説明

少なくとも1種類の天然Ac−N−Ser−Asp−Lys−Proテトラペプチドまたはその類似体の1つの、皮膚老化防止および再構築剤としての美容的使用

本発明は、式(I):


(式中、Aは、D−またはL−Serに相当する基であり、Aは、D−またはL−AspまたはGluに相当する基であり、Aは、D−またはL−Lys、ArgまたはOrnに相当する基であり、Aは、D−またはL−に相当する基であり、R、RおよびRは、特許請求の範囲において定義したとおりである)
の少なくとも1種類の化合物の、皮膚老化防止および再構築剤としての美容的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1種類のテトラペプチドまたは類似体の組成物における皮膚老化防止および再構築剤としての美容的使用に関する。
【0002】
皮膚は、体全体を覆う、柔軟な、耐性のある組織として、一連の細胞群で構成されている。皮膚は、内部環境と外部環境間の特定の交流が起こると同時に、外部要因からの防護壁としての主要な役割を果たす。皮膚は、数多くの生物の生理学的状態や環境条件によって調節される代謝過程の起こる部位である。皮膚は、2つの隣接する層、表皮および真皮で構成されており、それらの層に皮下組織が付着している。
【0003】
体を保護することを主な役割とする表皮は、皮膚の最上層であり、皮膚に不透過性と耐性を与える。表皮は約4週間ごとに新しいものになる。表皮には異なる細胞型が共存しているが、構成している主要な細胞型(90%)がケラチノサイトである。それら特有の活性は、表皮の総タンパク質量の95%を占めるケラチンの合成活性である。ケラチン、繊維性タンパク質および水不溶性タンパク質は、有害な外部要因(暑さ、寒さ、乾燥)から皮膚を保護する表皮角質層の構成成分である。
【0004】
表皮は、真皮表皮接合部または表皮基底膜と呼ばれるゾーンを通じて真皮とつながっている。この構造は、真皮と表皮の接着をもたらし、皮膚の張力に一部関与する機械的支持という役割を有している。この構造は、基底層ケラチノサイトと皮膚繊維芽細胞との両方で構成され、高濃度のIV型コラーゲンを含有している。このIV型コラーゲンが、アンカレッジプレート(anchorage plates)の一部を形成し、基底膜を真皮乳頭層のアンカレッジプレートとつないでいる。
【0005】
真皮(皮膚内層)は、細胞外マトリックスと呼ばれる複合媒質に散在した細胞(繊維芽細胞)からなる繊維弾性結合組織である。このマトリックスは、コラーゲンおよびエラスチン繊維、糖タンパク質(フィブロネクチンおよびラミニン)ならびにプロテオグリカン(中心となるタンパク質+グリコサミノグリカン GAG)で構成される。これらの構成成分の性質および量が皮膚の機械的性質を調節しているため、その性質および量が老化の過程において認められる最も目立った生理病理学的変化の原因となっている。繊維は、皮膚に立体性、耐性、弾力性および張力を与え、一方、糖タンパク質とプロテオグリカンは量感を与え、水和に寄与する。
【0006】
コラーゲン(真皮の75%を構成するタンパク質)は、真皮の「接着剤」に相当する。それらの特有の空間的配置はコラーゲン分子に剛性を与えるため、その分子に機械機能を与える。III型繊維状コラーゲンは、その皮膚部位が分かっており、繊維ネットワークに不可欠な成分を構成し、皮膚の支持および弾力性の大部分の確保において機械的役割を果たす。
【0007】
プロテオグリカン(皮膚結合組織の繊維間に散在している大型高分子複合体)は、皮膚の張力の大部分に関与する。グリコサミノグリカン(GAG)(長い多糖鎖からなる高分子)は、プロテオグリカンに負電荷を与えて、そのプロテオグリカンにイオン、水および種々の代謝産物を「捕捉させる」ため、その構造は皮膚の保湿や圧力および伸縮力に対する耐性に寄与する。
【0008】
老化の過程において、皮膚はシワができ、弛緩し、含水量が減少した状態になり、皮膚の更新が難しくなる。外観を損なうか、または皮膚疾患を引き起こす臨床症状は、本質的に、UVや有害な外部要因(汚染など)だけでなく、20歳にして始まる加齢による老化に応じた、いわゆる「内因性」要因の影響にもよるものである。
【0009】
表皮は、老化の影響を最初に受ける。ケラチノサイトの、基底層で分裂する能力は低下し、上層の角質層の更新時間が長くなる。細胞成熟が不完全なため、角化によって通常の均質な基底層の形成はもはや起こらない。こうしたことから、表皮は薄くなり、一層乾燥し、外観は粗くなる。
【0010】
同時に、皮膚のより深い領域の崩壊も起こる。基礎結合と栄養機能の両方に関与する真皮は、皮膚損傷の主な対象である。老化の過程において、真皮の構成物質の供給源である繊維芽細胞は、消失するか、または繊維細胞へと変化する。その結果として、細胞接着および機能において重要な役割を果たすフィブロネクチンのレベルが低下する。弾性繊維の数および質も低下する。コラーゲン量の減少(1年に1%)により、皮膚の弾力性の喪失や皮膚厚みの低下が説明される。真皮細胞を互いにつなぐ接合部における柔軟性の喪失は、高齢者に見られる擦り切れの徴候の根本的原因である。これにより、目の下のたるみや皮膚のシワの出現だけでなく、小さな外傷の後の真皮病変の増強も説明される。
【0011】
平均寿命の延びと若々しく保ちたいという願望とが結びつき、それが動機となって、老化プロセスの過程で起こる皮膚構造の変化についての研究が行われてきた。外観に関与する主要構成要素は、皮膚の構造組織(結合組織、角膜組織およびフィブロプラスミック(fibroplasmic)組織)である。それらの構成物質のうち、コラーゲン、エラスチンおよびケラチンは、皮膚に影響を及ぼす形態学的変化において極めて重要な役割を果たす。このレベルでは、1つに化粧品が役に立つ。フェイシャルリフトプログラムやシワを軽減し、皮膚の弾力性を改善するための、市場において利用可能な治療も数多くある。これらの多くは、皮膚の表面に有効であるか、または上記の標的タンパク質にのみ有効であり、それらの効果は、一時的および部分的に満足できるものである。
【0012】
さらに、多くの化合物は、全く毒性がないわけではなく、長期適用によってアレルギーなどの皮膚の問題を引き起こす可能性がある。それらの製造に用いられる方法は、化学合成を必要とするか、または天然物質からの長く、費用のかかる抽出法を必要とすることが多い。
【0013】
このような理由で、これらの不都合を与えず(すなわち、それらの化合物には毒性がなく、得ることが容易である)、いくつかのタンパク質標的に同時に作用する化合物が常に必要である。
【0014】
驚くべきことに、本出願者は、特定の天然テトラペプチドまたはそれらの類似体が、いくつかのレベルで、真皮と表皮との両方において同時に作用することを見出した。また、これらの誘導体には、天然ペプチドからの単離が容易であるという利点もある。あるいは構成が簡単であり、それゆえに、費用がかからないペプチド合成経路を通じて得ることもできる。さらに、これらの化合物には、それらのペプチド性から、生物に対する毒性が全くないか、またはごくわずかしかない。
【0015】
本発明の範囲内において使用されるペプチドまたは類似体は、基本構造アセチル−Ser−Asp−Lys−Pro(AcSDKP)の誘導体である。それらの誘導体は、それらの治療特性(特に、化学療法での抗癌治療中の骨髄保護)や造血細胞の増殖を阻害するそれらの能力で知られている(WO88/00594およびWO97/28183)。最後に、本出願者は、最近、それらの脈管形成作用を発見した(WO02/24218)。
【0016】
これらの化合物に皮膚への老化防止または再構築効果があるかもしれないことを記載または示唆する先行技術の文献はなく、それらの使用が、コラーゲンIIIおよびIV、フィブロネクチン、グリコサミノグリカンならびに/またはケラチンの合成に対して良い効果をもたらすことを記載または示唆するものもない。
【0017】
よって、本発明は、下式(I):
【化1】

{式中、
は、D−またはL−Serに相当する基であり、
は、D−またはL−AspまたはGluに相当する基であり、
は、D−またはL−Lys、ArgまたはOrnに相当する基であり、
は、D−またはL−Proに相当する基であり、
およびRは、独立に、水素原子、置換または非置換型のC−C12直鎖または分枝鎖アルキル基、置換または非置換型のC−C20直鎖または分枝鎖アリールアルキル基、RCO−およびRCOO−(ここで、Rは、置換もしくは非置換のC−C12直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、または置換もしくは非置換型のC−C20アリールアルキル基である)の中から選択され、置換としては、OH、NHまたはCOOHが含まれ、
およびXは、ペプチドおよび擬ペプチド結合であり、
は、−CO−および−CH−から選択される基であり、かつ、Rは、−OH、−NH、C−C12直鎖もしくは分枝鎖アルコキシ(alcoxy)または−NH−X−CH−Z(ここで、Xは、C−C12直鎖または分枝鎖炭化水素基であり、かつ、Zは、水素原子または−OH、−COHもしくは−CONH基である)の中から選択される基である}、
の少なくとも1種類の化合物、ならびにそれらの生理学的に許容される塩の、皮膚再構築および老化防止剤としての組成物における美容的使用に関する。
【0018】
本発明の適用に特に適した、好ましいアルキル基は、C−C直鎖または分枝鎖アルキル基である。さらに詳しくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtertブチル基が好ましい。
【0019】
本発明のアリール基とは、6個〜14個の炭素原子を有する芳香族炭素基を意味する。この一例としては、フェニル、ナフチルまたはアントラセニル基がある。
【0020】
本発明の好ましいアリールアルキル基としては、ベンジルおよびフェネチル基が挙げられる。
【0021】
式(I)に相当するペプチドまたは擬ペプチドは、テトラペプチド基本構造アセチル−Ser−Asp−Lys−Pro(AcSDKP)から誘導される。
【0022】
「〜に相当する基」とは、式:
NH−CH(A)−COOH(アミノ酸に相当する)
の基Aを意味する。
従って、Aは、Serの場合には−CHOHであり、
Aspの場合には−CHCOOHであり、
Gluの場合には−CH−CH−COOHであり、
Argの場合には(CH−NH−C(NH)NHであり、
Ornの場合には−(CH−NHであり、および
Lysの場合には(CH−NHであり、
末端アミノ酸Aの場合には、これは=N−CH(A)−CO−またはNH−(CH)A−CO−のいずれかを意味する。
【0023】
「擬ペプチド」とは、参照ペプチドと類似しているが、1以上のペプチド結合−CO−NH−が擬ペプチド(例えば、ψ(CHNH)で表される−CH−NH−、−CH−S−、−CH−O−、−CO−CH−CO−、−CH−CHなど)と呼ばれるペプチド結合に相当する結合によって置換されている化合物を意味する。
【0024】
およびR基では、水素原子またはRCO−基(式中、RはC−Cアルキル基である、特にCHCO、ならびにHOOC−CH−CH−CO−Oを表す)が好ましい。
同様に、Rは、NH、OHまたはNHCHであることが好ましい。
【0025】
本発明の実施に適した式(I)の化合物としては、
【化2】

が挙げられる。
【0026】
本発明の実施に特に適した式(I)の一化合物は、天然テトラペプチドCHCO−Ser−Asp−Lys−Pro(AcSDKP)である。
【0027】
本発明の「生理学的に許容される塩」とは、いずれかの生理学的に許容される無毒の酸、例えば、有機酸および無機酸、から調製されたいずれかの塩を意味する。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、酒石酸およびパラトルエンスルホン酸が挙げられる。塩酸を使用するのが有利である。
【0028】
本発明の一実施形態は、組成物中の上記式(I)の化合物の、コラーゲンIIIおよびIV、フィブロネクチン、グリコサミノグリカンならびに/またはケラチン14および/もしくは19の産生刺激剤としての美容的使用に関する。
【0029】
さらに詳しくは、本発明は、組成物中の上記式(I)の化合物の、内因性皮膚老化を予防するための薬剤としての使用に関する。
【0030】
有利には、上記式(I)の化合物を、皮膚の弾力性および/もしくは張力を改善するため、ならびに/または皮膚上へのシワおよび目尻のシワの出現を予防、軽減および/もしくは抑制するために使用することができる。
【0031】
本発明の別の態様によれば、上記式(I)の化合物を、皮膚剥離、ケミカルピーリングまたはレーザーリサーフェシング治療後の皮膚再生を増進するために使用することができる。
【0032】
天然テトラペプチドCHCO−Ser−Asp−Lys−Pro(AcSDKP)は、ウシ胎児骨髄から単離された(WO−88/00594)。このテトラペプチドは、従来のペプチド合成によっても得ることができる。AcSDKPから誘導される式(I)のペプチドまたは擬ペプチドは、文書WO−97/28183に記載されるように、ペプチドまたは擬ペプチド合成によっても得ることができる。
【0033】
式(I)の化合物は、本発明を実施するために使用される組成物中、組成物の総重量に対して0.01重量%〜10重量%の範囲、好ましくは、0.05重量%〜5重量%、さらに詳しくは、0.1重量%〜2重量%の量で存在する。
【0034】
本発明による美容用組成物は局所用であり、このタイプの適用に従来用いられているいずれもの剤形、特に、エマルション(水中油型エマルション、油中水型エマルション、油中水中油型または水中油中水型三相エマルション)形態、水性ゲル、または水性、水性アルコールもしくは油性溶液形態で使用することができる。それらは、事実上液体であり、白色もしくは有色のクリーム、軟膏、乳状液、ローション、漿液、ペースト、ムース形態または二相形態である。また、固体形態(例えば、スティック形態)またはエアゾール形態でもよい。
【0035】
本発明の範囲内において使用される組成物は、式(I)の誘導体のほかに、処方にある有効成分と良好な相溶性を有する化合物の中から選択できる1種類以上の賦形剤を含有する。例えば、これは、多糖類(キサンタンガム(xanthane gum)、カロブガム、ペプチン)またはポリペプチドなどの天然高分子から得られる水溶性ポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースなどのセルロース誘導体、または合成ポリマー、ポロキサマー(polaxamers)、カルボマー、PVAおよびPVPであり得る。
【0036】
最後に、本組成物は、補助溶剤類(例えば、エタノール、グリセロール、ベンジルアルコール)、湿潤剤(グリセロール)、拡散促進剤(トランスキュロール(transcurol)、尿素)または抗菌薬(0.15%p−ヒドロキシ安息香酸メチル)の種々の他の賦形剤も含有していてもよい。それらはまた、界面活性剤、安定剤、乳化剤、増粘剤および補完的もしくは相乗的効果を有する他の有効成分、ならびに微量元素、精油、香料、色素、コラーゲン、化学フィルターもしくは無機フィルター、保湿剤または鉱水を含有していてもよい。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、式(I)の誘導体は、少なくとも1種類の他の有効成分と組み合わせられる。
【0038】
本発明はまた、上記式(I)の少なくとも1種類の誘導体を含有する組成物の皮膚への塗布を含む、皮膚老化の治療のための美容的方法にも関する。
【0039】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1:テトラペプチドAcSDKPを含有する調製物の再構築および老化防止活性についての研究
【0041】
本研究は、乳房形成手術により得られたヒト皮膚の体外移植組織36片で実施した。
【0042】
方法
総ての体外移植組織を生存状態で培養培地中8日間維持した。生理的血清中10−5Mまたは10−8Mの濃度のAcSDKPを局所経路により毎日1週間、体外移植組織に塗布した。2日、4日、6日および8日目に、各バッチ(対照、+AcSDKP 10−5M、+AcSDKP 10−8M)から体外移植組織3片を取り出し、組織学的研究用に調製した。一般形態を調べ、基底層ケラチン(CK14)、未分化ケラチン(CK19)、コラーゲンIII、コラーゲンIV、フィブロネクチンおよび酸性基のないグリコサミノグリカンについての発現の評価を行った。
【0043】
結果
1.一般形態
一連の体外移植組織の試験によって、2種類の試験濃度のAcSDKPの塗布により、処置のD6時点で表皮構造の刺激がもたらされることが示された。このことは生細胞数の増加によって分かる。表皮の厚みの増加は、AcSDKP 10−5Mの塗布を行った場合により大きい(図1)
【0044】
2.ケラチン14(CK14)とケラチン19(CK19)の発現
CK14の免疫標識(Immunolabelling)では、処置のD4時点で基底層および基底層の上層におけるこのタンパク質のレベルが徐々に増加することが分かった。再構築効果は、AcSDKP 10−5Mを用いた場合により大きい(図2A)。CK19の免疫標識では、2種類の試験濃度のAcSDKPでの処置のD6時点で皮膚真皮の結合物の過剰発現が観察できた。10−5Mの濃度のAcSDKPでは、それほど目立った効果はない(図2B)。よって、AcSDKPは、処置した皮膚におけるCK14およびCK19の産生を刺激する。
【0045】
3.真皮コラーゲン(III型)と基底膜コラーゲン(IV型)の発現
AcSDKP 10−5Mでの処置の6日後には、真皮表皮接合部に沿って真皮乳頭層でコラーゲンIIIレベルの極めて著しい増加がある(図3A)。真皮表皮接合部に沿ったこの発現は、AcSDKP 10−8Mを用いた場合には、あまりはっきりしたものではない。しかし、真皮乳頭層および真皮網状層の残りの部分ではコラーゲンIIIがより多く存在する。D8では、AcSDKP 10−5Mで処置した体外移植組織の真皮乳頭層および真皮網状層においてコラーゲンIIIの非常にはっきりとした過剰発現がある。AcSDKP 10−8Mを用いた場合には、コラーゲンIIIのレベルが真皮表皮接合部に沿って増加し、より厚いコラーゲンバンドを形成する。
D6およびD8での真皮表皮接合部に沿った基底膜でのコラーゲンIVレベルの増加は、2種類の試験濃度のAcSDKPで処置した皮膚におけるIII型コラーゲンの場合ほどはっきりしたものではないが、AcSDKP 10−5Mの場合には程度がより高い(図3B)。
コラーゲンIIIおよびIVの免疫標識では、AcSDKPが、処置した皮膚におけるこれらの化合物の発現に対して促進効果を有することが分かった。
【0046】
4.フィブロネクチンの発現
AcSDKPで処置した領域では、フィブロネクチンネットワークがより緻密になり、繊維がより厚くなる。10−5の濃度で試験したAcSDKPの場合には、活性がより大きくなる(図4)。
フィブロネクチンの免疫標識では、AcSDKPが、このタンパク質の過剰発現を、真皮表皮接合部に沿ってだけでなく、処置した皮膚の真皮乳頭層および真皮網状層でももたらすことを示した。
【0047】
5.グリコサミノグリカン(GAG)の発現
酸性基のないGAGに特異的なP.A.S.アルシアンブルーで染色した皮膚体外移植組織の組織学的切片から、2種類の試験濃度のAcSDKPで体外移植組織を処置すると、皮膚におけるこれらの化合物のレベルが大幅に増加することが明らかになった。この効果は、D6およびD8にはっきりと分かるようになり、真皮乳頭層、特に、真皮表皮接合部に沿ってあるバンド、における繊維芽細胞のPAS陽性数の増加とこれらの繊維芽細胞におけるGAGレベルの増加を特徴とする。10−5Mの濃度で塗布したAcSDKPは、テトラペプチドを10−8Mの濃度で用いたときよりも高いレベルの活性を示す(図5)。
【0048】
結論
上記の観察結果は、テトラペプチドAcSDKPの影響下での表皮および真皮の再構築を示す。これらの変形では、若年者の皮膚についての基準を表す。
次の処方は、当業者によって用いられている従来の方法に従って調製される。
【0049】
実施例2:水中油型エマルション剤
酸化エチレン50モル当たりのポリエチレングリコールオキシエチレン 3%
モノジグリセリルステアレート 3%
ワセリンオイル 3%
ケチルアルコール 5%
AcSDKP 2%
水 十分量 100%
【0050】
実施例3:
パルミチン酸オクチル 10%
イソステアリン酸グリセリル 4%
ワセリンオイル 10%
ソルビトール 2%
ビタミンE 1%
AcSDKP 0.5%
グリセロール 3%
水 十分量 100%
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】生存6日目のヒト皮膚体外移植組織の一般形態(マッソンのトリクローム染色)。
【図2】生存6日目のヒト皮膚体外移植組織におけるケラチン14とケラチン19の発現。
【図3】生存6日目のヒト皮膚体外移植組織におけるコラーゲンIIIとIVの発現。
【図4】生存6日目のヒト皮膚体外移植組織におけるフィブロネクチンの発現。
【図5】生存6日目のヒト皮膚体外移植組織におけるグリコサミノグリカンの発現。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

{式中、
は、D−またはL−Serに相当する基であり、
は、D−またはL−AspまたはGluに相当する基であり、
は、D−またはL−Lys、ArgまたはOrnに相当する基であり、
は、D−またはL−Proに相当する基であり、
およびRは、独立に、水素原子、置換または非置換型のC−C12直鎖または分枝鎖アルキル基、置換または非置換型のC−C20直鎖または分枝鎖アリールアルキル基、RCO−およびRCOO−(ここで、Rは、置換もしくは非置換型のC−C12直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、または置換もしくは非置換型のC−C20アリールアルキル基である)の中から選択され、置換としては、OH、NHまたはCOOHが含まれ、
およびXは、ペプチドおよび擬ペプチド結合であり、
は、−CO−および−CH−から選択される基であり、かつ
は、−OH、−NH、C−C12直鎖もしくは分枝鎖アルコキシまたは−NH−X−CH−Z(ここで、Xは、C−C12直鎖または分枝鎖炭化水素基であり、かつ、Zは、水素原子または−OH、−COHもしくは−CONH基である)の中から選択される基である}、
の少なくとも1つの化合物、ならびにそれらの生理学的に許容される塩の、皮膚老化防止および再構築剤としての組成物における美容的使用。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)の化合物の、コラーゲンIIIおよびIV、フィブロネクチン、グリコサミノグリカンならびに/またはケラチン14および/もしくは19の産生を刺激するための薬剤としての組成物における美容的使用。
【請求項3】
請求項1に記載の式(I)の化合物の、内因性皮膚老化を予防するための薬剤としての組成物における美容的使用。
【請求項4】
皮膚の弾力性および/または張力を改善するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
皮膚上へのシワおよび目尻のシワの出現を予防、軽減および/または抑制するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
皮膚剥離、ケミカルピーリングまたはレーザーリサーフェシング治療後の皮膚再生を増進するための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
式(I)の誘導体が、少なくとも1つの擬ペプチド結合を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
式(I)の化合物が、
【化2】

の中から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
式(I)の化合物が、式:CHCO−Ser−Asp−Lys−Pro−OHで表される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
式(I)の化合物が組成物中に、組成物の総重量に対して0.01重量%〜10重量%の範囲の量で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
請求項1に記載の式(I)の誘導体を少なくとも1種類含有する組成物の皮膚への塗布を含んでなる、皮膚老化の治療のための美容的方法。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−503555(P2008−503555A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517361(P2007−517361)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001568
【国際公開番号】WO2006/008392
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】