説明

小屋裏の換気構造及び小屋裏の換気構造の形成方法

【課題】外壁に沿って吹き上がる風が換気経路に入ることを防止する小屋裏の換気構造を提供する。
【解決手段】小屋裏と外部とを連通する開口部16を覆うように、かつ下方を開放した状態で外壁10に取り付けられ、下端部から前記外壁10に向け、かつ、この外壁10との間に隙間をもって突設された第1水切り34を有する覆い部材30と、第1水切り34と開口部16との間に設けられ、外壁10から覆い部材30に向け、かつ、この覆い部材30との間に隙間をもって突設された第2水切り42と、第1水切り34の下方に設けられ、外壁10から外方に向け、かつ、覆い部材30以上に突出するようにして突設された第3水切り43とを備えた小屋裏の換気構造である。第3水切り43で外壁10に沿って吹き上がる風が換気経路に流入することを防ぎ、雨水や雪が風とともに小屋裏へ浸入することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小屋裏の換気構造及び小屋裏の換気構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小屋裏の換気構造としては、例えば特許文献1に示すものがある。この換気構造は,屋根の軒先に沿って取り付けられた破風と小屋裏との間に換気経路となる内部空間を設け、内部空間の下端に外部に通じる開口が壁面と面一に設けられるとともに、上下方向に間隔を空けて破風側と小屋裏側とに交互に水返しが設けられ、内部空間の上端に小屋裏に通じる換気開口部を設けたものである。
【特許文献1】特許第3183771号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の換気構造では、特に寒冷地において、吹雪のときに粉雪が風とともに外壁に沿って吹き上がり、換気経路から小屋裏へ浸入してしまう恐れがあった。
【0004】
本発明の課題は、外壁に沿って吹き上がる風が換気経路に入ることを防止する小屋裏の換気構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、小屋裏の換気構造であって、例えば図1に示すように、小屋裏と外部とを連通する開口部16を覆うように、かつ下方を開放した状態で外壁10に取り付けられ、下端部から前記外壁10に向け、かつ、この外壁10との間に隙間をもって突設された第1水切り(中間水切り34)を有する覆い部材(破風30)と、前記第1水切り(中間水切り34)と前記開口部16との間に設けられ、前記外壁10から前記覆い部材(破風30)に向け、かつ、この覆い部材(破風30)との間に隙間をもって突設された第2水切り(上部水切り42)と、前記第1水切り(中間水切り34)の下方に設けられ、前記外壁10から外方に向け、かつ、前記覆い部材(破風30)以上に突出するようにして突設された第3水切り(下部水切り43)とを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、小屋裏と外部とを連通する開口部16を覆うように、かつ下方を開放した状態で外壁10に取り付けられ、下端部から外壁10に向け、かつ、この外壁10との間に隙間をもって突設された第1水切り(中間水切り34)を有する覆い部材(破風30)と、第1水切り(中間水切り34)と開口部16との間に設けられ、外壁10から覆い部材(破風30)に向け、かつ、この覆い部材(破風30)との間に隙間をもって突設された第2水切り(上部水切り42)と、第1水切り(中間水切り34)の下方に設けられ、外壁10から外方に向け、かつ、覆い部材(破風30)以上に突出するようにして突設された第3水切り(下部水切り43)とにより、入り組んだ換気経路を形成し、小屋裏と屋外との間で空気が流れる方向を複雑に変え、雨水や雪の小屋裏への浸入を防ぐことができる。また、外壁10から外方へ突出する第3水切り(下部水切り43)を設けたことで、外壁10に沿って吹き上がる風が換気経路に流入することを防ぎ、雨水や雪が風とともに小屋裏へ浸入することを防ぐことができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の小屋裏の換気構造であって、前記第3水切り(下部水切り43)の前記外壁10から突出する長さは、前記第1水切り(中間水切り34)と前記第3水切り(下部水切り43)との高低差よりも長いことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、第3水切り(下部水切り43)の外壁10から突出する長さが、第1水切り(中間水切り34)と第3水切り(下部水切り43)との高低差よりも長いため、第1水切り(中間水切り34)と第3水切り(下部水切り43)との上下幅が深さに比して小さくなり、よって雨水や雪を一層換気経路に入りにくくすることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の小屋裏の換気構造であって、前記外壁10の表面には胴縁13が設けられており、この胴縁13によって形成された換気経路が前記開口部16に連通していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、外壁10の表面に胴縁13を設け、この胴縁13によって形成された換気経路が前記開口部16に連通しているので、外壁10の表面の任意の位置に、小屋裏に通じる換気孔12を設けることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の小屋裏の換気構造であって、前記胴縁13の上部には前記覆い部材と接合される笠木50が設けられており、この笠木50により外壁10と覆い部材との間が封止されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、胴縁13の上部に前記覆い部材と接合される笠木50を設け、この笠木50により外壁10と覆い部材との間を封止することで、換気経路に上から雨水や雪が浸入することを防ぐことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4に記載の小屋裏の換気構造であって、前記第2水切り(上部水切り42)及び前記第3水切り(下部水切り43)が、外壁10と平行に設けられる仕切材により封止されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、第2水切り(上部水切り42)及び第3水切り(下部水切り43)が、外壁10と平行に設けられる仕切材により封止されているので、換気経路と外壁10との間を水密に仕切ることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の小屋裏の換気構造を形成する方法であって、前記第2水切り(上部水切り42)、前記第3水切り(下部水切り43)、及び前記仕切材が一体化された第1の部材(水切り材40)を外壁10に取り付け、次いで前記覆い部材(破風30)を、前記第1の水切り(中間水切り34)が前記第2水切り(上部水切り42)と前記第3水切り(下部水切り43)との間の高さに配置され、かつ、上端が前記第1の部材(水切り材40)よりも上部に配置されるように外壁10に取り付けることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、第2水切り(上部水切り42)、第3水切り(下部水切り43)、及び仕切材が一体化された第1の部材(水切り材40)を、外壁10に取り付け、次いで覆い部材(破風30)を、第1の水切り(中間水切り34)が第2水切り(上部水切り42)と第3水切り(下部水切り43)との間の高さに配置され、かつ、上端が第1の部材(水切り材40)よりも上部に配置されるように外壁10に取り付ける少ない工程で換気構造を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小屋裏と外部とを連通する開口部を覆うように、かつ下方を開放した状態で外壁に取り付けられ、下端部から外壁に向け、かつ、この外壁との間に隙間をもって突設された第1水切りを有する覆い部材と、前記第1水切りと前記開口部との間に設けられ、前記外壁から前記覆い部材に向け、かつ、この覆い部材との間に隙間をもって突設された第2水切りと、前記第1水切りの下方に設けられ、前記外壁から外方に向け、かつ、前記覆い部材以上に突出するようにして突設された第3水切りとにより、入り組んだ換気経路を形成し、小屋裏と屋外との間で空気が流れる方向を複雑に変え、雨水や雪の小屋裏への浸入を防ぐことができる。また、外壁から外方へ突出する第3水切りを設けたことで、外壁に沿って吹き上がる風が換気経路に流入することを防ぎ、雨水や雪が風とともに小屋裏へ浸入することを防ぐことができる。
【0018】
また、第3水切りの外壁から突出する長さが、第1水切りと第3水切りとの高低差よりも長いため、第1水切りと第3水切りとの上下幅が深さに比して小さくなり、よって雨水や雪を一層換気経路に入りにくくすることができる。
【0019】
さらに、外壁の表面に胴縁を設け、この胴縁によって形成された換気経路が前記開口部に連通しているので、外壁の表面の任意の位置に、小屋裏に通じる換気孔を設けることができる。また、胴縁の上部に前記覆い部材と接合される笠木を設け、この笠木により外壁と覆い部材との間を封止することで、換気経路に上から雨水や雪が浸入することを防ぐことができる。
【0020】
また、第2水切り及び第3水切りが、外壁と平行に設けられる仕切材により封止されているので、換気経路と外壁との間を水密に仕切ることができる。さらに、この第2水切り、第3水切り、及び仕切材が一体化された第1の部材を、外壁に取り付け、次いで覆い部材を、第1の水切りが第2水切りと第3水切りとの間の高さに配置され、かつ、上端が第1の部材よりも上部に配置されるように外壁に取り付ける少ない工程で換気構造を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の小屋裏の換気構造の第1の実施の形態を示す要部断面図である。この建物は、無落雪屋根であり、内側に谷状に傾斜した勾配屋根の外周部に、上端が屋根よりも上へ突出する外壁10が設けられている。なお、この建物は、図1に示すように、枠材11a、21aに面材11b、11c、21bを貼り付け手形成され、必要に応じて図示しない桟材で補強された木質パネル(壁パネル11、屋根パネル21等)を組み合わせて建物躯体を形成するパネル工法によって建設されている。
【0022】
外壁10は、壁パネル11と、胴縁13と、外装材14等とから構成されている。壁パネル11の内周面には、図示しない屋根受け材が設けられており、勾配屋根を構成する屋根パネル21が支持されている。屋根パネル21の上面、及び、壁パネル11の内周面の屋根パネル21よりも上部は、防水材22により被覆されている。
【0023】
壁パネル11の外周面を構成する面材11bには、壁パネル11の内部に通じる換気孔12が設けられている。同様に、壁パネル11の内周面を構成する面材11cにも、屋根パネル21の下部の小屋裏に通じる図示しない換気孔が設けられている。
【0024】
面材11bの外側には、水平方向に間隔を空けて胴縁13が設けられている。胴縁13の外側は、上端を除き、外装材14で被覆されている。この外壁10の外周面の上端に、外装材14の代わりに、破風30(覆い部材)と、水切り材40(第1の部材)とからなる換気構造が設けられている。
【0025】
胴縁13の上端には、破風ブラケット35が取り付けられている。破風ブラケット35は、破風30を支持する。また、胴縁13の上部には、破風下地調整材36が設けられている。破風30は、破風下地調整材36の外周面に固定される固定部31と、固定部31から建物外方へ突設された突設板32と、突設板32の先端から壁パネル11と平行に垂下して配置される化粧板33と、化粧板33の下端から壁パネル11側に突設された中間水切り34(第1水切り)とから構成されている。
【0026】
胴縁13の破風ブラケット35が取り付けられた位置の下部には、水切り材40が取り付けられている。水切り材40は、壁パネル11の面材11bと平行に設けられる仕切板41と、仕切板41の上端及び下端から建物の外方に突設された上部水切り42(第2水切り)及び下部水切り43(第3水切り)とから構成される。
【0027】
上部水切り42は突設板32よりも低くかつ中間水切り34よりも高く配置される。上部水切り42と化粧板33との間には間隔が空けられる。また、中間水切り34と仕切板41との間にも間隔が空けられる。中間水切り34の内側端部は、上部水切り42の外側端部よりも建物の内側へ突出している。
【0028】
下部水切り43は中間水切り34よりも低く配置される。中間水切り34と下部水切り43との高低差は、建物の外方に突設された下部水切り43の突出長さよりも小さい。下部水切り43の外側端部は、化粧材以上に建物の外方に突出している。
【0029】
水切り材40とその下部の外装材14とは、止水材15により封止されている。このため、破風30の固定部31と、水切り材40の上部水切り42との間が、外壁10の内部から屋外へ通じる唯一の開口部16となる。
【0030】
中間水切り34と下部水切り43との間、中間水切り34と仕切板41との間、上部水切り42と中間水切り34との間、上部水切り42と化粧板33との間、上部水切り42と突設板32との間、及び、仕切板41または外装材14と壁パネル11の面材11bとの間を通して、小屋裏の空気を屋外に放出したり、外気を小屋裏へ取り入れたりすることができる。このように、破風30と水切り材40とにより、小屋裏と屋外とを連通させる換気経路が形成されている。
【0031】
壁パネル11の上部には、破風下地調整材36の内周面に接して笠木下地調整材51が設けられている。破風下地調整材36及び笠木下地調整材51の上面は、笠木50によって被覆されている。笠木50の建物内方の端部は、防水材22の上端と水密に接合されている。また、笠木50の建物外方の端部は、破風30の上端と水密に接合されている。このため、換気経路の上から雨水や雪が浸入することを防ぐことができる。
【0032】
ここで、上記の換気構造の形成方法について説明する。まず、壁パネル11の外側面に設けられた胴縁13の、上端から破風ブラケット35の取り付け高さだけ下がった位置に、水切り材40を取り付ける。次に、水切り材40よりも上部に破風ブラケット35を取り付ける。
【0033】
次に、胴縁13及び壁パネル11の上部に設けられた破風下地調整材36及び破風ブラケット35に、破風30を取り付ける。次いで、胴縁13及び壁パネル11の上部に笠木50を設け、笠木50と破風30とを水密に接合する。
【0034】
以降、笠木50と防水材22とを水密に接合し、また胴縁13及び壁パネル11の外側面を外装材14で被覆し、外装材14と水切り材40との隙間を止水材15で封止し、建物を完成させる。このように、本発明の換気構造は、建物の防水工の工程に水切り材40の取り付けと破風30の取り付け工程を加えるだけで容易に形成することができる。
【0035】
このような小屋裏の換気構造によれば、上述のように入り組んだ換気経路を形成することで、小屋裏と屋外との間で空気が流れる方向を複雑に変え、雨水や雪が小屋裏に入ることを防ぐことができる。
【0036】
また、外壁10から外方へ突出する下部水切り43を設けたことで、外壁10に沿って吹き上がる風が換気経路に流入することを防ぎ、雨水や雪が風とともに小屋裏へ浸入することを防ぐことができる。
【0037】
図2は本発明の他の実施の形態を示す要部断面図である。図2において、下部水切り43は、外壁10から建物の外方へ突設される上部板43aと、同じく外壁10から建物の外方へ突設される下部板43bと、外壁10と離間して平行に設けられ、上部板43a及び下部板43bの先端間を封止する下部化粧板43cとからなる。下部化粧板43cは、破風30の化粧板33と、ほぼ同じ形状及び大きさに形成されている。
【0038】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、下部水切り43の上部板43aと下部板43bとが上下に離間しており、上部板43aと中間水切り34との間が換気経路への入口となるため、雨水や雪が換気経路へ浸入しにくくなる。
【0039】
なお、以上の実施の形態においては、換気構造を外壁10の上端部に設けたが、本発明はこれに限らず、任意の位置に設けることができる。また、屋根の形状も、無落雪屋根に限らず、陸屋根や勾配屋根その他の形状であってもよい。
【0040】
また、本発明はパネル工法の建物に限らず、在来軸組工法やツーバイフォー工法、その他の任意の工法によって建設される建物にも適用することができることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の換気構造を示す鉛直断面図である。
【図2】本発明の換気構造を示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 外壁
12 換気孔
13 胴縁
16 開口部
30 破風
34 中間水切り
40 水切り材
42 上部水切り
43 下部水切り
50 笠木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小屋裏と外部とを連通する開口部を覆うように、かつ下方を開放した状態で外壁に取り付けられ、下端部から前記外壁に向け、かつ、この外壁との間に隙間をもって突設された第1水切りを有する覆い部材と、前記第1水切りと前記開口部との間に設けられ、前記外壁から前記覆い部材に向け、かつ、この覆い部材との間に隙間をもって突設された第2水切りと、前記第1水切りの下方に設けられ、前記外壁から外方に向け、かつ、前記覆い部材以上に突出するようにして突設された第3水切りとを備えたことを特徴とする小屋裏の換気構造。
【請求項2】
前記第3水切りの前記外壁から突出する長さは、前記第1水切りと前記第3水切りとの高低差よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の小屋裏の換気構造。
【請求項3】
前記外壁の表面には胴縁が設けられており、この胴縁によって形成された換気経路が前記開口部に連通していることを特徴とする請求項1または2に記載の小屋裏の換気構造。
【請求項4】
前記胴縁の上部には前記覆い部材と接合される笠木が設けられており、この笠木により外壁と覆い部材との間が封止されていることを特徴とする請求項3に記載の小屋裏の換気構造。
【請求項5】
前記第2水切り及び前記第3水切りが、外壁と平行に設けられる仕切材により封止されていることを特徴とする請求項1〜4に記載の小屋裏の換気構造。
【請求項6】
請求項5に記載の小屋裏の換気構造を形成する方法であって、前記第2水切り、前記第3水切り、及び前記仕切材が一体化された第1の部材を外壁に取り付け、次いで前記覆い部材を、前記第1の水切りが前記第2水切りと前記第3水切りとの間の高さに配置され、かつ、上端が前記第1の部材よりも上部に配置されるように外壁に取り付けることを特徴とする小屋裏の換気構造の形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate