説明

小荷物用昇降機

【課題】かごの開口を開閉するかご戸の不用意な開きを的確に防止して常にかごを支障なく運転することができる小荷物用昇降機を提供する。
【解決手段】荷物出し入れ用の開口13を有するかご2と、開口13を開閉するかご戸14とを備え、かご戸14にはロック機構26が設けられている。かご戸14は、一対の戸板16a,16bが上下に移動することで開口13を開閉する構造で、ロック機構26はその一方の戸板16aに回動可能に設けられた手動式のロックレバー27と、他方の戸板16bに設けられた、ロックレバー27と係脱可能な係合体28とを備え、ロックレバー27が係合体28に係合することで一対の戸板16a,16bが突き当る閉合状態にロックされる。したがって、かご2内の荷物が荷崩れを起し、その荷物がかご戸14の衝突するようなことがあってもかご戸14が不用意に開放するようなことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、小荷物を建屋の各階に搬送するための小荷物用昇降機に関する。
【背景技術】
【0002】
小荷物用昇降機は、建屋の各階に渡って上下に延びる昇降路内に小荷物搬送用のかごを吊り下げてなる。かごは駆動装置としての巻上機により昇降路内で昇降移動するように運転される。建屋の各階には、荷物の出し入れ口が設けられ、この出し入れ口を通してかごに対する荷物の出し入れが行なわれる。
【0003】
各階の出し入れ口には出し入れ戸が設けられ、またかごの前面にはかご戸が設けられている。かご戸は手動で開閉する簡易式の場合が多く、このような簡易式のかご戸にあっては特に施錠用のロック機構などは設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−44725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが簡易式のかご戸の場合、かごの昇降移動中にかご内の荷物が荷崩れを起し、その荷物がかご戸に当る衝撃でかご戸が不用意に開き、荷物の一部がかごから突出し、昇降路の壁面に接触し、かごの運転に支障が生じるような恐れがある。
【0006】
そこで、この発明の実施形態は、かご戸の不用意な開きを的確に防止して常にかごを支障なく運転することができる小荷物用昇降機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、荷物の出し入れ用の開口を有するかごと、前記開口を開閉するかご戸とを備える小荷物用昇降機において、前記かご戸には、その閉合状態をロックするロック機構が設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、前記かご戸が、一対の戸板を有し、その一対の戸板が上下に移動することで前記開口が開閉され、前記ロック機構はその一方の戸板に回動可能に設けられた手動式のロックレバーと、他方の戸板に設けられた、前記ロックレバーと係脱可能な係合体とで構成され、前記ロックレバーが前記係合体に係合することで前記一対の戸板が突き当る閉合状態にロックされることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態に係る小荷物用昇降機の全体の構成を示す構成図。
【図2】その小荷物用昇降機における荷物の出し入れ口を示す斜視図。
【図3】その小荷物用昇降機における荷物搬送用のかごを示す正面図。
【図4】その荷物搬送用のかごのロック機構を示す正面図。
【図5】その小荷物昇降機で荷物を搬送する工程を順に示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1には小荷物用昇降機の全体の構成を示してあり、建屋にはその各階に渡って上下に延びる昇降路1が形成され、この昇降路1内にかご2とつり合い重り3とがロープ4を介して吊り下げられている。昇降路1の上部には駆動装置としての巻上機5、及びこの巻上機5を制御する制御盤6が設置され、巻上機5のシーブ5aにロープ4の途中が巻き掛けられ、シーブ5aの回転でロープ4が走行してかご2とつり合い重り3とが昇降路1内で互いに逆方向に昇降移動する。
【0012】
建屋の各階の壁面には、図2に示すように、昇降路1に通じる出し入れ口7が形成され、これら出し入れ口7にそれぞれ手動式の出し入れ戸8が設けられている。出し入れ戸8は、例えば上下動可能な一対の戸板8a,8bを備え、その上側の戸板8aを手で上方に引き上げると、その戸板8aに連動して下側の戸板8bが下方に移動し、また上側の戸板8aを下方に引き下げると、下側の戸板8bがその上側の戸板8aに連動して上方に移動し、このような戸板8a,8bの上下移動で出し入れ口7が開閉される構造となっている。
【0013】
建屋の各階の出し入れ口7の脇には操作盤9が設けられ、この操作盤9にかご呼びボタン10、行先階ボタン11、かご位置表示パネル12などが配設されている。これらかご呼びボタン10、行先階ボタン11、かご位置表示パネル12は、巻上機5を制御する制御盤6に電気的に接続されている。
【0014】
かご2は、図3に示すように、前面に荷物出し入れ用の開口13を有する箱形をなし、その前面に開口13を開閉する手動式のかご戸14が設けられている。このかご戸14は、かご2の前面に取り付けられた枠体15と、この枠体15の内側に上下に並んで配置された一対の戸板16a,16bとを備えている。枠体15の両側の桟材はガイド部17であり、これらガイド部17間に戸板16a,16bが配置されている。戸板16a,16bの両側部にはガイドシュー18が設けられ、これらガイドシュー18がそれぞれガイド部17に摺動自在に嵌合し、この嵌合で戸板16a,16bがガイド部17に沿って上下に移動することが可能となっている。
【0015】
枠体15の上部両側には滑車21が回転自在に取り付けられ、これら滑車21にワイヤ22が巻き掛けられている。これらワイヤ22の一端側の端部は上側の戸板16aの両端部に連結され、他端側の端部は下側の戸板16bにブラケット23を介して連結されている。
【0016】
通常時には、上側の戸板16aの下端と下側の戸板16bの上端とが突き当たる閉合状態にあり、この閉合状態によりかご2の前面の開口13が閉じられる。そしてこの閉合状態から上側の戸板16aを手で上方に引き上げると、ワイヤ22の緩みで戸板16aに連動して下側の戸板16bが自重で下方に移動し、この移動で両戸板16a,16bが互いに所定の距離だけ離間する開放状態となり、かご2の開口13が開かれる。
【0017】
また、この開放状態から上側の戸板16aを下方に引き下げると、ワイヤ22の張力で戸板16aに連動して下側の戸板16bが上方に移動し、その上側の戸板16aに下側の戸板16bが突き当って閉合し、かご2の開口13が閉じられる。
【0018】
このかご戸14には、図3及び図4に示すように、戸板16a,16bの閉合状態を保持する手動式のロック機構26が設けられている。このロック機構26は、例えば上側の戸板16aに設けられたロックレバー27と、下側の戸板16bに取り付けられた係合体28とで構成されている。
【0019】
ロックレバー27はL形をなし、その中間部がピン30を介して戸板16aに回動自在に取り付けられ、一端側端部が操作部31、他端側の端部が係合部32となっている。そして係合部32の縁部の一部が傾斜縁32aとなっている。
【0020】
ロックレバー27を支持したピン30には図4に示すようにスプリング34が装着され、このスプリングによりロックレバー27が反時計回り方向に弾性的に付勢されている。ロックレバー27はストッパ35に当接することでその回動範囲が規制され、通常時には係合部32が戸板16aの下方側に突出する状態に保持される。
【0021】
戸板16bに設けられた係合体28は、ロックレバー27の係合部32に対応する位置に設けられ、戸板16a,16bが互いに接近する方向に移動するときに、図4に鎖線で示すように係合部32の傾斜縁32aが係合体28の縁部に接触し、この接触でロックレバー27がスプリング34の弾性力に抗して時計回り方向に回動して係合部32が係合体28に係合し、この係合で戸板16a,16bの閉合状態がロックされる。
【0022】
そして、ロック状態のロックレバー27をその操作部に31に手を掛け、スプリング34の弾性力に抗して時計回り方向に回動することにより、係合部32を係合体28から外し、そのロックを解除することができるようになっている。
【0023】
次に、荷物を搬送する手順について、図5に示す流れ図を参照して説明する。通常時には、各階の台入れ口7は出し入れ戸8により閉じられ、かご2の開口13はかご戸14により閉じられ、そのカゴ戸4がロック機構26によりロックされている。
【0024】
荷物の搬送時には、その荷物の搬送元の階において、まず操作盤9のかご呼びボタン10を押してかご呼びの操作を行なう(S1)。この操作に応じてかご2がその階に到着した後には、出し入れ戸8を開放し、次にかご2のロック機構26を解除し、さらにかご戸14を開放する(S2)。そして、その出し入れ口7及び開口13を通してかご2内に荷物を搬入する(S3)。
【0025】
次に、かご戸14の戸板16a,16bを互いに接近する方向に移動して閉合する(S4)。この閉合に応じてロック機構26のロックレバー27が回動し、係合部32が係合体28に係合してかご戸14の閉合がロックされる(S5)。この後、出し入れ戸8を閉合して出し入れ口7を閉じる(S6)。
【0026】
次に、荷物の搬送先に対応する行先階ボタン11を操作する(S7)。この操作に応じてかごが搬送先である目的階に向って移動し、その目的階で停止する(S8)。かご2の移動中に、かご2内の荷物が荷崩れを起してかご戸14に衝突するようなことがあっても、そのかご戸14の戸板16a,16bの相互がロック機構26によりロックされているから、その衝突の衝撃などでかご戸14が開くようなことがなく、したがってかご2を何ら支障なく運転することができる。
【0027】
かご2が目的階で停止した後には、その目的階における出し入れ戸8を開放し(S9)、かご戸14のロック機構26を操作してかご戸14のロックを解除し(S10)、そのかご戸14を開放する(S11)。そしてかご2内の荷物を開口13及び出し入れ口7を通して目的階に搬出する(S12)。この後、かご戸14を閉合し、ロック機構26を動作させてかご戸14をロックし、さらに出し入れ戸8を閉合する(S13)。これにより荷物の搬送作業が終了する。
【0028】
このように、この発明の実施形態によれば、かご2の移動中におけるかご戸14の不用意な開きを的確に防止でき、したがってかご2内で荷崩れなどが生じることがあっても常にかご2を支障なく運転することができる。
【0029】
なお、以上において説明したこの発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この発明の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。その実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1…昇降路
2…かご
5…巻上機
6…制御盤
7…出し入れ口
8…出し入れ戸
8a.8b…戸板
9…操作盤
10…かご呼びボタン
11…行先階ボタン
12…かご位置表示パネル
13…開口
14…かご戸
15…枠体
16a.16b…戸板
21…滑車
22…ワイヤ
26…ロック機構
27…ロックレバー
28…係合体
30…ピン
31…操作部
32…係合部
32a…傾斜縁
34…スプリング
35…ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の出し入れ用の開口を有するかごと、前記開口を開閉するかご戸とを備える小荷物用昇降機において、
前記かご戸には、その閉合状態をロックするロック機構が設けられていることを特徴とする小荷物用昇降機。
【請求項2】
前記かご戸は、一対の戸板が上下に移動することで前記開口を開閉し、前記ロック機構はその一方の戸板に回動可能に設けられた手動式のロックレバーと、他方の戸板に設けられた、前記ロックレバーと係脱可能な係合体とで構成され、前記ロックレバーが前記係合体に係合することで前記一対の戸板が突き当る閉合状態にロックされることを特徴とする請求項1に記載の小荷物用昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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