説明

導電率検出器およびこれを用いた導電率計並びに電磁濃度計

【課題】導電率検出器の耐食性を維持したまま被測定液の温度変化にすばやく追従できる導電率検出器およびこの導電率検出器を用いた導電率計並びに電磁濃度計を提供する。
【解決手段】 被測定液Sの導電率に応じた信号および温度信号を出力する電磁誘導式の導電率検出器において、
励磁トランス10aおよび検出トランス10bを内蔵した検出部10を備え、前記被測定液Sの導電率に応じた信号を出力する検出器本体1と、
この検出器本体1の外周面全体を覆うとともに前記被測定液Sに対して耐食性を有する皮膜Lとを備え、
ケース内に温度センサを収納したセンサ部2を前記検出器本体1に連結させ、前記検出部10とともに前記被測定液Sの液面下に位置させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定液の導電率に応じた信号および温度信号を出力する電磁誘導式の導電率検出器およびこの導電率検出器を用いた電磁誘導式の導電率計に関する。さらに、この導電率計を用いた電磁濃度計に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の電磁誘導式の導電率検出器の一例を示す図である。導電率検出器の検出器本体は、同軸上に配置された励磁トランス10aおよび検出トランス10bと、これらのトランスを収納する本体ケース10cからなる検出部10と、励磁トランス10aと検出トランス10bのリード線を収納する支持部11とから構成されている。本体ケース10cおよび支持部11は金属製であり、これらの外周面は樹脂などの絶縁物からなる皮膜Lで保護されている。本体ケース10cの全体および支持部11の一部は、被測定液Sに浸されている。
【0003】
励磁トランス10aに交流電流を流すと、電磁誘導により被測定液S中に被測定液Sの導電率Cに比例した誘導電流Iが流れる。一方、検出トランス10bには、誘導電流Iに比例した電圧Eが発生する。電圧Eは被測定液Sの導電率Cに比例した値となるため、この電圧Eを測定することによって被測定液Sの導電率Cを求めることができる。
【0004】
ところで、導電率Cは被測定液Sの温度Tによって大きく変化するため、基準温度Tsにおける導電率Csに換算する必要がある。そこで、支持部11の内部に取り付けられた温度センサ11bにより、支持部11内部の温度を被測定液Sの温度Tとして検出し、導電率Cの温度補償を行う。
【0005】
このような電磁誘導式の導電率検出器は、接液部に電極などの金属部品が露出していないため、耐食性に優れているという特徴がある。そのため、塩酸(HCl)や苛性ソーダ(NaOH)などの強酸、強アルカリの腐食性液体を被測定液Sとした測定に多く利用されている。このような電磁誘導式の導電率計がたとえば特許文献1に記載されている。
また、液体の導電率と濃度には相関があるため、このような導電率検出器を用いた導電率計は、特許文献2に記載されているように、液体の濃度を求める電磁濃度計としても広く利用されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−153564号公報
【特許文献2】特開2002−267635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の導電率検出器では、温度センサ11bの温度応答が遅いという問題があった。
【0008】
すなわち、温度センサ11bが取り付けられている支持部11は比較的大きな体積を有しているため、熱容量が大きい。そのため、被測定液Sに温度変化が生じても、支持部11内部に温度変化が生じるまでに時間がかかり、その結果温度センサ11bで測定される温度に変化が現れるまでに時間がかかってしまう。
【0009】
また、支持部11内部における温度センサ11bの取り付け位置は、図4に示すように、導電率検出器の使用状況によっては被測定液Sの液面上となってしまう場合もあった。温度センサ11bが被測定液Sの液面上となってしまうと、被測定液Sの温度変化を検出するまでにさらに時間がかかってしまう。
【0010】
上記のような理由のため、測定中に被測定液Sの温度Tが変化すると、導電率Csは一定であるにもかかわらず、まるで導電率Csが変化しているかのような測定誤差を生じさせていた。
【0011】
温度センサ11bを検出器本体から独立した別体とした上で被測定液S中に入れることにより、温度センサ11bの温度応答が大きく改善することが見込まれる。
このような構成とした場合には、温度センサ11bと検出器本体との間の信号系統をピン端子コネクタで接続することも考えられるが、ピン端子が被測定液Sに濡れて腐食すると、腐食した部分から検出器本体内部に被測定液Sが浸入し、検出器本体に悪影響を及ぼすおそれがある。検出器本体は温度センサ11bと比較して高価であるため、コストの観点から容易に交換するのは難しい。
【0012】
本発明は、従来装置の問題をなくし、検出器本体の耐食性を確保したまま被測定液の温度変化にすばやく追従できる導電率検出器およびこの導電率検出器を用いた導電率計を提供することを目的とする。さらに、このような導電率計を用いた電磁濃度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような目的を達成するために、請求項1の発明は、
被測定液の導電率に応じた信号および温度信号を出力する電磁誘導式の導電率検出器において、
励磁トランスおよび検出トランスを内蔵した検出部を備え、前記被測定液の導電率に応じた信号を出力する検出器本体と、
この検出器本体の外周面全体を覆うとともに前記被測定液に対して耐食性を有する皮膜とを備え、
ケース内に温度センサを収納したセンサ部を前記検出器本体に連結させ、前記検出部とともに前記被測定液の液面下に位置させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の導電率検出器において、
前記検出器本体から前記センサ部に無接点で電力を供給する伝送モジュールを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載の導電率検出器において、
前記伝送モジュールは、
前記検出器本体内部に配置された1次コイルを含む1次伝送モジュールと、
前記センサ部内部に配置された2次コイルを含む2次伝送モジュールとからなり、
電磁誘導により前記1次コイルから前記2次コイルに起電力を発生させることにより、前記1次伝送モジュールから前記2次伝送モジュールに対して電力を伝送することを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の導電率検出器において、
前記伝送モジュールは、前記センサ部で測定された温度情報を、負荷変調を利用してデータ伝送を行う方式で前記センサ部から前記検出器本体へ伝送することを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の導電率検出器において、
前記センサ部のケースは、金属製であることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の導電率検出器において、
前記センサ部のケースは、前記検出器本体と同じ皮膜で覆われたことを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、請求項6に記載の導電率検出器において、
前記センサ部のケースは、皮膜が前記検出器本体の皮膜の肉厚よりも薄く形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の導電率検出器において、
前記皮膜は、フッ素樹脂またはPEEK(登録商標)樹脂であることを特徴とする。
【0021】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の導電率検出器において、
前記センサ部は、圧入構造、ねじこみ構造、またはラッチ構造のいずれかで前記検出器本体に連結されることを特徴とする。
【0022】
請求項10の発明は、
請求項1〜9のいずれかに記載の導電率検出器と、
この導電率検出器から出力される導電率に応じた信号および温度信号に基づいて、前記被測定液の基準温度における導電率を求める導電率変換部と、
を備えたことを特徴とする導電率計である。
【0023】
請求項11の発明は、
請求項10に記載の導電率計と、
この導電率計で測定した導電率に基づいて前記被測定液の濃度を求める演算部と、
を備えたことを特徴とする電磁濃度計である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、
センサ部を検出器本体から着脱可能な別体としたことにより、センサ部のケースが小さなもので済み、センサ部全体の熱容量を小さくすることができる。そのため、センサ部内部に収納された温度センサは、被測定液の温度変化にすばやく追従することができる。
また、センサ部を検出部とともに被測定液の液面下に位置させるようにしたため、より被測定液の温度変化にすばやく追従することができる。さらに、検出器本体は従来通り外周面全体が皮膜で保護されている。
以上より、検出器本体の耐食性を確保したまま被測定液の温度変化にすばやく追従できる導電率検出器を実現できる。
【0025】
請求項2の発明によれば、
検出器本体からセンサ部に無接点で電力を供給する伝送モジュールを備えているため、検出器本体とセンサ部とをピン端子コネクタで接続することなく、センサ部に電力供給を行うことができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、
伝送モジュールを電磁誘導式としたことにより、伝送モジュールの物理的構造が簡単となり、センサ部の形状の自由度を高めることができる。また、センサ部の小型化が容易である。
【0027】
請求項4の発明によれば、
センサ部で測定された温度情報を、負荷変調を利用してデータ伝送を行う方式で検出器本体へ伝送することにより、センサ部に無線通信機などの温度情報伝送用のモジュールを追加することなく、温度情報の伝送を行うことができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、
センサ部のケースを金属製としたことにより、温度応答を大幅に向上できる。
【0029】
請求項6の発明によれば、
センサ部のケースが耐食性のある皮膜で覆われているため、被測定液に破壊されにくい。
【0030】
請求項7の発明によれば、
センサ部のケースの皮膜が検出器本体の皮膜の肉厚よりも薄く形成されているため、検出器本体の皮膜と同じ肉厚で形成された場合と比較して、温度応答がよい。
【0031】
請求項8の発明によれば、
皮膜がフッ素樹脂またはPEEK樹脂であるため、さまざまな腐食性液体の測定に対応できる。
【0032】
請求項9の発明によれば、
前記センサ部は、圧入構造、ねじこみ構造、またはラッチ構造のいずれかで検出器本体に連結されるため、簡易な構造でセンサ部を検出器本体に連結させることができる。
【0033】
請求項10の発明によれば、
請求項1〜9に記載の導電率検出器を用いることにより、検出器本体の耐食性を維持したまま被測定液の温度変化にすばやく追従できる導電率計を実現できる。
【0034】
請求項11の発明によれば、
請求項10に記載の導電率計を用いることにより、検出器本体の耐食性を維持したまま被測定液の温度変化にすばやく追従できる電磁濃度計を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1、図2は本発明の導電率計の一実施例を示す図である。図1は本発明の導電率計の導電率検出器の斜視図である。図2の(a)は図1の導電率検出器の正面図、(b)は側面図、(c)は突起部12とセンサ部2の部分断面図である。従来例と同じ構成要素には同じ番号を付して説明を省略する。
【実施例1】
【0036】
検出部10と支持部11で検出器本体1が構成されている。検出器本体1は、支持部11に収納されたリード線11aにより、図示しない制御部200に接続されている。支持部11は、検出部10との接合部付近に突起部12が形成されている。さらに、突起部12は検出部10側にセンサ部取り付け面を有しており、ここに被測定液Sの温度Tを測定するセンサ部2が取り付けられている。
【0037】
突起部12のセンサ部取り付け面は、検出部10と支持部11の接合部とほぼ同じ高さに形成されている。センサ部2は、導電率検出器の使用時において、検出部10とともに被測定液Sの液面下に配置される。検出器本体1とセンサ部2で、導電率検出器100を構成している。
【0038】
センサ部2は、ステンレス製のケース20の内部に温度センサ22等を収納した着脱式のユニットとして構成されている。突起部12のセンサ部取り付け面には、センサ部2取り付け用の圧入孔が形成されている。センサ部2にはこの圧入孔に接合する凸部が形成されており、圧入により突起部12に連結される。突起部12は、圧入孔部分も含めて支持部11に一体形成されている。検出器本体1は、突起部12を含め外周面全体がフッ素樹脂の皮膜Lで覆われている。
【0039】
突起部12とセンサ部2は、それぞれ内部に基板121,21を備えている。基板121と基板21は、センサ部2が突起部12に取り付けられた状態において対向するように配置されている。基板121,21には、各種回路が形成されている。さらに、基板21には、温度センサ22が接続されている。
【0040】
符号30は、突起部12からセンサ部2に駆動電力Pを供給するとともに、センサ部2から突起部12に被測定液Sの温度Tを送信する伝送モジュールである。
伝送モジュール30は、基板121に形成された1次伝送モジュール31と、基板21に形成された2次伝送モジュール32から構成されている。1次伝送モジュール31は1次コイルを、2次伝送モジュール32は2次コイルを備えており、電磁誘導により1次コイルから2次コイルに電流を発生させることにより、1次伝送モジュール31側から2次伝送モジュール32側に無接点で電力Pが伝送される。
また、伝送モジュール30は、2次コイルに負荷変調をかけてデータ伝送を行う方式により、温度Tを1次伝送モジュール31へと伝送する。伝送された温度Tは、導電率Cの温度補償に利用される。
【0041】
図3は、本発明の導電率計のブロック図である。導電率計は、検出器本体1およびセンサ部2からなる導電率検出器100と、導電率検出器100を制御する制御部200、導電率Csを表示する表示部300から構成されている。
【0042】
検出器本体1は、励磁トランス10a、検出トランス10b、1次伝送モジュール31を備えており、1次伝送モジュール31は、送信回路31a、1次コイル31b、受信回路31c、復調回路31dから構成されている。
センサ部2は、温度センサ22、センサ電圧測定回路23、制御回路24、2次伝送モジュール32を備えており、2次伝送モジュール32は、2次コイル32a、整流回路32b、変調回路32c、負荷変調回路32dから構成されている。
制御部200は、励磁トランス10aを制御するトランス制御回路210、センサ部2への電力伝送を制御する駆動電力制御回路220、被測定液Sの基準温度における導電率Csを求める導電率変換部230から構成されている。
【0043】
トランス制御回路210は、励磁用の交流電流を励磁トランス10aに供給する。検出トランス10bに発生した電圧Eは、導電率変換部230に入力される。
【0044】
駆動電力制御回路220は、センサ部2への電力供給に必要な交流電流Im1を生成し、送信回路31aに出力する。送信回路31aは、フィルタで不要な周波数を減衰し、コイル31bに交流電流Im1’を供給する。
コイル31bに交流電流Im1’が供給されると、電磁誘導により、2次コイル32aに交流電流Im2が発生する。2次コイルに発生した交流電流Im2は、整流回路32bにより直流に変換され、センサ部2内の各回路を駆動する電力Pとして利用される。
【0045】
温度センサ22は、センサ電圧測定回路23を介して駆動され、温度Tを電圧Etに変換する。センサ電圧測定回路23は、温度センサ22に発生した電圧Etを測定し、制御回路24に出力する。制御回路24は、電圧Etを温度情報に変換して、変調回路32cに出力する。
【0046】
変調回路32cは、制御回路24から入力された温度情報を、データ伝送に適した送信データStに変換し、この送信データStに応じて負荷変調回路32dを制御する。
負荷変調回路32dは、2次コイル32aに並列に接続されたスイッチおよび抵抗成分からなる負荷から構成されている。負荷変調回路32dは、2次コイル32aを適当な抵抗値を介して短絡させて2次コイル32aの負荷変調を行い、2次コイル32aによって生じる反磁界に変化を生じさせる。反磁界を変化させることにより1次コイルに流れる電流Im1’に送信データを重畳させ、1次コイル31b側へデータ伝送を行う。
【0047】
受信回路31cは、重畳された送信データStを1次コイル31bに流れる電流Im1’から取り出し、復調回路31dに出力する。復調回路31dは、送信データStを温度情報に変換し、導電率変換部230に出力する。
【0048】
導電率変換部230は、検出トランス10bから入力される電圧Eを導電率Cに変換する。さらに、導電率変換部230は、導電率Cに対して温度情報に基づいて温度補償を行い、基準温度Tsにおける導電率Csに変換する。得られた導電率Csは、液晶表示器などの表示部300で表示される。
【0049】
本実施例は以上のように構成され、
センサ部2を検出器本体1から着脱可能な別体としたことにより、センサ部2のケース20が小さなもので済み、センサ部2全体の熱容量を小さくすることができる。そのため、センサ部2内部に収納された温度センサ22は、被測定液Sの温度変化にすばやく追従することができる。
また、センサ部2を検出部10とともに被測定液Sの液面下に位置させるように構成したため、より被測定液Sの温度変化にすばやく追従することができる。さらに、センサ部2が検出部10の近くで連結されているため、温度補償の精度がさらに向上する。
また、検出器本体1は従来通り外周面全体が皮膜Lで覆われているため、被測定液Sによる腐食から保護されている。
以上より、検出器本体1の耐食性を確保したまま被測定液Sの温度変化にすばやく追従できる導電率検出器100を実現できる。
なお、センサ部2は着脱可能であるため、センサ部2が被測定液Sで破壊されたとしても、容易にセンサ部2を交換できる。
【0050】
また、検出器本体1からセンサ部2に無接点で電力を供給する伝送モジュール30を備えているため、検出器本体1とセンサ部2とをピン接続することなく、センサ部2に電力供給を行うことができる。
【0051】
また、伝送モジュール30を電磁誘導式としたことにより、伝送モジュール30の物理的構造が簡単となり、センサ部2の形状の自由度を高めることができる。また、センサ部2の小型化が容易である。
【0052】
また、センサ部2で測定された温度Tを、負荷変調を利用してデータ伝送を行う方式で検出器本体1へ伝送することにより、センサ部2に無線通信機などの温度情報伝送用のモジュールを追加することなく、温度情報の伝送を行うことができる。
【0053】
また、センサ部2のケース20を熱伝導度の高いステンレス製としたことにより、温度応答を大幅に向上できる。
【0054】
また、皮膜Lがフッ素樹脂であるため、さまざまな腐食性液体を被測定液Sとした測定に対応できる。
【0055】
また、センサ部2は、圧入構造で検出器本体1に連結されるため、簡易な構造でセンサ部2を検出器本体1に連結させることができる。
【0056】
また、このような導電率検出器100を用いることにより、検出器本体1の耐食性を維持したまま被測定液Sの温度変化にすばやく追従できる導電率計を実現できる。
さらに、このような導電率計を用いることにより、検出器本体1の耐食性を維持したまま被測定液Sの温度変化にすばやく追従できる電磁濃度計を実現できる。
【0057】
なお、本実施例では、検出器本体1を覆う皮膜をフッ素樹脂としたが、PEEK樹脂など他の樹脂を利用してもよい。PEEK樹脂を利用した場合には、フッ素樹脂と同様に、さまざまな腐食性液体の測定に対応できる。
【0058】
また、本実施例では、センサ部2を圧入構造により検出器本体1に連結したが、圧入構造に限らず、ねじ込み構造やラッチ構造を採用してもよい。
【0059】
また、本実施例では、センサ部2のケース20をステンレス製としたが、ハステロイなどの他の金属で形成してもよい。
さらに、ケース20は、検出器本体1と同様に皮膜Lで覆われていてもよい。皮膜Lで覆われている場合は、覆われていない場合よりは温度応答低下が見込まれるが、被測定液Sによって破壊されにくくなり、長期にわたりセンサ部2を交換せずに済む。
なお、センサ部2の皮膜を検出器本体1の皮膜の肉厚よりも薄く形成すれば、被測定液Sに対する耐食性を確保しながら、さらに温度応答性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施例では、伝送モジュール30を電磁誘導式のものを用いたが、無接点で電力を供給できれば、他の方式の伝送モジュールでもよい。
【0061】
また、本実施例では、温度Tの測定のために、温度センサ22に発生する電圧を測定するセンサ電圧測定回路23を設けた。しかし、センサ電圧測定回路23は、温度センサ22の抵抗値変化を測定するセンサ抵抗測定回路としてもよい。
【0062】
また、本実施例では、導電率Csを求める導電率変換部230は制御部200の一部として構成されているが、導電率検出器100の一部として構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の導電率計の構成を示す図である。
【図2】本発明の導電率計の構成を示す図である。
【図3】本発明の導電率計のブロック図である。
【図4】従来の電磁誘導式の導電率計の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 検出器本体
10 検出部
10a 励磁トランス
10b 検出トランス
10c 本体ケース
11 支持部
11a リード線
12 突起部
121 基板
2 センサ部
20 ケース
21 基板
22 温度センサ
23 センサ電圧測定回路
24 制御回路
30 伝送モジュール
31 1次伝送モジュール
31a 送信回路
31b 1次コイル
31c 受信回路
31d 復調回路
32 2次伝送モジュール
32a 2次コイル
32b 整流回路
32c 変調回路
32d 負荷変調回路
100 導電率検出器
200 制御部
210 トランス制御回路
220 駆動電力制御回路
230 導電率変換部
300 表示部
L 皮膜
S 被測定液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定液の導電率に応じた信号および温度信号を出力する電磁誘導式の導電率検出器において、
励磁トランスおよび検出トランスを内蔵した検出部を備え、前記被測定液の導電率に応じた信号を出力する検出器本体と、
この検出器本体の外周面全体を覆うとともに前記被測定液に対して耐食性を有する皮膜とを備え、
ケース内に温度センサを収納したセンサ部を前記検出器本体に連結させ、前記検出部とともに前記被測定液の液面下に位置させるようにしたことを特徴とする導電率検出器。
【請求項2】
前記検出器本体から前記センサ部に無接点で電力を供給する伝送モジュールを備えたことを特徴とする請求項1に記載の導電率検出器。
【請求項3】
前記伝送モジュールは、
前記検出器本体内部に配置された1次コイルを含む1次伝送モジュールと、
前記センサ部内部に配置された2次コイルを含む2次伝送モジュールとからなり、
電磁誘導により前記1次コイルから前記2次コイルに起電力を発生させることにより、前記1次伝送モジュールから前記2次伝送モジュールに対して電力を伝送することを特徴とする請求項2に記載の導電率検出器。
【請求項4】
前記伝送モジュールは、前記センサ部で測定された温度情報を、負荷変調を利用してデータ伝送を行う方式で前記センサ部から前記検出器本体へ伝送することを特徴とする請求項2または3に記載の導電率検出器。
【請求項5】
前記センサ部のケースは、金属製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電率検出器。
【請求項6】
前記センサ部のケースは、前記検出器本体と同じ皮膜で覆われたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電率検出器。
【請求項7】
前記センサ部のケースは、皮膜が前記検出器本体の皮膜の肉厚よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項6に記載の導電率検出器。
【請求項8】
前記皮膜は、フッ素樹脂またはPEEK(登録商標)樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電率検出器。
【請求項9】
前記センサ部は、圧入構造、ねじこみ構造、またはラッチ構造のいずれかで前記検出器本体に連結されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の導電率検出器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の導電率検出器と、
この導電率検出器から出力される導電率に応じた信号および温度信号に基づいて、前記被測定液の基準温度における導電率を求める導電率変換部と、
を備えたことを特徴とする導電率計。
【請求項11】
請求項10に記載の導電率計と、
この導電率計で測定した導電率に基づいて前記被測定液の濃度を求める演算部と、
を備えたことを特徴とする電磁濃度計。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−85216(P2010−85216A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253856(P2008−253856)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】