により置換されたアルキル基により置換されている)であり、
Mは、水素イオンと少なくとも一種の他の陽イオン(好ましくは、少なくとも一種の他の陽イオンは、アルカリ金属陽イオン(好ましくはナトリウム、リチウムまたはカリウム)、アルカリ土類金属陽イオン(好ましくはバリウム、マグネシウムまたはカルシウム)、および/またはN(Rイオン(ここで各Rは、同一であるか、または異なるものであって、水素または直鎖状または分岐鎖状の、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基)である)の混合物であり、水素イオンと少なくとも一種の他の陽イオンのモル比は、pHが7を超えるのに十分であり、好ましくは2:1〜1:1であり、
nは0〜2である)
のアルカリ性化合物の反応生成物である。
【0037】
式(I)の好適な化合物の例としては、フェノール自体の塩、置換されたフェノール、例えばアルキル化フェノール、ハロゲン化フェノールおよび多価フェノール、の塩、およびヒドロキシ置換された多核芳香族化合物があるが、これらに限定するものではない。アルキル化フェノールの例としては、メチルフェノール(クレゾールとも呼ばれる)、ジメチルフェノール(キシレノールとも呼ばれる)、2−エチルフェノール、ペンチルフェノールおよびtert−ブチルフェノールがある。ハロゲン化フェノールの例は、クロロフェノールおよびブロモフェノールである。多価フェノールの例としては、1,3−ベンゼンジオール(レゾルシノールとも呼ばれる)、1,2−ベンゼンジオール(ピロカテコールとも呼ばれる)、1,4−ベンゼンジオール(ヒドロキノンとも呼ばれる)、1,2,3−ベンゼントリオール(ピロガロールとも呼ばれる)、1,3,5−ベンゼントリオールおよび4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジオール(tert−ブチルカテコールとも呼ばれる)がある。ヒドロキシ置換された多核芳香族化合物の例としては、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールAとも呼ばれる)、4,4’−メチリデンビスフェノール(ビスフェノールFとも呼ばれる)およびナフトールがある。
【0038】
式(I)の2種類以上の化合物と、フェノール反応性アルデヒドの一種以上の分子との縮合反応により形成される化合物の塩が、エステル硬化させたアルカリ性レゾール樹脂で使用するのに好適である。例としては、フェノール自体の樹脂状反応生成物、置換されたフェノール、例えばアルキル化フェノール、ハロゲン化フェノールおよび多ヒドロキシフェノール、の塩、およびヒドロキシ置換された多環式芳香族化合物があるが、これらに限定するものではない。さらに、アルデヒド反応性フェノールの混合物、例えばコールタール分別から得られる混合物、解重合されたリグニンおよびカシュウナット殻液をレゾール成分の全部または一部として使用できる。
【0039】
式(I)の化合物と反応させてアルカリ性フェノール系レゾールを形成するのに使用するフェノール反応性アルデヒドは、好ましくは式:
RCHO (II)
(式中、Rは水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個(好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個、最も好ましくは1個)の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の化合物、または式(II)の化合物の前駆物質である。
【0040】
好適なアルデヒドの例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、カプロアルデヒドがある。式(II)の化合物の前駆物質として使用するのに好適な化合物としては、ホルムアルデヒドに分解する化合物、例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、ヘキサメチレントリアミン、加熱によりホルムアルデヒドを放出するアセタール、およびベンズアルデヒドがある。
【0041】
アルデヒドは、好ましくは(I)の化合物と、1:1〜1:3、好ましくは1:1.2〜1:3、より好ましくは1:1.5〜1:3の比で反応させる。
【0042】
ある種のアルカリM(OH)(ここでMは上に定義した通りであり、水素ではない陽イオンを表し、xは1または2を表す)、例えば水酸化カルシウム、は水性樹脂中にあまり可溶ではない。これらの化合物も、樹脂を脱水し、エステルをレゾール用の溶剤として使用することにより、使用できる。水に不溶なアルカリは、樹脂中に分散させ、ペーストを形成することができる。その場合、反応を開始するのに、極性溶剤(例えば水)を必要とする。
【0043】
アルカリ性フェノール系レゾール樹脂の硬化に使用するエステル硬化剤は、好ましくは式:
COOR (III)
を有し、式中、
は、水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望によりハロゲン原子により置換されたアルキル基を表し、
は、直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望により一個以上のヒドロキシおよび/またはRCOO基により置換されたアルキル基、または
所望により直鎖状または分岐鎖状の、所望により不飽和の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望によりヒドロキシ基により置換されたアルキル基、ハロゲン原子(好ましくは塩素)、ヒドロキシ基、および/またはフェニルまたはベンジル基(所望によりヒドロキシ基および/または直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含むアルキル基により置換されている)により置換されたフェニル基
を表すか、または
は、R4との化学結合を表し、Rは、直鎖状または分岐鎖状の、2〜10個の炭素原子(好ましくは2〜4個の炭素原子)を含むアルキル基を表す。
【0044】
アルカリ性レゾール樹脂用のエステル硬化剤は、硬化した樹脂中で塩を形成するように、アルカリと反応性でなければならない。反応性エステルとしては、カルボン酸エステル、多価アルコールのエステル、ラクトンおよび炭酸エステル、フェノール系エステルおよびレゾールエステルがあるが、これらに限定するものではない。反応性カルボン酸エステルの例は、メチルホルメートおよびエチルホルメートである。樹脂用の硬化剤として使用できる反応性多価アルコールエステルの例としては、グリセロールトリアセテートおよびエチレングリコールジアセテートがある。反応性炭酸エステルの例としては、環状炭酸エステル、例えばプロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートがある。反応性ラクトンの例としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトンおよびカプロラクトンがある。反応性フェノール系エステルの例は、フェニルアセテートおよびレゾルシノールジアセテートである。反応性レゾールエステルの例は、2,4,6−トリス−アセトキシメチルフェニルアセテートである。エステルの混合物、例えばプロピレンカーボネートとトリアセチン、を使用し、硬化速度を変えることができる。
【0045】
エステルによるレゾールの硬化速度は、主として共役酸の酸性度により決定され、例えばギ酸の酸性度は酢酸より大きいので、エチルホルメート(R=H)は、エチルアセテート(R=CH)より、約1000倍速く反応する。各エステルを使用して達成できるゲル時間も、類似したオーダーの差を示す。アルコール(R4)の炭素鎖長が、けん化速度およびゲル時間に影響する程度はより小さく、追加炭素毎にけん化速度は下がり、ゲル時間は増加する。RおよびRの鎖長および/または分岐が増加するにつれて、樹脂とエステルの混和性が低下することも分かった。エステルと樹脂との間の良好な相容性は、硬化反応が進行するために不可欠である。従って、エステル硬化剤の選択が反応の硬化速度を決定し、反応中に形成されるカルボキシレートイオン、および最終的には電極の特性に影響を及ぼす重合体マトリックス中に含まれる塩も決定することは明らかである。
【0046】
本発明で使用するエステル硬化させた塩含有アルカリ性フェノール系レゾール樹脂を形成するための反応に使用する塩基は、好ましくは、本発明で使用する樹脂に可溶な導電性塩を形成できるアルカリ性化合物である。好適な塩基の例は、アルカリまたはアルカリ土類金属の、あるいはアンモニア、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたはアンモニア、の水酸化物または酸化物である。
【0047】
本発明で使用するエステル硬化させた塩含有アルカリ性フェノール系レゾール樹脂は、好ましくはレゾール樹脂、エステル硬化剤、一種以上の塩基および、所望により、極性溶剤から製造される。それらの合成方法は、当業者には良く知られており、DE−C−1065605、DE−C−1171606、JP−A49−16793およびJP−A50−130627に記載されている。これらの文献によれば、水溶液中の高アルカリ性フェノール系レゾール樹脂は、常温で、有機エステルとの反応により、樹脂を液体または気体の形態にあるエステルと接触させることにより、硬化させることができる。本発明で使用する、導電性アルカリ塩を含むエステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂は、所望により、必要とする特定の特性に応じて、乾燥した、または無水の形態にある。
【0048】
エステル硬化させたアルカリ性フェノール系樹脂のもう一つの特徴は、ほとんどの一般的な熱硬化性重合体系と異なり、水性であり、水で希釈できることである。重合反応は、水で希釈した樹脂にエステル硬化剤を加えることにより影響されず、重合体の硬化は、遅い速度ではあるが、進行する。しかし、より急速な硬化エステルを使用することにより、硬化過程の速度を所望の速度に増加することができる。水で希釈できる特性が、導電性材料でドーピングした、エステル硬化させたフェノール系樹脂混合物に与える主な利点は、炭素またはグラファイトの粉末またはフレークを湿潤させ、導電性材料の含有量が高い電極材料を製造し、その材料から高導電性電極を形成できることである。室温硬化により、加えた水は形成された電極材料から蒸発し、堅い、固体の、高導電性材料、低含水量の、導電性材料でドーピングされた、エステル硬化させたフェノール系重合体が得られる。
【0049】
樹脂/炭素混合物に水を制御しながら加えることが、混合物の稠性(コンシステンシー)を変化させ、使用する室温射出成形、注ぎ込み、キャスティング技術に適合させることができるので、処理にとって重要である。高度に水を加えた場合、増粘剤、例えばデンプンまたはデンプン誘導体、セルロースまたはセルロース誘導体、天然ガム、例えばアラビアゴムまたはグアーガム、または合成増粘剤、例えばポリアミドまたはポリアクリレートを含むことにより、混合物の稠性を効果的に調整することができる。
【0050】
本発明で使用する樹脂は、樹脂の可撓性を増大させるために、所望により可塑剤を含む。ある種の用途にはたわみ性樹脂が有用であることは明らかである。可塑剤は、好ましくは不活性で、アルカリと相容性があり、不揮発性である、および/または液体である。好ましくは、可塑剤は、樹脂および/またはエステル硬化剤に可溶である。可塑剤のレベルは、用途の必要条件によって決定され、硬化した電極材料の導電性に対する影響により制限される。可塑剤の例としては、過剰のエステル硬化剤、ポリビニルアセテートおよび/またはポリエチレングリコールがある。
【0051】
エステル硬化させたフェノール系樹脂は、樹脂処方物中に発泡剤を使用して発泡させ、立体的な構造を形成することができる。発泡剤の例としては、水混和性が低い低沸点溶剤、例えばトリクロロモノフルオロメタン(CFC−11)、水素化クロロ過フッ化炭化水素(「HCFC」と呼ばれる)、部分的に水素化された過フッ化炭化水素(「HFC」と呼ばれる)、炭化水素、例えばイソ−ペンタンおよびシクロペンタンがある。この用途に発泡剤を使用するのは、絶縁性フォームを製造するためではなく、立体的な連続気泡構造を形成するためだけである。従って、発泡剤は硬化工程中に失われ、立体的構造を形成した後に回収し、循環使用することができる。他の発泡剤、例えば二酸化炭素および窒素も使用できる。
【0052】
添付の図面を参照しながら本発明を説明するが、図1および2は、回転シリンダーの形態にある電極を有する本発明の電池を使用する試験から得た結果を示す。
【0053】
図3は、電解質2のブロックを有し、その両側に非対称性の電極3a、3bを備えた電気装置を示す。非対称性電極は、電気的接続部4a、4bをそれぞれ備えている。これらの電極は、一方がカソードとして作用し、他方がアノードとして作用するという点で、非対称性電極である。非対称性電極は、例えば例2により製造された樹脂から形成されている。
【0054】
図4は、例えば水素の入口30および出口35、および酸素の入口40および出口45を有する燃料電池10の形態にある電気装置を示す。この例の燃料電池10は、電極20、25および双極性プレート15を有する。双極性プレート15は、図5に、その表面上に溝50を有するものとしてより詳細に示す。プレート15の反対側の面も溝50を有する。双極性プレート15の変形は、片面だけに溝50を有するセパレータプレートである。
【実施例】
【0055】
下記の例は、本発明で使用する電極の製造方法を例示する。本発明の有益性も立証する。これらの例で、使用する材料は、従来のアルカリ性フェノール系レゾール(樹脂A)、中性レゾール樹脂(B)、ブチロラクトン(エステル)、トリアセチン(エステル)、およびグラファイト、ニッケル粉末および銅粉末(導電性強化剤)である。
【0056】
例1
この例は、アルカリ性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の、ホルムアルデヒドとフェノールのモル比が2.0:1であり、水酸化ナトリウムとフェノールのモル比が0.65:1である製造を説明する。フェノール(5.0モル)および水酸化ナトリウム(0.1モル)を反応容器に入れ、温度を65℃に維持しながら、50%ホルマリン(3.0モル)を加えた。温度を80℃に上げ、50%ホルマリン(7.0モル)の第二装填量を30分間かけて徐々に加えている間、80℃に維持した。次いで、混合物を80℃に60分間維持してから、50%水酸化ナトリウム溶液(3.15モル)を加え、温度を80℃に維持した。樹脂を80℃で粘度400cPに濃縮した。
【0057】
例2
電極として使用する、炭素ドーピングした、エステル硬化させたレゾール樹脂を、紙カップ中で、樹脂A50gをグラファイト100g、水50gおよびブチロラクトン10gと混合することにより、製造した。混合物の一部をラテックス製の型に流し込み、硬化させた。ゲル時間は、混合物をカップに入れた時から記録した。
【0058】
例3
例2から得たキャスティングした試料を室温で24時間放置してから、Como DT3800 Digital Multimeterを使用して電導度を測定した。試料の抵抗は20℃で9オームと測定された。
【0059】
例4
この例は、例2で製造した樹脂が、溶液から金属イオンを効率的に回収するための電極材料としてどのように機能するかを立証する。樹脂をシリンダーに加工し、銀を使用することによりエポキシ樹脂を回転ディスク電極に固定し、回転シリンダー電極RCEを製造した。
【0060】
次いで、このRCEを各種実験に使用し、試験条件下で電極材料がどの程度効率的であるかを主として示した。第一に、この電極を使用し、0.5M H2SO4中、pH2で1mmolのCu2+およびCd2+堆積に対する電流−電位曲線を得た。
【0061】
図1で、5通りの異なった回転速度に対する結果を与える5つの曲線を示す。各曲線に対する回転速度は、順に下記の通りである。第一の曲線(グラフで最も下にあり−0.02mAに達する)は、200rpmで測定し、第二の曲線は400rpmで測定し、第三の曲線は800rpmで測定し、第四の曲線は1600rpmで測定し、第五の曲線は3200rpmで測定した。
【0062】
各曲線は、電位を変化させた時の電流変化を示す。このスキャンでは、電位を変化させ(1mVs−1で)、電流を記録する。電流の強度は、起きている反応(この場合は銅およびカドミウムの堆積)によって異なる。初期の曲線(−150〜−750mVの範囲)は、電極表面上への銅の堆積により引き起こされ、−750〜1050mVではカドミウムが堆積し始め、−1050mV後では水素発生(二次反応として)が開始する。
【0063】
図1から、例2の樹脂が、混合溶液から銅およびカドミウムが除去されている時の電極として機能していることは明らかである。
【0064】
例5
この例では、例2の電極を使用して溶液から銅を2時間にわたって集め、ある間隔で試料を採取し、溶液中の銅の量を分析した。
【0065】
第一に図2から、予想されるように、実験中に電位が増加するにつれて、溶液から銅が除去される速度が増加する。また、同じ電位(−0.43V)に対して、電極がすでに銅の中に被覆(前処理)されている場合、銅が除去される速度も、−0.60Vで実験を行う場合の速度に近い速度に増加する。電極を前処理するか、または実験中に電位を増加することにより、除去速度がさらに10%増加することが分かる。2時間の期間にわたって、除去された銅の量は丁度50%未満である。
【0066】
これらの結果は、この重合体材料が、水から金属イオンを除去するのに使用できることを示している。
【0067】
例6
炭素ドーピングした、エステル硬化させたフェノール系樹脂の電極材料を、様々な粒子径分布のグラファイト等級の炭素から製造した。
【0068】
試料A:グラファイト等級KL96/97(96〜97%の炭素フレークグラファイト、20〜25ミクロンのd50に粉砕、Branwell、英国から供給)100gを、樹脂40g(例1から)、水75g、グアーガム増粘剤0.6gおよびトリアセチン硬化剤8gと混合した。この混合物をKenwood Chef中で2分間混合し、次いで10mlの円筒形の型の中に注ぎ込み、室温で硬化させた。15分後、試料を型から取り出した。型から取り出してから1時間後に抵抗率の測定を開始し、続く数日間続行した。
【0069】
試料B:グラファイト等級2300 d50 36-42ミクロンのより粗い等級を使用してAと同様にしたもの。
【0070】
試料C:フレーク等級グラファイトKFL96/97「小フレーク」(典型的には35〜40%>100ミクロン、40%<75ミクロン、すなわち平均粒子径80〜90ミクロンを有する)を使用してAと同様にしたもの。
【0071】
【表1】

【0072】
表1は、すべての試料が、高い初期抵抗を有すること、および硬化が進行するにつれて抵抗は続く数時間にわたって急速に低下し、<10オームcmに達することを示している。
【0073】
例7
炭素ドーピングした、エステル硬化させたフェノール系樹脂電極材料を、炭素グラファイトを他の導電性充填材と混合したものから製造した。
【0074】
試料D:Branwell、英国から供給されたグラファイト等級2300 40gを銅粒子80gと混合し、樹脂20g(例1から)に加えた。トリアセチン硬化剤4gを加え、混合物をカップ中で2分間混合し、次いで10mlの円筒形の型の中に注ぎ込み、室温で硬化させた。15分後、試料を型から取り出した。型から取り出してから1時間後に抵抗率の測定を開始し、続く数日間続行した。
【0075】
試料E:ニッケル粒子36〜42ミクロンを使用し、Dと同様にしたもの。
【0076】
【表2】

【0077】
表2は、すべての試料が高い初期抵抗を与えること、および硬化が進行するにつれ、続く数時間にわたって抵抗が急速に低下し、<20オームcmに達することを示している。
【0078】
例8
炭素ドーピングした、エステル硬化させたフェノール系立体フォーム構造の製造
炭素ドーピングした、エステル硬化させたフェノール系立体フォーム構造を、Borden Chemical UK Ltdから供給されたフェノール系フォーム樹脂IDP292 50部を、Dow Corningから供給されたDC193シリコーン油2部と予備混合することにより、製造した。次いで、KL96/97グラファイト粉末100部および水50部をこの樹脂と、滑らかな混合物が達成されるまで混合した。高速実験室用ミキサーを使用し、HCFC14lb発泡剤10部を樹脂混合物中に混合し、滑らかなエマルションを得た。反応を開始するために、高速ミキサーを使用してブチロラクトン硬化剤15部をエマルションの中に混合した。10秒間混合した後、フォーム混合物をプラスチック製の型に移し、直ちに50℃の加熱炉中に入れ、そこでフォームを膨脹させ、一晩放置して硬化させた。フォームを切断した時、連続気泡の、密度265kgm−3の細かいフォーム構造が測定された。24時間後に、抵抗1Kオームcmが測定された。
【0079】
例9
樹脂B 中性レゾールの製造
フェノール(1モル)および水酸化ナトリウム(0.004モル)を反応容器に入れ、温度を50℃に維持しながら、50%ホルマリン(0.6モル)を加えた。次いで、温度を80℃に上げた。50%ホルマリン(1.0モル)の第二装填量を30分間かけて徐々に加えている間、温度を80℃に維持した。次いで、混合物を80℃に45分間維持した。p−トルエンスルホン酸溶液でpHを6.0±0.2に調節した。樹脂を60℃に冷却し、次いで減圧蒸留により、粘度200cPに達するまで脱水した。得られた樹脂は、樹脂固体含有量が72%であった。
【0080】
例10
電極として使用する、エステル硬化させたレゾール樹脂を、紙カップ中で、樹脂A50gをブチロラクトン10gと混合することにより、製造した。混合物の一部をラテックス製の型に流し込み、硬化させた。ゲル時間は、混合物をカップに入れた時から記録した。
【0081】
例11
例11では、樹脂B50gを10℃未満に冷却し(発熱を抑えるために)、酸2gと混合した。
【0082】
例10および11で得たキャスティングした試料を室温で24時間放置してから、Como DT3800 Digital Multimeterを使用して抵抗を測定した。
【0083】
抵抗値の結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
例10および11は、酸硬化させたレゾール組成物(例11)と比較した、エステル硬化させたフェノール系レゾール反応(例10)中でアルカリ金属塩の形成により誘発される電導度を示す。
【0086】
例12
グラファイト等級2369(98%の炭素フレークグラファイト、80%最小>180ミクロンに粉砕、Branwell、英国から供給)100gを、樹脂A50gおよびトリアセチン硬化剤10gと混合した。この混合物をKenwood Chef中で2分間混合し、次いで20mlの円筒形の型の中に注ぎ込み、液圧プレスを使用してプレスし、型から離し、室温で硬化させた。試料は、ある範囲の圧力下で調製した。型から取り出してから24時間後に抵抗率の測定を開始した。
【0087】
【表4】

【0088】
例13
この例は、例2で製造したエステル硬化させたフェノール系樹脂で結合させた炭素電極が、電極材料(この場合はアノード)として、どのように機能するかを立証する。これは、例えばCl−イオンを塩素ガスに還元するのに有用であろう。電極組成物をシリンダーに加工し、飽和食塩溶液中、50mAcm−3で65時間アノード分極させた。分極開始時のアノード重量は12.5gであった。65時間後、この重量は12.8gと測定され、良好なアノード安定性を示した。
【0089】
標準的なグラファイトロッドを飽和食塩水中で同じ時間アノード分極させたところ、エステル硬化させたフェノール系樹脂で結合させた炭素電極と比較して、著しく浸食されることが分かった。これは、図6に示す電極のサイズを比較することにより、示されている。図6では、右側の電極が、65時間分極処理した後の標準的なグラファイトロッドである。左側に示す、本発明により製造された、やはり65時間の分極処理にかけた電極より著しく小さいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】回転シリンダーの様々な回転速度における銅およびカドミウム堆積に関するプロットを示す。
【図2】様々な電位における減損率の変化を示す。
【図3】本発明の電気装置の第一実施態様を図式的に示す断面図である。
【図4】本発明の電気装置の第二実施態様を図式的に示す平面図である。
【図5】本発明の双極性プレートを図式的に示す平面図である。
【図6】エステル硬化させたフェノール系樹脂で結合した炭素アノード(左側に示す)と比較したグラファイトロッドアノード(右側に示す)の、食塩水中で65時間分極させた後の、著しい消耗を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料でドーピングした、導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を含んでなる、電極。
【請求項2】
前記樹脂と導電性材料との重量比が0.001〜100:1である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記導電性材料が、炭素および/または非炭素導電性充填材を含んでなる、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
前記炭素がグラファイトまたは無定形炭素の形態にあり、かつ/もしくは前記非炭素導電性充填材が、金属、金属酸化物、および/または金属被覆されたグラファイト、および/またはガラスの形態にある、請求項3に記載の電極。
【請求項5】
前記樹脂が、エステル硬化剤と、フェノール系レゾールおよび塩基との反応生成物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記フェノール系レゾールが、フェノール反応性アルデヒドと式:
【化1】

(式中、Rは、直鎖状または分岐鎖状の、所望により不飽和の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望によりハロゲン原子(好ましくは塩素)またはヒドロキシ基により置換されたアルキル基、ハロゲン原子(好ましくは塩素)、ヒドロキシ基、および/またはフェニルまたはベンジル基(所望によりヒドロキシ基および/または直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望によりハロゲン原子(好ましくは塩素)またはヒドロキシ基により置換されたアルキル基により置換されている)であり、
Mは、水素イオンと少なくとも一種の他の陽イオン(好ましくは、前記少なくとも一種の他の陽イオンは、アルカリ金属陽イオン(好ましくはナトリウム、リチウムまたはカリウム)、アルカリ土類金属陽イオン(好ましくはバリウム、マグネシウムまたはカルシウム)、および/またはN(Rイオン(ここで各Rは、同一であるか、または異なるものであって、水素または直鎖状または分岐鎖状の、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基)である)の混合物であり、水素イオンと前記少なくとも一種の他の陽イオンのモル比は、pHが7を超えるのに十分であり、好ましくは2:1〜1:1であり、
nは0〜2である)
のアルカリ性化合物の反応生成物である、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記フェノール反応性アルデヒドが、式:
RCHO (II)
(式中、Rは水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個(好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個、最も好ましくは1個)の炭素原子を含むアルキル基を表す)
の化合物、または式(II)の化合物の前駆物質である、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記フェノール反応性アルデヒドが前記式(I)の化合物と、1:1〜1:3、好ましくは1:1.2〜1:3、より好ましくは1:1.5〜1:3の比で反応する、請求項6または7に記載の電極。
【請求項9】
前記エステル硬化剤が、式:
COOR (III)
(式中、Rは、水素原子または直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望によりハロゲン原子により置換されたアルキル基を表し、
は、直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望により一個以上のヒドロキシおよび/またはRCOO基により置換されたアルキル基、または
所望により直鎖状または分岐鎖状の、所望により不飽和の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含み、所望によりヒドロキシ基により置換されたアルキル基、ハロゲン原子(好ましくは塩素)、ヒドロキシ基、および/またはフェニルまたはベンジル基(所望によりヒドロキシ基および/または直鎖状または分岐鎖状の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の炭素原子)を含むアルキル基により置換されてなる)により置換されたフェニル基
を表すか、または
は、Rとの化学結合を表し、Rは、直鎖状または分岐鎖状の、2〜10個の炭素原子(好ましくは2〜4個の炭素原子)を含むアルキル基を表す)
を有する、請求項5〜8のいずれか一項に記載の電極。
【請求項10】
前記樹脂が、前記樹脂の可撓性を増加するために可塑剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電極。
【請求項11】
実質的に本願明細書に記載された、および/または、図3および/または図4の参照図面に示された、電極。
【請求項12】
ガス流を導くための一個以上のフローフィールドを有する燃料電池で使用するのに好適なセパレータプレートであって、前記プレートが、導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を含んでなる、セパレータプレート。
【請求項13】
前記樹脂が、請求項2〜11のいずれか一項に規定されたものである、請求項12に記載のセパレータプレート。
【請求項14】
2個のフローフィールドを有する、請求項12または13に記載のセパレータプレート。
【請求項15】
実質的に本願明細書に記載された、および/または、図4および/または図5の参照図面に示された、セパレータプレート。
【請求項16】
導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を含んでなる、電気装置で使用するのに好適な電解質。
【請求項17】
前記樹脂が、請求項1〜11のいずれか一項、好ましくは請求項5〜11のいずれか一項に規定されたものである、請求項16に記載の電解質。
【請求項18】
(a)負電極、
(b)正電極、および
(c)電解質手段、ならびに、所望により
(d)セパレータおよび/または双極性プレート
を含んでなる電気装置であって、一個以上の電極、電解質および/またはセパレータまたは双極性プレートが、導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を含んでなる、電気装置。
【請求項19】
前記樹脂が、請求項1〜11のいずれか一項に規定されたものである、請求項18に記載の電気装置。
【請求項20】
前記セパレータプレートが請求項12〜15のいずれか一項に規定されたものである、請求項18または19に記載の電気装置。
【請求項21】
電池、2個以上の電池を含むバッテリー、またはコンデンサーである、請求項18〜20のいずれか一項に記載の電気装置。
【請求項22】
前記電解質手段が、電解質の形態にあるか、または電解質を受け入れるように配置されている、請求項18〜21のいずれか一項に記載の電気装置。
【請求項23】
前記電解質手段が、前記電池が作動する際に電解質が流れることができる導管の形態にあるか、または少なくとも前記電池が作動する際に電解質を入れることができる容器の形態にある、請求項22に記載の電気装置。
【請求項24】
実質的に本願明細書に記載された、および/または、図3〜5の参照図面に示された、電気装置。
【請求項25】
導電性材料でドーピングした、導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂を発泡させた立体的な形態の、電極としての使用。
【請求項26】
導電性材料でドーピングした、導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂の、電極としての使用。
【請求項27】
導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂の、電極としての使用。
【請求項28】
導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂の、電磁遮蔽材料としての使用。
【請求項29】
導電性アルカリ塩を含み、エステル硬化させたアルカリ性フェノール系レゾール樹脂の、任意の場所における静電気放電を防止するための使用。
【請求項30】
前記エステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂が、請求項1〜11のいずれか一項に規定されたものである、請求項25〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
電子製品における電磁的干渉を抑制する方法であって、前記電子製品をエステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂で遮蔽することを含む、方法。
【請求項32】
前記遮蔽が、エステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂から少なくとも部分的に構築されたハウジングを前記電子製品に備えることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
任意の場所における静電気放電を防止する方法であって、エステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂を前記場所に備えてなることを含む、方法。
【請求項34】
前記エステル硬化させた塩含有アルカリ性レゾール樹脂が、請求項1〜11のいずれか一項に規定されたものである、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−524890(P2006−524890A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506113(P2006−506113)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001571
【国際公開番号】WO2004/091015
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(506014619)ビーエーシー2、リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】BAC2 Limited
【Fターム(参考)】