説明

導電粒子、その製造方法及び異方性導電接着剤

【課題】樹脂粒子表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない導電粒子の割合を極力抑制し、しかも凝集せずに一次粒子(単一粒子)で存在している割合が高く、異方性導電接着剤用途に適した導電粒子を提供する。
【解決手段】導電粒子は、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子と、その表面に形成された無電解メッキ金属薄膜とから構成されている。この導電粒子は、樹脂粒子の表面に対し、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理工程、メラミン吸着処理が施された樹脂粒子の表面に、無電解メッキ促進用の触媒を析出させる触媒化処理工程、及び触媒化処理工程が施された樹脂粒子の表面に、無電解メッキにより金属薄膜を形成する無電解メッキ処理工程を有する製造方法により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子の表面に金属薄膜が形成された導電粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電フィルムに配合される比較的潰れやすい導電粒子として、樹脂粒子の表面に無電解メッキ金属薄膜を形成したものが広く使用されている。このような導電粒子における樹脂粒子と無電解メッキ金属薄膜との間の密着性を向上させるために、樹脂粒子の表面をクロム酸や過マンガン酸などの強力な酸化剤で樹脂粒子の表面を粗化することが行われている。
【0003】
しかし、このような酸化剤は重金属を含むため、環境負荷が大きく、導電粒子に残留した場合に導電粒子が適用される電子デバイスの性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。そこで、そのような酸化剤を使用せずに、樹脂粒子と無電解メッキ金属薄膜との間の密着性を向上させるために、樹脂粒子の表面をメラミン樹脂で被覆し、メラミン樹脂被膜上に無電解メッキ金属薄膜を形成することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無電解メッキ薄膜を形成する前に、樹脂粒子の表面にメラミン樹脂被膜を形成した場合、樹脂粒子表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない導電粒子が少なからず存在するという問題があった。また、無電解メッキ処理により、導電粒子が凝集し、一次粒子(単一粒子)で存在している割合が低下するという問題があった。このような問題を伴う導電粒子は、異方性導電接着剤用途に不向きなものである。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解決しようとするものであり、樹脂粒子表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない導電粒子の割合を極力抑制し、しかも凝集せずに一次粒子(単一粒子)で存在している割合が高く、異方性導電接着剤用途に適した導電粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、メラミン樹脂に代えて、メラミン樹脂の原料であって加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を、樹脂粒子の表面に吸着させ、その後で無電解メッキ金属薄膜を形成した導電粒子が、無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない割合が非常に低く、しかも、単一粒子率が高いものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子と、その表面に形成された無電解メッキ金属薄膜とからなる導電粒子を提供する。
【0009】
また、本発明は、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子と、その表面に形成された無電解メッキ金属薄膜とからなる導電粒子の製造方法であって、
樹脂粒子の表面に対し、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理工程、
メラミン吸着処理が施された樹脂粒子の表面に、無電解メッキ促進用の触媒を析出させる触媒化処理工程、及び
触媒化処理工程が施された樹脂粒子の表面に、無電解メッキにより金属薄膜を形成する無電解メッキ処理工程
を有することを特徴とする製造方法を提供する。
【0010】
更に、本発明は、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子と、その表面に形成された無電解メッキ金属薄膜とからなる導電粒子が、絶縁性接着剤中に分散してなる異方性導電接着剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電粒子は、樹脂粒子の表面に無電解メッキ金属薄膜が形成されたものであるが、その樹脂粒子として、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施されたものを使用する。このため、樹脂粒子表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない導電粒子の割合が極力抑制され、しかも凝集せずに一次粒子(単一粒子)で存在している導電粒子の割合が高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<導電粒子>
本発明の導電粒子は、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子と、その表面に形成された無電解メッキ金属薄膜とから構成されている。
【0013】
(樹脂粒子)
本発明の導電粒子を構成する樹脂粒子としては、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子を使用する。ここで、自己縮合しうるメラミン化合物とは、加熱により自己縮合してメラミン樹脂に変化しうる状態のメラミン化合物であり、例えば、メラミンのアミノ基の窒素原子にメチロール基や2−ヒドロキシエチル基が1〜6個結合した化合物が挙げられる。具体的には、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン、N−(2−ヒドロキシエチル)メラミン、N,N′−ビス(2−ヒドロキシエチル)メラミン、N,N′,N″−トリス(2−ヒドロキシエチル)メラミン等のエチロールメラミンを挙げることができる。中でも、無電解メッキ金属薄膜を安定的に形成できる点からメチロールメラニン、特にトリメチロールメラミンを好ましく使用することができる。
【0014】
メラミン吸着処理としては、導電粒子の製造方法に関し後述するように、例えば、メラミン化合物の水溶液に樹脂粒子を投入し、1〜10時間撹拌する処理が挙げられる。この際、必要に応じ加熱してもよいが、メラミン化合物の自己縮合が生じる温度にまで加熱することは避ける必要がある。メラミン吸着処理を施した樹脂粒子は、メラミン化合物の水溶液から濾別し、水で洗浄後、メラミン化合物の自己縮合が生じないように乾燥しておくことができる。
【0015】
このようなメラミン化合物の樹脂粒子の吸着量に関し、吸着量のコントロールは、主としてメラミン吸着処理液中のメラミン化合物濃度、処理温度、処理時間により行うことができる。一般に、吸着量が少なすぎると無電解メッキ金属薄膜に欠損部分が増大する傾向があり、多すぎるとメッキ金属の析出を阻害する傾向があるので、そのような弊害が生じないように吸着量をコントロールすることが好ましい。
【0016】
導電粒子のコアとなる樹脂粒子の材料としては、従来の異方性導電接着剤に配合されている金属被覆樹脂粒子を構成している樹脂材料を適用することができる。例えば、メラミン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0017】
導電粒子のコアとなる樹脂粒子の粒径は、導電粒子の使用目的(例えば、異方性導電接着剤用の導電粒子、導電性接着剤用の導電粒子、電磁波シールドシート用の導電粒子等)によるが、例えば導電粒子を異方性導電接着剤に配合する場合には、0.5〜10μm、好ましくは2〜5μmである。
【0018】
なお、本発明の導電粒子を構成する樹脂粒子は、メラミン吸着処理に続いて触媒化処理が施されていることが好ましい。これにより、無電解メッキ金属薄膜の形成速度を速め、密着性を向上させることができる。
【0019】
触媒化処理としては、従来の無電解メッキで行われている触媒化処理を適用することができる。
【0020】
触媒化処理によりパラジウムを析出させた場合の析出量に関し、析出量のコントロールは、主として触媒化処理液中のパラジウム化合物の種類や濃度、触媒化処理温度、還元剤の種類や濃度により行うことができる。一般に、析出量が少なすぎると無電解メッキ金属薄膜に欠損部分が増大する傾向があり、多すぎても析出量に見合った効果が得られず、触媒化処理コストが増大する傾向があるので、そのような弊害が生じないように析出量をコントロールすることが好ましい。
【0021】
(無電解メッキ金属薄膜)
本発明の導電粒子を構成する無電解メッキ金属薄膜としては、無電解メッキにより形成された金薄膜、ニッケル薄膜、胴薄膜、銀薄膜、パラジウム薄膜等を例示することができる。中でも、異方性導電接続信頼性の観点からニッケル薄膜を好ましく使用することができる。
【0022】
無電解メッキ金属薄膜の膜厚としては、使用する金属種により異なるが、薄すぎると無電解メッキ金属薄膜の欠損部分が増大する傾向にあり、そのような欠損部分を有する導電粒子を異方性導電接着剤に適用すると導通信頼性が低下する傾向がある。厚すぎると導電粒子が凝集し易くなる傾向があるので、好ましくは10〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
【0023】
無電解メッキ金属薄膜の形成は、従来の無電解メッキ法に準じて行うことができる。
【0024】
<導電粒子の製造方法>
本発明の導電粒子は、以下に説明するように、メラミン吸着処理工程、触媒化処理工程及び無電解メッキ処理工程を有する製造方法により好ましく製造することができる。以下に工程毎に説明する。なお、触媒化処理工程を省略した場合でも、樹脂粒子の表面に無電解メッキ金属薄膜を形成することができるが、樹脂粒子に対する無電解メッキ金属薄膜の密着性が低下することが懸念されるので、省略しない方が好ましい。
【0025】
(メラミン吸着処理工程)
メラミン吸着処理工程は、樹脂粒子の表面に対し、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させる工程である。このようなメラミン化合物を樹脂粒子の表面に吸着させる手法としては、自己縮合させないように吸着させることができる手法であれば適用することができる。例えば、このようなメラニン化合物の溶液(好ましくは水溶液)に樹脂粒子を浸漬することが挙げられる。
【0026】
例えば、メラミン化合物としてトリメチロールメラミンを使用した場合、好ましくは精製水1Lにトリメチロールメラミン5〜10gと、樹脂粒子10〜20gとを投入し、1〜3時間撹拌する処理を例示することができる。この際、加熱してもよいが、トリメチロールメラミンの自己縮合が生じる温度(100℃以上)にまで加熱することは避ける必要がある。通常は20〜60℃である。メラミン吸着処理を施した樹脂粒子は、メラミン化合物の水溶液から濾別し、水洗後、メラミン化合物の自己縮合が生じないように自然乾燥すればよい。
【0027】
(触媒化処理工程)
触媒化処理工程は、メラミン吸着処理が施された樹脂粒子の表面に、無電解メッキ促進用の触媒を析出させる工程である。触媒化処理としては、従来の無電解メッキで行われている触媒化処理を適用することができる。この場合、処理温度は、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物の自己縮合を生じさせない温度である。例えば、センシタイジング−アクチベーティング法やキャタライジング−アクセラレーティング法により触媒金属、好ましくはパラジウムを適用して樹脂表面に析出させる処理を例示することができる。
【0028】
(センシタイジング−アクチベーティング法)
メラミン吸着処理が施された樹脂粒子を、センシタイザー液に5〜80℃で10秒〜10分間浸漬し、水洗し、次いでアクチベーター液に5〜80℃で10秒〜10分間浸漬する。アクチベーター液から樹脂粒子を濾別して水洗し乾燥する。センシタイザー液及びアクチベーター液としては公知のものが使用できる。例えば、センシタイザー液の具体例としては、塩化第1錫5〜50g/l(リットル)と塩酸(塩化水素換算)5〜50g/lとを含有する水溶液を挙げることができる。また、アクチベーター液としては、パラジウム塩0.05〜1.0g/lを含有する水溶液が挙げられる。ここで、パラジウム塩としては、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、塩化パラジウムカリウム、テトラアンミン塩化パラジウムなどを挙げることができる。
【0029】
(キャタライジング−アクセラレーティング法)
メラミン吸着処理が施された樹脂粒子を、5〜80℃で10秒〜50分間、キャタライザー液に浸し、水洗し、ついで5〜80℃で10秒〜50分間、アクセラレーター液に浸漬する。アクセラレーター液から樹脂粒子を濾別して水洗し乾燥する。キャタライザー液及びアクセラレーター液としては公知のものが使用できる。例えば、キャタライザー液としては、塩化第1錫5〜50g/lと上述したようなパラジウム塩0.05〜1.0g/lと塩酸(塩化水素換算)5〜50g/lとを含有するコロイド液が挙げられ、また、アクセラレーター液としては、塩酸が挙げられる。
【0030】
その他に、触媒化処理工程としては、メラミン吸着処理が施された樹脂粒子10gを、塩化パラジウム水溶液(0.5〜1.0g/l)200〜400mlに投入した後、50〜70℃で5秒〜20分加熱撹拌し、その後、次亜リン酸水溶液(30〜60g/l)50〜200mlを加入し、更に10〜30分間撹拌を続け、パラジウムを析出させる処理が挙げられる。
【0031】
(無電解メッキ処理工程)
無電解メッキ処理工程は、触媒化処理工程が施された樹脂粒子の表面に、無電解メッキにより金属薄膜を形成しする工程であり、従来より公知の無電解銅メッキ、ニッケルメッキ、金メッキ、銀メッキ、錫メッキなどを使用目的に応じて、選択することできる。中でも、無電解ニッケルメッキを好ましく適用することができる。このような無電解メッキ処理工程を経ることにより本発明の導電粒子を得ることができる。
【0032】
<異方性導電接着剤>
以上説明した本発明の導電粒子は、異方性導電接着剤に配合する導電粒子として好ましく適用することができる。即ち、この異方性導電接着剤は、上述した、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子の表面に無電解メッキ金属薄膜を形成してなる導電粒子を、異方性導電接着剤中に5〜12容量%となるように、絶縁性接着剤に公知の分散手法により分散したものである。通常、ペースト状接着剤、あるいはフィルムに成形して異方性導電フィルムとして使用される。
【0033】
絶縁性接着剤としては、従来公知の絶縁性接着剤を適用することができ、好ましくは、熱硬化型エポキシ系接着剤を使用することができる。そのような熱硬化型エポキシ系接着剤は、膜形成樹脂、液状エポキシ樹脂(硬化成分)、硬化剤、シランカップリング剤等の構成成分を公知の方法で均一に混合することにより調製することができる。これらの構成成分は、接着層に求める特性等に応じて公知のものから適宜選択して使用することができる。
【0034】
膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。
【0035】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。
【0036】
硬化剤としては、ポリアミン、イミダゾール等のアニオン系硬化剤やスルホニウム塩などのカチオン系硬化剤、フェノール系硬化剤等の潜在性硬化剤を挙げることができる。
【0037】
シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0038】
熱硬化型エポキシ系接着剤には、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを配合することができる。
【0039】
本発明の導電粒子は、異方性導電接着剤の他、等方性導電接着剤、磁性シールド剤に使用する導電粒子に適用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、発明を実施例により具体的に説明する。
【0041】
実施例1
(メラミン吸着処理)
平均粒径3.0μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(MX−300、総研化学(株))10gを、2Lコニカルビーカー中の精製水1Lに投入し、更にメチロールメラミン(ニカレジンS−260、日本カーバイド工業(株))5gを投入し、60℃で3時間撹拌することによりメラミン吸着処理を行った。時間経過後、樹脂粒子を濾過により回収し、水で洗浄し、自然乾燥した。
【0042】
(触媒化処理)
メラミン吸着処理を施した樹脂粒子(約10g)を、表面処理剤としてアミン系界面活性剤を10g/lの割合で溶解しているイオン交換水1Lに投入し撹拌しながら60℃に昇温した。そこへ塩化パラジウム水溶液(1g/L)を250mlを投入し、60℃で10分間撹拌した。次いで、次亜リン酸水溶液(60g/L)200mlを投入し、更に30分間撹拌を続け、表面にパラジウムが析出した樹脂粒子を含有するスラリー液を得た。
【0043】
(無電解メッキ処理)
メラミン吸着処理、続いて触媒化処理を施した樹脂粒子を含有するスラリー液にイオン交換水を添加することにより全量を5Lとし、そのスラリー液に酒石酸ナトリウム濃度が8g/Lとなるように酒石酸ナトリウムを添加し、60℃に昇温させた。この混合液に、145g/L濃度の次亜リン酸ナトリウムと60g/L濃度の水酸化ナトリウムとを含む還元液600mLと、100g/L濃度の硫酸ニッケル水溶液600mLとを、定量ポンプでそれぞれ3ml/分の速度で滴下した。還元液と硫酸ニッケル水溶液との滴下終了後、ニッケルイオンの還元に伴って発生する水素の発泡が治まるまで撹拌を続けた。発泡が治まった後、樹脂粒子の表面に無電解ニッケルメッキ薄膜が形成された導電粒子を濾別し、水で洗浄後、100℃の真空乾燥器中で乾燥した。得られた導電粒子のニッケル薄膜の平均膜厚は80〜100nmであった。
【0044】
比較例1
メラミン吸着処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作により比較例1の導電粒子を得た。
【0045】
比較例2
メラミン吸着処理を行った後、触媒化処理前に、樹脂粒子を、トリメチロールメラミンの加熱により自己縮合が生じてしまう150℃という温度で6時間乾燥処理をしたこと以外は、実施例1と同様の操作により比較例2の導電粒子を得た。
【0046】
<評価>
実施例1及び比較例1、2の導電粒子について、メッキ成膜欠陥率とメッキ粒子凝集状態とを以下に説明するように試験・評価した。得られた結果を表1に示す。
【0047】
(メッキ成膜欠陥率)
倍率1000倍の走査電子顕微鏡(JSM−6510A、日本電子(株))により、1000個の導電粒子を観察し、粒子表面積の50%以上にわたってメッキ剥れが観察された導電粒子の割合(欠陥率)を求めた。実用上、欠陥率は1.0%以下であることが望まれる。
【0048】
(単一粒子率)
粒子像解析装置(FPIA3000、シスメックス社)を用いて、凝集していない一次粒子の割合(単一粒子率)を求めた。
【0049】
【表1】

【0050】
表1からわかるように、実施例1の導電粒子は、実用上問題のない、レベルの低いメッキ成膜欠陥率と高い単一粒子率とを示した。他方、比較例1及び2の導電粒子は、実用上問題のある、レベルの高いメッキ成膜欠陥率と低い単一粒子率とを示した。
【0051】
実施例2
実施例1で得られた導電粒子20質量部、フェノキシ樹脂(YP50、東都化成(株))30質量部、液状エポキシ樹脂(EP−828、三菱化学(株))30質量部、イミダゾール系硬化剤(HX3941HP、旭化成(株))30質量部とを均一に混合し、この混合物を、バーコータを用いて剥離フィルム状に塗布し、80℃で5分間プレベークすることにより異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムを、千鳥配置された金バンプを有する試験用ICチップ(バンプサイズ1800μm、バンプ高さ15μm、外側バンプ列と内側バンプ列間の距離20μm、各列内のバンプ間の距離20μm)と、対応するガラス基板との間に挟持させ、加熱加圧ヘッドにて200℃で圧力60MPaで5秒間の加熱加圧を行った。その際の外側バンプと内側バンプの導通抵抗(Ω)を常法に従って測定した。いずれも1Ω以下であり、良好な導通であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の導電粒子は、樹脂粒子の表面に無電解メッキ金属薄膜が形成されたものであるが、その樹脂粒子として、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施されたものを使用する。このため、樹脂粒子表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない導電粒子の割合が極力抑制され、しかも凝集せずに一次粒子(単一粒子)で存在している導電粒子の割合が高くなる。よって、異方性導電接着剤に配合する導電粒子として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子と、その表面に形成された無電解メッキ金属薄膜とからなる導電粒子。
【請求項2】
無電解メッキ金属薄膜が、無電解ニッケルメッキ薄膜である請求項1記載の導電粒子。
【請求項3】
加熱により自己縮合しうるメラミン化合物が、メチロールメラミンである請求項1又は2記載の導電粒子。
【請求項4】
該樹脂粒子が、メラミン吸着処理に続いて触媒化処理が施されている請求項1〜3のいずれかに記載の導電粒子。
【請求項5】
触媒化処理により樹脂粒子表面にパラジウムが析出している請求項1〜4のいずれかに記載の導電粒子。
【請求項6】
加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理が表面に施された樹脂粒子と、その表面に形成された無電解メッキ金属薄膜とからなる導電粒子の製造方法であって、
樹脂粒子の表面に対し、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物を吸着させるメラミン吸着処理工程、
メラミン吸着処理が施された樹脂粒子の表面に、無電解メッキ促進用の触媒を析出させる触媒化処理工程、及び
触媒化処理工程が施された樹脂粒子の表面に、無電解メッキにより金属薄膜を形成する無電解メッキ処理工程
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項7】
メラミン吸着処理工程は、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物の溶液に樹脂粒子を浸漬することである請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
触媒化処理工程は、メラミン吸着処理が施された樹脂粒子を、塩化パラジウム水溶液に投入した後、還元剤を投入することによりパラジウムを樹脂粒子表面を析出させることである請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
メラミン吸着処理工程及び触媒化処理工程の処理温度が、加熱により自己縮合しうるメラミン化合物の自己縮合を生じさせない温度である請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電粒子が、絶縁性接着剤中に分散してなる異方性導電接着剤。
【請求項11】
フィルム状に成形されている請求項10記載の異方性導電接着剤。

【公開番号】特開2010−229554(P2010−229554A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−157923(P2010−157923)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】