説明

小型の走査型電子顕微鏡

【課題】安価で、使い易く、例えば教室のテーブル上に置くことのできる十分に小さな寸法とすることができる走査型電子顕微鏡を提供すること。
【解決手段】 小型の電子顕微鏡が、サンプルが存在する真空領域の一部を形成する壁を有する取外し可能なサンプルホルダを使用する。取外し可能なサンプルホルダを用いて真空を含むことによって、撮像の前に真空排気を必要とする空気の容積が著しく低減され、顕微鏡を迅速に真空排気することができる。好適な実施形態では、摺動真空シールが電子カラムの下にサンプルホルダを位置決めすることを可能にし、サンプルホルダは最初に真空バッファの下を通過されて、サンプルホルダ内の空気が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2006年6月7日出願の米国特許仮出願第60/811,621号明細書からの優先権を主張するものであり、係る出願を本願に援用する。
【0002】
本発明は電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0003】
電子顕微鏡は光学顕微鏡に対して、分解能が高いことおよび焦点深度が深いことなどの著しい利点を提供する。走査型電子顕微鏡(SEM)では、一次電子ビームが、観察する表面を走査する微細なスポットに集束される。表面に一次ビームが衝突すると、二次電子がその表面から放出され、一次ビームからの電子が後方散乱される。この二次電子または後方散乱された電子が検出され、画像が形成され、画像の各点の輝度は、ビームがそれに対応する表面上のスポットと衝突するときに検出される電子の数によって決定される。
【0004】
電子顕微鏡は典型的には、それを操作するのに熟練した技術者を必要とする大型で、複雑、かつ高価な機器である。SEMデバイスは典型的には、優に100,000ドルを超え、専用の電気配線や、オペレータ領域外部の真空ポンプの通気孔を含む、特別な設備が必要となる。また、SEM画像などの高倍率画像においては、サンプルのどこで画像が得られているかを判断することおよびその画像とサンプルの他の部分との関係を理解することがユーザにとって難しくなることがある。電子顕微鏡のコストおよびそれを操作するための高度な知識は、そのコストに対する金銭的余裕があり、操作するための専門家を提供することのできる研究および産業にその使用を制限する。
【0005】
空気分子は電子のビームに干渉するので、電子顕微鏡内のサンプルは真空中で維持される。サンプルを挿入後、チャンバ内の空気を真空排気するためには比較的長い時間を要するのでユーザは画像が使用可能になるまでに待たなければならない。この遅延が多くの用途におけるSEMの使用を実用的でないものにしている。
【0006】
高度な技能の無いユーザが操作することができ、サンプルを挿入後に迅速に画像を生成することのできる低コストの電子顕微鏡を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/811,621号明細書
【特許文献2】PCT国際出願第PCT/US2006/041976号明細書
【特許文献3】PCT国際出願第PCT/US2007/010006号明細書
【特許文献4】米国特許仮出願第60/764,192号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、安価で、使い易く、例えば教室のテーブル上に置くことのできる十分に小さな寸法とすることができる走査型電子顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、比較的低価格で製造することができ、頑丈で使用しやすい独自の装置を提供し、これにより電子顕微鏡の利益がはるかに容易に利用できるものになる。本発明の電子顕微鏡の好適な実施形態は、比較的低コストで製造することができ、比較的単純なユーザ
・インタフェースを備え、サンプル挿入後、迅速に電子ビーム画像を提供し、特別な設備が無くても使用することができる。
【0010】
上記は以下の本発明の詳細な説明が理解できるように、本発明の特徴および技術的利点をかなり大まかに述べたものである。本発明の追加の特徴および利点を以下で記載する。開示される概念および具体的な実施形態は、本発明と同じ目的を実行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用されてもよいことを当業者は理解されたい。そのような均等な構成は添付の特許請求の範囲に定める本発明の精神および範囲から逸脱しないものであることも当業者は理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子顕微鏡システムの好適な実施形態の外観を示す図である。
【図2】図1の電子顕微鏡システムの一部を示す部分断面図である。
【図3】図1の電子顕微鏡システムを示す別の断面図である。
【図4】図1の電子顕微鏡システムと共に用いられる第1のサンプル容器を示す図である。
【図5】図1の電子顕微鏡システムと共に用いられる第2のサンプル容器を示す図である。
【図6A】サンプルホルダが光学ナビゲーション・カメラの下に位置決めされた、図1の電子顕微鏡システムの下部を示す略図である。
【図6B】サンプルホルダが予備真空排気された真空チャンバの下に位置決めされた、図6Aの電子顕微鏡システムの下部を示す略図である。
【図6C】サンプルホルダが走査型電子顕微鏡の下に位置決めされた、図6Aの電子顕微鏡システムの下部を示す略図である。
【図7】図1の電子顕微鏡システムに用いられる摺動真空シールの一実施形態を示す図である。
【図8】図1の電子顕微鏡システムの摺動真空シールを示す略図である。
【図9】本発明の好適な実施形態に係るユーザ・インタフェースのグラフィック部分を示すスクリーン画像であり、主スクリーンの3つの画像ウィンドウおよび選択可能な種々のボタンを示す図である。
【図10】図9のスクリーン画像であり、小さな光学オーバービュー・ウィンドウには光学ナビゲーション・カメラによって撮られた画像が表示され、この画像を拡大したものが大きな主ビューイング・ウィンドウに表示され、両画像には周囲インジケータが強調表示されていることを示す図である。
【図11】図10のスクリーン画像であり、周囲インジケータが画像の異なる領域に移動されていることを示す図である。
【図12】図11の光学ウィンドウ上で選択された領域の同じ低倍率の電子顕微鏡画像を大きな主画像ウィンドウおよび小さな電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウに表示したスクリーン画像を示す図である。
【図13】図12のスクリーン画像であり、主画像スクリーンは周囲インジケータによって示された領域の高倍率の電子顕微鏡画像領域を電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウに表示していることを示す図である。
【図14】本発明の好適な実施形態に係るユーザ・インタフェースのアーカイブ・スクリーンを表示するスクリーン画像を示す図である。
【図15】本発明の好適な実施形態に係るユーザ・インタフェースの設定スクリーンを表示するスクリーン画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はSEMアセンブリ102、好ましくはユーザ入力を受け付けるタッチ・スクリーン106を有する表示モニタ104、回転式ユーザ入力デバイス108、およびダイヤフラム・ポンプなどの外部予備真空ポンプ110を備える、本発明の電子顕微鏡システム100の好適な実施形態の外観を示す。サンプルホルダ112は観察されるべきサンプルを保持し、SEMアセンブリ102に挿入される。
【0013】
電子顕微鏡システム100は特別な設備の設置を必要としない。すなわち、好適な実施形態は従来の電源で、つまり、壁のコンセントに差し込むことによって動作可能であり、真空システムはオペレータ領域の外部との通気を必要としない。SEMアセンブリ102は特別な制振装置を必要としない。SEMアセンブリ102は文字通り「卓上型SEM」であり、頑丈な任意の作業面に設置し、壁に差し込むことができる。したがって、電子顕微鏡システム100は教室やさらに家庭での使用に適している。いくつかの実施形態は例えば24V電源からの直流で動作することができるので、それらの実施形態は実際に持ち運び可能なものになる。
【0014】
図2および3はSEMアセンブリ102のサブシステムのいくつかを示す。このようなサブシステムは、電子ソースアセンブリ202、集光レンズ区間204、および対物レンズ区間206を含む。
【0015】
電子ソースアセンブリ
図2は電子ソースアセンブリ202を示し、ウェーネルト・キャップ216で一部が囲繞された六ホウ化ランタン結晶または六ホウ化セリウム結晶などの熱イオン放出ソース214を具備する電子銃212を備えている。熱イオン放出ソース214およびウェーネルト・キャップ216は典型的には約−5,000Vの比較的高い負電圧に維持され、ウェーネルト・キャップ216は熱イオン放出ソースに対してマイナス数百ボルトがバイアス印加される。このウェーネルト・キャップ216は電子ビームを集光し、それをウェーネルト・キャップの開口部218を通して、典型的には接地電位に維持されたアノード220に向けて送る。
【0016】
整列ロッド
静電的整列ロッド222は電子ソースアセンブリ202からのビームをレンズ・システムの光学軸と整列させて、熱イオン放出ソース214とウェーネルト開口部218とアノード220との間の機械的不整列を補償する。整列ロッド222はビーム軸を傾けて正確な整列をもたらすことができ、これによりシステム・コンポーネントの機械的整列の所要の公差が低減されるとともに、製造コストが抑えられる。磁気整列ロッドまたはプレートを用いてもよい。いくつかの実施形態では、2セットのロッドを用いてビームをシフトおよび傾斜させ得る。単一セットのロッドを用いれば、いくつかの実施形態のコストおよび複雑さを低減することができる。
【0017】
集光レンズ区間
SEMアセンブリ102は、永久磁石232からの磁界を用いて電子ビームを集光させる集光レンズ230を含む。第2の永久磁石234は対物レンズに磁界を提供する。磁気回路が永久磁石からの磁束を拘束し、対物レンズおよび集光レンズ両方で使用できるようにする。集光レンズ磁極片は電子ビーム経路に磁束を提供して電子ビームを集光させる。
【0018】
対物レンズ区間
SEMアセンブリ102は、大半のSEMに用いられる電磁レンズの代わりに、永久磁石対物レンズ240を使用する。上記のように、永久磁石232および234は対物レンズ磁極片242に磁束を提供する。集束コイル244は追加の磁束を磁極片242を介して提供して、電子ビームが受ける磁界を変化させる。集束コイル244を用いて、例えば異なるタイプのサンプルホルダ112に変えるときに、本システムの焦点面を変え、微細な調節をもたらしてサンプルの焦点を合わせる。好適な実施形態では、永久磁石232および234は十分な磁束を提供してビームをシステムの最短の焦点距離で集束させる。集束コイルからの磁界は永久磁石からの磁界とは反対に向けられ、これにより磁極片からの磁束が低減され、より大きな距離でビームを集束させる。
【0019】
電気的貫通接続
どのような電子顕微鏡においても、真空システム内に電圧を印加することが必要であり、先行技術では、真空チャンバ外部から真空チャンバ内部に電力および信号を伝達するためにいくつかの手段が用いられてきた。SEMアセンブリ102は集光レンズ区間204と対物レンズ区間206との間に挟まれた回路基板250を用いて、真空チャンバ外部から真空チャンバ内の各要素に電力および電気信号を供給する。回路基板250は剛性または可撓性基板であってもよい。この電気的貫通接続は「Hermetically Sealed Housing with Electrical Feed−In」に対するPCT国際出願第PCT/US2006/041976号明細書に記載されており、これを本願に援用する。
【0020】
偏向器/非点収差補正ロッド
電子顕微鏡システム100は対物レンズ240の前に位置決めされたシングル・ステージ偏向器260を用いる。偏向器260を対物レンズ240の前に位置決めすることによって、作動距離、すなわち最終レンズとサンプルとの間の距離が短縮され、これにより分解能が改善される。ビームは貫通接続回路基板250に取り付けられた偏向器ロッド262を用いて偏向される。8個の偏向器ロッド262は静電八重極偏向器を備える。偏向器ロッド262は直径が3mm乃至4mm、長さが約2cm乃至3cmであることが好ましい。これらのロッドはプリント回路基板上のエッジ・コネクタにはんだ付けされている。電子顕微鏡システム100は、貫通接続回路基板250に差し込まれる第2の回路基板上に設けられるデジタル式偏向電子機器ではなくアナログ式偏向電子機器(図示せず)を用いることが好ましい。貫通接続回路基板250は電気的絶縁を提供するために金めっきを接地面として用いる。この偏向電子機器はコネクタを介して偏向信号を回路基板に伝達する。8個のロッド、すなわち八重極デザインを用いることによって、偏向器260はビームの非点収差を補正するための非点収差補正装置としても機能する。焦点および非点収差補正装置の調節は手動で行ってもよいし、自動で行ってもよい。
【0021】
検出器
好適なシステムは後方散乱電子検出器280を使用し、この検出器は一次電子ビームと同軸な環状ダイオード検出器であり、一次電子ビームが通過する穴を含んでいる。好適な検出器280は四分円に分割され、ユーザは個々の四分円をオンまたはオフしたり、異なる四分円からの信号の組合せ(例えば、追加または減らす)を指定することができる。このような操作により、画像コントラストを変えて、撮像がトポグラフィまたは組成などのサンプルの異なるアスペクトに対してより敏感になる。ダイオード後方散乱検出器は、典型的なシンチレータ光電子増倍管型二次電子検出器よりも、SEMアセンブリ102のより高圧で動作するのに適している。サンプルは比較的圧力が高いため、いくつかの実施形態は環境走査型電子顕微鏡に用いられるようなガス増幅検出器を用いることも考えられる。
【0022】
サンプル装填/取外しシステム
本発明の好適な実施形態は先行技術で用いられるような従来のサンプル真空チャンバを含まない。大半の先行技術のシステムでは、サンプル真空チャンバ内で対物レンズの下にサンプルステージが位置決めされている。サンプルはエアロックを用いるか、真空チャンバを通気することによって真空チャンバに挿入される。次いで、撮像のためにサンプルチャンバが許容可能なレベルの真空まで真空排気される。撮像が完了すると、サンプルはサンプルステージから除去され、真空チャンバから取り出される。サンプルステージはシステムの真空チャンバ内に残っている。
【0023】
電子顕微鏡システム100は従来のサンプルチャンバを一切含まない。以下にさらに詳細に考察するように、取外し可能なサンプル容器の壁はサンプルを含む真空領域の壁の一部を形成する。
【0024】
図4および5はサンプルホルダまたはサンプル容器402および502をそれぞれ示し、それらは図1のサンプルホルダ112の実施形態である。サンプルホルダ402は比較的平坦なサンプルを保持するための従来の金属マウント404を含み、サンプルホルダ502は三次元のサンプルを保持するのにより便利な従来のスタブ・マウント504を含む。ノブ410がマウント404または504を上下させるピッチの大きなウォームねじ機構(図示せず)を回転させる。ウォームねじは角ねじを有し、サンプルマウントに取り付けられた角ねじ内で噛み合うピンが、角ねじが回転するときにサンプルマウントを上下させる。容器を保持するために、ハンドル412が設けられている。電気接点414はサンプル容器に入るための電気信号および電力のための経路を提供する。いくつかの実施形態では、この電気信号を用いて、例えば、サンプル加熱コイルまたはペルチェ冷却器などの冷却器を制御および給電することができる。いくつかの実施形態では、電気信号を用いてモータまたは他のデバイスを制御し、サンプルを上下させたり、サンプルの位置を変えたりすることもできる。サンプル容器が装填されるときにサンプル容器上のコネクタと接触するばね荷重式の電気接点を介してシステムから容器までの接続を作ることが可能である。いくつかの実施形態では、サンプルホルダはプログラムを格納および実行して、指定された機能を実行するためのメモリおよびマイクロプロセッサを含むことができる。例えば、カップをプログラムしてサンプルを加熱または冷却してもよい。「知能」をカップに含めることによって、異なるタイプのサンプルのために顕微鏡を再プログラムする必要がない。つまり、そのプログラミングをサンプルホルダに格納することができる。本発明は特定のタイプのサンプルホルダに限定されるものではない。
【0025】
ナビゲーション・カメラ
図6A〜6Cは光学カメラ602などの光学撮像デバイスを含む電子顕微鏡システム100の構成ならびに電子顕微鏡100の下部を示す。光学撮像カメラ602は電荷結合素子(CCD)を採用することが好ましく、サンプルがその環境が真空排気される前に観察されるように位置決めされることが好ましい。サンプル容器112は光学カメラの下に移動し、この光学カメラがサンプルの拡大されたデジタル画像を形成および格納する。光学カメラ602内の画像の倍率は典型的には、10倍〜最大100倍である。光学カメラ602は上下に動いてサンプルに焦点を合わせることができる。動作は電動モータによるものであることが好ましく、または手動であってもよい。このカメラは約8mm×8mmの視野を有する。このカメラからの多数の画像を共に並べたり貼り合わせたりして、サンプルのより大きな部分の画像を形成することができる。このタイリング(tiling)またはステッチング処理(stetching)は自動的に行うことができ、サンプルは、カメラの下で、電動モータによって、蛇行パターンで様々な位置に自動的に移動され、各位置がサンプルの一部をカバーする。各位置では、画像が取り込まれ、画像の全部が組み合わされてサンプル全体の光学オーバービューが生成される。あるいは、ユーザがサンプルの移動を制御して有用な画像のみを生成することができる。手動モードでは、ユーザはタッチ・スクリーン上のナビゲーション矢印に触れることによってカメラの下のサンプルを動かすことができ、または画像上のある点を押すことによって、触れた点が視野の中心になるように画像を再度中心に置くことができる。任意選択で、モニタに表示された隣接する画像を調節して、歪みまたは位置決めの不正確さから生じた画像と画像の連続性を確保することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、このシステムはサンプルホルダ112内のサンプルの高さを光学カメラの焦点に基づいて自動的に決定し、次いで、それに応じて電子ビームの焦点を調節することができる。光学カメラ602は既知の焦点距離を有しているので、サンプルが焦点内にあるとき、サンプルとカメラとの間の距離を決定することができる。この距離を用いて、SEMの焦点を調節するためにサンプルの高さが決定される。サンプルホルダ112の高さ設定は、SEMを自動的に調節することのできるシステム・コントローラへ自動的に通信されてもよい。次いで、SEMは任意の作動距離または倍率のための連続的な範囲にわたって自動的に調節される。実際のサンプル位置の設定は、高いサンプル位置の設定と低いサンプル位置の設定との間で補間することによって決定される。焦点はサンプルホルダ内のサンプル設置高さに基づいて大まかに設定した後、自動または手動で「高精度調整」することができる。別の実施形態は、サンプルホルダ内の予備設定された2つの高さ調節値(広い視野と狭い視野の調整値)を用いる。対物レンズの作動距離のための調節は、予備設定された2つの作動距離のどちらが選択されるかに応じて行われる。
【0027】
摺動真空シール
電子顕微鏡システム100は、摺動真空シールを用いてサンプル容器を移動させて、対物レンズ242の下の位置までの途中でサンプル容器から空気を除去する真空バッファと接触させる。
【0028】
図6A〜6Cは摺動真空シールの各態様を示す。オペレータがSEMアセンブリ102外部のサンプル容器112にサンプルを装填し、次いで、サンプル容器112が電子顕微鏡システム100に挿入される。一実施形態では、ユーザがカバー110を摺動させてサンプル容器112を受け取るための容器を露出させる。カバー110を閉じると、自動的に、サンプル容器112の前に移動してシステム100内の光学カメラ602などの光学撮像システムの下に入り低倍率画像を取得する。カバー110を閉じると、サンプル容器112は剛性摺動プレート605に対してある位置に自動的に移動され、サンプル容器112は剛性摺動プレート605と気密シールを形成し、次いで、以下でさらに詳細に説明するように、このプレートはSEMアセンブリ102の他の部分と摺動真空シールを形成する。
【0029】
図6Aに示すように、サンプルホルダ42は摺動プレート605の貫通穴46に対してある位置に保持され、サンプルホルダ42と摺動プレート605との間に気密シールを形成する。摺動プレート605はSEMアセンブリ102のベース上のグレーシャー(glacier)層610に対して摺動して、光学カメラ602からSEMアセンブリ102のサンプル撮像位置までサンプル容器112を移動させる。可撓性プレート603は比較的均一な摺動摩擦との一貫した真空シールの形成を支援する。摺動真空シールを図7に関連して以下で詳細に記載する。摺動プレート605はまた、光学カメラおよび電子顕微鏡の下で観察している間にサンプル位置を調節するために移動する。以下でより詳細に説明する図7は、剛性摺動プレート605内のサンプル容器112の構成を示す。
【0030】
サンプルの低倍率光学画像が光学カメラ602から得られたら、サンプル容器112は対物レンズ242の下の電子撮像位置の方へ移動する。図6Bはサンプル容器112が予備真空排気された真空バッファ604および606の下を通過することによって一部が真空排気された状態を示している。真空バッファは、サンプル容器112がこのバッファを通過するときにその容器内の空気の大半を除去する。2つの真空バッファを示しているが、異なる実施形態はより多くの、またはより少ない真空バッファを有してもよい。
【0031】
真空バッファ604および606はサンプル容器112内に十分な真空をもたらして、サンプル容器が電子ビームの下に位置決めされた後、非常に短い時間、好ましくは2分未満、1分未満、30秒未満または15秒未満で電子ビーム画像を取得できるようにする。真空バッファ604および606は、ターボ・ポンプ282の入口に接続され、典型的にはサンプルが挿入される前に真空排気される約1Lの容積を含む。サンプル容器が真空排気孔を通ると、空気はサンプル容器を出て真空バッファに入り、これによりサンプル容器が部分的に真空排気される。圧力はサンプル容器の容積および真空バッファの容積の比に比例してサンプル容器内で大まかに低減される。予備真空チャンバの容積はサンプル容器の容積よりも非常に大きいので、圧力はサンプル容器内で大きく低減され、これによりサンプル容器をその最終圧まで下げて電子ビーム画像を形成するのに必要な時間は非常に短縮される。
【0032】
撮像のためにサンプル容器112が対物レンズ242の下に位置決めされると、取外し可能なサンプル容器の壁は真空チャンバ壁の一部を形成する。すなわち、取外し可能なサンプル容器の壁は対物レンズ242の下の真空容積の一部を画定する。対物レンズとベース・プレートとの間の容積は非常に小さいので、撮像を開始できる前に抽出に必要な時間が大幅に低減される。好適な実施形態では、サンプル容器が対物レンズの下に位置決めされた後に撮像を直ちに開始するために、サンプル容器は真空バッファによって十分に真空排気される。
【0033】
図7は摺動真空シールの各コンポーネント間の位置関係を示す。サンプル容器112周囲の溝704内の可撓性シール702は、剛性摺動プレート605に取り付けられ剛性摺動プレート605に対してOリング716によってシールされたフランジ付きシリンダ712の円筒部分710の内部をシールする。可撓性ステンレス鋼プレート603はクリップ722を用いて摺動プレート605にクリップ止めされており、摺動プレート605と一緒に移動する。電子カラム対物レンズ246の軸740の下の適所にサンプル容器112を移動するために、摺動プレート605はSEMアセンブリ102のベース・プレート611に取り付けられたグレーシャー層610に沿って摺動する。ばね(図示せず)を剛性摺動プレート605の止まり穴726に挿入し、可撓性シート603を氷河層610に対して押圧して、氷河層内の穴(例えば、サンプル容器112を真空バッファ604および606に接続する穴612および電子ビームが通過する穴(グレーシャー(glacier)プレート貫通穴601、摺動プレート貫通穴609、および可撓性プレート貫通穴730))周囲により良い真空シールを保証することができる。可撓性シール720は剛性摺動プレート605に対して可撓性プレート603をシールする。剛性プレートと顕微鏡ベースとの間に可撓性プレートを用いれば、剛性プレートを摺動させるのに必要な摺動摩擦力が低減され、摺動力はより一貫したものになる。プレート611の底部上のグレーシャー層610を用いれば、摩擦が低減され、粒子の発生が抑えられる。
【0034】
本願に援用するPersoonらの2007年4月27日出願の「Slider Bearing for use with an Apparatus Comprising a Vacuum Chamber」に対するPCT国際出願第PCT/US2007/010006号明細書に記載されているように、剛性摺動プレート605の穴の端部は摩擦を低減するように曲線状になっている。この湾曲は可動部品間のヘルツ接触圧が粒子発生を最小化するようなものであることが好ましい。図8はサンプル801を含むサンプルホルダ112を移動させるための摺動真空シールを有する電子顕微鏡の部品の略図を示している。シール817は真空ハウジング811をプレート611にシールする。
【0035】
真空システム
好適な真空システムは、2つの真空ポンプ、つまり外部予備真空ポンプ110とターボ分子ポンプ282(図2)などの一体型高真空ポンプとを含む。予備真空ポンプ110は、大気からの初期ポンプを行い、許容可能な排気圧を高真空ターボ分子ポンプ282に提供する、例えばダイヤフラム・ポンプとすることができる。このターボ分子ポンプは別個のポンプ・ハウジングに含まれていないことが好ましい。その代わりに、ターボ・ロータが電子ソースアセンブリ202に組み込まれる。同じポンプを用いて、電子顕微鏡システム100の異なる3つのゾーンにおいて異なる圧力が維持され、最低圧力が電子銃で維持され、幾分高い圧力が電子ソース202と対物レンズ242との間に維持され、より高い圧力が依然としてサンプルに維持される。
【0036】
サンプルの帯電を防止するために、サンプルの周囲には高い圧力が維持される。サンプル周囲のガスは一次電子ビームおよび二次電子によってイオン化され、イオン化によって生じた荷電粒子がサンプルに蓄積した電荷を中和する。サンプル周囲の圧力は電荷を中和するのに十分であるが、一次ビームのスポット・サイズが不満足な程度まで拡大されないようなものであることが好ましい。サンプル周囲の空気圧が高いことの別の利点は、サンプル容器を電子ビームの下で摺動させる摺動シールが絶対的な気密シールを提供しないこと、およびサンプル容器がビームの下に移動されてサンプルの異なる部分を観察するときに、異なる空気の量がサンプルカップに漏れることである。圧力変化が圧力の小さい割合であるので、サンプル周囲の圧力を比較的高い値に維持することによって、サンプルカップ402の移動によって生じる空気圧の変動が撮像に及ぼす影響が小さい。
【0037】
本願に援用するSlingerlandらへの2006年2月1日出願の「Particle optical Apparatus with a Predetermined Final Vacuum Pressure」に対する米国特許仮出願第60/764,192号明細書に記載されているように、サンプルの圧力は自動的に維持されることが好ましい。米国特許仮出願第60/764,192号明細書は、既知の真空コンダクタンスを介して第1の既知の圧力の空間にチャンバを接続し、既知の真空コンダクタンスの第2の接続を介して真空ポンプにチャンバを接続することによって、所定の真空圧を真空チャンバ内に維持することができることを教示している。チャンバ内の圧力は、第1および第2の既知のコンダクタンスの比、第1の既知の圧力、および真空ポンプ入口の圧力によって決定される。米国特許仮出願第60/764,192号明細書に記載されているように、第1および第2の真空コンダクタンスの相対値を調節することによって、真空ゲージまたは制御システムを必要とすることなく、所望の圧力を真空チャンバで維持することができる。
【0038】
電子顕微鏡システム100では、サンプル空間は第1の真空コンダクタンスによって比較的高い圧力を有するダイヤフラム・ポンプの低圧力側に接続され、第2の真空コンダクタンスによって比較的低い圧力を有するターボ分子ポンプの低圧側に接続される。
【0039】
サンプル領域の最終圧は第1のコンダクタンスと第2のコンダクタンスとの比によって決定される。この最終圧は:
sam=(C2/C1)/PDP
によって決定することができる。ここで、Psamはサンプル空間の圧力、C2はサンプル空間からターボ分子ポンプ入口までの真空コンダクタンス(L/秒)、C1はサンプル空間からダイヤフラム・ポンプの入口までのコンダクタンス(L/秒)、PDPはダイヤフラム・ポンプ入口の圧力である。
【0040】
ダイヤフラム・ポンプ入口の圧力を制御することによって、サンプル空間の最終圧を所定値に設定することができる。気圧よりも著しく低い圧力PDPを有するダイヤフラム・ポンプの入口からガスを入れることによって、ガスが大気から直接導入されるときに必要になる開口部と比較して、大きな開口部を用いることができる。サンプル空間の圧力はターボ分子ポンプへの入口の圧力よりも少なくとも5倍大きいことが好ましい。第2の真空コンダクタンスからサンプルチャンバ内へ漏れるガスは、以下に記載の摺動真空シールから生じる漏れの約5倍であることが好ましいので、摺動真空シールの動作に起因する圧力の変動はサンプル領域の圧力に比して比較的小さい。
【0041】
ターボ分子ポンプへの入口の圧力ならびに電子銃の圧力は約10-7mbarであることが好ましい。サンプルカップ内の圧力は約0.1mbar乃至50mbarであることが好ましく、約0.2mbarであることが好ましい。アノードと対物レンズの磁極片との間のカラムの中心の圧力は、約10-5mbarの圧力で動作することが好ましい。対物レンズ240の磁極片にある開口部は、レンズの上下の差圧を維持するための圧力制限開口部として機能する。アノード220または別の同様の開口部は電子ソースとカラム中心との間の差圧を維持する。ビーム制限開口部(図示せず)が圧力制限開口部として機能することもできる。熟練者であれば、本明細書に提供された情報と共に、環境走査型顕微鏡に用いられる既知の技術を容易に適用して、チャンバの異なる部分において適した圧力を生成することができる。
【0042】
ユーザ・インタフェース
主画像スクリーン
サンプルをSEMの高倍率で撮像するとき、経験の少ないオペレータにとって、画像が取得されているサンプル上の場所を判断し、その画像とサンプルの他の部分との関係を理解することは困難な場合がある。図9〜13に示すように、ユーザ・インタフェースのグラフィック部分の好適な主画像スクリーン13は、ユーザが拡大された画像を関連付けるのを支援するためにディスプレイ上に残っている3つの「画像ウィンドウ」を含む。アクティブ画像ウィンドウ14と呼ぶ1つのウィンドウは現在のイメージを示す。以下で説明するように、現在の画像は実行中の現在の操作に応じて、サンプルが光学ナビゲーション・カメラ602の下にあるときに撮られた画像、サンプルがSEMの下にあるときにSEMによって形成された画像、または記憶媒体から呼び出された画像であり得る。
【0043】
光学オーバービュー・ウィンドウ15と呼ぶ別の画像ウィンドウは、光学ナビゲーション・カメラ602からの画像を示す。この画像は典型的には、サンプルホルダが真空排気される前およびサンプルがSEMの下に移動される前に取得され、格納されるが、必要に応じて、電子ビームからナビゲーション・カメラへサンプルを戻してもよい。上記のように、光学オーバービュー・ウィンドウ15内の画像は単一画像を形成するために並置された光学ナビゲーション・カメラの複数の視野から形成されてもよいし、この画像は光学ナビゲーション・カメラの単一の視野からのものでもよい。
【0044】
電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16と呼ぶもう一つの画像ウィンドウは、比較的に低倍率の電子ビーム画像を示す。電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16内の画像は、特定の作動距離のために、使用可能な最低倍率で取得されることが好ましい。最初に電子ビームを用いてサンプルを撮像するとき、ライブ・ウィンドウ内の画像と電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウとは同じになる。アクティブ画像の倍率を上げると、比較的低倍率の元の画像は電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ内に残って、オペレータに追加の基準を提供する。次いで、電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウを更新すると、SEMシステムは使用可能な最低倍率になり、サンプルを再度撮像し、次いで、アクティブ画像のための増大された元の倍率に戻る。
【0045】
主ビューイング・スクリーン13は、例えば現在の画像のデータ、時間、倍率、および縮尺を示す主ビューイング・ウィンドウ13の下方部分にデータバー33を含んでもよい。データバー33は電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16上に含まれてもよい。アクティブ・ビューイング・ウィンドウ14の4つの辺にあるナビゲーション矢印29は、ユーザが画像を移動させてサンプルの異なる部分を示すことを可能にする。当業者には理解されるように、ユーザは現在の画像の任意の部分に触れて、触れた位置の画像を再度中央に移動させることができるし、あるいはマウスまたは類似の入力デバイスが採用されている場合には、「クリックまたはドラッグ」することによってそうすることも可能である。上記のように、タッチ・スクリーン106は、ユーザが表示モニタ104に触れるだけで所望の機能を起動することを可能にする。この場合、ユーザは光学オーバービュー・ウィンドウ15内に表示中の画像を押し下げ、それを所望の位置までドラッグし、最後に、ドラッグを止めてウィンドウ14内の所望の場所にその画像を設定してもよい。この程度までスタイラスを用いてもよいし、ユーザは指を用いるだけでもよい。
【0046】
光学ナビゲーション・カメラ602または走査型電子顕微鏡から画像を取得するためのスイッチ・アイコン23(図10)、サンプルホルダをSEMアセンブリ102の装填ベイに装填し、取り外すための排出アイコン26、サンプル全体の光学オーバービューを取得するためのオーバービュー・アイコン22、および画像をリムーバブル(取外し可能)な媒体に保存するための種々のデジタル画像アイコン34など、種々の選択可能アイコン19(図9)がウィンドウの端に沿って位置決めされている。図9に示したアイコンの多くは、そのアイコンが選択的に表す命令または特徴を表現するテキストを含む。しかし、図5〜9に示すように、そういったアイコンは、代替として、例えば「デジタル・ファイルへの保存」機能を表すカメラ・アイコンなどのそれらの各機能を表すために、画像またはグラフィック表示を使用し得る。サンプルを装填/取り外すための選択可能アイコンは、例えば、ナビゲーション・カメラの領域内またはSEMの領域内にサンプルホルダを装填/取り外すためにCDプレイヤーで用いられるものと同様のアイコンによって提供されてもよい。排出アイコン26を押せば、システムからサンプルホルダが取り出され、他の選択可能アイコンも同様に働く。
【0047】
選択可能アイコン19は回転式入力デバイス108または他の機械式入力デバイスと一緒に用いることができる。例えば、ユーザが倍率アイコン27を押すとき、例えば、回転式入力デバイス108のコントロールを回すと、倍率が大きくなったり、小さくなったりする。回転式入力デバイス108を押すと、粗い倍率から微細な倍率コントロールへとコントロールが変えられる。コントロールが「微細」の場合、「F」(図示せず)が倍率アイコン27に現れて微細コントロールが作動中であることを示す。粗いものから微細なものおよびその反対方向への切り替えは、回転式入力デバイス・コントロール108を押すか、スクリーン13上の倍率アイコン27に触れることによって行うことができる。コントロールはコントラスト/輝度ボタン31、焦点ボタン28、および回転ボタン25について同様である。コントラスト/輝度アイコン31に関し、回転式入力デバイス108を1回押すと、回転式入力デバイス108上の回転コントロールが輝度コントロールと関連付けられ、次に回転式入力デバイス108を押せば、回転コントロールはコントラスト・コントロールと関連付けられる。以下でさらに詳細に説明するように、ユーザが自動制御のためのこれらの機能を(図10に示すような)設定スクリーンの下で設定しいている場合、コントラストおよび輝度は自動的に制御することもできる。
【0048】
デジタル画像アイコン34は対応するウィンドウに表示された画像を格納するように機能する。この画像は典型的には本システムに差し込んだUSBメモリ・スティックに保存される。好適な一実施形態では、本システムはユーザがアクセス可能なメモリを有さず、画像はすべてリムーーバブルな媒体に保存される。別の実施形態では、本システムはインターネットに接続され、画像をウェブ・アドレスに保存することもできるし、電子メールを介して送信することもできる。リムーバブルメモリを使用すれば、学生が本システムを使用し、それらの画像を保存し、それらの画像を運んだり、インターネットで送信することができる学術的環境において特に有用になる。
【0049】
経験の少ないユーザがSEMを簡単に操作できるようにこれらの異なる画像ウィンドウを使用することについて、図5乃至9を参照してここで説明する。好適な実施形態では、サンプルがSEMに装填されると、サンプルは光学撮像位置(図6Aに示す)まで自動的に運ばれる。次いで、光学ナビゲーション・カメラが起動され、図10に示すように、サンプル(この例ではボールペンの先端)の光学画像が光学オーバービュー・ウィンドウ15に表示される。さらに拡大された光学画像が主ビューイング・ウィンドウ14に表示される。
【0050】
図10は2つの矩形の周囲インジケータ(大きな周囲インジケータ43およびこの大きなインジケータ内側の小さな周囲インジケータ44)の使用を示す。周囲インジケータ43を実線で示し、小さなインジケータ44を点線で示している。撮像されるべきサンプルの領域を示すために、両インジケータは光学画像の上に重ねて表示されている。大きいインジケータ43は主ビューイング・ウィンドウ14に見られる拡大された画像全体の大まかな周囲を示すように働く。小さいインジケータ44は電子ビームによって撮像されるサンプルの領域を示す。カラー・ディスプレイ・モニタを用いる場合、周囲インジケータは画像に対して強調されたように容易に目立つ色付であることが好ましい。ユーザが光学オーバービュー・ウィンドウ15から画像上に強調された周囲インジケータを参照することによって、画像のどの領域が実際には拡大された主ビューイング・ウィンドウ14内にあるのかを特定できるように、周囲インジケータも基準インジケータとして機能することを当業者であれば容易に理解する。周囲インジケータは例えば、十字形または円形など、他の形状であってもよい。
【0051】
2つの画像が表示されると、SEMで検査されるべきサンプルの部分を光学視野の中央に移動することができる。これは、例えば、タッチ・スクリーン・ディスプレイ上のいずれかの画像の特定の点に触れて、その点を自動的に中央に位置させるか、あるいは、例えば、スクリーン上にある方向矢印29を用いるか、キーボード(図示せず)を用いることにより、サンプルを移動させるための命令を入力することによって、実現することができる。図11はボールペンの先端を中央に移動した後のユーザ・インタフェース・スクリーンを示す。
【0052】
観察されるべきサンプルの部分が中央に移動された後、SEMを用いてサンプルを撮像することができる。電子撮像は、例えば、図11に示す「スイッチ」アイコン23を用いて光学撮像から電子撮像に切り替えることによって選択可能である。スイッチ・ボタン23は、例えば、テキストによって示すか、または大小の形状を示すアイコンによって示すことが可能であり、その中に十字を有する各アイコンが利用可能であってもよい。この例では、小さい形状は光学カメラ602を表し、大きな形状は電子顕微鏡を表す。このボタンを押すと、サンプルが光学カメラ位置(図6Aに示す)と電子顕微鏡位置(図6Bに示す)との間で移動する。このボタン上の矢印を用いれば、ボタンを押したときにサンプルがどこに移動するかを示すことができる。
【0053】
図12では、SEM93によって生成された画像が主ビューイング・ウィンドウ14および電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16に示されている。図12の例では、この画像はまず、可能な最低倍率で表示される。次いで、主ビューイング・ウィンドウ14に表示された画像は、例えば、倍率ボタン27を選択し、次いで、スクリーン上の倍率スライダを操作し(図示せず)、回転式入力デバイス108を回すか、所望の倍率を直接することによって、必要に応じて拡大することができる。
【0054】
次いで、拡大された画像が図13に示すように主ビューイング・ウィンドウ14に示される。光学オーバービュー・ウィンドウ15内の画像は典型的には、サンプルが光学カメラを出てSEMの下に移動した後、変わらない。電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16内の画像は典型的には、大き過ぎてサンプル全体を示すことができない倍率である。サンプルをSEMの下に移動すると、主ビューイング・ウィンドウ14は電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16内の画像の外にあるサンプルの一部を示すことがある。その場合、電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16内の画像を自動または手動で変えて、主ビューイング・ウィンドウ14内に示された部分の拡張集合であるサンプルの一部分のオーバービューを示すことができる。例えば、ユーザが主スクリーン14上の電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16近傍の更新アイコン29を押すと、主ビューイング・ウィンドウ14と同じスポットに中心がある新しい低倍率の電子ビーム画像が得られる。例えば、主ビューイング・ウィンドウ14内の画像が電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16内の画像の外部のサンプル上のある点に相当するように、主ビューイング・ウィンドウ14内の画像が移動されている場合には、新しい画像が取得され得る。この低倍率画像はビーム偏向を増大させることによって得ることができる。この低倍率画像は、例えば400μmの視野を有してもよく、サンプルを1mm移動する場合、別の低倍率画像を取得する必要がある。
【0055】
上記のように、色付きの矩形または十字など、光学オーバービュー・ウィンドウ15上の周囲インジケータは、電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16内の画像の場所を示す。同様に、電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ画像上の周囲インジケータ45は、電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ画像上の主ビューイング・ウィンドウ14内の画像の位置および好ましくは相対サイズを示す。例えば、主ビューイング・ウィンドウ14の倍率を大きくすると、電子ビーム・オーバービュー・ウィンドウ16上の周囲インジケータは主ビューイング・ウィンドウ14内の高倍率画像に示される小さな領域に相当するように小さくなる。
【0056】
上記のような周囲インジケータを用いれば、ユーザは、主ビューイング・ウィンドウ14内のサンプルのどの場所を高倍率で見ているかを容易に判断することができ、これにより、高倍率画像に慣れていないユーザにも状況が把握できる。
【0057】
主画像スクリーンに加えて、図4〜9に示すユーザ・インタフェースの好適な実施形態は、ユーザが他の2つのスクリーン、つまりアーカイブ・スクリーン17および設定スクリーン18にアクセスできるようにする(あるいは、この2つの追加のスクリーンのいずれかから主画像スクリーンに戻ることでできるようにする)タブ12も含む。
【0058】
アーカイブ・スクリーン
図9に示すように、アーカイブ・スクリーン17はリムーバブルな記憶媒体に格納された画像をユーザに閲覧および操作させる。アーカイブ・スクリーン17は主スクリーン13に類似するものであり、アクティブ画像ウィンドウ136と比較および操作のための保存された画像のサムネイル・ギャラリ131とを含む。主スクリーン13で用いられるのと同様に、データバー33がアーカイブ・スクリーン17上に含まれ得る。コントロールすなわち選択可能アイコン19はデジタル・カメラ・メモリのものと同様であり、ヘルプ・ファイル35にアクセスし、サンプル26を排出し、画像36を削除し、選択された画像を他の画像37と比較するために画像を保持し、ズーミング134、画像ギャラリの閲覧133のためのアイコンを含む。サムネイル・ギャラリ131をスクロールするためのスクロール・バー132も含まれる。ユーザはデジタル・カメラまたは写真編集ソフトウェアで使用可能な他の画像操作を実行することができる。
【0059】
設定スクリーン
図10に示すように、設定スクリーンはユーザが設定可能なある種の機能を提供する。例えば、ユーザはどの検出器構成を使用するかを選択して、電子ビーム画像を形成することができる。「高速(fast)」走査設定は画像更新時間を高速にするが、画像の分解能は低くなる。「品質(quality)」走査設定は画像の更新時間は遅くなるが、分解能は高品質になる。設定スクリーンを使用すれば、ユーザは生の画像を「高速」モードで観察する一方で「品質」モードでその画像を保存することを選択し、USBメモリ・スティックまたは他のリムーバブルな記憶媒体を削除およびフォーマットすることができる。データおよび時間を設定することができ、画像のためにラベルを生成することができる。ユーザはどの形式で画像ファイルを保存するか、つまりTIFFか、JPEGか、またはBMP形式かを選択することができる。ユーザは輝度およびコントラストを自動的に調節するかどうか、およびどれぐらいの頻度で調節するかも設定することができる。例えば、輝度およびコントラストは画像が移動されるときはいつでも調節されてもよいし、定期的に調節されてもよい。非点収差補正はユーザ設定において一旦調節されるとその後、典型的には安定し、追加の調節を必要としない。少なくとも1つのユーザ・プロファイルを選択して、処理時間および操作時間を速くするために特定のユーザの設定を格納することができる。
【0060】
単純なユーザ・インタフェースを維持するために、典型的にはビームのエネルギーおよび電流は工場で予備設定されており、ユーザが調節することができない。組み立て中、ウェーネルト・キャップおよびフィラメントがアノード上の中央に位置するように機械的に整列させるなど、標準的なセット・アップ機能が実行される。
【0061】
好適な実施形態では、本SEMシステムを制御および最適化するためのより進歩した選択肢が使用可能であるが、経験の少ないオペレータがアクセスするのを防止するためにパスワードによって保護されている。例えば、ソースの傾きを調節して電子ビーム照明強度を最適化することができる。非点収差補正制御により、電子画像の輪郭のシャープネスの調節が可能となる。また、ステージの位置および回転を較正して、観察中のサンプルの部分が光学撮像モードおよび電子撮像モードの両方に同じなることを保証することができる。
【0062】
本発明およびその利点を詳細に示してきたが、特許請求の範囲に定めた本発明の精神および範囲から逸脱しないで、本明細書において種々の変更、置換および代替が可能であることに留意されたい。また、本願の範囲は、明細書に記載の処理、機械、製造、材料組成、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されるものではない。当業者には本発明の開示から、既存のまたは将来開発される、実質的に同じ機能を果たすか、あるいは本明細書に示された対応する実施形態と実質的に同様の結果が得られるプロセス、機械、製造、材料組成、手段および方法またはステップが本発明に従って使用され得ることが容易に理解される。したがって、そのような処理、機械、製造、材料組成、手段、方法、またはステップは、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0063】
100 電子顕微鏡システム
102 SEMアセンブリ
104 表示モニタ
108 回転式ユーザ入力デバイス
110 外部予備真空ポンプ
112 サンプルホルダ
202 電子ソースアセンブリ
204 集光レンズ区間
206 対物レンズ区間
212 電子銃
214 熱イオン放出ソース
216 ウェールネト・キャップ
218 開口部
220 アノード
222 整列ロッド
280 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームのための一次電子ソース(202)と、
前記電子ビームを集束させるレンズ(204)と、
サンプルから放出される電子を検出する検出器(280)と、
電子顕微鏡を用いて観察するために前記サンプルを保持する取外し可能なサンプルホルダ(402、502)であって、このサンプルホルダの壁が前記サンプルを収容する真空領域の壁の一部を構成する前記サンプルホルダと、を備える走査型電子顕微鏡(102)であって、
前記サンプルホルダが、前記サンプルを含む真空領域から除去されるか、あるいはそこに提供されるかする一方で、前記レンズの下の領域の真空圧が実質的に維持されて、これにより、前記サンプルの電子顕微鏡画像を形成するのに適した真空を提供するために前記ビームの経路を真空排気するのに必要な時間を実質的に低減するような、前記サンプルホルダと走査型電子顕微鏡アセンブリの底部との間の摺動真空シールを備える走査型電子顕微鏡。
【請求項2】
前記摺動真空シールが、剛性摺動プレート(605)および前記サンプルホルダと一緒に移動し、走査型電子顕微鏡の底部に対してシールする、可撓性プレート(603)を含む請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項3】
前記サンプルホルダを前記レンズの下に位置決めする前に真空排気する真空バッファ(604、606)の空間をさらに備える請求項1または2に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項4】
前記取外し可能なサンプルホルダが、電力または電気信号を前記サンプルホルダに提供する電気接点(414)を備える請求項1〜3のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項5】
前記取外し可能なサンプルホルダが、サンプルホルダの機能を制御するためのマイクロプロセッサを備える請求項1〜4のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項6】
前記取外し可能なサンプルホルダが加熱コイルまたは冷却器を含む請求項1〜5のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項7】
前記サンプルが約0.1mbar乃至50mbarの圧力に維持される請求項1〜6のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項8】
前記取外し可能なサンプルホルダが、前記サンプルホルダ内のサンプルの上下位置を調節する調節可能高さマウント(404、504)を含む請求項1〜7のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項9】
電子ビームのための一次電子ソース(202)と、
前記電子ビームを集束させる永久磁石レンズ(240)と、
サンプルからの電子を検出する検出器(280)と、
電子顕微鏡を用いて観察するために前記サンプルを保持する取外し可能なサンプルホルダ(402、502)と、を備える走査型電子顕微鏡(102)であって、
前記サンプルホルダの壁が、真空チャンバの壁の一部を形成し、これにより、前記サンプルの電子顕微鏡画像を形成するのに適した真空を提供するために前記ビームの経路を真空排気するのに必要な時間を実質的に低減する走査型電子顕微鏡。
【請求項10】
前記サンプルからの電子を検出する前記検出器が、後方散乱電子を検出する検出器(280)を備える請求項9に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項11】
前記検出器がダイオード検出器を備える請求項9または10に記載の電子顕微鏡。
【請求項12】
前記サンプルホルダの空間が電子カラムと接続される前にサンプルホルダ内部から空気を除去するためにサンプルホルダ内部と接続される少なくとも1つの真空排気された空間をさらに含む請求項9〜11のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項13】
前記サンプルホルダが位置決めされてから1分未満で電子ビーム画像を形成するのに十分な量だけ電子顕微鏡を真空排気する真空ポンプをさらに備える請求項1〜12のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項14】
前記サンプルホルダが挿入されてから30秒未満で電子ビーム画像を形成するのに十分な量だけサンプル領域を真空排気する真空ポンプをさらに備える請求項1〜13のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項15】
電子顕微鏡の焦点を調節するコイル(244)をさらに備える請求項1〜14のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項16】
走査型電子顕微鏡の底部に氷河層610を含む請求項1〜15のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−257995(P2010−257995A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181477(P2010−181477)
【出願日】平成22年8月14日(2010.8.14)
【分割の表示】特願2009−514539(P2009−514539)の分割
【原出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(501419107)エフ・イ−・アイ・カンパニー (78)
【Fターム(参考)】