説明

尿素濃度検出装置

【課題】車両の燃費を悪化させることなく、NOx浄化に最適な尿素水濃度を簡易な構成にて精度良くかつ応答性良く測定すること。
【解決手段】発光素子30と受光素子34とを有し、発光素子30と受光素子34との間に測定対象たる尿素水を介在させ、予め求められた受光素子34による受光量と尿素水の濃度との関係に基づいてサーミスタ38により環境温度を考慮しつつ尿素水の濃度を検出する尿素濃度検出装置20であって、発光素子30は、第1の波長域1500〜1900nmの光と第2の波長域2100〜2300nmの光のうち少なくとも一方を発するように形成されている。尿素水を介在させる凹部41に導光部材43を備え、導光部材43は光路長を規定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディーゼル車の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒システムに適用される尿素濃度検出装置に関し、更に詳しくは、車両の燃費を悪化させることなく、NOx浄化に最適な尿素水濃度を簡易な構成にて精度良くかつ応答性良く測定できる尿素濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対策からディーゼルエンジン(以下、エンジンと略称する)を搭載した車両においては、エンジンからの排気中のNOx低減技術として、尿素SCR触媒システムが実用化され、また、パティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)低減技術として、触媒再生型パティキュレートフィルタシステムが実用化されている。
【0003】
これらのうち尿素SCR触媒システムは、エンジンからの排気が流通する排気通路の途中に酸素共存下でも選択的にNOxを還元剤と反応させる性質を備えたNOx還元触媒(選択還元型触媒)を備えたものである。
【0004】
すなわち、尿素SCR触媒システムは、NOx還元型触媒の上流側に必要量の還元剤を添加して当該還元剤をNOx還元触媒上で排気中のNOx(窒素酸化物)と還元反応させ、水と窒素へと分解することによりNOxの排出濃度を低減させるように構成されたものである。この還元剤としては、毒性のない尿素水を使用して、NOxを高効率で低減させることが実用化されている。
【0005】
上記尿素水を触媒に噴霧し、NOxの分解を継続的に維持し、かつ効率を高めるためには、尿素水が特定の濃度範囲(たとえば、32.5%程度)にあるのが好ましいことが知られている。このため、ディーゼルエンジン搭載車両のNOx浄化に最適な尿素水濃度を測定し、判定する手段の提供が望まれていた。
【0006】
たとえば、液体の濃度を測定する従来技術として、つぎのものが公知である(特許文献1参照)。すなわち、この従来技術は、鉛蓄電池の電解液の濃度を測定する装置として、発光素子と受光素子との間に電解液を介在させ、水に吸収され易い波長域の光の受光量から水の増減(電解液濃度)を測定するように構成したものである。
【0007】
なお、関連する従来技術として、異なる波長域で発光する2つの発光素子と、それらの光を受ける受光素子とを用いて油種を判定する技術が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
また、測定対象となる液体毎に吸収率の高い波長の光をフィルタによって選択し、液体の漏れを検出する技術が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0009】
また、フィルタによって特定の波長の光を選択的に透過させ、液体の濃度を測定する技術が提案されている(たとえば、特許文献4参照)。
【0010】
また、発熱体および感温体を有した濃度検知部と、尿素溶液の温度を測定する液温検知部とを備え、上記発熱体の発熱時における上記感温体の初期温度とピーク温度との差に対応する電圧値から尿素濃度を求める技術が提案されている(たとえば、特許文献5参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2005−17261号公報
【特許文献2】特開平10−329899号公報
【特許文献3】特開2000−97850号公報
【特許文献4】特開2005−43069号公報
【特許文献5】特開2005−84026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1〜4に係る従来技術にあっては、ディーゼル車の尿素SCR触媒システムに適用するための具体的手段が開示されておらず、特に、NOx浄化に最適な尿素水濃度(たとえば、32.5%程度)を測定ないし判定する手段の提供が望まれていた。
【0013】
また、上記特許文献5に係る従来技術にあっては、発熱体(電極)を発熱させるため、発熱体の劣化が懸念されるとともに、消費電力が大きくなり、車両の燃費を悪化させてしまうという課題があった。更に、発熱により尿素水濃度が変化してしまい、精度良く濃度を計測できない虞があるとともに、発熱させるため計測の応答性が良くないという課題があった。
【0014】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両の燃費を悪化させることなく、NOx浄化に最適な尿素水濃度を簡易な構成にて精度良くかつ応答性良く測定できる尿素濃度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明の請求項1に係る尿素濃度検出装置は、発光手段と受光手段とを有し、前記発光手段と前記受光手段との間に測定対象たる尿素水を介在させ、予め求められた前記受光手段による受光量と前記尿素水の濃度との関係に基づいて前記尿素水の濃度を検出する尿素濃度検出装置であって、前記発光手段は、前記受光手段による前記受光量に基づいて算出される透過率の変化量が大きい第1の波長域の光と第2の波長域の光のうち少なくとも一方を発するように形成され、前記尿素水の濃度を検出するために当該尿素水が進入可能な凹部と、前記凹部に前記発光手段の前記光を導く導光部材とを備え、前記導光部材は、前記凹部に配置されるとともに、濃度検出時の前記光の光路長を規定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項2に係る尿素濃度検出装置は、請求項1に記載の発明において、検出された前記尿素濃度が所定の既定値となっているか否かを判定する濃度判定手段を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項3に係る尿素濃度検出装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記濃度判定手段によって前記尿素濃度が所定の既定値となっていない場合には、その旨を報知する報知手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る尿素濃度検出装置(請求項1)によれば、発光手段として低消費電力の発光ダイオードを、受光手段として低消費電力のフォトダイオードを用いて簡易に構成することができ、濃度測定時の尿素水の加熱等も不要であるため、応答性が良く、車両の燃費を悪化させることがない。また、少なくとも一方の波長域を用いることにより、NOx浄化に最適な尿素水濃度を精度良く測定できる。
【0019】
また、この発明に係る尿素濃度検出装置(請求項2)によれば、NOx浄化に最適な尿素濃度であるか否かを判定することができる。
【0020】
また、この発明に係る尿素濃度検出装置(請求項3)によれば、異常がある場合にその旨を報知し、所定の処置(たとえば、尿素水の点検、交換等)を行うようにユーザに注意喚起することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、この発明に係る尿素濃度検出装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
本発明は、後述するように、水と尿素水(たとえば、32.5%)の光透過率特性の差が見られる波長が1500〜1900nmまたは2100〜2300nmの近赤外光を用いて、測定対象である尿素水を透過する光の透過率の減衰量から尿素濃度を算出するように構成したものである。
【0023】
先ず、本発明に係る尿素濃度検出装置20を適用する公知の尿素SCR触媒システムについて図2に基づいて説明する。ここで、図2は、尿素濃度検出装置を適用する尿素SCR触媒システムを示すブロック図である。
【0024】
図2に示すように、エンジン10の排気通路11には、上流側に酸化触媒12が設けられ、下流側に尿素SCR触媒13が設けられている。排気通路11の酸化触媒12と尿素SCR触媒13との間には、尿素水を添加するための尿素水噴射ノズル16が設けられている。
【0025】
この尿素水噴射ノズル16へは、尿素水を貯留する尿素水タンク14から尿素水供給通路15によって尿素水が供給されるようになっている。尿素水添加システムタンク17は、図示しない電子制御装置(以下、ECUと記す)からエンジン10の運転情報を得て、エンジン出力等に合わせた最適な尿素水添加を行うための制御手段である。このECUは、尿素濃度が所定の既定値となっているか否かを判定する濃度判定手段としても機能するものである。
【0026】
本実施例1に係る尿素濃度検出装置20は、たとえば上記尿素水タンク14に設置されており、その先端部(検出部)が尿素水に浸され、その濃度を測定するものである。この尿素濃度検出装置20について、図1、図3および図4に基づいて更に詳しく説明する。ここで、図1は、この発明の実施例1に係る尿素濃度検出装置を示す断面図、図3は、尿素濃度検出装置を示す平面図、図4は、尿素濃度検出装置の導光部材を示す斜視図である。
【0027】
図1に示すように、尿素濃度検出装置20は、筒状の筐体21,22を主な外殻として密閉形成され、後述する各部材を収納して構成されている。すなわち、筐体21は、筐体22に対してねじ部21aにて螺合され、シール部材29にてシールされている。また、筐体22と後述するプリズム40とは、シール部材29にてシールされている。
【0028】
また、ホルダ24は、後述する発光素子(発光手段)30、受光素子(受光手段)34、基板25を固定し、保持するためのものであり、ピン26によって筐体22に固定されている。なお、筐体22は、取り付け穴22cを用いてねじ等によって尿素水タンク14に固定することができる。
【0029】
発光素子30は、波長1500〜1900nm(第1の波長域)または2100〜2300nm(第2の波長域)の近赤外光を発する素子であり、たとえば、信頼性が高く低消費電力であるとともに、安価な発光ダイオード(LED)を用いることができる。発光素子30による光線の波長域を上記のように選択したのは、つぎの理由による。
【0030】
すなわち、光の透過率(以下、適宜、透過率と記す)と測定される濃度との関係は光路長で変化することが実験により確認できた。たとえば、光路長が長い場合は、透過率の変化は高濃度域で小さくなるが、低濃度域では大きくなり、検出精度が高くなることが分かった。
【0031】
また、上述したように、尿素SCR触媒システムにおいては、尿素水濃度が32.5%前後で精度良く測定されることが重要である。このため、図5に示すように、尿素水と水との透過率の差が顕著となっている波長域に着目することが重要である。
【0032】
すなわち、精度良く濃度測定できるのは、波長が1500〜1900nmおよび2100〜2300nmの範囲であることが分かる。ここで、図5は、水と尿素水の透過率特性を示すグラフであり、光路長を1mm、尿素水濃度を32.5%とした場合のものを示している。なお、図5に示したグラフは、他の光路長においても上記2つの波長域で同様の傾向が見られる。
【0033】
以上の理由から、本実施例1では、波長が1500〜1900nmまたは2100〜2300nmのいずれかの波長域の近赤外光を発する発光素子30を用いることとしたものである。
【0034】
実験の結果、たとえば、光路長が0.5mm、波長が2200nmの場合の透過率と尿素濃度との関係は、図6に示すマップのようになる。また、光路長が2mm、波長が1650nmの場合の透過率と尿素濃度との関係は、図7に示すマップのようになる。ここで、図6は、光路長が0.5mm、波長が2200nmの場合の透過率と尿素濃度との関係を示すマップ、図7は、光路長が2mm、波長が1650nmの場合の透過率と尿素濃度との関係を示すマップである。
【0035】
したがって、本実施例1では、たとえば、光路長となる、後述する隙間部45の間隔を0.5mmに設定し、かつ波長が2200nmの発光素子30を用いたり、または隙間部45の間隔を2mmに設定し、かつ波長が1650nmの発光素子30を用いることができる。
【0036】
また、受光素子34は、発光素子30から発せられた後、尿素水を透過して減衰した光線を受光するためのものであり、たとえば、フォトダイオードを用いることができる。
【0037】
また、光量モニタ用受光素子36は、環境温度変化の影響をキャンセルして発光素子30の光量補正を行うために発光素子30の近傍(発光素子30と同一の環境温度条件)に設けられたものであり、たとえば、フォトダイオードを用いることができる。
【0038】
すなわち、光量モニタ用受光素子36の出力に基づいて得られるモニタ光量Im(V)と発光素子30の発光量Io(V)との関係を、図8に示すようなマップあるいは所定の関係式として上記ECU等に記憶させておき、光量補正時に出力されたモニタ光量Im(V)とこのマップとから、発光素子30の発光量Io(V)を算出できるようにしたものである。ここで、図8は、光量モニタ用受光素子のモニタ光量Imと発光素子の発光量Ioとの関係を示すマップである。
【0039】
プリズム40は、検査対象液体である尿素水に発光素子30からの光線を導くとともに、尿素水を通過した光線を受光素子34に導くためのものである。なお、このプリズム40も上記ピン26によって筐体22に対して位置決めされている。
【0040】
また、図1および図4に示すように、直方体状の導光部材43は、プリズム40の凹部41に設けられ、隙間部45によって光路長を設定するとともに、当該光路長を維持しつつ尿素水の流動によって可動するように構成され、検出面の汚れを自動的に除去できるように構成されている。また、この導光部材43は、図1および図3に示すように、固定部材46を介して抜け止め部材47によって凹部41から脱落しないようになっている。
【0041】
サーミスタ38は、発光素子30、受光素子34、光量モニタ用受光素子36を熱的に保護するため、尿素濃度検出装置20内部の環境温度が動作温度を超えた場合に、これら部材への通電を必要に応じて遮断するためのものである。
【0042】
基板25は、これら発光素子30、受光素子34、光量モニタ用受光素子36、サーミスタ38等を固定するとともに、発光素子30の駆動回路や受光素子34の増幅回路等が設けられている。
【0043】
コネクタ23は、これら発光素子30、受光素子34、光量モニタ用受光素子36、サーミスタ38等と配線23aにて接続され、これらに電源を供給するとともに、受光素子34、光量モニタ用受光素子36からの信号を図示しない上記ECUに出力するためのものである。このコネクタ23は、筐体21に固定されている。
【0044】
筐体22の放熱フィン部22aは、尿素濃度検出装置20内部に蓄熱されるのを抑制し、発光素子30や受光素子34、光量モニタ用受光素子36等を熱劣化から保護するために設けられたものである。
【0045】
つぎに、尿素濃度検出装置20の制御方法について図9に基づいて図1等を参照しつつ説明する。ここで、図9は、尿素濃度検出装置20の制御方法を示すフローチャートである。なお、以下の制御は、上記ECUによって適宜タイミングで実行される。
【0046】
図9に示すように、先ず、発光素子30に通電する(ステップS10)。これにより、発光素子30は発光し、図1に示すように、その光線がプリズム40および導光部材43によって隙間部45内に存在する尿素水を透過し、所定量光量を減衰させてから受光素子34に導かれる。
【0047】
この透過光線の光量に応じた出力信号が受光素子34によって出力されるので、その出力に基づいて尿素水の透過光量I(V)を算出する(ステップS20)。
【0048】
また、上記ステップS10にて発光された発光素子30の光線は、光量モニタ用受光素子36によっても受光されるので、その光量モニタ用受光素子36の出力に基づいてモニタ光量Imを算出する(ステップS30)。
【0049】
上記モニタ光量Imが算出されれば、図8に示したマップを用いることにより、発光素子30の発光量Io(尿素水により光量が減衰されていない値)を算出することができる(ステップS40)。
【0050】
つぎに、上記ステップS20で算出した透過光量Iと、上記ステップS40で算出した発光量Ioとに基づいて光透過率Tを算出する(ステップS50)。上述したように、光路長および波長は既知であるから、該当する図6または図7に示したマップを用い、この光透過率Tに基づいて尿素濃度を容易に算出することができる(ステップS60)。
【0051】
つぎに、NOx浄化に最適な尿素濃度であるか否かを判断するため、上記ステップS60にて算出された尿素濃度が32.5%近傍の既定値であるか否かを判断する(ステップS70)。
【0052】
尿素濃度が既定値であるならば(ステップS70肯定)、制御を終了する。尿素濃度が既定値でないならば(ステップS70否定)、異常である旨を音声ないし表示手段等の報知手段によって報知し(ステップS80)、所定の処置(たとえば、尿素水の点検、交換等)を行うようにユーザに注意喚起する。
【0053】
以上のように、この実施例1に係る尿素濃度検出装置20によれば、つぎの効果を奏する。すなわち、上記発光素子30、受光素子34、光量モニタ用受光素子36は、非接触で計測でき、かつ応答性が良いとともに、消費電力が極めて少なく、車両の燃費を悪化させることはない。
【0054】
また、上記所定の波長域を用いることにより、簡易な構成にて尿素水のみを測定することができ、NOx浄化に最適な尿素水濃度を精度良く測定できる。また、濃度測定に際して、従来技術では必要であった尿素水を加熱する等の余分な工程が不要である。
【0055】
なお、上記実施例1においては、発光素子30として発光ダイオード(LED)を用いるものとして説明したが、これに限定されず、たとえば、より光量が大きいLD(レーザダイオード)を用いることもできる。
【0056】
また、光量モニタ用受光素子36を設けるものとして説明したが、これに限定されず、光量モニタ用受光素子36に相当する受光素子を発光素子30に内蔵し、ワンパッケージ化することにより、体格の小型化を図ってもよい。
【実施例2】
【0057】
上記実施例1は、波長が1500〜1900nmまたは2100〜2300nmのいずれかの波長域の近赤外光を発する発光素子30を用いる場合について説明したが、本実施例2では、これら両者の波長域を用いることができるように、各波長域の光量を発・受光可能な2組の発光・受光素子を用いて更に精度の良い濃度測定ができるように構成したものである。
【0058】
図10は、この発明の実施例2に係る尿素濃度検出装置を示す断面図、図11は、尿素濃度検出装置の導光部材を示す斜視図、図12は、尿素濃度検出装置の検出部を拡大して示す断面図である。なお、以下の説明において、すでに説明した部材またはステップ番号と同一もしくは相当するものには、同一の符号を付して重複説明を省略または簡略化する。
【0059】
図10〜図12に示すように、導光部材43は、段部43aを備え、隙間部45に2種類の光路長L1,L2を形成できるように構成されている。たとえば、この光路長L1は0.5mmに設定され、光路長L2は2mmに設定されている。
【0060】
そして、図10に示すように、第1発光素子(発光手段)30aは、この光路長が上記L1および波長が2200nmに対応するように構成され、第2発光素子(発光手段)30bは、光路長が上記L2および波長が1650nmに対応するように構成されている。
【0061】
また、第1受光素子(受光手段)34aは、第1発光素子30aから発光され、導光部材43および隙間部45を経た光線を受光するように設けられている。同様に、第2受光素子(受光手段)34bは、第2発光素子30bから発光され、導光部材43および隙間部45を経た光線を受光するように設けられている。
【0062】
また、図示を省略するが、上記実施例1において説明した光量モニタ用受光素子36に相当する光量モニタ用受光素子は、上記第1発光素子30aに内蔵されており、第1発光素子30aおよび隣接する第2発光素子30bの光量をモニタすることにより、環境温度変化の影響をキャンセルして光量補正を行うことができるように構成されている。なお、その他の構成は、上記実施例1の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0063】
つぎに、尿素濃度検出装置20の制御方法について図13に基づいて図10等を参照しつつ説明する。ここで、図13は、尿素濃度検出装置20の制御方法を示すフローチャートである。なお、以下の制御は、上記ECUによって適宜タイミングで実行される。
【0064】
図13に示すように、先ず、第1,第2発光素子30a,30bに通電する(ステップS110)。これにより、第1,第2発光素子30a,30bは発光し、図10に示すように、その光線がプリズム40および導光部材43によって対応する隙間部45内に存在する尿素水を透過し、所定量光量を減衰させてから第1,第2受光素子34a,34bに導かれる。
【0065】
この透過光線の光量に応じた出力信号が第1,第2受光素子34a,34bによって出力されるので、その出力に基づいて尿素水の透過光量I1,I2(V)を算出する(ステップS120)。
【0066】
また、上記ステップS110にて発光された第1,第2発光素子30a,30bの光線は、第1発光素子30aに内蔵された図示しない光量モニタ用受光素子によっても受光されるので、その光量モニタ用受光素子の出力に基づいてそれぞれのモニタ光量Imを算出する(ステップS130)。
【0067】
上記各モニタ光量Imが算出されれば、上記実施例1の図8に示したマップを用いることにより、第1,第2発光素子30a,30bの発光量I1o,I2o(尿素水により光量が減衰されていない値)を算出することができる(ステップS140)。
【0068】
つぎに、上記ステップS120で算出した透過光量I1,I2と、上記ステップS140で算出した発光量I1o,I2oとに基づいて光透過率T1,T2を算出する(ステップS150)。
【0069】
そして、つぎに、上記ステップS150で算出された光透過率T1,T2に異常がないかどうか図14に示すマップを用いて判断する(ステップS155)。ここで、図14は、ある任意の尿素水濃度に対して上記2種類の波長域における透過率の関係を示すマップであり、波長が1650nmの場合の光透過率T2と波長が2200nmの場合の透過率T1との関係を示したものである。
【0070】
すなわち、算出された上記透過率T1,T2が、図14に示すグラフ上に乗れば、所定濃度の尿素水である(異常なし)と判断することができ、乗らなければ尿素水以外の溶液(異常あり)であると判断することができる。
【0071】
したがって、異常がない場合(ステップS155肯定)は、光路長および波長は既知であるから、予め作成された図14に相当するマップを用い、これら光透過率T1,T2に基づいて尿素濃度を容易に算出することができる(ステップS160)。
【0072】
一方、異常がある場合(ステップS155否定)は、異常である旨を報知し(ステップS180)、所定の処置(たとえば、尿素水の点検、交換等)を行うようにユーザに注意喚起する。
【0073】
つぎに、NOx浄化に最適な尿素濃度であるか否かを判断するため、上記ステップS160にて算出された尿素濃度が32.5%近傍の既定値であるか否かを判断する(ステップS170)。
【0074】
尿素濃度が既定値であるならば(ステップS170肯定)、制御を終了する。尿素濃度が既定値でないならば(ステップS170否定)、異常である旨を報知し(ステップS180)、所定の処置(たとえば、尿素水の点検、交換等)を行うようにユーザに注意喚起する。
【0075】
以上のように、この実施例2に係る尿素濃度検出装置20によれば、2組の発光・受光素子を用いて2つの波長域を用いて構成したので、上記実施例1と同様の効果を奏するほか、更に精度の良い濃度測定を行うことができる。
【0076】
また、測定結果に異常を見出した際には、その旨をユーザに報知するようにしたので、その後の迅速な対応が可能となる。
【0077】
また、上記実施例1において説明した光量モニタ用受光素子36に相当する光量モニタ用受光素子を、第1発光素子30aに内蔵し、かつ当該1つの光量モニタ用受光素子で第1,第2発光素子30a,30bの光量補正を行うことができるので、装置全体を小型化することができる。
【0078】
なお、上記実施例1および上記実施例2においては、説明の都合上、光路長および波長を限定して示したが、これに限定されず、上記効果を奏することができれば、その他の光路長や波長であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、この発明に係る尿素濃度検出装置は、ディーゼル車の尿素SCR触媒システムに有用であり、特に、車両の燃費を悪化させることなく、NOx浄化に最適な尿素水濃度を簡易な構成にて精度良くかつ応答性良く測定することを目指す尿素濃度検出装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の実施例1に係る尿素濃度検出装置を示す断面図である。
【図2】尿素濃度検出装置を適用する尿素SCR触媒システムを示すブロック図である。
【図3】尿素濃度検出装置を示す平面図である。
【図4】尿素濃度検出装置の導光部材を示す斜視図である。
【図5】水と尿素水の透過率特性を示すグラフである。
【図6】光路長が0.5mm、波長が2200nmの場合の透過率と尿素濃度との関係を示すマップである。
【図7】光路長が2mm、波長が1650nmの場合の透過率と尿素濃度との関係を示すマップである。
【図8】光量モニタ用受光素子のモニタ光量Imと発光素子の発光量Ioとの関係を示すマップである。
【図9】尿素濃度検出装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施例2に係る尿素濃度検出装置を示す断面図である。
【図11】尿素濃度検出装置の導光部材を示す斜視図である。
【図12】尿素濃度検出装置の検出部を拡大して示す断面図である。
【図13】尿素濃度検出装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図14】任意の尿素水濃度に対して2種類の波長域における透過率の関係を示すマップである。
【符号の説明】
【0081】
10 エンジン
11 排気通路
12 酸化触媒
13 尿素SCR触媒
14 尿素水タンク
15 尿素水供給通路
16 尿素水噴射ノズル
17 尿素水添加システムタンク
20 尿素濃度検出装置
21、22 筐体
24 ホルダ
25 基板
30 発光素子(発光手段)
30a 第1発光素子(発光手段)
30b 第2発光素子(発光手段)
34 受光素子(受光手段)
34a 第1受光素子(受光手段)
34b 第2受光素子(受光手段)
36 光量モニタ用受光素子(受光手段)
38 サーミスタ
40 プリズム
41 凹部
43 導光部材
43a 段部
45 隙間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光手段と受光手段とを有し、前記発光手段と前記受光手段との間に測定対象たる尿素水を介在させ、予め求められた前記受光手段による受光量と前記尿素水の濃度との関係に基づいて前記尿素水の濃度を検出する尿素濃度検出装置であって、
前記発光手段は、前記受光手段による前記受光量に基づいて算出される透過率の変化量が大きい第1の波長域の光と第2の波長域の光のうち少なくとも一方を発するように形成され、
前記尿素水の濃度を検出するために当該尿素水が進入可能な凹部と、
前記凹部に前記発光手段の前記光を導く導光部材とを備え、
前記導光部材は、前記凹部に配置されるとともに、濃度検出時の前記光の光路長を規定するように構成されていることを特徴とする尿素濃度検出装置。
【請求項2】
検出された前記尿素濃度が所定の既定値となっているか否かを判定する濃度判定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の尿素濃度検出装置。
【請求項3】
前記濃度判定手段によって前記尿素濃度が所定の既定値となっていない場合には、その旨を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の尿素濃度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−256663(P2008−256663A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102106(P2007−102106)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】