説明

小さいジカルボン酸の誘導体と組み合わせてPPIを用いる胃酸分泌を阻害する組成物および方法

本発明は、胃酸分泌インヒビターとして不可逆的な胃のH+/K+-ATP分解酵素プロトンポンプインヒビター(PPI)及び壁細胞を活性化する一以上の脂肪族カルボン酸誘導体分子を含み、前記誘導体が非誘導体化酸分子と比較してPPI活性に遅延性または持続性の増強効果を有する新規の経口組成物に関する。さらに、本発明は、係る組成物を用いて哺乳類における胃酸分泌を減少させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の記載】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/832,944号(2006年7月25日出願)および第60/857,132号(2006年11月7日出願)の利益を請求する出願であり、その内容は明示的に参照によって本明細書に援用される。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、プロトンポンプインヒビターと一以上の脂肪族のモノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸の誘導体との組み合わせを含んでいる胃酸分泌を阻害する新規の経口組成物に関する。前記誘導体は、非誘導体化酸分子(non-derivatized acid molecules)と比較して、PPI活性に遅延性および/または持続性の増強効果または促進的な薬剤安定性を有する。さらに、本発明は、係る組成物を用いて哺乳類における胃酸分泌を減少させる方法に関する。
【0003】
[発明の背景]
多くの病的状態は、胃酸分泌の抑制が必要であることによって特徴づけられる。係る状態には、ゾリンジャー/エリソン症候群(ZES), 胃食道逆流疾患 (GERD; gastroesophageal reflux disease), 消化性潰瘍疾患(peptic ulcer disease), 十二指腸潰瘍, 食道炎などが含まれるが、これらに限定されない。消化性潰瘍疾患などの病的な状態は、重大な合併症を有する可能性があり、先進工業国での幾つかの最も蔓延した疾患を代表している。
【0004】
現在、GERD および消化性潰瘍疾患の治療に用いられる主な療法には、例えば、ヒスタミンH2-レセプターアンタゴニストまたはプロトンポンプインヒビター(PPIs)を用いることによって胃の酸性度を減少させる薬剤が含まれる。PPIsは、壁細胞のH+/K+ ATPaseプロトンポンプ(これらの細胞からの酸分泌を担う)を阻害することで作用する。PPIs(例えば、オメプラゾール)及びその薬学的に許容される塩は、例えば、EP 05129, EP 124495 および米国特許第 4,255,431に開示される。
【0005】
PPI剤は、通常腸溶性コートされた顆粒剤で投与される弱塩基で酸不安定性のプロドラッグである。小腸での吸収に続いて、PPIsは優先的に酸分泌性壁細胞(acid-secreting parietal cells)の酸性環境で蓄積する。酸分泌性壁細胞の酸性環境によって、プロドラッグが活性スルホンアミド(壁細胞のH+/K+ ATPaseポンプに結合し、阻害する活性薬剤)に転換する。従って、壁細胞の前活性化(pre-activation)が、PPIsがその活性なプロトン化形態へ転換することに必要とされる。通常、壁細胞の前活性化は、ガストリン依存性の壁細胞活性化を開始する食事摂取によって達成される。実際、患者は、PPIが血流を経由して壁細胞に到達する際に壁細胞が活性化されていることを保証するために食事摂取の一時間前にPPIをとることを指示される。
【0006】
十分な裏づけのある有効性があるにもかかわらず、PPIsには注目すべき制限がある。PPIの活性型への転換には、壁細胞の前活性化が必要とされる。通常、壁細胞の前活性化は、食物の摂取によって達成される。従って、PPIは、壁細胞の前活性化および血液中でのPPI吸収の間での同期化のために、食物摂取の前に摂取されるべきである。さらにまた、PPIsは、最大の酸抑制および症状からの解放が定常的な状態として達成されるために数日を必要とするだろう薬理作用における相対的に遅いオンセット(low onset)を有し、必要に応じてGERD治療を行なう際にそれらの有用性が制限される(Sachs G, Eur J Gastroenterol Hepatol. 2001;13 Suppl 1 :S35-41)。
【0007】
そのうえ、PPIsは、胃酸の24-hの抑制を提供することに失敗しており、夜間酸分泌現象(nocturnal acid breakthrough)によって、PPIsを毎日二回投薬(twice-daily dosing)したGERD患者においてさえも夜間に胸やけ(heartbum)および疼痛がおこる(Tytgat GN, Eur J Gastroenterol Hepatol. 2001;13 Suppl l :S29-33; Shaker R. et al., Am. J. of Gastroenterology, 98 (7), 2003)。最後に、これらの薬物は、かなりの患者内および患者間の薬物動態の可変性を示す(Hatlebakk et al., Clin Pharmacokinet. 1996; 3l(5):386-406)。従って、医学的な要求が満たされていないPPIの改善は、胃腸病学における挑戦である。
【0008】
マレイン酸およびコハク酸(化学的には、四炭素ジカルボン酸)は、強力な胃酸の排出の刺激因子である(Teyssen et al., J. Clin Invest, 1999 103(5): 707-713)。Teyssen等は、発酵性のアルコール飲料(このような化合物を含んでいる) (例えば、ビールおよびワイン)における胃酸分泌の刺激を研究した。興味深いことに、マレイン酸およびコハク酸が、ビール, シャンパン, ワイン, およびペンタガストリン(分泌を誘発する強力な外来性の刺激物)(しかし、これらの作用のメディエータであるガストリンなし)により産生されるヒトの胃酸の排出を刺激することが見つけられた(Teyssen et al., J. Clin Invest. 1999)。
【0009】
米国特許第5,559,152号は、3.5 mg/kgの用量のコハク酸およびクエン酸の混合物が、薬投与の後に40 min空の胃で測定した胃液のpHの有意な減少により反映されるイヌの胃酸の排出を誘導する能力があることを開示している。さらに、この特許は、コハク酸およびクエン酸が健常人ボランティアの酸の排出を刺激することを開示している。
【0010】
また、Pokrovskiy等(Physiologicheskiy Z'urnal 10:1567-1573, 1973)は、ミトコンドリア呼吸環(クレブス回路)に関与する分子(例えば、ピルビン酸, コハク酸塩, アルファケトグルタル酸, リンゴ酸またはグルコース)がカエルの粘膜のエクスビボ(ex vivo)モデルでプロトン分泌を刺激しえることを開示している。
【0011】
同時係属出願PCT/IB2005/002223(WO 2006/120500 および US 2006/0257467として公開された)は、胃酸分泌インヒビターとしてPPIおよび一以上の小さいジカルボン酸分子を含んでいる経口組成物を記載している。小さいカルボン酸分子は、胃でPPIの抗酸活性(anti-acid activity)を増強する能力がある。
【0012】
Phillipsに対する米国特許第6,489,346; 6,645,988; および 6,699,885号(合わせて「Phillips特許」)は、PPI, 少なくとも一つの緩衝作用薬剤および特異的な壁細胞アクチベーターからなる経口組成物を用いて酸に起因する胃腸障害を治療する薬学的組成物および方法を開示している。Phillips特許に開示された壁細胞アクチベーターは、例えば、チョコレート, 重炭酸ナトリウム, カルシウム, ペパーミント油, スペアミント油, コーヒー, 茶およびコーラ(colas), カフェイン, テオフィリン, テオブロミンおよびアミノ酸残基を含む。Phillips特許で指摘されるように、全てのこれらの提案された壁細胞アクチベーターは、酸分泌に刺激効果を誘導する内在性のガストリンの放出を誘発する。
【0013】
胃酸分泌の阻害が必要とされる病状に効果的な治療の開発によって、長く要望されていた必要性が充足されるだろう。PPIsは広く使用されているにもかかわらず、なおもPPIの有効性(例えば、夜間酸分泌現象の制御に対する持続的な効果、用量の減少における大きな効果、食事非依存性の投与、および夜間酸産生の制御)を増加させる必要性がある。本願で開示された出願人の発明は、多くのこれらの満たされていない要求を満たしている。
【0014】
[発明の概要]
胃酸分泌の阻害に増強した活性を有するPPIに基づく組成物を提供することが本発明の課題である。
【0015】
一態様において、本発明は、胃酸分泌インヒビターとしての置換されたベズイミダゾール(bezimidazole)H+/K+-ATPaseプロトンポンプインヒビター(PPI)と一以上の飽和または不飽和脂肪族のカルボン酸(例えば、モノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸)の誘導体とを含んでいる組成物に関する。前記誘導体は、非誘導体化酸分子と比較して、遅延性および/または持続性の壁細胞活性化または促進的な薬剤安定性を有し、PPIと組み合わせて抗分泌性効果が増強される。プロトンポンプインヒビターの抗分泌性効果のエンハンサーとして使用される酸分子の好適な誘導体は、ミトコンドリア呼吸サークル(クレブス回路)に関与する脂肪族のモノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸のエステルであり、より好ましくは脂肪族鎖に三ないし十の間の炭素を有している脂肪族ジカルボン酸のメチル, エチル, プロピルまたはブチルエステルである。最も好適なものは、コハク酸またはマレイン酸のメチルまたはエチルエステルである。本発明の組成物は、胃における酸分泌の抑制が必要とされる慢性または急性の障害がある被験者を治療するために使用してもよい。
【0016】
本発明による置換されたベンズイミダゾールプロトンポンプインヒビターは、胃の壁細胞におけるH+/K+-アデノシントリホスファターゼ(ATPase)プロトンポンプの活性を阻害する化合物である。プロドラッグ形態において、PPIは非イオン化型であり、壁細胞の細胞膜をとおして通過する能力がある。一旦壁細胞に到達すると、非イオン化型のPPIは、活性化された壁細胞の酸分泌性部分(分泌性の細管)に移動する。細管にトラップされたPPIは、プロトン化され、プロトンポンプのアルファサブユニット中のシステイン残基とジスルフィド共有結合を形成できる活性なスルホンアミド形態に転換されて、プロトンポンプを不可逆的に阻害する。
【0017】
本発明は、発明者の次の驚くべき発見に基づいている; その発見とは、マレイン酸およびコハク酸などのミトコンドリア呼吸環(クレブス回路)に関与する特定の脂肪族ジカルボン酸分子が壁細胞を活性化でき、これによって胃酸分泌を阻害するプロトンポンプインヒビターの活性が増強され、係る酸分子の特定の誘導体はPPIと組み合わせた胃酸分泌の阻害にさらに効果的であることである。理論に縛られることなく、次の事項が信じられる; その事項とは、前記誘導体が、非誘導体化酸分子と比較して、遅延性および/または持続性の壁細胞活性化または促進的な薬剤安定性を有し、これらの二つの成分の薬力学的なプロフィールの適切な重複が可能となることである。従って、本発明の誘導体による壁細胞の活性化の同期化によって、PPIによるポンプの阻害が最大になる。
【0018】
本発明の組成物は、胃酸分泌を減少させることを目的としている既知のPPIに基づく組成物に対して次の利点を示す。本発明の組成物によって、食物摂取の代わりに本発明の誘導体による壁細胞の効率的な前活性化が認可される。これらの誘導体による壁細胞の前活性化が、前記誘導体およびPPIの薬力学的なプロフィールの適切な重複を可能にするために必要とされる。本発明の組成物の組み合わせた活性薬剤は、就寝時間に食物を経口摂取しないように指示されたGERD患者の就寝時間のPPI投与に効果的な解決策を提供する。
【0019】
本発明による組成物は、脂肪族のモノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸分子の誘導体〔例えば、 塩, エステル, アルデヒド, ケトン, ニトリル, アルコール, 多形(polymorphs), 水和物, またはコンフォーマー(conformers)〕を含んでいてもよい〔但し、前記誘導体は、非誘導体化カルボン酸分子と比較して、持続性(sustained)および/または遅延性(delayed)の壁細胞活性化または促進的(accelerated)な薬剤安定性を有する〕。
【0020】
カルボン酸分子の好適な誘導体は、係る脂肪族のモノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸分子のエステルであり、より好ましくは脂肪族鎖に三ないし十の間の炭素を有している脂肪族ジカルボン酸のメチル, エチル, プロピルまたはブチルエステルである。最も好適な誘導体は、ジカルボン酸分子のジメチルまたはジエチルエステル(例えば、ジメチルまたはジエチルコハク酸)である。本発明の基礎である好適なカルボン酸分子は、クレブス回路に関与する脂肪族の飽和または不飽和のモノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸である。最も好適な脂肪族のカルボン酸は、脂肪族鎖に三ないし六の間の炭素を有している飽和または不飽和のジカルボン酸またはトリカルボン酸(例えば、マレイン酸, コハク酸またはクエン酸)である。また、本発明の範囲内に含まれるものは、クレブス回路に関与する他の脂肪族のカルボン酸分子(例えば、ピルビン酸, α-ケトグルタル酸, スクシニル-CoA, フマル酸, またはオキサロ酢酸)である。
【0021】
本発明による好適な酸分子は、マレイン酸, コハク酸またはクエン酸のメチル, エチル, プロピルまたはブチル-エステルであり、最も好ましくはコハク酸のジメチル-エステルまたはジエチル-エステル又はその組み合わせである(例えば、一つのカルボキシ端がメチルエステルにエステル化され、第二のカルボキシ端がエチル-エステルにエステル化されたコハク酸ジエステルである)。また、壁細胞の活性化における酸分子の即時型及び遅延性又は持続性の両方の効果を得るために、本発明の酸分子の誘導体を組成物において非誘導体化の酸分子およびPPIと混合することが可能である。例えば、好適な態様において、組成物は、コハク酸, モノメチル, ジメチル, モノエチルまたはジエチルコハク酸およびPPIの組み合わせを含む。
【0022】
本発明による組成物は好ましくは経口組成物であるが、非経口的な組成物も本発明の範囲に含まれる。本発明の活性成分は、好ましくは単一の経口の剤形, 好ましくは固形の剤形(solid dosage form)に製剤化される。この場合において、PPIおよび脂肪族のカルボン酸誘導体の活性は、脂肪族のカルボン酸の誘導体の遅延性および/または持続性の効果により同期化(synchronized)される。従って、一態様において、本発明によるPPIおよび脂肪族のカルボン酸誘導体は、多層錠剤(multi-layered tablets), 懸濁錠剤, 発泡性錠剤(effervescent tablets), 粉末剤, ペレット剤, 顆粒剤, 複数のビーズを含んでいる硬いゼラチンカプセル, または脂質ベースのビヒクルを含んでいる柔らかいゼラチンカプセルとして製剤化されてもよい。液体剤形(例えば、懸濁剤)も同様に使用してもよい。PPIおよび脂肪族のカルボン酸誘導体は、貯蔵の間のPPIに対するダメージを回避するために物的(physically)に分離されてもよい。
【0023】
一態様によると、本発明の固形剤形は、カプセル剤または腸溶性のpH-依存的な放出ポリマー(enteric pH-dependent release polymers)または非腸溶性の時間依存的な放出ポリマー(non-enteric time-dependent release polymers)でコートされたPPI粒子および脂肪族のカルボン酸誘導体の粒子を含んでいる多層錠剤である。必要な場合、脂肪族のカルボン酸誘導体粒子は、胃での放出時間を延長するための、生体付着性製剤, アコーディオン型製剤または浮游製剤(floating formulation)または遅延性の放出製剤などの胃保持製剤(gastro retentive formulation)として製剤化される。異なる脂肪族のカルボン酸誘導体が、単一の経口剤形に製剤化されることも可能である(ここで、各誘導体は異なる胃保持性または遅延性の放出プロフィールを有している)。
【0024】
本発明の活性成分は、分離した剤形に製剤化されてもよい。例えば、本発明による脂肪族のカルボン酸誘導体は、経口懸濁液または固形剤形、例えば、カプセル, 錠剤, 懸濁錠剤, または発泡性錠剤に製剤化されてもよい。また、PPIは、分離した固形剤形、好ましくは腸溶性のpH-依存的な放出ポリマーまたは非腸溶性の時間依存的な放出ポリマーを有するビーズを含んでいるカプセルまたは錠剤に製剤化されてもよい。分離した剤形は、一つの剤形に脂肪族のカルボン酸誘導体の粒子および分離した剤形にPPIの粒子を含んでいるキットとして提供されてもよい。この場合において、脂肪族のカルボン酸誘導体粒子は、生理的な活性に少なくとも幾らかの経時的な重複が存在するようにPPIと関連して投与される。PPIおよび脂肪族のカルボン酸誘導体は、同時に及び/又は連続的(sequentially)に投与できる。
【0025】
また、本発明の活性成分は、非経口投与(例えば、静脈内投与, 頬への送達および皮下注射)に製剤化されてもよい。一つの活性成分を経口的(例えば、脂肪族のカルボン誘導体分子を錠剤またはカプセル中)に投与し、第二の活性成分(PPI)を静脈内で, 頬への送達により又は皮下注射により非経口的に投与することも可能である。
【0026】
別の態様において、本発明は、胃酸分泌の抑制が必要とされる障害又は胃酸分泌の抑制により通常治療される障害をもつ被験者を治療する方法に関する。前記方法は、前記被験者に、胃酸分泌インヒビターとしてPPIおよびPPIエンハンサーとして一以上の脂肪族のカルボン酸誘導体を含んでいる薬学的組成物を投与することを含んでおり、前記誘導体は非誘導体化の酸分子と比較して、PPI活性または促進的な薬安定性に遅延性および/または持続性の増強効果を有する。
【0027】
本発明の組成物は、胃酸分泌の阻害が必要とされる哺乳類の病状(pathologies)を予防する又は治療するために使用してもよい。好ましくは、前記哺乳類は、ヒトである。本発明の組成物は、病状の治療及び症状が開始される前に係る病状が発生する危険性を最小化することの両方に効果的である。
【0028】
本発明の薬学的組成物は、胃酸分泌の抑制によって治療される多くの病理学的な状態に使用されてもよい。係る状態には、ゾリンジャー/エリソン症候群(ZES), 胃食道逆流疾患 (GERD), 食道炎, 消化性潰瘍疾患, 十二指腸潰瘍, 胃炎および胃粘膜びらん(gastric erosions), 消化不良, NSAID誘発性の胃疾患などが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
また、本発明は、薬学的キット(好ましくは、経口の薬学的キット)を含む。典型的には、キットは活性成分として、薬学的に効果的な量の: (i)一以上の本発明による脂肪族のカルボン酸誘導体;および(ii)置換されたベンズイミダゾール H+/K+-ATP分解酵素プロトンポンプインヒビターを含む。一態様において、活性成分は、分離した単位剤形に製剤化される。キットを使用して、胃酸分泌の抑制が被験者に活性成分を投与することにより要請される被験者の障害を治療又は予防しえる。典型的には、一以上の脂肪族のカルボン酸誘導体が、PPIの投与と同時に、前に又は続いて投与される。
【0030】
これらの及び更なる態様は、以下の詳細な記載および例から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図 1は、コハク酸ジメチルエステルが投薬から60 分後でさえも胃酸の排出を増強する能力があることを実証している。
【図2】図 2は、コハク酸のジメチルエステルがパントプラゾール(pantoprazole)の投与の30 min前に投与された場合に、胃酸分泌にパントプラゾールの活性を増強する能力があることを実証している。
【0032】
[発明の詳細な記述]
本発明の組成物は、胃酸分泌インヒビターとしてのPPIと壁細胞アクチベーターとしての一以上の脂肪族のモノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸分子の誘導体とのユニークな組み合わせを提供し、前記誘導体は非誘導体化酸分子と比較して、遅延性または持続性の壁細胞活性化または促進的な薬剤安定性を有する。
【0033】
化合物の「誘導体(derivative)」は化学的に修飾された化合物を意味し、化学修飾は化合物の一以上の官能基で生じる。しかしながら、誘導体は、それが由来する化合物の薬理学的な活性を保持することが期待される。
【0034】
本発明の組成物は、胃酸分泌の阻害が必要とされる哺乳類の病状(pathologies)を予防する又は治療するために使用してもよい。本発明の組成物は、病状の治療及び発症前に係る病状が発生する危険性を最小化することの両方に効果的である。このような病状には、例えば: 逆流性食道炎, 胃炎, 十二指腸炎, 胃潰瘍および十二指腸潰瘍が含まれる。さらに、本発明の組成物は、胃酸阻害作用が望まれる他の胃腸の障害〔例えば、非ステロイド性の抗炎症薬物(NSAID)治療(低用量アスピリンを含む)の患者、非潰瘍性の消化不良の患者、症候性の胃食道逆流疾患(GERD)の患者、およびガストリノーマ(gastrinomas)の患者〕の治療または予防に使用してもよい。また、集中治療の状況の患者に、急性の上部胃腸管の出血(例えば、出血性の消化性潰瘍)の患者に、非静脈瘤性(nonvariceal)の上部胃腸管の出血の患者に、ストレス関連性の粘膜の出血の予防に、胃酸の吸引(aspiration)を予防する及びストレス性の潰瘍形成を予防する及び治療する術前および術後に使用してもよい。さらに、ピロリ菌感染およびこれらに関連する疾患の治療に有用であろう。治療に適合する他の状態には、ゾリンジャーエリソン症候群(ZES), ウェルナー症候群, および全身性の肥満細胞症が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
一態様において、本発明の誘導体は、非誘導体化酸分子と比較して、遅延性の壁細胞の活性化を有する。例えば、前記誘導体は、投与後の約 15 min, 30 min, 45 min, 60 min, 75 min, 90 min, 105 min, または120 minで開始される壁細胞活性化を有する。
【0036】
一態様において、本発明の誘導体は、非誘導体化酸分子と比較して、持続性の壁細胞の活性化を有する。例えば、前記誘導体は、投与後に少なくとも約 30 min, 45 min, 60 min, 75 min, 90 min, 105 min, または120 min延長する壁細胞の活性化を有する。
【0037】
なお別の態様において、本発明の誘導体は、投与後に約 15 min, 30 min, 45 min, 60 min, 75 min, 90 min, 105 min, または120 minで開始され、投与後に少なくとも 約 15 min, 30 min, 45 min, 60 min, 75 min, 90 min, 105 min, または120 min延長する壁細胞活性化を有する。
【0038】
別の態様において、本発明の誘導体は、非誘導体化酸分子と比較して、促進的な薬安定性(特に、貯蔵の間の促進的な薬安定性)を有する。例えば、前記誘導体は、非誘導体化酸分子の安定性と比較して、約 25%, 50%, 75% または100%の薬安定性の増加を有する。
【0039】
好適な態様において、本発明の誘導体による壁細胞の活性化は、誘導体の投与後少なくとも約 30 minで開始する及び/又は誘導体の投与後少なくとも約 60 min延びる。
【0040】
本発明によるプロトンポンプインヒビターの抗分泌性効果のエンハンサーは、脂肪族のモノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸又はその塩の特定の誘導体である。好適な酸分子は、クレブス回路に関与する脂肪族のカルボン酸である。特定の好適な酸分子は、本発明によるPPIエンハンサーとして使用しえる脂肪族の飽和または不飽和のジカルボン酸の誘導体である。好適な脂肪族のジカルボン酸は、一般式: HO2C-(CH2)n-CO2H (式中のn = 0〜5)で表される。具体的な飽和脂肪族のジカルボン酸は、シュウ酸(n=0), マロン酸 (n=1), コハク酸(n=2), グルタル酸(n=3), アジピン酸(n=4) およびピメリン酸(n=5)である。本発明のPPIエンハンサーとして使用される好適な脂肪族のジカルボン酸誘導体は、2〜6の炭素原子, より好ましくは4つの炭素原子を有している脂肪族のジカルボン酸(例えば、コハク酸)である。本発明により使用される好適な不飽和脂肪族のジカルボン酸誘導体は、四炭素のマレイン酸およびフマル酸である。
【0041】
使用されえるジカルボン酸誘導体は、例えば、ジカルボン酸エステル, アルデヒド〔例えば、コハク酸ジアルデヒド(succinic dialdehyde)〕, ケトン(例えば、1, 4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジカルボン酸ジメチル), ニトリル〔例えば、コハク酸ニトリル(nitrile succinate)〕, アルコール〔例えば、コハク酸ジエチレングリコール(diethylene glycole succinate)〕, 塩, 結晶性の多形、例えば、アルファまたはベータ多形, コンフォーマー, プロドラック, アミド, ハライド(halides), 水和物, またはジカルボン酸無水物である。また、本発明の範囲内には、ミトコンドリアの呼吸環(クレブス回路)に関与する脂肪族のカルボン酸誘導体分子(例えば、ピルビン酸, クエン酸, フマル酸, α-ケトグルタル酸, スクシニル-CoAまたはオキサロ酢酸)が含まれる。
【0042】
本発明に使用されえるジカルボン酸誘導体の特に好適な例は、ジカルボキシルモノエステルまたはジエステル(ジカルボン酸分子のメチル, エチル, プロピルまたはブチルエステル、例えば、モノメチル, ジメチル, モノエチルまたはジエチルエステル)である。ジカルボン酸誘導体の他の例は、自由端(free end)のカルボキシル基がアルキルでエステル化されえるジカルボン酸分子の複数のユニット(例えば、複数のユニットのコハク酸)から構成される誘導体である。
【0043】
コハク酸誘導体の他の例は、コハク酸テトラメチル, コハク酸トリメチル, コハク酸ジエチル, コハク酸ジメチル、例えば、アラビトール---5-ヒドロキシ-1,2,3,4-コハク酸テトラメチル, 4-tert-ブチル-コハク酸, トレイトール-1,2,4-コハク酸トリメチル, トレイトール-3-サクシノイル-1,2,4-コハク酸トリメチル, エタンジオール-1,2-コハク酸ジエチル, プロパンジオール-1,2-コハク酸ジメチル, トレイトール-1,2,4-コハク酸トリメチルである。コハク酸分子の他のエステルは、ジイソプロピル, ジサリチル, ジブチル, ベンジル水素ジアリル(benzyl hydrogen diallyl), アリル水素(allyl hydrogen), イソプロピル, O-メチル-6-D-グルコシル, 3-O-メチル-6-アミノ-6-デオキシ-6-D-グルコシル, 6-アミノ-6-デオキシ-6-D-ガラクトシル, ブチル, ヘキシル, ジプロピルである。
【0044】
コハク酸エステルの他の例は、アルケニル置換されたコハク酸およびアルキル置換されたコハク酸のエステルであり、オクタデセニルコハク酸のモノメチルエステル, オクタデセニルコハク酸のジメチル-エステル, オクタデセニルコハク酸のモノエチル-エステル, オクタデセニルコハク酸のジエチル-エステル, オクタデセニルコハク酸のモノエチルエステル, オクタデセニルコハク酸のジオクチル エステル, オクタデセニルコハク酸のモノノニル エステル, オクタデセニルコハク酸のジノニル エステル, オクタデセニルコハク酸のモノラウリル エステル, オクタデセニルコハク酸のジラウリル エステル, ドデシルコハク酸のモノラウリルエステル, ドデシルコハク酸のジラウリルエステル, ヘキサデシルコハク酸のモノメチルエステル, ヘキサデシルコハク酸のジメチル-エステル, ヘキサデシルコハク酸のジメチル-エステル, ヘキサデシルコハク酸のモノエチル エステル, ヘキサデシルコハク酸のモノエチル エステル, ヘキサデシルコハク酸のジエチル-エステル, オクタデシルコハク酸のモノメチル エステル, オクタデシルコハク酸のジメチル-エステル, オクタデシルコハク酸のモノエチル エステル, オクタデシルコハク酸のジエチル-エステル, オクタデシルコハク酸のモノオクチル エステル, オクタデシルコハク酸のジオクチル エステル, オクタデシルコハク酸のモノラウリル エステル, オクタデシルコハク酸のモノラウリル エステル, オクタデシルコハク酸のジラウリル エステル, 平均で18の炭素原子を有しているプロピレンオリゴマーのアルケニルコハク酸およびプロピレングリコールの反応産物, 400の平均分子量を有しているポリブテンのポリブテニルコハク酸およびプロピレングリコールの反応産物, オクタデセニルコハク酸のオクチルメルカプタンエチレンオキシドエステル(octyl mercaptan ethylene oxide ester), オクタデセニルコハク酸のオクチルメルカプタンプロピレンオキシドエステル, オクタデセニルコハク酸のノニルメルカプタンエチレンオキシドエステル, オクタデセニルコハク酸のノニルメルカプタンプロピレンオキシドエステル, オクタデセニルコハク酸のラウリルメルカプタンエチレンオキシドエステル, オクタデセニルコハク酸のラウリルメルカプタンプロピレンオキシドエステル, オクタデセニルコハク酸の5-ヒドロキシ-3-チアペンチル(thiapentyl)エステル, オクタデセニルコハク酸の6-ヒドロキシ-3,4-ジチアヘキシル(dithiahexyl)エステルなどが含まれる。
【0045】
小さいカルボン酸(例えば、コハク酸及びそれらの誘導体)の薬学的に許容される塩を、本発明に使用してもよい。係るコハク酸塩の例は、特にコハク酸ナトリウム, コハク酸二ナトリウム, コハク酸カルシウム, コハク酸マグネシウム, およびコハク酸カリウム, 同様に, それらの既知の水和物、例えば、コハク酸ナトリウム六水和物, コハク酸二ナトリウム(無水)である。
【0046】
本発明に使用しえるカルボン酸の多形の例は、マレイン酸, フマル酸, グルタル酸およびコハク酸の多形〔結晶性, 分子の付加物(adducts), 非ストイキオメトリック(nonstochiometric)な封入化合物, ストイキオメトリックな溶媒和物および無定形の形態を含む〕である。
【0047】
また、本発明は、特定の生理的な環境または代謝性のプロセスへの曝露を介して活性カルボン酸誘導体分子をインビボで放出する任意のプロドラッグ分子を含む。「プロドラッグ」の用語は、インビボでその治療的に活性な又は利用可能な形態へ転換されるまで完全に活性ではない又は利用可能ではない薬, 薬前駆体または修飾薬を意味する。係るプロドラッグ分子は、例えば、インビボで切断されて活性なカルボン酸分子を放出する任意の分子であってもよい。
【0048】
本発明の組成物は、一以上の脂肪族カルボン酸の誘導体又はそのアナログを効果的な量で含み、過度の有害な副作用なく、非誘導体化の酸分子と比較して、遅延性および/または持続性の壁細胞の活性化または促進的な薬安定性を有する。組成物に存在する脂肪族カルボン酸誘導体の標準概算量(standard approximate amount)は、好ましくは1〜2500 mg, より好ましくは 10〜1000 mg, および最も好ましくは 50〜600 mgの量である。
【0049】
一つの好適な態様において、本発明の組成物は、一以上の脂肪族トリカルボン酸(好ましくはクエン酸)と組み合わせた一以上のジカルボン酸誘導体を含む。組成物に存在する一以上のトリカルボン酸の標準概算量は、好ましくは1〜1000 mg, より好ましくは 10〜1000 mg, および 最も好ましくは 50〜200 mgの量である。
【0050】
別の好適な態様において、本発明の組成物は、さらに壁細胞の活性化を最大にするための一以上の付加的な 壁細胞アクチベーターを含む。これらには、チョコレート, カフェイン, 緩衝剤、例えば、重炭酸ナトリウム, カルシウム(例えば、炭酸カルシウム, グルコン酸カルシウム, 水酸化カルシウム, 酢酸カルシウムおよびグリセロリン酸カルシウム), ペパーミント油, スペアミント油, テオフィリン, テオブロミン, およびアミノ酸、例えば、フェニルアラニンおよびトリプトファンが含まれてもよい。係る壁細胞アクチベーターは、被験者に望まれない副作用を生じない所望の刺激性効果を産生するために十分な量で投与される。
【0051】
本発明の組成物は、さらに胃のH+/K+-ATP分解酵素プロトンポンプの不可逆的なインヒビターとして作用するPPIを含む。本発明に使用されるPPIは、H+/K+-ATP分解酵素阻害活性を有している任意に置換されたベンズイミダゾール化合物であってもよい。本発明の目的に関して、「PPI」の用語は、H+/K+-ATP分解酵素のインヒビターとして薬理学的な活性を有している任意に置換されたベンズイミダゾールを意味し、オメプラゾール, ランソプラゾール(Iansoprazole), パントプラゾール, ラベプラゾール(rabeprazole), ドントプラゾール(dontoprazole), ペルプラゾール(s-オメプラゾールマグネシウム), ハベプラゾール(habeprazole), ランソプラゾール(ransoprazole), パリプラゾール(pariprazole), テナトプラゾール(tenatoprazole)およびレミノプラゾール(leminoprazole)を中性の形態(neutral form)または塩の形態のもの、単一の鏡像異性体または同じ鏡像異性体の異性体または他の誘導体またはアルカリ塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明に使用されえる胃のH+/K+-ATP分解酵素プロトンポンプインヒビターの例は、例えば、プロトンポンプインヒビターとして効果的な新規のチアジアゾール化合物を記載する米国特許第6,093,738号に開示される。プロトンポンプ インヒビターとして、欧州特許第322133 および 404322号はキナゾリン誘導体を開示し、欧州特許第259174号はキノリン誘導体を記載し、WO91/13337 および 米国特許第5,750,531号はピリミジン誘導体を開示する。適切なプロトンポンプインヒビターは、例えば、EP-Al-174726, EP-Al-166287, GB 2 163 747 および W090/06925, W091/19711, W091/19712, W094/27988 および W095/01977にも開示される。
【0053】
非限定的な態様において、小さいカルボン酸誘導体分子およびPPIの間の比は、約 20:1 ないし 約 1:5である。
【0054】
本発明の組成物は、好ましくは経口投与に適切である。本発明による経口組成物におけるPPI粒子は、コート(coated)または非コート(non-coated)であってもよい。PPI(例えば、オメプラゾール)を含んでいる腸溶性コートされた粒子の調製は、例えば、米国特許第4,786,505 および 第4,853,230号に開示される。
【0055】
本発明の組成物は、過度の有害な副作用なく、薬理学的な効果または治療上の改善を達成するために効果的な量で含む。治療上の改善には、胃のpHの上昇, 胃腸の出血の減少, または症状の改善または除去が含まれるが、これらに限定されない。好適な態様によると、PPIの典型的な一日量は、変動し、個々の患者の要求性および治療される疾患などの多様な因子に依存する。通常、PPIの一日量は、1〜400 mgの範囲である。組成物に存在するPPIの好適な標準概算量は、典型的には約20〜80 mgのオメプラゾール, 約30 mgのランソプラゾール, 約40 mgのパントプラゾール, 約20 mgのラベプラゾール, および薬理学的に均等な用量の次のPPIsである: ハベプラゾール, パリプラゾール, ドントプラゾール, ランソプラゾール, ペルプラゾール(s-オメプラゾールマグネシウム), テナトプラゾールおよびレミノプラゾール。
【0056】
本発明の活性成分は、好ましくは全ての活性成分を含んでいる単一の経口の剤形に製剤化される。本発明の組成物は、固形または液体の形態に製剤化されてもよい。固形の製剤は、液体の製剤と比較して固形の製剤の安定性が改善され、良好な患者コンプライアンスを有するとの観点で好適であることが注意される。
【0057】
一態様において、PPI粒子 および 一以上の脂肪族のカルボン酸誘導体は、単一の 固形の剤形、例えば、多層錠剤, 懸濁錠剤, 発泡性錠剤, 粉末, ペレット, 顆粒剤または複数のビーズを含んでいるカプセル、同様に、カプセルまたは二重のチャンバーのカプセル内のカプセルに製剤化される。別の態様において、活性薬剤は、単一の液体剤形、例えば、全ての活性成分を含んでいる懸濁剤または使用前に再構成される乾燥懸濁剤に製剤化されてもよい。
【0058】
本発明の組成物における酸不安定なPPI粒子は、好ましくは腸溶性コートされた遅延性放出顆粒剤として又は胃液との接触を回避するための非腸溶性の時間依存的な放出ポリマー(non-enteric time-dependent release polymers)でコートされた顆粒剤として製剤化される。本発明に使用される適切なpH-依存的な腸溶性コートされたポリマーの非限定的な例は、フタル酸セルロース・アセテート, フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース, フタル酸ポリ酢酸ビニル, メタクリル酸共重合体, セラック(shellac), コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース, トリメリット酸セルロース・アセテート(cellulose acetate trimellitate), および先行するいずれかの混合物である。適切な商業的に利用可能な腸溶性物質は、例えば、トレードマークEudragit L 100-55で販売される。このコーティングは、基質にコートされるスプレーであってもよい。
【0059】
非腸溶性コートの時間依存的な放出ポリマーに、胃の流体からの水の吸収を介して胃で膨潤する一以上のポリマーを含ませて、厚いコーティング層を作るために粒子のサイズを増加させる。時間依存的な放出コーティングは、一般に外部の水性培地のpHに非依存性である侵食(erosion)および/または拡散の特性を有する。従って、活性成分は、粒子から拡散によって又は胃における粒子の緩徐な侵食に続いて緩徐に放出される。
【0060】
適切な非腸溶性の時間依存的な放出コーティングは、例えば: フィルム形成化合物、例えば、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース, ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC), ヒドロキシエチルセルロース, および/またはEudragitブランドのポリマーの非腸溶性の形態を含んでいるアクリルポリマーである。他のフィルム形成材料は、単独または互いにもしくは上記にリストされたものと組み合わせて使用しえる。これらの他のフィルム形成材料は、一般にポリ(ビニルピロリドン), ゼイン, ポリ(エチレングリコール), ポリ(エチレンオキシド), ポリ(ビニルアルコール), ポリ(酢酸ビニル), およびエチルセルロース, 同様に, 他の薬学的に許容される親水性および疎水性のフィルム形成材料を含む。これらのフィルム形成材料は、ビヒクルとして水または代わりに溶媒系を用いて基質コアに適用しえる。ヒドロアルコール依存性の系(Hydro-alcoholic systems)を、フィルム形成のビヒクルとして作用させるためにもちいてもよい。
【0061】
本発明の時間依存的な放出コーティングを作るために適切な他の材料には、例として、限定されることなく、水溶性ポリサッカライドのガム、例えば、カラゲナン, フコイダン(fucoidan), ガティガム(gum ghatti), トラガカント, アラビノガラクタン(arabinogalactan), ペクチン, およびキサン; ポリサッカライドガムの水溶性塩、例えば、アルギン酸ナトリウム, トラガカンチンナトリウム(sodium tragacanthin), およびガッテートガムナトリウム(sodium gum ghattate); 水溶性ヒドロキシアルキルセルロースであって、アルキルメンバーが直鎖状又は分枝状の1〜7 炭素である水溶性ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロース, ヒドロキシエチルセルロース, およびヒドロキシプロピルセルロース; 合成の水溶性セルロースベースの薄膜形成体(lamina former)、例えば、メチルセルロース及びそのヒドロキシアルキルメチルセルロースセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロース, ヒドロキシプロピル メチルセルロース, およびヒドロキシブチルメチルセルロースからなる群から選択されるメンバー; 他のセルロースポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム; および当業者に既知の他の材料が含まれる。この目的に使用できる他の薄膜形成材料には、ポリ(ビニルピロリドン), ポリビニルアルコール, ポリエチレン酸化物, ゼラチンおよびポリビニル-ピロリドンのブレンド, ゼラチン, グルコース, サッカライド, ポビドン, コポビドン(copovidone), ポリ(ビニルピロリドン)-ポリ(酢酸ビニル)コポリマーが含まれる。
【0062】
一つの特定の例において、本発明の組成物は、硬いゼラチンカプセルに含有された複数のビーズを含んでいる単一の剤形として製剤化される。カプセルは、腸溶性コートされたPPIを含んでいるビーズまたは時間依存的な放出ポリマーでコートされたPPIを含んでいるビーズ、および非コートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはアルギン酸塩でコートされた一以上の脂肪族カルボン酸誘導体を含んでいるビーズから選択されるビーズの混合集団を含む。異なる集団のビーズは、各々が異なるカプセル剤に含有されてもよく、これらのカプセルは単一のカプセル剤内に含有される。
【0063】
なお別の例において、本発明の組成物は、第一層に腸溶性コートされたPPIを、第二層に非コートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースでコートされた脂肪族カルボン酸誘導体含んでいるプレスコート(press-coat)または二重層の錠剤として製剤化される。
【0064】
更なる例において、本発明の組成物は、硬いゼラチンカプセルに充填される二層の非水性の半固体に製剤化されてもよい〔ここで、PPIは、室温をこえて液体であるが冷却されて半固体を形成する脂質ベース(非水性, 急速放出)に可溶化されるので、硬いゼラチンカプセルに充填できる〕。
【0065】
本発明の活性成分は、脂肪族カルボン酸誘導体が分離した剤形で投与される複数の経口剤形に製剤化されえるが、PPIと抱合(conjugation)される。例えば、脂肪族のカルボン酸誘導体は、経口の懸濁または固形の剤形、例えば、カプセル, 錠剤, 懸濁錠剤, または発泡性錠剤に製剤化されてもよい。また、PPIは、分離した固形剤形、好ましくはカプセルまたは錠剤に含有される腸溶性のビーズまたは時間依存的な放出ビーズを有するビーズを含んでいるカプセルまたは錠剤に製剤化されてもよい。
【0066】
複数の経口剤形を用いる場合、脂肪族カルボン酸誘導体は、PPIの前、同時、または後に投与できる。連続した投与において、PPIが投与されるか又は活性である場合に脂肪族カルボン酸誘導体がある程度生理的な効果を有するかぎり、脂肪族カルボン酸誘導体およびPPIの投与の間にある程度の実質的な遅延(例えば、分間またはさらに僅かな時間)が存在してもよい。好適な態様において、投与されるPPIは、腸溶性または時間依存的な放出形態である。この態様によると、PPI投与が脂肪族カルボン酸誘導体の投与に先行することは必要ではない。というのも、前記誘導体は、非誘導体化の酸分子と比較して、PPI活性に遅延性および/または持続性の増強効果を有するからである。
【0067】
また、腸溶性ペレットからのPPIの放出を促進するために製剤に緩衝剤を加え、血液中でのPPIの吸収を増強することも可能である。具体的には、緩衝剤(例えば、重炭酸ナトリウム)は、胃に5を超えるpHを提供するために十分な量で添加されえる。例えば、300〜2,000 mgの重炭酸ナトリウムの間で製剤に添加されえる。血液にPPIの速い吸収が必要とされる場合、本発明の製剤に非腸溶性のPPIペレットを使用することが可能である。この場合において、胃でのPPIの安定性は、胃で5を超えるpHを提供する緩衝剤により保持される。
【0068】
本発明の活性成分は、不活性な薬学的に許容されるビーズ内に導入されてもよい。この場合において、薬は、ビーズにコートされる前に更なる構成成分と混合されてもよい。構成成分は、結合剤(binders), 界面活性剤, 充填剤, 崩壊剤, アルカリ性の添加物または他の薬学的に許容される構成成分を単独で又は混合物に含むが、これらに限定されない。結合剤は、例えば、セルロース、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース, ヒドロキシプロピルセルロースおよびカルボキシメチル-セルロースナトリウム, ポリビニルピロリドン, 糖, デンプンおよび他の薬学的に許容される粘着性(cohesive)の特性を有する物質を含む。適切な界面活性剤は、薬学的に許容される非イオン性またはイオン性の界面活性剤を含む。適切な界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0069】
粒子は、従来技術による摂取のためのパック集合体(a packed mass)に形成される。一例を挙げると、粒子は、既知の処置および材料を用いる「硬カプセル(hard-filled capsule)」として封入されえる。封入材料(encapsulating material)は、カプセル剤が摂取された後に粒子が胃で急速に分散するように胃の流体中で高度に可溶性であるべきである。
【0070】
別の態様において、本発明の活性成分は、圧縮錠にパッケージされる。「圧縮錠(compressed tablet)」の用語は、一般に単一の圧縮又はプレコンパクションタッピング(pre-compaction tapping)し、最終的な圧縮を行なうことにより調製される経口摂取のための単純(plain)、未コート錠剤(uncoated tablet)を意味する。係る固形の形態は、当該技術分野において周知のように製造できる。錠剤の形態は、例えば、一以上のラクトース, マンニトール, コーンスターチ, ジャガイモデンプン, 微結晶性のセルロース, アカシア, ゼラチン, コロイド性の二酸化ケイ素, クロスカルメロースナトリウム, 滑石, ステアリン酸マグネシウム, ステアリン酸, および他の賦形剤, 着色料, 希釈剤, 緩衝剤, 給湿剤(moistening agents), 保存剤, 香味剤, および薬学的に適合する担体を含みえる。製造プロセスは、四つの樹立された方法 (1)乾燥混合; (2)直接の圧縮; (3)製粉; および(4)非水性の粒状化(non-aqueous granulation)を一つ又は組み合わせて行ってもよい。Lachman et al., The Theory and Practice of Industrial Pharmacy (1986)。また、係る錠剤は、好ましくは経口摂取で又は希釈剤との接触で溶解するフィルムコーティングを含んでもよい。
【0071】
別の代替において、本発明の組成物は、例えば、水または他の希釈剤との反応に際し組成物の水性の形態が経口投与のために生産されるように、懸濁錠剤および発泡性錠剤に製剤化される。これらの形態は、特に錠剤の嚥下または咀嚼よりもはるかに認容される様式で子供および高齢者および他のものの医療に有用である。本発明の薬学的錠剤または他の固形の剤形は、アルカリ剤(alkaline agent)を最小の振盪または撹拌で崩壊させる。
【0072】
本明細書中に使用される「懸濁錠剤(suspension tablets)」の用語は、水中に配置された後に急速に崩壊する及び容易に崩壊してPPIおよびPPIエンハンサーの正確な用量を含んでいる懸濁液が形成される圧縮錠を意味する。錠剤の急速な崩壊を達成するために、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)を製剤に添加しえる。崩壊剤は、単独で又は錠剤の材料の圧縮が困難な圧縮率を改善する能力が周知である微結晶性セルロースと組み合わせて圧縮錠の製剤にブレンドされてもよい。また、微結晶性セルロース(単独で又は他の構成成分とともに処理して)は、圧縮錠への通常の添加物であり、錠剤の材料の圧縮が困難な圧縮率を改善する能力が周知である。それはAvicelのトレードマークで商業的に利用可能である。
【0073】
懸濁錠剤の組成物(上記の構成成分に加えて)は、当業者に明らかな香味剤, 甘味剤, 流動助剤(flow aids), 潤滑剤または他の通常の錠剤アジュバントを含む薬学的な錠剤にしばしば使用される他の構成成分を含む。クロスピビドン(crospividone)およびソジュウム・スターチ・グリコレート(sodium starch glycolate)などの他の崩壊剤を用いてもよいが、クロスカルメロースナトリウムが好適である。
【0074】
上記の構成成分に加えて、上記の経口剤形は、薬学の技術分野において従来の希釈剤, 潤滑剤, 結合剤, 顆粒化助剤(granulating aids), 着色料, 香味料(flavorants)および流動促進剤(glidants)などの適切な量の他の材料を含有してもよい。その量の付加的な材料は、所望の製剤に所望の効果を提供するために十分なものである。経口剤形を処方するために使用しえる薬学的に許容される担体および賦形剤の具体的な例は、参照によって本明細書に援用される文献〔the Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (1986)〕に記載されている。
【0075】
非経口投与に関して、活性成分は、好ましくは薬学的に許容されるビヒクルまたは担体との組成物で静脈内, 皮下, 筋肉内注射または頬(例えば、舌下)で投与される。注射での投与に関して、活性成分を無菌の水性ビヒクルの溶液で使用することが好適であり、これには他の溶質、例えば、緩衝剤または保存剤、同様に、血液と等張性の溶液を作る十分な量の薬学的に許容される塩またはグルコースも含まれえる。溶液または懸濁液の形態に薬学的組成物を製剤化することにおいて、慣例的に当該技術分野で使用される全ての希釈剤が使用できる。適切な希釈剤の例は、水, エチル アルコール, プロピレン グリコール, エトキシル化イソステアリルアルコール(ethoxylated isostearyl alcohol), ポリオキシエチレンソルビトール, およびソルビタンエステルである。塩化ナトリウム, グルコースまたはグリセロールは、治療薬に等張液を調製するために十分な量で導入されえる。治療薬(therapeutic agent)は、さらに当該技術分野において既知の通常の溶解助剤(dissolving aids), 緩衝剤, および保存剤, および任意で, 着色剤, 芳香剤, 香味料, 甘味剤, および他の薬理学的な活性薬剤を含みえる。
【0076】
頬への送達に関して、活性成分の何れか一つ又は両方が、口腔粘膜を横断した送達を許容するために設計された製剤に製剤化される。PPIおよび/または脂肪族のカルボン酸分子の経粘膜的な送達によって、活性成分の血漿レベルが急速に増加する投与の代替経路(alternative route)が提供される。経粘膜送達システムは、例えば、米国特許第5,137,729, 6,159,498および第5,800,832に開示されている。PPIが経粘膜送達を介して送達され、脂肪族カルボン酸又はその誘導体(例えば、コハク酸又はそのメチルエステル誘導体)を経口の錠剤またはカプセル剤を介して送達されることが好ましい。従って、PPIは、経粘膜(頬)送達に製剤化してもよい。脂肪族のカルボン酸誘導体分子は、分離した又は単一の単位剤形の何れかで経口(錠剤, カプセル剤)での送達に製剤化されえる。
【0077】
本発明の脂肪族カルボン誘導体の用量は、疾患の型、治療される状態の重症度などに応じて複数の用量で約 1 〜100 mg/kg 体重, 好ましくは約 1 〜10 mg/kg体重/日・非経口投与の範囲であってもよい。
【0078】
以下の例は、本発明の特定の態様をより完全に説明するために提供される。しかしながら、本発明の範囲を限定するとは解釈されない。当業者は、本発明の範囲から逸脱しない、本明細書中に開示される原理の多くのバリエーションおよび修飾を容易に工夫しえる。
【0079】
[例]
例 1: ラットでのコハク酸ナトリウム_コハク酸のモノメチルエステルまたはジメチル-エステルの経口投与に続く胃酸分泌の刺激
ラットは、胃管栄養法を用いてコハク酸 (SA, 14.88 mg/kg), コハク酸のモノメチルエステル(mS, 16.65 mg/kg)またはコハク酸のジメチルエステル(dmS, 17.65 mg/kg)を投与(経口的)される。60 分間後、ラットは、ケタミン/ドミトールで麻酔され、幽門が結紮された。次の付加的な30 min、胃液を胃管腔から採取した。酸の排出を、NaOHでの滴定で決定した。mEq HClで表されるトータルの酸の排出を、サンプル容量を酸濃度で乗じることで計算した。結果は、各実験群からの8 動物の手段 ± SEMとして表される。図 1に示されるとおり、コハク酸のジメチルエステル(dmS)、同様に、コハク酸のモノメチルエステル(mS)の経口投与は、胃の排出の増強に効果的であった。SAは、幽門結紮の60 分間前に与えられた場合に効果を示さなかった。コハク酸のジメチルエステルおよびモノメチルエステル誘導体が、投薬から60 分間後でさえも胃酸の排出を増強する能力のあることをこれらの結果は指摘しており、前記誘導体の胃酸の排出における非誘導体化コハク酸と比較した遅延性または持続性の効果を示唆している。
【0080】
例 2: コハク酸のジメチルエステルは、胃酸分泌におけるパントプラゾールの活性を増強する能力がある
パントプラゾールの活性におけるコハク酸のジメチルエステルの遅延性または持続性の増強効果を更に研究するために、意識のある幽門を結紮したラットの実験モデルを使用した。この実験のモデルによって、意識のある動物(conscious animals)の胃酸分泌における薬物の効果の分析が許容され、胃酸分泌における麻酔の影響が回避される。パントプラゾールの単独(3 mg/ml)またはコハク酸(SA, 14.88 mg/kg)もしくはコハク酸のジメチルエステル(dmS, 17.65 mg/kg)との組み合わせを、経口の胃管栄養法で投与した。非誘導体化コハク酸と比較して、コハク酸のジメチルエステルの持続性または遅延性の効果を検査するために、コハク酸塩をパントプラゾールの投与の30 min前に投与した。コハク酸塩投与の120 min後、動物を、幽門結紮処置を行い、腹部を閉鎖するために十分である短い期間(5 分間)麻酔ガス機で麻酔した。動物をさらに110minの時間ケージに戻し、その後に動物を屠殺した。結紮を食道の周囲に配置し、胃を除去し、胃内容物を採取した。遠心分離に続いて、胃の排出および胃液サンプルのpHを決定した。データは、胃の排出の平均値 ± SEMとして表される。動物の数は、各実験群で6〜7である。
【0081】
図 2で認められるとおり、コハク酸塩がパントプラゾールの投与の30 min 前に投与された場合、コハク酸のジメチルエステルのみが胃酸の排出におけるPPIの効果を増強する能力があった。これらの結果は、非誘導体化コハク酸と比較して、PPI活性におけるジメチルエステル誘導体の遅延性または持続性の増強効果を支持する。
【0082】
例 3: プロトンポンプインヒビター(PPI)およびコハク酸のジメチルエステルを含んでいる経口製剤:
硬いゼラチンカプセル
硬いゼラチンカプセルは、コハク酸のジメチルエステルおよびPPIの混合物の顆粒集団を含みえる。DMSは即時放出型に処方され、PPIは腸溶性の顆粒剤または時間依存的な放出コーティング(遅延性の放出)として製剤化される。顆粒剤は、カプセルごとに40mgのPPI および 600〜700 mgのDMSに対応する量を硬カプセルにパックされえる。代わりに、各化合物は個々のカプセルにパックされえる、これらのカプセルは単一のカプセルに共にパックされえる。別の可能性として、各化合物は、二重のチャンバーのカプセル剤を用いて分離されえる。
【0083】
A) 即時型放出のDMS製剤:
・ 40 mgの腸溶性(Eudragit)または時間依存的な放出コート(HPMC)PPI顆粒剤
・ 600〜700 mgのDMS
・ 希釈剤
錠剤またはキャプレット
薬学的組成物は、錠剤又はより好ましくはキャプレット(caplet)の形態であってもよい。キャプレットは、DMS(上記の即時型の放出), 腸溶性または時間依存的な放出コートされたPPI(圧縮圧力下で安定)および広範囲のキャプレット製剤に圧縮される従来の錠剤化助剤(tableting aid agents)の混合物が含有される。
【0084】
経口の懸濁液のための粉末
経口の懸濁液のための粉末は、DMS および 腸溶性または時間依存的な放出コートされたPPI顆粒を含む。DMSは、即時放出型の製剤に製剤化される(上記)。PPIは、腸溶性または時間依存的な放出コーティング(遅延性の放出)として製剤化される。組成物は、水で構成される個々のパケットに入る。水と混合される場合に粉末は均一な液体懸濁液になる。
【0085】
注射可能剤の調製
PPIおよびDMS液体の溶液は、DMS および PPIを0.9%塩化ナトリウム溶液に溶解することによって調製された。PPI および DMSを溶解させるための生理的な0.9%塩化ナトリウム溶液を調製するため、9% 塩化ナトリウム溶液の濃縮(10倍)溶液を1x 溶液を得るために希釈した。静脈内投与のための剤型を調製するため、PPI および DMSは、それぞれ4 mg/ml および 60 mg/mlの濃度で10 mlの0.9% 塩化ナトリウム溶液に溶解された。生じた溶液を、化合物の静脈内投与に使用しえる。
【0086】
本発明が上記で示され、記載された事項によって限定されないことを当業者は理解するだろう。本発明の範囲は、むしろ特許請求の範囲に規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に効果的な量の以下のものを活性成分として含んでいる薬学的組成物:
(i) 壁細胞を活性化する脂肪族カルボン酸分子のメチル, エチル, プロピルまたはブチルエステルから選択される一以上の脂肪族カルボン酸誘導体;および
(ii) 壁細胞の活性化が誘導体の投与後少なくとも約 30 minで開始する及び/又は誘導体の投与後少なくとも約 60 min延びる、不可逆的な胃のH+/K+-ATP分解酵素プロトンポンプインヒビター(PPI)。
【請求項2】
請求項1記載の組成物であって、前記脂肪族カルボン酸分子は、三ないし六の間の炭素を有している飽和または不飽和のモノカルボン酸, ジカルボン酸またはトリカルボン酸分子である組成物。
【請求項3】
請求項2記載の組成物であって、前記脂肪族カルボン酸分子は、一以上のマレイン酸, コハク酸, ピルビン酸, クエン酸, フマル酸, α-ケトグルタル酸, スクシニル-CoAおよびオキサロ酢酸である組成物。
【請求項4】
経口投与に適切な形態の請求項3記載の組成物。
【請求項5】
請求項4記載の組成物であって、脂肪族カルボン酸分子の誘導体は50〜1000 mgの間の量のコハク酸のモノメチルまたはジメチルエステルである組成物。
【請求項6】
請求項5記載の組成物であって、前記活性成分は二層錠剤(double-layered tablet), プレスコート錠剤, 多微粒子カプセル剤(multi-particulate capsule), 発泡性錠剤, 懸濁錠剤, 溶液および懸濁液から選択される単一の経口単位剤形に製剤化される組成物。
【請求項7】
請求項6記載の組成物であって、前記PPIは腸溶性コーティングまたは時間依存的な放出ポリマーでコートされたビーズに顆粒化され且つ一以上の脂肪族カルボン酸分子の誘導体は即時放出型の製剤に製剤化される組成物。
【請求項8】
さらに一以上の非誘導体化脂肪族カルボン酸分子を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
請求項8記載の組成物であって、前記非誘導体化脂肪族カルボン酸分子がコハク酸であり且つ前記脂肪族カルボン酸誘導体がコハク酸のジメチルエステルである組成物。
【請求項10】
請求項2記載の組成物であって、前記一以上の脂肪族カルボン酸分子の誘導体および前記PPIの間の比は、約 20:1 ないし 約 1:5である組成物。
【請求項11】
請求項1記載の組成物であって、前記PPIは、ラベプラゾール, オメプラゾール, イソメプラゾール(isomeprazole), ランソプラゾール, パントプラゾール, レミノプラゾール, テナトプラゾール, その単一のエナンチオマー, そのアルカリ塩及びその混合物からなる群から選択される組成物。
【請求項12】
前記組成物は、さらに胃に居住している細菌に対して効果的な抗生物質またはチョコレート, カフェイン, 緩衝剤, ペパーミント油, スペアミント油, テオフィリン, テオブロミン, および芳香族アミノ酸から選択される付加的な壁細胞アクチベーターを含んでいる請求項1記載の組成物。
【請求項13】
薬学的に効果的な量の以下のものを活性成分として含んでいる薬学的なキット:
(i) 壁細胞を活性化する脂肪族カルボン酸分子のメチル, エチル, プロピルまたはブチルエステルから選択される一以上の脂肪族カルボン酸誘導体;および
(ii) 壁細胞の活性化が誘導体の投与後少なくとも約 30 minで開始する及び/又は誘導体の投与後少なくとも約 60 min延びる、不可逆的な胃のH+/K+-ATP分解酵素プロトンポンプインヒビター(PPI)。
【請求項14】
哺乳類における胃酸分泌を減少させる方法であって、
壁細胞を活性化する脂肪族カルボン酸分子のメチル, エチル, プロピルまたはブチルエステルから選択される効果的な量の一以上の脂肪族カルボン酸誘導体を効果的な量のプロトンポンプインヒビター(PPI)と組み合わせて前記哺乳類に投与することを含み、
壁細胞の活性化が誘導体の投与後少なくとも約 30 minで開始する及び/又は誘導体の投与後少なくとも約 60 min延びる方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、障害が逆流性食道炎, 胃炎, 十二指腸炎, 胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, 非ステロイド性の抗炎症薬物(NSAID)と関連する病状, 非潰瘍性消化不良, 胃食道逆流疾患, ガストリノーマ, 急性の上部胃腸管の出血, ストレス性の潰瘍形成, ピロリ菌感染, ゾリンジャーエリソン症候群(ZES), ウェルナー症候群, および全身性の肥満細胞症からなる群から選択される方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、前記哺乳類がヒト被験者である方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、脂肪族カルボン酸分子の一以上の誘導体は、即時放出型の製剤に製剤化され、遅延性放出のPPIの投与と同時に投与される方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、前記一以上の脂肪族カルボン酸分子の誘導体は、マレイン酸, コハク酸, ピルビン酸, クエン酸, フマル酸, α-ケトグルタル酸, スクシニル-CoAまたはオキサロ酢酸のモノメチル, ジメチル, モノエチルまたはジエチルエステルである方法。
【請求項19】
請求項14記載の方法であって、効果的な量のPPIと組み合わせた一以上の脂肪族カルボン酸分子の誘導体は、経口経路の投与を介して投与される方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−544686(P2009−544686A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521362(P2009−521362)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002028
【国際公開番号】WO2008/012621
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(506068070)ベクタ・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】