説明

導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成方法

本発明は、ロールプリンティング工程に適用され、より向上した導電度を示す導電性パターンの形成を可能にする導電性金属インク組成物およびこれを利用した導電性パターンの形成方法に関する。前記導電性金属インク組成物は、導電性金属粉末、アミン基とヒドロキシ基を含む有機リガンドが脂肪族カルボキシ酸銀(Ag)と結合して錯体を形成した有機銀錯化合物;25℃で蒸気圧が3torr以下の第1非水溶媒および25℃で蒸気圧が3torrを超過する第2非水溶媒を含む非水溶媒;および高分子コーティング性向上剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成方法に関し、より詳しくは、ロールプリンティング工程に適用され、より向上した導電度を示す導電性パターンの形成を可能にする導電性金属インク組成物およびこれを利用した導電性パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、多様なフラットパネルディスプレイ素子が広く用いられている。このようなフラットパネルディスプレイ素子の製造のために、電極、配線、または電磁波遮蔽フィルタなど多様な導電性パターンを基板上に形成するようになり、このようなパターン形成のために最も広く利用されていたものがフォトリソグラフィである。
【0003】
しかし、このようなフォトリソグラフィによるパターン形成のためには、感光性物質の塗布、露光、現像、および蝕刻などの多数のステップ工程が行われなければならないため、全体的な素子製造工程を複雑にし、工程の経済性も大きく低下させるようになる。
【0004】
このために、最近では、インクジェットプリンティング法またはロールプリンティング法などによる導電性パターン形成方法に対する関心が増加している。特に、ロールプリンティング法の場合、インクジェットプリンティング法では形成が困難な微細な導電性パターンまで形成することができるなどの工程上の長所があり、さらに注目されている。
【0005】
しかし、前記ロールプリンティング法によって良好な導電性パターンを形成するためには、導電性パターンの形成のための導電性インク組成物が低い初期粘度によってローラに適切に塗布されなければならず、ローラに塗布された後には所望するパターン形態で基板上に良好に転写されなければならないなど、適切な特性を有する導電性インク組成物が求められる。
【0006】
しかし、ロールプリンティング法によって微細な導電性パターンを良好に形成できるようにする導電性インク組成物は、未だに適切に開発されていない実情にある。さらに、以前に開発された低い初期粘度の導電性インク組成物を適用する場合、導電性パターンの導電度が十分でない。これにより、より優れた特性を有する微細な導電性パターンの形成を可能にする導電性インク組成物の開発が継続して研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ロールプリンティング工程に適用され、より向上した導電度を示す良好な導電性パターンの形成を可能にする導電性金属インク組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記導電性金属インク組成物を利用することにより、さらに向上した導電性パターンを形成する導電性パターンの形成方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、導電性金属粉末;アミン基とヒドロキシ基を含む有機リガンドが脂肪族カルボキシ酸銀(Ag)と結合して錯体を形成した有機銀錯化合物;25℃で蒸気圧が3torr以下の第1非水溶媒および25℃で蒸気圧が3torrを超過する第2非水溶媒を含む非水溶媒;および高分子コーティング性向上剤を含む導電性金属インク組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記導電性金属インク組成物をローラに塗布するステップ;導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェを前記ローラに接触させ、前記導電性パターンに対応するインク組成物のパターンを前記ローラ上に形成するステップ;前記ローラ上のインク組成物パターンを基板上に転写するステップ;および前記基板上に転写されたパターンを焼成するステップを含む導電性パターン形成方法を提供する。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態に係る導電性金属インク組成物およびこれを用いた導電性パターン形成方法について説明する。
【0012】
発明の一実施形態により、導電性金属粉末;アミン基とヒドロキシ基を含む有機リガンドが脂肪族カルボキシ酸銀(Ag)と結合して錯体を形成した有機銀錯化合物;25℃で蒸気圧が3torr以下の第1非水溶媒および25℃で蒸気圧が3torrを超過する第2非水溶媒を含む非水溶媒;および高分子コーティング性向上剤を含む導電性金属インク組成物が提供される。
【0013】
このような導電性金属インク組成物は、常温で蒸気圧が互いに異なる第1および第2非水溶媒を媒質として含む。このような第1および第2非水溶媒は、互いに異なる蒸気圧によって相違した揮発性を有し、特に、第2非水溶媒は、常温で高い蒸気圧およびこれによる高い揮発性を示す。したがって、このような第1および第2非水溶媒を含む導電性金属インク組成物は、貯蔵される間と、ロールプリンティングのためにローラに塗布されるまでは低い粘度を有し、前記第1および第2非水溶媒を含む媒質内で導電性金属粉末などの均一な組成が維持される。これにより、前記導電性金属インク組成物は、前記ローラ上に均一に塗布することが容易になる。
【0014】
また、前記導電性金属インク組成物は、媒質中の第2非水溶媒の高い揮発性により、空気中に露出されれば前記第2非水溶媒が即時に揮発し始め、約数分内に粘度が大きく増加することができる。したがって、ローラ上に塗布されたインク組成物を所望するパターン形態でパターニングすることが容易になり、パターン形成後にも前記インク組成物がローラ上から流れ落ちず、良好なパターン形態を維持することができる。
【0015】
これにより、前記導電性金属インク組成物を利用してロールプリンティング工程を適用すれば、基板上に所望するパターン形態をより良好に転写できるようになり、微細な導電性パターンを良好に形成できるようになる。
【0016】
一方、前記導電性金属インク組成物は、アミン基とヒドロキシ基を含む有機リガンドが脂肪族カルボキシ酸銀(Ag)と結合して錯体を形成した有機銀錯化合物を含む。このような有機銀錯化合物は、特許公開第2008−0029826号の記載などを例示することができ、溶媒に対する高い溶解度を有しながらも常温で液状を維持し、別途の分散剤を使用しなくてもインク組成物内で優れた安定性を示すことができる。すなわち、このような有機銀錯化合物は、一種の媒質としても適用することができ、それ自体で銀(Ag)を含んでいる。このような有機銀錯化合物を前記導電性金属インク組成物に含ませれば、インク組成物内に含まれる非水溶媒の含量を減らしながらもより多くの含量の導電性金属成分、例えば、銀(Ag)またはその他の導電性粉末を含ませることができる。したがって、導電性金属粉末と共にこのような有機銀錯化合物を含む導電性金属インク組成物は、より向上した導電性を示すことができる。
【0017】
以下、前記発明の一実施形態に係る導電性金属インク組成物について、各成分別に詳しく説明する。
【0018】
先ず、前記導電性金属インク組成物は、導電性を示すための基本的成分として導電性金属粉末を含む。このような導電性金属粉末としては、電気的導電性を示すものとして知られている任意の金属粉末を用いることができ、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、白金(Pt)、または鉛(Pb)などから選択された1種以上の金属粉末を用いることができる。前記インク組成物内で前記金属粉末が均一に分散され、前記インク組成物から形成された導電性パターンが優れていながらも均一な導電度を示すことができるようにするために、前記金属粉末はナノスケールの平均直径を有することができる。例えば、前記金属粉末は約1〜100nm、好ましくは約5〜70nm、より好ましくは約10〜50nmの平均直径を有することができる。
【0019】
また、前記導電性金属粉末は、導電性金属インク組成物の各成分のうちから銀錯化合物を除いた残りの成分の重量合計(例えば、導電性金属粉末、第1および第2非水溶媒、高分子コーティング性向上剤、および選択的に界面活性剤の重量合計)に対し、約15〜30重量%、好ましくは約20〜30重量%、より好ましくは約23〜30重量%の含量で含まれることができる。前記導電性金属粉末の含量が少なすぎれば、前記インク組成物から形成された導電性パターンの導電度が十分でないことがあり、反対に大きすぎれば、インク組成物内で金属粉末の分散性が劣悪になり、前記導電性パターンの特性が劣悪になったり、インク組成物が均一に塗布され難くなことがある。
【0020】
前記導電性金属インク組成物は、さらに第1および第2非水溶媒を含む。第1非水溶媒は、25℃で蒸気圧が3torr以下であり、比較的低い揮発性を示す溶媒であって、焼成前までインク組成物の分散媒として作用することができる。
【0021】
このような第1非水溶媒としては、25℃で蒸気圧が3torr以下のものとして知られている任意の非水溶媒を用いることができ、例えば、25℃で蒸気圧が3torr以下のアルコール系溶媒、グリコール系溶媒、ポリオール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、ケトン系溶媒、ヒドロカーボン系溶媒、ラクテート系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性スルホキシド系溶媒、またはニトリル系溶媒などの非揮発性溶媒を用いたり、これらのうちから選択された2種以上の混合溶媒を用いることもできる。このような第1非水溶媒のより具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテル、N−メチルピロリドン、ヘキサデカン、ペンタデカン、テトラデカン、トリデカン、ドデカン、ウンデカン、デカン、DMSO、アセトニトリル、またはブチルセロソルブなどを挙げることができ、これらのうちから選択された2種以上の混合溶媒を用いることもできることは勿論である。
【0022】
一方、第2非水溶媒は、25℃で蒸気圧が3torrを超過しており、高い揮発性を示す溶媒であって、上述したように、インク組成物がローラ上に塗布されるまでは第1非水溶媒と共にインク組成物の低い粘度およびローラに対する優れた塗布性を維持するが、蒸発によって除去されてインク組成物の粘度を高め、ローラ上でのパターン形成および維持が適切に行われるようにする成分である。
【0023】
このような第2非水溶媒としては、25℃で蒸気圧が3torrを超過するものとして知られている任意の非水溶媒を用いることができ、例えば、25℃で蒸気圧が3torrを超過するアルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、ケトン系溶媒、ヒドロカーボン系溶媒、ラクテート系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性スルホキシド系溶媒、またはニトリル系溶媒などの揮発性溶媒を用いたり、これらのうちから選択された2種以上の混合溶媒を用いることもできる。このような第2非水溶媒のより具体的な例としては、メタノール、エチルアルコール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ノナン、オクタン、ヘプタン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、クロロホルム、塩化メチレン、1、2−ジクルロロエタン、1、1、1−トリクロロエタン、1、1、2−トリクロロエタン、1、1、2−トリクルロロエテン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどを挙げることができ、これらのうちから選択された2種以上の混合溶媒を用いることもできることは勿論である。
【0024】
上述した第1および第2非水溶媒は、導電性金属インク組成物の各成分のうちから有機銀錯化合物を除いた残りの成分の重量合計(例えば、導電性金属粉末、第1および第2非水溶媒、高分子コーティング性向上剤、および選択的に界面活性剤の重量合計)に対し、それぞれ約5〜70重量%および約10〜74重量%、好ましくは約20〜50重量%および約25〜55重量%、より好ましくは約25〜48重量%および約30〜53重量%の含量で含まれることができる。
【0025】
前記第1非水溶媒の含量が少なすぎたり、前記第2非水溶媒の含量が多すぎる場合、インク組成物をローラに塗布した後の乾燥速度が速くなり、基板に対する転写が困難になることがある。反対に、前記第1非水溶媒の含量が多すぎたり、前記第2非水溶媒の含量が少なすぎれば、乾燥速度が遅くなって工程時間が長くなり、インク組成物が均一に塗布されないことがある。
【0026】
一方、前記導電性金属インク組成物は、高分子コーティング性向上剤を含む。このようなコーティング性向上剤は、インク組成物内でバインダとして作用し、インク組成物に粘着性を付与し、前記インク組成物がローラだけでなく導電性パターンが形成される基板に良好に塗布または転写されるようにする成分である。
【0027】
このようなコーティング性向上剤としては、エポキシ系高分子、フェノール系高分子、またはアルコール系高分子などの接着性高分子を用いることができ、これらのうちから選択された2種以上の混合物を用いることもできる。このようなコーティング性向上剤のうち、エポキシ系高分子のより具体的な例としては、ビスフェノールA型エポキシ高分子、ビスフェノールF型エポキシ高分子、ノボラック型エポキシ高分子、ブロム化エポキシ高分子などの難燃性エポキシ高分子、脂肪族環を有するエポキシ高分子、ゴム変性エポキシ高分子、脂肪族ポリグリシジルエポキシ高分子、またはグリシジルアミン型エポキシ高分子などがある。また、フェノール系高分子のより具体的な例としては、ノボラック型フェノール高分子またはレゾル型フェノール高分子などがあり、アルコール系高分子としては、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、またはエチレンビニルアルコール高分子などを挙げることができる。その他に、エチレンビニルアセテート、ロジン系樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン系高分子、またはポリエステル系高分子などを用いることもできる。
【0028】
これらの具体的な例に属する物質として、当業界で広く知られていたり常用化された物質を前記コーティング性向上剤として用いることができ、これらの物質以外にも導電性インク組成物に使用可能なものと知られている多様な高分子物質などを前記コーティング性向上剤として用いることもできる。
【0029】
前記インク組成物がこのようなコーティング性向上剤を含むことにより、このようなインク組成物は、ローラに対する優れた塗布性および基板に対する良好な転写性などを示すことができ、ロールプリンティング工程に適用されることができ、基板上により微細な導電性パターンを良好に形成できるようになる。
【0030】
前記高分子コーティング性向上剤は、導電性金属インク組成物の各成分のうちから有機銀錯化合物を除いた残りの成分の重量合計(例えば、導電性金属粉末、第1および第2非水溶媒、高分子コーティング性向上剤、および選択的に界面活性剤の重量合計)に対し、約0.1〜5重量%、好ましくは約1〜4重量%、より好ましくは約2〜3重量%の含量で含まれることができる。前記コーティング性向上剤の含量が少なすぎれば、インク組成物の塗布性や転写性が十分でないことがあり、反対に多すぎれば、前記インク組成物から形成された導電性パターンの導電度が十分でないことがある。
【0031】
上述した各構成成分の他にも、前記導電性金属インク組成物は、アミン基とヒドロキシ基を含む有機リガンドが脂肪族カルボキシ酸銀と結合して錯体を形成した有機銀錯化合物を含む。このような有機銀錯化合物は、アルコール基に置換された1次〜4次アミンからなるグループより選択された有機リガンドが脂肪族カルボキシ酸銀と結合したものからなることができる。また、前記脂肪族カルボキシ酸銀は、炭素数2〜20の1級または2級脂肪酸銀(Ag)塩からなるグループより選択されることができる。このような有機銀錯化合物をなす前記有機リガンドおよび脂肪族カルボキシ酸銀は、2:1の当量比で結合して錯体を形成することができる。
【0032】
このような有機銀錯化合物は、錯体の形態を帯びることにより、低い結晶化度およびこれによる溶媒に対する優れた溶解度を示し、常温で液状を帯びることができる。このような有機銀錯化合物は、それ自体で液状媒質の役割をすることができるため、これを前記インク組成物に含ませることにより、インク組成物内に含まれる媒質、すなわち、非水溶媒の含量を減らしながらもより多くの含量の導電性金属成分、例えば、導電性金属粉末や前記錯化合物に含まれた銀(Ag)成分の含量を増加させることができる。したがって、このようなインク組成物を適用することにより、ロールプリンティング工程によってさらに向上した導電度を示す導電性パターンが形成されることが明らかになった。
【0033】
また、前記有機銀錯化合物は、有機リガンドおよび脂肪族カルボキシ酸銀を2:1の当量比で含み、1分子あたり2つのヒドロキシ基を有するため、例えば、常温(約25℃)で50〜2000cpsの高い粘度を示すことができる。したがって、前記有機銀錯化合物は、前記インク組成物の一種の媒質として好ましく適用することができ、低い含量の非水溶媒下でもインク組成物が優れた分散安定性を維持することができるようになる。
【0034】
このため、前記インク組成物が前記有機銀錯化合物を含めば、より高い導電性金属成分の密度およびこれによる優れた導電度を示す導電性パターンを良好に形成することができる。
【0035】
上述した有機銀錯化合物としては、本発明者の特許公開第2008−0029826号に開示されたものを用いることができる。このような有機銀錯化合物は、前記特許公開第2008−0029826号に開示されたように、溶媒下で上述した有機リガンドおよび脂肪族カルボキシ酸銀を反応させる方法によって製造することができ、このときの溶媒としては、メタノール、テルピオネール、またはブチルカルビトールアセテートなどを用いることができる。
【0036】
前記有機銀錯化合物は、前記インク組成物に含まれた導電性金属粉末の100重量部を基準とし、約0.1〜5重量部、好ましくは約1〜5重量部、より好ましくは約3〜5重量部の含量で含まれることができる。このような有機銀錯化合物の含量が少なすぎれば、前記インク組成物から形成された導電性パターンの導電度が十分でないことがあり、前期有機銀錯化合物の含量が多すぎれば、インク組成物の粘度が高まり、工程の進行に不便を招来することがある。
【0037】
上述した導電性金属インク組成物は、上述した各構成成分の他にも界面活性剤をさらに含むこともできる。このような界面活性剤がさらに含まれることにより、前記インク組成物をローラに塗布するとき、ディウェッティングまたはピンホール発生をさらに抑制することができる。これにより、ローラ上にインク組成物を良好に塗布し、より精密でありながらも良好な導電性パターンを形成できるようになる。
【0038】
このような界面活性剤としては、以前から導電性金属インク組成物として通用されていたシリコン系界面活性剤、例えば、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤を用いることができ、その他の多様な界面活性剤を特別な制限なく用いることができる。
【0039】
このような界面活性剤は、導電性金属インク組成物の各成分のうちから有機銀錯化合物を除いた残りの成分の重量合計(例えば、導電性金属粉末、第1および第2非水溶媒、高分子コーティング性向上剤、および界面活性剤の重量合計)に対し、約0.01〜4重量%、好ましくは約1〜4重量%、より好ましくは約2〜3重量%の含量で含まれることができる。このような含量で界面活性剤を含むことにより、さらに良好にインク組成物をローラ上に塗布することができる。
【0040】
上述した発明の一実施形態に係る導電性金属インク組成物は、約20cPs以下、好ましくは約7cPs、より好ましくは約5cPs以下の初期粘度を有することができる。このとき、初期粘度とは、前記導電性金属インク組成物の最初の製造時からロールプリンティング工程のためのローラに塗布されるまでの粘度を包括して意味することができる。より具体的に、前記初期粘度とは、前記導電性金属インク組成物の最初の製造時からローラに塗布される前に保管中であるときの粘度(すなわち、ローラに塗布するために空気に露出させる前までの粘度)を意味することができる。前記導電性金属インク組成物は、第1および第2非水溶媒を含むことによってこのような低い初期粘度を有することができ、これによってローラに対する優れた塗布性を示すことができる。また、前記ローラに対する塗布後には、揮発性が高い第2非水溶媒の蒸発によってローラ上で粘度が高くなることができ、これによってローラ上で良好にパターンが形成および維持され、基板上に良好にパターンを転写させることができる。
【0041】
もし、初期粘度が高すぎる場合、前記インク組成物をローラーに塗布するときにインク組成物の吐出圧を過度に高めなければならないために制御が難しく、ローラに対する良好な塗布が困難になることがある。また、インク組成物の塗布後、高揮発性の第2非水溶媒が蒸発する前にインク組成物がレベリングされて均一な導膜を形成しなければならないが、初期粘度が高まればこのようなレベリングが難しくなることがある。これにより、前記インク組成物をローラに良好に塗布することが困難になることがある。
【0042】
上述した前記導電性金属インク組成物を利用してロールプリンティング工程を適用することにより、基板上により微細な導電性パターンを良好に形成することができるようになる。特に、前記インク組成物が特定の有機銀錯化合物を含み、これから形成された導電性パターンがより優れた導電度を示すことができるようになる。
【0043】
これにより、前記導電性金属インク組成物は、ロールプリンティング工程によって基板、例えば、ガラス基板などに印刷されて導電性パターンを形成するために好ましく適用されることができ、特に、フラットパネルディスプレイ素子の電極パターンなどを形成するために極めて好ましく適用されることができる。
【0044】
これにより、発明の他の実施形態よれば、上述した導電性金属インク組成物を用いた導電性パターンの形成方法が提供される。このような導電性パターンの形成方法は、上述した導電性金属インク組成物をローラに塗布するステップ;導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェを前記ローラに接触させ、前記導電性パターンに対応するインク組成物のパターンを前記ローラ上に形成するステップ;前記ローラ上のインク組成物パターンを基板上に転写するステップ;および前記基板上に転写されたパターンを焼成するステップを含むことができる。
【0045】
このような導電性パターンの形成方法において、前記クリシェとは、ローラ上に塗布されたインク組成物を所望する導電性パターン形態でパターニングするために用いられる一種の凹凸板を意味する。このために、前記クリシェ上には、前記導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されることができる。
【0046】
一方、添付の図面を参照しながら、前記発明の他の実施形態に係る導電性パターン形成方法を各ステップ別に説明すれば次のとおりである。図1は、ロールプリンティング工程による導電性パターンの形成過程を概略的に示す図である。
【0047】
先ず、上述した導電性金属インク組成物を形成する。このために各成分を混合した後、撹拌または震盪することにより、均一なインク組成物を形成することができる。また、不純物をとり除いて導電性パターンが均一に形成されるようにするために、前記インク組成物をろ過するステップをさらに行うこともできる。
【0048】
続いて、前記導電性金属インク組成物22をローラ20に塗布する。このとき、前記ローラ20の外面はブランケット21で覆われることができ、このようなブランケット21はポリジメチルシロキサン(PDMS)で形成されることができる。このようなPDMSは、他の高分子材料に比べて粘弾性、変形特性、または転写性に優れており、前記ブランケット21として適切に用いられることができる。前記導電性金属インク組成物22は、供給装置の吐出口10から吐出されて前記ブランケット21上に塗布されることができ、このときから第2非水溶媒が蒸発し始めながら、前記インク組成物22の粘度が速い速度で増加し始める。
【0049】
前記インク組成物22をブランケット21上に塗布した後には、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェを前記ローラに接触させ、前記導電性パターンに対応するインク組成物のパターンを前記ローラ上に形成する。
【0050】
すなわち、前記クリシェ30は、インク組成物22が塗布されたブランケット21に接触し、導電性パターン形成に必要のないインク部分32を選択的にとり除く役割をし、その結果、前記ローラ上に所望する導電性パターンに対応するインク組成物のパターンが形成されることができる。このために、前記クリシェ30は、ブランケット21と接触する面に、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成された形態を帯びるようになり、これによってクリシェ30の突出部31だけがブランケット21上のインク組成物22と接触し、導電性パターンの形成に必要のないインク部分32を前記突出部31に転写させてとり除くことができる。
【0051】
前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した後には、このようなインク組成物のパターンを基板上に転写する。このために、インク組成物のパターンが形成されたローラのブランケット21を基板40に接触させることができ、その結果、前記インク組成物のパターンが基板40に転写され、基板40上に所定のパターン41を形成することができる。
【0052】
このようなパターン転写後には焼成工程を行うことにより、基板上に導電性パターンを形成することができる。このような焼成工程は、形成しようとする導電性パターンの種類に応じて適切な条件で行われることができ、例えば、前記導電性パターンがフラットパネルディスプレイ素子の電極パターンなどで形成される場合、前記焼成工程は約300〜600℃で約5〜50分間に渡って行われることができ、例えば、約400〜480℃で10〜40分間に渡って行われることができる。
【0053】
上述したロールプリンティング工程を利用した導電性パターン形成方法により、以前に適用されていたフォトリソグラフィ工程などに比べ、極めて簡単かつ迅速な工程で基板上に導電性パターンを形成することができる。さらに、このようなロールプリンティング工程で上述した発明の一実施形態に係る導電性金属インク組成物などを使用することにより、優れた導電性を示す微細な導電性パターン、例えば、フラットパネルディスプレイ素子の電極パターンなどを良好に形成することができる。
【発明の効果】
【0054】
上述したように、本発明によれば、ロールプリンティング工程に適用され、微細な導電性パターンを良好に形成できるようにする導電性金属インク組成物が提供される。また、このような導電性金属インク組成物を用いることにより、より優れた導電度を示す導電性パターンを形成することができる。
したがって、前記導電性金属インク組成物を用いたロールプリンティング工程などにより、優れた電気的特性を示す微細な導電性パターン、例えば、フラットディスプレイ素子の微細電極パターンなどを良好に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ロールプリンティング構成による導電性パターンの形成過程を概略的に示す図である。
【図2】実施例1で形成された導電性パターンの光学顕微鏡写真である。
【図3】実施例1で形成された導電性パターンの微細構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例1で形成された導電性パターンの微細構造を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、発明の具体的な実施例を参照しながら、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められることはない。
【0057】
実施例1:導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成
平均直径50nmの銀ナノ粒子8.57g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.3g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7g、ブチルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.76torr)10g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.22g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。前記銀ナノ粒子の重量を基準として5重量%の銀(Ag)(ヘキサノエート)(ジエタノールアミン)を添加して12時間に渡って震盪した後、1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、4.02cPsであると確認された。
【0058】
前記インク組成物をローラのPDMSブランケットに塗布した後、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェと前記ブランケットを接触させ、前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した。この後、このようなローラをガラス基板に接触させ、前記ガラス基板上にパターンを形成した。これを450℃熱の焼成炉で30分間に渡って焼成して導電性パターンを形成した。
【0059】
実施例2:導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成
平均直径50nmの銀ナノ粒子6.67g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.3g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7g、ブチルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.76torr)10g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。前記銀ナノ粒子の重量を基準として5重量%の銀(Ag)(ヘキサノエート)(ジエタノールアミン)を添加して12時間に渡って震盪した後、1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、3.63cPsであると確認された。
【0060】
前記インク組成物をローラのPDMSブランケットに塗布した後、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェと前記ブランケットを接触させ、前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した。この後、このようなローラをガラス基板に接触させ、前記ガラス基板上にパターンを形成した。これを450℃熱の焼成炉で30分間に渡って焼成して導電性パターンを形成した。
【0061】
実施例3:導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成
平均直径50nmの銀ナノ粒子6.67g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.3g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7g、ブチルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.76torr)10g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。前記銀ナノ粒子の重量を基準として5重量%の銀(Ag)(プロピオネート)(ジエタノールアミン)を添加して12時間に渡って震盪した後、1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、2.97cPsであると確認された。
【0062】
前記インク組成物をローラのPDMSブランケットに塗布した後、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェと前記ブランケットを接触させ、前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した。この後、このようなローラをガラス基板に接触させ、前記ガラス基板上にパターンを形成した。これを450℃熱の焼成炉で30分間に渡って焼成して導電性パターンを形成した。
【0063】
実施例4:導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成
平均直径50nmの銀ナノ粒子6.67g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.3g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7g、ブチルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.76torr)10g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。前記銀ナノ粒子の重量を基準として5重量%の銀(Ag)(ステアレート)(ジエタノールアミン)を添加して12時間に渡って震盪した後、1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、3.29cPsであると確認された。
【0064】
前記インク組成物をローラのPDMSブランケットに塗布した後、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェと前記ブランケットを接触させ、前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した。この後、このようなローラをガラス基板に接触させ、前記ガラス基板上にパターンを形成した。これを450℃熱の焼成炉で30分間に渡って焼成して導電性パターンを形成した。
【0065】
実施例5:導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成
平均直径50nmの銀ナノ粒子6.67g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.3g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7g、ブチルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.76torr)10g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。前記銀ナノ粒子の重量を基準として5重量%の銀(Ag)(ヘキサノエート)(2−メトキシエチルアミン)を添加して12時間に渡って震盪した後、1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、2.68cPsであると確認された。
【0066】
前記インク組成物をローラのPDMSブランケットに塗布した後、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェと前記ブランケットを接触させ、前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した。この後、このようなローラをガラス基板に接触させ、前記ガラス基板上にパターンを形成した。これを450℃熱の焼成炉で30分間に渡って焼成して導電性パターンを形成した。
【0067】
実施例6:導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成
平均直径50nmの銀ナノ粒子6.67g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.3g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7g、ブチルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.76torr)10g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。前記銀ナノ粒子の重量を基準として5重量%の銀(Ag)(ヘキサノエート)(2−メチルアミノエタノール)を添加して12時間に渡って震盪した後、1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、2.83cPsであると確認された。
前記インク組成物をローラのPDMSブランケットに塗布した後、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェと前記ブランケットを接触させ、前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した。この後、このようなローラをガラス基板に接触させ、前記ガラス基板上にパターンを形成した。これを450℃熱の焼成炉で30分間に渡って焼成して導電性パターンを形成した。
【0068】
実施例7:導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成
平均直径50nmの銀ナノ粒子6.67g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.3g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7g、ブチルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.76torr)10g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。前記銀ナノ粒子の重量を基準として5重量%の銀(Ag)(ヘキサノエート)(トリエタノールアミン)を添加して12時間に渡って震盪した後、1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、4.05cPsであると確認された。
【0069】
前記インク組成物をローラのPDMSブランケットに塗布した後、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェと前記ブランケットを接触させ、前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した。この後、このようなローラをガラス基板に接触させ、前記ガラス基板上にパターンを形成した。これを450℃熱の焼成炉で30分間に渡って焼成して導電性パターンを形成した。
【0070】
比較例1:導電性金属インク組成物および導電性パターンの形成
平均直径50nmの銀ナノ粒子6.67g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.3g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7g、ブチルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.76torr)10g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。その結果物を1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、2.93cPsであると確認された。
前記インク組成物をローラのPDMSブランケットに塗布した後、所望する導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェと前記ブランケットを接触させ、前記ローラ上にインク組成物のパターンを形成した。この後、このようなローラをガラス基板に接触させ、前記ガラス基板上にパターンを形成した。これを450℃熱の焼成炉で30分間に渡って焼成して導電性パターンを形成した。
【0071】
参考例1:高粘度インク組成物の形成
平均直径16nmの銀ナノ粒子7.5g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)2.6g、エタノール(25℃で蒸気圧59.3torr)7.7g、プロピルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.975torr)9.9g、N−メチルピロリドン(25℃で蒸気圧0.375torr)0.8g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、12時間に渡って震盪した。その結果物を1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、128cPsであると確認された。
【0072】
参考例2:高粘度インク組成物の形成
平均直径16nmの銀ナノ粒子6.0g、メタルセロソルブ(25℃で蒸気圧6.2torr)6.1g、プロピルセロソルブ(25℃で蒸気圧0.975torr)11.4g、N−メチルピロリドン(25℃で蒸気圧0.375torr)0.5g、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤0.2g、およびフェノール系高分子の一種であるフェノールアルデヒドノボラック樹脂0.7gを混合し、60時間に渡って震盪した。その結果物を1μmのフィルタでろ過してインク組成物を製造した。後述する方法により、このようなインク組成物の初期粘度を測定した結果、34cPsであると確認された。
【0073】
実験例1:導電性金属インク組成物の初期粘度測定
上述したように製造された実施例1〜7、比較例1、参考例1および2の組成物の初期粘度は、各組成物の製造後にブルックフィールド粘度計を用いて測定された。各組成物の初期粘度は、上述した各実施例、比較例、および参考例に表示されたとおりである。
【0074】
実験例2:導電性パターンの特性評価
先ず、実施例1で形成した導電性パターンの光学顕微鏡写真を撮影して図2に示した。このとき、前記光学顕微鏡としては、Nikon社のEclipse 90iを用いた。図2を参照すれば、実施例のインク組成物を用いて約10μmの線幅を有する導電性パターンが良好に形成されることが確認される。これに比べ、10cPsを越す参考例1および2の組成物を使用した場合、ローラにインクを塗布することさえも不可能であった。
【0075】
次に、実施例1および比較例1で形成された導電性パターンを焼成前/後にそれぞれ電子顕微鏡で観察し、これらの電子顕微鏡写真をそれぞれ図3および図4に示した。このとき、前記電子顕微鏡としては、HITACHI社製S−4800を使用した。図3および図4を参照すれば、実施例1の導電性パターンは、比較例1の導電性パターンに比べてより高い密度で導電性金属成分(すなわち、銀(Ag)成分)を含んでいることが確認された。
【0076】
さらに、実施例1、2、5〜7および比較例1でそれぞれ形成された導電性パターンの比抵抗を測定する方法により、各導電性パターンの導電度を評価した。比抵抗は面抵抗をMitsubishi ChemicalのMCP−T600である4point probeで測定し、厚さをalpha stepで測定した後、2つの値の乗算から求めた。このような比抵抗測定結果を下記の表1に示した。
【表1】

【0077】
表1を参照すれば、実施例1、2、5、6、および7の導電性パターンは、有機銀錯化合物を含むことによって極めて低い比抵抗および優れた導電度を示すことに比べ、比較例1の導電性パターンは比抵抗が高くて導電度が低いことが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属粉末;
アミン基とヒドロキシ基を含む有機リガンドが脂肪族カルボキシ酸銀(Ag)と結合して錯体を形成した有機銀錯化合物;
25℃で蒸気圧が3torr以下の第1非水溶媒および25℃で蒸気圧が3torrを超過する第2非水溶媒を含む非水溶媒;および
高分子コーティング性向上剤を含む、導電性金属インク組成物。
【請求項2】
ロールプリンティング工程によって基板に印刷されて導電性パターンを形成するために用いられる、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項3】
フラットパネルディスプレイ素子の電極を形成するために用いられる、請求項2に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項4】
前記導電性金属粉末は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、白金(Pt)、および鉛(Pb)からなるグループより選択された1種以上の金属粉末である、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項5】
前記導電性金属粉末は1〜100nmの平均直径を有する、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項6】
前記脂肪族カルボキシ酸銀は、炭素数2〜20の1級または2級脂肪酸銀(Ag)塩からなるグループより選択され、前記有機リガンドは、アルコール基に置換された1次〜4次アミンからなるグループより選択される、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項7】
前記有機銀錯化合物は、前記有機リガンドおよび脂肪族カルボキシ酸銀が2:1の当量比で結合されている、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項8】
第1非水溶媒は、25℃で蒸気圧が3torr以下のアルコール系溶媒、グリコール系溶媒、ポリオール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、ケトン系溶媒、ヒドロカーボン系溶媒、ラクテート系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性スルホキシド系溶媒、およびニトリル系溶媒からなるグループより選択された1種以上の非揮発性溶媒を含む、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項9】
第2非水溶媒は、25℃で蒸気圧が3torrを超過するアルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、ケトン系溶媒、ヒドロカーボン系溶媒、ラクテート系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性スルホキシド系溶媒、およびニトリル系溶媒からなるグループより選択された1種以上の揮発性溶媒を含む、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項10】
前記高分子コーティング性向上剤は、エポキシ系高分子、フェノール系高分子、アルコール系高分子、ウレタン系高分子、エチレンビニルアセテート、ロジン系樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン系高分子、およびポリエステル系高分子からなるグループより選択された1種以上の接着性高分子である、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項11】
20cPs以下の初期粘度を有する、請求項2に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項12】
有機銀錯化合物を除いた導電性金属インク組成物の残りの成分の重量合計に対し、
導電性金属粉末の15〜30重量%;
第1非水溶媒の5〜70重量%;
第2非水溶媒の10〜74重量%;および
高分子コーティング性向上剤の0.1〜5重量%を含み、
前記導電性金属粉末の100重量部を基準とし、有機銀錯化合物の0.1〜5重量部をさらに含む、請求項1に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項13】
有機銀錯化合物を除いた導電性金属インク組成物の残りの成分の重量合計に対し、界面活性剤の0.01〜4重量%をさらに含む、請求項12に記載の導電性金属インク組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の導電性金属インク組成物をローラに塗布するステップ;
導電性パターンに対応するパターンが陰刻で形成されたクリシェを前記ローラに接触させ、前記導電性パターンに対応するインク組成物のパターンを前記ローラ上に形成するステップ;
前記ローラ上のインク組成物パターンを基板上に転写するステップ;および
前記基板上に転写されたパターンを焼成するステップを含む、導電性パターン形成方法。
【請求項15】
前記導電性パターンはフラットパネルディスプレイ素子の電極パターンである、請求項14に記載の導電性パターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−503433(P2013−503433A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526638(P2012−526638)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005651
【国際公開番号】WO2011/025228
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】