説明

小型チップバリスタの製造方法

【課題】LEDパッケージの小型化を達成し、高電圧のLED素子にも対応することが出来る手段を提供する。
【解決手段】バリスタのグリーンシートを70〜250μmの厚みで準備する第一の工程と、前記グリーンシートを焼成して50〜200μmの厚みのバリスタ素体を形成する第二の工程と、前記バリスタ素体をそのまま使用して、その表裏面に外部電極を形成する第三の工程と、前記外部電極を形成した外部電極付バリスタ素体を、その全表裏面が外部電極で被覆されているようにカットする第四の工程と、を含むチップバリスタの製造方法によって得られる、バリスタ素体と外部電極のみからなる小型のチップバリスタをLEDパッケージに搭載する。チップバリスタの厚みは50〜200μm、長さ及び幅は100〜300μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型チップバリスタ及びその製造方法並びにそのチップバリスタを搭載したLEDパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDモジュールや電子部品などの小型化が進んでおり、バリスタやツェナーダイオードなどの静電気対策部品についても同様に小型化が要求されている。特に、LEDパッケージに搭載される静電気対策部品においては、その静電気対策部品自身がLED素子からの光を吸収してしまったり、遮ったりして、発光効率すなわち照度を低下させてしまうという問題があるので、小型の静電気対策部品が必要となっている。
【0003】
このような問題を解消する手段として、例えば登録実用新案公報3137072号で開示されているようにツェナーダイオードを搭載するための別室を設けたり、特開2011−23557号公報で開示されているようにツェナーダイオードの周囲に透光性樹脂層を設けたりしてLED素子からの光が無駄にならないようにして発光効率を低下させない手法が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの手法では、別室を設けたり透光性樹脂層を設置したりするスペースが必要であり、十分に小型化を達成しているとはいえない。
【0005】
特開平2−135707号公報にはチップ型バリスタの製造方法が開示されているが、この製造方法は、外部電極とセラミックとを削って溝を構成することによって、第一端子と第二端子との間を絶縁させてバリスタとして機能させている。しかし、このような構造のバリスタは、ある一定のサイズよりも小型化することが物理的に不可能な製造方法である。
【0006】
また、さらに高い照度を得るためにLED素子に高い電圧、例えば10V以上の電圧をかけて発光させる場合には、小型のツェナーダイオード1個だけでは、静電気対策部品として機能することができなくなるため、複数個のツェナーダイオードを搭載する必要があり、やはり発光効率の低下や小型化を阻害する要因となってしまう。
【0007】
一方、従来から周知の積層型バリスタは、内部電極とバリスタを積層しているため、小型にするほどバリスタ層の厚みが小さくなりバリスタ電圧も小さくなるので、やはり高い電圧のLED素子には対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】登録実用新案公報3137072号
【特許文献2】特開2011−23557号公報
【特許文献3】特開平2−135707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明は、LEDパッケージのさらなる小型化を達成し、高電圧のLED素子にも対応することができる手段を提供することを目的とする。
【0010】
そして、本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の手順によって製造される小型のチップバリスタを使用すれば、発光効率をほとんど損なうことなくLEDパッケージをさらに小型化することが可能となることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
バリスタのグリーンシートを70〜250μmの厚みで準備する第一の工程と、
前記グリーンシートを焼成して50〜200μmの厚み(H1)のバリスタ素体を形成する第二の工程と、
前記バリスタ素体をそのまま使用して、その表裏面に外部電極を形成する第三の工程と、
前記外部電極を形成した外部電極付バリスタ素体を、その全表裏面が外部電極で被覆されているようにカットする第四の工程と、
を含むチップバリスタの製造方法。
【0012】
前記外部電極は、Ti、W、Ni、Au、Ag、Al、Snから選ばれる少なくとも一つからなるチップバリスタの製造方法。
【0013】
前記外部電極は、厚み(H2)が0.5〜3μmであるチップバリスタの製造方法。
【0014】
H1とH2の比率(H2/H1)が0.25〜6%であるチップバリスタの製造方法。
【0015】
上記の製造方法で製造されたチップバリスタ。
【0016】
長さ及び幅がいずれも100〜300μmであるチップバリスタ。
【0017】
裏面における前記外部電極の端面と、前記バリスタ素体の端面とが面一であるチップバリスタ。
【0018】
前記バリスタ素体は、前記外部電極との界面において凹凸が存在するチップバリスタ。
【0019】
上記のチップバリスタを搭載したダム形式のLEDパッケージ。
【0020】
前記チップバリスタの裏面の外部電極が前記LEDパッケージの一方の電極面上に面接触しており、表面の外部電極が導線を介して他方の電極面上に接続されているLEDパッケージ。
【0021】
前記チップバリスタは、LED素子までの距離よりも、前記ダムの内周までの距離の方が短く配置されたLEDパッケージ。
【0022】
前記LED素子が1又は複数個と、前記チップバリスタが一つのみ搭載されているLEDパッケージ。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、従来よりもさらに小型化したLEDパッケージを提供することができ、LED照明器具のさらなる小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるチップバリスタの製造工程フロー。
【図2】バリスタ素体の斜視図。
【図3】外部電極を形成したバリスタ素体の断面図。
【図4】バリスタ素体と外部電極との界面を拡大した図。
【図5】製品サイズにカットしたチップバリスタの断面図。
【図6】本発明によるチップバリスタの断面図。
【図7】従来のチップバリスタの断面図。
【図8】本発明によるLEDパッケージの平面図。
【図9】図8のA−A断面図。
【図10】複数のLED素子と複数のツェナーダイオードを搭載した、従来設計によるLEDパッケージの平面図。
【図11】複数のLED素子とチップバリスタ1個を搭載した、本発明によるLEDパッケージの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の最良の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。製造手順は図1に示したフローによる。
【0026】
(実施例)まず、第一の工程としてグリーンシートを準備する。酸化亜鉛を主成分として、必要な助剤を添加したバリスタ原料粉末を、有機溶剤、バインダー、分散剤、可塑剤などと混合してスラリーとした後に、ドクターブレード法により70〜250μm程度のバリスタのグリーンシートを準備し、適度なサイズにカットする。グリーンシートサイズが大きすぎると後工程における取り扱いが困難になり、グリーンシートサイズが小さすぎると製造効率が悪くなるので、5cm角程度とするのが好ましい。
【0027】
次に、第二の工程としてグリーンシートを焼成する。5cm角程度にカットしたグリーンシートを脱脂した後、900〜1300℃で焼成して、図2に示す方形のバリスタ素体1を得る。
【0028】
そして、第三の工程としてバリスタ素体1に外部電極2を形成する。図3に示すように、焼成したバリスタ素体1の表裏面に厚さ0.5〜3μmとなるように外部電極2をスパッタにより全面に形成する。本発明は、第二の工程と第三の工程との間において、バリスタ素体を研磨しないでそのまま使用しているため、図4に示したように、バリスタ素体の表面には、焼成工程において粒成長した酸化亜鉛10による微細な凹凸がそのまま残っており、外部電極2とバリスタ素体1との間においてアンカー効果が得られるので、密着強度が高くなるという効果も得られるのである。外部電極成分としては、Ti、W、Ni、Au、Ag、Al、Snから選択される。外部電極2の厚みを大きくしてしまうと、薄いバリスタ素体1を使用する利点を失ってしまう。また、外部電極2の厚みを薄くすることによって、小型化するのが容易になるだけでなく、後のカット工程における不良発生の抑制にもつながる。したがって、外部電極2は、金属箔を接着する方法やディップのように外部電極2が厚くなってしまう手法を用いるのは好ましくない。
【0029】
最後に、第四の工程として外部電極付バリスタ素体をカットする。ダイシング、レーザー、ダイヤモンドスクライブなどの方法で、図5に示したように、所望のサイズにカットして小型のチップバリスタを得る。従来から周知のバリスタは、最終製品の形状にした後に外部電極を形成させているが、本発明は外部電極を形成した後に製品形状にカットすることを特徴とする。このような工程を採用することによって、カットした後の小型のチップバリスタの表裏面に外部電極を形成させるという非常に困難な工程を回避することができ、厚みが50〜200μmという薄型のチップバリスタであっても容易に外部電極を形成させることが可能となる。
【0030】
図6は、上記手法によって得られた小型のチップバリスタ3を示す。前述したように、外部電極形成後に製品サイズにカットしているため、外部電極2の端面4と、チップバリスタ3の側面5とが実質面一となっているのである。実質面一とは、カット工程において、外部電極2の端面4や、チップバリスタ3の側面5がわずかに欠けてしまって面一になっていない部分が存在することもあるということである。
【0031】
なお、従来から周知のバリスタは、図7に示すように、外部電極2がバリスタ素体1の側面にまで回り込んで形成されているため、外部電極2の端面4とチップバリスタの側面5とが面一になっていない。チップバリスタの側面5からはみ出した電極によって、tの分だけ電極間距離が短くなりバリスタ電圧が小さくなってしまう。バリスタ素体1の厚みが小さくなるほど、すなわち、小型のチップバリスタになるほどその影響は大きくなりバリスタ電圧のばらつきが大きくなってしまうが、本発明によるチップバリスタであれば、外部電極の影響によるバリスタ電圧のばらつきはほとんどない。
【0032】
したがって、本発明によると、長さ及び幅がいずれも100〜300μm程度の小型のチップバリスタであっても容易に製造することが可能で、しかもバリスタ電圧のばらつきが小さいチップバリスタを提供することができるのである。
【0033】
次に、本発明のチップバリスタをLEDパッケージに搭載した場合の効果について説明する。
【0034】
一般的なダム形式のLEDパッケージと同様に、図8及び図9に示したように、絶縁基板6の上にダム11を形成し、そのダム11の内側にLED素子7、電極面8を形成し、電極面8の上に静電気対策部品として本発明で得られたチップバリスタ3を設置する。チップバリスタ3を設置する場所は、LED素子7に近いほど光の吸収による発光効率が低下するので、LED素子7から離してダム11に近付けて配置する。そして、ワイヤボンディング9によってLED素子7と電極面8とを、また、チップバリスタ3と電極面8とを電気的に接続する。本発明で得られるチップバリスタは、表裏面に外部電極が形成されているので、ワイヤボンディング接続が必要なのは表面の外部電極だけである。なお、本発明は小型化を目的としたものであるため、5mm角よりも小さいLEDパッケージに対して特に効果を発揮するものである。
【0035】
ここで、静電気対策部品としてツェナーダイオードを使用した場合、ツェナー電圧以上で作動する高照度のLED素子を配置するためには、ツェナーダイオードを複数個配置する必要がある。ツェナー電圧は、一般的にツェナーダイオードのサイズに比例するので、小型のツェナーダイオードでは高い電圧で作動するLED素子に対応できないため、図10に示すように複数個のツェナーダイオード12を配置するか、サイズの大きいツェナーダイオードを用いる必要があるのである。
【0036】
しかし、本発明によるチップバリスタは、同サイズのツェナーダイオードのツェナー電圧よりも、高いバリスタ電圧とすることができるので、図11に示すように、高い電圧で作動する複数個のLED素子に対しても、1個のチップバリスタ3を設置するだけで静電気対策部品として対応することができるのである。
【0037】
また、LEDパッケージにおいて、LED素子7と同一面上に静電気対策部品を配置すると、静電気対策部品自身がLED素子7の発光を遮ってしまったり、吸収したりすることが知られている。ツェナーダイオードの表面は光を吸収しやすい黒色であるため、発光効率の低下が起こりやすく、したがって、複数個のツェナーダイオードを使用したり、サイズの大きいツェナーダイオードを用いたりすると、ますます発光効率が低下してしまうのである。
【0038】
しかし、本発明のチップバリスタ3の表面は、Ti、W、Ni、Au、Ag、Al、Snなどの反射率の高い外部電極で覆われているので、LEDパッケージに搭載しても、LED素子の発光効率をほとんど低下させることのないLEDパッケージを提供することが可能となる。
【0039】
以上、本発明の詳細について、実施例を示しながら説明してきたが、ここで示したのは本発明の具体的な実施形態であり、その技術思想を踏まえた上で、発明の効果を著しく損なわない限度において、前記実施形態の一部を変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、小型のLEDパッケージやLED照明などにおいて幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:,バリスタ素体
2:,外部電極
3:,チップバリスタ
4:,端面
5:,バリスタ側面
6:,絶縁基板
7:,LED素子
8:,電極面
9:,ワイヤボンディング
10;,酸化亜鉛
11;,ダム
12;,ツェナーダイオード
13;,マスク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリスタのグリーンシートを70〜250μmの厚みで準備する第一の工程と、
前記グリーンシートを焼成して50〜200μmの厚み(H1)のバリスタ素体を形成する第二の工程と、
前記バリスタ素体をそのまま使用して、その表裏面に外部電極を形成する第三の工程と、
前記外部電極を形成した外部電極付バリスタ素体を、その全表裏面が外部電極で被覆されているようにカットする第四の工程と、
を含むチップバリスタの製造方法。
【請求項2】
前記外部電極は、Ti、W、Ni、Au、Ag、Al、Snから選ばれる少なくとも一つからなる請求項1に記載のチップバリスタの製造方法。
【請求項3】
前記外部電極は、厚み(H2)が0.5〜3μmである請求項1又は2に記載のチップバリスタの製造方法。
【請求項4】
H1とH2の比率(H2/H1)が0.25〜6%である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチップバリスタの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法で製造されたチップバリスタ。
【請求項6】
長さ及び幅がいずれも100〜300μmである請求項5記載のチップバリスタ。
【請求項7】
裏面における前記外部電極の端面と、前記バリスタ素体の端面とが面一である請求項5又は6記載のチップバリスタ。
【請求項8】
前記バリスタ素体は、前記外部電極との界面において凹凸が存在する請求項5乃至7のいずれか1項に記載のチップバリスタ。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1項に記載のチップバリスタを搭載したダム形式のLEDパッケージ。
【請求項10】
前記チップバリスタの裏面の外部電極が前記LEDパッケージの一方の電極面上に面接触しており、表面の外部電極が導線を介して他方の電極面上に接続されている請求項9記載のLEDパッケージ。
【請求項11】
前記チップバリスタは、LED素子までの距離よりも、前記ダムの内周までの距離の方が短く配置された請求項9又は10に記載のLEDパッケージ。
【請求項12】
前記LED素子が1又は複数個と、前記チップバリスタが一つのみ搭載されている請求項9乃至11のいずれか1項に記載のLEDパッケージ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−58720(P2013−58720A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26900(P2012−26900)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2011−203727(P2011−203727)の分割
【原出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(591149089)株式会社MARUWA (35)
【Fターム(参考)】