説明

小型飛行装置

【課題】突風中の飛行においても高度な飛行性能を達成できるようにする。
【解決手段】胴体1の前部左右位置と後部左右位置の4個所に、翼駆動用モータ3を、前後方向の垂直面内で上下方向角度変更可能に設ける。翼駆動用モータ3の出力軸3aに、胴体1外方に延びる駆動ロッド9と、柔軟性を有する連結ロッド11及び翼本体10からなる羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをそれぞれ取り付ける。羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを翼駆動用モータ3と共に垂直方向上向きに配して羽ばたき作動させることにより下向きの後流を発生させ、その反力により、垂直上昇、降下、ホバリングを行わせる。羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを所要迎角で配置して羽ばたき作動させることにより後斜め下向きの後流を発生させ、その反力で、揚力と推進力を得て前進飛行させる。更に、左右の推進力のバランスを変化させることで左右へ旋回させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要の目標位置まで飛行させて該目標位置の情報収集や、上記目標位置への小型機器の搬送等を行わせるために用いる小型飛行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内外の高所位置や災害現場等の人が容易に近づくことが困難な場所、あるいは、化学物質、微生物、放射性物質等での汚染が想定されるような場所の現場状況を調べる場合等に、大きさが数十センチメートル以下というような非常に小型の飛行装置(Micro Air Vehicle:MAV)に、カメラ、マイク、雰囲気ガス中の化学物質、微生物、放射性物質等の有無を検出するための所要の分析装置等の機器を搭載して、該小型飛行装置を目標となる位置まで飛行させ、該小型飛行装置に搭載された機器により検出される現場の計測結果を基に、遠隔地より上記目標位置の情報収集を実施できるようにすることが考えられてきている。
【0003】
ところで、飛行体とその周囲の流体との相互作用を、流体の慣性力と粘性力の比であるレイノルズ数との相関で整理すると、飛行体のサイズとレイノルズ数の大小はほぼ対応しており、従来一般に実用化されているメートルサイズの飛行体では、たとえば、通常の航空機のレイノルズ数が10〜10のオーダーを示すように、レイノルズ数が高くて(Re>10)慣性力が支配的となっているのに対し、上記のようなサイズが小さい小型飛行装置では、レイノルズ数が10〜10程度と低い値となり、周囲の気体(流体)との相互作用では、慣性力と共に粘性力の影響が大となる。又、上記小型飛行装置は、サイズが小さくて機体重量が軽いことから、気流等の影響を容易に受け易く、常に突風の中を飛行するような状態となる。更に、屋内での飛行や、屋外での気流中を飛行させるためには、垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行(ホバリング)等の非常に高度な飛行性能が要求されることから、航空機やヘリコプター等の従来の飛行体とは非常に異なる設計が必要とされている。
【0004】
そのため、上記小型飛行装置にて垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行等を行わせることができるようにするため飛行手段の1つとして、羽ばたき飛行する形式の小型飛行装置が考えられてきている。
【0005】
この種の羽ばたき飛行する形式の小型の飛行装置としては、たとえば、胴体部の左右位置に、それぞれ前後一組の振動型アクチュエータを、該前後の振動型アクチュエータの振動軸(回転軸)が胴体軸に対し所要角度後方に下傾した一直線上にて同軸心配置となるよう配設し、羽前縁をなす羽軸(前羽軸)と羽後縁をなす羽軸(後羽軸)との間に膜を張設して形成してなる左右一対の羽の上記前羽軸と後羽軸を、上記前側と後側の対応する各振動型アクチュエータにそれぞれ接続した構成としてなるものが従来提案されている。
【0006】
かかる形式の小型飛行装置によれば、上記前後の振動型アクチュエータを、前側の振動型アクチュエータの方が、後側の振動型アクチュエータよりも所要位相差で先行するようにそれぞれ上下方向に羽ばたき(往復)作動させることにより、羽の打ち下ろし作動時には、該羽がなるべく水平面と平行な姿勢となるようにすることで、打ち下ろし時に羽の膜が移動する空間の体積が最大になるようにしてある。一方、羽の打ち上げ作動時には、該羽の膜ができるだけ水平面に対して直角に近い角度となるようにすることで、打ち上げ時に羽根の膜が移動する空間の体積を最小にするようにしてあり、これにより、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力が、羽の打ち上げ動作において羽に作用する鉛直下向きの流体力よりも大となるようにして機体の浮上力(揚力)を得ることができるようにしてある。更に、上記前後の振動型アクチュエータの位相差を調整して、各羽の打ち上げ及び打ち下げ時の姿勢(角度)を変化させることにより、前後方向への推進力を得ることができるようにしてある(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0007】
又、上記と同様に、羽の打ち下ろし時に羽の膜が移動する空間の体積の方が、羽の打ち上げ時に羽の膜が移動する空間の体積よりも大きくなるようにして、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力が、羽の打ち上げ動作において羽に作用する鉛直下向きの流体力よりも大となるようにすることにより機体の浮上力を得るようにする考えに基づいた別の形式のものとしては、胴体部の左右位置に、3自由度を持つアクチュエータをそれぞれ設け、該各アクチュエータに、左右一対の羽にそれぞれ長手方向に沿って設けてある主軸の基端部を取り付けて、上記各アクチュエータにて、羽の上下方向の往復作動に加えて、羽の主軸を中心とする回転動作及び主軸と羽を一体に前後方向へ可動できるようにしてなる構成としてなるものも従来提案されている。
【0008】
かかる形式の小型飛行装置によれば、羽の打ち下ろし作動時には、該羽がなるべく水平面と平行な姿勢となるようにし、一方、羽の打ち上げ時には、羽を上下方向の姿勢となるように一旦回転させた後、該羽の有する湾曲形状に沿う軌道で引き上げられるように、羽を回転させると同時に前後方向に動かしながら打ち上げ作動させるようにしてある。これにより、羽の打ち上げ動作において該羽に作用する鉛直下向きの流体力をより小さくできるようにして、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力との差をより大きくすることで、機体の浮上力をより効率よく得ることができるようにしてある(たとえば、特許文献2、特許文献4、特許文献5参照)。
【0009】
羽ばたき飛行する更に他の形式の小型飛行装置としては、胴体部の左右位置に、羽の長手方向に沿って設けてある軸の前後水平方向の往復作動と、該羽の軸の回転作動を行なうことができるようにしてある駆動装置をそれぞれ設けて、該左右の各駆動装置に、左右一対の対応する羽の軸をそれぞれ取り付けてなる構成としたものも従来提案されている。
【0010】
かかる形式の小型飛行装置によれば、上記駆動装置により左右の羽を前後方向に羽ばたき作動させると同時に、羽を前方及び後方へ打つときには、該羽の上縁側が下縁側に対して先行するように羽の軸を回転させるようにして、各羽により下向きの気流を発生させることにより、この下向きの気流の反作用によって浮上力(揚力)を得るようにしてあり、更に、この際、左右の羽の前後方向の振幅の中心位置を、それぞれ独立して進行方向前方又は進行方向後方にずらすことで、各羽の羽ばたき作動時に該羽の基端側から先端方向に向かうよう発生している流れの前後方向のバランスを変化させて、前進、後進、あるいは、左右方向の旋回を行わせるようにすることができるようにしてある(たとえば、特許文献5参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−135866号公報
【特許文献2】特開2002−326599号公報
【特許文献3】特開2003−339896号公報
【特許文献4】特開2003−118697号公報
【特許文献5】特開2004−90909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記従来提案されている3つの形式の羽ばたき飛行する小型飛行装置のうち、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた前後一組の振動型アクチュエータにより左右一対の羽を上下方向に羽ばたき作動させる形式、及び、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた3自由度を持つアクチュエータにより左右一対の羽を上下方向に羽ばたき作動させる形式のものでは、垂直離着陸時や空中停止飛行時、すなわち、羽の湾曲形状による揚力の発生が期待できないときには、機体の浮上力(揚力)を、羽を水平面とほぼ平行な姿勢で打ち下ろすときに該羽の面に作用する鉛直上向きの流体力と、羽を所要の姿勢で打ち上げるときに該羽根に作用する鉛直下向きの流体力との差のみで得る必要があるが、この場合、左右の各翼の一回の羽ばたき作動で得られる揚力は、最大でも羽の面によって下方に、すなわち、該羽の面とほぼ直角方向に押される空気からの反力でしかなく、したがって、得られる浮上力が非常に小さいと考えられる。このために、機体重量を、1グラム未満とする等、極めて軽量としなければならず、駆動装置や電源も非常に軽量としなければならないことから飛行能力にも制限が生じることが懸念される。更に、上記したように機体重量が極めて軽いことから、環境に存在する気流によって飛行状態に大きな影響を受ける虞もある。
【0013】
又、上記従来の羽ばたき飛行する小型飛行装置のうち、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた羽の前後水平方向の往復作動と該羽の軸の回転作動を行なう駆動装置により、左右一対の羽を前後方向に羽ばたき作動させる形式のものでは、該各羽の羽ばたき作動により下向きの気流を発生させて、この下向きの気流の反作用によって浮上力(揚力)を得るようにしてあり、又、前後方向の推進力は、上記左右の羽の前後方向の振幅の中心位置を、進行方向前方又は進行方向後方にずらして、各羽の羽ばたき作動時に該羽の基端側から先端方向に向かうよう発生している流れの前後方向のバランスを変化させることで得るようにしてある。そのため、浮上力は効率よく得ることはできるが、前後方向の推進力は比較的弱く、飛行速度に制限を受けることから、行動範囲が制限される虞が懸念される。
【0014】
更に、上記従来の3つの形式の羽ばたき飛行する小型飛行装置は、いずれも左右一対の羽しか備えていない。そのために、機体が飛行中に左右方向に傾くような姿勢変化を生じた場合には、左右の羽でそれぞれ発生させている揚力を増減させることで左右の揚力のバランスを調整して、速やかに姿勢を制御できるとしても、機体が前後方向に傾くような姿勢変化を生じた場合には、速やかに対応し難いと共に、その調整作用が弱い虞も懸念される。
【0015】
そこで、本発明者は、小型飛行装置に高度な飛行性能を付与するための工夫、研究を重ねた結果、胴体の水平姿勢を保持したままの垂直離着陸、急速旋回、空中停止飛行(ホバリング)等の高度な飛行性能を備えたトンボに着目した。トンボは、水平飛行時には、翼断面の平均迎角(水平面となす角)をほぼゼロとなるようにして、翼断面が上下往復運動と回転運動が重畳された運動をするように各翼を羽ばたかせており、一方、空中停止飛行時には、翼断面の平均迎角をほぼ90度として、すなわち、翼前縁を上にして、翼断面が前後往復運動と回転運動が重畳された運動をするように各翼を羽ばたかせており、このことから、水平飛行時と空中停止飛行時での違いは、翼断面の該翼断面に対する相対的な往復運動方向は変化せず、翼断面の平均迎角だけが相違している。
【0016】
ところで、トンボの各翼は、3方向の自由度を持つジョイントにより胴体に連結されており、この自由度を生かして、自在に翼断面を上下や前後に動かしたり、回転できるものである。
【0017】
このため、上記トンボの翼の胴体への取付部分の構造を模倣して、上下、前後、回転の3方向の自由度を持つ翼の駆動機構を採用することが考えられる。この場合、上記のような3方向の自由度を備えたユニバーサルジョイントは、ジンバルとモータ等を組み合わせることにより実現することは可能であると考えられるが、重量が過多になり、小型飛行装置に採用することは難しく、又、コスト的にも高価になると考えられる。
【0018】
なお、上記従来提案されている羽ばたき飛行する形式の小型飛行装置にも、3自由度を持つアクチュエータにより左右一対の羽を羽ばたき作動させる形式のものが提案されているが、該アクチュエータの有する自由度は、羽の打ち上げ作動時に該羽を羽の有する湾曲形状に沿った軌道で引き上げるためのもので、羽の平均迎角を変化させた状態で羽ばたき作動させるためのものではない。
【0019】
これらのことを鑑みて、本発明者は、トンボの翼の駆動部の運動をそっくりそのまま模倣するバイオミメティックな考え方ではなく、上記トンボの翼駆動部の優れた点のみを抽出してその構造的な考え方を取り入れるバイオモルフィックな考えに基づいて本発明をなした。
【0020】
したがって、本発明の目的とするところは、羽ばたき飛行により高度な飛行性能を達成できて、屋内での飛行や、屋外での気流中にて常に突風の中を飛行するような状態であっても飛行できる小型飛行装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応させて、胴体の左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設けて、各羽ばたき翼を羽ばたき作動が独立に制御できるようにしてなり、該各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とする。
【0022】
具体的には、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設けて、各羽ばたき翼を羽ばたき作動が独立に制御できるようにしてなり、該各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とする。
【0023】
更に、具体的には、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、翼駆動用モータを、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を一体に保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸に、それぞれ取り付けた構成とし、又、この構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各翼駆動用モータの出力軸の上下方向の角度の制御と、該各翼駆動用モータの交互の正、逆転駆動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0024】
又、請求項5に係る発明に対応させて、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、駆動モータを、出力軸が胴体の外方向に向くようにそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を一体に保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各駆動モータの出力軸に、該出力軸の軸心方向と平行になるように取り付けた構成とし、又、この構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各駆動モータによる駆動ロッドの角度の制御による羽ばたき翼の平均迎角の制御と、該平均迎角を中心とした各駆動モータの交互の正、逆転駆動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0025】
更に又、請求項7に係る発明に対応させて、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、線形アクチュエータを、出力軸が上下方向又は前後方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸に、それぞれ取り付けた構成、又は、請求項8に係る発明に対応させて、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、線形アクチュエータを、出力軸が上下方向又は前後方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成とし、更に、これらの構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御と、該各線形アクチュエータの出力軸の軸心方向の振動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0026】
上述の各構成における駆動ロッドと翼本体の前縁部との間に、上記駆動ロッドと直角方向に延びる柔軟性を備えた連結ロッドを介在させるようにした構成とする。
【0027】
又、上述の各構成における翼本体を、前縁部と直角方向に柔軟性を備えてなるものとした構成とする。
【0028】
更に、上述の各構成における翼本体を、低アスペクト比とした構成とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の小型飛行装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)胴体の左右位置、より具体的には、胴体の前部左右位置と後部左右位置に、複数の羽ばたき翼を、それぞれの羽ばたき翼ごとに羽ばたき作動と上下方向の角度姿勢を独立して制御可能に設けるようにした構成としてあるので、上記各羽ばたき翼ごとに、それぞれ独立して上下方向の角度姿勢、すなわち、迎角と、羽ばたき作動をそれぞれ制御することができて、該各羽ばたき翼の羽ばたき作動により得られる揚力と、推進力の大きさをそれぞれ調整できる。したがって、上記各羽ばたき翼より胴体にそれぞれ作用させる揚力の大きさと、推進力の大きさ及び方向を個別に制御できることから、気流により姿勢が前後左右方向に乱されそうになっても、容易に修正して水平姿勢を保持することができる。又、垂直離着陸や空中停止飛行等の高度な飛行性能を達成できる。
(2)更に具体的には、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、翼駆動用モータを、出力軸が前後方向又は上下方向に角度変更できるように回動可能にそれぞれ設け、且つ駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とすることにより、上記翼駆動用モータの上下方向の角度と交互の正、逆転駆動を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、羽ばたき作動の制御を行なうことができる。
(3)又、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、駆動モータを、出力軸が胴体の外方向に向くようにそれぞれ設け、且つ駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各駆動モータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とすることにより、上記駆動モータの出力軸が平均して保持される角度と、該出力軸の上記平均して保持される角度を中心とする交互の正、逆転駆動を制御することによっても、羽ばたき翼の上下方向の平均迎角の変更と、羽ばたき作動の制御を行なうことができる。
(4)更に、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、線形アクチュエータを、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるように回動可能にそれぞれ設け、且つ駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とすることにより、上記線形アクチュエータの上下方向の角度と出力軸の軸心方向に沿う振動を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、羽ばたき作動の制御を行なうことができる。
(5)更に又、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、線形アクチュエータを、出力軸が上下方向又は前後方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成とすることにより、上記線形アクチュエータの上下方向の角度と出力軸の軸心方向に沿う振動を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、駆動ロッドのブラケットへの取付位置を支点とする羽ばたき作動の制御を行うことができる。更に、線形アクチュエータの出力軸の振動の振幅を、増幅して羽ばたき翼へ伝達して羽ばたき作動させることができるため、線形アクチュエータの出力軸の振動の振幅が小さくても、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を大きく設定することが容易になり、線形アクチュエータの小型化を図るのに有利なものとすることができる。
(6)更に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に羽ばたき翼の上下方向の迎角の制御と、羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた構成とすることにより、本発明の小型飛行装置の姿勢が崩れて所要方向に傾斜した場合には、傾斜した側と、その反対側に作用する揚力のバランスを変えるよう、各羽ばたき翼の迎角及び羽ばたき作動を変化させて姿勢を修正して、飛行姿勢を安定に保持することが可能となる。
(7)各羽ばたき翼の駆動ロッドと翼本体との間に、柔軟性を備えた連結ロッドを介在させるようにした構成とすることにより、羽ばたき翼の羽ばたき作動時に翼本体に作用する空気抵抗の荷重により上記連結ロッドを撓ませて、翼本体にフェザリングをパッシブに生じさせることができる。
(8)又、翼本体を、前縁部と直角方向に柔軟性を備えてなるものとすることによっても、羽ばたき翼の羽ばたき作動時に、翼本体にフェザリングをパッシブに生じさせることができる。
(9)翼本体を低アスペクト比とした構成とすることにより、低レイノルズ数にて支配される領域での翼形状をより有利なものとすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1(イ)(ロ)乃至図3は本発明の小型飛行装置の実施の一形態を示すもので、前後方向に、たとえば、十数センチメートル程度の長さ寸法を有する胴体1の左右両側部の複数個所、たとえば、前部左右位置と後部左右位置の4個所に、羽ばたき速度を独立して制御できるようにしてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、上下方向に角度変更可能にそれぞれ設け、該各4枚の羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき速度をそれぞれ適宜制御することにより飛行できるようにする。
【0032】
以下、詳述する。
【0033】
上記胴体1の前部左右位置及び後部左右位置には、図2に示す如く、出力軸3aが前向きとなるように翼駆動用モータ3をそれぞれ配置し、該各翼駆動用モータ3に出力軸3aとは直角方向に延びるように取り付けた回転支持軸4を、胴体1の前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ設けてある左右一対の軸受5に回転自在に支持させ、該回転支持軸4を回転させることにより各翼駆動用モータ3が上下方向に回動して出力軸3aの角度を調整できるようにする。更に、上記各翼駆動用モータ3の一方の回転支持軸4、たとえば、胴体1の中心側に位置する各々の回転支持軸4に、角度変更用ギア6をそれぞれ取り付け、且つ該各ギア6に噛合させた各ピニオン8を、各々独立させた角度制御用モータ7の出力軸7aに取り付けて、各モータ7によりピニオン8を独立して回転させることにより、上記角度変更用ギア6、回転支持軸4を介して対応する翼駆動用モータ3が、それぞれ独立して前後方向に沿う垂直面内で上下方向に回転(角度変更)できるようにしてある。この際、上記各角度制御用モータ7の回転数を適宜制御することにより、それぞれ対応する翼駆動用モータ3と一緒に該翼駆動用モータ3に取り付ける羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上下方向の迎角(向き)をそれぞれ独立に変更できるようにしてある。なお、上記翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ7は、電磁モータ又は超音波モータのいずれの形式であってもよい。
【0034】
上記羽ばたき翼2a,2b,2c,2dは以下のような構成としてある。すなわち、各翼駆動用モータ3の出力軸3aに、左右方向に延びて胴体1の外方へ所要寸法突出するようにしてある駆動ロッド9の一端部(胴体1側端部)をそれぞれ連結して固定し、出力軸3aの回転で駆動ロッド9が振られるようにする。なお、上記駆動ロッド9は、多少の柔軟性(撓性)を備えた素材製のものとしてもよい。上記各駆動ロッド9の胴体1の外方へ突出した他端側には、対応する翼駆動用モータ3の出力軸3aと平行な面内に配置してある矩形状の翼本体10の前縁部を、該翼本体10の幅方向に所要間隔で配した複数本(図では3本)の連結ロッド11を介して一体に取り付ける。これにより、上記各翼駆動用モータ3の出力軸3aを、所要の角度範囲、たとえば、30度程度の角度範囲で交互に正、逆転駆動させることにより、該出力軸3aに連結してある駆動ロッド9が往復動作させられることにより、該駆動ロッド9と連結ロッド11と翼本体10とからなる各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、上記所要の角度範囲で羽ばたき作動させることができるようにしてある。又、この際、上記各翼駆動用モータ3の正、逆転駆動する速度を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動速度(羽ばたき速度)を独立して制御できるようにしてある。
【0035】
更に、上記各連結ロッド11は、柔軟性(撓性)を備えた素材製として、上記羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の際に翼本体10に空気抵抗が作用すると、その荷重を受けて上記各連結ロッド11が所要量撓むようにしてある。これにより、上記翼駆動用モータ3にて羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき運動させるときには、上記各連結ロッド11が撓むことによって、駆動ロッド9の往復移動に対し、上記各連結ロッド11を介して接続してある翼本体10の往復移動が所要位相遅れると共に、該各翼本体10の前縁(駆動ロッド9側の縁)の往復移動に対し、後縁(反駆動ロッド9側の縁)が所要位相遅れて追従するようになることから、翼本体10に、所謂フェザリングをパッシブに行わせることができるようにしてある。
【0036】
上記各翼本体10は、低アスペクト比となる矩形状としてあり、たとえば、該翼本体10の前縁部に沿って配置した左右方向に延びる横骨部材12と、該横骨部材12の長手方向の複数個所(図では5個所)に一端部を取り付けると共に、他端部が翼本体10の後縁に達するよう配置した複数本の縦骨部材13とからなる骨組み構造に、薄いプラスチックフィルムのようなフィルム14を張ってなる構成としてある。更に、上記各縦骨部材13は、柔軟性(撓性)を備えてなる素材製として、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の際、上記翼本体10のフィルム14の受ける空気抵抗の荷重により上記各縦骨部材13がそれぞれ所要量撓むようにし、このことによっても、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動時にそれぞれの翼本体10にフェザリングをパッシブに行わせることができるようにしてある。
【0037】
上記において翼本体10の形状を低アスペクト比となる形状としたのは、本発明の小型飛行装置はサイズが小さく、このため流体との相互作用は10〜10程度と低いレイノルズ数で支配されるようになるため、通常のレイノルズ数が10よりも大となるようなメーターサイズの飛行体とは異なり、翼弦長が翼幅に比して小さい高アスペクト比の翼形状よりも低アスペクト比の翼形状の方がより有利となるためである。
【0038】
これにより、上記各翼駆動用モータ3の出力軸3aを交互に正、逆転駆動させて駆動ロッド9を振ることにより羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させると、それぞれ対応する翼本体10の後縁側の外方領域にはスリップストリーム(後流)が発生し、このため、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dには、上記後流の反力がそれぞれ作用するようになる。よって、本発明の小型飛行装置全体では、上記4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにそれぞれ作用する後流の反力における垂直方向上向きの成分(垂直分力)の合力が揚力として作用し、又、上記4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにそれぞれ作用する後流の反力の水平方向成分(水平分力)が水平方向の推進力として作用することとなる。したがって、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角及び羽ばたき速度を独立して調整することにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに発生させる揚力と推進力のバランスを変更できるため、高度の飛行性能が実現されるようになる。
【0039】
すなわち、たとえば、角度制御用モータ7により翼駆動用モータ3を回動させて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を、図1(イ)に示す如く、それぞれ90度、すなわち、翼前縁が垂直方向上向きとなる姿勢とさせた状態にて、翼駆動用モータ3の駆動により出力軸3aを交互に正、逆転駆動させて羽ばたき作動させると、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼本体10の後流は垂直方向下向きに発生されるようになる。このため、該後流の反力は垂直方向上向きの成分のみとなって、水平分力は生じない。よって、気流のない領域にて、上記各翼駆動用モータ3によるそれぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき速度を調整して、4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにてそれぞれ発生させる後流の反力の合力である本発明の小型飛行装置の揚力が、本発明の小型飛行装置の機体重量(全体重量)を上回るようにすれば、該小型飛行装置は、水平方向に移動されることなく垂直上昇するようになる。一方、上記本発明の小型飛行装置の揚力が機体重量を下回るようにすると、該小型飛行装置は垂直に降下させられるようになる。更に、上記本発明の小型飛行装置の揚力が機体重量と釣り合うようにすれば、本発明の小型飛行装置は空中停止飛行(ホバリング)を行うことができるようになる。なお、上記のように垂直上昇、垂直降下、ホバリングの際は、胴体前部の羽ばたき翼2a,2bと胴体後部の羽ばたき翼2c,2dとを逆位相で羽ばたき作動させるようにすると、好ましくない不平衡力の発生を防止することが可能になる。
【0040】
又、たとえば、上記角度制御用モータ7により翼駆動用モータ3を回転させて羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度を変更すると、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動により発生する後流の方向が垂直方向下向きより傾くことから、該後流の反力には水平方向成分が生じることとなる。したがって、図1(ロ)に示す如く、4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、いずれも所要迎角で前方やや上向きとなるような姿勢とさせた状態にて、各翼駆動用モータ3の駆動により羽ばたき作動させると、該4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの発生する後流の反力が前方やや上向きに作用するため、この際、上記発生される後流の反力の垂直分力の合力である揚力が本発明の小型飛行装置の機体重量と釣り合うように適宜調整することにより、水平分力の合力である推進力が前向きに作用するようになる。このことから、静かな気流中では、本発明の小型飛行装置は、一定高度を保持したまま、推進力の大きさに応じて前方へ飛行できるようになる。なお、上記のように本発明の小型飛行装置を前方へ飛行させる際には、胴体前部の羽ばたき翼2a,2bと、胴体後部の羽ばたき翼2c,2dはほぼ同様に羽ばたき作動させればよいが、胴体後部の羽ばたき翼2c,2dは、それぞれ前方に位置する羽ばたき翼2a,2bの後流の中で運動することとなるので、左右の同じ側に設けられている前後の羽ばたき翼2aと2c、2bと2dでは干渉が生じる。したがって、この干渉の効果を加味できるよう、前後の羽ばたき翼2a,2bと2c,2dの羽ばたき作動時の位相差を適宜調整させるようにするとよい。
【0041】
更に、上記のように本発明の小型飛行装置を一定高度を保持した状態で前方へ飛行させる際、胴体左側の前後の羽ばたき翼2a,2cの羽ばたき速度と、胴体右側の前後の羽ばたき翼2b,2dの羽ばたき速度とを相違させるようにすると、羽ばたき翼2a,2cより胴体左側に作用する推進力と、羽ばたき翼2b,2dにより胴体右側に作用する推進力の大きさが相違するようになる。このため、静かな気流中においては、上記本発明の小型飛行装置を、作用する推進力がより小さい左右方向の一側へ旋回させることができるようになる。一方、飛行している小型飛行装置を左右方向のいずれか一側へ旋回させようとする乱れた気流中においては、小型飛行装置が旋回させられようとする側となる胴体1の左右いずれか一側に作用する推進力が、他側に作用する推進力も大きくなるように、左右の羽ばたき翼2a,2cと2b,2dとの羽ばたき速度を相違させるようにすれば、本発明の小型飛行装置が所定の飛行コースから外れるのを防止する効果を得ることができるようになる。
【0042】
上記のような各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動による本発明の小型飛行装置の前方への飛行中や左右への旋回中に、各翼駆動用モータ3による上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき速度を増減させたり、角度制御用モータ7の駆動により翼駆動用モータ3と一緒に各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を適宜変更して、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dによって発生させる後流の反力中の垂直分力の合力である揚力が、機体重量よりも大となるようにしたり、あるいは、機体重量を下回るようにすれば、本発明の小型飛行装置を前方への飛行中や旋回中に徐々に上昇させたり、あるいは、徐々に降下させることもできるようになる。
【0043】
なお、上記のように上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、各翼駆動用モータ3の交互正、逆転駆動により羽ばたき作動させて本発明の小型飛行装置へ水平方向の推進力を与える際、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの打下げ時の速度が打上げ時の速度よりも大となるように上記各翼駆動用モータ3の駆動を制御し、これにより、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dで発生させる後流の向きを、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに設定されている迎角よりも下方へ偏らせるようにして、該下方へ偏った後流の反力により機体重量を支えるための揚力を得るようにしてもよい。このようにすれば、本発明の小型飛行装置を水平方向前方に飛行させる際、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角をゼロ、すなわち、水平方向前方に向けた姿勢とすることが可能になる。
【0044】
更に、図1(イ)に示したように、本発明の小型飛行装置にホバリング、垂直上昇あるいは垂直降下を行わせているときに、左右のいずれか一側の羽ばたき翼2a,2c又は2b,2dの姿勢を、やや前方に傾斜させ、且つ他側の羽ばたき翼2b,2d又は2a,2cの姿勢を、やや後方に傾斜させるようにすれば、胴体1の左側と右側に、互いに前後方向に逆向きの推進力を作用させることができるようになるため、本発明の小型飛行装置をその場で左右方向に回頭させることも可能になる。更に、左右両側の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、すべてやや後方に傾斜した姿勢とすれば、後進飛行させることも可能になる。
【0045】
ところで、本発明の小型飛行装置は、胴体1の前部左右位置及び後部左右位置に設けてある4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき作動をそれぞれ独立して制御することにより、上述したような垂直上昇、垂直降下、ホバリング、垂直上昇や垂直降下やホバリングしながらのその場回頭、前進飛行、左右への旋回、前進あるいは旋回しながらの上昇や下降、後進飛行等の高度な飛行性能を達成できるものであるが、前述したように、サイズが小型としてあるために、実際の環境下を飛行する場合には、環境に存在する気流の影響を受けて常に乱流の中を飛行するような状態になる。このため、容易に姿勢が乱される虞があると共に、乱流の中を飛行することに伴い、所望する飛行コースから容易に逸脱する虞も懸念される。このような姿勢の乱れの修正や所望する飛行コースからの逸脱の修正を、作業者が無線制御等によってその都度行うことは困難であるため、本発明の小型飛行装置では以下のような制御機構を備えて、飛行の自律制御を行わせることができるようにしてある。
【0046】
すなわち、図3に示す如く、胴体1の所要位置に、GPSや磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ15、ジャイロ等の姿勢センサ16、障害物の検出を行うための衝突防止センサ17を設け、該各センサ15,16,17からの信号を基に、胴体1の前部左右位置及び後部左右位置の上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに対応するよう設けられている翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ7の組に対し、それぞれ独立した制御指令を与えるコントローラ18を備える。
【0047】
更に、胴体1の所要位置には、外部の図示しない制御装置より無線で発せられる本発明の小型飛行装置の使用目的に応じた飛行指令を受信して、上記コントローラ18に入力するための無線受信器19及び指令設定器20を設けるようにしてある。更に、上記コントローラ18より出力される本発明の小型飛行装置の現在位置や飛行状況等を、上記外部の制御装置へ無線で送信するための状態監視器21並びに無線送信器22を設けるようにしてある。
【0048】
上記コントローラ18について詳述すると、その機能の一つとしては、先ず、姿勢制御機能がある。これは、上述したように本発明の小型飛行装置は、飛行中に乱流によって容易に姿勢が乱される虞があることから、上記コントローラ18は、搭載してある姿勢センサ16より入力される信号に基づいて、前後左右方向の傾斜を常時監視し、傾きが検出されると、該検出された傾きが解消されて水平姿勢に戻るように、前部左右位置及び後部左右位置の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき速度を適宜変更すべく、翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ7へ指令を与えるようにしてある。
【0049】
具体的に説明すると、たとえば、姿勢センサ16の信号により左側が下がるように傾斜していることが検出されたときには、そのときの飛行状態における各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動状態に比して、胴体左側の前後の羽ばたき翼2a,2cによる揚力をやや増加させると共に、この揚力の増加に伴って所望の飛行コースより外れて上昇しないようにするために、胴体右側の前後の羽ばたき翼2b,2dによる揚力をやや減少させ、更に、この際、所望の飛行コースから左右方向に逸れないようにするために、左側及び右側の各羽ばたき翼2a,2c及び2b,2dによる胴体1の左右に作用する推進力は変化させないよう、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角及び羽ばたき速度を、それぞれ対応する翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ7により調整させるようにする。これにより、胴体1の左側と右側に作用する揚力のバランスを調整して傾斜を修正して水平姿勢を保持することができるようにしてある。
【0050】
同様に、右側が下がるような傾斜が検出された場合や、前後方向の傾斜が検出された場合にも、それぞれ胴体1の下がった側と上がった側に存在する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力のバランスを変化させることにより、傾斜を修正して水平姿勢を保持することができるようにしてある。
【0051】
上記コントローラ18の別の機能としては、飛行制御機能がある。これは、本発明の小型飛行装置を所定の目標位置まで飛行させ、その後、所望の作業の終了後に初期位置又は所定の場所まで戻らせるためのものである。したがって、GPSや、GPS電波の届かないところでは磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ15より入力される信号に基づいて本発明の小型飛行装置自体の位置(たとえば、三次元座標)を検出することができるようにしてある。又、外部の制御装置より無線受信器19、指令設定器20を介して飛行指令、たとえば、目標位置がGPS座標等により設定されると、上記検出された自己の初期位置(離陸位置)から目標位置に至るための方向、距離等を求めて、飛行コースを、たとえば、先ず、垂直に離陸して所要高さ位置まで垂直上昇した後、目標位置に向けて所要方位へ前進飛行するというような飛行コースを自動的に判断して設定できるようにしてあり、該設定された飛行コースに沿って飛行するために要求される揚力及び推進力の変化に応じて、すなわち、上記飛行コースに設定された高度に合せて上昇又は下降するために揚力を調整したり、左右方向へ旋回させるために左右の推進力のバランスを調整したり、更には、飛行速度を設定するために全体に作用する推進力を調整できるよう、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ7へそれぞれ指令を与えて、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき速度を適宜独立に制御できるようにしてある。これにより、本発明の小型飛行装置は、上記設定された飛行コースに沿って上記目標位置まで飛行することができるようにしてある。
【0052】
又、本発明の小型飛行装置は上記したように乱流によって飛行コースを容易に乱され易いことから、上記コントローラ18の飛行制御機能としては、本発明の小型飛行装置を上記のように所定の飛行コースに沿って飛行させる際に、GPS座標等の上記位置センサ15からの信号に基づいて本発明の小型飛行装置の現在の飛行位置を常時監視し、検出される現在の飛行位置が、上記所定の飛行コースからずれていることが検出された場合には、このずれを修正するように左右の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ7へ適宜指令を与えて、左右方向へ旋回させたり、上昇あるいは下降を行わせることができるようにする。これにより、飛行コースが乱されても随時修正しながら本発明の小型飛行装置を目標位置まで飛行させることができる機能も有するようにしてある。
【0053】
更に、上記コントローラ18の飛行制御機能としては、目標位置における所定の目的が達成された後に、本発明の小型飛行装置を初期位置(離陸位置)あるいは予め設定された所定の位置まで戻るように帰還用の飛行コースを設定すると共に、該帰還用飛行コースに沿って上記したと同様の制御を行うことで飛行させることもできるようにしてあるものとする。
【0054】
上記コントローラ18の更に別の機能としては、飛行コース上に存在する障害物を自動的に回避する障害物回避機能も備えているものとする。これは、衝突防止センサ17より入力される信号に基づいてコントローラ18が進行方向前方を常に監視し、飛行コースの前方に障害物の存在が検出されると、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ7へ適宜指令を与えることにより、飛行方向を上下左右方向へ適宜変更して上記障害物を迂回させるようにしてある。このようにして障害物を避けた後は、コントローラ18の有する上記飛行制御機能に基づいて、目標位置に至る飛行コースあるいは帰還用飛行コースに戻させるようにすればよい。
【0055】
上記衝突防止センサ17としては、たとえば、光フロー(Optic Flow)センサを採用すればよい。これは、ある移動体が移動しているときに該移動体より外部を視覚的に観測すると、得られる外部の像は、進行方向前方の一点より放射状に拡大し、移動体の上下左右位置では後方へ該移動体の速度と対応する速さで最も速く流れた後、進行方向後方の一点に集約されるように変化する。この際、上記移動体の進行方向の前方に位置している物体は、視界上における相対位置が変化せず、進行方向の前方からずれた位置に存在している物体は、その進行方向から上下左右へずれる方向に応じて、視界上では上下左右方向にその相対位置が変化すること、又、これらの進行方向前方からずれた位置に存在する物体は、進行方向からのずれが小さいほど、視界上における相対位置の変化率が大きくなる、という原理を利用して進行方向前方の障害物を検出できるようにしてある。
【0056】
更に又、胴体1の図示しない所定位置には、本発明の小型飛行装置の使用目的に応じて、たとえば、遠隔地の情報収集を目的とする場合には、画像撮影用のCCDセンサ23aや、雰囲気ガス中に存在する物質を検出するための化学センサ23b、バイオセンサ23c等の各種センサや、搬送対象物の離脱操作や把持操作等を行わせるための把持装置(図示せず)のようなペイロード23を搭載できるようにしてある。該ペイロード23が、各種センサである場合には、図3に示す如く、該センサによる計測結果を、上記状態監視器21へ送り、上記コントローラ18より入力される本発明の小型飛行装置の現在位置や飛行状況等と一緒に無線送信器22を経て外部の制御装置へ無線で送信させるようにしてもよい。
【0057】
図1(イ)(ロ)に示す如く、胴体1の下部所要位置には、本発明の小型飛行装置を離着陸させるときに接地させるための脚24を設けるようにしてある。又、胴体1の所要位置には各モータ3,7や上記制御機構における各機器に電力供給を行なうためのバッテリー等の図示しない電源を搭載するようにしてある。
【0058】
なお、本発明の小型飛行装置は飛行体であることから、上記した各種構成要素は、いずれも軽量であることが重要になる。したがって、上記各種構成要素は、いずれも、要求される強度や機能が満たされる範囲内において軽い材質のものを適宜選択して用いるようにすればよい。
【0059】
上記構成としてあることにより、本発明の小型飛行装置を使用する場合は、作業者が所要の離陸位置まで搬送して地上や所要個所に載置した状態にて、外部の制御装置より無線にて目標位置までの飛行及び所要の目的、たとえば、ペイロード23として搭載してある各種センサによる上記目標位置の状況観測等を行うよう飛行指令を発すると、該指令が本発明の小型飛行装置の無線受信器19及び指令設定器20を経てコントローラ18に入力される。このようにコントローラ18へ指令が入力されると、該コントローラ18では、上記指定された目標位置までの飛行コースが設定され、この所定の飛行コースに沿って飛行できるような揚力及び推進力が得られるように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3と角度制御用モータ7をそれぞれ駆動させるための指令が個別に発せられる。これにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角が角度制御用モータ7により所要の角度に調整されると共に、翼駆動用モータ3により所要の羽ばたき速度で上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dが羽ばたき作動されることから、本発明の小型飛行装置は上記所定の飛行コースに沿って目標位置まで飛行するようになる。
【0060】
この飛行の際、乱流等により姿勢が乱れると、姿勢センサ16より入力される信号によりコントローラ18にて該姿勢の乱れが検出されて、この姿勢の乱れを修正するよう上記コントローラ18より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ7へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき速度が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は常に水平姿勢を保持したまま飛行できるようになる。
【0061】
又、風の影響等により所定の飛行コースから逸脱すると、位置センサ15からの信号によりコントローラ18にて飛行コースからのずれが検出されて、この飛行コースからのずれを修正するよう上記コントローラ18より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ7へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき速度が適宜調整されて揚力や推進力が調整されるため、本発明の小型飛行装置は目標位置へ向けて飛行できるようになる。
【0062】
更に、飛行コース上に障害物がある場合には、衝突防止センサ17からの信号によりコントローラ18にて上記障害物が検出され、この障害物を迂回して飛行できるよう上記コントローラ18より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ7へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき速度が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は障害物を避けて飛行できるようになる。
【0063】
本発明の小型飛行装置が目標位置に達すると、ペイロード23に搭載したセンサによる上記目標位置の状況が計測されて、たとえば、上記センサをCCDセンサ23aとした場合には、上記目標位置の状況の映像が撮影でき、又、化学センサ23bとしたりバイオセンサ23cとした場合には、上記目標位置における雰囲気ガスの分析等を行わせて、該目標位置の映像や雰囲気中のガス成分の分析結果等を、状態監視器21、無線送信器22を介し外部の制御装置へ送信させることができるようになる。
【0064】
その後、上記目標位置における目的の作業が終了すると、コントローラ18により離陸位置あるいは予め指定された所定位置まで帰還するための飛行コースに沿って飛行できるよう上記コントローラ18より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ7へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき速度が適宜調整されて発生される揚力及び推進力が調整されるため、本発明の小型飛行装置は上記離陸位置あるいは所定位置まで帰還させられるようになる。
【0065】
このように、本発明の小型飛行装置によれば、前部左右位置及び後部左右位置に設けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角及び羽ばたき速度を独立に制御して羽ばたき作動できるようにしてあるため、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき速度をそれぞれ制御することにより、胴体1の前部左右位置及び後部左右位置に作用する揚力や推進力を独立して調整できる。このために、本発明の小型飛行装置は、そのサイズからレイノルズ数が10〜10程度と低いものであるため、メーターサイズの飛行体とは大幅に異なる流体との相互作用を受けて、常に乱流の中を飛行するような状況となるが、姿勢センサ16にて検出される姿勢の乱れを常時修正して水平姿勢に保持したまま、高度な飛行性能を達成することができる。
【0066】
更に目標位置と使用目的に関する飛行指令を与えることにより、上記目標位置までの自律飛行を行わせた後、該目標位置における所定の作業を行わせ、しかる後、離陸位置あるいは所定位置まで戻るように飛行させることができる。そのため、たとえば、災害発生現場や人が容易に近づけない個所の撮影を行ったり、該個所の雰囲気中に含まれるガスの成分を分析して、有害ガスの発生の有無を確認したりする等、遠隔地から上記目標位置の情報収集を行なうことが可能になる。
【0067】
更に、ペイロード23に把持装置を搭載しておけば、所要の搬送物を、目標位置として設定される人が容易に近付けない個所や、遠隔地まで搬送させたり、回収させたりすることも可能になる。
【0068】
次に、図4(イ)(ロ)及び図5は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図3に示した実施の形態において、前部左右位置と後部左右位置に設ける各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角の角度調整と羽ばたき作動を、角度制御用モータ7と翼駆動用モータ3により別々に行わせるようにしてあることに代えて、前部左右位置と後部左右位置に設ける各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角の調整と羽ばたき作動を、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに対応する一つの駆動モータ25にて行わせることができるようにしたものである。
【0069】
すなわち、上記駆動モータ25は、胴体1の前部左右位置と後部左右位置に、出力軸25aがそれぞれ左右方向の外向きとなるように設けてある。該各駆動モータ25の出力軸25aには、軸心方向に沿って胴体1の外方へ所要寸法突出する駆動ロッド9aの一端部をそれぞれ連結して固定する。該各駆動ロッド9aの他端部には、該駆動ロッド9aと平行に配置してある図1(イ)(ロ)乃至図3に示した実施の形態における翼本体10と同様の翼本体10の前縁部の幅方向中央部を、駆動ロッド9aと直角方向の連結ロッド11を介し取り付ける。これにより、上記各駆動モータ25の出力軸25aを回転させることにより、該出力軸25aに取り付けてある駆動ロッド9aと連結ロッド11と翼本体10とからなる羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、上記駆動ロッド9aを中心に連結ロッド11とともに上下方向に回転させることができるようになる。したがって、上記各駆動モータ25にて出力軸25aの向き(回転角度)を調整することにより、駆動ロッド9aを中心とする翼本体10の平均迎角(後述するように、翼本体10は上記出力軸25aを中心に所要の角度範囲で羽ばたき作動させるため、この羽ばたき作動させる角度範囲の中心となる上下方向の角度を平均迎角と云うものとする)を、所定方向に設定できるようになる。更に、上記各駆動モータ25により、出力軸25aを、上記設定された向きを中心に所要の角度範囲、たとえば、30度程度の角度範囲で交互に正、逆転駆動させることにより、駆動ロッド9aを中心として、対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、上記設定される平均迎角を中心として上記所要の角度範囲で羽ばたき作動させることができるようにしてある。又、この際、上記各駆動モータ25を正、逆転駆動する速度を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動速度(羽ばたき速度)を独立して制御できるようにしてある。なお、上記駆動モータ25は、電磁モータ又は超音波モータのいずれの形式であってもよい。
【0070】
更に、本実施の形態では、上記したように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角(平均迎角)の調整と羽ばたき作動を、それぞれ対応する一つの駆動モータ25にて行わせるようにしてあることに伴い、姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力と推進力をそれぞれ独立して制御するためのコントローラとしては、図5に示す如く、図1(イ)(ロ)乃至図3に示した如き各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3と角度制御用モータ7へそれぞれ指令を与えるコントローラ18に代えて、駆動モータ25へ、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの平均迎角と羽ばたき速度をそれぞれ制御する指令を与える機能を有するコントローラ18aを設けるようにしてある。
【0071】
その他の構成は図1(イ)(ロ)乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0072】
本実施の形態によれば、上記駆動モータ25の回転を制御することのみにより、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの平均迎角を図4(イ)に示すように90度として、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをそれぞれ垂直方向上向きの姿勢とさせた状態で羽ばたき作動させたり、図4(ロ)に示すように平均迎角をゼロとして、水平方向前向きの姿勢とさせた状態で羽ばたき作動させることができる。したがって、図1(イ)(ロ)乃至図3に示した実施の形態におけるコントローラ18によるそれぞれ対応する角度制御用モータ7と翼駆動用モータ3の制御を介した各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに独立した迎角及び羽ばたき速度の制御と同様に、コントローラ18aの有する姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能に基づいて、駆動モータ25へ制御指令を与えることにより、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの平均迎角、及び、羽ばたき速度をそれぞれ独立に制御することで、図1(イ)(ロ)乃至図3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。更に、本実施の形態では、使用するモータの数を減らすことができることから、構成をよりシンプルなものとすることができて、機体重量の軽量化を図る点でより有利なものとすることができる。
【0073】
次いで、図6(イ)(ロ)乃至図9は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図3に示した実施の形態において、前部左右位置と後部左右位置に設ける各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動を、上下方向に角度変更できるようにしてある翼駆動用モータ3により行わせるようにしてあることに代えて、前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ設ける各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動を、各々独立して上下方向に角度変更できるようにしてある線形アクチュエータとして、たとえば、ムービングコイル形の線形アクチュエータ26によりそれぞれ行わせるようにしたものである。
【0074】
すなわち、上記ムービングコイル形の線形アクチュエータ26は、図8(イ)(ロ)に示す如く、一端側を閉塞した円筒状の支持容器27の他端側を、中央部に所要口径の開口部28を有する蓋部27aで閉鎖できるようにし、且つ該支持容器27の内部に、半径方向の磁界を発生させる環状のギャップ(溝)29aを備えた永久磁石製の磁気回路29を設置して、該磁気回路29と蓋部27aとの間に所要の空間部を形成すると共にギャップ29aが蓋部27a側に開放するようにする。上記磁気回路29のギャップ29a内には、コイル30を、軸心方向に往復移動できるように挿入配置して、該コイル30の蓋部27a側の軸方向端部に、取付部材32を取り付け、更に、該取付部材32の中央部に、蓋部27aの中央部の開口部28にスライド自在に挿入させた出力軸31の一端を取り付けた構成としてある。これにより、上記コイル30に所要周波数の交流電力を給電すると、該コイル30を上記磁気回路29のギャップ29a内における磁界との相互作用により軸心方向に往復運動させることができて、このコイル30の軸心方向の往復運動に伴い、取付部材32を上記空間部内で移動させて、上記出力軸31を、上記給電する交流電力の周波数と同様の周波数で軸心方向に振動(往復移動)させることができるようにしてある。なお、たとえば、上記コイル30の外周部所要個所と、その外周に位置する支持容器27の内面とを、放射方向に配したばねの如き弾性部材(図示せず)を介して接続すれば、上記線形アクチュエータ26への給電停止時に、上記出力軸31を中立位置に保持できるようになる。
【0075】
上記構成としてある線形アクチュエータ26は、支持容器27の外側面に、図8(イ)(ロ)に示す如く、コイル30の往復動方向とは直交する方向で且つ相対する方向に回転支持軸4を取り付けて、該支持容器27の両側へ延びる回転支持軸4を、胴体1の前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ設けてある左右一対の軸受5に回転自在に支持させるようにして、図7に示す如く胴体1上に設置させる。更に、一方(片側)の回転支持軸4、たとえば、各線形アクチュエータ26の胴体1の中心側に位置する各々の回転支持軸4に、角度変更用ギア6をそれぞれ取り付け、且つ該各ギア6に噛合させた各ピニオン8を、胴体1に設置してある各々独立させた角度制御用モータ7の出力軸7aに取り付け、各角度制御用モータ7によりピニオン8を独立して回転させることにより、上記角度変更用ギア6、回転支持軸4を介して線形アクチュエータ26を、それぞれ独立して前後方向に沿う垂直面内で上下方向に回転(角度変更)できるようにしてある。
【0076】
更に、上記線形アクチュエータ26の出力軸31には、図1(イ)(ロ)乃至図3に示した実施の形態における各翼駆動用モータ3の出力軸3aに連結した場合と同様に、左右方向に延びて胴体1の外方へ所要寸法突出するようにしてある駆動ロッド9の一端部(胴体1側の端部)を図8(イ)に示す如く直角の状態で連結して固定すると共に、該駆動ロッド9の胴体1外方へ突出した他端側に、図1(イ)(ロ)乃至図3に示した実施の形態における翼本体10と同様の構成とし且つ上記線形アクチュエータ26の出力軸31と直角な面内に配置してある翼本体10の前縁部を、複数の連結ロッド11を介し取り付けて、出力軸31の往復移動で駆動ロッド9、連結ロッド11を介し翼本体10が羽ばたき作動するようにした構成としてある。本実施の形態の各図では、線形アクチュエータ26の出力軸31を垂直方向上向きとするときに、翼本体10は翼前縁が水平方向前向きの姿勢となり、線形アクチュエータ26の出力軸31を水平方向後向きとするときに、翼本体10は翼前縁が垂直方向上向きの姿勢となるように設定してある。
【0077】
かかる構成としてあることから、上記各線形アクチュエータ26の出力軸31を軸心方向に所要の振幅で振動させることにより、該出力軸31に連結してある駆動ロッド9と連結ロッド11と翼本体10とからなる各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dが、上記翼本体10の面に垂直な方向へ振動させられて羽ばたき作動させられるようになり、この際、上記各線形アクチュエータ26の出力軸31の振動する速度を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動速度(羽ばたき速度)が独立して制御されるようになる。更に、上記各角度制御用モータ7の回転数を適宜制御することにより、それぞれ対応する線形アクチュエータ26と一緒に該線形アクチュエータ26に取り付けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上下方向の迎角(向き)がそれぞれ独立に変更されるようになる。
【0078】
更に又、本実施の形態では、上記したように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動を、それぞれ線形アクチュエータ26にて行わせるようにしてあることに伴い、姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力と推進力をそれぞれ独立して制御するためのコントローラとしては、図3に示した各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3と角度制御用モータ7へそれぞれ指令を与えるコントローラ18に代えて、図9に示す如く、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの線形アクチュエータ26と角度制御用モータ7へそれぞれ指令を与えて、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき速度と上下方向の角度姿勢をそれぞれ制御する指令を与える機能を有するコントローラ18bを設けるようにしてある。
【0079】
その他の構成は図1(イ)(ロ)乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0080】
本実施の形態によれば、上記角度制御用モータ7の回転を制御して線形アクチュエータ26と一緒に各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上下方向に回転させて、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度姿勢を、図6(イ)に示すように、90度として該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをそれぞれ垂直方向上向きの姿勢とさせた状態で羽ばたき作動させたり、図6(ロ)に示すように、水平方向前向きの姿勢とさせた状態で羽ばたき作動させることができる。
【0081】
したがって、図1(イ)(ロ)乃至図3に示した実施の形態におけるコントローラ18によるそれぞれ対応する角度制御用モータ7と翼駆動用モータ3の制御により各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに独立した迎角及び羽ばたき速度の制御と同様に、コントローラ18bの有する姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能に基づいて、角度制御用モータ7と線形アクチュエータ26へ制御指令を与えることにより、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度姿勢としての迎角、及び、羽ばたき速度をそれぞれ独立に制御することで、図1(イ)(ロ)乃至図3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
上記のように本実施の形態における小型飛行装置を飛行させるときに水平方向前方に飛行させる場合には、上記各線形アクチュエータ26に単なる交流電力を給電しているときに、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを所要迎角で前方やや上向きの姿勢となるようにすることにより、後流を後方やや下向きに発生させて、該後流の反力中における垂直方向上向きの成分により本発明の小型飛行装置の機体重量を支えるための揚力を得るようにすればよい。又、上記各線形アクチュエータ26に対し、交流電力を供給するときに直流分を同時に負荷して、対応する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの打下げ時の速度が打上げ時の速度よりも大となるように上記各線形アクチュエータ26の駆動を制御し、これにより、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dで発生させる後流の向きを、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに設定されている迎角よりも下方へ偏らせて、該下方へ偏った後流の反力により機体重量を支えるための揚力を得ることができれば、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を、水平方向前方に向けた姿勢とすることができる。
【0083】
図10(イ)(ロ)はいずれも図6(イ)(ロ)乃至図9の実施の形態の応用例を示すもので、図10(イ)に示すものは、図6(イ)(ロ)乃至図9の実施の形態に示したように、線形アクチュエータ26の出力軸31に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド9の一端部(胴体1側の端部)を直接固定する構成に代えて、各線形アクチュエータ26の支持容器27の蓋部27aの前面における出力軸31より胴体1外側寄りとなる左右方向の一側位置に、出力軸31と平行に所要寸法突出するブラケット33を設けて、該ブラケット33の先端部に、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2d(図では羽ばたき翼2aについてのみ示してある)の駆動ロッド9の基端側となる一端寄りの所要個所を、ピン34によりそれぞれ回動自在に枢着して支持させ、該各駆動ロッド9の基端側としての一端部には、軸心方向に沿って所要の寸法を有する長孔35を設ける。一方、上記線形アクチュエータ26の出力軸31の先端部には、先端側に左右方向に連通する隙間を備えたクレビス形状の連結部材36を取り付けて、該連結部材36の先端側の隙間に上記駆動ロッド9の一端部を沿わせて配置させるようにし、上記駆動ロッド9の長孔35に挿通させた動力伝達用ピン37の両端部を、上記連結部材36の先端部に取り付けて連結部材36と駆動ロッド9の一端部とを係合させ、線形アクチュエータ26の出力軸31が軸心方向へ振動することにより、上記動力伝達用ピン37と長孔35を介し駆動ロッド9が揺動させられるようにした構成としたものである。
【0084】
又、図10(ロ)に示すものは、各線形アクチュエータ26の支持容器27の蓋部27aの前面における出力軸31より胴体1中心側寄りとなる左右方向の他側位置に、出力軸31と平行に所要寸法突出するブラケット33を設けて、該ブラケット33の先端部に、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2d(図では羽ばたき翼2aについてのみ示してある)の駆動ロッド9の基端側としての一端部を、ピン34によりそれぞれ回動自在に枢着して支持させると共に、図10(イ)に示したと同様に、駆動ロッド9の基端側となる所要個所に長孔35を設け、線形アクチュエータ26の出力軸31の先端に固定した図10(イ)と同様の連結部材36に、上記駆動ロッド9の長孔35形成部を沿わせて、動力伝達用ピン37を長孔35に通すことにより係合させるようにし、線形アクチュエータ26の出力軸31が軸心方向へ振動することにより、駆動ロッド9がブラケット33への枢着点を中心に揺動させられるようにした構成としたものである。
【0085】
その他の構成は、いずれも図6(イ)(ロ)乃至図9に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。又、たとえば、上記コイル30の外周部所要個所と、その外周に位置する支持容器27の内面とを、放射方向に配したばねの如き所要の弾性部材(図示せず)を介し接続して、上記線形アクチュエータ26への給電停止時に、上記出力軸31を中立位置に保持できるようにしてもよい。
【0086】
上記図10(イ)及び図10(ロ)に示したものでは、いずれも、線形アクチュエータ26の出力軸31を軸心方向に振動させることにより、該出力軸31に連結部材36を介して取り付けてある動力伝達用ピン37が、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド9における長孔35の部分を上記出力軸31の軸心方向に押し引き駆動させるようにする。これにより、該各駆動ロッド9は、図10(イ)及び図10(ロ)にそれぞれ一点鎖線及び二点鎖線で示す如く、線形アクチュエータ26の支持容器27の蓋部27aの前面所要位置に設けたブラケット33の先端部のピン34を支点として揺動させられるようになることから、該各駆動ロッド9の他端部に取り付けてある翼本体10を、羽ばたき作動させることができるようになる。更に、このように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる際には、各線形アクチュエータ26の出力軸31の振動の振幅を、該出力軸31に取り付けてある連結部材36先端部の上記動力伝達用ピン37にて押し引き駆動される駆動ロッド9の長孔35の位置から支点、すなわち、上記ブラケット33の先端部のピン34までの距離L1と、該支点となるブラケット33の先端部のピン34から上記駆動ロッド9の胴体1外方へ突出した他端側における翼本体10の取付位置までの距離L2との比(L2/L1)に応じて増幅させて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dへ伝達することができる。このために、線形アクチュエータ26の出力軸31の振動の振幅が小さくても、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の振幅を大きく設定することが容易になり、したがって、線形アクチュエータ26の小型化を図るのに有利なものとすることができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、以下に述べるようにしたものも含むものである。たとえば、本発明の小型飛行装置のサイズは、適宜増減してもよい。胴体1は、たとえば、流線形のような本発明の小型飛行装置の飛行時に抵抗とならないような形状としてあれば、形状は自在に決定してよい。
【0088】
駆動ロッド9,9aと翼本体10を繋ぐ連結ロッド11の本数は、図1(イ)(ロ)及び図2、図6(イ)(ロ)及び図7では3本、図4(イ)(ロ)では1本として示してあるが、適宜増減してもよい。翼本体10は、軽量で且つ羽ばたき作動により本発明の小型飛行装置を飛行させるために必要とされる所要の揚力及び推進力を得られるような面積、及び、羽ばたき作動時にフェザリングを生じさせるための柔軟性を備えた平面状のものとしてあれば、横骨部材12の本数を増やしたり、縦骨部材13の本数を増減させてもよい。更には、一枚板状のものとする等、横骨部材12と縦骨部材13とフィルム14とからなる構成以外のものとしてもよい。又、形状は低アスペクト比の矩形状とすることが好ましいが、低アスペクト比でなくてもよく、その形状を多少変更してもよい。翼本体10と連結ロッド11は共に柔軟性を備えていることが望ましいが、いずれか一方の柔軟性のみで翼本体10にフェザリングを生じさせることができれば、他方は柔軟性を備えていなくてもよい。翼本体10を、連結ロッド11を介在させることなく駆動ロッド9,9aに直接取り付けるようにしてもよい。
【0089】
図1(イ)(ロ)乃至図3の実施の形態においては、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度を変更させる場合、軸受5に回転支持軸4を介して回動自在に支持させてある翼駆動用モータ3を、又、図6(イ)(ロ)乃至図9の実施の形態においては、軸受5に回転支持軸4を介して回動自在に支持させてある線形アクチュエータ26を、それぞれ角度制御用モータ7によりピニオン8、角度変更用ギア6を介して上下方向に回転させるものとして示したが、本発明の小型飛行装置を飛行させるときに各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに所望される迎角を取らせることができるように所要の角度範囲で回転でき、且つ軽量であれば、上記翼駆動用モータ3や線形アクチュエータ26を上下方向に回転させる機構は、ラック、ピニオン機構や、所要のアクチュエータによる直接あるいはリンクを介した押し引き機構、その他のいかなる機構を採用してもよい。
【0090】
図6(イ)(ロ)乃至図9の実施の形態、及び、図10(イ)(ロ)の実施の形態における線形アクチュエータ26の胴体1の外側寄りに取り付けてある回転支持軸4の軸受5を、線形アクチュエータ26を上下方向に回転させて角度姿勢を変更させるときにも、該軸受5が出力軸31に取り付けてある駆動ロッド9と干渉しないようにしてあれば、線形アクチュエータ26の出力軸31を垂直方向下向きとするときに翼本体10が水平方向前向きの姿勢となり、且つ線形アクチュエータ26の出力軸31を水平方向前向きとするときに翼本体10が垂直方向上向きの姿勢となるように設定してもよい。又、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させるための線形アクチュエータとしては、磁気回路29のギャップ29a内における磁界とコイル30との電磁的な相互作用を利用して出力を得るようにしてあるボイスコイル形の線形アクチュエータ26を例示したが、出力軸を軸心方向に振動させることができる形式としてあれば、上記ボイスコイル形の線形アクチュエータ26に代えて、線形超音波モータや電磁式の線形モータを用いるようにしてもよい。
【0091】
図10(イ)(ロ)の実施の形態において、線形アクチュエータ26のブラケット33に回動可能に取り付けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド9の基端側を、線形アクチュエータ26の出力軸31に、該出力軸31の軸心方向への振動により揺動できるように連結できれば、駆動ロッド9の長孔35と、出力軸31側に取り付けた動力伝達用ピン37とを係合させる構成以外のいかなる連結手段を採用してもよい。
【0092】
又、上記各実施の形態では、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動によって発生させる揚力や推進力の出力を増減させる場合には、羽ばたき速度を変化させるものとして説明したが、翼駆動用モータ3や駆動モータ25による交互正、逆転駆動の角度範囲を増減させたり、線形アクチュエータ26の出力軸31の振幅を増減させて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させるときの角度範囲あるいは振幅を増減することで、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力や推進力を増減させるようにしてもよい。
【0093】
位置センサ15は、本発明の小型飛行装置の位置を検出することができれば、GPSや磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ以外にも、加速度センサ等、任意のものを採用してもよい。姿勢センサ16は、たとえば、GPS受信機及びアンテナを3台ずつ用いる等、ジャイロ以外のものを採用するようにしてもよい。衝突防止センサ17は、飛行方向の前方に位置する障害物を検出できれば、光フローセンサ以外にも、超音波や赤外線のエコーにより障害物を検出するセンサ等、任意の形式のものを採用してもよい。
【0094】
本発明の小型飛行装置の飛行に支障を来たさないサイズ、重量としてあれば、ペイロード23は、本発明の小型飛行装置の所望の使用目的に応じて、任意のものとしてよい。したがって、本発明の小型飛行装置は、上記積載するペイロード23に応じた任意の使用目的に適用できる。
【0095】
更に、上記実施の形態ではコントローラ18,18a,18bは、姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能を有するものとして説明したが、これらは基本的な機能であり、本発明の小型飛行装置に、別の小型飛行装置との通信装置を設けて、コントローラ18,18a,18bに、別の小型飛行装置と相互に連係した働きをさせるための機能を追加したり、飛行に関わる別の外部情報を収集するための別のセンサを追加して、該センサの信号に基づいて上記姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能等にそれぞれ修正を加えることができるようにしたり、更に、上記ペイロード23に搭載する機器の制御機能を追加する等、任意の機能を併せ持つようにしてもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の小型飛行装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は垂直方向上向きの揚力を発生させている状態、(ロ)は前進飛行する状態をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図2】図1の装置の概略切断平面図である。
【図3】図1の装置の制御機構を示す概要図である。
【図4】本発明の実施の他の形態を示すもので、(イ)は各羽ばたき翼を垂直方向上向き姿勢として垂直方向上向きの揚力を発生させている状態を、(ロ)は前進飛行する状態をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図5】図4の装置の制御機構を示す概要図である。
【図6】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は各羽ばたき翼を垂直方向上向き姿勢として垂直方向上向きの揚力を発生させている状態を、(ロ)は前進飛行する状態をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図7】図6の装置の概略切断平面図である。
【図8】図7に用いられている線形アクチュエータとその支持構造を示すもので、(イ)は図7のA−A方向からの一部切断拡大図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視断面図である。
【図9】図6の装置の制御機構を示す概要図である。
【図10】(イ)(ロ)はいずれも図6の装置に用いる線形アクチュエータの他の形態を示すもので、図8(イ)(ロ)の応用例を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 胴体
2a,2b,2c,2d 羽ばたき翼
3 翼駆動用モータ
3a 出力軸
9,9a 駆動ロッド
10 翼本体
11 連結ロッド
16 姿勢センサ
18,18a,18b コントローラ
25 駆動モータ
25a 出力軸
26 線形アクチュエータ
31 出力軸
33 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体の左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設けて、各羽ばたき翼を羽ばたき作動が独立に制御できるようにしてなり、該各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなることを特徴とする小型飛行装置。
【請求項2】
胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設けて、各羽ばたき翼を羽ばたき作動が独立に制御できるようにしてなり、該各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなることを特徴とする小型飛行装置。
【請求項3】
胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、翼駆動用モータを、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を一体に保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸に、それぞれ取り付けた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項4】
胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各翼駆動用モータの出力軸の上下方向の角度の制御と、該各翼駆動用モータの交互の正、逆転駆動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた請求項3記載の小型飛行装置。
【請求項5】
胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、駆動モータを、出力軸が胴体の外方向に向くようにそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を一体に保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各駆動モータの出力軸に、該出力軸の軸心方向と平行になるように取り付けた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項6】
胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各駆動モータによる駆動ロッドの角度の制御による羽ばたき翼の平均迎角の制御と、該平均迎角を中心とした各駆動モータの交互の正、逆転駆動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた請求項5記載の小型飛行装置。
【請求項7】
胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、線形アクチュエータを、出力軸が上下方向又は前後方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸に、それぞれ取り付けた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項8】
胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、線形アクチュエータを、出力軸が上下方向又は前後方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項9】
胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御と、該各線形アクチュエータの出力軸の軸心方向の振動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた請求項7又は8記載の小型飛行装置。
【請求項10】
駆動ロッドと翼本体の前縁部との間に、上記駆動ロッドと直角方向に延びる柔軟性を備えた連結ロッドを介在させるようにした請求項3、4、5、6、7、8又は9記載の小型飛行装置。
【請求項11】
翼本体を、前縁部と直角方向に柔軟性を備えてなるものとした請求項3、4、5、6、7、8、9又は10記載の小型飛行装置。
【請求項12】
翼本体を低アスペクト比とした請求項3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の小型飛行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−27588(P2006−27588A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273810(P2004−273810)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(504182406)有限会社数理解析研究所 (6)
【Fターム(参考)】