説明

少なくとも1種の特定のゼオライトと少なくとも1つのシリカ−アルミナとを含む触媒、および前記触媒を用いた炭化水素供給原料の水素化分解方法

本発明は、第VIB族および第VIII族の金属を含む群から選択される少なくとも1種の水素化脱水素金属と、担体とを含み、該担体は、少なくとも1つのシリカアルミナと、単独のまたは少なくとも1つのZBM−30ゼオライトと混合された、少なくとも1つのCOK−7ゼオライトとを含む触媒に関する。本発明はまた、前記触媒を用いた炭化水素供給原料の水素化分解方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第VIB族金属および第VIII族金属からなる群より選択される少なくとも1種の水素化脱水素金属と担体とを含み、該担体は、少なくとも1つのシリカ−アルミナと、単独の又は少なくとも1つのZBM−30ゼオライトと混合された少なくとも1つのCOK−7ゼオライトとを含む触媒に関する。
【0002】
本発明はまた、前記触媒を用いた、炭化水素供給原料の水素化転化方法に関する。より具体的には、用語「水素化転化」とは、炭化水素供給原料の水素化分解を意味する。一層より具体的には、本発明は、中間留分の収率を向上させ得る。
【背景技術】
【0003】
重質油留分を水素化分解することは、精製において非常に重要な方法である。該水素化分解により、品質向上性の低い、余剰の重質供給原料から、製油業者が生成物を需要構造に適合させる必要のある、より軽質なフラクション(例えば、ガソリン、ジェット燃料、および軽質の軽油)が生成可能である。いくつかの水素化分解方法では、優れた基油を構成し得る、より高度に精製された残渣も生成可能である。接触分解と比較して、接触水素化分解の利点は、非常に高品質の中間留分、ジェット燃料、および軽油を生成することである。生成されたガソリンは、接触分解から生成されるガソリンよりもオクタン価が非常に低い。
【0004】
水素化分解の主な利点の一つは、いくつかのレベルで高い柔軟性があることである:具体的には用いられる触媒に関しての柔軟性であり、これは処理されるべき供給原料および得られた生成物に柔軟性があることを意味する。特に制御可能なパラメータの1つは、触媒担体の酸度である。
【0005】
水素化分解において用いられる触媒はすべて、酸機能を水素化機能と関連させた二機能型である。酸機能は、表面酸度を有する大きな表面積(一般に150〜800m/g)の担体、例えば、ハロゲン化アルミナ(特に、塩化アルミナ又はフッ化アルミナ)、シリカ−アルミナ、およびゼオライトによって提供される。水素化機能は、元素周期律表の1種以上の第VIII族金属、又は元素周期律表の少なくとも1種の第VIB族金属と少なくとも1種の第VIII族金属の組合わせのいずれかによって提供される。
【0006】
従来の接触水素化分解触媒の大半は、例えば無定形シリカ−アルミナのような弱酸性担体から構成される。より具体的には、このような系は、非常に高品質の中間留分の生成に用いられる。
【0007】
水素化分解触媒市場にある多数の触媒は、シリカ−アルミナをベースとしており、このシリカ−アルミナは、第VIII族金属により関連させられているか、または、好ましくは、処理されるべき供給原料中のヘテロ原子の毒の量が0.5重量%を超える場合に、第VIB族金属および第VIII族金属の硫化物により関連させられている。このような系は、中間留分に関して非常に高い選択性を有し、形成される生成物は非常に高品質である。このような触媒の中で最も酸度が低い触媒は、潤滑剤ベースを生成することも可能である。無定形担体をベースとするこれらすべての触媒系の欠点は、上記したように、その活性度が低いことである。
【0008】
構造型FAUを有するYゼオライトを含む触媒又はベータ型触媒は、シリカ−アルミナの触媒より高い触媒活性を有するが、不要な軽質生成物に対してより高い選択性を有する。特許文献1〜3のような従来技術の特許において、水素化分解触媒を調製するために用いられるゼオライトは、それらの骨格のSi/Alモル比、格子定数、細孔分布、比表面積、ナトリウムイオンの取込容量、又は水蒸気吸着容量のようないくつかのパラメータによって特徴づけられる。
【0009】
研究の多くは、Yゼオライト又はベータゼオライトとシリカ−アルミナの組み合わせ(特許文献4〜7)又はYゼオライトと、他の特定のゼオライトの組み合わせ(特許文献8〜9)を含む触媒を研究することからなっている
特許文献10は、中間留分の冷温特性を向上させるために、幅の広い細孔を有する水素化分解触媒と、中間細孔を有するアルミノリン酸塩型モレキュラーシーブを含む触媒とを用いて、中間留分を生成するための水素化分解方法を特許請求している。この水素化転化触媒は、水素化脱水素活性と、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナ−チタン、粘土、ゼオライト型モレキュラーシーブ、例えばフォージャサイト、あるいは単独で又は混合物として用いられるX、Yゼオライトからなる群より選択される分解担体とを有し、該担体は好ましくは非ゼオライト性である。中間細孔を有するアルミノリン酸塩型モレキュラーシーブは、SAPO−11、SAPO−31、およびSAPO−41シリコアルミノホスファートから選択される。
【0010】
本出願人によって実施された、多数のゼオライトおよびミクロ孔固体に関する研究から、驚くべきことに、第VIB族金属および第VIII族金属からなる群より選択される少なくとも1種の水素化脱水素金属と、担体とを含み、該担体は少なくとも1つのシリカ−アルミナと、単独の又は少なくとも1つのZBM−30ゼオライトと混合された少なくとも1つのCOK−7ゼオライトとを含む触媒によって、予想外の炭化水素供給原料の水素化分解の触媒性能が得られる、より具体的には、公知の先行技術の触媒と比較すると相当向上された中間留分収率(灯油(kerosene)および軽油(gas oil))が得られ、且つ/又は高品質の生成物が得られ得ることが見出された。
【0011】
従って、本発明は、そのような触媒および前記触媒を用いた炭化水素供給原料の水素化分解法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第719900号明細書
【特許文献2】米国特許第6387246号明細書
【特許文献3】米国特許第7169291号明細書
【特許文献4】米国特許第3816297号明細書
【特許文献5】米国特許第5358917号明細書
【特許文献6】米国特許第6399530号明細書
【特許文献7】米国特許第6902664号明細書
【特許文献8】米国特許第4925546号明細書
【特許文献9】仏国特許発明第2852864号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0544766号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の詳細な説明)
より正確には、本発明は、第VIB族金属および第VIII族金属からなる群より選択される少なくとも1種の水素化脱水素金属と、担体とを含み、該担体は、少なくとも1つのシリカ−アルミナと、単独の又は少なくとも1つのZBM−30ゼオライトと混合された少なくとも1種のCOK−7ゼオライトとを含む触媒を提供する。
【0014】
本発明はまた、前記触媒を用いた水素化分解方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(担体)
ゼオライト
本発明によると、本発明の触媒担体は少なくとも1つのCOK−7ゼオライトを含み、該COK−7ゼオライトは、単独であるか又は少なくとも1つのZBM−30ゼオライトと混合されている。
【0016】
ZBM−30ゼオライトは、特許EP-A-0 046 504に記載されており、COK−7ゼオライトは、特許出願EP-1 702 888 A1又はFR-2 882 744 A1に記載されている。
【0017】
好ましくは、本発明の触媒に用いられるCOK−7ゼオライトは、トリエチレンテトラミン有機テンプレートの存在下に合成される。
【0018】
好ましくは、本発明の触媒に用いられるZBM−30ゼオライトは、トリエチレンテトラミン有機テンプレートの存在下に合成される。
【0019】
より好ましくは、本発明の触媒担体は、トリエチレンテトラミン有機テンプレートの存在下に合成される少なくとも1つのCOK−7ゼオライトを含み、これは、トリエチレンテトラミン有機テンプレートの存在下に合成される少なくとも1つのZBM−30ゼオライトと混合される。
【0020】
本発明の触媒担体が少なくとも1つのCOK−7ゼオライトを少なくとも1つのZBM−30ゼオライトと混合されて含む場合、2種のゼオライトの混合物中の各ゼオライトの割合は、有利には2種のゼオライトの混合物の総重量に対して20〜80重量%の範囲であり、好ましくは30〜70重量%の範囲である。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明の触媒担体は、構造型TON、構造型FER、構造型MTTのゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種のゼオライトを含んでもよい。
【0022】
構造型TONのゼオライトは、“Atlas of Zeolite Structure Types”, W. M. Meier, D. H. Olson and Ch. Baerlocher, 5th Revised Edition, 2001, Elsevierと題する著作に記載されている。
【0023】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成し得る構造型TON構造型のゼオライトは、有利には、上記で引用した著作“Atlas of Zeolite Structure Types”に記載のシータ‐1、ISI‐1、NU‐10、KZ‐2及びZSM‐22ゼオライトからなる群より選択される(ZSM‐22ゼオライトに関しては、特許US-456477及びUS-4902406に、NU‐10ゼオライトに関しては、特許EP‐A‐0 065 400及びEP‐A‐0 077 624にも記載されている)。
【0024】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成してもよい構造型FERのゼオライトは、有利には、上記で引用した著作“Atlas of Zeolite Structure Types”に記載のZSM‐35、フェリエライト、FU‐9及びISI‐6ゼオライトからなる群より選択される。
【0025】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成してもよい構造型MTTのゼオライトは、有利には、上記で引用した“Atlas of Zeolite Structure Types”に記載のZSM‐23、EU‐13、ISI‐4及びKZ‐1ゼオライトからなる群より選択される(また、ZSM‐23ゼオライトに関しては、US-4076842にも記載されている)。
【0026】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成してもよい好ましい構造型TONのゼオライトは、ZSM‐22及びNU‐10ゼオライトである。
【0027】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成してもよい好ましい構造型FERのゼオライトは、ZSM‐35よびフェリエライトゼオライトである。
【0028】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成してもよい好ましい構造型MTTのゼオライトは、ZSM‐23ゼオライトである。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明の触媒担体は、COK‐7ゼオライトと、構造型TON、FER、MTTのゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種のゼオライトとの混合物を含み、COK‐7ゼオライトは、場合によっては、ZBM‐30ゼオライトと混合される。本発明の触媒担体は、好ましくは2種のゼオライトの混合物を含み、より好ましくはCOK‐7ゼオライトとZSM‐22ゼオライト又はNU‐10ゼオライトとの混合物を含む。
【0030】
2種のゼオライトの混合物中の各ゼオライトの比率は、2種のゼオライトの混合物の総重量に対して有利には20〜80重量%の範囲であり、好ましくは、2種のゼオライトの混合物中の各ゼオライトの比率は、2種のゼオライトの混合物の総重量に対して50重量%である。
【0031】
本発明の触媒担体中に存在するゼオライトは、有利には、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウム、リン及びホウ素からなる群より選択される少なくとも1種の元素Tとを含む。好ましくは、前記元素Tはアルミニウムである。
【0032】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成するゼオライトの全体的なSi/Al比、及び試料の化学組成は、X線蛍光及び原子吸光によって決定される。
【0033】
上記ゼオライトのSi/Al比は、有利には、種々の引用文献に記載の操作手順を用いた合成の際に得られたもの、又は当業者に周知の合成後の脱アルミニウム処理(dealuminating post-synthesis treatment)の後に得られたものであり、該処理の限定的な例は、水熱処理であり、これに続いて、鉱酸又は有機酸の溶液を用いた酸攻撃又は直接的酸攻撃が行われる場合と行われない場合がある。
【0034】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成するゼオライトは、有利には、焼成され、少なくとも1種のアンモニウム塩の溶液を用いる少なくとも1回の処理によって交換される。これにより、アンモニウム型ゼオライトが得られ、これが一旦焼成されると、前記ゼオライトから水素型ゼオライトが生成される。
【0035】
本発明の触媒担体の組成の一部を形成するゼオライトは、有利には少なくとも部分的に、好ましくはほぼ完全に、酸型、すなわち、(H)酸型である。Na/T原子比は、一般的かつ有利には0.1未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.01未満である。
【0036】
シリカ−アルミナ
本発明によると、本発明の触媒担体はまた、少なくとも1つのシリカ−アルミナを含んでいる。
【0037】
シリカ−アルミナは、ゼオライトがそうであるように、理想に近づくアルミノケイ酸塩であると考えられ得ない。Alが0〜100%の範囲にわたる完全な組成のシリカ‐アルミナを得ることが可能であるが、2種の元素Si及びAlの関連度、ひいては固体の均質性(homogeneity)は調製方法に大きく依存する。
【0038】
当該分野に公知のあらゆるシリカ‐アルミナも本発明に用いるのに適している。
【0039】
好ましい実施形態によると、シリカ‐アルミナは、マイクロメートルスケールで均質であり、5重量%超かつ95重量%以下の量のシリカ(SiO)を含む。前記シリカ−アルミナは以下の特性を有する:
・水銀ポロシメトリーにより測定された平均細孔径が、20〜140Åの範囲である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された総細孔容積が、0.1〜0.5ml/gの範囲である;
・窒素ポロシメトリーにより測定された総細孔容積が、0.1〜0.5ml/gの範囲である;
BET比表面積が、100〜550m/gの範囲である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された、140Åを超える径の細孔に含まれる細孔容積が、0.1ml/g未満である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された、160Åを超える径の細孔に含まれる細孔容積が、0.1ml/g未満である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された、200Åを超える径の細孔に含まれる細孔容積が、0.1ml/g未満である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された、500Åを超える径の細孔に含まれる細孔容積が、0.lml/g未満である;
・X線回折図が、アルファ、ロー、カイ、エータ、ガンマ、カッパ、シータ及びデルタアルミナからなる群に含まれる少なくとも1種の遷移アルミナの主要な特徴的ピークを少なくとも含む。
【0040】
好ましくは、前記シリカ−アルミナは以下を含む:
・シリカ(SiO):その量は、10〜80重量%の範囲であり、好ましくは20重量%超且つ80重量%未満であり、より更に好ましくは25重量%超且つ75重量%未満である。シリカ含有量は有利には10〜50重量%の範囲であり、前記シリカ含有量は蛍光X線(X線蛍光分析)を用いて測定される;
・カチオン不純物(例えばNa):その含有量は、0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満であり、より更に好ましくは0.025重量%未満である。用語「カチオン不純物含有量」とは、アルカリ及びアルカリ土類の全量を意味する;
・アニオン不純物(例えばSO2―、Cl):その含有量は、1重量%未満であり、好ましくは0.5重量%未満であり、更により好ましくは0.1重量%未満である。
【0041】
水素化相
本発明によると、触媒はまた、水素化機能、すなわち、単独であるいは混合物として用いられる、第VIII族金属および第VIB族金属からなる群より選択される少なくとも1種の水素化脱水素元素を含む。
【0042】
好ましくは、第VIII族元素は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金から選択され、単独であるいは混合物として用いられる。
【0043】
第VIII族元素が第VIII族からの貴金属から選択される場合、第VIII族元素は、有利には、白金およびパラジウムから選択される。
【0044】
第VIII族元素が第VIII族からの非貴金属から選択される場合、第VIII族元素は、有利には、鉄、コバルトおよびニッケルから選択される。
【0045】
好ましくは、本発明の触媒の第VIB族元素は、タングステンおよびモリブデンから選択される。
【0046】
水素化機能が第VIII族元素及び第VIB族元素を含む場合、以下の金属の組み合わせが好ましい:ニッケル‐モリブデン、コバルト‐モリブデン、鉄‐モリブデン、鉄‐タングステン、ニッケル‐タングステン、およびコバルト‐タングステン。非常に好ましくは:ニッケル‐モリブデン、コバルト‐モリブデン、およびニッケル‐タングステンである。ニッケル‐コバルト‐モリブデンのような3種の金属の組み合わせを用いることも可能である。これらの金属の組み合わせを用いる場合、これらの金属は好ましくはそれらの硫化物の形態で使用される。
【0047】
第VIB族金属及び第VIII金属から選択される、本発明の前記触媒中の水素化脱水素元素の量は、前記触媒の全質量に対して、0.1〜60重量%の範囲、好ましくは0.1〜50重量%の範囲であり、非常に好ましくは0.1〜40重量%の範囲である。
【0048】
水素化脱水素元素が第VIII族からの貴金属である場合、触媒は、前記触媒の全質量に対して、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満の貴金属含有量を有する。貴金属は、好ましくは、それらの還元形態で用いられる。
【0049】
場合によっては、本発明の触媒はまた、アルミナ、アルミン酸塩、およびシリカから選択される、少なくとも1種の酸化物タイプの無定形の又は低結晶質の多孔質の鉱物マトリクスを含んでいる。好ましくは当業者に公知のあらゆる形態のアルミナ、非常に好ましくはガンマアルミナを含むマトリクスが用いられる。
【0050】
場合によっては、触媒はまた、ホウ素、ケイ素、およびリンからなる群より選択される少なくとも1種のドーピング元素を含み、好ましくはホウ素及び/又はケイ素である。
【0051】
ホウ素、ケイ素、及び/又はリンからなる群より選択されるドーピング元素は、有利には、マトリクス、ゼオライト、シリカ‐アルミナ中に存在し、あるいは、好ましくは、ドーピング元素は触媒上に沈着させられてもよく、その場合、主にマトリクス上に位置してもよい。
【0052】
主に担体のマトリクス上に位置する、導入されるドーピング元素、特にケイ素は、有利には、キャスタン・マイクロプローブ(Castaing microproble)(種々の元素の分布プロファイル)、触媒成分のX線分析と併用した透過型電子顕微鏡法又はマイクロプローブによる触媒中に存在する元素の分散のマッピングといった技術を用いて特徴付けられ得る。
【0053】
場合によっては、触媒はまた、少なくとも1種の第VIIA族元素を含み、好ましくは塩素及びフッ素を含み、場合によっては、少なくとも1種の第VIIB族元素を含む。
【0054】
(触媒の組成)
本発明の触媒は、有利には且つ一般に、全総触媒質量に対する重量%として:
・第VIB族金属および第VIII族金属からなる群より選択される少なくとも1種の水素化脱水素元素:0.1〜60%、好ましくは0.1〜50%、より好ましくは0.1〜40%;
・シリカ‐アルミナとは別の、少なくとも1種の酸化物タイプの無定形の又低結晶質の多孔質の鉱物バインダ:0〜99%、好ましくは0〜98%、好ましくは0〜95%;
を含み、
前記触媒はまた、
・少なくとも1つのCOK‐7ゼオライト:0.1〜99%、好ましくは0.2〜99.8%、非常に好ましくは0.5〜90%、より一層好ましくは1〜80%;該COK‐7ゼオライトは、単独で用いられるか、あるいはCOK‐7ゼオライトが少なくとも1つのZBM‐30ゼオライトとの混合物として用いられる場合、2つのゼオライトCOK‐7及びZBM‐30の混合物中の各ゼオライトの割合は、有利には、2つのゼオライトの混合物の全重量の20〜80重量%の範囲であり、好ましくは30〜70重量%の範囲である;
・本明細書に記載ののシリカ‐アルミナ:1〜99%;
を含み、
前記触媒は場合によっては:
・構造型TON、FER、MTTを有するゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種のゼオライト:0〜60%、好ましくは5%〜40%;
・ケイ素、ホウ素及びリンからなる群より選択される少なくとも1種のプロモーター元素、好ましくはホウ素及び/又はケイ素:0〜20%、好ましくは0.1〜15%、より好ましくは0.1%〜10%;
・少なくとも1種の第VIIA族元素、好ましくはフッ素:0〜20%、好ましくは0.1%〜15%、より一層好ましくは0.1〜10%;
を含む。
【0055】
本発明の触媒の第VIB族金属および第VIII族金属は、有利には、完全に又は部分的に、金属形態及び/又は酸化物形態及び/又は硫化物形態で存在する。
【0056】
(触媒の調製)
本発明の方法に用いられる触媒は、シリコ‐アルミナマトリクスをベースとし且つ単独の又は少なくとも1つのZBM‐30ゼオライトと混合された少なくとも1つのCOK‐7ゼオライトをベースとする担体を出発点とし、当業者に知られたあらゆる方法を用いて調製されてもよい。触媒はまた、水素化相を含む。
【0057】
シリカ‐アルミナの調製
マイクロメートルスケールで均質なシリカ‐アルミナが得られる、当業者に知られたあらゆるシリカ‐アルミナ合成方法であって、カチオン性不純物(例えばNa)が0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、より一層好ましくは0.025重量%未満の量まで低減し得、且つアニオン性不純物(例えばSO2−、Cl)が、1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満まで低減し得るあらゆる方法が、本発明の触媒に用いられるシリカ‐アルミナを調製する方法に用いられる担体の調製に適している。
【0058】
シリコ‐アルミナマトリクスは、有利には、酸性媒体に部分的に可溶なアルミナ化合物を、完全に可溶なシリカ化合物又は完全に可溶なアルミナと水和シリカとの組み合わせとあらゆる段階で混合し、これを成形し、次に水熱処理又は熱処理し、マイクロメートルスケール又はナノメートルスケールで均質化して得られ、これにより、特に活性のある触媒を得ることができる。本出願人は、用語「酸性媒体に部分的に可溶」を、完全に可溶なシリカ化合物又はその組合せを添加する前に、アルミナ化合物を酸性溶液(例えば、硝酸又は硫酸)と接触させると、その部分的溶解が惹起されることを意味している。
【0059】
シリカ源
本発明において用いられるシリカ化合物は、有利には、ケイ酸、ケイ酸ゾル、水溶性アルカリケイ酸塩、カチオン性のケイ素塩、例えば、メタケイ酸ナトリウム水和物、アンモニア形態又はアルカリ形態のLudox(登録商標)、ケイ酸第四アンモニウムからなる群より選択され得る。シリカゾルは、有利には、当業者に知られた方法の1つを用いて調製され得る。好ましくは、脱カチオン化されたオルトケイ酸溶液は、樹脂上でのイオン交換によって水溶性アルカリケイ酸塩から調製される。
【0060】
完全に可溶なシリカ‐アルミナ源
本発明において用いられる完全に可溶なシリカアルミナ水和物は、有利には、制御された定常的操作条件(pH、濃度、温度、平均滞留時間)下に、ケイ素(例えば、ケイ酸ナトリウムの形態)、場合によるアルミニウム(例えば、アルミン酸ナトリウムの形態)を含む塩基性溶液を、少なくとも1種のアルミニウム塩、例えば、硫酸アルミニウムを含む酸性溶液と反応させることによる真正の共沈によって調製され得る。少なくとも1種の炭酸塩又はCOを、場合によっては反応媒体に加えてもよい。
【0061】
本出願人が使用する用語「真正の共沈(true co-precipitation)」は、上記の塩基性又は酸性媒体に完全に可溶な上記少なくとも1種のアルミニウム化合物及び少なくとも1種の上記ケイ素化合物を、少なくとも1種の沈殿及び/又は共沈化合物の存在下で、同時に又は順次に接触させてシリカ‐アルミナ水和物から実質的に構成される混合相を得、場合によって、激しい攪拌、剪断、コロイドミリング又はこれらの個々の操作の組み合わせによって均質化させる方法を意味する。
【0062】
アルミナ源
本発明により使用されるアルミナ化合物は、有利には、酸性媒体に部分的に可溶である。アルミナ化合物は、有利には、一般式Al・nHOのアルミナ化合物の群から全体的に又は部分的に選択される。特に、水和アルミナ化合物(例えば、ハイドラルジライト、ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト、無定形な又は実質的に無定形なアルミナゲル)を使用することができる。遷移アルミナで構成され、且つ、その結晶構造の組織において実質的に異なるロー、カイ、エータ、ガンマ、カッパ、シータ及びデルタの群の少なくとも1つの相を含む脱水型の化合物を使用することもまた有利である。一般にコランダムとして知られているアルファアルミナは、有利には、本発明の担体中に低い割合で組み込まれ得る。
【0063】
より好ましくは、使用されるアルミニウム水和物Al・nHOは、ベーマイト、擬ベーマイト、無定形な又は本実質的に無定形なアルミナゲルである。任意の有利な組合せによるこれら生成物の混合物を使用してもよい。
【0064】
ベーマイトは、一般に式Al・nHOのアルミニウム一水和物として記載され、実際には、種々の水和度及び組織を有する広範な材料を包含し、これらの境界は明確であったり不明瞭であったりするかもしれないが、最も水和されたゼラチン様ベーマイトでは、nは2より大きい場合があり、擬ベーマイト又はミクロ結晶ベーマイトでは、nは1〜2の範囲であり、結晶性ベーマイト及び最終的に十分に結晶化されて大きい結晶となったベーマイトでは、nは1付近である。アルミニウム一水和物の形態は、2つの極端な形態である針状及び柱状の間で幅広く変動し得る。これら2つの形状の間で使用され得る形態は非常に多様(すなわち、鎖状、船形、交錯板状)である。
【0065】
比較的に高純度のアルミニウム水和物が、有利には、無定形粉末又は結晶質粉末、或いは、無定形部分を含む結晶質の粉末の形態で使用され得る。アルミニウム水和物はまた、有利には、水性懸濁液又は分散液の形態で導入されてもよい。本発明により用いられるアルミニウム水和物の水性懸濁液又は分散液は、有利には、ゲル化又は凝固化が可能であってもよい。水性分散液又は懸濁液はまた、有利には、当業者に周知のように、水又は酸性化された水中でアルミニウム水和物を解膠することによって得られてもよい。
【0066】
アルミニウム水和物は、有利には、当業者に公知のあらゆる方法を用いて、すなわち、「バッチ式」反応器、連続式混合機、混合機又はコロイダルミルにより分散されてもよい。このような混合物はまた、有利には、押し出し流れ反応器(plug flow reactor)中で、特にスタティックミキサー中で生成されてもよい。「Lightnin」反応器を挙げることができる。
【0067】
さらに、アルミナ源として、分散度を改善し得る処理を経たアルミナを使用することも有利である。一例として、予備的均質化処理によってアルミナ源の分散を改善することが可能である。有利には、均質化工程は以下の文章に記載された少なくとも1つの均質化処理を用いることができる。
【0068】
使用され得るアルミナの水性分散液又は懸濁液は、有利には、コロイド領域の寸法を有する粒子からなる微細な又は超微細なベーマイトの水性懸濁液又は分散液である。
【0069】
本発明に従って使用される微細な又は超微細なベーマイトは、有利には、仏国特許FR-1 261 182及びFR-B-1 381 282又は欧州特許出願EP-A-0 015 196に従って得られてもよい。
【0070】
有利には、擬ベーマイト、無定形アルミナゲル、水酸化アルミニウムゲル又は超微細ハイドラルジライトから得られた水性分散液又は懸濁液を使用することも可能である。
【0071】
アルミニウム一水和物は、有利には、多様な市販のアルミナ源、例えば、特に、SASOLから販売されているPURAL(登録商標)、CATAPAL(登録商標)、DISPERAL(登録商標)、DISPAL(登録商標)又はALCOAから販売されているHIQ(登録商標))から購入されてもよいし、当業者に知られた方法を用いて、従来の方法を用いてアルミニウム三水和物の部分的脱水によって調製されてもよいし、或いは、有利には沈殿によって調製されてもよい。前記アルミナがゲルの形態である場合、それらは、有利には、水又は酸性化された溶液によって解膠される。沈殿の場合、酸源は、有利には、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及び硝酸アルミニウムの化合物の少なくとも1種から選択されてよい。塩基性のアルミニウム源は、有利には、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムのような塩基性アルミニウム塩から選択されてもよい。
【0072】
ゼオライトの調製
本発明の触媒に使用されるゼオライトは、有利には、市販のゼオライト又は上記引用した特許に記載の手順を用いて合成されたゼオライトである。本発明の触媒の組成の一部を形成するゼオライトは、有利には、少なくとも部分的にではあるが、しかし好ましくは実質的に完全に酸性形態、すなわち水素型(H)である。
【0073】
ゼオライト‐シリカ‐アルミナマトリクスの調製
本発明のマトリクスは、有利には、上記のように調製された担体から、当業者に知られた方法のいずれかを用いて調製され得る。
【0074】
ゼオライトは、有利には、当業者に知られたあらゆる方法を用いて、担体又は触媒の調製における任意の段階において導入され得る。
【0075】
本発明による触媒を調製するための好ましい方法は、下記の工程を包含する。
【0076】
好ましい調製態様において、ゼオライトは、有利には、シリカ‐アルミナの調製中に導入され得る。非限定的には、ゼオライトは、有利には、例えば、粉体、磨り潰された粉体、懸濁液、又は脱凝集処理を経た懸濁液の形態であり得る。したがって、例えば、ゼオライトは、有利には、担体として意図されたゼオライトの最終量に調節された濃度まで酸性にされてもされなくてもよい懸濁液で利用され得る。この懸濁液は(日常的にスラリーとして知られている)は、有利には、次いで、上記のように、その合成のあらゆる段階にてシリカ‐アルミナの前駆体と混合される。
【0077】
別の好ましい調製態様では、ゼオライトはまた、有利には、マトリクスを構成する要素及び場合によっては少なくとも1種のバインダによる担体の成形中に導入され得る。非限定的には、ゼオライトは、有利には、粉体、磨り潰された粉体、懸濁液又は脱凝集処理を経た懸濁液の形態であり得る。
【0078】
ゼオライトの調製、1以上の処理及び成形は、有利には、それによりこれらの触媒の調製におけるある工程を構成し得る。有利には、ゼオライト/シリカ‐アルミナマトリクスは、シリカ‐アルミナとゼオライトとを混合して混合物を形成することにより得られる。
【0079】
担体及び触媒の成形
ゼオライト/シリカ‐アルミナマトリクスは、有利には、当業者に知られたあらゆる技術を用いて成形され得る。成形は、有利には、例えば、押出、ペレット化により、油滴凝固法を用いて、回転板による造粒(rotating plate granulation)により、又は当業者に知られたあらゆる方法を用いて行われ得る。
【0080】
成形はまた、有利には、得られた鉱物ペーストの触媒および押出物の種々の成分の存在下に、ペレット化、回転式又はドラムボウル造粒器を用いたビーズ状物への成形、油滴凝固、オイルアップ凝固またはアルミナおよび場合による上記に挙げられたものから選択される他の成分を含む粉体を凝集させるための任意の他の基地の方法によって行われ得る。
【0081】
本発明により用いられる触媒は、有利には、球状又は押出物の形態である。しかし、該触媒は、有利には、0.5〜5mmの範囲、より具体的には0.7〜2.5mmの範囲の径を有する押出物の形態である。有利には、該触媒は、円筒状(中空であってもなくてもよい)、捻れた円筒状、多葉状(例えば、2、3、4又は5葉)又はリング状であってもよい。円筒状の形状が有利に且つ好ましくは用いられるが、任意の他の形態が用いられてもよい。
【0082】
更に、本発明に利用される前記担体は、有利には、当業者に周知であるように、成形を促進させるため及び/又はシリカ‐アルミナマトリクスをベースとする担体の最終の機械的特性を改善するため、添加物を用いて処理されていてもよい。特に用いてよい添加物の例として、セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、トール油、キサンタンガム、界面活性剤、ポリアクリルアミドのような凝集剤、カーボンブラック、デンプン、ステアリン酸、ポリアクリル酸アルコール、ポリビニルアルコール、バイオポリマー、グルコース、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0083】
成形は、有利には、当業者に知られた触媒成形技術(例えば、押出、ボウル造粒、噴霧乾燥又はペレット化)を用いて実施され得る。
【0084】
有利には、押出されるべきペーストの粘度を調節するため、水の添加又は除去を行うことができる。この工程は、有利には、混合工程のあらゆる段階で実施され得る。
【0085】
押出されるべきペースト中の固体材料の量を調節してペーストを押出可能とするために、大半が固体である化合物、好ましくは、酸化物又は水和物を添加することも有利である。好ましくは、水和物、より好ましくは、アルミニウム水和物が用いられる。前記水和物の強熱減量は好ましくは15%超である。
【0086】
成形前の混合に添加される酸の量は、有利には、合成に関与するシリカ及びアルミナの無水質量の30重量%未満、好ましくは0.5〜20重量%の範囲である。
【0087】
押出は、有利には、市販の従来の任意のツールを用いて実施され得る。混合から生じたペーストは、有利には、ダイを通して、例えば、ピストン或いは単軸押出スクリュー又は二軸押出スクリュー)を用いて、押し出される。この押出工程は、有利には、当業者に知られたあらゆる方法を用いて実施され得る。
【0088】
本発明の担体の押出物は、有利には且つ一般的には、少なくとも70N/cm、好ましくは100N/cm以上の圧潰強度を有する。
【0089】
ゼオライト/シリカ‐アルミナ担体の焼成
乾燥は当業者に知られたあらゆる技術を用いて実施される。
【0090】
本発明の担体を得るため、好ましくは酸素分子の存在下、例えば、空気掃引を実施して、1100℃以下の温度において焼成することが好ましい。少なくとも1回の焼成工程が、有利には、調製工程のいずれかの後に実行され得る。この処理は、有利には、例えば、横断床(lit traverse)、トリクル床又は定常的雰囲気において実行され得る。一例として、使用される炉は、回転炉であってもよいし、半径方向横断層を有する垂直型炉であってもよい。焼成条件(温度、時間)は、主に触媒の最高許容温度によって決まる。好ましい焼成条件は、有利には、200℃で1時間超の焼成から1100℃で1時間未満の間である。焼成は有利には、水蒸気の存在下で行われ得る。最終焼成は、場合によっては、酸性又は塩基性蒸気の存在下で実行され得る。一例として、焼成はアンモニア分圧下で実施され得る。
【0091】
合成後の処理
合成後の処理は、有利には、触媒の特性を改良するように実施され得る。
【0092】
本発明によれば、ゼオライト/シリカ‐アルミナ担体はこのように、場合によっては、密封した雰囲気中で水熱処理を受けてもよい。用語「密封した雰囲気中で水熱処理」とは、周囲温度を超える温度にて水の存在下にオートクレーブ中を通過させることによる処理を意味する。
【0093】
前記水熱処理中、担体を処理することが有利であり得る。このようにして、担体は、有利には、オートクレーブ中への通過前に含浸させられ得、オートクレーブ処理は蒸気相又は液相で行われ、オートクレーブの前記蒸気相又は液相は酸性又は非酸性である。オートクレーブ処理に先立ち、前記含浸は、有利には、乾式によるか又は酸性水溶液中での担体の浸漬によって実行され得る。用語「乾式含浸」とは、担体の総細孔容積以下の容積の溶液と担体を接触させることを意味する。好ましくは、乾式含浸が実施される。
【0094】
オートクレーブは、好ましくは、特許出願EP-A-0 387 109に記載のような回転バスケット型オートクレーブである。
【0095】
オートクレーブ処理中の温度は、有利には、30分〜3時間の範囲の期間にわたって、100〜250℃の範囲であり得る。
【0096】
水素化相の沈着
水素化脱水素元素は、有利にはあらゆる調製段階で導入され得るが、ゼオライト/シリカ‐アルミナ担体の成形後が非常に好ましい。成形の後には、有利には、焼成が続き、水素化元素は、有利には、前記焼成の前又は後に導入されてもよい。調製は通常、温度250〜600℃で焼成することにより完了する。本発明の別の好ましい方法は、有利には、水素化脱水素元素を混合した後に担体を形成し、次いで、得られたペースト状物をダイ中に通過させて、0.4〜4mmの径を有する押出物を成形することからなる。水素化機能の全部または一部は、有利には、混合の時点で導入され得る。それは、有利には、1回以上のイオン交換操作を用いて導入され得る。このイオン交換操作は、選択された金属の前駆体塩を含む溶液を用いて焼成担体について行われる。この焼成担体は、少なくとも1つのシリカ‐アルミナ、少なくとも1つのCOK‐7ゼオライトによって構成され、該COK‐7ゼオライトは、単独であるか、または、少なくとも1つのZBM‐30ゼオライトと混合されており、場合によっては、バインダにより成形されている。
【0097】
好ましくは、担体は水溶液を含浸させられる。担体は、好ましくは、当業者に周知である「乾式」含浸法を用いて含浸させられる。含浸は、有利には、最終触媒の構成要素を全て含む溶液を用いる単一の工程で実行され得る。
【0098】
水素化機能は、有利には、選択された金属の前駆体塩を含む溶液を用いて、上記のゼオライト構成された焼成担体について行われる1回以上のイオン交換操作を用いて導入されてもよく、選択されたマトリクス中に分散させられる。
【0099】
水素化機能は、有利には、第VIII族金属第VIB族金属から選択される少なくとも1種の金属の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の前駆体を含む溶液を用いて、成形されかつ焼成された担体の含浸のための1回以上の操作を用いて導入され得、触媒が少なくとも1種の第VIB族金属および少なくとも1種の第VIII族金属を含む場合には、第VIII族金属からの少なくとも1種の金属の少なくとも1種の酸化物の前駆体(単数または複数)は、好ましくは、第VIB族金属の前駆体後または、それと同時に導入される。
【0100】
触媒が有利には、少なくとも1種の第VIB族元素(例えばモリブデン)を含む場合、例えば、少なくとも1種の第VIB族元素を含む溶液を用いて触媒に含浸させて乾燥及び焼成を行うことが可能である。モリブデンの含浸は、有利には、リン酸をパラモリブデン酸アンモニウム溶液に加えることにより促進され得、これは触媒活性を促進させるようにリンを導入することもできることを意味する。
【0101】
本発明の好ましい実施形態において、触媒はドーパントとしてケイ素、ホウ素及びリンから選択される少なくとも1種の元素を含んでいる。前記元素は、有利には、少なくとも1つのCOK‐7ゼオライトを既に含んでいる担体上に導入され、このCOK‐7ゼオライトは、単独であるか、または、少なくとも1つのZBM‐30ゼオライト、上記の少なくとも1つのシリカ‐アルミナ、および第VIB族からの金属および第VIII族からの金属によって形成される群から選択される少なくとも1種の金属と混合される。
【0102】
触媒がホウ素、ケイ素およびリンおよび任意の第VIIA族からの元素(ハリドイオン)を含む場合、前記元素は、有利には、種々の調製段階において種々の様式で触媒に導入され得る。
【0103】
金属は、好ましくは、当業者には周知の「乾式」含浸法を用いて含浸させられる。含浸は、有利には、最終触媒の構成要素のすべてを含んだ溶液を用いて一回の工程で行われ得る。
【0104】
P、B、Si及び第VIIA族からの元素(ハリドイオン)は、有利には、焼成された前駆体上に過剰な溶液を用いて行われ、1回以上の含浸操作により導入され得る。
【0105】
触媒がホウ素を含む場合、本発明の好ましい方法は、少なくとも1種のホウ素塩、例えば、アルカリ媒体中および過酸化水素の存在下に、二ホウ酸アンモニウムまたは五ホウ酸アンモニウムの水溶液を調製して、乾式含浸に進めることからなり、前駆体の細孔の容積は、ホウ素含有溶液により満たされる。
【0106】
触媒がケイ素を含んでいる場合、シリコーンタイプのケイ素化合物の溶液が有利には使用される。
【0107】
触媒がホウ素及びケイ素を含んでいる場合、ホウ素とケイ素はまた、有利には、ホウ素塩及びシリコーンタイプのケイ素化合物を含んだ溶液を用いて同時に沈着させることができる。このように、例えば、前駆体がゼオライト及びアルミナを含む担体上に担持されたニッケル‐モリブデン型触媒である場合、この前記前駆体に二ホウ酸アンモニウム及びRhone PoulencのRhodorsil(登録商標) E1Pシリコーンの水溶液を含浸させ、例えば80℃で乾燥させ、その後フッ化アンモニウムの溶液を含浸させて、例えば80℃で乾燥させ、次いで、例えばおよび好ましくは、空気中、横断床において500℃で4時間にわたって焼成させることが可能である。
【0108】
触媒が好ましくは少なくとも1種の第VIIA族元素、好ましくはフッ素を含んでいる場合、例えば、有利には、フッ化アンモニウムの溶液を触媒に含浸させ、例えば80℃で乾燥させ、例えばおよび好ましくは空気中で横断床において、例えば500℃で4時間にわたって焼成することが可能である。
【0109】
有利にはその他の含浸配列を行って本発明の触媒を得ることも可能である。
【0110】
触媒がリンを含んでいる場合、例えば、リンを含んだむ溶液を触媒に含浸させ、その後乾燥させ、焼成することも可能且つ有利である。
【0111】
触媒に含まれる元素(すなわち、第VIII族金属及び第VIB族金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属、場合によってはホウ素、ケイ素、リン及び第VIIA族の少なくとも1種の元素)がそれに対応する前駆体塩による数回の含浸工程により導入される場合、触媒を乾燥させる中間工程は、通常且つ有利には、60〜250℃の範囲の温度で行われ、更に触媒を焼成する中間工程は通常且つ有利には250〜600℃の温度で行われる。
【0112】
触媒の調製を終了させるためには、有利には、含水固体を10〜80℃の範囲の温度で湿潤雰囲気中に放置し、その後、含水固体を60〜150℃の範囲の温度で乾燥させ、最終的に得られた固体を150〜800℃の範囲の温度で焼成する。
【0113】
使用され得る第VIB族元素源は、当業者に周知のものである。使用され得るモリブデン及びタングステンの源の有利な例には、酸化物及び水酸化物、モリブデン酸及びタングステン酸ならびにそれらの塩、特に、アンモニウム塩(例えば、モリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸及びこれらの塩)、シリコモリブデン酸、シリコタングステン酸及びこれらの塩が挙げられる。好ましくは、アンモニウム酸化物及びアンモニウム塩(例えば、モリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びタングステン酸アンモニウム)が使用される。
【0114】
有利に使用され得る第VIII族元素源は、当業者に周知のものである。例を挙げると、非貴金属としては、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物、例えば塩化物、臭化物、及びフッ化物、カルボン酸塩、例えば酢酸塩、水酸化物又は炭酸塩を使用することが有利である。貴金属としては、有利には、ハロゲン化物、例えば、塩化物、硝酸塩、酸、例えば、クロロ白金酸またはオキシ塩化物、例えば、アンモニア性のオキシ塩化ルテニウムが用いられる。カチオン交換によりゼオライト上に白金を沈着させる場合、アンモニウム塩のようなカチオン錯体を使用することも有利である。
【0115】
好ましいリン源は、オルトリン酸HPOであるが、リン酸アンモニウムのようなその塩及びエステルもまた適している。リンは、例えば、リン酸と、アンモニア、第一及び第二アミン、環状アミン、ピリジン系とキノリン類の化合物ならびにピロール系の化合物のような窒素を含む塩基性有機化合物との混合物の形態で導入され得る。
【0116】
多数のケイ素源が、有利には使用され得る。このように、オルトケイ酸エチルSi(OEt)、シロキサン、ポリシロキサン、フルオロケイ酸アンモニウム(NHSiF又はフルオロケイ酸ナトリウムNaSiFのようなケイ酸のハロゲン化物を使用することが可能である。シリコモリブデン酸及びその塩、シリコタングステン酸及びその塩もまた、有利には、用いられ得る。ケイ素は、例えば水/アルコール混合物中のケイ酸エチルの溶液による含浸により加えられ得る。このケイ素は、例えばシリコーンタイプのケイ素化合物の水中懸濁液による含浸により加えられ得る。
【0117】
ホウ素源は、有利には、ホウ酸、好ましくはオルトホウ酸HBO、二ホウ酸アンモニウム又は五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素、ホウ酸エステルであり得る。ホウ素は、例えばホウ酸と、過酸化水素と、アンモニア、第一及び第二アミン、環状アミン、ピリジン系、キノリン類の化合物及びピロール系化合物のような窒素を含む塩基性有機化合物との混合物という形で導入され得る。ホウ素は、有利には、例えば水/アルコール混合物中のホウ酸溶液を用いて導入され得る。
【0118】
有利に用いられ得る第VIIA族元素源は、当業者に周知である。一例として、フッ化物アニオンは有利には、フッ化水素酸又はその塩の形態で導入され得る。これらの塩はアルカリ金属、アンモニウム又は有機化合物で形成される。この後者の場合、塩は有利には、有機化合物とフッ化水素酸との反応による反応混合物中形成される。またフルオロケイ酸アンモニウム(NHSiF、四フッ化ケイ素SiF、または六フッ化ナトリウムNaSiFのようなフッ化物アニオンを水中に放出することができる加水分解可能な化合物を使用することも可能である。フッ素は、有利には、例えばフッ化水素酸又はフッ化アンモニウムの水溶液を含浸させることにより導入され得る。
【0119】
焼成後に酸化物の形態で得られた触媒は、場合によっては少なくとも部分的に金属又は硫化物の形態に転換され得る。
【0120】
本発明において得られた触媒は、有利には、種々の形状や寸法の粒子状に成形される。触媒は有利には通常、円筒形や直線又はひねり形状の二葉、三葉、多葉状といった多葉押出物の形態で使用されるが、粉砕粉末、錠剤、環状、ビーズ状、歯車状という形状に製造使用されてもよい。それらはBET法(Brunauer, Emmett, Teller, J. Am. Chem. Soc., vol. 60, 309-316(1938))を用いた窒素吸収により測定された比表面積が50〜600m/gの範囲であり、水銀ポロシメトリーにより測定された細孔容積が0.2〜1.5cm/gの範囲であり、また単峰、二峰又は多峰であり得る細孔サイズ分布を有している。
【0121】
本発明によれば、得られた触媒は炭化水素供給原料の転化(広義には転換(transformation)の意味)のための反応、特に水素化分解反応に利用される。
【0122】
供給原料(feed)
本発明によれば、上記触媒は石油留分のような炭化水素供給原料を水素化分解する反応に利用される。
【0123】
この方法に有利に使用される供給原料は、ガソリン、灯油、軽油、真空軽油、常圧残渣、真空残渣、常圧蒸留物、真空蒸留物、重質燃料、石油、ワックス及びパラフィン、使用済み石油、脱アスファルト残渣又は原油、熱転化法又は接触転化法に由来する供給原料及びこれらの混合物である。これらは硫黄、酸素及び窒素のようなヘテロ原子や場合によっては金属を含んでいる。フィシャー‐トロプシュ法からの供給原料は除外される。
【0124】
本発明の触媒は、本発明の水素化分解法に使用され、好ましくは、真空蒸留型(vacuum distillate type)の重質炭化水素留分、脱アスファルト化又は水素化処理された残渣又はそれと同等物を水素化分解する方法に使用される。この重質留分は、好ましくは、少なくとも350℃、好ましくは350〜580℃の範囲の沸点を具えた少なくとも80体積%の化合物(すなわち、少なくとも15〜20個の炭素原子を含んだ化合物に相当する)によって構成される。この重質留分は通常、硫黄及び窒素のようなヘテロ原子を含んでいる。窒素含有量は通常、1〜5000重量ppmの範囲であり、硫黄含有量は0.01〜5重量%の範囲である。
【0125】
本発明による炭化水素供給原料の水素化分解法において使用される触媒は、好ましくは、処理されるべき供給原料と接触させる前に少なくとも部分的に金属種を硫化物へ転換するように硫化処理される。硫化によるこの活性化処理は当業者に周知であり、文献に記載されているあらゆる処理を用いて成し遂げられ得る。
【0126】
当業者に周知である従来の硫化法は、通常は横断床反応領域において硫化水素の存在下で150〜800℃の範囲の温度、好ましくは250〜600℃の範囲の温度まで触媒を加熱することからなる。
【0127】
本発明の触媒は、有利には、多量の硫黄及び窒素を含有する真空蒸留物型留分の水素化分解に使用され得る。所望の生成物は中間留分及び/又は石油である。有利には、水素化分解は粘度指数95〜150の範囲を有する基油の製造と、改良された中間留分製造工程中の予備水素化処理工程と組み合わせて使用される。
【0128】
(水素化分解法)
本発明はまた、本発明の水素化分解触媒を用いた水素化分解法に関する。
【0129】
水素化分解条件(例えば、温度、圧力、水素再利用率、または毎時空間速度)は、供給原料の性質、所望の生成物の品質及び精油業者が利用可能な設備によって大きく変わり得る。温度は、通常且つ有利には、200℃超であり、好ましくは250〜480℃の範囲である。圧力は有利には0.1MPa超であり、好ましくは1MPa超である。水素再利用率は供給原料1リットルあたり、有利には最小で50(水素標準リットル)であり、好ましくは80〜5000水素標準リットルである。毎時空間速度は、有利には、毎時、0.1〜20供給原料容積/触媒容積の範囲である。
【0130】
本発明による水素化分解法は、有利には、穏やかな水素化分解(mild hydrocracking)から高圧水素化分解までの圧力と転化の範囲をカバーする。
【0131】
用語「穏やかな水素化分解」とは、有利には、中程度の転化率、一般的には55%未満、好ましくは40%未満をもたらし、低圧、一般的には、2〜12MPaの範囲、好ましくは2〜6MPaの範囲で機能する水素化分解を意味する。
【0132】
用語「高圧水素化分解」とは、有利には、高い転化率、一般的には55%超をもたらし、高圧、一般的には6MPa超で操作する水素化分解を意味する。
【0133】
本発明の触媒は、有利には、単独で、或いは1個以上の反応器内の1個以上の触媒床中で、ワンススルー(onece-through)水素化分解法において、転化されていないフラクションの液体の再利用を行うか行わないかにに関わらず使用され得、場合によっては本発明の触媒の上流に位置する水素化精製(hydrorefining)触媒と組み合わせて使用され得る。
【0134】
2つの反応帯域の間に中間分離が入っている二工程水素化分解レイアウトでは、本発明の触媒は、有利には、本発明の触媒の上流に位置する水素化精製触媒と組み合わせるか組み合わされないで、第二反応帯域中の1以上の反応器内の1又は複数の触媒床で使用される。
【0135】
(ワンススルー方法)
ワンススルー水素化分解は、有利には、第1の場所においておよび一般に、適した水素化分解触媒に送る前に供給原料の水素化脱窒および強力な脱硫を行うことを目的とする強力な水素化精製を含む(特に、この水素化分解触媒がゼオライトを含む場合)。供給原料の前記強力な水素化精製は、供給原料のより軽質なフラクションへの制限された転化のみを含み、これは、依然として不十分であり、それ故に、より活性な水素化分解触媒を用いて完了されなければならない。しかし、二種類の触媒の間には分離がないことに留意されるべきである。反応器からの流出液は有利には、すべて適した水素化分解触媒上に流入され、その後になってから初めて、形成された生成物が分離され得る。このバージョンの水素化分解は、「ワンススルー」と呼ばれており、供給原料のより強力な転化を目的として、反応器に向かう未転化フラクションへの再利用を有利には伴うバリエーションを有する。
【0136】
穏やかな(mild)又は中程度の(moderate)の水素化分解とも呼ばれる、部分水素化分解の第1の実施形態において、転化度は有利には55%未満、好ましくは40%未満である。本発明の触媒は、その後有利には、通常230℃以上、好ましくは300℃以上、一般には最高で480℃及び通常は350〜450℃の範囲の温度で使用される。圧力は有利には2MPa超、好ましくは3MPa超で、かつ12MPa未満、好ましくは10MPa未満である。水素量は有利には、供給原料の体積(リットル)あたり少なくとも水素100標準リットルの範囲であり、好ましくは供給原料の体積(リットル)あたり水素200〜3000標準リットルの範囲である。毎時空間速度は、有利には、0.15〜10h−1の範囲である。これらの条件下に、本発明の触媒は市販の触媒よりも転化率、水素化脱硫及び水素化脱窒に関して優れた活性を有している。
【0137】
第2の実施形態において、水素化分解は高圧(全圧力が6MPa超)で行われ、転化度は有利には55%超である。次いで、本発明の方法は、温度が有利には230℃以上、好ましくは300〜480℃の範囲、更に好ましくは300〜440℃の範囲で、圧力が5MPa超、好ましくは7MPa超、非常に好ましくは10MPa超、より一層好ましくは12MPa超で、水素の最小量が供給原料の体積(リットル)あたり100Nl、好ましくは200〜3000Nl/l(供給原料)の範囲で、毎時空間速度が通常0.15〜10h−1の範囲で機能する。
【0138】
(二工程方法実施形態)
二工程水素化分解法は、有利には、第1工程を含み、その目的はワンススルー方法の場合のように供給原料の水素化精製を実施するだけでなく、通常は40〜60%程度の供給原料の転化率も達成することである。第1工程からの流出液はその後、有利には、一般に中間分離と呼ばれる分離(蒸留)に供され、この目的は未転化フラクションから転化生成物を分離することである。二工程水素化分解法の第2工程では、第1工程で転化されていない供給原料のフラクションのみが処理される。この分離は、二工程水素化分離方法が中間留分(灯油+ディーゼル)に対してワンススルー方法よりも選択的であり得ることを意味する。実際、転化生産物の中間分離は、第2工程において水素化分解触媒上でそれらがナフサ及びガスに「過剰分解(overcracked)」されるのを阻止する。更に、第2工程で処理された供給原料の未転化フラクションは通常、非常に少量の硫黄及びNHならびに窒素含有有機化合物を含んでおり、それは通常20重量ppm又は更には10重量ppm未満であることが留意されるべきである。
【0139】
二工程水素化分解法の第2工程で使用される触媒は、好ましくは第VIII族の貴金属をベースとする触媒であり、更に好ましくは白金及び/又はパラジウムをベースとする触媒である。
【0140】
石油留分の転化方法が二工程で行われる場合、本発明の触媒が有利には第二工程で使用される。
【0141】
第1実施形態では、本発明の方法は有利には、例えば既に水素化処理された硫黄及び窒素の含有量が高い真空蒸留型留分を部分的に(すなわち、穏やかに又は中程度に)、有利には中程度の圧力条件下で、水素化分解するのに使用され得る。この水素化分解態様において、転化度は55%未満、好ましくは40%未満である。第1工程の触媒は、有利には、当業者に知られたあらゆる水素化処理触媒であってもよい。この水素化処理触媒は有利には、マトリクスを含んでおり、好ましくはアルミナと水素化機能を有する少なくとも1種の金属とをベースにしたものである。この水素化機能は、第VIII族金属及び第VIB族金属から選択される、例えば、特にニッケル、コバルト、モリブデン及びタングステンから選択される、単独でまたは組み合わせて使用される少なくとも1種の金属または金属化合物によって提供される。さらに、前記触媒は場合によっては、リン及びホウ素を含んでもよい。
【0142】
第1工程は有利には、350〜460℃、好ましくは360〜450℃の温度、少なくとも2MPa、好ましくは3MPaの全圧、0.1〜5h−1、好ましくは0.2〜2h−1の毎時空間速度、少なくとも100Nl/l(供給原料)、好ましくは260〜3000Nl/l(供給原料)の水素量で行われる。
【0143】
本発明の触媒を用いて行う転化工程(又は第2工程)では、温度は有利には230℃以上であり、通常は300〜480℃の範囲であり、好ましくは330〜450℃の範囲である。圧力は有利には、少なくとも2MPa、好ましくは3MPaであり、且つ12MPa未満、好ましくは10MPa未満である。水素量は、有利には、最小100Nl/l(供給原料)、好ましくは200〜3000Nl/l(供給原料)の範囲である。毎時空間速度は有利には、通常0.15〜10h−1の範囲である。このような条件下に、本発明の触媒は、市販の触媒よりも、転化率、水素化脱硫及び水素化脱窒に関する優れた活性と中間留分に対する優れた選択性とを有している。この触媒の耐用期間も、中程度の圧力の範囲内において改善されている。
【0144】
別の二工程実施形態において、本発明の触媒は、少なくとも6MPaの高圧条件下で水素化分解を行うのに利用され得る。処理された留分は、例えば、既に水素化処理された硫黄及び窒素の含有量が多い真空蒸留型のものである。この水素化分解態様において、転化度は55%超である。この場合、石油留分の転化方法は有利には2工程で行われ、本発明の触媒は第2工程で用いられる。
【0145】
第1工程の触媒は、有利には、当業者に知られたあらゆる水素化処理触媒であってもよい。この水素化処理触媒は有利には、好ましくはアルミナと水素化機能を有する少なくとも1種の金属とをベースとするマトリクスを含んでいる。この水素化処理機能は、第VIII族金属及び第VIB族金属(例えば特にニッケル、コバルト、モリブデン及びタングステン)から選択される、単独で又は組み合わせて使用される、少なくとも1種の金属又は金属化合物によって提供される。さらに、この触媒は場合によっては、リン及びホウ素を含んでもよい。
【0146】
第1工程は有利には、350〜460℃、好ましくは360〜450℃の温度、3MPa超の圧力、0.1〜5h−1、好ましくは0.2〜2h−1の毎時空間速度、少なくとも100Nl/l(供給原料)、好ましくは260〜3000Nl/l(供給原料)の水素量で行われる。
【0147】
本発明の触媒を用いて行う転化工程(又は第2工程)では、温度は有利には230℃以上、通常は300〜480℃の範囲、好ましくは300〜440℃の範囲である。圧力は有利には、5MPa超、好ましくは7MPa超、更に好ましくは10Mpa超、更により一層好ましくは12MPa超である。水素の量は、有利には、最小100Nl/l(供給原料)、好ましくは200〜3000Nl/l(供給原料)の範囲である。毎時空間速度は有利には、通常0.15〜10h−1の範囲である。
【0148】
このような条件下では、本発明の触媒は、市販の触媒よりも、転化率に関する優れた活性と中間留分に対する優れた選択性とを有しており、更に、市販の触媒に比べてゼオライトの含有量は相当低い。
【0149】
有利には本発明による水素化分解方法を用いる石油の製造方法において、その操作は特許US-A-5 525 209に開示されているように行われ、第1水素化処理工程は、粘度指数90〜130を有し窒素及びポリ芳香族化合物の量が低減した流出液を生じさせることができる条件下で行われる。その後に続く水素化分解工程では、流出液は有利には、操作者が所望する粘度指数になるよう粘度指数の値を調整するように本発明に従って処理される。
【0150】
以下の実施例は本発明を例証するものであるが、その範囲に限定するものではない。
【0151】
(実施例1)
・COK‐7ゼオライト及びシリカ‐アルミナを含む水素化分解触媒C1(本発明に合致する);
・COK‐7ゼオライト、ZBM‐30ゼオライト及びシリカ‐アルミナを含む水素化分解触媒C2(本発明に合致する);
・シリカ‐アルミナのみを含む触媒C3(本発明に合致しない);および
・Yゼオライト及びシリカ‐アルミナを含む触媒C4(本発明に合致しない)
の調製。
【0152】
COK‐7ゼオライトは、トリエチレンテトラミン有機テンプレートを用いてEP‐1 702 888 A1に記載されているようにして合成された。次に、このCOK‐7ゼオライトを乾燥空気流下550℃で12時間にわたって焼成した。得られたH‐COK‐7ゼオライト(酸型)のSi/Al比は52であり、Na/Al比は0.002未満であった。
【0153】
ZBM‐30ゼオライトは、トリエチレンテトラミン有機テンプレートを用いてBASFのEP‐A‐0046504に記載されているようにして合成された。次に、このZBM‐30ゼオライトを乾燥空気流下550℃で12時間にわたって焼成した。得られたH‐ZBM‐30ゼオライト(酸型)のSi/Al比は45であり、Na/Al比は0.001未満であった。
【0154】
シリカ‐アルミナ前駆体SA1を次のように調製した:特許US‐A‐3 124 418に記載されているようにしてアルミナ水和物を調製した。ろ過後、新たに調製された沈殿物(P1)を、脱カチオン樹脂(decationizing resin)上で交換することにより調製されたケイ酸溶液と混合した。最終固体においてAl70%‐SiO30%の組成になるように2つの溶液の割合を調整した。この混合物を市販のコロイダルミルにおいて、ミルからの出口における懸濁液中の硝酸の量が混合されたシリカ‐アルミナ固体に対して8%になるような硝酸の存在下で迅速に均質化した。次に、懸濁液(P2)をスプレードライヤーにおいて300℃から60℃へと従来のように乾燥させた。調製された粉末をZアームミキサにおいて無水生成物に対して硝酸8%の存在下で成形した。直径1.4mmのオリフィスが設けられたダイ中にペーストを通過させることによって押出を行った。100%シリカ‐アルミナを含む得られた押出物E1を150℃で乾燥させ、次いで550℃で焼成し、その後、水蒸気の存在下750℃で焼成した。
【0155】
次に、5gの上記COK‐7ゼオライトと、15gの上記シリカ‐アルミナ前駆体P2とを混合した。押出機に投入する前にその混合物を混合した。この粉末状のゼオライトを湿潤させ、66%硝酸(乾燥ゲル1gあたり7重量%の酸)の存在下、マトリクスの懸濁液に添加し、次いで15分間にわたり混合した。混合後、得られたペーストを、直径1.4mmの円筒状オリフィスを有するダイに通過させた。次いで、この押出物を空気中120℃で終夜乾燥させ、空気中550℃で焼成した。押出物E2は20重量%のCOK‐7ゼオライト及び80重量%のシリカ‐アルミナを含んでいた。
【0156】
次に、3gのCOK‐7ゼオライト、2gの上記ZBM‐30ゼオライト、及び15gの上記シリカ‐アルミナ前駆体P2を混合した。押出機に投入する前にその混合物を混合した。ゼオライト粉末を湿潤させ、66%硝酸(乾燥ゲル1gあたり7重量%の酸)の存在下、マトリクスの懸濁液に添加し、次いで15分間にわたり混合した。混合後、得られたペーストを、直径1.4mmの円筒状オリフィスを有するダイに通過させた。次いで、この押出物を空気中120℃で終夜乾燥させ、空気中550℃で焼成した。押出物E3は20重量%のゼオライト(60%COK‐7+40%ZBM‐30)及び80重量%のシリカ‐アルミナを含んでいた。
【0157】
次いで、押出物E1、E2及びE3にヘプタモリブデン酸アンモニウム、硝酸ニッケル及びオルトリン酸の水溶液を乾式含浸させ、空気中120℃で終夜乾燥させ、空気中550℃で最終的に焼成した。得られた触媒C1、C2及びC3中の酸化物としての重量含量は、3.0重量%のNiO、14.0重量%のMoO及び4.6重量%のPであった。
【0158】
COK‐7ゼオライトの代わりにYゼオライトを用いると、触媒C4は触媒C1と同じになった。使用されたYゼオライトは、参照記号CBV780を有する市販のゼオライト(Zeolyst International)であった。Si/Al比は43.5であり、Na/Al比は0.004未満であった。
【0159】
(実施例2)
(真空蒸留物の水素化分解における触媒の評価)
真空蒸留物の水素化分解に関して、高転化率水素化分解条件(60〜100%)下で触媒C1、C2、C3及びC4を評価した。石油供給原料は水素化処理された真空蒸留物であり、以下の主要な特徴を有している。
【0160】
・密度(20/4) 0.8610
・硫黄(重量ppm) 12
・窒素(重量ppm) 4
・模擬蒸留:
初留点 180℃
10%点 275℃
50%点 443℃
90%点 537℃
終留点 611℃
この供給原料は、第VIB族からの1種の元素及び第VIII族の1種の元素をアルミナ上に担持されて含むAXENSにより販売されているHR448の触媒上で真空蒸留物を水素化処理することにより得られた。
【0161】
Sの前駆体である硫黄含有化合物(DMDS)とNHの前駆体である窒素含有化合物(アニリン)とを水素化処理された供給原料に加えて、第2水素化分解工程中に存在するHS及びNHの分圧をシミュレートした。次いで、2.5%の硫黄と1400ppmの窒素とを供給原料に追加した。こうして調製された供給原料を、50mlの触媒C1、C2又はC3が導入された固定床反応器を備えた水素化分解試験装置に上昇流供給様式(upflow feed mode)で注入した。供給原料の注入前に、触媒は軽油+DMDS+アニリンの混合物を用いて320℃未満で硫化された。現場(in‐situ)又は現場外(ex‐situ)のいかなる硫化方法であっても適していることに留意されたい。一旦硫化が行われると、上記供給原料は転換され得た。試験装置の操作条件は以下の通りである。
【0162】
・全圧 14.9MPa
・触媒 50ml
・温度 所望の転化が得られるように調整した;
・水素流量 50Nl/h
・供給原料流量 50cm/時間
触媒性能は、80%の総転化度(gross degree of conversion)を達成可能な温度と150〜380℃の中間留分の総選択性として表された。これらの触媒性能は安定期の後の、通常最短で48時間後の触媒について測定された。
【0163】
総転化度(gross conversion:GC)は:
GC=流出液中の380℃、の重量%
であった。
【0164】
中間留分の総選択性(gross selectivity:GS)は:
GS=100×(流出物中の(150〜380℃)のフラクションの重量)/(流出物中の380℃フラクションの重量)
となった。
【0165】
得られた中間留分は沸点が150〜380℃の生成物からなっていた。
【0166】
以下の表1は、触媒C1及びC2の反応温度ならびに総選択性を示す。
【0167】
表1からは、シリカ‐アルミナにCOK‐7を加えると、触媒の活性及び中間留分の選択性の両方が改善され得ることがわかる。
【0168】
【表1】

【0169】
表2からは、シリカ‐アルミナにCOK‐7を加えると、Yゼオライトに比して、等転化(iso-conversion)においては中間留分の選択率が改善され得ることがわかる。
【0170】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIB族金属および第VIII族金属からなる群より選択される少なくとも1種の水素化脱水素金属と担体とを含み、該担体は、少なくとも1つのシリカ−アルミナと、単独の又は少なくとも1つのZBM−30ゼオライトと混合された少なくとも1つのCOK−7ゼオライトとを含む触媒。
【請求項2】
前記COK‐7ゼオライトは、トリエチレンテトラミン有機テンプレートの存在下に合成される、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記ZBM‐30ゼオライトは、トリエチレンテトラミン有機テンプレートの存在下に合成される、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記担体は、構造型TON、構造型FER、構造型MTTのゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種のゼオライトも含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項5】
前記シリカ‐アルミナは、5重量%超かつ95重量%以下の量のシリカ(SiO)を含み、前記シリカ‐アルミナは以下の特性を有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の触媒:
・水銀ポロシメトリーにより測定された平均細孔径が、20〜140Åの範囲である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された総細孔容積が、0.1〜0.5ml/gの範囲である;
・窒素ポロシメトリーにより測定された総細孔容積が、0.1〜0.5ml/gの範囲である;
・BET比表面積が、100〜550m/gの範囲である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された、140Åを超える径の細孔に含まれる細孔容積が、0.1ml/g未満である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された、160Åを超える径の細孔に含まれる細孔容積が、0.1ml/g未満である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された、200Åを超える径の細孔に含まれる細孔容積が、0.1ml/g未満である;
・水銀ポロシメトリーにより測定された、500Åを超える径の細孔に含まれる細孔容積が、0.lml/g未満である;
・X線回折図が、アルファ、ロー、カイ、エータ、ガンマ、カッパ、シータ及びデルタアルミナからなる群に含まれる少なくとも1種の遷移アルミナの主要な特徴的ピークを少なくとも含む。
【請求項6】
第VIII族金属は、白金およびパラジウムから選択される、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
第VIII族金属は、鉄、コバルトおよびニッケルから選択される、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
第VIB族金属は、タングステンおよびモリブデンから選択される、請求項1〜7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
第VIB族金属および第VIII族金属からなる群から選択される水素化脱水素元素の量は、前記触媒の全質量に対して0.1〜60重量%の範囲である、請求項6〜8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の触媒を用いる水素化分解方法。
【請求項11】
ワンススルー方法である、請求項10に記載の水素化分解方法。
【請求項12】
二工程方法である、請求項10に記載の水素化分解方法。
【請求項13】
温度が230℃以上、圧力が少なくとも2MPaかつ12MPa未満、水素の最小量が100Nl/l(供給原料)、かつ毎時空間速度が0.15〜10h−1の範囲である、穏やかな水素化分解条件下に行われる、請求項10〜12のいずれか1つに記載の水素化分解方法。
【請求項14】
温度が230℃以上、圧力が5MPa超、水素の最小量が100Nl/l(供給原料)、かつ毎時空間速度通常0.15〜10h−1の範囲である、高圧の水素化分解条件下に行われる、請求項10〜12のいずれか1つに記載の水素化分解方法。
【請求項15】
供給原料が、ガソリン、灯油、軽油、真空軽油、常圧残渣、真空残渣、常圧蒸留物、真空蒸留物、重質燃料、石油、ワックス及びパラフィン、使用済み石油、脱アスファルト残渣又は原油、熱転化法又は接触転化法に由来する供給原料及びこれらの混合物である、請求項10〜14のいずれか1つに記載の水素化分解方法。

【公表番号】特表2011−508667(P2011−508667A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541077(P2010−541077)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001721
【国際公開番号】WO2009/103880
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】