説明

導電性高分子形成用電解重合液、固体電解コンデンサ及びその製造方法

【課題】高電導度かつ高熱耐久性の導電性高分子を与える導電性高分子形成用電解重合液を提供すること。また、上記電解重合液を用い、ESRが低く、高い熱耐久性を有する固体電解コンデンサとその製造方法を提供すること。
【解決手段】支持電解質塩としてナフタレンジスルホン酸塩類及びナフタレンモノスルホン酸塩類をそれぞれ含み、ナフタレンモノスルホン酸塩類として、メチル基で置換されたナフタレンスルホン酸を含有する電解重合液を用い作製した固体電解コンデンサおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子形成用の電解重合液並びに、該導電性高分子形成用電解重合液を使用し、固体電解質層を形成させてなる固体電解コンデンサとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムやタンタル等の弁作用金属表面に誘電体酸化皮膜を形成し、該誘電体酸化皮膜上に固体電解質として電気伝導度の高い導電性高分子を形成させてなる固体電解コンデンサは、静電容量が高く、等価直列抵抗(以下、「ESR」と略記する。)が低い優れた特性を有することが知られている。
【0003】
この固体電解コンデンサは一般的に、エッチング処理により表面積を拡大した弁作用金属箔、あるいは弁作用金属の粒子を焼結させることにより表面積を拡大した焼結体を、化成処理により該表面に誘電体酸化皮膜を形成させ、次いで、該誘電体酸化皮膜上に固体電解質層を形成し、カーボン及び銀ペーストからなる導電層を順次形成した後、リードフレームなどの外部端子に接続し、トランスファーモールド等による外装を施して完成される。
【0004】
固体電解コンデンサのESRは、コンデンサを形成する各部材の固有抵抗と、コンデンサを形成する各部材間に発生する接触抵抗からなる、合成抵抗が主要な因子となっており、それらの改善によるESRのより一層の低減が望まれている。
【0005】
固体電解コンデンサの劣化は、偶発的に発生する不具合の他は一般的に、コンデンサを形成する各部材の熱劣化と、コンデンサの外装部を介して浸入する水分等の酸素源に起因する各部材の酸化劣化が主要な因子となっており、これらの劣化要因に対し、コンデンサを形成する各部材、特に固体電解質層の熱耐久性能の向上と、外装部材を中心としたガスバリア性の向上等の対策が行われている。
【0006】
固体電解コンデンサに用いられる一般的な固体電解質としては、ポリピロールとポリエチレンジオキシチオフェンが挙げられ、電解酸化重合によって形成されるポリピロールと、化学酸化重合によって形成されるポリエチレンジオキシチオフェンが有用である。
【0007】
電解酸化重合によって形成される固体電解質は、緻密な膜を形成することができるため、導電性が優れる傾向があり、積層型のコンデンサの製造に用いられている。一方、化学酸化重合は、複雑な形状の素子にも対応できるため、巻回型のコンデンサの製造に多く用いられている。
【0008】
固体電解コンデンサを形成する固体電解質の固有の性能については、ポリピロールやポリエチレンジオキシチオフェン等の固体電解質の種類のみではなく、固体電解質形成時に使用するドーパントや支持電解質によっても固体電解質の導電性や熱耐久性等の性能が変化することが知られている。
【0009】
特許文献1、特許文献2に開示されているように、積層型の固体電解コンデンサに用いられるポリピロールからなる固体電解質では、代表的な支持電解質として、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸が挙げられるが、前記パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸を支持電解質として用いたポリピロールからなる固体電解質では、導電性や熱耐久性が十分ではなく、得られた固体電解コンデンサのESRが高く、高温下での耐久性が低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−77093号公報
【特許文献2】特開2001−110682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高電導度かつ高熱耐久性の導電性高分子を与える導電性高分子形成用電解重合液を提供すること、また、上記電解重合液を用い、ESRが低く、高い熱耐久性を有する固体電解コンデンサとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、支持電解質塩としてナフタレンジスルホン酸塩類及びナフタレンモノスルホン酸塩類をそれぞれ含み、ナフタレンモノスルホン酸塩類として、メチル基で置換されたナフタレンスルホン酸を含有する電解重合液を用い、固体電解コンデンサを製造したところ、上記課題を解決しうる固体電解コンデンサが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
【0014】
第1の発明は、
導電性高分子単量体と支持電解質塩とが、溶媒に溶解されてなる導電性高分子形成用電解重合液において、
該支持電解質塩が、
ナフタレンジスルホン酸塩類及びナフタレンモノスルホン酸塩類をそれぞれ含み、かつ、該ナフタレンモノスルホン酸塩類として下記一般式(1)、で示される化合物を少なくとも含有することを特徴とする導電性高分子形成用電解重合液である。
【0015】
【化1】

(上式において、Xはカチオンを示す。)
【0016】
第2の発明は
前記ナフタレンジスルホン酸塩類とナフタレンモノスルホン酸塩類との含有重量比が、ナフタレンジスルホン酸塩類:ナフタレンモノスルホン酸塩類=1〜60:99〜40であることを特徴とする第1の発明に記載の導電性高分子形成用電解重合液である。
【0017】
第3の発明は
前記ナフタレンモノスルホン酸塩類中、
上記一般式(1)で示される化合物の含有量が、
20〜90重量%であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の導電性高分子形成用電解重合液である。
【0018】
第4の発明は
ナフタレンモノスルホン酸類として、
下記一般式(2)、及び下記一般式(3)、で示される化合物をそれぞれ含むことを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液である。
【0019】
【化2】

(上式においてXはカチオンを示す。)
【0020】
【化3】

(上式においてXはカチオンを示す。)
【0021】
第5の発明は
導電性高分子単量体がピロールであることを特徴とする第1から第4の発明のいずれか1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液である。
【0022】
第6の発明は
下記一般式(4)〜(6)で示される少なくとも1つの化合物が添加剤として溶解されてなることを特徴とする第1から第5の発明のいずれかに記載の導電性高分子形成用電解重合液である。
【0023】
【化4】

【0024】
上記一般式(4)〜(6)中、R〜R15はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基又はフェニル基を示す。
【0025】
第7の発明は
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、導電性高分子からなる固体電解質層を有する固体電解コンデンサにおいて、
固体電解質層が、第1〜第6の発明のいずれか1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液から形成された導電性高分子層を具備することを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0026】
第8の発明は
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、第1〜第6の発明のいずれか1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液を用い、導電性高分子層を電解重合により形成する工程を包含する固体電解コンデンサの製造方法である。
【0027】
第9の発明は
導電性高分子単量体と混合し、導電性高分子形成用電解重合液を調整するための支持電解質溶液であって、
支持電解質として、ナフタレンジスルホン酸塩類及びナフタレンモノスルホン酸塩類をそれぞれ含み、かつ該ナフタレンモノスルホン酸塩類として
下記一般式(1)、で示される化合物を水に溶解させてなることを特徴とする導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質溶液である。
【0028】
【化5】

(上式において、Xはカチオンを示す。)
【0029】
第10の発明は
前記ナフタレンジスルホン酸塩類とナフタレンモノスルホン酸塩類との含有重量比が、ナフタレンジスルホン酸塩類:ナフタレンモノスルホン酸塩類=1〜60:99〜40であることを特徴とする第9の発明に記載の導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質溶液である。
【0030】
第11の発明は
前記ナフタレンモノスルホン酸塩類中、
上記一般式(1)で示される化合物の含有量が、
20〜90重量%であることを特徴とする第9又は第10の発明に記載の導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質溶液である。
【0031】
第12の発明は
ナフタレンモノスルホン酸類として、
下記一般式(2)、及び下記一般式(3)、で示される化合物をそれぞれ含むことを特徴とする第9から第11の発明のいずれかに1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質溶液である。
【0032】
【化6】

(上式においてXはカチオンを示す。)
【0033】
【化7】

(上式においてXはカチオンを示す。)
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、従来よりも高電導度かつ高熱耐久性の導電性高分子を与える導電性高分子形成用電解重合液を提供でき、従来の固体電解コンデンサと比較して著しく優れたESR特性、高い熱耐久性を示す固体電解コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
最初に、本発明の導電性高分子形成用電解重合液について説明する。
【0036】
本発明の導電性高分子形成用電解重合液は、ドーパントを放出できる支持電解質塩及び導電性高分子単量体であるモノマーが、溶媒中に溶解されたものである。
【0037】
本発明に用いる支持電解質は、ナフタレンジスルホン酸塩類と、ナフタレンモノスルホン酸塩類をそれぞれ含むことを特徴としている。
このように、酸価の異なる2種以上のナフタレンスルホン酸塩を併用することによって、該ナフタレンスルホン酸塩から放出されるドーパントアニオンが電解重合液中に複数存在することになる。
そのため、導電性高分子の電解重合の成長状態に応じて、取り込まれ易いドーパントから順次高分子に取り込まれていくこととなる。
その結果、得られる導電性高分子層は、厚さ方向に、ある1種のドーパントを有する導電性高分子層と、別の種のドーパントが取り込まれた導電性高分子層を形成しながら成長していき、複合層を形成すると考えられ、
支持電解質塩を単独のナフタレンスルホン酸塩類を使用したものより強靭で熱耐久性の優れた導電性高分子層が与えられるものと考えられる。
【0038】
このナフタレンジスルホン酸塩と、ナフタレンモノスルホン酸塩の含有重量比は、得られる導電性高分子の導電性と熱安定性の面から、
ナフタレンジスルホン酸塩類:ナフタレンモノスルホン酸塩類=1〜60:99〜40とすることが好ましい。
ここで含有重量比とは、ナフタレンジスルホン酸塩類とナフタレンモノスルホン酸塩類との含有重量の割合である。
【0039】
(ナフタレンジスルホン酸塩類)
上記ナフタレンジスルホン酸としては、好ましくは、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、ナフタレン−1,6−ジスルホン酸塩、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸塩、ナフタレン−2,7−ジスルホン酸塩、メチルナフタレンジスルホン酸塩、ジメチルナフタレンジスルホン酸塩、トリメチルナフタレンジスルホン酸塩、プロピルナフタレンスルホン酸塩、ジプロピルナフタレンジスルホン酸塩、ブチルナフタレンジスルホン酸塩、ジブチルナフタレンジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0040】
(ナフタレンモノスルホン酸塩類)
本発明では、ナフタレンモノスルホン酸として、下記一般式(1)で示される化合物を必須の構成成分とする。
【0041】
【化8】

(上記一般式(1)中のXはカチオンを示す。)
【0042】
上記一般式(1)中のカチオンとしては、アンモニウムカチオン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンが挙げられる。
前記アンモニウムカチオンとしては、NH、NH、NH、NHR、NR等が挙げられる。Rは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、R同士で連結して環を形成してもよい。
前記アルカリ金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
前記アルカリ土類金属カチオンとしては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
また、カチオンが水素イオンである酸も使用できる。
これらカチオンは、1種若しくは2種以上を混合して用いることが出来る。
【0043】
上記一般式(1)中のナフタレンスルホン酸誘導体から生じるアニオンは、導電性高分子中にドーパントとして取り込まれることによって高電導度の導電性高分子を与え、かつ該ドーパントを有する導電性高分子は該ドーパントの脱離が生じにくく、極めて熱耐久性に優れたものとなる。
さらに、前述のように、ナフタレンジスルホン酸と併用されることによってより導電性の高い導電性高分子層を与える。
なお、本発明の電解重合液中に含有されるナフタレンモノスルホン酸塩類には、上記一般式(1)のナフタレンスルホン酸誘導体の含有量が20〜90重量%が好ましく、より好ましくは、30〜70重量%である。
ここで上記含有量とは、含まれているナフタレンモノスルホン酸塩類において、
[上記一般式(1)で表されるナフタレンスルホン酸誘導体の重量/その他のナフタレンモノスルホン酸塩類の重量]×100で表される数値である。
【0044】
(他に含まれるナフタレンモノスルホン酸)
本発明の電解重合液に使用されるナフタレンモノスルホン酸として、下記一般式(2)及び下記一般式(3)で示される化合物を含んでいることが好ましい。
【0045】
【化9】

(式中、Xはカチオンを示す。)
【0046】
【化10】

(式中、Xはカチオンを示す。)
【0047】
このように、ナフタレンモノスルホン酸塩類中に、上記一般式(1)に加え、上記一般式(2)及び(3)の支持電解質が混在していることによって、電解重合生成過程において、取り込まれ易いドーパントから順次効率的に取り込まれ、電解重合導電性高分子がより安定化し、導電性や熱耐久性が優れたものになる。
【0048】
また、本発明に用いる支持電解質塩としては、上記一般式(1)〜(3)に示される化合物以外の、ナフタレンモノスルホン酸塩を含有していてもよい。
そのようなナフタレンモノスルホン酸塩類としては、例えば、メチル基が3〜6個置換されたナフタレンスルホン酸誘導体塩類、エチル基が1乃至6個置換されたナフタレンスルホン酸塩類、炭素数3乃至9の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が1乃至6個置換されたナフタレンスルホン酸塩類が挙げられる。
【0049】
本発明の電解重合液中には添加剤を含有することができる。本発明にて使用される添加剤は、主に酸化防止剤、界面活性剤のいずれかの特性を有するものが好ましい。そのような添加剤としてより好ましくは下式(4)〜(6)で示される化合物である。
【0050】
【化11】

【0051】
上記一般式(4)〜(6)中、R〜R15はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基又はフェニル基を示す。
【0052】
上記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、4−ニトロフェノール、2−メチル−4−ニトロフェノール、3−メチル−4−ニトロフェノール、2−エチル−4−ニトロフェノール、3−エチル−4−ニトロフェノール、2−ヘキシル−4−ニトロフェノール、3−ヘキシル−4−ニトロフェノール等のニトロフェノール類が挙げられる。
上記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、4−ニトロ−1−ナフトール等のニトロナフトール類が挙げられる。
上記一般式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、1−ヒドロキシ−4−ニトロアントラキノン等のニトロアントラキノン類を挙げることができる。
【0053】
上記一般式(4)〜(6)により表される化合物は、1種若しくは2種以上を使用することができる。上記一般式(4)〜(6)により表される化合物は、得られる導電性高分子の熱耐久性の面から、4−ニトロフェノール、4−ニトロ−1−ナフトール、1−ヒドロキシ−4−ニトロアントラキノンであることが好ましい。
【0054】
(導電性高分子単量体)
次いで本発明に使用できる導電性高分子単量体について説明する。
【0055】
本発明に使用されるモノマーとしては、ピロール、アニリン、フラン、チオフェン又はこれらの誘導体を用いることができる。該誘導体としては、3−アルキルピロール、3−アルキルチオフェン、3,4−アルキレンジオキシピロール、3,4−アルキレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。前記モノマーは1種若しくは2種以上を同時に含有することができる。これらの中でも、得られる導電性高分子の電導度及び熱耐久性の面から、ピロールが好ましい。
【0056】
本発明に使用する電解重合液の溶媒は、水、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、或いはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド(DMF)やアセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類、クロロホルムや塩化メチレン等の非芳香族性の塩素系溶媒、ニトロメタンやニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、あるいはメタノールやエタノール、プロパノール等のアルコール類、またはギ酸や酢酸、プロピオン酸等の有機酸または該有機酸の酸無水物(無水酢酸等)を0〜30%以下の割合で水と混合した混合溶媒を挙げることができる。これらの中でも、環境負荷、安全性の面から、水を単独で使用したものが好ましい。
【0057】
次に本発明の導電性高分子形成用電解重合液の組成について説明する。
【0058】
本発明の導電性高分子形成用電解重合液については、導電性高分子単量体を0.05〜0.7mol/L、好ましくは0.1〜0.3mol/Lの濃度で含有するものである。
また、前記支持電解質は0.005〜0.30mol/L、好ましくは0.01〜0.2mol/Lの濃度で含有するものである。
添加剤を含有させる場合、前記添加剤を0.002〜0.1mol/Lの濃度で含有するものである。
【0059】
本組成の導電性高分子形成用電解重合液を用いることで著しく電導度、熱耐久性に優れた導電性高分子が得られるとともに、優れた電気特性を有する固体電解コンデンサを得ることができる。
【0060】
(導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質塩溶液)
また、本発明は、導電性高分子単量体と混合し、導電性高分子形成用電解重合液を調整するための支持電解質塩溶液である。
ここで、支持電解質塩は、上記した支持電解質塩と同様のものである。
該支持電解質塩を、水に対し1〜60重量%溶解することによって調整することが出来る。
なお、支持電解質塩は、所定のナフタレン誘導体を公知の方法によりスルホン化し、その後水酸化ナトリウム等のアルカリによって中和することによって得ることができる。
また、上記支持電解質塩は、例えば東京化成工業株式会社等より市販されている試薬も使用することができる。
【0061】
(固体電解コンデンサ)
次に本発明の導電性高分子形成用電解重合液を用い、固体電解コンデンサを製造する方法について説明する。
【0062】
本発明は、誘電体酸化被膜が形成された弁作用金属上に、導電性高分子層(A)を形成する工程と、前記導電性高分子層(A)上に上記の導電性高分子形成用電解重合液中で導電性高分子層(B)を電解重合により形成する工程とを有する固体電解コンデンサの製造方法である。
【0063】
弁作用金属表面の誘電体酸化皮膜上にプレコート層として導電性高分子層を予め形成しておき、次に前記プレコート層上に新たな導電性高分子層を本発明の電解重合液を用いて電解重合により形成することで固体電解質層を形成した後、該固体電解質層にカーボンペースト、銀ペースト等の導電ペーストを塗布乾燥することによって陰極層を形成する。
プレコート層の導電性高分子の形成方法としては(1)化学重合による導電性高分子層を形成する方法、(2)導電性高分子溶液を塗布乾燥して導電性高分子層を形成する方法が挙げられる。
次に弁作用金属から陽極リード端子、陰極層から陰極リード端子を接続して電極を取り出して素子を形成し、この素子全体をエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂、あるいはセラミック製や金属製の外装ケース等により封止することで固体電解コンデンサを得ることができる。
【0064】
導電性高分子(A)の形成方法として、溶媒溶解性又は溶媒分散性の導電性高分子を含有した溶液を付着後乾燥させることによる工程を含んでもよい。
【0065】
前記溶媒溶解性導電性高分子としては、ポリアニリン、アルキルチオフェン又はそれらの誘導体が挙げられる。
前記溶媒分散性導電性高分子としては、ポリピロール、3,4−エチレンジオキシチオフェン又はそれらの誘導体が挙げられる。
溶媒溶解性又は溶媒分散性の導電性高分子に用いる溶媒としては、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、アリルアルコール、アソアミルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−オクタノール、n−オクタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、n−ヘキサノール、n-ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレンカルボナート、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン等のケトン類、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、蟻酸イソブチル、蟻酸エチル蟻酸プロピル、蟻酸メチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸メチル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジエチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、フタル酸エチル、フタル酸メチル、フタル酸ブチル等のエステル類が挙げられる。
【0066】
前記導電性高分子形成用電解重合液を用いることによって、電導度に優れ、かつ、高温に暴露された際に特定の安定構造をとる導電性高分子が得られ、さらに前記導電性高分子を固体電解質とすることにより、従来よりも格段に優れたESR特性、熱耐久性を有する固体電解コンデンサを得ることができる。
【0067】
本発明に用いられる陽極弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ又はチタンからなる群から選ばれた1種が挙げられ、焼結体又は箔の形状で用いられる。
【0068】
本発明の固体電解コンデンサは、用いられる陽極弁作用金属の種類、形状により、チップ型または巻回型のいずれとすることができる。
【0069】
本発明の固体電解コンデンサは、以下の方法により製造される。なお、本発明は以下の製造方法により、なんら限定されない。
【実施例】
【0070】
以下、本発明について実施例を挙げより詳細に説明する。
【0071】
(支持電解質塩の準備)
まず、以下に示すナフタレンモノスルホン酸塩(支持電解質塩m1〜m5)及びナフタレンジスルホン酸塩(支持電解質塩d1〜d3)を準備した。
・ナフタレンモノスルホン酸塩
支持電解質塩m1:メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム
支持電解質塩m2:ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム
支持電解質塩m3:トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム
支持電解質塩m4:ナフタレンスルホン酸ナトリウム
支持電解質塩m5:ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム
・ナフタレンジスルホン酸塩
支持電解質塩d1:1,5−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム
支持電解質塩d2:2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム
支持電解質塩d3:2,6−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム
【0072】
上記支持電解質塩m1〜m3については以下に示す方法にて準備した。
メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレンをスルホン化して水酸化ナトリウムで中和することにより、それぞれをメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウムとして使用した。
以下、詳細な合成方法を示す。
・メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(m1)
50ml四つ口フラスコに1−メチルナフタレン(東京化成製)3.5g(25mmol)+2−メチルナフタレン(東京化成製)3.5g(25mmol)を仕込み、濃硫酸5.4g(55mmol)、60%発煙硫酸8.2g(61mmol)を加えた。その後、150℃に昇温し6時間攪拌した。攪拌後、室温まで放冷し、純水20gを滴下ロートで少しずつ加え、一晩放置した。放置後、析出物をろ過し、ろ液に50%NaOH水溶液を加えてPHを7に調整した。調整後、これをメタノール200gに投下し、一晩放置した。放置後、析出物をろ過し、ろ液をエバポレーターで濃縮して減圧乾燥することにより目的物3.90gを得た。
・ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(m2)
50ml四つ口フラスコにジメチルナフタレン(混合物)(東京化成製)7.8g(50mmol)を仕込み、濃硫酸5.4g(55mmol)、60%発煙硫酸8.2g(61mmol)を加えた。その後、150℃に昇温し6時間攪拌した。攪拌後、室温まで放冷し、純水20gを滴下ロートで少しずつ加え、一晩放置した。放置後、析出物をろ過し、ろ液に50%NaOH水溶液を加えてPHを7に調整した。調整後、これをメタノール200gに投下し、一晩放置した。放置後、析出物をろ過し、ろ液をエバポレーターで濃縮して減圧乾燥することにより目的物4.22gを得た。
・トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(m3)
50ml四つ口フラスコに1,4,5−トリメチルナフタレン(東京化成製)2.8g(16.7mmol)+2,3,5−トリメチルナフタレン(東京化成製)2.8g(16.7mmol)+2,4,5−トリメチルナフタレン(東京化成製)2.8g(16.7mmol)を仕込み、濃硫酸5.4g(55mmol)、60%発煙硫酸8.2g(61mmol)を加えた。その後、150℃に昇温し6時間攪拌した。攪拌後、室温まで放冷し、純水20gを滴下ロートで少しずつ加え、一晩放置した。放置後、析出物をろ過し、ろ液に50%NaOH水溶液を加えてPHを7に調整した。調整後、これをメタノール200gに投下し、一晩放置した。放置後、析出物をろ過し、ろ液をエバポレーターで濃縮して減圧乾燥することにより目的物4.18gを得た。
【0073】
また、支持電解質塩m4〜m5及び支持電解質塩d1〜d3についてはそれぞれ東京化成工業株式会社製の試薬を用いた。
【0074】
(支持電解質溶液の調整)
上記支持電解質塩m1〜m5及びd1〜d3の所定量を水に溶解し、支持電解質塩溶液を調整した。
(電解重合液の調整)
上記各支持電解質溶液にピロールモノマー及び必要に応じて添加剤を加え電解重合液を調整した。
【0075】
(固体電解コンデンサの評価)
(実施例1)
表面に誘電体酸化皮膜が形成された3mm×5mmサイズのエッチドアルミニウム化成箔を105℃乾燥機中で10分間乾燥させた。これを、18℃サーモプレート上に10分間静置した。次に18℃に冷却したモノマー液(ピロール:3(g)+エタノール:5(g)+HO:18.4(g)の混合液):4μlを箔上に滴下し、1分間静置した。さらに、酸化剤液(p−トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム(PTS−TEA):5.6(mmol)+ペルオキソ二硫酸アンモニウム:1.56(g)+HO:10.63(g)の混合液):12μlを箔上に滴下し、10分間静置することで化学酸化重合しプレコート層を形成した。これを純水にて洗浄し、105℃乾燥機中で10分間乾燥させた。
【0076】
次に、上記支持電解質溶液とピロールを混合し、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:4.0(mmol)、2,7−ナフタレンスルホン酸二ナトリウム:1.0(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用意した。
【0077】
プレコート層形成済みエッチドアルミニウム化成箔を電解重合液中に浸漬し、プレコート層に接触させた外部電極を陽極として、電流値を0.4mAに固定して電解重合を行い、導電性高分子層(固体電解質層)を形成した。
【0078】
次に、上記アルミニウム箔の導電性高分子層を形成した部分にカーボンペーストと銀ペーストを順に塗布し、乾燥させて、合計20個のコンデンサ素子を完成させた。
【0079】
これら20個のコンデンサ素子について、100kHzにおける等価直列抵抗(ESR)を測定した。また、125℃大気中放置による熱耐久性試験を行い、100時間経過後に100kHzにおける等価直列抵抗(ESR)を評価した。なお、熱耐久性試験において素子モールドは行わなかった。
【0080】
(実施例2)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:3.0(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、1,5−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:1.0(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0081】
(実施例3)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:2.5(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、2,6−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:1.0(mmol)、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0082】
(実施例4)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.5(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:1.0(mmol)、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0083】
(実施例5)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、1,5−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:1.0(mmol)、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0084】
(実施例6)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:2.5(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:0.5(mmol)、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0085】
(実施例7)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:2.0(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:1.0(mmol)、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0086】
(実施例8)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.5(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:1.5(mmol)、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0087】
(実施例9)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:2.5(mmol)、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g)を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0088】
(実施例10)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:2.0(mmol)、ジメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:1.0(mmol)、トリメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:1.0(mmol)、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.5(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g)、4−ニトロフェノール:0.229(mmol)を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0089】
(比較例1)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:5.0(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0090】
(比較例2)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム:5.0(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0091】
(比較例3)
電解重合液を以下のものに代えたこと以外は実施例1と同様にして20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液(2,7−ナフタレンスルホン酸二ナトリウム:5.0(mmol)、ピロール:0.6(g)、HO:45.8(g))を用いて電解重合を行い、導電性高分子層を形成し、得られたコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。
【0092】
実施例1〜10及び比較例1〜3に用いた電解重合液における支持電解質塩の組成を表1に示す。
実施例1〜10及び比較例1〜3のコンデンサ素子の評価結果を表2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
実施例のものは比較例よりもESRが低く、メチルナフタレンスルホン酸とナフタレンジスルホン酸とをドーパントに用いることで、低いESRが得られることがわかった。
また、実施例4〜10において更にESRが低下しており、メチルナフタレンスルホン酸とナフタレンジスルホン酸に、更に、ジメチルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸を添加することで、ESRを低減可能であることがわかった。
さらにパラニトロフェノールの添加により、ESRが低減され、耐熱性も著しく向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の電解重合液を用いて得られる固体電解コンデンサは、様々な電子機器に用いられるコンデンサとして大変有用である。
また、本発明の電解重合液により得られる導電性高分子は、有機ELディスプレイ、有機トランジスタ、ポリマー電池、太陽電池、各種センサー材料、電磁波シールド材料、帯電防止材料、エレクトロクロミック材料、人工筋肉などにも好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子単量体と支持電解質塩とが、溶媒に溶解されてなる導電性高分子形成用電解重合液において、
該支持電解質塩が、
ナフタレンジスルホン酸塩類及びナフタレンモノスルホン酸塩類をそれぞれ含み、かつ、該ナフタレンモノスルホン酸塩類として下記一般式(1)、
【化1】

(上式において、Xはカチオンを示す。)
で示される化合物を少なくとも含有することを特徴とする導電性高分子形成用電解重合液。
【請求項2】
前記ナフタレンジスルホン酸塩類とナフタレンモノスルホン酸塩類との含有重量比が、
ナフタレンジスルホン酸塩類:ナフタレンモノスルホン酸塩類=1〜60:99〜40であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子形成用電解重合液。
【請求項3】
前記ナフタレンモノスルホン酸塩類中、
上記一般式(1)で示される化合物の含有量が、
20〜90重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性高分子形成用電解重合液。
【請求項4】
ナフタレンモノスルホン酸類として、
下記一般式(2)、
【化2】

(上式においてXはカチオンを示す。)
及び下記一般式(3)、
【化3】

(上式においてXはカチオンを示す。)
で示される化合物をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液。
【請求項5】
導電性高分子単量体がピロールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液。
【請求項6】
下記一般式(4)〜(6)で示される少なくとも1つの化合物が添加剤として溶解されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性高分子形成用電解重合液。
【化4】

(上記一般式(4)〜(6)中、R〜R15はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項7】
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、導電性高分子からなる固体電解質層を有する固体電解コンデンサにおいて、
固体電解質層が、請求項1〜6のいずれか1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液から形成された導電性高分子層を具備することを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項8】
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、請求項1〜6のいずれか1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液を用い、導電性高分子層を電解重合により形成する工程を包含する固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
導電性高分子単量体と混合し、導電性高分子形成用電解重合液を調整するための支持電解質溶液であって、
支持電解質として、ナフタレンジスルホン酸塩類及びナフタレンモノスルホン酸塩類をそれぞれ含み、かつ該ナフタレンモノスルホン酸塩類として
下記一般式(1)、
【化5】

(上式において、Xはカチオンを示す。)
で示される化合物を水に溶解させてなることを特徴とする導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質溶液。
【請求項10】
前記ナフタレンジスルホン酸塩類とナフタレンモノスルホン酸塩類との含有重量比が、
ナフタレンジスルホン酸塩類:ナフタレンモノスルホン酸塩類=1〜60:99〜40であることを特徴とする請求項9に記載の導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質溶液。
【請求項11】
前記ナフタレンモノスルホン酸塩類中、
上記一般式(1)で示される化合物の含有量が、
20〜90重量%であることを特徴とする請求項9又は10に記載の導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質溶液。
【請求項12】
ナフタレンモノスルホン酸類として、
下記一般式(2)、
【化6】

(上式においてXはカチオンを示す。)
及び下記一般式(3)、
【化7】

(上式においてXはカチオンを示す。)
で示される化合物をそれぞれ含むことを特徴とする請求項9から11のいずれかに1つに記載の導電性高分子形成用電解重合液調整用支持電解質溶液。

【公開番号】特開2012−54258(P2012−54258A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193007(P2010−193007)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】