説明

小板として形成される粒子

本発明は、小板として形成されたポリマー粒子およびそのような粒子の製造法に関する。本発明による粒子は、水性媒質中で既知の粒子よりも迅速な溶解速度を現す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小板として形成されるポリマー粒子、およびそのような粒子の製造法に関する。本発明の粒子は技術的に知られている粒子よりも水性媒質中で速い溶解速度を表す。さらに本発明は、有効成分を含んでなるポリマー粒子、製薬学的剤形およびそのような剤形の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
初めに
薬剤を処理するための超臨界流体(supercritical fluid:SCF)の用途は、この10年でかなりの関心を集めた。超臨界流体は、(a)天然資源から物質の抽出するために、(b)粒子工作のための、薬剤をポリマー性担体にカプセル化するための、活性化合物のラセミ混合物を分割するための、またはポリマーもしくはタンパク質の混合物を分画するための溶媒または貧溶媒(anti−solvent)として、(c)化学反応の反応媒質として、ならびに(d)細菌生物を滅菌するために使用することができる(非特許文献1、2、3)。製薬分野において超臨界流体技術を使用した物質処理の最も重要な利点には、生成物の純度、それらの独自な形態という意味における高品質、および処理できる物質が広範囲な点である。また二酸化炭素に基づく超臨界流体は環境に優しいが、通常の製薬学的処理には有機溶媒の排出および困難な残存溶媒の除去の両方を伴うことが多い。さらに超臨界二酸化炭素に伴う穏和な操作条件は、製薬学的応用が関与するタンパク質のような生体分子に特に好適である。示したように製薬学的応用において最も知られている超臨界流体は二酸化炭素である。これは非毒性、非可燃性、無味、不活性そして廉価であり、二酸化炭素は有機溶媒に代わる完全なものとなる。
【0003】
超臨界流体の元々の応用の1つ、すなわち粒子工作および粒子形成法は、製薬学的産業において益々広がっている(非特許文献4)。この高まった関心の主な理由の1つは、これらの技術が薬剤をポリマー性担体にカプセル化する能力、すなわち超臨界流体の使用を介する固体分散物の形成に見いだすことができる。
【0004】
さらに一層多くの薬剤候補が、より高分子量、高親油性、および低い水溶性を有する傾向があり、通常は良くない経口の生物学的利用性を生じる(非特許文献5、6、7)。水溶性が良くない薬剤候補の、経口で生物学的に利用可能な製剤を提供する方法の取り組みにおいて、有用な出発点は固体の溶解速度を記載するNoyes−Whitneyの式:
【0005】
【数1】

【0006】
であり、ここで溶解速度(dC/dt)は、D(拡散係数)、h(固体−液体界面での拡散層厚)、A(溶解媒質に暴露される薬剤の表面積)、V(溶解媒質の容量)、C(溶解媒質中での薬剤の飽和溶解度)、およびC(時間tでの薬剤濃度)により決定される。換言すると、溶解速度は(a)薬剤の表面積を上げることにより(マイクロ−またはナノサイジングを介して)、(b)拡散層厚を下げることにより(例えば表面活性剤の添加による湿潤性の改善を介して)、そして(c)薬剤の溶解性を改変することにより(固体分散(solid dispersion)、錯形成法(complexzation
approach)を介する超飽和薬剤溶液の形成を通して、あるいはさらに安定な塩、多形もしくは無定形物質を与えるための固体形態の操作により)上げることができる。
【0007】
一般に固体分散法は、水溶性を上げ、そして最終的には経口の生物学的利用性を上げるために可能な方法として受け入れられている(非特許文献8、9、10)。固体分散物を調製するために2つの常法が存在する:(a)溶媒法、および(b)ホットメルト法(非特許文献9、10)。溶媒法では、薬剤および担体を共通の有機溶媒に溶解し、続いて蒸発により溶媒を除去する。これは例えば溶液が噴霧ノズルを通ってチャンバーにポンプで送液され、次いで小液滴の微細ミストに分配される噴霧乾燥により行うことができる。溶媒はこれらの小液滴から迅速に蒸発し、そして粒子はサイクロトロンに回収される。ホットメルト法は担体および薬剤を融解することからなり、これにより固体分散物はメルトが冷却すると形成される。担体のみを融解し、そして融解した担体に結晶薬剤を溶解/分散することで十分な場合もある。
【0008】
ホットメルト法を行うために種々の方法が存在するが、過去10年間、ポリマー処理工業から生まれたホットメルト押出し法が幾つかの製薬学的応用に開発され、そしてそれ以来、益々広まっている(非特許文献11、12)。任意の溶媒法に優るホットメルト押出し法の利点は、そのような固体分散の形成が溶媒を含まない点であることは周知である(非特許文献13)。実際、溶媒法では、環境汚染、爆発補強および残存溶媒に関する多くの心配事が生じ得る。一方、ホットメルト押出し法の主な欠点の1つは、高温での長期滞留時間である。これはポリマー性担体に分散させる必要がある熱に不安定な化合物またはタンパク質には、高熱(hot stage)押出しの適用は排除されるだろう。
【0009】
これらの事実は、超臨界流体技術とホットメルト押出しとの間で可能な相乗効果を指摘している。超臨界流体の特性、すなわち(a)熱に不安定な活性物質用の溶媒、および(b)ポリマー性担体の可塑剤は、熱に不安定な化合物と使用するためのホットメルト押出し法の応用性を広げるだろう。したがってこの調査計画の目的は、加圧二酸化炭素をホットメルト押出し機に注入できるかどうか(押出し機の設定の設計の重要性)、およびそのままポリマー性担体の可塑剤および発泡剤として作用するかどうかを評価することである。
1.超臨界流体の物理化学
単一物質の熱力学状態は、3次元の相図をもたらす圧力(p)、温度(T)および容積(V)の変数により定まる。この相図の単純化された提示は、pおよびT軸を投影することにより得ることができる(非特許文献2、14)。このグラフは位相間:固体、液体およびガスの境界を表し、ここですべての3相は3重点で共存する。1つがガス−液体共存曲線に沿って上に移動すれば、温度および圧力が増す。温度が上がると、液体の稠密度が下がるようになり、そして圧力が上がればガスはより稠密になる。結局、2相の密度は同一となり、すなわちガスと液体との間の区別は曲線が臨界点の最後に来れば消える。臨界点の座標は、臨界温度および臨界圧力を指し、そしてこれは表1に示すように特定物質に別個を値を有する。
【0010】
表1および明細書を通して、以下の式:1バール=100kPaに従い単位「バール」はSI単位の‘Pa’に対応する。
【0011】
【表1】

【0012】
物質の臨界点に近付くと、その等温圧縮性(isothermal compressibility)は無限大に近付き、すなわちそのモル容量または密度は劇的に変化する。超臨界流体は、古典的溶媒の溶媒能を提供すると同時に、ガス状態に対するその近位を通して、より高い拡散能も提供することができる。表2に示す物理化学的パラメーターは、しばしば「稠密ガス」と見なされる超臨界流体の具体的特性を示す。
【0013】
【表2】

【0014】
超臨界流体の密度は、一定温度では圧力と共に上昇する。一方、密度は一定圧力で温度が上がれば低下する。臨界点に近づくと、密度変化は相当であり、したがって物質の溶解性は圧力および温度の微妙な調律により調整することができる。
【0015】
超臨界流体の拡散率は、温度を上げ、かつ/または圧力を下げることにより上昇する。ここでも拡散率の最大の変化は、臨界点付近で起こる。
【0016】
最後に、超臨界流体の粘度は密度に類似する様式で挙動する。換言すると、粘度は圧力を上げ、かつ/または温度を下げることにより上昇する。
【0017】
超臨界二酸化炭素の最も重要な利点には:(a)選択性(圧力および温度における小さな変化が特性に大きな変化を生じるので)、(b)残存溶媒が無いこと(超臨界流体は圧力および温度の解除でガス相に戻るので)、(c)二酸化炭素の臨界温度が低いこと(31℃)(これは熱に不安定な物質の処理を可能とする)、(d)非毒性で、不活性かつ非可燃性であること、および(e)廉価であることを含む。
【0018】
超臨界二酸化炭素の最も重要な欠点には:(a)比較的高圧(73.8バール)を必要とすること、(b)二酸化炭素の再利用には経費がかかり、しかも複雑な装置を必要とすること、および(c)製薬産業への応用は比較的新しく、したがって装置および投資に対する経費がかさむとを含む。
2.超臨界流体の製薬学的応用
今日、製薬産業において超臨界流体には多くの製薬学的応用が存在する。現在ではほとんどの産業上の製薬学的応用が天然産物の抽出/分画に集中し、例えば残存溶媒または有害生物防除剤のような他の不純物は、大規模で活性化合物から抽出される(ヤクヨウニンジンの調製の場合のように)(非特許文献3)。他の興味深い応用は、蒸気−相の二酸化炭素を使用したタンパク質(例えばインスリン)の分画である(非特許文献15)。超臨界流体カラムクロマトグラフィーおよび調製スケールのSCFクロマトグラフィーが多くの応用、例えば多価飽和脂肪酸のような脂質の分画に開発された(非特許文献16)。
【0019】
抽出/分画の外に、現在、粒子形成/工作は製薬分野における超臨界流体の最も知られた応用の1つである。この技術はさらに3つの主要な調査領域に副分割することができる:(a)活性物質の治療作用を改善または修飾するために、あるいはそれらの溶解性を強化するために活性物質の粉末の調製(マイクロ化:micronisation)、(b)薬剤含浸のためのマトリックスとしてのポリマーの生産、ならびに(c)改善された生物学的利用性(すなわち固体分散)または徐放性を有する薬剤送達系として、ポリマー性担体系を基材とした薬剤の調製。粒子形成のための多くの方法が文献で引用されているが、最も広く知られているのは以下である:
RESS
超臨界溶液の迅速な膨張(RESS)では、物質がSCFに溶解され、そして低圧容器に噴霧される。SCF中の生成物の溶解性は、非極性生成物の適用を制限するので低すぎてはならない(10−3kg/kg)。主な利点には有機溶媒の不存在下で、制御可能な粒子サイズの大変微細な粒子を生成する能力を含む。主な欠点には、物質の低い溶解性から高いガス/物質比が必要となり、そして大容量の加圧化装置の必要性がある。Tomasko et al.(非特許文献17)により記載されているL−ポリ乳酸(L−PLA)中のナプロキセンのカプセル化のような多くの例が文献に引用されている。
SAS/GAS
超臨界貧溶媒(SAS,GAS)法は、大変広範な有機溶媒中で可溶性の分子に応用することができる。目的の固体を溶媒に溶解し、その後、固体に対して低い溶解力(solvent power)を有するが、溶媒に混和性の超臨界流体を加えて固体を沈殿させる。この方法はバッチ様式(加圧容器中)で、または連続様式(溶液を超臨界流体中に噴霧する)で行うことができる。この技術の主な利点は、大変細かい粒子が制御可能な粒子サイズで得られることである。欠点は溶媒の使用である。ここでも多数の例が文献に記載されている。例えばDebenedetti et al.(非特許文献18)に記載されているように、GAS法によるインスリンの沈殿である。
SEDS
超臨界流体による溶液強化分散(SEDS)は、GAS法から誘導される。SEDSで、溶液およびSCFは特別に設計されたノズル中で組み合わされ、そして圧力容器中に噴霧される(非特許文献19)。
PGSS
超臨界溶液または懸濁液からの粒子生成(PGSS)では、圧縮可能な媒質をマイクロ化する物質中で可溶化する。次いでガスを含有する溶液が膨張ユニット中で急速に膨張し、そしてガスが蒸発する。この方法の利点には、狭い粒子サイズ分布の微細粒子の形成、および大変低いガスの消費が含まれる。例えばニフェジピンは、PGSS法によりマイクロ化することができる(非特許文献20)。
含浸
超臨界流体の高拡散率および調律可能な密度/溶解力は、含浸法の基礎を形成する。ポリマー性の非孔質マトリックスは超臨界流体に暴露された時に膨潤する傾向があり、したがって固体を通る溶質の貫通が強化される。多くの含浸応用がこれまでに報告され、それには製薬学用のパッチ、スポンジおよびカテーテルを含む(特許文献1)。
【0020】
薬剤を超臨界流体によりポリマー性担体に分散するための多くの方法が存在することは明らかである。これらの方法の幾つかは、主題のわずかな変更を表しており、そしてそれらはすべてそれらの特定の利点および欠点を有する。この調査分野は比較的新しく、そして超臨界流体処理によりポリマー中に薬剤を分散させる新規方法は、製薬学の研究グループにより高度に求め続けられている。この観点から、超臨界流体およびホルトメルト押出しを合わせた可能性を探査し、そして調査することが決定された。
3.ホットメルト押出しおよび製薬学的応用
ホットメルト押出しはポリマー工業において通常の処理様式である。約35年前、この方法はSpeiser(21)により製薬学的応用に適合された。しかしわずかこの10年で、この方法は製薬学的産業において固体分散物を調製するための価値ある技術として今では一般的に適合されるような重要な関心を得るようになった。
【0021】
この方法は4つの観点に分けることができる:(a)押出し機への粉末の供給、(b)ポリマーまたは薬剤/ポリマー塊の運搬、そしてダイへの搬入、(c)ダイを通る流れ、および(d)ダイから出て、そして下流の処理(非特許文献12、22、23)。重要な考察には:粉末の流動性、剪断力、滞留時間、圧力、冷却および成形が含まれる。一般に、押出し機はバレルの内側の少なくとも1つの回転スクリューからなる。バレルの末端に連結された末端−ダイプレートは、押出される生成物の形状を決定する。バレルは電気的または液体に基づく(油、蒸気)ヒーターを介して加熱される。バレルにより供給される熱の外に、回転するスクリューとバレルの壁との間の摩擦があり、実質的にさらなる量の熱を生成する。多くの市販されている押出し機はモジュール設計を有し、すなわちスクリュー形状の交換可能な区分または選択を有する。これにより供給、輸送、計量供給ゾーンの形状を改変でき、これが標準から高剪断押出しの変更を可能にする。
【0022】
二軸スクリュー押出し機は、平行するシャフトに取り付けられた2つの撹拌機アッセンブリーを有する(非特許文献12)。これらのシャフトはスプリッター/レデューサーギアボックスを通って駆動し、そして同方向(同時回転)または反対方向(対向回転)に回転する。スクリューはしばしば組み合い(intermeshing)、これは各撹拌機要素が隣接するシャフトの対応する要素の表面、および混合チャンバーの内面の両方と相互作用することを意味する。二軸スクリュー押出し機のスクリューは、輸送要素(生成物を運搬するために使用される)および混練要素(生成物を混合するために使用される)の使用により修飾可能である。これらの混練要素は異なる角度に配置することができ、多少の混合を提供し、次いでより高いまたは低い剪断力を提供する。一般に同時回転シャフトは、スクリューの表面が互いに向き合って移動するので、より良い混合能を有する。したがって同時回転二軸スクリュー押出し機は、固体分散物が来て、そして薬剤をポリマー性担体に混合/溶解する時に対向回転装置より好ましい。またスクリューの形状は、混合ゾーンが混合の程度を決定するので固体分散物を生成するために重要である。押出し法には温度設定、供給速度およびスクリュー速度のような種々のパラメーターを細かく監視し、そして理解する必要がある。これらのパラメーターは一緒に押出し機中のメルトの粘度を決定し、そしてスクリューとバレル壁との間の摩擦により生成される剪断速度(機械のトルクとして知られている)、すなわち押出し機中の粘度の結果としてギアボックスが測定する抵抗を決定する。
【0023】
ホットメルト押出し法の多数の製薬学的応用が技術文献に記載され、これはBreitenbach(非特許文献12)により徹底的に総説された。そのような1つの例は、Verreck et al.およびSix,et al.により与えられ、彼らはポリマー性担体としてHPMCを含む水溶性が良くない薬剤であるイトラコナゾールのホットメルト押出しを記載する(特許文献2、非特許文献24、25、26)。40/60重量%の薬剤/ポリマー比でHPMCを用いて溶融押出しした時、この薬剤物質について溶解および生物学的利用性の両方が有意に強化された。イトラコナゾールのような薬剤について、熱分解は観察されなかった。しかし熱に不安定な多くの薬剤が存在する。これらの場合、可塑剤を使用して熱処理を可能とするために処理温度を十分に下げない限り、ホットメルト押出し法は応用できない。典型的にはこれらの可塑剤はポリマー含量の5〜30重量%の濃度範囲で使用される。これは最終的な投薬重量に加えられる従来の可塑剤が、薬剤の投薬用量が高い場合、許容できないほどに高くなり得るので、大きな欠点である。したがって最終的な製剤に存在することなく、処理温度を下げる材料を有することが有利となる。ポリマー性担体を可塑化し、そして圧力の解放でガスを膨張させ、そしてポリマーから脱出して気泡を形成する超臨界流体の使用がこの目的に調査されるだろう。
4.ホットメルト押出しにおける超臨界流体の応用
ホットメルト押出しに対する超臨界流体の応用は、ポリマー科学では新しくない。この10年間で、この分野における調査は益々注目されてきた。一般に応用は、超臨界流体による粘度の減少および気泡の形成に集中した。
【0024】
超臨界二酸化炭素をポリマーメルトに加えると、メルトの粘度を下げることができる(非特許文献27)。これは2つのメカニズムを介して起こる:第1に二酸化炭素がポリマー鎖の間に吸着し、自由容積(free volume)の増加を生じ、そして鎖のもつれを減らす。第2に二酸化炭素はメルトの粘度をさらに下げる分子潤滑剤として作用する。
【0025】
Elkovitch et al.は、一軸スクリュー押出し機で測定した時、超臨界二酸化炭素によるポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の粘度減少を報告した(非特許文献28、29)。彼らは、PMMAについては70%、そしてポリスチレンについては40〜50%の粘度減少を報告した。さらに彼らは、二軸スクリュー押出し機中のPMMAとポリスチレンとのブレンドを調査し、そして超臨界または臨界未満の二酸化炭素を注入することにより、2種のポリマーの粘度減少によるブレンドの改善を観察した(非特許文献29)。Lee et al.は、ポリエチレン/ポリスチレン(PE/PS)ブレンドの粘度減少を調査し、そして彼らも二軸スクリュー押出し機中で測定した時に、有意な可塑化効果を観察した(非特許文献30)。彼らはさらに押出されたポリマー/ガス混合物がダイから出る時に観察される気泡の形成を調査した。孔サイズは圧力および二酸化炭素濃度を変えることにより改変できることが分かった。また他のグループも、溶融押出し機のダイから出る時の気泡の形成を調査した。例えばPark et al.は、一軸スクリュー押出し機を使用したポリスチレンの連続的なミクロ−多孔性の(micro−cellular)気泡形成を研究した(非特許文献31)。
【0026】
これらの例は、超臨界流体の一軸スクリューならびに二軸スクリュー押出し機の両方への注入が実施可能なはずであることを証明している。しかし二軸スクリュー押出し機を使用する場合、以下の理由から方法を至適化する時には最適なスクリューの設計が考慮され
なければならない(非特許文献30):(a)安定な注入を得るために、二酸化炭素の注入口で圧力の変動(fluctuation)を最小にしなければならない。したがって混練要素に代えて輸送要素が注入部位では使用されるべきである。(b)注入された二酸化炭素は上流の開口部から漏出しないようにすべきであり、これは逆(reversed)要素を使用したメルトシールにより達成される。(c)超臨界二酸化炭素が確実にポリマーに溶解したままとなるように、下流の圧力は十分に高いレベルに維持されるべきである。これは高いダイ抵抗を提供することにより得ることができる。(d)二酸化炭素の完全な溶解は、下流の超臨界流体導入の混合を改善するために混練要素を使用することにより確実にすることができる。
【0027】
一軸スクリュー押出し機に関する実験設定は、Elkovitch,et al.により提案された(非特許文献28)。二酸化炭素がガスシリンダーから供給され、冷却されて液体の二酸化炭素を得、そしてシリンジポンプを使用して押出し機に送液される。
5.製薬学用ポリマー
ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル64(PVP−VA64)およびEudragit
E100POを、実験のモデルポリマーとして使用した。
【0028】
PVP−VA64は、イソプロパノール中で6部のビニルピロリドンおよび4部の酢酸ビニルのフリーラジカル重合により製造される。PVP−VA64は水、ならびにエタノール、イソプロパノール、ブタノールおよび塩化メチレンのような多数の有機溶媒中で可溶性である。PVP−VAは無定形ポリマーであり、約103℃のガラス転移を有する。225℃より高い温度で熱分解が始まる。Eudragit E100POは、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、およびn−ブチルメタクリレートから作られたポリメタクリレートである。Eudragit E100POは、pH5.0までの酸性溶液中で可溶性であり、そしてpH5より高いpHで膨潤する。このポリマーはイソプロパノール、アセトン、メタノールおよびエタノールを含む多数の有機溶媒中で可溶性である。200℃より高い温度で熱分解が始まる。Eudragit E100POは無定形ポリマーであり、約50℃のガラス転移を有する。
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【非特許文献27】J.S.Chiou,J.W.Barlow,D.R.Paul,CO2によるガラス状ポリマーの可塑化(Plasticization of glassy polymers by CO2),J.Appli.Polym.Sci.1985,30,2633−2642
【非特許文献28】M.D.Elkovitch,L.J.Lee,D.L.Tomasko,ポリマー処理における超臨界二酸化炭素の添加によるポリマー粘度の減少(Viscosity reduction of polymers by the addition of supercritical carbon dioxide in polymer processing),ANTEC,1998,1407−1410
【非特許文献29】M.D.Elkovitch,D.L.Tomasko,L.J.Lee,超臨界二酸化炭素が補助するポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)のブレンド(Supercritical carbon dioxide assisted blending of polystyrene and poly(methyl methacrylate)),Polym.Eng.Sci.1999,39(10),2075
【非特許文献30】M.Lee,C.Tzoganakis,C.B.Park,超臨界二酸化炭素を用いたPE/PSブレンドの押出し(Extrusion of PE/PS Blends With Supercritical Carbon Dioxide),Polym.Eng.Sci.1998,38,1112−1120
【非特許文献31】C.B.Park,D.F.Baldwin,N.P.Suh,マイクロセルポリマーの連続処理におけるセルヌクレーションに及ぼす圧力低下速度の効果(Effect of Pressure Drop Rate on Cell Nucleation in Continuous Processing of Microcellular Polymers),Polym.Eng.Sci.1995,35,432−440
【発明の開示】
【0029】
II.発明の要約
本調査計画の目的は、超臨界流体と製薬学的に許容され得るポリマーのホットメルト押出しとを組み合わせた可能性を探査し、そして調査することである。ポリマーの可塑剤として加圧ガスを注入する影響を調査し、加圧ガスの膨張で気泡が形成する能力も調査する。
【0030】
押出し機の中に圧力を形成し、そして二酸化炭素をポリマー性担体に溶解することができるようにするために、最適なスクリューの形状の重要性を仮定して、最初の実験は押出し機の設定およびスクリュー形状の至適化に集中した。これらの実験について、PVP−VA64をモデルポリマーとして使用した。したがって種々のスクリュー形状および押出し機の設定を試験し、そして評価した。
【0031】
いったんスクリューの形状および押出し機の設定を選択したら、次の段階は可塑化およびポリマー性担体中の二酸化炭素の気泡形成能について種々のパラメーター設定の効果を
評価することであった。これはPVP−VA64ならびにEudragit E100 POの両方について行った。
【0032】
さらに、二酸化炭素を用いた処理前および後のポリマーの物理化学的特性を調査した。
【0033】
さらに、二酸化炭素を押出し中に注入した時に押出し中の処理パラメーター、ならびにイトラコナゾール/PVP−VA64 10/90重量/重量および40/60重量/重量のメルト押出し物の物理化学的特性を調査した。
【0034】
本発明は、ポリマーPVP−VA60またはポリマーEudragit−E100−POの粒子に関し、該粒子は小板として形成されることを特徴とする。小板は微小な(minute)平板化粒子であり、すなわち粒子の厚さは長さおよび幅よりも小さい。
【0035】
特に、本発明はポリマーPVP−VA60の粒子に関し、ここで比表面積は0.350m/gよりも大きい。
【0036】
加えて本発明は、ポリマーEudragit−E100−POの粒子に関し、ここで40(重量/重量)%未満が100μよりも小さい。
【0037】
さらに本発明はポリマーPVP−VA60またはポリマーEudragit−E100−PO、および有効成分を含んでなる粒子に関し、該粒子は小板として形成されることを特徴とする。
【0038】
具体的には本発明は有効成分がイトラコナゾールである粒子に関する。より詳細には、本発明はイトラコナゾール対ポリマーの重量対重量比が約10/90〜約40/60の範囲である粒子に関する。
【0039】
これから記載するように、本発明の粒子は改善された圧縮性を有し(タップ(tapped)密度−バルク密度/タップ密度の式により与えられる);特に25%よりも大きな圧縮性を有する。さらに粒子は容易に粉砕される。
【0040】
本発明のさらなる観点は、治療に有効な量のこれまでに定めた粒子を含んでなる製薬学敵剤形に関する。
【0041】
また本発明は、これまでに定めたような粒子を製薬学的に許容され得る賦形剤と完全に混合し、そしてこのようにして得られた混合物から治療に有効な量の粒子を含んでなる製薬学的剤形を作成する工程を含んでなる、そのような製薬学的剤形の調製法に関する。
【0042】
さらに本発明は、
−ポリマー、またはポリマーおよび有効成分の混合物を溶融押出し機に供給し、
−ポリマー、またはポリマーおよび有効成分の混合物を、輸送要素および混練要素で修飾されたスクリューにより溶融押出し機のバレルを通して輸送し、
−加圧ガスを、バレルに配置された口を通して溶融押出し機のバレルに注入し、
−ポリマー、またはポリマーおよび有効成分の混合物、および加圧ガスを臨界未満または超臨界条件下で混合し、
−ポリマー、またはポリマーおよび有効成分の混合物をダイプレートの後で膨張させ、そして
−押出し物を粉砕する、
工程を含んでなり、加圧ガス注入部位でスクリュー形状に逆輸送要素を配置することにより該部位の前にメルトシールを作成することを特徴とする、これまでに定めた粒子の調製
法に関する。
III.発明の詳細な説明
1.材料
イトラコナゾールは、ヤンセンファーマシューティカ(Janssen Pharmaceutica)N.V.から得た(純度>99%)。
【0043】
PVP−VA64はBASF(BASF、ルドヴィングハーフェン、ドイツ)から得た。実験中、以下のロット番号を使用した:ロット10232285、10237176および93875968−E0。
【0044】
Eudragit E100POはローム(Rhom)(ローム、ダルムシュタット、ドイツ)から得た。実験中、以下のロット番号を使用した:ロット0410231047。CO99.9容量%、純度3.0)は、ディップチューブ(メッサー(Messer)、マクヘレン、ベルギー)でガスシリンダーに供給した。
2.方法
2.1.溶融押出し
溶融押出し試験は、レイストリッツ(Leistritz) Micro18同時回転連動型の二軸スクリュー押出し機で行った。スクリューの直径は18mmであり、そして直径に対する長さの比(L/D)は40であり、各5L/Dの4バレル区分で、そして1バレル要素が20L/Dに分けた。第1バレル区分は水冷のみであった。これは供給口で材料の融解を防止するために行った。これは粉末供給器直下で材料が集まることにより原料の封鎖を引き起こす恐れがあった。すべての他のバレル要素は独立して加熱および冷却された。バレルの最後に、フランジおよびダイプレートが設置され、これらも別個に加熱された。別個の加熱および冷却はバレル全体の温度をより良く制御するために有利である。それぞれ新たな条件で、少なくとも10分間かけて平行に到達させた後、生じたトルク、圧力等を記録した。
【0045】
バレル内側の圧力は、3つの位置で測定した:CO注入口の前および後、およびフランジ中。I.3およびI.4ですでに述べたように、押出し機の設定およびスクリュー形状の至適化は極めて重要である。したがって実験は、図1および2に図解で示すような種々の押出し機の設定で行った。また幾つかのスクリュー形状も調査した(図3および4)。
【0046】
ポリマーは、重量供給装置システム中でK−Tronロス(loss)を用いて供給した(ケイ−トロン(K−Tron)、スイス)。この重量計量供給システムは、ポリマーを押出し機に正確に供給する。多くの粉末供給装置は種々の材料を個別に計量供給することが可能である。実験では、1つの純粋なポリマーを押出すので1つの供給装置のみを使用した。図3および4に示すスクリュー形状は、通常、以下の用語により説明される(34):
−例えばGFA−2−10−30:G=同時回転、F=運搬、A=かみ合いなし(free meshing)、2=スクリュー山の数、10=ピッチ、30=スクリュー要素の長さ
−例えばKB4−2−20/30゜F:KB=混練ブロック、4=混練要素の数、2=スクリュー山の数、20=混練ブロックの長さ、30゜=個々の混練区分の捩り角度(twisting angle)、F=運搬(L=後方運搬)
2.1.1.CO注入無しでのPVP−VA64の押出し
二酸化炭素の注入無しでPVP−VA64を用いた第1組の実験は、図1および3で具体的に説明する押出し機の設定1およびスクリュー形状1を使用して行った。使用したパラメーターの設定を表3に提示する(結果および考察の章を参照にされたい)。実験1から4は、速度を50rpm〜250rpmに次第に上げることによりスクリュー速度の影
響を調査するために行った。実験5から10は、0.5〜3kg/時間の範囲内で供給速度の影響を調査するために行った。最後に実験11から15は温度の影響を評価するために行った。実験5および6は2回行い、他のすべての実験は1回行った。
【0047】
次の組の実験は、図2および4で具体的に説明するように修飾されたスクリュー形状および押出し機の設定を用いて行った。パラメーターの設定は表4に提示する(結果および考察の章を参照にされたい)。ここでも実験1から4はスクリュー速度の影響を調査するために行い、実験5から10は供給速度の影響を調査するために行い、そして実験11から15は温度の影響を評価するために行った、3つの実験は2回行った。
【0048】
二酸化炭素の注入無しの第3組の実験は、最初の2つのゾーン(図2のゾーン1および2)を高温、すなわち180℃に保持する一方、他のすべてのゾーンを次第に下げてバレルの最小処理温度を決定するために行った。供給速度(1kg/時間)およびスクリュー速度(100rpm)は実験を通して一定に維持した。実験は図2および4で具体的に説明するスクリューの形状および押出し機の設定で行った。パラメーターの設定は表5に提示する(結果および考察の章を参照にされたい)。実験は1回行った。
2.1.2.CO注入を用いたPVP−VA64の押出し
二酸化炭素を加圧し、そしてISCO260Dシリンジポンプ(イスコ(ISCO)、米国)を使用して押出し機に注入した。COはガスシリンダーからディップチューブを用いて液体(T=20℃;P=56バール)として提供され、そして冷却浴中で螺旋チューブを用いて1.5℃に冷却された(アナリス ヘト(Analis Heto)、CBN8−30、デンマーク)。冷却媒質はイソプロパノール/水 50/50容量/容量の混合物であった。ポンプのシリンダーも1.5℃に冷却した。シリンジポンプは2つの計量様式、一定圧力速度(CPR)または一定流速(CFR)で操作することができる。CPRは特定の圧力を溶融押出し機に向けて送達することができるので有利である。一方、CFRは押出し機に注入される二酸化炭素の量が正確に分かる点で有利である。実験はCPRならびにCFRを両方で行って、両方の計量様式の間に差異があるかどうかを調査した。二酸化炭素はバレル区分3に位置する注入ノズルを介してバレルに注入した。
【0049】
最初のスクリュー形状および押出し機の設定を、図1および3に示す。第1設定の実験は、20から50バールの間のCPRで二酸化炭素を注入する影響を評価するために行った。温度設定は180℃(すべてのゾーン)に維持し、スクリュー速度は100から150rpmの間、そして供給速度は1kg/時間に維持した。これらの実験を2回行った。
【0050】
二酸化炭素の注入を用いた第2組の実験では、修飾したスクリュー形状および押出し機の設定を図2および4で具体的に説明するように適用した。加圧COの注入はここでも30から55バールの間のCPR、180℃の温度設定(すべてのゾーン)、150rpmのスクリュー速度、および1kg/時間の供給速度で行った。これらの実験は2回行った。
【0051】
また二酸化炭素の注入を用いた第3組の実験も、図2および4で具体的に説明するスクリュー形状および押出し機の設定を使用して行った。温度設定はゾーン1および2については180℃に維持し、一方、すべての他のゾーンの温度設定は180℃と120℃の間で次第に下げて、二酸化炭素の注入下で最小処理温度を見いだした。二酸化炭素は、35から55バールの間のCPRで注入した。スクリュー速度および供給速度は、それぞれ100rpmおよび1kg/時間で一定に維持した。パラメーターの設定は表6に示す(結果および考察の章を参照にされたい)。実験は2回行った。
【0052】
次の組の実験は、種々のパラメーター設定(供給速度、スクリュー速度および二酸化炭素圧)がトルク、ポリマーの気泡形成、押出し機中の圧および他の因子に及ぼす影響を評
価するために行った。実験は、図2および4で具体的に説明するスクリュー形状および押出し機の設定を使用して行った。表7(結果および考察の章を参照にされたい)は、140℃でのパラメーター設定を示す(ゾーン1および2は、180℃に維持した)。実験1〜3は、二酸化炭素を注入しながら次第に温度設定を下げて押出し機中に定常状態の条件が達成されるように行った。定常状態から、実験4〜7は35から50バールの間の二酸化炭素圧の影響を調査するために、実験8〜10は100から200rpmの間のスクリュー速度の影響を調査するために、そして実験11〜16は0.5から1.5kg/時間の間の供給速度を調査するために行った。これらの実験は1回行った。
【0053】
同様の実験を130℃を温度設定で行い、これにより二酸化炭素を35から60バールの間のCPR、そして120℃で60から75バールの間の注入圧で注入した。他のパラメーター、スクリュー速度および供給速度は、それぞれ100rpmおよび1kg/時間で一定に維持した。これらの実験は1回行った。
【0054】
最終組の実験は、CPRの代わりにCFR下でCOを注入する効果を評価するために行った。実験は、図2および4で具体的に説明するスクリュー形状および押出し機の設定を使用して行った。表8は140℃でのパラメーター設定を示し、図9は130℃での設定を示す(ゾーン1および2は180℃の一定に維持した)(結果および考察の章を参照にされたい)。二酸化炭素は0.5から30ml/分の間で変動するCFRで注入した。スクリュー速度および供給速度は、それぞれ100rpmおよび1kg/時間に維持した。実験は1回行った。
【0055】
二酸化炭素処理後のポリマーの物理化学的特性決定用のサンプルを調製するために、以下の条件を使用した:温度を140℃に(180℃に維持したゾーン1および2を除く)、供給速度を1kg/時間に、そしてスクリュー速度を100rpmに設定した。
2.1.3.(a)CO注入無しでのイトラコナゾール/PVP−VA64 10/90、および(b)CO注入無しでのイトラコナゾール/PVP−VA64 40/60の押出し
二酸化炭素の注入無しの実験は、機械のトルクに及ぼす温度設定の影響を調査するために行った。パラメーターの設定を表13および19に提示する(結果および考察の章を参照にされたい)。
【0056】
実験1aから4aおよび1bから5bは温度の影響を評価するために行い、これにより温度はすべてのゾーンで次第に低下させた。実験5aから8aおよび6bから10bは温度の影響を調査するために行い、最初の2つのゾーンは180℃に維持した。これらすべての実験は少なくとも2回行った。
2.1.4.(a)CO注入を用いたイトラコナゾール/PVP−VA64 10/90、および(b)CO注入を用いたイトラコナゾール/PVP−VA64 40/60の押出し
二酸化炭素を加圧し、そしてISCO 260Dシリンジポンプ(イスコ、米国)を使用して押出し機に注入した。COは液体(T=20℃;P=56バール)としてガスシリンダーからディップチューブを用いて提供され、そして冷却浴中で螺旋チューブにより1.5℃に冷却された(アナリス ヘト、CBN8−30、デンマーク)。冷却媒質はイソプロパノール/水 50/50容量/容量の混合物であった。またポンプのシリンダーも1.5℃に冷却した。実験はCPRで行った。二酸化炭素はバレル区分3に位置する注入ノズルを介してバレルに注入した。
【0057】
第1組の実験は、押出し機のトルクに及ぼす注入二酸化炭素の効果を調査するために行った。すべての温度ゾーンは、それぞれ180℃から140℃の間、160℃から125℃の間に次第に下げて、最小処理温度を見いだした。二酸化炭素は35から40バールの間のCPRで注入した。スクリュー速度および供給速度は、それぞれ100rpmおよび1kg/時間で一定に維持した。さらなる実験組では、最初の2つのゾーンを高温(180℃)で行った。パラメーターの設定は表14および15に示す(結果および考察の章を参照にされたい)。実験は2回行った。
2.1.5.CO注入無しでのEudragit E100 POの押出し
Eudragit E100 POを用いたすべての実験は、図2および4で具体的に説明するスクリュー形状および押出し機の設定を使用して行った。このスクリュー形状および押出し機の設定は、PVP−VA64を使用しテ行った事前の実験に基づき選択した。
【0058】
二酸化炭素の注入無しでEudragit E100 POを用いた実験は、温度設定、供給速度およびスクリュー速度が機械のトルクに及ぼす影響を調査するために行った。パラメーターの設定を表26に提示する(結果および考察の章を参照にされたい)。
【0059】
実験1から5は50〜250rpmの範囲のスクリュー速度の影響を調査するために、そして実験6〜10は0.5〜2.5kg/時間の範囲の供給速度の影響を調査するために行った。実験11から14は温度の影響を評価するために行い、これにより温度はすべてのゾーンについて次第に下げた。一方、実験15から20は温度の影響を評価するために行い、最初の2つのゾーンを180℃に維持した。
【0060】
これらすべての実験は2回行った。
2.1.4.CO注入を用いたEudragit E100 POの押出し
二酸化炭素は第2.1.2章に記載したように押出し機に注入した。
【0061】
Eudragit E100 POについて、二酸化炭素の注入を用いた第1組の実験は、押出し機のトルクに及ぼす注入二酸化炭素の効果を調査するために行った。温度設定はゾーン1および2について180℃の一定に維持する一方、他のすべてのゾーンの温度設定は、180℃から110℃の間に次第に下げて、最小処理温度を見いだした。二酸化炭素は20から45バールの間のCPRで注入した。スクリュー速度および供給速度は、それぞれ100rpmおよび1kg/時間で一定に維持した。パラメーターの設定は表27に示す(結果および考察の章を参照にされたい)。実験は2回行った。
【0062】
次の組の実験は、種々のパラメーター設定(供給速度、スクリュー速度および二酸化炭素圧)がトルク、ポリマーの気泡形成、押出し機中の圧および他の因子に及ぼす影響を評価するために行った。表28(結果および考察の章を参照にされたい)は、120℃でのパラメーター設定を示す(ゾーン1および2は、180℃で一定に維持した)。実験1〜6は、35から70バールの間の二酸化炭素圧の影響を調査するために、実験7〜9は100から200rpmの間のスクリュー速度の影響を調査するために、そして実験10〜12は0.5から1.5kg/時間の間の供給速度を調査するために行った。これらの実験は1回行った。
【0063】
最終組の実験は、CPRの代わりにCFR下でCOを注入する効果を評価するために行った。表29は120℃でのパラメーター設定を示す(ゾーン1および2は180℃の一定に維持した)。二酸化炭素は0.5から15ml/分の間で変動するCFRで注入した。スクリュー速度および供給速度は、それぞれ100rpmおよび1kg/時間の一定に維持した。実験は1回行った。
【0064】
二酸化炭素処理後のポリマーの物理化学的特性決定用のサンプルを調製するために、以下の条件を使用した:温度を120℃に(180℃に維持したゾーン1および2を除く)、供給速度を1kg/時間に、そしてスクリュー速度を100rpmに設定した。
2.2粉砕
分析前に、加圧二酸化炭素で処理したポリマーサンプルを、Bamixラボスケールミル(バーミックス(Bamix)、メットレン、スイス)を使用して粉砕した。PVP−VA64を30秒間粉砕し、そして500μm未満の分画(ASTM E11−61:35メッシュ/インチ)をさらなる特性決定に保持した。
【0065】
Eudragit E100 POも30秒間粉砕し、そして250μm未満の分画(ASTM E11−61:60メッシュ/インチ)をさらなる分析に保持した。
【0066】
イトラコナゾール/PVP−VA64 10/90および40/60も30秒間粉砕し、そして250μm未満の分画(ASTM E11−61:60メッシュ/インチ)をさらなる分析に保持した。
2.3.変調型示差走査熱量分析
変調型示差走査熱量分析(Modulated Differential scanning calorimetry:MDSC)は、加圧二酸化炭素の注入を用いた溶融押出しの前および後に熱的特性を評価するために行った。両ポリマーは無定形であり、したがってそれらはガラス転移を有し、これは高と低との間の領域の分子移動性の転移である。ガラス転移は、熱流を温度に対してプロットした時のDSCプロファイル中に屈曲として観察される。しばしばガラス転移はエンタルピー緩和を伴い、これはガラス転移と重なる吸熱シグナルとして見られる。さらにこれらのポリマーは親水性であり、したがってそれらは有意な量の水を吸収したかもしれない。また水の蒸発も吸熱プロセスである。これらのシグナルはガラス転移の解釈を難しくする。したがって異なる熱反応(thermal event)が可逆的および非可逆的転移に関して解明できるように、MDSCを使用した。ガラス転移は可逆的シグナルとして観察されるが、エンタルピー緩和および溶媒蒸発は非可逆的シグナルで見られる。
【0067】
測定はTAインスツルメント(Instruments)の変調型DSC Q1000示差走査熱量分析器および熱分析コントローラー(TAインスツルメント、ニューキャッスル、デラウエア州、米国)を使用して行った。冷却はTAインスツルメント冷蔵冷却システム(RCS、TAインスツルメント)で提供された。データは、常駐TA Q−シリーズソフトウェアを使用して機械的に処理した。カリブレーションは、参照物質としてインジウム(5℃/分、T=157.92℃、セル定数=1.0783)、およびサファイヤ(Cp定数=1.093)を使用して行った。サンプルは標準(開放)アルミニウムならびに外部から密閉した(hermetically sealed)TAインスツルメントのパン中で分析した。窒素は、50ml/分でパージガスとして使用した。ガラス転移は、熱流シグナルにおいてシフトの半分の高さでの屈曲点で測定した(Tg1/2cp)。
【0068】
TAインスツルメントDSC Q1000は、熱の流動と操作の出力補正様式との間のハイブリッドである新たに設計された原理を使用する(35)。熱抵抗および熱容量の不均衡を考慮することにより、およびサンプルと参照との間の加熱速度の差異を含めることにより、ベースラインおよび解像度は有意に改善される。
【0069】
約2〜6mgのポリマーを0℃から140℃に、2℃/分の加熱速度で60秒間、そして±0.32℃の振幅で加熱した。温度制限は、全ガラス転移領域が両方のポリマーについて網羅されるように選択した。変調パラメーターは、それらが我々の研究室内で日常的に使用されるので選択した。
【0070】
開放パンならびに外部から密閉されたパンの中で測定されたサンプルを、少なくとも2回分析した。
2.4.熱重量分析
熱重量分析(TGA)は、溶融押出し機中で二酸化炭素で処理する前、および後の残存溶媒を測定するために行った。すでに述べたように、(溶媒、不純物、モノマーの)抽出は、臨界未満または超臨界流体の可能な工業的応用である。換言すると、TGAは二酸化炭素で処理した後に生じるサンプルからの溶媒または重量の損失を評価するために行われる。TGA中、サンプルの質量は正確に測定され、同時に温度は一定速度で加熱される。この方法は、どの溶媒が蒸発するか分からないので、溶媒の損失について定性的ではなく定量的な測定である。
【0071】
サンプルは、データステーションTA2100を備えたTAインスツルメントHi−Res TGA2950(TAインスツルメント、ニューキャッスル、デラウエア州、米国)で測定した。約10mgのサンプルを30マイクロリットル容量のアルミニウムパンに計り取り、そして室温から20℃/分の加熱速度で加熱した。終点は300℃または20%の重量損失に設定した。サンプルは少なくとも2回測定した。
2.5.比表面積
比表面積は、二酸化炭素で処理した後にポリマーの形態が変化したかどうかを評価するために測定した。ポリマーがダイから出る時、溶解した二酸化炭素はガス相に転換され、そしてポリマーマトリックスから出る。これにより気泡を生成し、このようにして形態が変化した可能性がある(32,33)。
【0072】
比表面積は、粉末の単位重量(容量)あたりの総表面積と定めることができる。表面積測定は通常、ガス透過性または吸着のいずれかにより行われる。
【0073】
ガス吸着は粉末サンプルをサンプルホルダーに配置し、そして中の空気を除去することにより測定する(脱気)。脱気後、既知の容量の吸着ガス、通常は窒素を導入する。吸着ガスの導入前および後の圧力および温度に関する知識から、総サンプル表面積の計算を行うことができる。単層として、サンプルに吸着したガスまたは液体の量はサンプルの比表面積に直接比例する。粉末に吸着したガスの容量と、一定圧力での粉末を取り巻くガスの平衡圧との間の関係は、典型的な吸着等温線を導く。最も広く使用されている計算技法は、Brunauer,Emett and TellerによるBET理論に基づく(36)。
【0074】
比表面積はQuantachrome(クオンタクロム(Quantachrome)、グリーンヴァレ、ニューヨーク、米国)で、Kr/Heガス混合物を使用して(0.1、0.2および0.3モル画分)、1.5バールおよび25ml/分の流速で測定した。吸着時間は20から30分の間であった。カリブレーションは既知量のKrを用いて行った。サンプルは、Kr/He0.3モル画分のガス混合物の一定流を使用して、吸着および脱着により分析前に繰り返し脱気した(6回)。
2.6.粒子サイズ
処理したポリマーは分析前に粉砕したので(第2.2章)、粒子サイズは未処理ポリマーとの比較として測定した。粒子サイズは特に溶解データを比較する時に重要である。
【0075】
粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、振動ふるい法(vibrating sieve
method)により測定した。この方法を使用して、既知のメッシュサイズ(それぞれ75、150、250、500、850および1000ミクロン)、および既知のタール重量の1組のふるいを互いに上に配置し、そして既知の量の粉末を上のふるいに注いだ。積重ね全体を振動プレートに10分間、1.5mmの振幅で配置し、その後、各ふるいの重量を測定して粒子サイズの平均および分布を得た。
【0076】
分析は各サンプルについて1回行った。処理前および後のPVP−VA64の粒子サイ
ズを、10gの材料で測定した。処理前のEudragit E100 POの粒子サイズは50gで測定したが、処理後の分析は10gの材料について行った。
2.7.溶解
形態は押出し機の出口での気泡形成により変化した可能性があるので、溶解特性も変化した可能性があった。
【0077】
したがってPVP−VA64の溶解は、50rpmでパドルを用いて撹拌しながら(USP II装置)、10gのサンプルを500mLの精製水(37℃)に加えることにより測定した。溶解は5、15、30、45および60分後に取った溶解媒質のサンプルを用いて1時間追跡した。3mlのアリコートをMillex HV 0.45μmフィルター(ミリポア(Millipore) SLHV R04NL)に通して濾過し、そして精製水で希釈した。サンプルには新たな溶媒を入れなかった。PVP−VA64の濃度は、ヨウ素複合体の形成により光学的に測定した(37)。したがって5mLの希釈サンプル溶液を2.5mLの0.2Mクエン酸溶液および1mLの0.006N ヨウ素溶液(100mLの水に溶解した0.81gの新たに昇華したヨウ素および1.44gのヨウ化カリウム)と混合した。吸収は正確に30分後にUVにより470nmで測定した。実験は3回行った。
【0078】
Eudragit E100 POの溶解は、50rpmでパドルを用いて撹拌しながら(USP II装置)、10gのサンプルを900mLの0.1N HCl(37℃)に加えることにより測定した。溶解は5、15、30、45および60分後に取った溶解媒質のサンプルを用いて1時間追跡した。3mlのアリコートをMillex HV 0.45μmフィルター(ミリポアSLHV R04NL)に通して濾過した。サンプルには新たな溶媒を入れなかった。Eudragit E100 POの濃度は重量により測定した。したがって2mLの濾過サンプルをペトリ皿に移し、そして真空オーブンにそれぞれ60℃で2時間、50℃で20時間、そして100℃で2時間入れた。ペトリ皿の重量は、一定重量が得られるまで、それぞれ2、22および24時間後に測定した。実験は3回行った。
【0079】
あるいはEudragit E100 POの溶解は、上記と同じ手順を使用して1gのサンプルを900mlの0.01N HClに加えることによっても測定した。
【0080】
イトラコナゾール/PVP−VA64 10/90および40/60の溶解試験は、粉砕した溶融押出しサンプルについて行い、そして結晶イトラコナゾールを含有する物理的混合物と比較した。200mg用量を含むサンプルを、ペプシンを含まない500mlの模造胃液(SGF)に37℃で直接加えた。溶解は100rpmで回転するパドル(USP II装置)を使用して評価した。放出は1時間追跡し、そしてサンプルを5、15、30、45および60分後に取った。3mlのアリコートをMillex HV 0.45μmフィルター(ミリポアSLHV R04NL)に通して濾過した。サンプルには新たな溶媒を入れなかった。イトラコナゾールの濃度はUVを用いて254nmの最大波長で定量した。
2.8.光学顕微鏡
光学顕微鏡は、二酸化炭素で処理した後、しかし粉砕前にポリマーの形態を評価するために行った。未粉砕サンプルの薄いフィルムをスライドガラスに乗せ、そして直接測定した。ニコン(Nikon)EclipseE600偏光顕微鏡をこれらの実験に使用した。写真は4倍のレンズ倍率で取った。
2.9.走査電子顕微鏡
走査電子顕微鏡は、処理前および後の粉砕ポリマーの形態を評価するために行った。粉砕サンプルを接着テープでスタブ(stub)に固定した。乗せたサンプルにはバルザーズ(Balzers)のスパッタリングデバイスを使用して金の層をコーティングした。サンプルを走査電子顕微鏡の多検体ホルダーに入れた。サンプルはJEOL JSM−5510(日本電子(Japan Electron Optics Laboratory)LTD)走査電子顕微鏡で観察し、そして10〜20kVで走査した。デジタル画像はAdobe Photoshopで処理した。
2.10.溶融粘度
ポリマーの溶融粘度は、温度の関数として剪断増粘(shear thickening)または剪断減粘(shear thinning)挙動が起こるかどうかを評価するために、そして粘性挙動を調査するために測定した。
【0081】
溶融粘度は、動的歪周波数スイープ法(dynamic strain frequency sweep method)(レオメトリックス(Rheometrics)、ピスカタウェイ、米国)で平行板を使用してレオメトリックスRDA−IIレオメーターで測定した。PVP−VA64は、0.1ラド/秒で始まり100ラド/秒で終わる周波数を使用して、140℃から180℃の間で測定した。板の直径は40mmであり、そして平行板間のギャップは1mmであった。実験は2回行った。Eudragit E100 POは、1ラド/秒で始まり、そして100ラド/秒で終わる周波数で、100℃から150℃の間で測定した。板の直径は25mmであり、そして平行板の間のギャップは1.5mmであった。実験は2回行った。
2.11.バルクおよびタップ容積
粉末バルクおよびタップ容積は、ゆする(jolting)容積計を使用して測定した(J.Engelsmann A.G.Ludwigshafen am Rhein,ドイツ)。処理前および後の既知量のサンプルをメスシリンダーに注ぎ、そして粉末床の容積を測定してバルク容積を得た。次いで容積計フラスコをタップ装置に移し、そして500回タップした。粉末床の容積を再度測定してタップ容積を得た。
2.12.ミクロ減衰全反射法(ミクロATR)
ミクロATRは、DTGS/KBr検出器およびGe/KBrビームスプリッターを備えたニコレット マグナ(Nicolet Magna)560FTIR分光光度計で行った。走査は4000cm−1〜400cm−1の波長範囲内、1cm−1の解像度で取った。サンプルはハリック スプリット(Harrick Split)Pea/Si結晶ミクロATRアクセサリーを使用して測定した。
IV.結果および考察
1.PVP−VA64
PVP−VA64は、二酸化炭素の注入を用いた溶融押出し実験に関するモデルポリマーの1つとして使用した。実験の第1部は、加圧COの注入および押出し機内の圧力の形成を可能とする押出し機の設定およびスクリュー形状に集中した。PVP−VA64の押出し挙動についてより多くを得るために、実験は最初に二酸化炭素の注入無しで行った。これらの実験後、CO注入を用いた試験を行い、そして処理前および後のPVP−VA64の物理化学的特性を評価した。最後に、同様の実験をイトラコナゾール/PVP−VA64 10/90および40/60の物理的混合物を用いて設定した。
1.1.CO注入無しのPVP−VA64の溶融押出し
第1実験は、CO注入無しでPVP−VA64の押出し挙動を調査するために、レイストリッツのMicro18同時回転二軸スクリュー押出し機を用いて行った。温度、スクリュー速度および供給速度に関するパラメーターの各設定は、機械内のトルクにより反映される二軸スクリュー押出し機中のポリマーに特異的粘度を生じた。押出し機中のポリマーの粘度が高すぎるようになった時、トルクは100%より高い値に達し、そして機械は自動的に停止した。したがってこれらの実験の目的は、所定の供給速度およびスクリュー速度について最大のトルクに達する最小温度設定を見いだすことであった。これにより加圧ガスを注入する時、将来の実験でトルクに及ぼすCOの効果の評価を行うことができる。
【0082】
二酸化炭素の注入無しでPVP−VA64を用いた実験は、最初に図1および3で具体的に説明するように押出し機の設定1およびスクリュー形状1を使用して行った。この設定は、加圧ガスをバレル要素3へ注入し、混合ゾーン(バレル要素4)でポリマーとCOとの間の完全な接触を提供し、そして二酸化炭素をガス抜き口を通して要素6から抽出することを考えて選択した。次いで圧力は、要素とバレルとの間にポリマーのメルトシールを作成する逆輸送要素の使用を介して、ゾーン3と6との間で作られると予想された。使用したパラメーター設定および生じたトルクを、表3に提示する。最大トルクは160℃で1kg/時間の供給速度および100rpmのスクリュー速度で達成された(表3の実験11〜15)。これはさらに温度を下げると機械の自動停止を生じ、すなわちPVP−VA64に関する最小作業温度が160℃であることを意味した。
【0083】
また供給速度を上げると機械のトルクも上がることが観察された(表3、実験5〜10)。これは供給速度を上げれば、時間単位あたりより多くの材料が同じ熱を消費するので予想されることであった。これは溶融粘度の上昇を生じ、すなわちトルクの上昇を生じる。またスクリュー速度の上昇で(すなわちバレル内側でより多くの摩擦エネルギーが生じる)、粘度すなわちトルクが減少することも予想された。しかしこれは実験1〜4では観察されなかった(表3)。1つの考えられる説明は、PVP−VA64が(非ニュートンの)剪断増粘挙動を示すということである。したがって溶融粘度を、剪断速度(ラド/秒での周波数)および温度の関数として測定した。これらのプロファイルは、見掛け粘度が剪断速度の上昇で低下することを示し、すなわちPVP−VA64は剪断増粘挙動を示さないと結論できた。これはスクリュー速度が上昇するとトルクが上昇する理由には他の原因があり、さらに調査すべきであることを意味した。加えて、温度が下がると粘度が上昇することは明らかであり、これは押出し試験中になされた考察を確認した。
【0084】
次の段階の実験は、図2および4で具体的に説明するように修飾されたスクリュー形状および押出し機の設定を用いて行った。前の設定とは対照的に、二酸化炭素の抽出はここでは押出し機の出口で行った。加圧ガスの注入は今までどおりバレル要素3で行った。よって圧力はゾーン3のメルトシール(逆輸送要素により作成される)と、ポリマーがその穴からパージされる時にダイの開口で得られるメルトシールとの間で形成されると予想された。このスクリュー形状を使用して、唯一の逆輸送要素を使用した。パラメーター設定および生じたトルクを表4に提示する。これらの実験から、我々は上に述べた結果と比較して、このスクリュー形状を使用して類似の結果が得られたと考察することができる。すなわちスクリュー速度、供給速度および温度設定の効果は、機械のトルクに匹敵する値を生じた。これらの実験に基づき、左回転輸送要素が有意なトルクを生じると観察された。あるいは左回転輸送要素の代わりに逆パドル要素を使用してメルトシールを提供することができた。これらのパドル要素は一般に、輸送要素に比べて少ないトルクを生じる(38)。しかしこれらの要素は現在利用できない。
【0085】
第3組の実験は、最初の2つのゾーンを高温に維持して最小処理温度を決定するために行った。パラメーター設定および生じたトルクを表5に提示する。これらの実験から、我々は、1kg/時間の供給速度および100rpmのスクリュー速度を使用した時、150℃未満で最大トルクに達することを観察した。表4の実験12から15を比較すると、ゾーン1および2において、より高温で一定の180℃でトルクが下がることが明らかに示される。したがって最大トルクに達することなく160℃未満で作業することが可能であった。
【0086】
PVP−VA64に関するすべてのさらなる実験は、ゾーン1および2について100rpmのスクリュー速度、1kg/時間の供給速度および180℃の温度設定で行った。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
1.2.CO注入を用いたPVP−VA64の溶融押出し
加圧ガスの注入を用いた実験については、スクリュー形状が大変重要なパラメーターであった(32)。これは特に連動する同時回転二軸スクリュー押出し機には無関係であり、これは設計上、バレルの全長にわたりポリマーが完全に充填されなかった。換言すると、スクリューを回転させるために必要なモーター出力がギアボックスには大きくなりすぎるので、モーターの推進力は完全に充填された同時回転二軸スクリュー押出し機を処理することができない。これは以前の結果から明らかとなり(第IV章)、ここでは唯一の逆輸送要素がトルクに大きな効果を生じた(そしてこれにより、左回転輸送要素で短い長さのバレルのみが生成物で完全に充填された)。
【0091】
バレル内側に圧力を形成することができるようにするために、スクリュー形状はポリマーのメルトシールが作成されるように設計されなければならなかった(32)。これらポリマーのメルトシールは逆輸送要素により得ることができ、これは逆輸送要素とバレルとの間の局所に溶融したポリマーを形成することができ、そしてそれ自体がメルトシールを提供した。
【0092】
最初に使用したスクリュー形状および押出し機の設定は、図1および3に示す。上に述べたように、この設定はバレル要素3に加圧ガスを注入し、ポリマーを二酸化炭素と混合ゾーン(バレル4)で混合し、そしてガスをガス抜き口を介して要素6で抽出する考えから選択した。次いで圧力は、これらのゾーン中で溶融したポリマーシールの形成を介してゾーン3と6との間に形成されると予想された。加圧ガスCOの注入を用いた実験は、20から50バールの間のCPRで行った(データは示さず)。2つのメルトシール間でバレル内側に圧力を形成することが可能であったが、トルクの低下も押出し機の出口でのポリマーの気泡も観察されなかった。ガス抜き口で、二酸化炭素の膨張が見られた。これはすべてのCOがガス抜き口で放出されたので、ポリマーの気泡が観察されなかったと予想された。トルクの低下が観察されなかったのは、恐らくバレルを通るポリマー流に有意な抵抗を作る2つの逆輸送要素の存在によるものだろう。換言すると、このスクリュー形状および押出し機の設定では、押出し機の内側に圧を形成したが、加圧ガスの測定できるほどの可塑化効果を提供しなかった。
【0093】
したがって修飾されたスクリュー形状および押出し機の設定を、図2および4で具体的に提案した。この設定を使用して、バレルの内側に圧力を形成してポリマーの気泡形成を可能にすることができた。しかし圧力形成は一定でなく、そして生成物は結局、圧力の解除で機械から放出される。この現象はガス泡が押出し機の内側に形成され、次いでこれが
ダイプレートで放出されたことを示唆した。この挙動は180℃の温度設定ではポリマーの粘度が低すぎ、そして加圧二酸化炭素と正しく混合できないために起こると予想された(38)。したがって、温度設定を次第に下げると同時に、押出し機中の注入ガスの圧力を次第に上げることに決定した。これらの実験結果を表6に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
温度を次第に下げると、ポリマーの気泡形成はさらに一層有意となり、そして実験中に圧力が安定し、すなわちより低温設定で定常状態に達成した。また機械のトルクに及ぼすCOの効果も明らかであった:ここで最大のトルクは、ガスの注入無しでの150℃に比べて、120℃未満の温度で達成された(繰り返し確認した)(比較に関しては表5を参照にされたい)。これは加圧COがPVP−VA64の可塑剤として作用し、そして1kg/時間、100rpmおよび55バールの二酸化炭素の注入で処理温度を30℃下げることができたことを明らかに示した。
【0096】
次の組の実験は、種々のパラメーター設定(供給速度、スクリュー速度および二酸化炭素圧)が押出し機のトルク、ポリマーの気泡形成、圧力および他の因子に及ぼす影響を評価するために行った。表7は140℃でのこれらの結果を示す。
【0097】
【表7】

【0098】
実験1から3は、押出し法を開始し、そして押出し機内に定常状態を得るために行った。実験4から7を行う時、最大の気泡形成および定常状態は35〜40バールで140℃の温度設定、100rpmのスクリュー速度および1kg/時間の供給速度で得られることとが観察された。さらに圧力を上げると、より程度が低いポリマーの気泡形成および周期的な圧力低下が生じた。スクリュー速度を変えると(実験8から10)、ポリマーの気泡形成は減るが、バレル内の圧力は一定のままであった。
【0099】
また供給速度を下げると(実験11から13)、ポリマーの気形成泡が減るが、一方、供給速度を上げても(実験14から16)ポリマーの気泡形成または定常状態に影響しなかった。1.5kg/時間で最大トルクに達し、すなわちこのパラメーターはさら調査できなかった。興味深いことには、定常状態条件および最大のポリマーの気泡形成は、異なる実験で迅速かつ再現性高く常に得られた(実験4、8、11および14を参照にされたい)。これは定常状態が温度、スクリュー速度、供給速度および二酸化炭素圧に関するパラメーターの最適な設定について得られたことを示す。
【0100】
同様の実験を130℃および120℃で行って、定常状態の条件を見いだした(データ
ーは示さず)。130℃で、定常状態は40〜45バールで得られ、80〜95%のトルクを生じ、一方120℃では60〜65バールで90〜100%のトルクの定常状態を生じた。さらに温度を120℃未満に下げると、ここでも100%より高いトルクを生じ、続いて機械が自動的に停止した。
【0101】
最終組の実験は、CPRの代わりにCFR下でCO注入の効果を評価するために行った。結果を表8および9に示す。140℃で、0.5から8ml/分で定常状態が得られた。15ml/分の流速で、圧力低下が始まり、より低いポリマーの気泡形成が観察された。30ml/分で圧力低下はダイでのガス放出をしばしば伴い、バレル中の気泡形成と一貫していた。130℃では同様な観察がなされ、圧力低下はすでに8ml/分で始まった。10ml/分でそれらはさらに頻繁に起こり、そしてより高いCO流速では、気泡の形成は許容できないほど高くなった。興味深いことには、トルクは8ml/分以上の流速で低下し始めた。
【0102】
【表8】

【0103】
【表9】

【0104】
1.3.COで処理する前および後のPVP−VA64の物理化学的特性
臨界未満または超臨界二酸化炭素での処理がポリマーに変化を誘導した可能性があるので、PVP−VA64の物理科学的特性は二酸化炭素で処理する前および後に調査した。
【0105】
変調DSCを行って、PVP−VA64の熱的特性を調査した。ガラス転移は、逆シグナルで測定した。結果を表10に示す。これらの結果は、標準パンを使用した時に処理前および後のガラス転移に差異がないことを示す。外部に対して密閉されたパンを使用する時、ガラス転移は標準パンに比べて約25℃まで規則正しく減少する。これは標準パンでは、残存溶媒が蒸発できるという事実により説明され得る。特に100℃より高いTgおよび2℃/分の加熱速度の場合、すべての溶媒(水)がガラス転移に達する時までに蒸発する。一方、外部に対して密閉されたパンを使用する時、残存溶媒は蒸発できない。この溶媒はポリマーに対して可塑剤として作用し、したがって低いガラス転移が得られる。またこれは二酸化炭素で処理する前および後のサンプル間で約4℃の差異も説明する(2つの測定の平均値間の差異に基づく)。これらの差異は恐らく、二酸化炭素の処理により引き起こされる差異よりもむしろ溶媒含量の差異によるものだろう。
【0106】
転移の開始および終点を考察し(ベースラインの屈曲が観察される温度の、それぞれTおよびTによる)、処理前の範囲は処理後の範囲に匹敵し、処理の関数としてポリマーに対して主要な出来事が無いことを確認する。
【0107】
【表10】

【0108】
TGA分析は残存溶媒の損失を測定するために行った。表11はCOで処理したサンプルが約1.15%多い残存溶媒を含むことを示す。これは外部に対して密閉されたパンで測定した時、処理前および後のガラス転移の差異を説明する。
【0109】
【表11】

【0110】
PVP−VA64の溶解を測定して、二酸化炭素で処理する前および後の溶解プロファイルに及ぼす効果があるのかどうかを評価した。溶解プロファイルの比較は、COで処理したサンプルが30分の時点で有意に早く溶解したことを示した(t−検定、n=3、P<0.05)。他のすべての時点で、二酸化炭素で処理したポリマーの溶解は高かったが有意ではなかった。この速い溶解速度は、COが押出し機の出口で膨張する時に、気泡の形成を介した形態の変化に起因し得る。
【0111】
二酸化炭素の処理前および後のポリマーの粒子サイズは、表12に示すように比較できた。換言すると、このパラメーターは溶解測定中に観察される差異の原因ではあり得なかった。
【0112】
【表12】

【0113】
比表面積の測定は、未処理サンプルの0.261m/gに比べて処理したサンプルが0.381m/gの比表面積を有することを示した。粒子サイズは匹敵しているので、比表面積におけるこの差異を生じる別のパラメーターがなければならなかった。これをさらに詳細に調査するために、光学顕微鏡およびSEMを行った。光学顕微鏡写真は、薄壁からなる泡沫が互いに連結していることを示した。
【0114】
SEM図は、二酸化炭素で処理したポリマーの形態が、処理前の球状様粒子から処理後の大変薄い板へと変化したことを明らかに示す。これらの小板はCOが押出し機の出口で膨張した時の発泡工程中に形成された。振動ふるい法は粒子サイズに差異が無いことを示したが、処理したポリマーの粒子サイズは、小板の形状により恐らく過大に見積もられた(小板はそれらの位置に依存してふるいに保持され得る)。これもまた、比表面積および溶解における差異を説明している。
1.4.イトラコナゾール/PVP−VA64 10/90の溶融押出し
1.4.1.CO注入無しでのイトラコナゾール/PVP−VA64 10/90の溶融押出し
パラメーター設定および生じたトルクを表13に列挙する。すべてのゾーンの温度を次第に下げると同時に、スクリュー速度(100rpm)および供給速度(1kg/時間)を一定に維持する時、最大トルクは140℃未満で到達した(表13の実験1−4)。最初の2つのゾーンを高温で維持した時(180℃)、最大のトルクは1kg/時間の供給速度および100rpmのスクリュー速度で120℃未満で達成された(表13の実験4−9)。
【0115】
【表13】

【0116】
1.4.2.CO注入を用いたイトラコナゾール/PVP−VA64 10/90の溶融押出し
イトラコナゾール/PVP−VA64 10/90を押出しながら、二酸化炭素の注入を用いた第1組の実験は、温度設定を次第に下げながら最小作業温度を見いだすために行った。実験結果を表14に示す。
【0117】
【表14】

【0118】
これらの条件下で、ポリマーの気泡形成が観察され、そして実験中に圧力が安定し、すなわち定常状態に到達した。処理温度は10℃まで下げることができた(繰り返し確認した)。これは加圧COがイトラコナゾール/PVP−VA64 10/90の可塑剤としても作用し、そして処理温度は1kg/時間、100rpmおよび35〜40バールでの二酸化炭素の注入で、すなわち臨界未満の条件下で10℃まで下げることができることを示した。純粋なPVP−VA64と比べて、処理温度は1kg/時間、100rpmおよび35〜40バールでの二酸化炭素の注入で、30℃まで下げることができた。この二酸化炭素の低下した可塑化効果は恐らく、すでに部分的にポリマーを可塑化して二酸化炭素の影響を少なくするイトラコナゾールの存在によるものだろう。
1.4.3.COで処理する前および後のイトラコナゾール/PVP−VA64 10/90の物理化学的特性
物理化学的特性は、臨界未満または超臨界二酸化炭素を用いた処理がポリマーに対する変化を誘導した可能性があるので、二酸化炭素の注入を用いて、または注入無しで処理する前、および押出した後に調査した。
【0119】
以下のサンプルを評価に使用した:
表13のサンプル1、2、3および8、ならびに表14のサンプル1、2、3、5、7および9。変調−DSC実験の結果を表15および16に示す。外部に対して密閉されたパンでは、DSCプロファイルに多くのノイズが生じ、解釈を大変難しくした。したがって標準パンの結果のみを表に示す。
【0120】
これらの結果は、二酸化炭素の注入を用いて、または用いずに処理したサンプル間でガラス転移および熱容量に変化がないことを示す。すべてのDSCプロファイルはイトラコナゾールの融解エンタルピーを欠き、無定形の分散物の形成を示す。Fox式に従う理論的Tgの計算は、376Kの値をもたらし(Titraconazole=332KおよびTPVP−VA64=382K)、これは実験のTg値に等しい。これは10/90重量/重量の薬剤/担体比のイトラコナゾールおよびPVP−VA64が、相分離無しに完全に混和性であることを示す。これは押出し法中に二酸化炭素の注入により影響
を受けないと思われる。
【0121】
【表15】

【0122】
【表16】

【0123】
TGA分析を行って、残存溶媒の損失を測定した。表5は二酸化炭素の注入を用いて、および用いずに処理したサンプルに関する残存溶媒にわずかな変化があることを示す。
【0124】
【表17】

【0125】
光学顕微鏡でサンプルの形態を顕微鏡で研究した。二酸化炭素の注入無しに140℃で押出したサンプルは結晶イトラコナゾールを含有し、一方、180℃で押出したサンプルは完全に透明であった。イトラコナゾールは約165℃で融解するので、これはスポットがポリマーマトリックス中の結晶イトラコナゾールを表していることを示す可能性がある。顕微鏡では気泡特性が温度設定および注入した二酸化炭素の圧力の関数として変化することを示す。これらのサンプルは結晶イトラコナゾールの存在を示さない。しかしサンプルの気泡形態による解釈は難しい。いずれのDSCプロファイルも結晶イトラコナゾールの存在を示さなかった。これはイトラコナゾールがサンプルをDSCオーブン中で加熱している間にポリマーマトリックス中に溶解するか、または結晶イトラコナゾール濃度が低すぎで検出できないという事実によるかもしれない。これらの異なる生成物を粉砕すると、粉砕したサンプルについても異なる形態が生じた。粉砕した気泡は、二酸化炭素の注入無しで生成された粉砕押出しストランドの標準に比べて薄いフレークからなった。これは異なるバルクおよびタップ密度を生じた。二酸化炭素の注入前の粉砕した押出し物に関するバルクおよびタップ密度は、それぞれ0.482g/mlおよび0.576g/mlであった(圧縮性16.3%)。二酸化炭素で処理した押出し物については、これらの値はそれぞれ0.130g/mlと0.206ml/gとなった(圧縮性36.9%)。これは圧縮性が二酸化炭素注入後に改善されるが、粉末流は低下したことを意味する。
【0126】
吸着/脱着プロファイルを、サンプル13−3、13−8、13−3および14−7について記録した。サンプル13−3および13−8は、二酸化炭素で処理したサンプル、すなわちサンプル14−3および14−7に比べて少ない水を吸着した(〜28%対〜46%)。恐らくこれも異なる形態により説明できる。
【0127】
異なるサンプルの溶解を、最初に200mg用量、これは2gの押出し物で測定した。この量の材料は良くない湿潤性と組合わさって、多くの変動性および再生不可能な分析結果をもたらす。したがって50mgの用量を測定した。60分後の放出に関する平均値を表18に与える。この表では、物理的混合物、二酸化炭素注入前のサンプルおよび二酸化炭素注入後のサンプル間に有意な差異がある。二酸化炭素で処理した材料は、未処理材料に比べて遅い溶解を表し、すなわちイトラコナゾールの放出が制御された。溶解は温度設定により影響を受けないように思われた。
【0128】
【表18】

【0129】
1.5.イトラコナゾール/PVP−VA64 40/60の溶融押出し
1.5.1.CO注入無しでのイトラコナゾール/PVP−VA64 40/60の溶融押出し
パラメーター設定および生じたトルクは、表13に列挙する。最大トルクは、スクリュー速度(100rpm)および供給速度(1kg/時間)を一定に維持しながら、すべてのゾーンの温度を次第に下げた時、135℃未満で到達した(表19の実験1−5)。最初の2つのゾーンを高温(180℃)に維持した時、1kg/時間の供給速度および100rpmのスクリュー速度で、110℃未満で最大トルクに達した(表19、実験6−10)。
【0130】
【表19】

【0131】
1.5.2.CO注入を用いたイトラコナゾール/PVP−VA64 40/60の溶融押出し
イトラコナゾール/PVP−VA64 40/60を押出しながら、二酸化炭素の注入を用いた実験を行って、温度設定を次第に下げながら最小作業温度を見いだした。実験の結果を表20に示す。
【0132】
【表20】

【0133】
これらの条件下で、ポリマーの気泡形成が観察され、そして実験中に圧が安定化し、すなわち定常状態が達成された。処理温度は5℃まで低下させることができた(繰り返し確認した)。これは加圧COがイトラコナゾール/PVP−VA64 40/60の可塑剤としても作用し、1kg/時間、100rpm、および二酸化炭素を35〜40バールで注入して、すなわち臨界未満の条件下で処理温度を5℃まで下げられることを示した。純粋なPVP−VA64と比較して、1kg/時間、100rpmおよび35〜40バールで注入して、処理温度を30℃まで下げることができる。この二酸化炭素の低下した可塑化効果は恐らく、すでに部分的にポリマーを可塑化して二酸化炭素に関する影響を少なくするイトラコナゾールの存在によるものだろう。
1.5.3.COで処理する前および後のイトラコナゾール/PVP−VA64 40/60の物理化学的特性
臨界未満または超臨界二酸化炭素での処理がポリマーに変化を誘導した可能性があるので、物理化学的特性は二酸化炭素の注入を用いて、または用いずに、処理前および押出し後に調査した。以下のサンプルを評価に選択した:表19のサンプル3および8、および表20からのサンプル2および7。
【0134】
変調DSC実験の結果を、表21および22に示す。これらの結果は処理温度の関数としてガラス転移に差異があることを示す。イトラコナゾールの融点未満で押出した時、Tgは融点よりも高い温度で調製されたサンプルに比べて高かった。Fox式による理論的Tgの算出は360Kの値を生じ(Titraconazole=332KおよびTPVP−VA64=382K)、これは実験のTgよりもわずかに低い。薬剤物質の融点未満で調製したサンプルのDSCプロファイルは、室温でサンプル中にイトラコナゾ
ールの融解吸熱の存在を示す。純粋なイトラコナゾールの融解エンタルピー(ΔH=85J/g)に基づき、サンプル中の結晶イトラコナゾールの割合を算出することができる(表22を参照にされたい)。
【0135】
パワーXRDでは、イトラコナゾールの融点未満で調製されたこれらサンプル中の結晶イトラコナゾールの存在を確証した。
【0136】
これらの結果は、40/60重量/重量の薬剤/担体比のイトラコナゾールおよびPVP−VA64は、イトラコナゾールの融点より高い温度設定で調製した時に完全に混和性であるが、融点未満で処理した時に相分離が起こることを示す。押出し法中の二酸化炭素の注入は、サンプルの熱的特性に影響を及ぼさないようである。
【0137】
【表21】

【0138】
【表22】

【0139】
TGA分析は残存溶媒損失を測定するために行った。表23は、二酸化炭素の注入を用いて、および用いずに処理したサンプルについて、残存溶媒に差異がないことを示す。
【0140】
【表23】

【0141】
光学顕微鏡で、サンプルの形態を顕微鏡で研究した。二酸化炭素の注入無しに140℃で押出したサンプルは完全に白色であり、一方、イトラコナゾールの融点より上で押出したサンプルは完全に透明であった。これはイトラコナゾールの融点未満で押出したサンプル中に相分離が存在することを確証する。気泡特性は温度設定および注入した二酸化炭素の圧力の関数として変化した可能性があった。偏光顕微鏡では、イトラコナゾールの融点未満で調製されたサンプルについて複屈折を明らかに示し、これも相の分離を確証した。これらの異なる生成物を粉砕すると、粉砕したサンプルについても異なる形態が生じた。粉砕した気泡は、二酸化炭素の注入無しで生成された粉砕押出しストランドに比べて薄いフレークからなった。これは異なるバルクおよびタップ密度を生じた。二酸化炭素の注入前の粉砕した押出し物に関するバルクおよびタップ密度は、それぞれ0.500g/mlおよび0.625g/mlであった(圧縮性20.0%)。一方、二酸化炭素で処理した押出し物については、これらの値はそれぞれ0.351g/mlと0.492ml/gとなった(圧縮性28.7%)。これは圧縮性が二酸化炭素注入後に改善されたが、粉末流は低下したことを意味する。
【0142】
60分後の放出に関する平均値を表24に与える。この表では、物理的混合物およびすべての押出しサンプル間に有意な差異があることを示す。これらのデータは、温度設定および二酸化炭素の注入が押出し物の溶解特性に有意な影響を及ぼすことを示唆している。イトラコナゾールの融点より高温で調製したサンプルは、二酸化炭素で処理しなかったサンプルのように迅速な放出を生じる。これはイトラコナゾールの放出が押出し法の処理条件により制御できることを意味する。
【0143】
【表24】

【0144】
表25は、純粋なPVP−VA64、イトラコナゾール/PVP−VA64 10/90および40/60について、Tgの関数として押出し法中の最小温度設定の比較を与える。これらの結果はイトラコナゾールならびに二酸化炭素の両方がPVP−VA64の可塑剤として作用することを示す。これら3種の系について両成分の全体的効果を比較でき、すなわち最小温度設定は、サンプルのガラス転移より11℃から13℃の間高い。
【0145】
【表25】

【0146】
1.6.PVP−VA64に関する結論
PVP−VA64を用いた実験に基づき、加圧二酸化炭素の注入を可能にする押出し機の設定およびスクリュー形状を見いだした。加圧ガスの注入、圧の形成およびポリマーの気泡形成は、メルトシールが逆輸送要素およびダイ開口を使用して得られ、そしてCOがダイプレート後に膨張する押出し機およびスクリューの設定を用いて得られた。またこの方法は、圧力の解放で定常状態および有意なポリマーの気泡形成を得るためにも確立された。この方法は注入ガスの圧力を上げながら、バレル中の温度を次第に下げることからなる。さらに処理温度は少なくとも30℃下げることができるので、COはPVP−VA64の可塑剤としても作用すると結論できる。定常状態は最適なポンプ圧および温度設定の関数として得られる。PVP−VA64で得られる最大圧は約65バールであり、これは押出しが臨界未満の条件下で行われたことを意味する。
【0147】
ポリマーの物理化学的特性決定では、比表面積が形態の変化により上昇することが明らかとなり、これは恐らくポリマーの上昇した溶解を提供した。ガラス転移のような他の特性は、二酸化炭素での処理の関数としては変化しなかった。
【0148】
ポリマーPVP−VA64、Eudragit E100POに最適であることが見いだされた押出し機の設定およびスクリュー形状は、イトラコナゾール/PVP−VA64
10/90重量/重量および40/60重量/重量でもうまく作動した。圧の解除で定常状態条件および有意なポリマーの気泡形成を得るための方法を確認することができた。この方法は注入ガスの圧力を上げながら、バレル中の温度を次第に下げることからなる。
【0149】
さらにCOは、処理温度を少なくとも10℃まで下げることができるので、イトラコナゾール/PVP−VA64 10/90重量/重量について可塑剤として作用し、ならびに処理温度を少なくとも5℃まで下げることができるので、イトラコナゾール/PVP−VA64 40/60重量/重量についても可塑剤として作用すると結論できる。定常状態は最適なポンプ圧および温度設定の関数として得ることができる。得ることができた
最大圧は約40バールであり、これはこの場合の押出しが臨界未満の条件下で行われたことを意味する。
【0150】
押出し物の物理化学的特性決定で、気泡の形態がCO処理の関数として変化することが明らかとなった。これは種々の粒子形態(小板形)およびバルクおよびタップ密度(改善された圧縮性、>25%)をもたらした。DSC測定は完全に混和性の無定形系(Fox式により)の形成、すなわち無定形溶液の形成を示した。また二酸化炭素の注入後、系は未だに無定形であった。しかしイトラコナゾールの融点未満で生成された押出し物は、結晶イトラコナゾールの存在を示した。二酸化炭素を注入は、サンプルの熱的特性に影響を与えないようであった。
【0151】
押出し物の溶解は物理的混合物に比べて上昇し、そして二酸化炭素での処理により制御できた。
2.Eudragit E100PO
PVP−VA64を用いて行った実験から、スクリュー形状および押出し機の設定は、(a)加圧二酸化炭素の注入、(b)押出し機内に圧の形成、および(c)押出し機の出口での二酸化炭素の膨張で気泡の形成を可能とすることが分かった。図2および4に示すスクリュー形状および押出し機の設定は、Eudragit E100POを用いた押出し試験にも使用した。実験は二酸化炭素の注入を用いて、または用いずに行った。CO注入を用いた試験を完了し、そして最後に処理前および後のEudragit E100POの物理化学的特性を調査した。
2.1.CO注入無しのEudragit E100POの溶融押出し
パラメーターの設定および生じるトルクを、表26に列挙する。最大トルクは、すべてのゾーンの温度を次第に下げると同時に、スクリュー速度(150rpm)および供給速度(1kg/時間)を一定に維持した時、140℃で到達した(実験11から14)。最初の2つのゾーンを高温(180℃)に維持した時、最大トルクは1kg/時間の供給速度および100rpmのスクリュー速度で130℃にて到達した(表26の実験15から20)。さらに供給速度の上昇はトルクの上昇を引き起こすことが観察され(表26の実験6から10)、これはPVP−VA64から得た結果から予想され、そしてそれに一致する。しかし2.5kg/時間で、粉末供給の遮断を引き起こす入口漏斗にブリッジング(bridging)が起こった。この現象は、良く流動しない粉末で起こる。したがってEudragit E100POでの最大可能な供給速度は、2kg/時間であった(この型の押出し機で)。
【0152】
スクリュー速度の上昇は低下したトルクを生じ(表26の実験1から5)、これはPVP−VA64を用いた試験中になされた考察から予想され、そしてそれとは反対であった。
【0153】
Eudragit E100POの場合、溶融粘度は剪断速度(ラド/秒での周波数)および温度の関数として測定された。これらのプロァイルは、見掛け粘度が剪断速度の上昇で低下することを明らかに示し、すなわちEudragit E100POは剪断減粘挙動を示すと結論できた。
【0154】
さらに、温度が下がると粘度が上昇し、これは押出し試験中になされた観察と一致した。
【0155】
【表26】

【0156】
2.2.CO注入を用いたEudragit E100POの溶融押出し
Eudragit E100POを押出しながら、二酸化炭素を注入する第1組の実験を行って、次第に温度設定を下げながら最小作業温度を見いだした。これを行う時、最初の2つのゾーンを一定(180℃)に維持し、供給速度(1kg/時間)およびスクリュー速度(100rpm)も一定に維持した。実験の結果を表27に示す。
【0157】
【表27】

【0158】
これらの条件下で、ポリマーの気泡形成はより一層有意となり、そして実験中の圧が安定した、すなわち定常状態に達したことが観察された。また機械のトルクに及ぼすCOの効果は明らかであった:ここで最大トルクは、ガスの注入無しの130℃に比べて115℃未満で達した(繰り返し確認した)(比較については表26を参照にされたい)。これは加圧COがEudragit E100POの可塑剤としても作用し、そして処理温度を1kg/時間、100rpmおよび40〜45バールの注入二酸化炭素で15℃まで下げることができることを示した。
【0159】
PVP−VA64に比べて、ポリマーの気泡形成はEudragit E100POでは顕著でなく、そして温度はPVP−VA64での30℃の代わりに15℃まで下げることができた。
【0160】
次の組の実験は、種々のパラメーター設定(供給速度、スクリュー速度および二酸化炭素圧)がトルク、ポリマーの気泡形成、押出し機中の圧、および他の因子に及ぼす影響を評価するために行った。表28は120℃でのこれらの結果を示す。
【0161】
【表28】

【0162】
実験1から6を行う時、最大の気泡および定常状態は、120℃の温度設定、100rpmのスクリュー速度および1kg/時間の供給速度で35〜40バールにて得られた。さらに圧を上げると、ポリマーの気泡形成の低下および周期的な圧力低下を生じた。70バールで、圧力低下が連続的に起こった。トルクはトルクが上昇する60バールより高い圧を除いて影響を受けなかった。
【0163】
スクリュー速度を変えると(表28の実験7から9)ポリマーの気泡形成が少なくなり、そして200rpmで周期的な圧低下が起こり始めた。また供給速度を下げると(表28の実験10から12)、ポリマーの気泡形成の程度が少なくなるが、供給速度を上げてもポリマーの気泡形成および定常状態に影響を及ぼさなかった。1.5kg/時間で、最大のトルクに達し、そしてこれによりこのパラメーターをさらに調査できなかった。これらの観察はPVP−VA64および二酸化炭素注入を用いた試験中に観察された事柄に類似した。
【0164】
最終組の実験を行って、CPRの代わりにCFR下でCOを注入する効果を評価した。結果を表29に示す。120℃で、定常状態は4ml/分未満で得られた。4ml/分の流速で、圧の低下が起こり始め、そしてポリマーの気泡形成の低下が観察された。15ml/分で、ダイからのガスの放出に伴い圧の低下がほとんど一定に生じていた。トルクは0.5〜15ml/分の範囲内では影響を受けなかった。
【0165】
【表29】

【0166】
2.3.COで処理する前および後のEudragit E100の物理化学的特性
臨界未満または超臨界二酸化炭素での処理がポリマーに変化を誘導した可能性があるので、Eudragit E100POの物理化学的特性を二酸化炭素で処理する前および後に調査した。
【0167】
変調DSCを行って、Eudragit E100POの熱的特性を調査した。ガラス転移は、逆DSCシグナルを使用して測定した。結果を表30に示す。これらの結果は、標準パンを使用した時に処理前および後のガラス転移の位置に差異があることを示す(t−検定、n=3、p<0.05)。転移の開始および終点を考察した時(ベースラインの屈曲が観察される温度の、それぞれTおよびTによる)、処理前の範囲を処理後の範囲と比較すると小さく、押出し法中にポリマーで熱的に反応性の要素が改変されたことを示す。脱重合が熱の影響下で起こったかもしれないし、またはポリマー鎖の構造が増大したかもしれない。Tgの位置は外部に対して密閉されたパンを使用した時に変わらなかったが、範囲は幾分異なり、標準パンを使用した結果を確認した。
【0168】
【表30】

【0169】
TGA分析は残存溶媒の損失を測定するために行った。表31は処理前後で残存溶媒に差異は無いことを示す。
【0170】
【表31】

【0171】
Eudragit E100POの溶解は、二酸化炭素で処理後の溶解プロファイルに及ぼす効果があるかどうかを評価するために測定した。0.1N HCl中で測定した時、溶解プロファイルの比較ではCOで処理したサンプルが5、15および30分の時点で、より迅速に溶解することを示した(t−検定、n=3、P<0.05)。45分後、両サンプルは完全に溶解した。
【0172】
興味深いことには、同じ観察が0.01N HCl中で行った時の溶解実験でも得ることができ(t−検定に基づき5および15分の時点で、n=3、P<0.05)、そしてこれにより0.1N HCl中で結果を確認した。
【0173】
二酸化炭素の処理前および後のポリマーの粒子サイズを、表32に示す。これらの結果に基づき、処理前のサンプルは二酸化炭素で処理したサンプルに比べて小さい平均粒子サイズを有する。Noyes−Whitneyの式(第I章を参照にされたい)に従い、より小さい粒子サイズがより迅速な溶解をもたらし、すなわち処理前のサンプルは、より迅速に溶解するはずであると予想した。しかし図19および20によれば、これは観察されなかった。PVP−VA64のように、処理したサンプルのより迅速な溶解速度は、COが押出し機の出口で膨張した時の気泡を介した形態の変化によるのかもしれない。
【0174】
したがって比表面積および顕微鏡(光学顕微鏡およびSEM)の測定をサンプルについて行った。
【0175】
【表32】

【0176】
比表面積の測定では、未処理サンプル(2.324m/g)が処理サンプル(0.073m/g)に比べて大きな比表面積を有することが示された。未処理サンプルに関するこの大きな比表面積は、二酸化炭素で処理したサンプルに比べて小さい粒子サイズにより説明することができる。
【0177】
PVP−VA64のように、光学顕微鏡写真は気泡が互いに連結した薄壁からなることを示した。またSEM図は、二酸化炭素で処理したポリマーの形態が、処理前の球状様粒子から処理後に小板へと変化したことを明らかに示す。これらの小板はCOが押出し機の出口で膨張した時に発泡段階で形成された。これらSEM図で、Eudragit E100POの処理前および後の粒子サイズおよび比表面積に差異を確証した。
2.4.Eudragit E100POに関する結論
PVP−VA64に最適であると見いだされた押出し機の設定およびスクリュー形状は、Eudragit E100POにも使用することができた。圧の解除での定常状態条件および有意なポリマーの気泡形成を得るための方法は、Eudragit E100POについても同定できた。この方法は注入ガスの圧力を上げながら、バレル内の温度を次第に下げることからなる。さらに処理温度を少なくとも15℃下げることができるので、COはEudragit E100の可塑剤としても作用すると結論できる。定常状態は最適なポンプ圧および温度設定の関数として得られる。Eudragit E100POで得られた最大圧は約60バールであり、これは押出しがこの場合に臨界未満の条件下でも行われたことを意味する。
【0178】
ポリマーの物理化学的特性決定では、形態がCO処理の関数として変化したことが明らかなので、0.1N HClならびに0.01HClの両方でポリマーの増大した溶解が観察された。またガラス転移の測定に基づき、押出しおよび二酸化炭素の注入後に差異が観察された。
3.粉砕効率
粉砕の効率を測定するために、二酸化炭素注入を用いて、または用いずに押出した押出し物の例を、粒子サイズの測定に再びかけた。
【0179】
25gの各サンプルをバーミックスの研究室用ミルで30秒間粉砕し、そして粒子サイズを振動ふるい法を使用して得た(振幅1.5mm、10分)。
【0180】
【表33】

【0181】
サンプル“R51211/PVP−VA64 40/60後”に関するふるい分析中、500ミクロンのふるいが粒子で詰まることが観察された。これは恐らく粒子間の静電的相互作用により、ふるい中に凝集を生じたのであろう。しかし視覚的観察では、このサン
プルの粒子サイズは二酸化炭素で処理する前のサンプルに比べて小さかったことを示した。したがってサンプルを顕微鏡の粒子サイズ分析でさらに分析した。この分析では二酸化炭素で処理した後の粒子サイズのサンプルが処理前よりも小さいことが示された。COで処理した押出し物について、中央粒子サイズは約4ミクロンであった。
結論:
これらの結果は、二酸化炭素で処理した押出し物の粒子サイズが二酸化炭素で処理しなかった押出しサンプルに比べて小さいことを示す。換言すると、溶融押出し法中の二酸化炭素の注入および続いて膨張および気泡形成により、押出し物は粉砕し易くなる。
V.全般的結論
モデルポリマーとしてPVP−VA64を使用して、(a)加圧二酸化炭素の注入、(b)押出し機内での圧の形成、(c)ポリマーと二酸化炭素との間に完全な接触を供給して、加圧ガスをポリマーに溶解できること、および(d)二酸化炭素の膨張による気泡の形成を可能とする最適な押出し機の形状およびスクリュー設計が見いだされた。この形状はまた、圧の解除で有意なポリマーの気泡形成を伴う定常状態(圧力低下なし、すなわち二酸化炭素の漏れが無い)の条件を確立するための方法も提供する。この方法は注入ガスの圧を上げながら、バレル内の温度を次第に下げることからなる。
【0182】
さらにそれぞれ30℃および15℃まで処理温度を下げることができるので、COはPVP−VA64およびEudragit E100POの両方の可塑剤としても作用すると結論できる。定常状態は最適なポンプ圧および温度設定の関数として得られる。PVP−VA64で得ることができた最大圧は約65バールであり、そしてEudragit
E100POについては60バールであった。これは押出しが臨界未満の条件下で行われたことを意味する。
【0183】
気泡形成は両ポリマーについて観察され、形態に有意な変化をもたらし、ポリマーの上昇した溶解を提供した。Eudragit E100についてはガラス転移の位置が変化した。
【0184】
【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】二軸スクリュー押出し機の図解による設定1。二酸化炭素はゾーン3に注入され、そしてガス抜き口はゾーン6の先に見え、二酸化炭素を膨張させて大気圧に戻す。
【図2】二軸スクリュー押出し機の図解による設定2。二酸化炭素はゾーン3に注入される。さらに下流で、バレルは完全に閉じている。二酸化炭素はダイを出ると解除されて大気圧に戻る。
【図3】スクリュー形状1の図解による設定。1つのメルトシールが二酸化炭素の注入前に逆輸送要素により得られ、そして別のメルトシールがガス抜き口前で得られる。これら2つのメルトシールの間に、輸送ゾーンおよび2つの混合ゾーンが提供される。
【図4】スクリュー形状2の図解による設定。1つのメルトシールが二酸化炭素の注入前に逆輸送要素により得られ、そして別のメルトシールがダイプレート中で得られる。ポリマーに二酸化炭素を分配するために、2つの混合ゾーンがメルトシール後の下流に提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が小板として形成されることを特徴とする、ポリマーPVP−VA−60またはポリマーEudragit−E100−POの粒子。
【請求項2】
比表面積が0.350m/gよりも大きい、請求項1に記載のポリマーPVP−VA−60の粒子。
【請求項3】
40(重量/重量)%未満が100μより小さい、請求項1に記載のポリマーEudragit−E100−POの粒子。
【請求項4】
粒子が小板として形成されることを特徴とする、ポリマーPVP−VA−60またはポリマーEudragit−E100−POおよび有効成分を含んでなる粒子。
【請求項5】
有効成分がイトラコナゾールである請求項4に記載の粒子。
【請求項6】
ポリマーに対するイトラコナゾールの重量対重量比が約10/90〜約40/60の範囲である、請求項5に記載の粒子。
【請求項7】
請求項4ないし6に規定された治療に有効な量の粒子を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項8】
請求項4ないし6に規定された粒子を製薬学的に許容され得る賦形剤と完全に混合し、そしてこのようにして得られた混合物から治療に有効な量の粒子を含んでなる製薬学的剤形を作製する工程を含んでなる、請求項7に記載の製薬学的剤形の調製法。
【請求項9】
−ポリマー、またはポリマーおよび有効成分の混合物を溶融押出し機に供給し、
−ポリマー、またはポリマーおよび有効成分の混合物を、輸送要素および混練要素で修飾されたスクリューにより、溶融押出し機のバレルを通して輸送し、
−加圧ガスを、バレルに配置された口を通して溶融押出し機のバレルに注入し、
−ポリマー、またはポリマーおよび有効成分の混合物、および加圧ガスを臨界未満または超臨界条件下で混合し、
−ポリマー、またはポリマーおよび有効成分の混合物をダイプレートの後で膨張させ、そして
−押出し物を粉砕する、
工程を含んでなり、加圧ガス注入部位でスクリュー形状に逆輸送要素を配置することにより該部位の前にメルトシールを作製することを特徴とする、請求項1または請求項4に記載の粒子の調製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−505084(P2007−505084A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525829(P2006−525829)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052104
【国際公開番号】WO2005/023215
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】