説明

小型スピーカ

【課題】振動板エッジとバッフルの外周縁部との間のシールを不要にし、携帯型電子機器内への水の浸入を招く小型スピーカ自体の水漏れを防止することができる小型スピーカを提供する。
【解決手段】振動板11の外周縁部に断面L形の振動板エッジ12を形成し、振動板エッジ12に平坦部12aとこの平坦部12aの外周縁から立ち上がる立ち上がり部12bとを設け、平坦部12aは、フレーム6の外周縁部6aに接着結合され、このフレーム6の外周縁部6aと音を放出する音孔8を設けて振動板11を覆うバッフル7の外周縁部7cとの間に挟み込まれ、立ち上がり部12bは、バッフル7の外周縁部7cより高い位置まで立ち上がり、平坦部12bとバッフル7の外周縁部7cとの間に浸入した水Wを小型スピーカの前面側のみに導き、小型スピーカの前面側でシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の携帯型電子機器に使用される小型スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の小型スピーカを図7〜9を参照して説明する。
【0003】
図7は、従来の小型スピーカ用振動板の左半部の断面図である。図7に示す振動板1は、それ自体の振動によって周囲の空気を押して振動させ音響を発生させるため、空気を通さない薄膜、例えば樹脂膜等からなり、裏面中央部に振動板1を振動させる筒状のボイスコイル2の上端が同芯で接着結合され、このボイスコイル2とで後述する小型スピーカ4の振動系3を構成するもので、この振動板1の外周縁部には、振動板1を後述する小型スピーカ4のフレーム6に繋ぐための接着代としての平坦な振動板エッジ1aが形成されている。この振動板エッジ1aは、水平(ボイスコイル2の筒軸線と垂直)な一平面上にある。
【0004】
図8は、従来の小型スピーカの左半部の断面図、図9は図7の要部拡大図である。図8、9に示す小型スピーカ4は、図7に示した振動板1及びボイスコイル2、すなわち振動系3と、磁気回路5と、樹脂製のフレーム6と、金属板製のバッフル7とで構成される。
【0005】
磁気回路5は、磁性材料からなる有底筒状のヨーク5aと、このヨーク5aの内底面中央部に載置固定される永久磁石からなる柱状のマグネット5bと、このマグネット5bの上面に重ねて載置固定される磁性材料からなる板状のポールピース5cとで構成され、ヨーク5aの周側壁上部とポールピース5cとの間に磁気ギャップ5dが形成されている。
【0006】
フレーム106は、インサート成形等によってヨーク5aと一体に成型するもので、このヨーク5aの周側壁上部から外側に張り出すフランジ状に形成され、中央部に磁気回路5が一体化されている。このフレーム6には、平坦な外周縁部6aと、この外周縁部6aの外周縁から直角に立ち上がる周側壁6bとが一体に形成されている。
【0007】
振動板1は、フレーム6の外周縁部6aに振動板エッジ1aが接着剤により接着結合されて、フレーム6の周側壁6bの内側に収容され、ボイスコイル2を磁気ギャップ5dに挿入保持している。
【0008】
バッフル7は、低い有天筒状に形成され、フレーム6と対向する天板部7aと、この天板部7aの外周縁から下向きに延出する周側壁7bと、この周側壁7bの下端から外側に張り出すフランジ状の平坦な外周縁部7cとを一体に形成している。このバッフル7は、フレーム6の外周縁部6aにバッフル7の外周縁部7cで支えられて、フレーム6の周側壁6bの内側に嵌め込まれ、振動板1を覆い保護している。
【0009】
振動板エッジ1は、フレーム6の外周縁部6aとバッフル7の外周縁部7cの間に挟み込まれている。
【0010】
そして、振動板1の表面側にあるバッフル7の天板部7aには、小型スピーカ4の前面側へ音を放出するための音孔8が設けられ、振動板1の裏面側にあるフレーム6には、振動板1によって遮蔽されたフレーム6内の空気(音)を小型スピーカ4の背面側へ逃がすための背面音孔9が設けられている。
【0011】
この小型スピーカ4は、磁気回路5を一体化したフレーム6の外周縁部6aに接着剤を塗布し、ボイスコイル2を接着結合した振動板1の振動板エッジ1aをフレーム6の外周縁部6aに接着結合して、磁気回路5と振動系3とをフレーム6によって支えたスピーカ本体を形成した後、フレーム6の周側壁6bの内側にバッフル7を嵌め込み、振動板1をバッフル7により覆って組み立てられる。
【0012】
このような小型スピーカ4は、例えば、携帯電話機の着信音を発生するスピーカとして、携帯電話機の筐体に設けられた音孔の内側に設置され、携帯電話機の筐体に収容された基板上で構成された電子回路からフレーム6の裏面側に一体に設けられる一対の外部接続端子及びこの一対の外部接続端子とボイスコイル2の巻き線の両端部とを電気接続する2本のボイスコイルリード線を通じてボイスコイル2に電流が流される。
【0013】
これにより、小型スピーカ4は、磁気ギャップ5dに流ている磁束とボイスコイル2に流された電流との相互作用(フレミングの法則)でボイスコイル2が上下に往復運動し、それに伴い振動板1が上下に振動し、小型スピーカ4の前面側の音孔8から携帯電話機の筐体に設けられた音孔を通して携帯電話機の外部に着信音を放出する。
【0014】
ところで、携帯電話機が雨等で濡れると、携帯電話機の筐体に設けられた音孔から小型スピーカ4の前面側の音孔8を通して小型スピーカ4内に水Wが浸入する。
【0015】
このように小型スピーカ4内に浸入した水Wは、図8、図9の矢線に示すように、振動板1が通気性を持っていないために、振動板1の表面で受け止められ、振動板1の表面を伝って振動板1の外周縁部に至り、振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部7cとの間に浸入し、そこからフレーム6の周側壁6bとバッフル7の外周縁部7cとの間を経て小型スピーカ4の前面側に漏れ、また振動板エッジ1aとフレーム6の外周縁部6aとの間、さらには背面音孔9を経て小型スピーカ4の背面側にも漏れる。この結果、水Wが携帯電話機内に浸入し、携帯電話機内の電子部品に悪影響を与えるおそれがある。
【0016】
このような携帯電話機内への水Wの浸入を招く小型スピーカ4自体の水漏れは、次のようなことに起因している。
【0017】
小型スピーカ4では、接着剤を用いて振動板エッジ1aをフレーム6の外周縁部6aに接着結合する際に、振動板1にシワを発生させたり、振動板エッジ1a以外の箇所に接着剤が付着すると、小型スピーカ4の音響性能を低下させたり、個々の小型スピーカ4の音響性能にバラツキを発生させるため、接着剤の塗布位置と塗布量を厳密に管理し、接着剤を位置精度よく均一に塗布しなければならない。このような接着剤による接着結合箇所が増えると、小型スピーカ4の組立生産性が低下するため、振動板エッジ1aは、フレーム6の外周縁部6aに対しては接着結合され、振動板エッジ1aとフレーム6の外周縁部6aとの間は接着剤でシールされるが、バッフル7の外周縁部7cに対しては接着結合されておらず、振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部7cとの間は接着剤でシールされていなこと、また小型スピーカ4のさらなる小型化の要求に伴い、振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部7cとの重ね代(密着)が十分に確保できなくなってきたこと、さらに振動板エッジ1aとフレーム6の外周縁部6aとの接着代も同時に十分に確保できなくなってきたことから、これらの間を接着剤を用いて接着結合しても接着斑等に起因してシールが破られることにある。
【0018】
このような問題を解決するため、特許文献1に記載のスピーカ装置では、振動板の周縁部(振動板エッジ1a)とプロテクタ(バッフル7)の周縁部(外周縁部7c)とを接着剤や両面テープで接着結合し、或いは振動板の周縁部とプロテクタの周縁部との間にOリングを設け、振動板の周縁部とプロテクタの周縁部との間を接着剤や両面テープ、或いはOリングを用いてシールすることで、スピーカ自体の水漏れを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−278146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献1に記載のスピーカ装置のように、小型スピーカ4において、振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部7cとの間を接着剤や両面テープ、或いはOリングを用いてシールすると、小型スピーカ4の組立生産性が低下するという問題を招く。
【0021】
したがって、振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部7cとの間のシールを不要にし、携帯電話機内への水Wの浸入を招く小型スピーカ4自体の水漏れを防止することができる小型スピーカが望まれている。
【0022】
そこで、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたもので、振動板エッジとバッフルの外周縁部との間のシールを不要にし、携帯型電子機器内への水の浸入を招く小型スピーカ自体の水漏れを防止することができる小型スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため本発明は、中央部にボイスコイルを接着結合した振動板の外周縁部に断面L形の振動板エッジを形成し、前記振動板エッジに平坦部とこの平坦部の外周縁から立ち上がる立ち上がり部とを設け、前記平坦部は、中央部に磁気回路を一体化したフレームの外周縁部に接着結合され、このフレームの外周縁部と音を放出する音孔を設けて前記振動板を覆うバッフルの外周縁部との間に挟み込まれ、前記立ち上がり部は、前記バッフルの外周縁部より高い位置まで立ち上がり、前記平坦部と前記バッフルの外周縁部との間に浸入した水を小型スピーカの前面側のみに導くことを特徴とするものである。
【0024】
本発明において、前記バッフルの外周縁部の上に盛る接着剤を用い、前記立ち上がり部と前記バッフルの外周縁部との間を小型スピーカの前面側で塞ぐことが好ましい。さらに、前記接着剤は、前記バッフルの外周縁部より高い位置にある前記立ち上がり部の上部を包み込む高さまで盛ることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来では振動板エッジ(平坦部)とバッフルの外周縁部との間でしか行えなかったシール(漏れ止め)が、小型スピーカの前面側で行えるようになるので、従来のような振動板エッジ(平坦部)とバッフルの外周縁部との間のシールが不要になる。そして、小型スピーカの前面側では、従来のような振動板エッジ(平坦部)とバッフルの外周縁部との間のシールとは違って、小型スピーカの音響性能に影響を与えることなく、小型スピーカの小型化にも左右されることもなしに、容易に且つ確実にシールすることができる。この結果、振動板エッジとバッフルの外周縁部との間のシールを不要にし、携帯型電子機器内への水の浸入を招く小型スピーカ自体の水漏れを防止することができる小型スピーカを提供することができる。
【0026】
また、小型スピーカの前面側でのシールは、バッフルの外周縁部の上に盛る接着剤を用い、平坦部とバッフルの外周縁部との間を小型スピーカの前面側で塞ぐことで、確実に行うことができ、小型スピーカ自体の水漏れを確実に防止することができる。さらに、接着剤は、バッフルの外周縁部より高い位置にある平坦部の上部を包み込む高さまで盛ることで、小型スピーカ自体の水漏れをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1を示す小型スピーカ用振動板の左半部の断面図である。
【図2】本発明の実施例1を示す小型スピーカの左半部の断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本発明の実施例2を示す小型スピーカ用振動板の左半部の断面図である。
【図5】本発明の実施例2を示す小型スピーカの左半部の断面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】従来の小型スピーカ用振動板の左半部の断面図である。
【図8】従来の小型スピーカの左半部の断面図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の小型スピーカについて一実施の形態と図面を参照して説明する。なお、図7〜9に示した従来の小型スピーカと同一構造部分には同一符号を付して説明を省略する。
【実施例1】
【0029】
本発明の一実施の形態である実施例1を図1〜3を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施例1を示すスピーカ用振動板の左半部の断面図である。図1に示す振動板11は、それ自体の振動によって周囲の空気を押して振動させ音響を発生させるため、空気を通さない薄膜、例えば樹脂膜等からなり、裏面中央部に振動板を振動させる筒状のボイスコイル2の上端が同芯で接着結合され、このボイスコイル2とで後述する小型スピーカ14の振動系13を構成するもので、この振動板11の外周縁部には、断面L形の振動板エッジ12が形成されている。この振動板エッジ12に平坦部12aとこの平坦部12aの外周縁から立ち上がる立ち上がり部12bとを設けている。この平坦部12aは、水平(ボイスコイル2の筒軸線と垂直)な一平面上にあり、立ち上がり部12bは、ボイスコイル2と同芯な筒面上にある。また立ち上がり部12bは、後述する小型スピーカ14のフレーム6の周側壁6bを越えない範囲でバッフル7の外周縁部7cより高い位置まで立ち上がっている。
【0031】
図2は、本発明の実施例1を示す小型スピーカの左半部の断面図、図3は、図2の要部拡大図である。図2、3に示す小型スピーカ14は、図1に示した振動板11及びボイスコイル2、すなわち振動系13を備える。
【0032】
振動板11は、フレーム6の外周縁部6aに振動板エッジ12の平坦部12aが接着剤により接着結合され、フレーム6の外周縁部6aの表面とバッフル7の外周縁部7cの裏面との間に振動板エッジ12の平坦部12aが挟み込まれ、またフレーム6の周側壁6bの内周面とバッフル7の外周縁部7cの外周面との間に振動板エッジ12の立ち上がり部12bの下部が挟み込まれ、フレーム6の周側壁6bの内周面とバッフル7の外周縁部7cの外周面との間からフレーム6の周側壁6bとバッフル7の周側壁7bの隙間15に振動板エッジ12の立ち上がり部12bの上部が突出させた状態で、フレーム6の周側壁6bの内側に収容されている。
【0033】
この小型スピーカ14は、磁気回路5を一体化したフレーム6の外周縁部6aに接着剤を塗布し、ボイスコイル2を接着結合した振動板11の振動板エッジ12の平坦部12aをフレーム6の外周縁部6aに接着結合して、磁気回路5と振動系13とをフレーム6によって支えたスピーカ本体を形成し、フレーム6の周側壁6bの内側にバッフル7を嵌め込み、振動板11をバッフル7により覆った後、小型スピーカ14の前面側に開いているフレーム6の周側壁6bとバッフル7の周側壁7bの隙間15からバッフル7の外周縁部7cの上に防水性を持った接着剤(例えばゴム系接着剤)16を充填して盛り、小型スピーカ14の前面側において、振動板エッジ12の立ち上がり部12bとバッフル7の外周縁部7cとの間を塞ぎシール(漏れ止め)を行い、さらに接着剤16は、バッフル7の外周縁部7aより高い位置にある振動板エッジ12の立ち上がり部12bの上部を包み込む高さまで充填して盛り、振動板エッジ12の立ち上がり部12bとフレーム6の周側壁6bとの間も同時に塞ぎシール(漏れ止め)を行って組み立てられる。
【0034】
このような小型スピーカ14は、例えば、携帯電話機の着信音を発生するスピーカとして、携帯電話機の筐体に設けられた音孔の内側に設置され、携帯電話機の筐体に収容された基板上で構成された電子回路からフレーム6の裏面側に一体に設けられる一対の外部接続端子及びこの一対の外部接続端子とボイスコイル2の巻き線の両端部とを電気接続する2本のボイスコイルリード線を通じてボイスコイル2に電流が流される。
【0035】
これにより、小型スピーカ14は、磁気ギャップ5dに流ている磁束とボイスコイル2に流された電流との相互作用(フレミングの法則)でボイスコイル2が上下に往復運動し、それに伴い振動板11が上下に振動し、小型スピーカ14の前面側の音孔8から携帯電話機の筐体に設けられた音孔を通して携帯電話機の外部に着信音を放出する。
【0036】
ところで、携帯電話機が雨等で濡れると、携帯電話機の筐体に設けられた音孔から小型スピーカ14の前面側の音孔8を通して小型スピーカ14内に水Wが浸入する。
【0037】
このように小型スピーカ14内に浸入した水Wは、図2、図3の矢線に示すように、振動板11が通気性を持っていないために、振動板11の表面で受け止められ、振動板11の表面を伝って振動板11の外周縁部に至り、振動板エッジ12の平坦部12aとバッフル7の外周縁部7cとの間に浸入する。
【0038】
従来では、本実施例の振動板エッジ12の平坦部12aに相当する平坦な振動板エッジ1aしか設けられていないために、振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部7cとの間に水Wが浸入すると、フレーム6の周側壁6bとバッフル7の外周縁部7cとの間を経て小型スピーカ4の前面側に漏れ、また振動板エッジ1aとフレーム6の外周縁部6aとの間、さらには背面音孔9を経て小型スピーカ4の背面側にも漏れて、この結果、水Wが携帯電話機内に浸入し、携帯電話機内の電子部品に悪影響を与えるおそれがあった。
【0039】
しかし、本実施例では、振動板エッジ12が断面L形に形成され、振動板エッジ12の平坦部12aの外側縁から立ち上がる立ち上がり部12bを設けているために、振動板エッジ12の平坦部12aとバッフル7の外周縁部7cとの間に水Wが浸入しても、その水Wを振動板エッジ12の立ち上がり部12bが受け止めて、この振動板エッジ12の立ち上がり部12bとバッフル7の外周縁部7cとの間で小型スピーカ14の前面側のみに導き、振動板エッジ12の平坦部12aとフレーム6の外周縁部6aとの間、さらには背面音孔9を経て小型スピーカ14の背面側に漏れるのを防止し、従来では、振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部7cとの間でしか行えなかったシール(漏れ止め)が、小型スピーカ14の前面側で行えるようになるので、従来のような振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部との間のシールが不要になる。
【0040】
したがって、本実施例では、小型スピーカ14の前面側において、バッフル7の外周縁部7cの上に盛った接着剤16によって振動板エッジ12の立ち上がり部12bとバッフル7の外周縁部7cとの間を塞ぎシール(漏れ止め)を行っているので、振動板エッジ12の平坦部12aとバッフル7の外周縁部7cとの間に浸入した水Wが小型スピーカ14の前面側に漏れるのを防止することができる。
【0041】
また、小型スピーカ14の前面側において、バッフル7の外周縁部7aより高い位置にある振動板エッジ12の立ち上がり部12bの上部を包み込む高さまで盛った接着剤16によって振動板エッジ12の立ち上がり部12bとフレーム6の周側壁6bとの間も同時に塞ぎシール(漏れ止め)を行っているので、振動板エッジ12の平坦部12aとバッフル7の外周縁部7cとの間に浸入した水Wが小型スピーカ14の前面側に漏れ、そこから振動板エッジ12の立ち上がり部12bとフレーム6の周側壁6bとの間を経て小型スピーカ14の背面側に漏れるのを防止することができる。
【0042】
そして、小型スピーカ14の前面側では、従来の振動板エッジ1aとバッフル7の外周縁部7cとの間のシールとは違って、小型スピーカ14の音響性能に影響を与えることなく、小型スピーカ14の小型化にも左右されることもなしに、小型スピーカ14の前面側に開いているフレーム6の周側壁6bとバッフル7の周側壁7bの隙間15からバッフル7の外周縁部7cの上に接着剤16を充填するだけで、振動板エッジ12の立ち上がり部12bとバッフル7の外周縁部7cとの間、及び振動板エッジ12の立ち上がり部12bとフレーム6の周側壁6bとの間を、それぞれ、塞ぎ確実にシールすることができる。
【0043】
この結果、本実施例では、振動板エッジ12の平坦部12aとバッフル7の外周縁部7cとの間のシールを不要にし、携帯型電子機器内への水の浸入を招く小型スピーカ14自体の水漏れを確実に防止することができる小型スピーカ14を実現している。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の一実施の形態である実施例2を図4〜6を参照して説明する。なお、図1〜3に示した実施例1の小型スピーカ14と同一構造部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図4は、本発明の実施例2を示す小型スピーカ用振動板の左半部の断面図である。図4に示す振動板21は、振動板エッジ12の平坦部12aの裏面に樹脂製の振動板リング22が設けられていること以外、図1に示した振動板11と同じ構造を持っている。この振動板リング22は、振動板エッジ12の平坦部12aの裏面に接着剤を用いて接着結合されている。
【0046】
図5は、本発明の実施例2を示す小型スピーカの左半部の断面図、図6は、図5の要部拡大図である。図5、6に示す小型スピーカ24は、図4に示した振動板21及びボイスコイル2、すなわち振動系23を備え、振動板24は、フレーム6の外周縁部6aに振動板エッジ12の平坦部12aが振動板リング22を介して接着剤により接着結合されること以外、図2、図3に示した小型スピーカ14と同じ構造を持っており、図2、3図に示した小型スピーカ14と同じ機能を持っている。
【0047】
本実施例では、振動板21が振動板リング22を設けているため、小型スピーカ24を組み立てる際に接着剤を用いた振動板エッジ12の平坦部12aのフレーム6の外周縁部6aへの接着結合を容易に行うことができ、図2、図3に示した小型スピーカ14に比べて組立生産性を高めることができる。
【0048】
以上、実施例1、2は、本発明の一実施の形態を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。例えば、振動板は、1ピース構造のものを示したが、中央部と振動板エッジを一体に形成した周辺部とを別々に形成した後、これらを接着剤を用いて貼り合わせて一体化した2ピース構造、或いは中央部と周辺部と振動板エッジとを別々に形成した後、これらを接着剤を用いて貼り合わせて一体化した3ピース構造等、1ピース構造以外のものであってもよい。またフレームは、ヨークとは別体の樹脂製のものを示したが、磁性材料からなりヨークを一体形成したヨーク一体型のものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
2 ボイスコイル
5 磁気回路
6 フレーム
6a 外周縁部
7 バッフル
7c 外周縁部
8 音孔
11,21 スピーカ用振動板
14,24 小型スピーカ
12 振動板エッジ
12a 平坦部
12b 立ち上がり部
16 接着剤(シール)
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部にボイスコイルを接着結合した振動板の外周縁部に断面L形の振動板エッジを形成し、前記振動板エッジに平坦部とこの平坦部の外周縁から立ち上がる立ち上がり部とを設け、前記平坦部は、中央部に磁気回路を一体化したフレームの外周縁部に接着結合され、このフレームの外周縁部と音を放出する音孔を設けて前記振動板を覆うバッフルの外周縁部との間に挟み込まれ、前記立ち上がり部は、前記バッフルの外周縁部より高い位置まで立ち上がり、前記平坦部と前記バッフルの外周縁部との間に浸入した水を小型スピーカの前面側のみに導くことを特徴とする小型スピーカ。
【請求項2】
前記バッフルの外周縁部の上に盛る接着剤を用い、前記立ち上がり部と前記バッフルの外周縁部との間を小型スピーカの前面側で塞ぐことを特徴とする請求項1に記載の小型スピーカ。
【請求項3】
前記接着剤は、前記バッフルの外周縁部より高い位置にある前記立ち上がり部の上部を包み込む高さまで盛ることを特徴する請求項2に記載の小型スピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−142502(P2011−142502A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1966(P2010−1966)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】