説明

導電膜、およびそれを備えたトランスデューサ、フレキシブル配線板

【課題】 伸縮可能であり、伸張時にも電気抵抗が増加しにくい導電膜を提供する。また、柔軟なトランスデューサおよびフレキシブル配線板を提供する。
【解決手段】 導電膜100を、エラストマーと、該エラストマー中に充填されている導電材と、を有する導電層101と、導電層101を被覆するように配置されているエラストマー製の保護層102と、を備えて構成する。また、トランスデューサにおいて、電極および配線の少なくとも一方を、該導電膜から形成する。また、フレキシブル配線板の配線の少なくとも一部を、該導電膜から形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮可能な電極、配線等に好適な導電膜、およびそれを備えたトランスデューサ、フレキシブル配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、部材の変形や部材に作用する荷重の大きさ等を検出する手段として、導電性の樹脂やエラストマーを利用した柔軟なセンサの開発が進められている。また、誘電体エラストマー等の高分子材料を利用したアクチュエータは、柔軟性が高く、軽量で小型化し易いため、人工筋肉、医療用器具、流体制御等の様々な分野での利用が検討されている。例えば、誘電体エラストマーからなる誘電膜を、一対の電極で狭持して、アクチュエータを構成することができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
これらの柔軟なセンサ、アクチュエータでは、電極や配線が、エラストマー等からなる基材や誘電膜等の変形に、追従可能であることが要求される。すなわち、例えばアクチュエータでは、印加電圧の大小により誘電膜が伸縮する。このため、誘電膜の表裏に配置されている電極は、誘電膜の動きを妨げないように、誘電膜の伸縮に応じて伸縮可能であることが望ましい。このような理由から、現在、電極や配線には、エラストマー等のバインダーに、導電性カーボンや金属粉末を配合した導電材料が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−070327号公報
【特許文献2】特表2003−506858号公報
【特許文献3】特開平9−289361号公報
【特許文献4】特開2008−124425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性カーボンの比抵抗は、0.1〜1Ωcm程度と比較的大きい。このため、エラストマー等のバインダーに導電性カーボンを配合した導電材料を使用すると、電極等の電気抵抗が大きくなってしまうという問題があった。電極等の電気抵抗が大きいと、内部抵抗による発熱で、素子が劣化しやすくなる。また、高周波領域におけるリアクタンス成分の発生により、アクチュエータの応答性が低下するおそれがある。また、検出信号に対して内部抵抗が高すぎると、センサの分解能が低下するおそれがある。
【0006】
この点、銀等の金属粉末の比抵抗は、0.001Ωcm以下と小さい。しかし、一般に、金属粉末は、導電性カーボンと比較して粒子径が大きい。また、凝集しにくいため、導通経路が形成されにくい。したがって、所望の導電性を得るためには、バインダーに金属粉末を高充填する必要がある。バインダーに金属粉末を高充填した導電材料は、弾性率が高く柔軟性に乏しい。このため、例えば、アクチュエータの電極に使用した場合には、誘電膜の伸縮に追従できず、誘電膜の動きを阻害しやすい。また、柔軟なセンサ、アクチュエータ等の電極や配線には、伸縮可能であることに加えて、伸張された際に、電気抵抗の変化が小さいことも求められる。しかし、バインダーに金属粉末を高充填した導電材料によると、伸張が大きい場合に、バインダーと金属粉末との界面に応力が集中し、クラックが発生してしまう。これにより、電極等の電気抵抗が著しく増加する。また、一旦クラックが発生すると、その周辺にさらに応力が集中しやすくなる。よって、伸張により電極等が破断するおそれがある。なお、バインダーと金属粉末との界面における応力集中を低減させる方法としては、金属粉末に表面処理を施して、バインダーとの密着性を向上させる方法が考えられる。しかし、表面処理により金属粉末同士の接触抵抗が大きくなり、結果として、電気抵抗の増加を招く。
【0007】
一方、各種の配線板では、配線を保護膜で被覆することにより、マイグレーションを抑制して、隣り合う配線間の絶縁性を確保している。例えば、上記特許文献3によると、配線をカーボンで被覆している。また、上記特許文献4によると、配線を熱硬化性樹脂ペーストで被覆している。しかし、カーボンおよび熱硬化性樹脂のいずれの保護膜も、硬くて柔軟性に乏しい。したがって、伸縮可能な電極、配線には不適である。例えば、アクチュエータの電極を、熱硬化性樹脂製の保護膜で被覆した場合には、電極が誘電膜の伸縮に追従できず、誘電膜の動きを阻害するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、伸縮可能であり、伸張時にも電気抵抗が増加しにくい導電膜を提供することを課題とする。また、そのような導電膜を用いることにより、柔軟なトランスデューサおよびフレキシブル配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明の導電膜は、エラストマーと、該エラストマー中に充填されている導電材と、を有する導電層と、該導電層を被覆するように配置されているエラストマー製の保護層と、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の導電膜を構成する導電層および保護層は、いずれもエラストマーを母材とする。したがって、本発明の導電膜は、柔軟であり、伸縮可能である。よって、基材や誘電膜等の変形に対する追従性に優れる。また、保護層は、導電層を被覆するように配置されている。保護層は導電層を保護し、補強する役割を果たす。すなわち、本発明の導電膜を伸張した場合、生じる応力は、保護層と導電層とに分散される。このため、導電層単独のものと比較して、伸張時におけるエラストマーと導電材との界面への応力集中を、低減させることができる。これにより、導電層の表面におけるクラックの発生が抑制される。したがって、本発明の導電膜は、伸張されても、電気抵抗が増加しにくい。また、破断するおそれも少ない。
【0011】
(2)また、本発明のトランスデューサは、上記本発明の導電膜を、電極および配線の少なくとも一方として備えていることを特徴とする。
【0012】
トランスデューサは、ある種類のエネルギーを他の種類のエネルギーに変換する装置である。トランスデューサには、例えば、電気エネルギーと機械エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ等が含まれる。本発明のトランスデューサによると、電極および配線の少なくとも一方(以下、適宜「電極等」と称す)が、上記本発明の導電膜からなる。よって、電極や配線が形成されている部材が変形した場合でも、電極等が変形に追従して伸縮する。このため、トランスデューサの動きが、電極等により妨げられにくい。また、伸張しても電極等の電気抵抗は増加しにくい。したがって、応答性が良好である。さらに、伸縮を繰り返した場合でも、電極等が破断するおそれは少ない。加えて、内部抵抗による発熱も少ないため、電極等は劣化しにくい。よって、本発明のトランスデューサは耐久性に優れる。
【0013】
(3)また、本発明のフレキシブル配線板は、配線の少なくとも一部は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の導電膜からなることを特徴とする。
【0014】
本発明のフレキシブル配線板によると、基材の変形に追従して配線が伸縮する。配線が伸張しても、導電性の低下は少なく、伸縮を繰り返した場合でも、内部抵抗による発熱が少ない。よって、本発明のフレキシブル配線板は耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の導電膜の一例の断面模式図である。
【図2】本発明の導電膜の他の一例の断面模式図である。
【図3】本発明のトランスデューサの一実施形態である静電容量型センサの上面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】本発明のトランスデューサの一実施形態であるアクチュエータの断面模式図であって、(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。
【図6】本発明のトランスデューサの一実施形態である発電トランスデューサの断面模式図であって、(a)は伸張時、(b)は収縮時を各々示す。
【図7】本発明の一実施形態であるフレキシブル配線板の上面透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の導電膜、およびそれを備えたトランスデューサ、フレキシブル配線板の実施形態について順に説明する。
【0017】
<導電膜>
本発明の導電膜は、導電層と保護層とを備えてなる。導電層は、エラストマーと、該エラストマー中に充填されている導電材と、を有する。本明細書において、「エラストマー」は、ゴムおよび熱可塑性エラストマーを含む。エラストマーの種類は、特に限定されるものではないが、常温下で柔軟であるという観点から、例えば、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下のものが好適である。このようなエラストマーとして、例えば、アクリルゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等が挙げられる。例えば、アクリルゴムとしては、炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルモノマー単位を50mol%以上含むものが望ましい。アルキル基が大きい(炭素数が多い)と、結晶性が低下するため、アクリルゴムの弾性率がより低くなる。
【0018】
また、エラストマーは、可塑剤、加工助剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。例えば、可塑剤を添加すると、エラストマーの加工性が向上すると共に、柔軟性をより向上させることができる。可塑剤としては、公知のフタル酸ジエステル等の有機酸誘導体、リン酸トリクレジル等のリン酸誘導体、アジピン酸ジエステル、塩素化パラフィン、ポリエーテルエステル等を使用すればよい。
【0019】
導電材は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素材料や、銀、金、銅、ニッケル等の金属材料から適宜選択すればよい。例えば、比抵抗の小さい銀、金、銅から選ばれる一種以上の金属粉末を採用するとよい。また、銀粉末およびカーボンブラックを混合して使用してもよい。カーボンブラックは、エラストマーとの密着性が高い。また、凝集しやすいため、導通経路が形成されやすい。よって、銀粉末にカーボンブラックを混合すると、伸張時に銀粉末が離間した場合にも、カーボンブラックが銀粉末間の隙間に入り込み、導通経路が確保されやすい。よって、伸張時における電気抵抗の増加を抑制することができる。この場合、電気抵抗を小さくするという観点から、銀粉末の充填量を、導電材の全体を100体積%とした場合の30体積%以上とすることが望ましい。
【0020】
導電材の充填量は、所望の導電性が得られるように決定すればよい。例えば、エラストマーの100質量部に対して300質量部以上1500質量部以下とすることが望ましい。400質量部以上1000質量部以下とするとより好適である。
【0021】
保護層は、エラストマー製であり、導電層を被覆するように配置されている。保護層は、導電層の表面の全部を被覆していてもよいが、例えば、導電層の一面のみ被覆している態様等、導電層の表面の一部を被覆していてもよい。
【0022】
保護層を構成するエラストマーの種類は、特に限定されるものではない。上記導電層を構成するエラストマーと同じであっても、異なっていてもよい。例えば、柔軟なエラストマーとして、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエーテルエステルから選ばれる一種以上が好適である。また、上記同様、エラストマーは、可塑剤、加工助剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
また、エラストマーにカーボンブラックを配合して、保護層に所定の導電性を付与すると、マイグレーションの抑制に効果的である。例えば、隣接する配線間には、電位差が生じやすい。そこに、水分が介在すると、高電位側の配線(アノード)から金属成分が溶出して金属イオンを生成する。生成した金属イオンは、低電位側の配線(カソード)に向かって移動する。このような金属イオンの移動(マイグレーション)が発生すると、カソード側の配線に金属が析出して、配線間の絶縁性を維持することが難しくなる。本発明の導電膜を配線とした使用した場合、保護層にカーボンブラックを含有させて導電性を付与すると、導電層と保護層との間の電圧勾配がゆるやかになる。よって、金属イオンの移動を抑制することができる。
【0024】
伸張による導電層の応力を緩和するため、保護層は、導電層よりも硬く、伸張されにくいことが望ましい。導電層、保護層の硬さは、各々の層を構成する材料の弾性率や、層の厚さに依存する。したがって、例えば、導電層の弾性率をE、断面積をSとし、保護層の弾性率をE、断面積をSとした場合に、次式(I)を満たすことが望ましい。
/E<1 ・・・(I)
ここで、導電層、保護層の「断面積」とは、各層を伸縮方向に対して垂直に切断した時の断面の面積を意味する。以下、各層の「断面積」について、本発明の導電膜の断面模式図を用いて、具体的に説明する。
【0025】
図1に、本発明の導電膜の一例の断面模式図を示す。なお、図1は、導電層、保護層の断面積を説明するための模式図であり、導電層に対する保護層の配置や、各々の層の厚さ等について、本発明の導電膜を何ら限定するものではない。
【0026】
図1に示すように、導電膜100は、導電層101と保護層102とを備えている。導電膜100は、紙面手前−奥側方向に延びる帯状を呈している。導電層101の上面、下面、左右側面は、全て保護層102により被覆されている。導電膜100は、紙面手前−奥側方向に伸縮する。よって、導電層101の断面積は、導電膜100の伸縮方向に対して垂直方向の断面積Sで示される。また、保護層102の断面積は、導電膜100の伸縮方向に対して垂直方向の断面積Sで示される。
【0027】
本発明の導電膜は、用途に応じて、基材や誘電膜等の表面に形成することができる。基材としては、例えばポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなる屈曲性を有する樹脂フィルムや、エラストマーシート等が挙げられる。本発明の導電膜を、引張り、曲げ等の弾性変形可能な弾性部材の表面に形成した場合には、柔軟性が高く、伸張時にも電気抵抗が増加しにくいという効果を、より発揮させることができる。ここで、弾性部材には、アクチュエータ等における誘電膜が含まれる。薄膜状の弾性部材は、例えば、弾性部材を形成するための塗料を、離型性を有する基材上に塗工した後、所望の形状に切り取って剥離することにより、製造することができる。
【0028】
本発明の導電膜を弾性部材の表面に形成した場合、導電層の一面は弾性部材と接触し、導電層の他面は保護層により被覆されている態様が望ましい。本態様によると、導電層の一面と接触している弾性部材が、保護層と同じような役割を果たす。この場合、導電層の弾性率をE、断面積をS、保護層の弾性率をE、断面積をS、弾性部材の弾性率をE、導電膜の形成部分における弾性部材の断面積をSとした場合に、次式(II)を満たすことが望ましい。さらには、次式(III)を満たすことが望ましい。
/(E+E)<1.2 ・・・(II)
/(E+E)<1 ・・・(III)
ここで、導電層、保護層、弾性部材の「断面積」とは、上記同様、各々を伸縮方向に対して垂直に切断した時の断面の面積を意味する。以下、各々の「断面積」について、本態様の導電膜の断面模式図を用いて、具体的に説明する。
【0029】
図2に、本態様の導電膜の一例の断面模式図を示す。なお、図2は、導電層、保護層、弾性部材の断面積を説明するための模式図であり、導電層に対する保護層の配置や、導電層、保護層、弾性部材の厚さ等について、本発明の導電膜を何ら限定するものではない。
【0030】
図2に示すように、導電膜100は、弾性部材103の上面に形成されている。導電膜100は、紙面手前−奥側方向に延びる帯状を呈している。導電膜100は、導電層101と保護層102とを備えている。導電層101の上面、左右側面は、保護層102により被覆されている。導電層101の下面および保護層102の下面は、弾性部材103と接触している。導電膜100は、紙面手前−奥側方向に伸縮する。よって、導電層101の断面積は、導電膜100の伸縮方向に対して垂直方向の断面積Sで示される。また、保護層102の断面積は、導電膜100の伸縮方向に対して垂直方向の断面積S(下方に開口したC字状)で示される。また、弾性部材103の断面積は、導電膜100の伸縮方向に対して垂直方向の断面積のうち、導電膜100の形成部分に対応する部分Sで示される(図2中、一点鎖線のハッチングで示す)。すなわち、弾性部材103の断面積Sは、弾性部材103における導電膜100との接触界面と、厚さ(導電膜100および弾性部材103の積層方向長さ)と、で囲まれた領域となる。
【0031】
本発明の導電膜は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、導電層、保護層を各々形成するための塗料を調製する。例えば、導電層用塗料は、エラストマー分のポリマーを、所定の添加剤と共に溶剤に溶解した溶液に、導電材を添加して、攪拌、混合すればよい。次に、調製した導電層用塗料を基材等に塗布し、加熱により乾燥させる。次に、形成された導電層の表面を被覆するように、保護層用塗料を塗布し、加熱により乾燥させる。この場合、塗料の加熱乾燥時に、エラストマー分の架橋反応を進行させてもよい。
【0032】
ここで、塗料の塗布方法は、既に公知の種々の方法を採用することができる。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等の印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法等が挙げられる。例えば、印刷法を採用すると、塗布する部分と塗布しない部分との塗り分けを、容易に行うことができる。また、大きな面積、細線、複雑な形状の印刷も容易である。印刷法の中でも、高粘度の導電塗料が使用でき、塗膜厚さの調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。
【0033】
また、エラストマー分のポリマー(適宜添加剤を含む)と導電材とを、ニーダー、バンバリーミキサー等の加圧式混練機、二本ロール等により混練してなるエラストマー組成物を、金型成形や押出成形することにより、導電層を製造してもよい。この場合、製造した導電層の表面を、保護層により適宜被覆して、導電膜とすればよい。
【0034】
本発明の導電膜は、トランスデューサの電極や配線、フレキシブル配線板の配線等に好適である。以下、まず、本発明の導電膜を備えたトランスデューサの例として、エラストマーセンサ、アクチュエータ、および発電トランスデューサの実施形態を説明し、次に、フレキシブル配線板の実施形態を説明する。なお、本発明のトランスデューサおよびフレキシブル配線板においても、上述した本発明の導電膜の好適な態様を採用することが望ましい。
【0035】
<エラストマーセンサ>
本発明の導電膜を電極および配線に使用したエラストマーセンサの一例として、静電容量型センサの実施形態を説明する。まず、本実施形態の静電容量型センサの構成について説明する。図3に、静電容量型センサの上面図を示す。図4に、図3のIV−IV断面図を示す。図3、図4に示すように、静電容量型センサ1は、誘電膜10と一対の電極11a、11bと配線12a、12bとを備えている。
【0036】
誘電膜10は、ウレタンゴム製であって、左右方向に延びる帯状を呈している。誘電膜10の厚さは、約300μmである。
【0037】
電極11aは、長方形状を呈している。電極11aは、誘電膜10の上面に三つ形成されている。同様に、電極11bは、長方形状を呈している。電極11bは、誘電膜10を挟んで電極11aと対向するように、誘電膜10の下面に三つ形成されている。このように、誘電膜10を挟んで、電極11a、11bが三対配置されている。電極11a、11bは、本発明の導電膜からなる。
【0038】
すなわち、電極11aは、導電層110aと保護層111aとからなる。導電層110aの上面および左右側面は、保護層111aにより被覆されている。導電層110aの下面および保護層111aの下面は、誘電膜10と接触している。同様に、電極11bは、導電層110bと保護層111bとからなる。導電層110bの下面および左右側面は、保護層111bより被覆されている。導電層110bの上面および保護層111bの上面は、誘電膜10と接触している。
【0039】
配線12aは、誘電膜10の上面に形成された電極11aの一つ一つに、それぞれ接続されている。配線12aにより、電極11aとコネクタ14とが結線されている。配線12aは、誘電膜10の上面に形成されている。同様に、配線12bは、誘電膜10の下面に形成された電極11bの一つ一つに、それぞれ接続されている(図3中、点線で示す)。配線12bにより、電極11bとコネクタ(図略)とが結線されている。配線12bは、誘電膜10の下面に形成されている。配線12a、12bは、本発明の導電膜からなる。
【0040】
すなわち、配線12aは、導電層120aと保護層121aとからなる。導電層120aの上面および左右側面は、保護層121aにより被覆されている。導電層120aの下面および保護層121aの下面は、誘電膜10と接触している。なお、図示しないが、配線12bも、配線12aと同様の構成を有する。
【0041】
次に、静電容量型センサ1の動きについて説明する。例えば、静電容量型センサ1が上方から押圧されると、誘電膜10および電極11aは一体となって、下方に湾曲する。圧縮により、誘電膜10の厚さは小さくなる。その結果、電極11a、11b間のキャパシタンスは大きくなる。このキャパシタンス変化により、圧縮による変形が検出される。
【0042】
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電膜10、電極11a、11b、配線12a、12bは、いずれもエラストマー材料からなる。このため、静電容量型センサ1の全体が柔軟であり、伸縮可能である。また、電極11a、11bは伸縮可能であるため、誘電膜10の変形に追従して変形することができる。さらに、電極11a、11bおよび配線12a、12bは、伸張されても電気抵抗の増加が小さい。このため、静電容量型センサ1の応答性は良好である。なお、本実施形態の静電容量型センサ1には、誘電膜10を狭んで対向する電極11a、11bが、三対形成されている。しかし、電極の数、大きさ、配置等は、用途に応じて、適宜決定すればよい。
【0043】
<アクチュエータ>
本発明の導電膜を電極に使用したアクチュエータの実施形態を説明する。図5に、本実施形態のアクチュエータの断面模式図を示す。(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。図5に示すように、アクチュエータ2は、誘電膜20と電極21a、21bとを備えている。誘電膜20は、ウレタンゴム製である。電極21a、21bは、誘電膜20の表裏に、それぞれ配置されている。電極21a、21bは、配線を介して電源22に接続されている。オフ状態からオン状態に切り替える際は、一対の電極21a、21b間に電圧を印加する。電圧の印加により、誘電膜20の膜厚は薄くなる。その分だけ、誘電膜20は、図5(b)中白抜き矢印で示すように、電極21a、21b面に対して平行方向に伸張する。これにより、アクチュエータ2は、図5中横および上下方向の駆動力を出力する。
【0044】
ここで、電極21a、21bは、本発明の導電膜からなる。電極21a、21bは伸縮可能であるため、誘電膜20の変形に追従して変形することができる。すなわち、誘電膜20の動きが電極21a、21bにより妨げられにくいため、より大きな変位量を得ることができる。さらに、電極21a、21bは、伸張されても電気抵抗の増加が小さい。また、内部抵抗による発熱が少ないため、電極21a、21bは、劣化しにくい。すなわち、アクチュエータ2は耐久性に優れる。なお、複数の誘電膜と電極とを交互に積層させた積層構造とすると、より大きな力を発生させることができる。これにより、アクチュエータの出力が大きくなり、駆動対象部材をより大きな力で駆動させることができる。
【0045】
<発電トランスデューサ>
本発明の導電膜を電極に使用した発電トランスデューサの実施形態を説明する。図6に、本実施形態における発電トランスデューサの断面模式図を示す。(a)は伸張時、(b)は収縮時を各々示す。図6に示すように、発電トランスデューサ3は、誘電膜30と電極31a、31bとを備えている。誘電膜30は、ウレタンゴム製である。電極31a、31bは、誘電膜30の表裏に、それぞれ固定されている。電極31a、31bには、導線が接続されており、電極31bは、接地されている。
【0046】
図6(a)に示すように、発電トランスデューサ3を圧縮し、誘電膜30を電極31a、31b面に対して平行方向に伸張すると、誘電膜30の膜厚は薄くなり、電極31a、31b間に電荷が蓄えられる。その後、圧縮力を除去すると、図6(b)に示すように、誘電膜30の弾性復元力により誘電膜30は収縮し、膜厚が厚くなる。その際、電荷が放出され発電される。
【0047】
ここで、電極31a、31bは、本発明の導電膜からなる。すなわち、電極31a、31bは伸縮可能である。このため、誘電膜30の動きが、電極31a、31bにより妨げられにくい。また、電極31a、31bにおいて、伸張時の導電性の低下は少なく、繰り返し変形した場合でも、内部抵抗による発熱が少ない。よって、トランスデューサ3は耐久性に優れる。
【0048】
<フレキシブル配線板>
本発明の導電膜を配線に使用したフレキシブル配線板の実施形態を説明する。図7に、本実施形態のフレキシブル配線板の上面透過図を示す。なお、図7中、裏側の配線については細線で示す。図7に示すように、フレキシブル配線板4は、基材40と、表側電極01X〜16Xと、表側電極01X〜16Xと、表側配線01x〜16xと、裏側配線01y〜16yと、表側配線用コネクタ41と、裏側配線用コネクタ42と、を備えている。
【0049】
基材40は、ウレタンゴム製であって、シート状を呈している。表側電極01X〜16Xは、基材40の上面に、合計16本配置されている。表側電極01X〜16Xは、各々、帯状を呈している。表側電極01X〜16Xは、各々、X方向(左右方向)に延在している。表側電極01X〜16Xは、Y方向(前後方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。表側電極01X〜16Xの左端には、各々、表側接続部01X1〜16X1が配置されている。同様に、裏側電極01Y〜16Yは、基材40の下面に、合計16本配置されている。裏側電極01Y〜16Yは、各々、帯状を呈している。裏側電極01Y〜16Yは、各々、Y方向に延在している。裏側電極01Y〜16Yは、X方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。裏側電極01Y〜16Yの前端には、各々、裏側接続部01Y1〜16Y1が配置されている。図7にハッチングで示すように、基材40を挟んで、表側電極01X〜16Xと裏側接続部01Y1〜16Y1とが交差する部分(重複する部分)により、荷重等を検出する検出部が形成されている。
【0050】
表側配線01x〜16xは、基材40の上面に、合計16本配置されている。表側配線01x〜16xは、各々、線状を呈している。表側配線用コネクタ41は、基材40の左後隅に配置されている。表側配線01x〜16xは、各々、表側接続部01X1〜16X1と、表側配線用コネクタ41と、を接続している。また、基材40の上面、表側電極01X〜16X、表側配線01x〜16xは、上方から、表側カバーフィルム(図略)により覆われている。
【0051】
裏側配線01y〜16yは、基材40の下面に、合計16本配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、線状を呈している。裏側配線用コネクタ42は、基材40の左前隅に配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、裏側接続部01Y1〜16Y1と、裏側配線用コネクタ42と、を接続している。また、基材40の下面、裏側電極01Y〜16Y、裏側配線01y〜16yは、下方から、裏側カバーフィルム(図略)により覆われている。
【0052】
表側配線用コネクタ41、裏側配線用コネクタ42には、各々、演算部(図略)が電気的に接続されている。演算部には、表側配線01x〜16xおよび裏側配線01y〜16yから、検出部におけるインピーダンスが入力される。これに基づいて、面圧分布が測定される。
【0053】
ここで、表側配線01x〜16xおよび裏側配線01y〜16yは、各々、本発明の導電膜からなる。すなわち、表側配線01x〜16xおよび裏側配線01y〜16yは、各々、伸縮可能である。このため、基材40の変形に追従して変形することができる。また、表側配線01x〜16xおよび裏側配線01y〜16yにおいて、伸張時の導電性の低下は少なく、繰り返し変形した場合でも、内部抵抗による発熱が少ない。よって、フレキシブル配線板4は耐久性に優れる。
【実施例】
【0054】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0055】
<導電膜の製造>
[実施例1]
まず、基材の表面に導電層を形成した。基材には、厚さ0.1mmのウレタンゴムシート(弾性部材)を使用した。アクリルゴムポリマー(日本ゼオン(株)製「ニポール(登録商標)AR42W」)100質量部と、加工助剤のステアリン酸(花王社製「ルナック(登録商標)S30」)1質量部と、加硫促進剤のジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学社製「ノクセラー(登録商標)PZ」)2.5質量部、およびジメチルジチオカルバミン酸第二鉄(大内新興化学社製「ノクセラーTTFE」)0.5質量部と、をロール練り機にて混合し、エラストマー組成物を調製した。続いて、調製したエラストマー組成物を、溶剤のエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート312質量部に溶解させ、エラストマー溶液を調製した。このエラストマー溶液に、導電材の銀粉末A(銀被覆ガラスビーズ、ポッターズ・バロティーニ(株)製「ES6000−S7」)を720質量部添加し、三本ロールにて混練りして導電層用塗料を得た。この導電層用塗料を、基材の表面にバーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約150℃の乾燥炉内に約30分間静置した。そして、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、導電層を形成した。導電層は、幅10mm、長さ25mm、厚さ30〜50μmとなるよう形成した(以下の実施例、比較例についても同じ)。
【0056】
次に、導電層の上面および左右側面を被覆するように、保護層を形成した。導電層を形成したのと同じエラストマー溶液を、保護層用塗料とした。この保護層用塗料を、導電層を覆うようにバーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約150℃の乾燥炉内に約30分間静置した。そして、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、保護層を形成した。このようにして得られた導電膜を、実施例1とした。
【0057】
後出の表1に、導電層、保護層、および基材の弾性率、断面積を示す。また、上記式(II)、(III)の左辺[E/(E+E)]の値も併せて示す。各々の弾性率は、JIS K7127(1999)に準じた引張試験により算出した。試験片の形状は、試験片タイプ2とした(以下の実施例、比較例についても同じ)。
【0058】
[実施例2]
導電層における導電材の種類と、保護層のエラストマーの種類以外は、上記実施例1と同様にして、導電膜を製造した。すなわち、導電材として、銀粉末B(DOWAエレクトロニクス(株)製、商品「FA−D−4」)、および銀粉末C(同社製、商品「AG2−1C」)を使用した。また、保護層には、ウレタンゴムを使用した。すなわち、ウレタンゴムポリマー(日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン(登録商標)5230」)100質量部を、溶剤のブチルカルビトール150質量部に溶解させて、保護層用塗料を調製した。この保護層用塗料を、導電層を覆うようにバーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約150℃の乾燥炉内に約30分間静置した。そして、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、保護層を形成した。得られた導電膜を、実施例2とした。
【0059】
[実施例3]
導電層および保護層のエラストマーの種類以外は、上記実施例1と同様にして、導電膜を製造した。すなわち、導電層および保護層に、ウレタンゴムを使用した。まず、実施例2の保護層に使用したのと同じウレタンゴムポリマー100質量部に、銀粉末A720質量部を添加した。続いて、溶剤のブチルカルビトール150質量部を添加、攪拌して導電層用塗料を得た。この導電層用塗料を、基材の表面にバーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約150℃の乾燥炉内に約30分間静置した。そして、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、導電層を形成した。次に、導電層と同じウレタンゴムポリマーを使用して、実施例2と同様にして保護層を形成した。得られた導電膜を、実施例3とした。
【0060】
[実施例4]
基材(弾性部材)を有しない点と、導電層における導電材の種類以外は、上記実施例2と同様にして、導電膜を製造した。まず、実施例1、2の導電層に使用したエラストマー溶液に、導電材のカーボンブラック(ライオン(株)製「ケッチェンブラック(登録商標)EC−600JD」)を20質量部添加し、三本ロールにて混練りして導電層用塗料を得た。この導電層用塗料を、離型処理を施したPET製の基材の表面に、バーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約150℃の乾燥炉内に約30分間静置した。そして、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、導電層を形成した。次に、実施例2の保護層に使用した保護層用塗料を使用して、実施例2と同様に、保護層を形成した。このようにして得られた導電膜を、基材から剥離して、実施例4とした。
【0061】
[比較例1]
保護層を形成しない点以外は、上記実施例1と同様にして、導電膜を製造した。つまり、形成された導電膜は、導電層のみからなる。得られた導電膜を、比較例1とした。
【0062】
[比較例2]
保護層のエラストマーの種類以外は、上記実施例2と同様にして、導電膜を製造した。すなわち、保護層には、実施例1の保護層と同じアクリルゴムを使用した。得られた導電膜を、比較例2とした。
【0063】
[比較例3]
保護層を形成しない点以外は、上記実施例2と同様にして、導電膜を製造した。つまり、形成された導電膜は、導電層のみからなる。得られた導電膜を、比較例3とした。
【0064】
[比較例4]
保護層を形成しない点以外は、上記実施例4と同様にして、導電膜を製造した。つまり、形成された導電膜は、導電層のみからなり、基材(弾性部材)を有しない。得られた導電膜を、比較例4とした。
【0065】
<評価方法>
製造した導電膜について、伸張率を変化させた際の体積抵抗率、耐久性、およびマイグレーションを評価した。以下、各々の評価方法について説明する。
【0066】
[体積抵抗率]
導電膜の体積抵抗率を、JIS K6271(2008)に準じて測定した。初期(伸張前)の電極間距離は、10mmとした。体積抵抗率の測定は、伸張率を0%(伸張なし)〜500%まで変化させて行った。ここで、伸張率は、次式(IV)により算出した値である(以下の伸張率についても同様)。
伸張率(%)=(ΔL/L)×100・・・(IV)
[L:試験片の標線間距離、ΔL:試験片の標線間距離の伸張による増加分]
[耐久性]
製造した導電膜を、基材と共に試験片として耐久試験を行った。まず、試験片の両端を、一対のジグで挟持した。次に、ジグの一方を固定し、他方を50mm/分の速度で往復動させることにより、試験片を伸縮させた。試験片の最大伸張率を50%とし、ジグを100回往復させた。耐久試験の後、導電膜の体積抵抗率を上記同様にして測定した。そして、体積抵抗率が0.01Ωcm以下の場合を良(後出の表1中○印)、0.01Ωcmを超え10Ωcm以下の場合をやや不良(同表1中△印)、10Ωcmを超えた場合を不良(同表1中×印)とした。
【0067】
[マイグレーション]
上記実施例および比較例の導電膜と同じ組成の導電膜について、マイグレーション試験を行った。まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材の表面に、幅約1mm、長さ約15mmの一対の導電膜を、間隔約0.5mmで隣接するよう形成した。次に、導電膜間に、イオン交換水30μlを滴下して、互いの導電膜に水滴が接触するようにした。このような状態で、導電膜間に、直流10Vの電圧を300秒間印加した。その後、両導電膜を顕微鏡で観察し、導電膜に銀の析出が認められなかった場合を良(後出の表1中○印)、銀の析出が認められた場合を不良(同表1中×印)とした。
【0068】
<評価結果>
実施例および比較例の導電膜の評価結果を、各層の組成、弾性率、断面積等と共に、表1に示す。
【表1】

【0069】
表1に示すように、実施例1〜4の導電膜については、伸張率が増加しても、つまり、大きく伸張させても、体積抵抗率の増加が小さかった。これに対して、保護層のない比較例1、3、4の導電膜については、伸張率の増加と共に、体積抵抗率が大きくなった。つまり、伸張により、導電性が低下した。また、比較例2の導電膜は、保護層を備えているが、上記式(II)、(III)の左辺[E/(E+E)]の値が1.26と大きい。このため、伸張率が200%以上になると、体積抵抗率が大きくなった。
【0070】
また、実施例1〜4の導電膜は、耐久性に優れていた。すなわち、伸縮を繰り返しても、電気抵抗の増加が小さかった。さらに、マイグレーションも抑制されることが確認された。これに対して、保護層のない比較例1、3、4の導電膜の耐久性は低かった。また、比較例1、3の導電膜については、マイグレーションにより、銀の析出が認められた。
【0071】
以上より、本発明の導電膜は、柔軟で導電性が高く、伸張時にも電気抵抗が増加しにくいことが確認された。また、伸縮を繰り返しても電気抵抗の変化が小さく、耐久性に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
柔軟なアクチュエータは、例えば、産業、医療、福祉ロボット用の人工筋肉、電子部品冷却用や医療用等の小型ポンプ、医療用器具等に用いられる。本発明の導電膜は、このような柔軟なアクチュエータの電極、配線等に好適である。また、静電容量型センサ等のエラストマーセンサの電極、配線等にも好適である。さらには、発電トランスデューサの他、発光、発熱、発色等を行う柔軟なトランスデューサの電極、配線等にも好適である。また、本発明の導電膜は、ウェアラブルデバイス等に使用されるフレキシブル配線板等にも有用である。
【符号の説明】
【0073】
1:静電容量型センサ(エラストマーセンサ) 10:誘電膜 11a、11b:電極
12a、12b:配線 14:コネクタ
110a、110b:導電層 111a、111b:保護層
120a:導電層 121a:保護層
2:アクチュエータ 20:誘電膜 21a、21b:電極 22:電源
3:発電トランスデューサ 30:誘電膜 31a、31b:電極
4:フレキシブル配線板
40:基材 41:表側配線用コネクタ 42:裏側配線用コネクタ
01X〜16X:表側電極 01X1〜16X1:表側接続部
01Y〜16Y:裏側電極 01Y1〜16Y1:裏側接続部
01x〜16x:表側配線 01y〜16y:裏側配線
100:導電膜 101:導電層 102:保護層 103:弾性部材
:導電層の断面積 S:保護層の断面積
:導電膜の形成部分における弾性部材の断面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、該エラストマー中に充填されている導電材と、を有する導電層と、
該導電層を被覆するように配置されているエラストマー製の保護層と、
を備えてなることを特徴とする導電膜。
【請求項2】
前記導電層および前記保護層の各々の弾性率と断面積とが、次式(I)を満たす請求項1に記載の導電膜。
/E<1 ・・・(I)
[E:導電層の弾性率、S:導電層の断面積、E:保護層の弾性率、S:保護層の断面積]
【請求項3】
弾性部材の表面に形成されている請求項1に記載の導電膜。
【請求項4】
前記導電層の一面は、前記弾性部材と接触し、
該導電層の他面は、前記保護層により被覆されている請求項3に記載の導電膜。
【請求項5】
前記導電層、前記保護層、および前記弾性部材の各々の弾性率と断面積とが、次式(II)を満たす請求項3または請求項4に記載の導電膜。
/(E+E)<1.2 ・・・(II)
[E:導電層の弾性率、S:導電層の断面積、E:保護層の弾性率、S:保護層の断面積、E:弾性部材の弾性率、S:導電膜の形成部分における弾性部材の断面積]
【請求項6】
前記導電層、前記保護層、および前記弾性部材の各々の弾性率と断面積とが、次式(III)を満たす請求項3または請求項4に記載の導電膜。
/(E+E)<1 ・・・(III)
[E:導電層の弾性率、S:導電層の断面積、E:保護層の弾性率、S:保護層の断面積、E:弾性部材の弾性率、S:導電膜の形成部分における弾性部材の断面積]
【請求項7】
前記導電材は、銀、金、銅から選ばれる一種以上の金属粉末を含む請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の導電膜。
【請求項8】
前記導電材は、カーボンブラックを含む請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電膜。
【請求項9】
前記導電材は、銀粉末およびカーボンブラックを含み、
該銀粉末の充填量は、該導電材の全体を100体積%とした場合の30体積%以上である請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の導電膜。
【請求項10】
前記保護層を構成する前記エラストマーは、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエーテルエステルから選ばれる一種以上である請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の導電膜。
【請求項11】
前記保護層を構成する前記エラストマーは、カーボンブラックを含む請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の導電膜。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の導電膜を、電極および配線の少なくとも一方として備えていることを特徴とするトランスデューサ。
【請求項13】
エラストマーからなる誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、複数の該電極と各々接続されている配線と、を備え、複数の該電極間への印加電圧に応じて該誘電膜が伸縮するアクチュエータである請求項12に記載のトランスデューサ。
【請求項14】
エラストマーからなる誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、複数の該電極と各々接続されている配線と、を備え、複数の該電極間の静電容量変化に基づいて変形を検出するエラストマーセンサである請求項12に記載のトランスデューサ。
【請求項15】
配線の少なくとも一部は、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の導電膜からなることを特徴とするフレキシブル配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−153821(P2010−153821A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261991(P2009−261991)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】