説明

小分子薬の持続放出製剤

生体適合性ポリマー、生体適合性ポリマーに配合されて粘性ゲルを形成している有機溶媒、および粘性ゲルに組み込まれた小分子薬を含んでいる注入可能なデポ製剤であって、Cmax対Cmin比が200未満、かつラグタイムが0.2未満のin vivo放出プロファイルを示す製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に小分子薬の送達に関する。
【0002】
本明細書で使用する用語「小分子薬」とは、低分子量の有益な薬剤である。この有益な薬剤は通常有機化学によって合成されるが、植物、真菌類および微生物などの天然起源から単離することもできる。小分子薬の送達のための普通の経路は経口、注入、経肺、経皮である。
【背景技術】
【0003】
多くの精神病治療薬は小分子薬であり、通常は1日に1回またはそれ以上投与することができる経口丸剤またはボーラス注射剤として提供される。しかし、経口丸剤およびボーラス注射は、投薬後の血漿濃度で観察されるピーク値およびトラフ値があるので、小分子精神病治療薬を投与するための最適経路ではないものと見られる。有害作用および治療効果の減退はそれぞれ血漿濃度のピーク値およびトラフ値に関連性があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記によって、現在経口丸剤およびボーラス注射の形態で投与される小分子薬に依存する精神病治療法ならびにその他の治療形態は、投薬後の血漿濃度の変化を最少にするように設計された持続放出剤形によって利益がもたらされるはずである。持続放出製剤としての精神病治療薬の投与は患者のコンプライアンスを向上させることにもなろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1態様中、本発明は、生体適合性ポリマー、生体適合性ポリマーに配合されて粘性ゲルを形成している有機溶媒、およびその粘性ゲルに組み込まれた小分子薬を含んでいる注入可能なデポ製剤であって、Cmax対Cmin比が200未満、かつラグタイムが0.2未満のin vivo放出プロファイルを示す製剤に関する。
【0006】
別の態様中、本発明は生体適合性ポリマー、生体適合性ポリマーに配合されて粘性ゲルを形成している有機溶媒、およびその粘性ゲルに組み込まれた小分子薬を含んでいる、Cmax対Cmin比が200未満、かつラグタイムが0.2未満のin vivo放出プロファイルを示す注入可能なデポ製剤の有効量を被験体にインプラントすることを含む、被験体に小分子薬を制御された様相で投与する方法に関する。
【0007】
本発明のその他の構成および利点は以下の記述から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ここで本発明を、添付する図面に掲載するとともに、2、3の好ましい実施形態を参照しながら、詳細に説明することとする。以下の説明中、本発明の完全な理解を提供するために、多数の特定化した詳細を設定している。しかし、当業者にとって、これらの特定化した詳細のいくつかまたは全部がなくても本発明を実用化することができることは明らかであろう。別の例では、周知の構成および/または工程は、本発明を不必要に不明瞭化しないために、説明しなかった。本発明の構成および利点は以下の図面および考察からさらに理解することができる。
【0009】
本発明は、難溶性小分子薬のデポゲルビヒクル中への組み込みによって、in vivoでほぼ0次放出性である小分子薬製剤が製造されるという発見に部分的に基づいている。その放出プロファイルは最少のラグタイムおよび突出(burst)を示す。デポ製剤として、この放出プロファイルは驚異的である。なぜならば、当分野で支配的な考え方は、低突出性の、ほぼ0次放出は、薬剤のコーティングおよびマイクロカプセル封入などの特別の段階を経ない限り、実際上不可能であるというものだからである。本発明では、Cmax対Cmin比が200未満、かつラグタイム、Tlagが0.2未満のin vivo放出プロファイルを持つ、いくつかの小分子薬製剤が同定された。
【0010】
変量「Cmin」は血漿または血清中の最少薬物濃度である。変量「Cmax」は血漿または血清中の最大薬物濃度である。変量「Tlag」は、Tvalley対Ttotalの比であり、ここでTvalleyはTtotalよりも小さい。変量「Tvalley」はCvalleyに到達するまでの時間である。変量「Cvalley」は放出中の血漿または血清中の薬物濃度の最初のトラフ値である。変量「Ttotal」は総放出期間である。
【0011】
本発明の実施形態にしたがう小分子薬製剤はデポ注射剤として調製することができる。その使用環境は液状環境であり、以下が含まれる: ヒトまたは動物の皮下、筋内、心筋内、外膜、腫瘍内、もしくは脳内部分、創傷部位、または硬関節腔もしくは体腔。例えば、薬物の治療効果が低下するか、またはその薬物について治療効果をもたらす期間が終わったとき、あるいは何らかの理由で被験体がさらに投与を必要とする場合、多重または反復した注射剤投与をすることができる。製剤は被験体内に注入後、インプラントされた持続放出薬物送達システムとして作用する。こうした制御放出は1週間、1週間以上、1ヶ月、または1ヶ月以上にわたることが可能である。好ましくは、制御放出は少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月にわたる。
【0012】
本発明の実施形態にしたがう小分子薬製剤としてデポゲルビヒクルが含まれる。デポゲルビヒクルとして、生体適合性ポリマー、すなわち、使用環境において刺激または壊死をもたらすことがないポリマーが含まれる。本発明で有用と見られる生体適合性ポリマーは生体内分解性、すなわち、徐々に分解、溶解、加水分解および/または自己腐食するものである。生体内分解性ポリマーの例として、限定するわけではないが、以下が含まれる: ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカルボナート、ポリオルトカルボナート、ポリホスファゼン、コハク酸、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖類、キチン、キトサン、ならびにこれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物。ポリマーは典型的にはデポゲルビヒクル中に約5〜80重量%、好ましくは約20〜70%、多くの場合約40〜60重量%の範囲の量で存在する。
【0013】
1実施形態中、ポリマーはポリラクチドである。ポリラクチドポリマーとは、乳酸に基づくポリマーまたは乳酸およびグリコール酸に基づくコポリマーである。ポリラクチドポリマーに、本発明によって達成することができる有益な結果に実質的に影響しない、少量のその他のコモノマーを含ませることができる。用語「乳酸」には異性体類、L-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、およびラクチドが含まれる。用語「グリコール酸」には、グリコリドが含まれる。ポリマーは乳酸対グリコール酸のモノマー比が約100:0〜15:85、好ましくは約60:40〜75:25、多くの場合約50:50のものがよい。ポリラクチドポリマーはゲル透過クロマトグラフィーによって測定して、約1,000〜約120,000、好ましくは約5,000〜約30,000の範囲の数平均分子量である。好適なポリラクチドポリマーは市販されている。
【0014】
デポゲルビヒクルにはさらに、ポリマーと配合したときに典型的には500ポイズ〜200,000ポイズ、好ましくは約1,000ポイズ〜50,000ポイズの範囲の粘度を示す粘性ゲルを形成する、生体適合性溶媒が含まれる。デポゲルビヒクルで使用する溶媒は典型的には有機溶媒であり、それは単一溶媒でも溶媒の混合物でもよい。使用環境中でのデポゲルビヒクルによる水の取り込みを制限するため、溶媒、または多成分溶媒の場合には溶媒の少なくとも1成分が、好ましくは水との限定された混溶性、例えば、7重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満の水との混溶性を持つ。好適な溶媒の例として、限定するわけではないが、安息香酸ベンジル(BB)、ベンジルアルコール(BA)、安息香酸エチル(EB)、トリアセチン、およびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が含まれる。溶媒は典型的にはデポゲルビヒクル中に、約20〜95重量%の範囲の量、好ましくは約30〜80重量%の範囲の量、多くは約40〜60重量%の範囲の量、存在する。
【0015】
本発明の実施形態にしたがう製剤として、上記のようなデポゲルビヒクルに分散または溶解させた小分子薬が含まれる。用語「分散または溶解」とは、粘性ゲル中の小分子薬の存在を確実にするすべての手段を包含することを想定しており、溶解、分散、懸濁などが含まれる。本発明の製剤中で使用する小分子薬は水に難溶性である。好ましい1実施形態中、本発明の製剤中で使用する小分子薬は水への溶解度が1 mg/ml未満のものである。1実施形態中、本発明の製剤中で使用する小分子薬は、200〜2,000ダルトンの範囲の分子量のものである。本発明の製剤中で使用する小分子薬は治療濃度域が狭いものでも広いものでもよい。しかし、本発明は一般的に、狭い治療濃度域を持つ小分子薬について、Cmaxおよび毒性の制御の意味において良好な結果をもたらす。小分子薬は製剤中に、典型的には約1〜50重量%の範囲の量、より好ましくは約5〜40重量%の範囲の量、多くは約10〜30重量%の範囲の量、存在する。
【0016】
1実施形態中、小分子薬製剤として、小分子抗精神病薬、ドーパミン受容体作動薬、ドーパミン受容体拮抗薬、セロトニン受容体作動薬、セロトニン受容体拮抗薬、およびセロトニン取り込み阻害薬などの小分子精神病治療薬が含まれる。下記の表1にいくつかの小分子精神病治療薬の生理化学的性質を示す。R209130-塩基は分子式C19H20FNOである。R209130-マンデル酸塩(R209130)は分子式C19H20FNO.C8H8O3である。R209130-酒石酸塩(R167154)は分子式C19H20FNO.C4H6O6である。R209130およびその類似体は推定上の非定型抗精神病性質を持ち、動物モデルで抗不安、抗うつ、および社会適応効果が証明されている。これらの特性はR209130の中枢ドーパミンD2受容体群、セロトニン5-HT2Aおよび5-HT2C受容体の二重拮抗作用、ならびにノルエピネフリン取り込みの阻害に起因するものと見られる。リスペリドン-塩基は分子式C23H27FN4O2である。リスペリドン-パモ酸は分子式C23H27FN4O2.C23H16O6である。リスペリドンは複合セロトニン(5-HT2)およびドーパミン(D2)受容体拮抗薬である。
【0017】

本発明にしたがうデポゲルビヒクルから送達される小分子薬物のPKプロファイルならびにこのPKプロファイルに対するその薬物の塩形態、溶媒タイプ、ポリマータイプ、ポリマー分子量、ポリマー/溶媒比、薬物負荷量、および粒子サイズの影響を決定するために、研究を実行した。
【0018】
以下の実施例は説明を目的として提供するものであって、本明細書で別に記載する本発明を限定する意図はない。
【実施例1】
【0019】
デポゲルビヒクルを以下のようにして調製した。Mettler PJ3000トップローダー計量器でHDPE容器の風袋を控除した。ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、(50/50のL/G比)、RESOMER(登録商標)RG502(PLGA-502)として入手可能、を容器中に秤量して入れた。PLGA-502を含有する容器重量を控除し、相当する溶媒をPLGA-502に添加した。PLGA-502と溶媒の各種配合のパーセンテージとして表現した量を下記の表2に提示する。PLGA-502と溶媒の混合物を混合するためにハイブリッドミキサーを使用して、溶媒中のポリマーの透明ゲル状の溶液を生成させた。
【0020】

安息香酸ベンジル(BB)、ベンジルアルコール(BA)、安息香酸エチル(EB)、水酸化エチル(EtOH)、トリアセチン、およびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ならびにそれらの混合物から選択される溶媒と、以下から選択されるポリマーによって、その他のデポゲルビヒクルを調製した: ポリD,L-ラクチド、RESOMER(登録商標)L104、RESOMER(登録商標)R104、RESOMER(登録商標)202、RESOMER(登録商標)203、RESOMER(登録商標)206、RESOMER(登録商標)207、RESOMER(登録商標)208として入手可能; 50/50のL/G比のPLGA、RESOMER(登録商標)RG502Hとして入手可能; 50/50のL/G比のPLGA、RESOMER(登録商標)RG503として入手可能; 50/50のL/G比のPLGA、RESOMER(登録商標)RG755として入手可能; ポリL-ラクチド、分子量2000、RESOMER(登録商標)L206、RESOMER(登録商標)L207、RESOMER(登録商標)L209、RESOMER(登録商標)L214として入手可能; 90/10のL/G比のPLGAポリL-ラクチド-コ-D,L-ラクチド、RESOMER(登録商標)LR209として入手可能; 75/25のL/G比のPLGA、RESOMER(登録商標)RG752、RESOMER(登録商標)RG756として入手可能、85/15のL/G比のPLGA、RESOMER(登録商標)RG858として入手可能; 70/30のL/G比のポリL-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート、RESOMER(登録商標)LT706として入手可能、およびポリジオキサン、RESOMER(登録商標)X210(Boehringer Ingelheim Chemicals, Inc. Petersburg, VA)として入手可能; 100/0のL/G比のDL-ラクチド/グリコリド(DL)、MEDISORB(登録商標)ポリマー100 DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー100 DL Lowとして入手可能; 85/15のL/G比のDL-ラクチド/グリコリド(DL)、MEDISORB(登録商標)ポリマー8515 DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー8515 DL Lowとして入手可能; 75/25のL/G比のDL-ラクチド/グリコリド(DL)、MEDISORB(登録商標)ポリマー7525 DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー7525 DL Lowとして入手可能; 65/35のL/G比のDL-ラクチド/グリコリド(DL)、MEDISORB(登録商標)ポリマー6535 DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー6535 DL Lowとして入手可能; 54/46のL/G比のDL-ラクチド/グリコリド(DL)、MEDISORB(登録商標)ポリマー5050 DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー5050 DL Low、MEDISORB(登録商標)5050ポリマーDL 2A(3)、MEDISORB(登録商標)5050ポリマーDL 3A(3)、MEDISORB(登録商標)5050ポリマーDL 4A(3)として入手可能(Medisorb Technologies International L.P., Cincinnati, OH); およびPLGA(50/50のL/G比)、PLGA(65/35のL/G比)、PLGA(75/25のL/G比)、PLGA(85/15のL/G比)、ポリD,L-ラクチド、ポリL-ラクチド、ポリグリコリド、ポリε-カプロラクトン、ポリD,L-ラクチド-コ-カプロラクトン(25/75のL/G比)、およびポリD,L-ラクチド-コ-カプロラクトン(75/25のL/G比)、Birmingham Polymers, Inc., Birmingham, ALから入手可能。ポリカプロラクトン-グリコール酸-乳酸コポリマー(PCL-GA-LA)も、ポリビニルピロリドン(PVP)と混合するか、またはそれのみで使用した。これらのポリマーの典型的な分子量は6,000〜20,000の範囲である。
【実施例2】
【0021】
薬物粒子を以下のように調製した。R209130、R167154、リスペリドン塩基、またはリスペリドンパモ酸薬を各種サイズの篩にかけて、一定の範囲の粒子サイズ分布を持つ薬物粒子を取得した。20〜63μm、63〜125μm、75〜125μmの範囲、または38μm未満の粒子を取得した。得られた微細粒子も薬物粒子として使用した。
【実施例3】
【0022】
デポ製剤を以下のようにして調製した。実施例2で記載したようにして調製した0〜50重量%の量の篩にかけた薬物粒子を、実施例1で記載したようにして調製したデポゲルビヒクルに添加し、薬物粒子が完全に湿潤化するまで、手動で混和させた。その後、薬物粒子とデポゲルの混合物を、角型金属スパチュラを付属したCaframo機械的撹拌器を使用する常套的な混合法によって、完全に混和させた。最終の均質ゲル製剤を、保存または分配のため、3、10、または30 cc使い捨てシリンジに移した。
【実施例4】
【0023】
代表的な数のインプラント可能なゲルを前記の操作法にしたがって調製し、薬物の放出を、ラット中での、時間の関数としての薬物の血清または血漿中濃度によって測定するin vivo試験をした。
【0024】
一般的に、ラットでのin vivo研究は、本発明のインプラントシステムによる薬物の全身投与時の、薬物(例えば、R209130、R167154、リスペリドン塩基、リスペリドンパモ酸)の血漿レベルを測定するためのオープンプロトコルにしたがって実施した。上記の実施例で調製した、薬物を含有するデポゲル製剤を、0.5 cc使い捨てシリンジに充填した。使い捨て針(18ゲージ)をシリンジに装着し、循環浴を使用して37℃まで加熱した。このデポゲル製剤をラットに注入した。特定の時間間隔で血液を取り出し、薬物含有量について分析した。分析まで、全血漿サンプルを4℃で保存した。
【実施例5】
【0025】
本実施例では、デポゲルビヒクルからの小分子薬のin vivo放出に対する薬物の塩形態の影響を調査する。
【0026】
適切なサイズ範囲のR209130およびRl67154の粒子を、実施例3の操作法の通りに、デポゲルビヒクル中に組み入れた。生成した製剤を下記表2で説明する。最終の均質デポ製剤を貯蔵または分配のために3、10、または30 cc使い捨てシリンジに移した。実施例4の操作法の通りに薬物のin vivo放出を分析した。製剤のin vivo放出プロファイルを図1に示す。製剤のCmax対Cmin比およびTlagを表2に示す。Rl67154およびR209130は同一の薬物の別の塩形態である。製剤7(R209130)はCmax対Cmin比が19.2、かつTlagが0.61であり、一方製剤3(R167154)はCmax対Cmin比が25.7、かつTlagが0.33である。本実施例では、in vivo放出が製剤の塩形態によって影響されることを示している。製剤7(R209130)のTlagは製剤3(Rl67154)のTlagよりも高いが、製剤7は製剤3に比較してより良好な放出速度プロファイルおよび放出期間を持つことが明らかである。
【0027】

【実施例6】
【0028】
本実施例では、デポゲルビヒクルからの小分子薬のin vivo放出に対する溶媒タイプの影響を調査する。
【0029】
実施例1の操作法の通りに、PLGA-502とBA、BB、EB、EtOH、NMP、およびトリアセチン、ならびにそれらの組み合わせから選択される溶媒によって、デポゲルビヒクルを調製した。デポゲルビヒクルに、実施例3の操作法の通りに、適切な範囲の薬物を添加した。生成した製剤を下記表3で説明する。最終の均質デポ製剤を貯蔵または分配のために3、10、または30 cc使い捨てシリンジに移した。表3中の製剤のin vivo放出プロファイルを図2に示す。製剤のCmax対Cmin比およびTlagを表3に示す。
【0030】

上記表3中、製剤63(リスペリドン塩基/PLGA/トリアセチンデポ)はCmax対Cmin比が1364.64である。一方、製剤73(リスペリドン塩基/PLGA/EBデポ)はCmax対Cmin比が5.20であって、これは製剤63のCmax対Cmin比よりも顕著に低い。製剤2(R167154/PLGA/BBデポ)はCmax対Cmin比が59.68である。一方、製剤3(R167154/PLGA/BA/BB)はCmax対Cmin比が25.68であって、これは製剤2のCmax対Cmin比の半分未満である。このことは、溶媒タイプが製剤のin vivo放出プロファイルに影響し得ることを意味している。
【実施例7】
【0031】
本実施例では、デポゲルビヒクルからの小分子薬のin vivo放出に対するポリマータイプの影響を調査する。
【0032】
実施例3の操作法の通りに、各種のポリマーによってデポゲルビヒクルを調製し、適切なサイズ範囲のR209130を添加した。生成した製剤を下記表4で説明する。最終の均質デポ製剤を貯蔵または分配のために3、10、または30 cc使い捨てシリンジに移した。表4に製剤のin vivo放出プロファイルに関してのCmax対Cmin比およびTlagを示す。図3に表4中の製剤のin vivo放出プロファイルを示す。
【0033】

【実施例8】
【0034】
本実施例では、デポゲルビヒクルからの小分子薬のin vivo放出に対するポリマーの分子量の影響を調査する。
【0035】
実施例3の操作法の通りに、各種の分子量のポリマーによってデポゲルビヒクルを調製し、適切なサイズ範囲の薬物を添加した。生成した製剤を下記表5で説明する。最終の均質デポ製剤を貯蔵または分配のために3、10、または30 cc使い捨てシリンジに移した。表5に製剤のin vivo放出プロファイルに関してのCmax対Cmin比およびTlagを示す。
【0036】

【実施例9】
【0037】
本実施例では、デポゲルビヒクルからの小分子薬のin vivo放出に対するポリマー/溶媒比の影響を調査する。
【0038】
実施例3の操作法の通りに、各種の分子量のポリマーによってデポゲルビヒクルを調製し、適切なサイズ範囲の薬物を添加した。生成した製剤を下記表6で説明する。最終の均質デポ製剤を貯蔵または分配のために3、10、または30 cc使い捨てシリンジに移した。表6に製剤のin vivo放出プロファイルに関してのCmax対Cmin比およびTlagを示す。
【0039】

【実施例10】
【0040】
本実施例では、デポゲルビヒクルからの小分子薬のin vivo放出に対する薬物添加量の影響を調査する。
【0041】
実施例3の操作法の通りに、パーセンテージを変更させた、適切なサイズ範囲の薬物によってデポゲルビヒクルを調製した。生成した製剤を下記表7で説明する。最終の均質デポ製剤を貯蔵または分配のために3、10、または30 cc使い捨てシリンジに移した。表7に製剤のin vivo放出プロファイルに関してのCmax対Cmin比およびTlagを示す。
【0042】

【実施例11】
【0043】
本実施例では、デポゲルビヒクルからの小分子薬のin vivo放出に対する薬物の粒子サイズの影響を調査する。
【0044】
実施例3の操作法の通りに、デポゲルビヒクルを調製し、適切なサイズ範囲の薬物を添加した。生成した製剤を下記表8で説明する。最終の均質デポ製剤を貯蔵または分配のために3、10、または30 cc使い捨てシリンジに移した。表8に製剤のin vivo放出プロファイルに関してのCmax対Cmin比およびTlagを示す。
【0045】

【実施例12】
【0046】
Cmax対Cmin比が200未満、好ましくは50未満、より好ましくは30未満の場合、製剤をほぼ0次として記載する。製剤の放出のTlagは好ましくは0.2未満である。Cvalleyがない製剤はラグを提示しない。表9に特性としてほぼ0次放出を提示した多数の製剤を示す。図4に表9から選択された製剤のin vivo放出プロファイルを示す。
【0047】

本発明を、限定された数の実施形態を参照して記載してきたが、当業者は、本開示の利益を得て、本明細書に開示した本発明の範囲を逸脱しないその他の実施形態を考案することができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明の実施形態にしたがう製剤のin vivo放出プロファイルに与える薬剤の塩形態の影響を示すものである。
【図2】図2は本発明の実施形態にしたがう製剤のin vivo放出プロファイルに与える溶媒タイプの影響を示すものである。
【図3】図3は本発明の実施形態にしたがう製剤のin vivo放出プロファイルに与えるポリマータイプの影響を示すものである。
【図4】図4は本発明の実施形態にしたがう、ほぼ0次の放出プロファイルを持つ製剤を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマー、生体適合性ポリマーに配合されて粘性ゲルを形成している有機溶媒、および粘性ゲルに組み込まれた小分子薬を含んでいる注入可能なデポ製剤であって、Cmax対Cmin比が200未満、かつラグタイムが0.2未満のin vivo放出プロファイルを示す製剤。
【請求項2】
in vivo放出プロファイルのCmax対Cmin比が30未満である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
小分子薬が水に難溶性である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
小分子の水への溶解度が1 mg/ml未満である、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
ポリマーがポリラクチドである、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
ポリマーの乳酸対グリコール酸のモノマー比が100:0〜15:85の範囲である、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
ポリマーが以下からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤: ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカルボナート、ポリオルトカルボナート、ポリホスファゼン、コハク酸、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖類、キチン、キトサン、ならびにこれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物。
【請求項8】
溶媒が以下からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤: ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、水酸化エチル、トリアセチン、N-メチル-2-ピロリドン、およびこれらの混合物。
【請求項9】
小分子薬が抗精神病薬を含んでいる、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
小分子薬が以下からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤: ドーパミン受容体作動薬、ドーパミン受容体拮抗薬、セロトニン受容体作動薬、セロトニン受容体拮抗薬、セロトニン取り込み阻害薬、およびこれらの組み合わせ。
【請求項11】
小分子薬がR209130およびリスペリドンの塩基ならびに塩形態からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
小分子薬の分子量が200〜2,000ダルトンの範囲である、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
溶媒の水との混和性が7重量%未満である、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
小分子薬が、平均粒子サイズが0.1〜125μmの範囲の粒子形態である、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
少なくとも1週間にわたって目標の速度または目標に近い速度で小分子薬を放出する、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
1ヶ月にわたって目標の速度または目標に近い速度で小分子薬を放出する、請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
生体適合性ポリマー、生体適合性ポリマーに配合されて粘性ゲルを形成している有機溶媒、および粘性ゲルに組み込まれた小分子薬を含んでいる、Cmax対Cmin比が200未満、かつラグタイムが0.2未満のin vivo放出プロファイルを示す注入可能なデポ製剤の有効量を被験体にインプラントすることを含む、被験体に小分子薬を制御された様相で投与する方法。
【請求項18】
小分子薬が放出期間にわたって制御された様相で全身に送達される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
放出期間が少なくとも1週間である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
小分子薬が抗精神病薬を含んでいる、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−510116(P2009−510116A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533726(P2008−533726)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/038268
【国際公開番号】WO2007/041410
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(508096699)アルザ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】