説明

局所多層回路基板、および局所多層回路基板の製造方法

【課題】従来の局所多層回路基板は、マザー基板に部分的に積層された多層基板部分が物理的なダメージを受け易い構成であった。
【解決手段】回路基板21の少なくとも表層の一部にキャビティ部27を設け、そのキャビティ部27内に、回路基板21より高精細な配線ルールで形成された回路形成材1を積層した構成とすることにより、回路形成材1の上部が飛び出ない構造としている。この構造により、回路基板21の表面および回路形成材1の表面に、同一工程でソルダーレジスト25を形成させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や電子部品等を実装するための局所多層回路基板、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高速動作および高機能化が益々進んでおり、それを実現するための半導体チップの高集積化が進み、それに伴いI/O数が増加して狭ピッチで多ピン構造になって来ている。そのため、半導体チップや半導体パッケージを実装するための回路基板も高精細パターンを実現するビルドアップ構造でより多くの層数を必要とする多層回路基板が使われるようになってきている。
【0003】
しかし、多ピンの半導体パッケージが実装された近傍のみ回路基板の多層が必要であり、その他の部分は基板の層数が少なくても問題なく回路設計ができる場合が多い。すなわち、一部の領域でファイン配線とより多くの多層化を必要とするために、回路基板全体にファイン配線ルールと多層化が採用され、高価な基板となっている。
【0004】
この課題を解決する手段として、回路基板の、より多くの多層化を必要とする部分のみが多層化された局所多層回路基板がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図7は、従来の局所多層回路基板を示す断面図である。
【0006】
図7において、321は通常の配線ルールで形成された多層のマザー基板である。322は絶縁性基材で、各層の配線パターン323が導電性ビア324により電気的に接続されていることで回路を構成している。そして、マザー基板321の表層の必要な部分だけに多層基板301が積層されている。
【0007】
図8は、図7に示した従来の局所多層回路基板の製造方法の積層工程を説明する図である。
【0008】
部分的な多層基板301の構成材料である302は絶縁性樹脂材料で、各層のファインパターン303は導電性ビア304で電気的に接続されている。
【0009】
マザー基板のビアランド配線パターン323と導電性ビア304がアライメントされて、マザー基板321のソルダーレジスト325が形成されていない部分に積層される。その後、熱プレスにより、例えば温度150℃、圧力2MPaの条件で加圧加熱することで、半硬化状態である絶縁性樹脂材料302の接着効果により多層基板301がマザー基板321の表面に貼り付けられ、図7に示す局所多層回路基板となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−298232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の局所多層回路基板は、マザー基板に部分的に積層された多層基板の部分が物理的なダメージを受け易い構成であるため、マザー基板と部分的に積層された多層基板との間で接触不良が発生する等の多くの問題が発生し易かった。
【0012】
これらの問題について、以下に説明する。
【0013】
マザー基板321と部分多層基板301とでは、要求される精細度が異なるため、それぞれの配線パターンやビアのサイズおよび材料構成が異なる。また、それらを支持するための絶縁性樹脂302、322についても異なる材料物性が必要とされる。更には、部分多層基板301をマザー基板321に積層後に熱プレスする際の加熱加圧条件は、小面積でファインパターンが形成された未硬化絶縁性樹脂の加熱加圧であることから、通常の多層回路基板を熱プレスする条件より低温低圧で接着される。このために、マザー基板321と部分多層基板301との界面の接着力が弱い状態となっている。
【0014】
そして、マザー基板321表面より部分多層基板301の積層部が飛び出しているため、部品実装前の局所多層回路基板を重ねて扱ったり搬送したりした場合に、部分多層基板301部分が擦れることで比較的接着界面が弱いマザー基板321との界面で剥離が発生し、導電性ビア304とマザー基板321の配線パターン323との接続不良が発生する。
【0015】
また、電子部品の実装時においても問題が発生し易い。
【0016】
図9は、従来の局所多層回路基板に電子部品を実装する際のクリーム半田印刷工程を説明する図である。
【0017】
部分多層基板301の層数が多いほどマザー基板321との段差が大きくなるため、印刷法によりクリーム半田326を供給した場合、図9に示す様に部分多層基板301が積層されたマザー基板321近傍へのクリーム半田326の供給量が不足する。
【0018】
また、部品実装後のリフロー工程で高温に過熱されると、絶縁性樹脂材料や構成が異なることから熱膨張係数の差により熱応力で積層界面のビア接続にダメージが発生して接続抵抗値が上昇する、といった課題などがある。
【0019】
本発明は、上記従来の課題を考慮して、マザー基板に部分的に積層される多層基板に物理的なダメージを与えない局所多層回路基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決するために、第1の本発明は、
少なくとも表層の一部にキャビティ部を有する回路基板と、
前記キャビティ部に配置されている、前記回路基板より高精細な配線ルールで形成された回路形成材とを備えた、局所多層回路基板である。
【0021】
また、第2の本発明は、
前記回路基板は、多層構造であり、
前記キャビティ部は、前記回路基板の前記表層に形成される配線パターンの表面を含む平面と、前記回路形成材の表層に形成された配線パターンの表面を含む平面との距離が所定の距離以下となる、深さを有している、第1の本発明の局所多層回路基板である。
【0022】
また、第3の本発明は、
前記回路基板の表面に形成されたソルダーレジストと、前記回路形成材の表面に形成されたソルダーレジストとは、同一工程により形成されたものである、第1または第2の本発明の局所多層回路基板である。
【0023】
また、第4の本発明は、
前記回路基板と前記回路形成材との間の隙間部の少なくとも一部に前記ソルダーレジストが充填されている、第3の本発明の局所多層回路基板である。
【0024】
また、第5の本発明は、
前記所定の距離は、0.2mmである、第2の本発明の局所多層回路基板である。
【0025】
また、第6の本発明は、
前記キャビティ部は、前記回路基板の前記表層の基材の表面から裏面に貫通する開口のみで構成されている、第2の本発明の局所多層回路基板である。
【0026】
また、第7の本発明は、
前記キャビティ部は、開口部が底部よりも大きく、側壁部の少なくとも一部が階段形状をしており、
前記各階段のキャビティ層には、それぞれ別の前記回路形成材が配置されている、第1の本発明の局所多層回路基板である。
【0027】
また、第8の本発明は、
前記各階段のキャビティ層のうち、前記開口部に最も近い前記キャビティ層における前記回路形成材と前記回路基板との間の隙間部の少なくとも一部にソルダーレジストが充填されている、第7の本発明の局所多層回路基板である。
【0028】
また、第9の本発明は、
少なくとも表層の一部にキャビティ部を有する回路基板の前記キャビティ部に、前記回路基板より高精細な配線ルールで形成された回路形成材を配置する積層工程と、
加圧加熱により前記回路基板と前記回路形成材とを接着する接着工程と、
前記回路基板の表面と、前記回路形成材の表面と、前記回路基板および前記回路形成材の間の隙間部とに、ソルダーレジストを形成するレジスト形成工程とを備えた、局所多層回路基板の製造方法である。
【0029】
また、第10の本発明は、
前記レジスト形成工程は、前記回路基板の表面と、前記回路形成材の表面と、前記隙間部とに、同一工程で前記ソルダーレジストを形成する、第9の本発明の局所多層回路基板の製造方法である。
【0030】
また、第11の本発明は、
前記キャビティ部は、開口部が底部よりも大きく、側壁部の少なくとも一部が階段形状をしており、
前記各階段のキャビティ層毎に、それぞれ別の前記回路形成材を配置して接着するように、前記積層工程および前記接着工程を繰り返し行ない、
その後、前記レジスト形成工程において、前記回路基板の表面と、前記回路形成材の表面と、前記開口部に最も近い前記キャビティ層における前記回路形成材と前記回路基板との間の前記隙間部とに、同一工程で前記ソルダーレジストを形成する、第9の本発明の局所多層回路基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、マザー基板に部分的に積層される多層基板に物理的なダメージを与えない局所多層回路基板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1における局所多層回路基板の断面図
【図2】(a)〜(h)本発明の実施の形態1における、高精細の配線パターンを有する単層の回路形成材の製造工程を示す図
【図3】(a)〜(c)本発明の実施の形態1における、高精細の配線パターンを有する多層化された回路形成材の製造工程を示す図
【図4】(a)〜(d)本発明の実施の形態1における、局所多層回路基板の製造工程を示す図
【図5】本発明の実施の形態2における局所多層回路基板の断面図
【図6】(a)〜(d)本発明の実施の形態2における局所多層回路基板の製造工程を示す図
【図7】従来の局所多層回路基板の断面図
【図8】従来の局所多層回路基板の、製造時の積層工程における断面図
【図9】従来の局所多層回路基板の、電子部品を実装する際のクリーム半田印刷工程における断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における局所多層回路基板の断面図である。
【0035】
図1において、21はキャビティを備えた4層の多層回路基板であり、22a、22b、22cは絶縁性樹脂基材で、各々の層には配線パターン23が形成されており、配線パターン23の層間は導電性ビア24により電気的に接続されることで多層回路基板となっている。
【0036】
1は回路形成材であり、多層回路基板21より高精細の配線パターン3で構成される。2は絶縁性樹脂、4は導電性ビアである。回路形成材1は、多層回路基板21のキャビティ内に絶縁性樹脂2の接着効果により貼り付けられている。更に、回路形成材1に設けた導電性ビア4と、多層回路基板21の配線パターン23が電気的に接続されている。
【0037】
本構成により、多ピンの狭ピッチBGAパッケージや半導体ベアチップなどを精細な配線パターン3を有する回路形成材1に実装することが可能となり、マザー基板となる多層回路基板21の層数を削減することができる。
【0038】
なお、多層回路基板21が、本発明の回路基板の一例にあたる。また、多層回路基板21の配線パターン23よりも高精細の配線パターン3が形成された回路形成材1が、本発明の、回路基板より高精細な配線ルールで形成された回路形成材の一例にあたる。本発明の「より高精細な配線ルール」とは、少なくとも、ビア径、ランド径、L/Sのいずれかが高精細な配線ルールを言う。
【0039】
図1に示した局所多層回路基板では、多層回路基板21の最表層の絶縁性樹脂基材22a(プリプレグまたはグリーンシート)の厚みを変えることでキャビティの深さを制御して、回路形成材1の厚みに合わせている。これにより多層回路基板21表面から、回路形成材1の飛び出し段差を無くすることができるため、基板を重ねて梱包や搬送した際に生ずる回路形成材1部分への物理的応力を受けることを防ぐことができ、本構造で最も弱いとされる多層回路基板21と回路形成材1間の接着界面保護ができる。すなわち、回路形成材1の導電性ビア4と多層回路基板21の配線パターン23との接続品質にダメージを与えることがない。
【0040】
なお、多層回路基板21の、回路形成材1が積層される表面側に配置された絶縁性樹脂基材22aが、本発明の表層の基材の一例にあたる。
【0041】
次に、本実施の形態1の局所多層回路基板の製造方法について説明する。
【0042】
図2(a)〜(h)に、単層の高精細の配線パターン回路形成材の製造工程の説明図を示す。図2(a)〜(h)に示す図は、いずれも断面図を示している。
【0043】
なお、図2〜図4において、図1の局所多層回路基板と同じ構成部分には、同じ符号を用い、それらの説明を省略する。
【0044】
図2(a)において、2はエポキシ樹脂等の未硬化の絶縁性樹脂材料で厚み10〜100マイクロメートルであり、その両面に厚み10マイクロメートル程度の保護フィルム5aおよび5bが貼り付けられたシートとなっている。
【0045】
図2(b)に示すように、このシートに、パンチングまたはレーザーなどの加工手段により、径50マイクロメートのビアホール6を形成する。
【0046】
そして、図2(c)に示すように、このビアホール6に、スクリーン印刷法などの手段により導電性樹脂ペースト14を充填する。この導電性樹脂ペースト14としては、エポキシ樹脂材料と銀コーティングされた銅粉を混練した材料を用いている。
【0047】
そして、図2(d)に示すように、上側の保護フィルム5aを剥離して、導電性ビア4が形成された絶縁性樹脂シート8が準備される。
【0048】
一方、図2(e)において、3aは厚み5マイクロメートルの銅箔で、ベースフィルム材7の表面に離型層(図示せず)を介して形成されている。
【0049】
図2(f)に示すように、銅箔3aをエッチングによって、導電性ビア4と接続されるビアランドを含んだ配線パターン3を形成して転写パターンシート9を準備する。配線パターン3に含まれるビアランドは径150マイクロメートル、配線のパターンはL/S=30/30マイクロメートルで形成されている。
【0050】
そして、図2(g)に示すように、絶縁性樹脂シート8の導電性ビア4と、転写パターンシート9のビアランドとの位置合わせを行って積層し、図2(h)に示すように、真空ラミネート等の加熱加圧手段によって両者の一体化を行うことにより、精細な配線パターン3と導電性ビア4を備えた単層の回路形成材10ができる。この時の真空ラミネートの加熱加圧条件としては、例えば温度80℃、圧力0.5MPa、加圧時間30秒で行う。
【0051】
図3(a)〜(c)は、高精細の配線パターンを有する多層化された回路形成材の製造工程の説明図であり、それぞれ断面図を示している。
【0052】
10a、10b、10cは、いずれも図2の製造工程により作製された回路形成材10から加工して作製した単層の回路形成材である。
【0053】
図3(a)に示すように、回路形成材10aには、多層回路基板21に形成されたビアランドと接続されるための導電性ビア4および転写配線パターン3を備え、未硬化の絶縁性樹脂2の厚みは、多層回路基板21の配線パターン23を埋め込むために50マイクロメートルに設定されている。積層に当たってはベースフィルム材7を剥離する。
【0054】
回路形成材10bは、未硬化の絶縁性樹脂2の厚みが10マイクロメートルに設定されており、層間を接続するための精細な転写配線パターン3と導電性ビア4を備え、ベースフィルム材7および保護フィルム5bを剥離除去している。
【0055】
回路形成材10cは、未硬化の絶縁性樹脂2の厚みが10マイクロメートルに設定されており、実装部品に対応した配線パターンとビアランドを含む転写パターン3および導電性ビア4を備え、保護フィルム5bが剥離除去されている。
【0056】
図3(b)に示すように、回路形成材10a、10b、10cの各転写配線パターン3と導電性ビア4の位置合わせを行い積層した後、真空ラミネート等の加熱加圧手段によって一体化を行う。この時の真空ラミネートの加熱加圧条件としては、例えば温度80℃、圧力0.5MPa、加圧時間30秒で行う。
【0057】
そして、図3(c)に示すように、ベースフィルム材7と保護フィルム5bを除去することで、精細な配線パターン3と導電性ビア4を備えた多層の回路形成材1ができる。
【0058】
なお、ここでは回路形成材1の製造工程を説明するに当たって、単品での説明としたが、実際には多数個で面付けされたシート状で加工を行い、図3bまで完成後に個片切断を行うことが好ましい。
【0059】
図4(a)〜(d)は、本実施の形態1における局所多層回路基板の製造工程を示す図であり、それぞれ断面図を示している。
【0060】
図4(a)において、1は、図2および図3に示した製造方法により作製した3層構造の精細な配線パターン3を有した回路形成材である。
【0061】
21はキャビティ27が形成された多層回路基板で、キャビティ27の深さは80マイクロメートルである。この場合、キャビティ27は、多層回路基板21の最表層の絶縁性樹脂基材22aの表面から裏面に貫通する開口によって構成されており、その深さは、絶縁性樹脂基材22aの層の厚さと等しい深さとなっている。
【0062】
キャビティ27は、例えばキャビティが形成されていない多層回路基板を作製した後、切削加工によりその多層回路基板の最表層の絶縁性樹脂基材22aの一部を除去することにより形成される。また、他の方法として、最表層の絶縁性樹脂基材22aに開口部を設け、単層の回路形成材を積層して多層回路基板を形成させてもよい。
【0063】
キャビティ27の深さは、多層回路基板21の最表層のキャビティ27を構成する絶縁性樹脂基材22aの厚みを変えることで制御できる。
【0064】
なお、キャビティ27が、本発明のキャビティ部の一例にあたる。
【0065】
多層化された回路形成材1の導電性ビア4と、多層回路基板21のキャビティ27の底部分に備えられた厚み35マイクロメートルの配線パターン23との位置合わせを行い積層する。
【0066】
その後、図4(b)に示すように、熱プレス等の手段により加熱加圧することで、回路形成材1の絶縁性樹脂2は一旦軟化して多層回路基板21側に接着され、その後完全に熱硬化することで導電性ビア4と配線パターン23間が電気的に圧接接続される。この際、回路形成材1の層間も仮接着状態から一旦絶縁性樹脂2が溶融された後に硬化され完全に一体化される。この熱プレス条件の一例としては、温度150℃、圧力1MPa、加圧時間2分で行う。
【0067】
この様に、多層回路基板21のキャビティ27部分に、精細なパターンを有する多層の回路形成材1を積層することで、部分的に高密度の配線パターン3を備えた積層による段差の無い局所多層回路基板を提供することができる。
【0068】
なお、図4(a)で説明した工程が、本発明の積層工程の一例にあたり、図4(b)で説明した工程が、本発明の接着工程の一例にあたる。
【0069】
本実施の形態1の局所多層回路基板の構成により、局所多層回路基板を積んで梱包や搬送をする際に、部分的に積層した多層の回路形成材1へ擦り合わせるなどの物理的な応力が加わることによる、導電性ビア4と配線パターン23との接続ダメージをなくすることができる。すなわち、積層部分の飛び出し段差がないことで、基板を重ねて運搬等を行っても積層部分には外部応力を受けることが無いため、多層回路基板と高精細の配線パターンを有する回路形成材の接着界面における、導電性ビア接続ダメージを回避することができる。
【0070】
また、本実施の形態1の局所多層回路基板では、キャビティ27を多層回路基板21の最表層の絶縁性樹脂基材22aの表面から裏面に貫通する開口のみによって構成しているので、キャビティ27の深さを、多層回路基板21の最表層の基材厚みをかえることで容易に調整することができる。
【0071】
図4(c)は、図4(b)で作製した本実施の形態1の局所多層回路基板全体にフォトリソ法や印刷法等によりソルダーレジスト25を形成した際の断面図である。
【0072】
この様に、局所的に多層化された回路基板であっても段差をなくすることで、マザー基板となる多層回路基板21部分と精細な配線パターン3を有する多層回路形成材1部分のソルダーレジスト25を、従来は別工程で形成していたのを同一工程で形成することができる。この際、積層した回路形成材1と多層回路基板21との間にできる隙間部28にも、ソルダーレジスト25を充填形成することができることで、回路形成材1の補強構成材となり、物理的な応力はもちろんのこと、リフロー工程などで加わる200℃以上の熱応力に対しても補強効果が得られる。
【0073】
更には、隙間部28で露出する多層回路基板21の配線パターン23をソルダーレジスト25で覆うことができるため、湿度影響などによるパターン間の絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0074】
このように、本実施の形態1の局所多層回路基板の構成とすることにより、多層回路基板21に接着接合された回路形成材1の補強効果を高め、更には多層回路基板21の配線パターン23の露出を無くすことで絶縁耐圧性能を高めることができる。
【0075】
なお、図4(c)で説明したソルダーレジスト25を同一工程で形成させる工程が、本発明のレジスト形成工程の一例にあたる。
【0076】
図4(d)は、本実施の形態1の局所多層回路基板にクリーム半田を印刷した際の断面図である。
【0077】
クリーム半田26を印刷供給する際も段差が無いため、局部的に積層した回路形成材1近傍までムラ無くクリーム半田を供給でき、部品が実装できる。
【0078】
なお、図4(b)に示す、回路形成材1の配線パターン3の表面を含む平面29が、多層回路基板21の配線パターン23の表面を含む平面30より飛び出さないようにすることで、基板を重ねて運搬等を行った際の積層部分への外部応力を受けさせないようにすることができ、さらに、これらの2つの平面29および30が同一平面となるようにキャビティ27の深さを設定することで、ソルダーレジスト25を同一工程で形成できる効果、および回路形成材1近傍までムラ無くクリーム半田を供給できるという効果も発揮することができる。なお、これらの2つの平面29および30を全くの同一平面としなくても、2つの平面29および30間の距離を0.2mm以内とすることにより、これらの効果を十分に発揮させることができる。
【0079】
なお、本実施の形態1において、キャビティ27を備えた多層回路基板21を樹脂基板としたが、セラミック基板等の別材料でも良い。
【0080】
また、局部的に積層する多層の回路形成材1を3層構造としたがこれに限定されるものではなく、単層でも、より多くの積層数でも同様の効果を得ることが出来る。
【0081】
また、未硬化の絶縁性樹脂2は単一材料構成でなく、薄いポリイミドフィルムなどの心材の両面に絶縁性樹脂を形成した3層構造でも良い。このことで回路形成材1を多層積層して熱プレスした際に生ずる樹脂流動を抑制でき、配線パターン23および導電性ビア4の位置保持率を高めることができる。
【0082】
また、図1〜図4で説明した本実施の形態1の局所多層回路基板は、最上層の絶縁性樹脂基材22aの部分のみでキャビティ27を構成させることとしたが、複数の絶縁性樹脂基材の層を貫通させた開口によってキャビティを構成させるようにしてもよい。例えば、図4(a)において、絶縁性樹脂基材22aと絶縁性樹脂基材22bとに連続して貫通する開口を形成させて本発明のキャビティ部としてもよい。
【0083】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2の局所多層回路基板の断面図である。図1〜図4と同じ構成要素については、説明を省略する。
【0084】
図5において、121は階段状のキャビティを備えた5層の多層回路基板で、階段部を含む各層には配線パターン123と、各配線パターン123の層間を接続するための導電性ビア124を備えている。多層回路基板の階段状キャビティ内には、絶縁性樹脂102と、精細な配線パターン103と、層間を接続するための導電性ビア104とを備えた逆階段形状の多層化された回路形成材が積層されており、多層回路基板121のキャビティ階段部の各配線パターン123と、回路形成材の逆階段部にある各層の導電性ビア104が電気的に接合されている。
【0085】
この構造により、実施の形態1で説明した局所多層部の積層段差を無くすることで得られる数々の効果に加え、精細な配線を有する多層の回路形成材の層間から、多層回路基板121の層間に電気的な接続をすることができるため、基板回路設計の裕度が増し、配線収容性を向上させることが可能となり、多層回路基板の層数削減あるいは小面積化ができる。
【0086】
図6(a)〜(d)は、本実施の形態2における局所多層回路基板の製造工程を示す図であり、それぞれ断面図を示している。
【0087】
図6(a)に示すように、121は階段状のキャビティ127を有した5層の多層回路基板である。図6(a)〜(c)に示す101a、101b、101cは、実施の形態1の図2の製造方法で作製した、精細な配線パターンを有する単層の回路形成材10と同じものである。
【0088】
キャビティ127は、多層回路基板121の絶縁性樹脂基材122a、122b、122cのそれぞれの表面から裏面に貫通する開口が連結されて構成されている。ここでは、図6(a)において一点鎖線で区切って表した、絶縁性樹脂基材122a、122b、122cの各層に対応するキャビティ127の部分を、それぞれキャビティ層と呼ぶ。
【0089】
なお、階段状キャビティ127の、最下段の配線パターン123aが形成されている面が、本発明のキャビティ部の底部の一例にあたり、最上層の絶縁性樹脂基材122aに対応するキャビティ層の上面部分が、本発明のキャビティ部の開口部の一例にあたる。
【0090】
まず、図6(a)に示すように、多層回路基板121の階段状キャビティ127の最下段に備えた配線パターン123aと、単層の回路形成材101aの導電性ビア104aの位置合わせを行って、絶縁性樹脂基材122cに対応するキャビティ層の部分に、回路形成材101aを積層する。
【0091】
次いで、図6(b)に示すように、単層の回路形成材101bの導電性ビア104bと、階段状キャビティ127の2段目に備えた配線パターン123bおよびすでに積層された回路形成材101aの配線パターン103aとの位置合わせを行い、絶縁性樹脂基材122bに対応するキャビティ層の部分に、回路形成材101bを積層する。
【0092】
次いで、図6(c)に示すように、単層の回路形成材101cの導電性ビア104cと、階段状キャビティ127の3段目に備えた配線パターン123cおよびすでに積層された回路形成材101bの配線パターン103bとの位置合わせを行い、絶縁性樹脂基材122aに対応するキャビティ層の部分に、回路形成材101cを積層する。
【0093】
単層の各回路形成材101a、101b、101cは、多層回路基板121に設けた階段状キャビティ127とは逆の階段状となるため、それぞれのサイズが異なる。
【0094】
そして、以上のようにして逆階段状に積層した回路形成材101a、101b、101cの上部から熱プレスによって加圧加熱することで、多層の回路形成材として一体化すると共に、多層回路基板121に接着され、階段形状部で層間接続を有する局所多層回路基板を製造することができる。
【0095】
このようにして作製した本実施の形態2の局所多層回路基板は、最上層に積層した回路形成材101aの上面が多層回路基板121の表面と段差のない構成となるため、実施の形態1と同様に、図6(d)に示すように、回路形成材101aの表面および多層回路基板121の表面に同一工程でソルダーレジスト125を形成させることができ、その際、回路形成材101aと多層回路基板121との間にできる隙間部128にも、ソルダーレジスト125を充填形成することができる。
【0096】
本実施の形態2の局所多層回路基板は、多層回路基板121に階段形状のキャビティ127と階段部に配線パターン123a、123b、123cを備え、キャビティ127部分に積層された高精細の配線パターン103a、103b、103cを有する回路形成材101a、101b、101cが多層の逆階段形状であり、階段部の配線パターン123a、123b、123cと、高精細の配線パターン103a、103b、103cを有する回路形成材101a、101b、101cの導電性ビア104a、104b、104cとがそれぞれ電気的に接続する構成としたことにより、高精細の配線パターンを有する回路形成材の層間配線と、マザー基板となる多層回路基板121の層間配線とを接続できる構成となるため、基板回路の配線設計を容易とし配線収容性を格段に向上させることができることで、小面積化あるいは層数削減効果を得ることができる。
【0097】
本発明の局所多層回路基板は、部分的に多層した配線パターンが高精細であるため、基板全体は安価なマザー基板仕様でありながら、狭ピッチの半導体パッケージ実装やベアチップ実装も可能なことから高密度実装を必要とする電子デバイスの用途に適用できる。
【0098】
なお、本実施の形態2では、多層回路基板121に形成されたキャビティ127の階段形状が3段の場合について説明したが、2段以上であれば何段の構成であってもよい。
【0099】
また、本実施の形態2では、キャビティ127の階段形状が、対向する両方の側壁面に形成されている構成としたが、キャビティ127の側壁面の一部のみが階段形状となっている構成であってもよい。例えば、左側壁については、図6(a)のキャビティ127の左側壁のように3段の階段形状をしており、右側壁については、図4(a)のキャビティ27の右側壁のように段差のない形状をしているようなキャビティとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る局所多層回路基板および局所多層回路基板の製造方法は、マザー基板に部分的に積層される多層基板に物理的なダメージを与えない効果を有し、半導体装置や電子部品等を高密度実装するための局所多層回路基板およびその製造方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 高精細なパターンが形成された多層の回路形成材
2、102 絶縁性樹脂
3、103、103a、103b、103c 配線パターン
3a 銅箔
4、104 導電性ビア
5a、5b 保護フィルム
6 ビアホール
7 ベースフィルム材
8 絶縁性樹脂シート
9 転写パターンシート
10、101 高精細なパターンが形成された単層の回路形成材
14 導電性樹脂ペースト
21 キャビティが形成された多層回路基板
22a、22b、22c、122a、122b、122c、122d 絶縁性樹脂基材
23、123、123a、123b、123c 配線パターン
24、124 導電性ビア
25、125 ソルダーレジスト
26 クリーム半田
27 キャビティ
28、128 隙間部
29 回路形成材1の配線パターン3の表面を含む平面
30 多層回路基板21の配線パターン23の表面を含む平面
121 階段形状のキャビティが形成された多層回路基板
127 階段形状のキャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層の一部にキャビティ部を有する回路基板と、
前記キャビティ部に配置されている、前記回路基板より高精細な配線ルールで形成された回路形成材とを備えた、局所多層回路基板。
【請求項2】
前記回路基板は、多層構造であり、
前記キャビティ部は、前記回路基板の前記表層に形成される配線パターンの表面を含む平面と、前記回路形成材の表層に形成された配線パターンの表面を含む平面との距離が所定の距離以下となる、深さを有している、請求項1に記載の局所多層回路基板。
【請求項3】
前記回路基板の表面に形成されたソルダーレジストと、前記回路形成材の表面に形成されたソルダーレジストとは、同一工程により形成されたものである、請求項1または2に記載の局所多層回路基板。
【請求項4】
前記回路基板と前記回路形成材との間の隙間部の少なくとも一部に前記ソルダーレジストが充填されている、請求項3に記載の局所多層回路基板。
【請求項5】
前記所定の距離は、0.2mmである、請求項2に記載の局所多層回路基板。
【請求項6】
前記キャビティ部は、前記回路基板の前記表層の基材の表面から裏面に貫通する開口のみで構成されている、請求項2に記載の局所多層回路基板。
【請求項7】
前記キャビティ部は、開口部が底部よりも大きく、側壁部の少なくとも一部が階段形状をしており、
前記各階段のキャビティ層には、それぞれ別の前記回路形成材が配置されている、請求項1に記載の局所多層回路基板。
【請求項8】
前記各階段のキャビティ層のうち、前記開口部に最も近い前記キャビティ層における前記回路形成材と前記回路基板との間の隙間部の少なくとも一部にソルダーレジストが充填されている、請求項7に記載の局所多層回路基板。
【請求項9】
少なくとも表層の一部にキャビティ部を有する回路基板の前記キャビティ部に、前記回路基板より高精細な配線ルールで形成された回路形成材を配置する積層工程と、
加圧加熱により前記回路基板と前記回路形成材とを接着する接着工程と、
前記回路基板の表面と、前記回路形成材の表面と、前記回路基板および前記回路形成材の間の隙間部とに、ソルダーレジストを形成するレジスト形成工程とを備えた、局所多層回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記レジスト形成工程は、前記回路基板の表面と、前記回路形成材の表面と、前記隙間部とに、同一工程で前記ソルダーレジストを形成する、請求項9に記載の局所多層回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記キャビティ部は、開口部が底部よりも大きく、側壁部の少なくとも一部が階段形状をしており、
前記各階段のキャビティ層毎に、それぞれ別の前記回路形成材を配置して接着するように、前記積層工程および前記接着工程を繰り返し行ない、
その後、前記レジスト形成工程において、前記回路基板の表面と、前記回路形成材の表面と、前記開口部に最も近い前記キャビティ層における前記回路形成材と前記回路基板との間の前記隙間部とに、同一工程で前記ソルダーレジストを形成する、請求項9に記載の局所多層回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159855(P2011−159855A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21118(P2010−21118)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】