説明

小粒径エレクトロルミネセンス燐光体の製法及びD50値が10μm以下である粉末

【課題】小粒径エレクトロルミネセンス燐光体の製法及びD50値が10μm以下である粉末を提供する。
【解決手段】銅で活性化された硫化亜鉛粒子(該粒子はD50値が10μm以下の粒径分布を有する。)を含有するエレクトロルミネセンス燐光体粉末であって、粒径が約15μmを超えるのは該粒子の25%以下であり、及び/又は、該粒子は24時間後の輝度が15フートランベルト以上である粉末。該粒子は、銅をドープした硫化亜鉛を酸化亜鉛、硫黄及び塩化物含有フラックスと混合して第一焼成し、該混合物を迅速に100℃未満に冷却し、次いで該混合物を混練及び第二焼成して粉末を与える方法によって製造される。次いで、該粉末は狭い粒径分布(90%を超える粒子が約5μm〜約15μmの範囲の粒径にある。)をもつエレクトロルミネセンス粉末を与えるためにエルトリエーションすることができる。第一焼成温度をより厳重に制御することによって(若干粒径分布は幅広くなるが)エルトリエーション工程を省略することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主としていわゆる厚膜エレクトロルミネセンス(EL)ランプに使用される硫化亜鉛をベースとしたエレクトロルミネセンス燐光体に関する。より具体的には、本発明は小粒径エレクトロルミネセンス燐光体の製造方法及び微小な燐光体粒子を含有する粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に慣例的な厚膜ELランプの断面図を示す。ランプ2は二つの誘電層20及び22を有する。プラスチックフィルム12bで被覆された第一導電材料4(例えばアルミニウム又はグラファイト)がランプ2の第一電極を形成し、一方で、第二プラスチックフィルム12aで被覆された透明導電材料6(例えばインジウムスズ酸化物)の薄層が第二電極を形成する。二つの導電電極4及び6に挟まれているのが誘電材料14でできた二つの層20及び22であり、これらは例えばシアノエチルセルロース又はシアノエチルデンプンとすることができる。第一電極4に隣接するのが誘電材料14の層であり、この層内には強誘電性材料10(好ましくはチタン酸バリウム)の粒子が埋め込まれている。第二電極6に隣接するのが誘電材料14の層であり、この層内にはエレクトロルミネセンス燐光体8の粒子が埋め込まれている。厚膜ELランプ用に入手可能な燐光体は種々の活性化剤(例えば、Cu、Au、Ag、Mn、Br、I及びCl)をドープした硫化亜鉛から主として構成される。このような燐光体の例は米国特許第5,009,808号、同第5,702,643号、同第6,090,311号及び同第5,643,496号に記載されている。典型的には、EL燐光体の個々の粒子は水分による劣化に対する抵抗力を高めるために無機被膜で包まれている。そのような被膜の例は米国特許第5,220,243号、同第5,244,750号、同第6,309,700号及び同第6,064,150号に記載されている。
【特許文献1】米国特許第5,643,496号明細書
【特許文献2】米国特許第6,702,958号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
銅で活性化された硫化亜鉛エレクトロルミネセンス(EL)燐光体(ZnS:Cu)は周知である。該燐光体は典型的にはCl及び/又はMnと共に同時活性化される。そのような燐光体の例及びその製造方法が米国特許第4,859,361号、同第5,702,643号及び同第6,248,261号に記載されている。エレクトロルミネセンス燐光体を使用するいくつかの用途では燐光体が小粒径を有することを必要とする。例えば、装飾目的に使用されるEL燐光体塗料は安定な塗料懸濁系を作るために粒径の小さなEL燐光体を必要とする。また、ELランプのメーカーも粒径の小さなEL燐光体の粉末に興味がある。というのは、そのような燐光体の粉末はより均質なEL燐光体層を作り、同じ寸法のランプに対しては必要とする燐光体がより少なくなるので材料費を節約することもできるからである。
【0004】
米国特許第5,643,496号は23μm未満の粒径をもつEL燐光体の製造法を記載している。米国特許第6,702,958号は粒径分布を付随的に強調し、10〜20μmの粒径をもつEL燐光体の製造法を記載している。しかしながら、小粒径のEL燐光体を製造する固体合成法は充分に確立されていない。例えば15μm未満の粒径をもつ材料を得るために、先に開示された方法では合成されたままでは粒径が通常20μmを超えるために後に廃棄されることになる粗大で無駄な部分を生成し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の対象の一つは、D50値が10μm以下の粒径分布を有するEL燐光体粒子の新規な粉末であって、粒径が約15μmを超えるのは該粒子の25%以下であり、及び/又は、該粒子が15フートランベルト以上の輝度を有する粉末を提供することである。本明細書では、粒径は累積体積率(%)に関するものであり、とりわけ、D50値は粒子の累積体積が50%に到達したときの粒径である。
【0006】
本発明の別の対象は、D50値が10μm以下の粒径分布をもつEL燐光体粒子の新規な製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の更なる対象は、狭い粒径分布(該粒子の90%超が約5μm〜約15μmの範囲の粒径にあり、D50値が10μm以下である。)を与えるために焼成した後に粒子をエルトリエーションすることを含むEL燐光体粒子の新規な製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の更なる対象は、粒子が10μm以下のD50値である粒径分布を有するように第一焼成温度を1050〜1085℃の狭い範囲に制御することを含むEL燐光体粒子の新規な製造方法を提供することである。
【0009】
添付図面及び以下の好ましい実施形態を参照することによって本発明の上記及びその他の対象及び利点は本発明が属する分野の当業者にとって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、銅で活性化された硫化亜鉛粒子(該粒子はD50値が10μm以下の粒径分布を有する。)を含有するエレクトロルミネセンス燐光体粉末であって、粒径が約15μmを超えるのは該粒子の25%以下であり、及び/又は、該粒子は24時間後の輝度が15フートランベルト(fL)以上の粉末である。D50値は図2においては曲線が50%の累積体積ラインを通過する地点として示される。
【0011】
好ましくは、粒径が約15μmを超えるのは粉末中の粒子の15%以下であり、より好ましくは、粒径が約15μmを超えるのは粒子の10%以下である。粉末の粒径分布は60%を超える粒子が約5μm〜約15μmの範囲の粒径を有することを示す。好ましくは75%を超え、更に好ましくは90%を超える粒子が約5μm〜約15μmの範囲の粒径を有する。
【0012】
これらの粒子は、銅をドープした硫化亜鉛を酸化亜鉛、硫黄及び塩化物含有フラックスと混合して第一焼成し、該混合物を迅速に100℃未満に冷却し、次いで該混合物を混練及び第二焼成して粉末を与えることを含む方法によって製造される。次いで、該粉末は狭い粒径分布(90%を超える粒子が約5μm〜約15μmの範囲の粒径にある。)をもつエレクトロルミネセンス粉末を与えるためにエルトリエーション(elutriation:水簸、傾瀉)することができる。更なる実施形態では、第一焼成温度をより厳重に制御することによって(若干粒径分布は幅広くなるが)エルトリエーション工程を省略することができる。
【0013】
1.前処理
2種類のZnS粉末を使用することができる。一方は1重量パーセント(wt%)の塩素を有し、一方は塩素を有しない。該ZnS粉末は配合に直接使用してもよい。該ZnS粉末は水溶液中で銅化合物を用いて前処理する(湿式ドーピング)のが好ましい。約1ガロン(4.55リットル)の冷たい脱イオン(DI)水で満たした適切な容器内に、攪拌しながら適量の硫酸銅(無水物のCuSO4又は水和物のCuSO4・5H2O)を発光色要求に基づいて加え;次いで、1キログラム(kg)のZnS粉末を加える。約20分間攪拌を続け、次いで沈殿、デカンテーション及び濾過を行う。粉末を140℃で少なくとも20時間オーブン中で乾燥する。処理したZnSは表面を覆うCuS層を有し、配合のための準備が整った。
【0014】
2.エルトリエーションする実施形態
この実施形態では、12〜17μmの範囲のD50粒径をもつ材料を最初に調整し、次いで該材料を水でエルトリエーションしてD50値が10μm以下の粒径分布を有する微細粒径を得る。この方法で製造した微細材料は良好な粒子形態及び狭い粒径分布を示す。
【0015】
a.合成
粒径が12〜17μmにある燐光体は二つの焼成工程で調製される。第一焼成工程では、Cuを湿式ドーピングした硫化亜鉛を適量の酸化亜鉛(ZnO)、硫黄及び塩化物含有フラックスとブレンドする。塩化物含有フラックスはアルカリ金属とアルカリ土類の塩化物の混合物とすることができ、好ましくは塩化マグネシウム(MgCl2)と塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化バリウム(BaCl2)の一方又は両方との混合物とすることができる。該ブレンド混合物は好ましくはZnSの重量に対する重量パーセント(wt.%)で表して0.03〜0.11wt.%のCu、0.1〜0.8wt.%のZnO、1〜8wt.%の硫黄、及び0.5〜8wt.%の塩化物フラックスを含有する。
【0016】
該ブレンド混合物は空気中で約1050℃〜約1150℃の温度で約25〜約90分間焼成する。第一焼成の後は迅速に冷却するのが好ましい。迅速な冷却は赤熱したるつぼをファン(送風機)の前に置くか又は圧縮空気をるつぼの底部へ吹きかけることにより達成することができる。典型的には、るつぼは約60分未満で反応温度から100℃未満まで冷却される。焼成材料を次いで水洗、乾燥、及び穏やかに混練(低強度ミリング)して結晶構造に欠陥を誘発する。混練時間は使用する装置の特定種類及び混練する材料の量に依存する。最適な混練時間はEL燐光体の当業者であれば容易に決定することができる。我々のケースでは、典型的な混練時間は450〜550gの材料に対して75〜150分間であった。
【0017】
混練後、材料を塩酸(スラリーのpHを0.3〜0.9に調製)で洗浄して、次いで水酸化ナトリウム(NaOH)、過酸化水素(H22)及びキレート剤(例えばジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA))を含有する塩基性溶液で洗浄する。好ましい実施形態では、塩基性溶液は燐光体の重量に対して2〜4.5wt.%のDTPA、2.5〜4.0wt.%のNaOH、及び5〜15wt.%の35%H22溶液を含有する。この化学洗浄では更に燐光体の表面からフラックス残渣及び硫化銅を取り除く。次いで、該材料を高温の脱イオン水で洗浄してから乾燥して、第一焼成工程を完了する。
【0018】
第二焼成工程では、第一焼成工程からの材料を適量の銅供給源及び酸化亜鉛とブレンドする。好ましくは、第一焼成工程からの材料は0.1〜1wt.%の無水硫酸銅(CuSO4)及び5〜15wt.%の酸化亜鉛(ZnO)とブレンドする。次いで、ブレンドした材料を空気中で約700℃〜約850℃の温度で約1〜約4時間焼成する。焼成ケーキを炉内で約430℃まで2時間かけてゆっくりと冷却するのが好ましい。次に、該ケーキを炉外で自然に冷却する。この焼成材料を第一焼成工程で使用した高温脱イオン水、酸、及びDTPA−NaOH−H22の塩基性溶液で洗浄する。残留している如何なる化学的残渣をも取り除くために最後に水洗した後、該材料を乾燥し、500メッシュ又は635メッシュのステンレス網を用いてふるいにかけて、EL燐光体を形成する。これにより該EL燐光体はエルトリエーションへの準備が整った。
【0019】
b.エルトリエーション
適当な大きさの容器に、出来上がったEL燐光体粉末及び適量の冷たいDI水を加える。攪拌しながら、少量の液状分散剤(例えばR.T.バンダービルト(R.T.Vanderbilt Company,Inc.)社製の商品名Darvan 821A)を加え、2〜10分間攪拌し、一定時間(これは製造された特定のロットに依存する。)沈殿させる。上部の溶液を別の容器にデカンテーションして微細粒子を集める。充分な微細粒材料が集められるまで、又は元の材料が素早く沈殿する(大部分の微粒子が分離されたことを示す。)まで、元の容器中の残りを繰り返しエルトリエーションする。所望の粒径を得るために、集められた微粒子は必要に応じて更にエルトリエーションすることができる。この微細材料をオーブン中で乾燥して調製を完成する。通常、オーブン乾燥後はふるいにかける必要はない。
【0020】
3.直接合成する実施形態
この実施形態では、EL燐光体はエルトリエーション手順を経ることなく製造する。一般的な調製手順は、10μm未満の粒径を達成するために第一焼成工程の温度及び焼成時間をより厳密に制御することを除いて、上述した方法に極めて似ている。該焼成温度は通常1050℃〜1085℃であり、焼成時間は25〜55分である。最終生成物は635メッシュのステンレス網でふるい分けする。この実施形態ではエルトリエーションする実施形態ほどの時間を要しないが、粒径分布が若干幅広い材料が製造される。
【0021】
オレンジ発光EL燐光体のための調製手順は、第二焼成工程でマンガン化合物(例えばMnCO3)を加えてより高い温度で実施することを除き、同様である。
【実施例】
【0022】
4.実施例
小粒径EL燐光体のいくつかの例を以下に示す。粒径はMicrotrac X100粒径分析計(リーズ・アンド・ノースラップ・インスツルメント(LEEDS and NORTHRUP Instruments)社製)を用いて測定した。粒径は、粒子の累積体積率が50%に到達する粒径であるD50で表す。以下の実施例1及び2はD50粒径が10〜15μmのものである。実施例3〜6はD50粒径が10μm未満のものである。実施例5はエルトリエーションを行い、実施例1〜4及び6はこれを行わない。図2は実施例1〜5に対する粒径分布曲線を示す。x軸は粒径(μm)を表し、y軸は所与の値を下回る粒径をもつ材料の累積体積率(%)を表す。
【0023】
燐光体の試験は、慣例的な厚膜エレクトロルミネセンス燐光体ランプを100V、400Hz、相対湿度(R.H)50%、70°F(21℃)の環境で運転して行った。試験ランプは約40μm厚の燐光体層及び約26μm厚のチタン酸バリウム誘電層を備える。ランプは燐光体をアセトンとジメチルホルムアミドの混合物中に溶解したシアノレジンバインダー(信越化学工業製)と混ぜ合わせることで構築する。具体的には、バインダーは575gのアセトン、575gのジメチルホルムアミド及び400gのシアノレジンを混合することによって作った。液状バインダー中の燐光体のパーセンテージは50wt.%であり、バインダー−燐光体混合物を乾燥した後の燐光体のパーセンテージは79.5wt.%であった。燐光体の懸濁系を、インジウム−スズ酸化物(ITO)(商品名OC−200、CPフィルム(CPFilm)社製)の透明な導電層を有する0.0065〜0.0075in(0.1651〜0.1905mm)の厚さのPETフィルム上にブレードコーティングした。乾燥後、チタン酸バリウム層を、シアノレジンバインダー中に分散させたチタン酸バリウム懸濁系を用いて同様に燐光体層上に塗布した。具体的には、バインダー−チタン酸バリウム混合物は375gの液状シアノレジンバインダー、375gのチタン酸バリウム及び82.5gのジメチルホルムアミドを混合することによって作った。乾燥後のバインダー中のチタン酸バリウムのパーセンテージは79.5wt.%であった。グラファイト懸濁系(商品名423SS、アチェソン・コロイド(Acheson Colloids)社製)を用いて、40〜60μm厚のグラファイト層を備えた後部電極を乾燥したチタン酸バリウム誘電層に塗布した。リード線を取り付け、ランプ全体を透明軟質フィルム(商品名Aclam TC200、ハネウェル(Honeywell Corp.)社製)で両側から積層した。ランプを安定させて代表的な測定値を得るために、輝度を測定する前にランプを24時間運転した。本明細書では輝度とは100V、400Hzで24時間運転した後の慣例的な厚膜エレクトロルミネセンスランプにおける燐光体の明るさを意味する。輝度の値はフートランベルト(fL)で与えられる。
【0024】
実施例1
4Lの容器中に、1.8Lの冷たいDI水を加えた。攪拌しながら、1.441gの無水CuSO4(5.4wt.%の水分を含有)及び1wt.%の塩素を含有する600gのZnSを加えた。該スラリーを約20分間攪拌した後に沈殿させた。ここでは、ZnSの重量に対して0.090%のCuを加えた。こうして処理したZnSを濾過及びオーブン乾燥(140℃、62.5時間)した。
【0025】
550gの処理及び乾燥したZnsを取り出し、これを0.72g(0.13wt.%)の酸化亜鉛(ZnO)、11.43g(2.1wt%)の硫黄、9.62g(1.75wt.%)の塩化マグネシウム(MgCl2)及び1.38g(0.25wt.%)の塩化ナトリウム(NaCl)を含有する塩化物フラックスと混合した。次に、該混合物を500mLのシリカるつぼを用いて空気中で1085℃で70分間焼成した。該焼成材料を含有する赤熱したるつぼを炉から取り出し、二台の送風機の前で空冷した。次いで、大部分の塩化物フラックスを取り除くために該焼成材料を高温の脱イオン(DI)水で数回洗浄し、120℃で15時間乾燥した。該材料を100メッシュの網でふるい分けし、次いで150分間混練した。その後、該材料を塩酸溶液(pH0.3〜0.4)で洗浄し、その後に高温のDI水で(pH>4になるまで)数回洗浄し、4wt.%のDTPA、2.8wt.%のNaOH及び8.6wt.%のH22(35%溶液)を含有する塩基性溶液で洗浄した。次いで、該燐光体を高温のDI水で洗浄し、120℃で15時間乾燥させて第一焼成工程を完了した。
【0026】
第二焼成工程では、第一焼成工程からの材料100gを0.50g(0.50wt.%)の無水CuSO4及び10.00g(10.0wt.%)のZnOとブレンドし、735℃で2時間15分間空気中で焼成した。該材料を炉内で2時間かけて455℃まで冷却した(約2.3℃/分の冷却速度)。その後、該材料を炉から取り出して室温まで自然冷却した。該焼成材料を高温の脱イオン水で洗浄し、塩酸で洗浄し、次いでDTPA−NaOH−H22(4.5wt.%のDTPA、2.8wt.%のNaOH及び12.9wt.%のH22(35%溶液))塩基性溶液で2度洗浄した。最後に水洗した後、該材料を乾燥し、635メッシュのステンレス網でふるい分けして小粒径EL燐光体を得た。最終的な635メッシュ材料の収率は第一工程の配合段階で使用される処理したZnSの量に対して65%であった。失われた材料は多段階焼成、洗浄、ふるい分け(粗粒が上に残る)、及びその他の処理工程によるものである。表1に選別したデータを示す。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例2
この材料は、ZnSの素材が塩素を含有しなかったことを除き、実施例1と同様の方法で作った。最終的な635メッシュ材料の収率は第一工程の配合段階で使用される処理したZnSの量に対して70%であった。出発材料としてClを含有しないZnSを使用することによって最終生成物の収率が若干向上した。表2にデータを示す。
【0029】
【表2】

【0030】
実施例3
この材料は、(1)Clを含有しないZnSを0.11wt.%のCu(0.090wt.%に代えて)で処理したこと、(2)第一焼成工程に使用する塩化物フラックス組成物が0.125wt.%のNaCl(0.25wt.%に代えて)及び0.875wt.%のMgCl2(1.75wt.%に代えて)で構成され、0.065wt.%のZnO(0.13wt.%に代えて)を配合に使用したこと、(3)混合物を250mLのアルミナるつぼを用いて1050℃で34分間空気中で焼成したことを除き、実施例2と同様の方法で作った。
【0031】
最終的な635メッシュ材料の収率は第一工程の配合段階で使用される処理したZnSの量に対して73.6%であった。本サンプルに対する選別したデータを表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
実施例4
この材料は、100mLのアルミナるつぼを第一焼成工程で使用したことを除いて、実施例3と同様の方法で作った。最終的な635メッシュ材料の収率は第一工程の配合段階で使用される処理したZnSの量に対して77.8%であった。
【0034】
本サンプルに対する選別したデータを表4に示す。より小さなるつぼの方が狭い粒径分布と共に若干明るい材料を作り出すことが分かる。
【0035】
【表4】

【0036】
実施例5
この材料は、(1)ZnSの前処理工程にて、0.087wt.%のCu(0.090wt.%に代えて)を用い、処理したZnSを130℃で20時間オーブン乾燥したこと、(2)第一焼成工程に使用する塩化物フラックス組成物が1.05wt.%のNaCl(0.25wt.%に代えて)、2.35wt.%のMgCl2(1.75wt.%に代えて)及び0.65wt.%の無水BaCl2(0%に代えて)で構成され、0.26wt.%のZnO(0.13wt.%に代えて)を配合に使用したこと、(3)混合物を500mLのシリカるつぼを用いて1085℃で75分間空気中で焼成したこと、(4)第二焼成工程を770℃で2時間15分間行い、該材料を炉内で566℃まで約1.7℃/分の冷却速度で冷却したこと、(5)第二焼成、洗浄及び乾燥後に該材料を325メッシュ(635メッシュに代えて)のステンレス網でふるい分けしたこと、(6)次いで、こうして得られた材料の粗大部分を取り除くために水溶液中でエルトリエーションしたことを除き、実施例1と同様の方法で作った。エルトリエーション手順は以下に記す。
【0037】
2リットルのガラスビーカーに、上述した方法で製造した300gのEL燐光体及び1400mLの冷たいDI水を加えた。攪拌しながら、1.00gの液状分散剤(例えば、R.T.バンダービルト(R.T.Vanderbilt Company,Inc.)社製の商品名Darvan 821A)を加え、約5分間スラリーを攪拌し、次いで4分間沈殿させた。スラリー上部を第二容器にデカンテーションして微細粒子を集めた。元の容器を冷たいDI水で1500mLの量まで再度満たした。1.00gの分散剤を加え、該エルトリエーション手順(攪拌、沈殿及びデカンテーション)を繰り返した。上記二回分の微粒子を混ぜ合わせた。この微細粒子部分をFine−1(収量:約115g)と呼び、この時点で得られた粗大粒子部分をCoarse−1(収量:約182g)と呼ぶ。必要に応じてエルトリエーションの条件を変更することによって、より多くの微細粒子を粗大粒子部分から得ることができる。
【0038】
得られたFine−1の90gを取り出して1リットルのガラスビーカーに入れ、700gの冷たいDI水を加えた。上述したエルトリエーション手順(攪拌5分間、沈殿4分間、その後のデカンテーションによる収集)を2度繰り返した。該溶液を濾過し、燐光体を漏斗に入った高温のDI水ですすぎ、最後に120℃で15時間オーブン乾燥した。この第二のエルトリエーション工程で得られた微細粒子部分をFine−2(収量:約38g)と呼び、粗大粒子部分をCoarse−2(収量:約48g)と呼ぶ。
【0039】
Fine−2部分に対する選別されたデータを表5に示す。図2の実施例5から、エルトリエーションを行った場合は、より狭い粒径分布を示すことが分かる(曲線の勾配がより垂直に近い。)。このことは流動層反応器内で粒子を良好にコーティングする観点で重要である。この方法の欠点は全体の工程がエルトリエーション工程のために長くなることである。
【0040】
【表5】

【0041】
この材料は、6.32wt.%のMnCO3を第二焼成工程で加え、該焼成を860℃で2時間30分実施したこと除いて、実施例3と同様の方法で作った。化学洗浄では、第一塩酸洗浄の後、DTPA−NaOH−H22溶液を用いたアルカリ洗浄前に第二の塩酸洗浄を追加した。このサンプルに対する選別したデータを表6に示す。
【0042】
【表6】

【0043】
本発明の実施形態を明細書及び添付図面を用いて説明してきたが、本発明は明細書及び図面に照らして解釈される添付の特許請求の範囲によって画定されることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】慣例的な厚膜ELランプの断面図である。
【図2】実施例1〜5に対するEL燐光体粒子の粒径分布を示す図である。y軸はx軸によって示される所与の値を下回る粒径をもつ材料の累積体積率(%)を表す。
【符号の説明】
【0045】
2 厚膜ELランプ
4 第一電極(第一導電材料)
6 第二電極(透明導電材料)
8 エレクトロルミネセンス燐光体
10 強誘電性材料
12a プラスチックフィルム
12b プラスチックフィルム
14 誘電材料
20 誘電層
22 誘電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅で活性化された硫化亜鉛粒子(該粒子はD50値が10μm以下の粒径分布を有し、粒径が約15μmを超えるのは該粒子の25%以下である。)を含有するエレクトロルミネセンス燐光体粉末。
【請求項2】
粒径が約15μmを超えるのは該粒子の15%以下である請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
粒径が約15μmを超えるのは該粒子の10%以下である請求項2に記載の粉末。
【請求項4】
該粒子の60%超が約5μm〜約15μmの範囲の粒径を有する請求項1に記載の粉末。
【請求項5】
該粒子の75%超が約5μm〜約15μmの範囲の粒径を有する請求項4に記載の粉末。
【請求項6】
該粒子の90%超が約5μm〜約15μmの範囲の粒径を有する請求項5に記載の粉末。
【請求項7】
銅で活性化された硫化亜鉛粒子(該粒子はD50値が10μm以下の粒径分布を有し、該粒子は24時間後の輝度が15フートランベルト以上である。)を含有するエレクトロルミネセンス燐光体粉末。
【請求項8】
該粒子の60%超が約5μm〜約15μmの範囲の粒径を有する請求項7に記載の粉末。
【請求項9】
該粒子の75%超が約5μm〜約15μmの範囲の粒径を有する請求項8に記載の粉末。
【請求項10】
該粒子の90%超が約5μm〜約15μmの範囲の粒径を有する請求項9に記載の粉末。
【請求項11】
銅をドープした硫化亜鉛に酸化亜鉛、硫黄及び塩化物含有フラックスを配合して混合物を形成する工程と;
該混合物を1050℃〜1150℃の温度範囲で25〜90分間第一焼成する工程と;
焼成した該混合物を約60分未満で100℃未満まで第一冷却する工程と:
冷却した該混合物を混練して混練混合物を形成する工程と;
700〜850℃の温度範囲で1〜4時間該混練混合物を第二焼成する工程と;
銅で活性化された硫化亜鉛粒子(D50値が12〜17μmの粒径分布を有する。)を含有するエレクトロルミネセンス粉末を与えるために、焼成した該混練混合物を第二冷却する工程と;
銅で活性化された硫化亜鉛粒子(D50値が10μm以下の粒径分布を有する。)を含有するエレクトロルミネセンス粉末を与えるために、冷却した該混練混合物をエルトリエーションする工程と;
を含むエレクトロルミネセンス燐光体粉末の製造方法。
【請求項12】
第一焼成が約1085℃で約75分間行われる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第二焼成が約770℃で約2時間15分間行われる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
銅をドープした硫化亜鉛は配合されて混合物を形成する前に塩素を含有する請求項11に記載の方法。
【請求項15】
第二冷却が約1.5〜2℃/分の速度で行われる請求項11に記載の方法。
【請求項16】
混練工程と第二焼成工程の間に、混練混合物を酸で洗浄し、次いで塩基性溶液で洗浄することでフラックス残渣及び硫化銅を粒子表面から取り除く請求項11に記載の方法。
【請求項17】
銅をドープした硫化亜鉛に酸化亜鉛、硫黄及び塩化物含有フラックスを配合して混合物を形成する工程と;
該混合物を1050℃〜1085℃の温度範囲で25〜55分間第一焼成する工程と;
焼成した該混合物を約60分未満で100℃未満まで第一冷却する工程と:
冷却した該混合物を混練して混練混合物を形成する工程と;
700〜850℃の温度範囲で1〜4時間該混練混合物を第二焼成する工程と;
焼成した該混練混合物を第二冷却する工程と;
銅で活性化された硫化亜鉛粒子(D50値が10μm以下の粒径分布を有する。)を含有するエレクトロルミネセンス粉末を与えるために、冷却した該混練混合物をふるいにかける工程と;
を含むエレクトロルミネセンス燐光体粉末の製造方法。
【請求項18】
第一焼成が約1050℃で約35分間行われる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第二冷却が約2〜2.5℃/分の速度で約2時間行われる請求項17に記載の方法。
【請求項20】
混練工程と第二焼成工程の間に、混練混合物を酸で洗浄し、次いで塩基性溶液で洗浄することでフラックス残渣及び硫化銅を粒子表面から取り除く請求項17に記載の方法。
【請求項21】
第一電極と、第二電極と、誘電材料を含有する第一誘電層と、エレクトロルミネセンス燐光体を含有する第二誘電層とを備えるエレクトロルミネセンスランプであって、これらの誘電層は第一及び第二電極の間に位置し、該燐光体は銅で活性化された硫化亜鉛粒子(D50値が10μm以下の粒径分布を有し、粒径が約15μmを超えるのは該粒子の25%以下である。)を含有するエレクトロルミネセンスランプ。
【請求項22】
第一電極と、第二電極と、誘電材料を含有する第一誘電層と、エレクトロルミネセンス燐光体を含有する第二誘電層とを備えるエレクトロルミネセンスランプであって、これらの誘電層は第一及び第二電極の間に位置し、該燐光体は銅で活性化された硫化亜鉛粒子(D50値が10μm以下の粒径分布を有し、24時間後の輝度が15フートランベルト以上である。)を含有するエレクトロルミネセンスランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−282997(P2006−282997A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32785(P2006−32785)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(394001685)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】