説明

局所的に施される活性剤用の抗光化学作用化粧品組成物

【課題】不安定な状態の活性物質を化粧品や医薬品配合物の形で皮膚に局所的に施すためのデリバリーシステムの提供。
【解決手段】局所的に施される活性剤を皮膚に付与する各種の用途で用いられる新規な化粧あるいは皮膚科学用のデリバリーシステム、そのデリバリーシステムを調製する方法、及びその機構が内部に含まれている化粧あるいは皮膚科学用の配合物に関するもので、具体的には、望ましくない放射を遮蔽するフィルタ遮蔽剤とフリーラジカル捕獲物質とを含む局所塗布用の抗光化学作用化粧品組成物であって、さらにDNA補修酵素を含むことを特徴とする抗光化学作用化粧品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、局所的に施される活性剤を皮膚に付与する各種の用途で用いられる新規な化粧あるいは皮膚科学用のデリバリーシステム、そのデリバリーシステムを調製する方法、及びその機構が内部に含まれている化粧あるいは皮膚科学用の配合物に関する。特に関連深いのは、ゲル(ジェル)、クリーム及びローションなどの化粧用多相配合物である。
【背景技術】
【0002】
周知の化粧品デリバリーシステムに伴う一つの困難は、不安定な化合物を保護して早期の反応を防ぐことにある。また、アルファヒドリキシ酸などいくつかの生物学的に活性な物質が、皮膚に良く働き、皮膚のしなやかさ及び見た目を向上させることが知られている。しかしそのような活性物質は、局部的な濃度が高すぎると、角質膜を貫いてより敏感な生体組織へと深く浸透する能力を有するため、炎症を引き起こす傾向がある。従って、活性剤を配合物形成用の賦形剤や補助剤から分離可能であると共に、塗布箇所において活性物質を抑制しながら放出可能なデリバリーシステムが要望されている。さらに、例えば皮膚の表面などの付与箇所において、活性物質を局部的に集中可能なデリバリーシステムが得られれば好都合である。
【0003】
活性物質を担体分子に結合する一つの手法は、化粧品調合物内で安定な状態を保つ複合体を与えることである。複合体を皮膚に施すと、活性物質がデリバリーシステムから放出または解離され、皮膚中に吸収されて所望の効果をもたらす。このような機構は当該分野で知られているが、活性物質を配合物の成分からうまく分離するのに成功していない。また周知の機構は、例えば皮膚の表面など所望の箇所において活性物質を集中付与する手段を与えるものでもない。活性物質を皮膚に付与する際に生じる別の問題は、活性物質がデリバリーシステム自体と望ましくない反応を起こすことである。化粧品活性物質は、化粧品調合物のような懸濁物及び乳状物内で安定化可能である。しかしながら、そのような安定化した活性物質を配合するのには高温とpHレベルの変更が必要であり、その結果活性物質を改変し、配合に伴う安定の問題を生じる恐れがある。
【0004】
プロシアニジン低重合体などのポリフェノールは、多くの化粧品配合物の一般的な成分と反応して望ましくない重合を起こすことが知られている代表例である。ポリフェノールは、植物学的に誘導され、ぶどうの種、緑茶及びその他の木質植物から抽出されるポリフェノールであるカテキンを含んでいる。カテキンは、紫外光の影響を保護する老化防止配合物において、フリーラジカル(遊離基)を捕獲する有用な働きをしている。
【0005】
上記及びその他の活性成分に用いられ、医薬物の抑制された浸透放出を行う多層粒状デリバリーシステムが、 Samain らにより米国特許 No.5,151,264 で教示されている。 Samainらは、「バイオミメティック(バイオ疑似)」と称する、吸収剤、固形物、変性でんぷんのコア、及び外側のリン脂質被覆からなる担体で、異物粒子の侵入に対して身体の防御機能をトリガーさせない一般的な細胞膜を疑似したものを開示している。 Samain らの多層粒子は多くの分野で非常に有効であるが、付与箇所あるいはゾーンにおける活性物質の放出にもっとオプションを与えられると共に、 Samain らの寸法的に安定な固形コア粒子で可能であるよりも迅速な皮膚表面での放出を可能とするデリバリーシステムが得られることが望ましい。
【0006】
生物学的あるいは化粧品的活性を有する活性物質(ここでは単に「活性物質(活性剤)」とする)用のデリバリーシステムは、持続放出機構あるいは抑制放出機構とし得る。持続放出機構は、活性物質を配合の瞬間から連続的に放出する。付与すべき活性物質はマトリックス(母体)内に埋め込まれ、マトリックスの拡散係数が非常に低い(例えば水より低い)ことで、活性物質がマトリックスからゆっくりと放出される。この種の連続的な放出機構は、デリバリーシステムの配合時点から常時生じる活性物質の放出が、保存期間や効果に影響を及ぼす不安定を引き起こす恐れがあるため、例えば化粧クリームなどの化粧品配合物には適さない。他方抑制放出機構は、特定の事象によって開始された時点から活性物質を放出する。活性物質は抑制放出機構内のマトリックスに化学的または物理的に結合されており、その結合が外部の事象によって破壊されると放出される。例えば、Samain らの多層粒子では、活性成分がイオン結合によって粒子にリンクされている。活性物質の放出は、比較的低いイオン強度を有する皮膚の水分に遭遇すると開始される。
【0007】
ゲル形成ポリマーは、活性物質を内部に捕捉可能なマトリックスを形成することによってデリバリーシステムを提供する。ゲル形成ポリマーの一例は、日本では「寒天」とも呼ばれるゼラチンで、電気泳動やクロマトグラフィ用の媒質として通常使われている多糖類である。寒天はさまざまなサイズのビーズに形成でき、医薬品や生物細胞をも含む活性物質の付与に使えることが知られている。寒天ビーズに伴う問題は、上述したように配合の時点から活性物質の放出が始まるため化粧品の用途には適さない持続放出機構を形成することである。
Cini らの米国特許 No.5,457,093 は、傷の箇所、特に眼の傷に成長因子を付与するための持続放出ゲル配合物を開示している。寒天を含め、各種の多糖類ゲルが使われている。 Cini らのゲルは、化粧品への配合を意図しておらず、水相の化粧品媒介物(ビヒクル)と混合すると、おそらく溶解または分散して内部の活性物質を保護できなくなってしまう。つまり活性物質は、ゲルが水相を含む化粧品配合物に組み入れられた瞬間から、連続的にゲルから放出され続ける。従って、 Cini らのゲル配合物は、かなりの保存期間が必要な化粧品乳化物に使うことはできない。
【0008】
Modi の米国特許 No.5,417,982 は、2種類の水溶性ポリマーからなるポリマー−ゲルマトリックスを微小球(ミクロスフェア)内に組み入れた抑制放出デリバリーシステムを開示している。微小球マトリックスの生物学的劣化によって、タンパク質やポリペプチドの治療処方量を内部的または浸透的に投与する経口または注入による抑制放出デリバリーシステムが得られる。 Modi のデリバリーシステムは、明らかに活性物質の局所的付与及び放出を意図しておらず、またその目的にも適さない。
【0009】
Rencher の米国特許 No.5,314,915 は、ナトリウムカルボキシメチルセルロースとキサンゴムあるいはアルギン酸ナトリウムとのポリマーブレンドからなる局部麻酔用のデリバリーシステムを提供している。 Rencherの配合物は、粒状物でなく連続相の接着性または噛み合い性ゲルで、活性物質の化粧品あるいは医薬品配合物への組み入れを容易としながら、しかも活性物質を配合物から良好に分離させるようなデリバリーシステムを提供するものでない。 Rencher の連続相デリバリーシステムは、水相を含む化粧クリームやローションに組み入れた場合、吸着されている活性物質を保護しない。
【0010】
Yarosh の米国特許 No.5,077,211 は、媒質内に希釈されて目標の細胞に付加されるリポゾーム中に純化した酵素を組み入れることによって、活性状態のDNA補修酵素を生体の哺乳類細胞にその場で付与することを開示している。DNA酵素は局所的及びいずれかの箇所において活性で、健康な組織の発生過程をシミュレートして老化あるいは損傷した皮膚を置き換えることによって、細胞の欠陥を補修することが報告されている。 Yarosh のリポゾームは、濃縮緩衝した酵素の水溶液で脂質混合物膜を再水和化し、攪拌し、音波処理し、所望のリポゾーム球を分離することによって調製される。ここで使われている脂質混合物は、一次成分としてのフォスファチジルコリン(レシチン)、二次成分としてのリン酸ディセチルまたはステアリルアミン、任意選択である三次成分としてのコレステロールに基づいている(例3及び4参照)。
【0011】
Yarosh の米国特許によれば、リポゾームは、明らかにラボ条件下における局所的塗布のために、明らかに室温においてポリグリコールゲル内に組み入れられている。しかしながら Yarosh の付与媒介物を検討すると、それらの付与媒介物はラボテストには適しているかもしれないが、商業的用途には適さないことが示唆される。
【0012】
Yarosh の特許 No.5,352,458 及び Kripke らの米国特許 No.5,302,389 はそれぞれ、前記 Yarosh の米国特許 No.5,077,211 に従って調製された Yarosh のDNA補修酵素を用い、メラニンの強化生成をシミュレートすることによるなめし強化、及びUV誘起されるT細胞の免疫応答ひいてはそれに伴う赤化、過敏及び炎症の抑止を行っている。
【0013】
専門家の監督下あるいは監督外で皮膚に局所的に施すため、そのようなDNA補修酵素あるいはその他の酵素を活性状態のまま付与する担体を有した化粧品や医薬品用の配合物があれば、顕著な利点が得られるのは明らかである。それが困難なのは、酵素が不安定で、配合温度やpH調整、あるいは化粧品や医薬品の製造及び流通チェーンでは通常的な長い期間の棚置き中に化粧品媒介物との反応によって変性してしまうことである。
【0014】
Yarosh の特許に記載されたリポゾームやリポゾームゲルはいずれも、適度な安定性を有するクリーム、ローションあるいはジェルなどの消費者用化粧製品に、 Yarosh やその他の酵素を配合可能とするのに充分な保護を提供し得ると思われない。必要とされる高温の処理温度、配合剤の分散、及び長期間の保存期間のために、酵素だけでなくリポゾームの担体も分解もしくは変性してしまい、許容し得ない分離、活性度の低下などが生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、植物からの抽出物、落屑酵素などの不安定な活性物質を保護でき、そのような活性物質を活性状態のまま皮膚に付与可能とする一方、従来の化粧品媒介物内へ配合するのに適した、局所に施される活性物質用の美的にも優れた化粧品担体が要望されている。さらに、活性物質を配合物成分から分離可能とし、しかもその分離を一般的な配合過程、特に乳化物を得るのに必要な過程を経ても維持可能な化粧品や医薬品用のデリバリーシステム、及び付与箇所において活性物を抑制放出し、好ましくはその付与箇所に活性物質を局部集中可能なデリバリーシステムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求の範囲に記載のごとく請求される本発明は、不安定及びその他の状態の活性物質(活性剤)を、化粧品や医薬品配合物の形で皮膚やその他の身体表面への局所的に施すためのデリバリーシステムを提供する際における上記問題を解決するものである。さらに本発明は、デリバリーシステム自体と望ましくない反応を生じ、活性物質を損傷したり、配合物に安定性の問題を引き起こすなど、活性物質を付与する上での問題を解決するものである。
【0017】
そこで本発明は、局所的に施される活性剤用の保護化粧品粒状ゲルデリバリーシステムであって、
【0018】
a)寒天ゲル;及び
【0019】
b)前記寒天ゲル中に分散された抑制ポリマーで、抑制ポリマーが前記寒天ゲ
ルから外へ出るのを防止するのに充分な分子量を有すると共に、前記活性剤を抑制ポリマーに結合してゲル粒子内に保持する保持基を有し、有効量の前記活性剤を付与するのに充分な比率で存在する抑制ポリマー;
から形成された離散状ゲル粒子から成り、ゲル粒子が皮膚上で手によってつぶすことができ、ゲル粒子物の表面積を増大すると共に、前記抑制ポリマーを皮膚またはその他の身体表面に露出させ前記活性剤を放出させるデリバリーシステムを提供する。
【0020】
好ましくは、活性剤分子が前記抑制ポリマーの保持基に結合され、前記抑制ポリマーは少なくとも100,000ダルトンの平均分子量を有する。好ましい実施形態において、前記活性剤と保持基は共に有極性基からなり、反対の極性を有することによって、前記活性剤が保持基とイオン的に結合可能である。適切な抑制ポリマーは水溶性で、ある範囲の活性剤に対し保持基として作用可能な強陽イオン性の第四アンモニウム基で置換された多糖類の骨材を有する。陽イオン性のアンモニウム基が陰イオン性の活性剤と安定なイオン結合を形成可能で、そのイオン結合は、化粧品組成物を含むゲル粒子を局所的に施すと破壊されて活性剤を放出可能である。
【0021】
イオン的に結合可能な適切な活性剤の例としては、ビタミンC(アスコルビン酸)などの抗酸化剤、植物学的に誘導されたポリフェノール、プロシアニジン低重合体、フリーラジカル捕獲物質、及び局所的に活性な酵素がある。望ましい非イオン性の活性剤、例えばビタミンE(アルファ−トコフェロール)は、好ましい抑制ポリマー上で、疎水性の相互反応によって脂質基と結合可能である。寒天が特に好ましいゲル形成剤であるが、本発明の要件を満たすその他のゲル形成剤も使える。
【0022】
つまり本発明は、一種類またはそれより多い活性剤が、寒天の他に、活性剤が結合して、目標の環境になるまでそこから活性剤が放出されない抑制ポリマーを含む複合寒天ビーズ内に捕捉されているような、活性剤を皮膚に施すためのデリバリーシステムを提供する。寒天複合ビーズは、医薬品や生物学的細胞さえも含め、各種の活性剤を皮膚に付与するためにさまざまなサイズに形成可能であり、また柔らかくてつぶせるビーズとして皮膚に施すことが出来る。
【0023】
寒天ゲル内に捕捉される多くの望ましい活性物質は、特に水性媒介物内に保持されると、時間の経過につれ浸出する。これに対し、抑制ポリマーはそのような活性物質が寒天マトリックスから放出されるのを防ぐのに充分な分子量、例えば100,000ダルトンを有しているため、抑制ポリマーに結合した活性物質は寒天ビーズから放出しない。ここで形成される寒天ビーズは、化粧品配合物を通常の方法で施した際、皮膚上でつぶれるのに充分なほど柔らかいのが好ましい。
【0024】
また本発明は、寒天ゲル粒子を調製する方法であって、
【0025】
a)寒天を溶解するのに充分な高温に加熱された水中に、それより低い温度で
【0026】
ゲルを形成するのに有効な寒天対水の比率で寒天を溶解する工程;及び
【0027】
b)寒天溶液を、寒天のゲル化点より低い温度に維持した寒天溶液と混合不能
【0028】
な低温の疎水性液内に機械的に分散する工程;
からなり、水溶性の抑制ポリマーが寒天溶液中に含まれていることにより、滴下物が抑制ポリマーの組み入れられたゲルビーズに形成される方法を提供する。
【0029】
必ずしも必要でないが好ましくは、前記工程b)を実施する前に、高温の寒天溶液が、寒天溶液のゲル化点より高い中間温度に冷却される。実施が簡単で経済的な好ましい実施の形態において、寒天−抑制ポリマーの溶液は、回転攪拌機を用いて低温の疎水性液内に機械的に分散される。この方法を用いれば、ゲルビーズのサイズは、攪拌機の回転速度を選択することによって制御できる。
【0030】
別の実施の形態において、寒天−抑制ポリマーの溶液は、滴状物を形成する中空のニードルを通した射出によって低温の疎水性液内に機械的に分散され、ニードルは所望のゲルビーズサイズを与えるように選択された内径を有する。
【0031】
冷却工程を用いる利点は、前記工程b)の前に、温度感応性の活性剤が冷却された寒天−抑制ポリマーと混合できるようにして、前記工程a)で必要なより高い温度にさらされるのを回避することにある。その他の活性剤は、前記工程a)で混合可能である。いずれにせよ活性剤はゲルビーズ内に有効に組み入れられ、その内部にあって、ビーズが一緒に配合されることのある化粧品、医薬品またはその他の成分を損傷することから保護され、皮膚上でビーズをつぶすことによって局所的に付与可能となる。
【0032】
活性剤を施す目標としてここでは皮膚について言及するが、活性剤及びビーズが配合される化粧品や医薬品の媒介物に応じて、つめ、髪、口、歯の損傷組織あるいはその他の外から届く内生的な身体表面も同様に目標とできることが理解されよう。
【発明の効果】
【0033】
活性剤はゲルビーズ内に有効に組み入れられ、その内部にあって、ビーズが一緒に配合されることのある化粧品、医薬品またはその他の成分を損傷することから保護され、皮膚上でビーズをつぶすことによって局所的に付与可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明を例示するいくつかの実施の形態及び発明を実施する際に考えられる最良の形態を、以下添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0035】
以下の説明で言及されるすべての部及び比率は、特に断り書きがない限り、重量基準あるいは重量対重量基準である。
【0036】
図1及び図2を参照すれば、粒状化粧品ゲル担体の特に好ましい実施例は、平均粒径がミリメータ程度の比較的小さい寒天粒子または寒天ビーズ10からなる。各粒子は化粧品に用いられるように充分に小さく、平均直径が10mmを越えないのが好ましいが、皮膚あるいは皮膚孔を通り抜けるほどは小さくない。平均の最小直径は、約0.05mm(50ミクロン)である。粒径の好ましい範囲は平均直径で約0.1から3.0mm、より好ましい範囲は平均直径で約0.25mmから1mmである。
【0037】
粒子を製造する好ましい方法を用いればよく集中した粒径分布が得られ、粒子の少なくとも80パーセント、より好ましくは粒子の90パーセントが、目標平均値の各側で約30パーセントまでの範囲の所望平均粒径区分内に入るのが好ましい。特定の用途で所望なら、メッシュフィルタ処理によってさらに一様な製品粒子を得ることもできる。
【0038】
寒天粒子10は、抑制ポリマー14を含んだ、自立性固体あるいは半固体形状の寒天ゲル12の連続相から成る複合体である。各寒天粒子10の内部全体にわたって、水溶性で好ましくは有極性の抑制ポリマー14、好ましくはポリクウォータニウム(polyquarternium)24またはステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロースなどの四級化(quaternized)陽イオン性ポリマーが分散されている。抑制ポリマー14は寒天ゲル12内に捕捉されているので、寒天ビーズ10が一体形状を保持している間、そこから容易に浸出したりあるいは放出されることはない。寒天ビーズ10は各種の活性剤16のための化粧品デリバリーシステムとして機能可能であり、それら活性剤16としては例えばアスコルビン酸、乳酸、パパインなど抑制ポリマー14に束縛されたもの、あるいは独自の化粧用またはその他の活性的性質を有するヒアルロン酸や湿潤剤(モイスチャライザー)など、他に何らの活性成分が無くとも、例えば捕捉抑制ポリマー14を付与するのにそれ自体が有用なものなどがある。寒天ゲル12,抑制ポリマー14、及び活性剤16について述べる好ましい実施の形態に代わり得る数多くの物質または材料が存在し、その一部を以下に述べる。その他については、当業者にとって自明であろう。
【0039】
図2に概略化して示すように、寒天ビーズ10は、好ましくは1本以上の使用者の指18の通常の押し広げ動作またはマッサージ動作により(あるいは手または同等のその他の身体部分もしくは道具により)皮膚上で使用者自らがつぶすことができ、寒天ビーズ10の表面積を大きくして、抑制ポリマー14を皮膚の表面に接触させ、そこで皮膚の通常の構成要素が抑制ポリマー14から活性剤16を放出せしめ、角質層の皮膚細胞20の外層内へ活性剤を浸透可能とする。図2において、分かりやすくするため皮膚細胞20はサイズを誇張してある。
【0040】
ユーザ18の指で引き続き押し広げ動作またはマッサージ動作を続けると、抑制ポリマー14を含む寒天ゲル複合体が皮膚の表面上にさらに広がり、湿潤化など何らかの活性的性質を発揮する。あるいは、ポリマーが寒天ゲルそのものを含めてほぼ不活性であれば、ポリマーは通常の化粧品残留物と同じく、皮膚から擦り落とされたり洗い流されるか、あるいは吸収されて酵素的に劣化するか、もしくは充分に不活性となって最終的に排泄される。
【0041】
寒天ビーズをつぶして広げ抑制ポリマー14を皮膚環境にさらした際、活性剤16を抑制ポリマー14から放出させるのには、いくつか異なる物理化学的な作用機構を利用可能である。汗腺と皮脂腺はそれぞれ絶えず、各種の弱い強度のイオン、とりわけ塩化ナトリウムや、リン脂質を含む脂質混合物を含んだ水分を排出している。本発明の寒天−ポリマー複合体ビーズ10は、通常の皮膚孔、小胞開口などを通過しない程度に充分大きい。寒天ビーズ材がつぶれて皮膚上に広がるにつれ、その表面積が増加し、ゲル−ポリマー複合体と皮膚表面の水分や脂質との間の境界面が拡張することによって、活性剤16の逐次放出が開始される。
【0042】
皮膚水分のイオン強度は、活性剤16と抑制ポリマー14とのイオン結合を破壊するのに充分で、皮膚の湿潤領域へのイオン化活性剤16の移動を促進する。あるいは、pH約5.5である皮膚の通常の酸性によって、抑制ポリマー14へイオン的に結合した陽イオン性活性剤16が放出されることもある。さらには、皮脂などの自然の皮膚脂が、脂肪親和的に結合された活性剤を放出させることもある。
【0043】
皮膚が乾燥している場合、ゲル−ポリマー複合体は時間の経過につれ、角質層細胞20の最も外側のケラチン層及び細胞20を一体に結合している細胞間空間内の脂肪親和性「モルタル」によって構成された皮膚の水分障壁を通って浸透可能であり、その結果活性剤を放出させる水分や脂質と遭遇する。かかる作用は、ゲルまたはポリマーの酵素による溶解によって促進される。本発明の範囲は、上記の記載あるいはその他、説明のために示す理論や考慮した作用の機構によって制限されるものでなく、添付の請求の範囲によってのみ制限される。重要なのは、本発明が活性剤を皮膚の表面へ良好に施すことのできるデリバリーシステムを提供し、また所望であれば、化粧品やその他の媒介物内の活性剤を配合物の状態である間又は/及び棚置きの期間中保護することである。
【0044】
本発明の実施に際して使用可能ないくつかの物質及び材料を、以下説明する。その他については、当業者にとって自明であろう。
【0045】
<ゲル形成剤:>
本発明の実施に際して用いられる特に好ましいゲル形成剤は、日本で「寒天」と呼ばれるゼラチンである。もっと正確に言えば、寒天の中性のゲル状化部分をなす「アガロース」(残りは硫酸塩化したゲル状化部分の「アガロペクチン」)であるが、ここでは「アガロース」と同じ意味で「寒天」という用語を用いる。寒天は、電気泳動やクロマトグラフィ用の媒質として通常使われているゲル形成多糖類の一例である。寒天は低温の水中に乾燥固体として分散させると不溶性であるが、70―90℃を越える温度に加熱されると溶解性となり、その後冷却されるとゲルを形成する。寒天は他の一部の一般に使われているゲル化剤と比べると相対的に高価だが、化粧品媒介物、特に通常高温で均質化される2相のクリーム、ジェル(ゲル)及びローションと配合するのに適している。寒天ゲルは、pH及び緩やかな温度の上昇に対し安定している。また驚くべきことに、寒天−ポリマー複合体のゲルビーズの好ましい実施例は、水相の成分及び90℃という高い温度を用いても、その一体性を失うことなく、内部に含まれた活性剤を保護しながら化粧品クリーム内に配合可能である。寒天ゲルビーズは一旦形成されると安定で、高温であっても水性媒体に溶解しにくい。従って本発明の寒天ビーズは、高温に対してもクリームやその他の乳状液を均質化するのに必要な比較的短い時間、例えば約10分であれば安定を保ち充分に耐性があり、事実約30または40分までの間なら安定である。さらに、ゲル化していない寒天溶液は100℃という高い温度でも安定で、この点は固体を装填するのに有利で、活性剤及び抑制ポリマーの高濃度の溶解を可能とする。
【0046】
しかしながら寒天−ゲルビーズを調製しそれらを化粧品内に配合する際には、感熱性の寒天を過剰な熱にさらさないこと、寒天−ゲルビーズをより低い温度で添加すること、ビーズは乳状化後に化粧品配合物に添加すること、感熱性活性剤を含むビーズは損傷を生じない充分に短い時間だけ熱にさらすことに注意すべきである。
【0047】
寒天が本発明の実施に際して用いるのに特に好ましいゲルであるが、本発明の諸要件を満たすその他のゲルも使用可能である。そのような寒天以外のゲルは、寸法的に安定した自立のゲル−ポリマー複合体粒子を形成可能で、これら粒子が場合によって配合の条件下(粒子はそれ自体で最終製品を構成してもよい)、梱包及び保管の条件下で安定であり、エンドユーザの皮膚や爪上でつぶれて、広がるかまたは分散し、粒子の表面積を増大して、中に含まれた活性剤をそこに分散可能なものとすべきである。またビーズは、過度に粘着性でなく、相互に付着しないのが好ましい。好ましいゲルは、pHに対して安定な水溶性ポリマーである。また好ましいゲルは、約50℃で少なくとも5分間、好ましくは15分間、混合時に水性環境にさらされても安定なポリマー複合体ビーズを形成可能なものとすべきである。さらに好ましくは、生成されるポリマー複合体ビーズは、約80℃で少なくとも5分間、好ましくは15分間、混合時に水性環境にさらされても安定であるべきである。
【0048】
そのような寒天以外の使用可能なゲルは、本明細書の開示内容から、当業者にとって周知または自明であろうが、ビニルやアクリルアミドポリマーなどの合成ポリマーあるいは共重合体;例えば多糖類やタンバク質などの天然ポリマー、あるいはそれらポリマーを合成変形したもの;植物学的に誘導されたゲルを含むことができ、さらに一般的な低コストの、石油から誘導された化粧品ゲルであるカルボポル(carbopol)などのゲル化剤も含み得る。但し、カルボポルのゲル化特性はpHレベルに依存するので、例えばアルファヒドロキシ酸など多くの活性剤にとって適切な保護剤とならないこともある。
【0049】
本発明の実施に際して用いるのに選ばれるゲル形成剤は、ここで述べた粒子またはビーズ形成要件を満たすだけでなく、化粧品、医薬品あるいはその他ビーズの意図される最終用途と関連した用件も満たすべきであることが理解されよう。そのような寒天以外のゲル形成ポリマーは、前出の Cini らの米国特許、例えば第4欄11行目から第6欄30行目参照、に開示されており、同特許の開示内容は参照によってここに包含されるものとする。
【0050】
<抑制ポリマー:>
前述したように、本発明を実施するのに用いられる抑制ポリマーは、抑制ポリマーが寒天ゲルから外へ出るのを防ぐのに充分な分子量を有すると共に、活性剤を抑制ポリマーに結合してゲル粒子内に保持する保持基を有している。また抑制ポリマーは、初期の粒子形成工程で寒天と一緒に所望の比率で溶解可能な程度に、水溶性であるのが好ましい。さらにここで用いる抑制ポリマーは、活性剤を結合する1つ以上の保持基を有する1つまたは複数の所望な活性剤に従って選択するのが好ましい。
【0051】
本発明によれば、約100,000ダルトン以上の平均分子量を持つポリマーは、好ましい寒天ゲルマトリックスを通過して流動しないことが見いだされた。但し一部のポリマー、特に寒天と相互作用可能なポリマーは、75,000ダルトン、さらには50,000ダルトン程度のより低い平均分子量を有するポリマーであっても、本発明の目的とする寒天ゲル内に適切に保持し得る。抑制ポリマーの分子量に特定の上限はなく、平均分子量は数百万、例えば500万ダルトンを越えないと考えられるが、100万ダルトンを越えないのが好ましい。平均分子量の好ましい範囲は、75,000から125,000ダルトンである。
【0052】
抑制ポリマーの好ましい種類は、陽イオン性多糖類、ポリペプチドまたはタンパク質である。本発明の実施に際して好ましいいくつか特定の抑制ポリマーは例えば、市販されている四級化多糖類、特に第四基(quaternary groups)が豊富なセルロースであり、中でも商標 QUATRISOFT LM-200(Union Carbide Corporation)で市販されているポリクウォータニウム(polyquarternium)24、例えば商標 GAFQUAT 755N(ISP Europe)及びアルキル第四セルロースポリマーを表す商標 CRODACEL Q (Croda, Inc.)で市販されているポリクウォータニウム(polyquarternium)11,商標 CRODACEL QLで市販されているラウリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロース、商標 CRODACEL QMで市販されているココジモニウム ヒドロキシエチルセルロース、商標 CRODACEL QSで市販されているステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロースを挙げることができる。CRODACEL Q(商標)ポリマーは、下記の一般的性質の反復単位を有する種類のポリマーに属している:
【0053】
[(無水グルコース)(OC24OH)2・(OC24)x
24OH・R1+2・R3・R4CL-
【0054】
上式中、xは特定されないこともあるが、10以下ととることができ、0であってもよい;R1は通常メチレン+2とR3はメチルであることが多く;R4はラウリル、ココイル、ステアリルなど、例えば10−30個の炭素原子を有する比較的長い特性アルキル基である。ポリクウォータニウム24は、2つのヒドロキシエチル置換基を欠いたものである。各無水グルコース単位は、上記のように最大3つのエトキシ置換基を持つことができるが、実際のエトキシ置換の平均度合いはかなり低く、ジヒドロキシ置換の徴候は、実際の現れというより理論上の制限とみなされるべきである。つまり、反復する無水グルコースまたは多糖類の単位は2つまでのヒドロキシエチル置換基と、短いポリエトキシ鎖を介して多糖類の核と結合した第四アンモニウム基を含む。ポリクウォータニウムポリマーは、より長いアルキル基と、この基が与える脂肪親和特性を欠いたものである。
【0055】
特に重要なのは、陰イオン性活性剤のための陽イオン結合位置を与える第四窒素原子である。R4アルキル鎖は、脂質または脂肪親和性活性剤のための脂肪親和性アンカーを与えることができる。四級化セルロースを表す CRODACEL Q(商標)は、 Croda Chemicals Ltd.(英国)から出されている題名 “Crodacel Q range” という製品データシートに詳しく記述されており、その開示内容は参照によってここに包含されるものとする。それらのセルロースは、希釈を前提とする幾分曇りのかかったまたは不透明の粘性濃縮液として供給され、蓄積を生じることなく髪の毛に直接作用する能力、つまり直接的な方法で髪の毛に付着する能力が有用な、ヘアシャンプーやコンディショナーなど特定の用途における膜形成剤として知られている。本発明の実施に際して用いるのに適した上記及び同様のポリマーは、文献でよく知られていると共に、例えば米国特許 No.5,135,748(Zieglerら)、 No.4,970,067(Panandikerら)及び No.5,288,484(Tashjian)に記載されており、これら米国特許の開示内容は参照によってここに包含されるものとする。
【0056】
定量的に見れば、活性分子が適合するのに充分小さいものとして、各有極性基は捕捉された活性剤の1つの酸性分子と理論上結合可能である。所望の高い濃度で活性剤を含んだエンドユーザ用の化粧品懸濁液を製造するためには、イオン結合能力をできるだけ高くすべきであり、ポリマー骨材に結合される陽イオン基の数をできるだけ多くしなければならない。0.2という低い値から理論的限界である2.0という値の比まで用い得るが、グルコース単位当たりの第四基が平均して0.5モルから1.2モルという比が、ポリマー対寒天の比を高くし過ぎることなく、寒天ビーズに対する活性剤の高い装填能力を与えるのに好ましい。実際には、市販されているグルコース単位当たりの第四基の比が1.2モルのものを用いた。この値は、強い陰イオン交換体であるステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロースについての概略数値であり、弱い陰イオン交換体(第三アミン)及び強い(スルホン酸基やリン酸基)または弱い(カルボキシル基)陽イオン交換体を用いることもできる。
【0057】
適切に変形して使用できるその他の多糖類ポリマーとしては、でんぷん、セルロース、キトサン(chitosan)、カラゲーナン(karageenan)がある。変形タンパク質、適切な分子量のポリペプチド、もしくは非生物学的なポリマー(アクリル酸塩など)、さらにそれ以外のポリマーも使える。タンパク質をベースとしたすなわち生物学的なポリマーは、それらの異質性によってアレルギー誘発の問題を引き起こすことがあり、従って本発明の実施に用いるのに好ましくない。但し、ポリリシンなど比較的同質のポリアミノ酸は比較的低い免疫原性を有しており、本発明の抑制ポリマーとして用いるのに適している。天然ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸要素などのアミノ酸モノマーを、当業者にとっては明らかであるように、特定の目標活性剤に対して所望の結合特性を有する所望の保持ユニットを与えるように選ぶことができる。つまり、適切なpHレベルにおいて、ポリリシンやポリアルギニンの塩基性末端アミノ基は、陰イオン性活性剤に対する陽イオン性の保持半量体を与える一方、ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸の末端カルボキシル半量体は、陽イオン性活性剤に対する陰イオン性の保持半量体を与えることができる。
【0058】
保持基は抑制ポリマーの骨材に必ずしも共有結合していなくともよく、1つ以上の所望の活性剤をゲルビーズ内に保持するのを容易とする方法で、抑制ポリマーと複合あるいは結合、会合する分子の成分として与えることもできる。ここで用いる「抑制ポリマー」という用語は、そのようなポリマー複合物や会合物も含むものである。従って、ビーズを製造する際に、別個の成分がポリマー骨材と保持基を与えるようにしてもよい。例えば、ポリマー骨材は、商標 HYDROTRITICUM 2000(Croda Chemicals Ltd.、英国)で市販されている、全粒小麦の加水分解タンパク質などの水溶性または加水分解タンパク質で与えてもよく、また陽イオン基は、例えば商標 INCROQUAT BEHENYL TMS(Croda Chemicals Ltd.、英国)で市販されている自己乳化性ろう状物質である、セテアリルアルコールと結合したベヘン酸トリモニウム 硫酸メチルなどのかなりな脂質特性を有する第四アミン塩で与えてもよい。これら2つの物質は、本発明の抑制成分を与えるために、全粒小麦の加水分解タンパク質対市販製品の INCROQUAT BEHENYL TMSの比として約1:10から約5:1,好ましくは約5:1から約1:1の相対的な無水重量比率で用いることができる。その他にも等価の製品を用いて、得られる抑制ポリマー内に陽イオン基(あるいは活性剤の種類によっては陰イオン基)の同等な分布を与えることも可能である。
【0059】
本発明の要件を満たすことのできるその他の適切な抑制ポリマーは、ここに開示する内容に基づき、当業者にとっては周知であるかまたは自明であろう。異なる抑制ポリマーの混合物も使用可能である。
【0060】
<活性剤:>
本発明のデリバリーシステムを用いて局所的に付与可能な、生物学的または化粧品としての活性を有する皮膚活性もしくは皮膚に有効な物質のいくつかの例としては、以下のものが含まれる:プロシアニジン低重合体などの植物学的に誘導されたポリフェノールを含んだ抗酸化剤;遊離基捕獲物質(フリーラジカルスカベンジャー);局所的に活性な酵素、例えばグルコースオキシダーゼなどの抗菌性物質、超酸化ディスムターゼ(dismutase)などの抗酸化剤、ブロメラインやパパインなどのタンパク質分解酵素(酵素剥離に有用);前記したDNA補修酵素などその他の酵素;酢酸レチノール、パルミチン酸ビタミンAを含むレチノール及びレチノールエステルなどの剥脱性レチノイド;純化した植物抽出物及び植物性タンパク質;例えばブドウの種油、ひまわり油、べにばな油、ホホバ油などの植物油;リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸;例えばコラーゲン、エラスチン、ケラチンなどの動物性タンパク質;ヒアルロン酸やその他のグリコサミノグリカンなどの湿潤剤;アルブチン(arubutin)などの白色化剤;紫外線フィルタ;チタニウム、亜鉛、鉄酸化物などの被覆されたもしくは被覆されていない有機または無機顔料、及びそのような無機酸化物の抗光化学作用性懸濁物や分散物;メラニンあるいはセピアインクの抽出物;その他の着色剤または染料、及び香料。
【0061】
顔料や香料は、それらが内部に組み入れられる担体ゲルビーズの美的な魅力を高める役割を有している一方、ゲルビーズが皮膚やその他爪及び髪の毛などの内生面上に施されつぶされたとき、活性剤の抑制された放出を開始するという化粧品としての機能も果たし得る。活性剤の放出は、使用者によってある程度制御可能である。すなわち、例えば使用者は、本発明による香料入りのゲル−複合体ビーズを含んだボディークリームを、充分に香料が放出されたと分かるまでしっかり広げてもよいし、あるいは口紅、メーキャップ、ファウンデーション、その他の顔料入り化粧品を、その色が好みのものになるまで広げてもよい。担体ビーズ及びその成分の各比率は、放出が継続されて、色または芳香の強度を持続するように調整可能である。さらに使用者は、目では見えないほど小さいビーズの場合、つぶされないで残っているゲルビーズを後でさらにつぶして広げ、活性剤を新たに加えることもできる。
【0062】
一般に、抑制ポリマーと良好に結合し、皮膚との接触によって放出可能であればどんな活性剤でも使える。本発明のポリマー−ゲル複合体ビーズ内に組み入れられそれによって保護されている不安定な活性剤を補充することによって、既知の化粧品から多くの新規な配合物及び強化物が得られることは、当業者にとって自明であろう。そのような1つの製品は、太陽光線への露出に対する新規な予防的及び治療的処置を与える各活性剤の混合物から成り、例えば二酸化チタンなどの紫外線吸収剤または遮蔽剤、例えばビタミンEなどの抗酸化剤、DNA補修酵素が、本発明による寒天−ポリマー複合体ビーズ内に組み入れられる。所望なら、メラノサイト(メラニン形成細胞)刺激物を含めてもよい。このようなビーズはそれ自体で用いることもできるし、あるいは通常のクリームやローションに組み入れることもできる。
【0063】
<好ましい活性剤:>
本発明のゲル担体粒子によって付与される活性剤の特に好ましいいくつかの例は次の通りである:アスコルビン酸(ビタミンC)、アルファ−トコフェノール(ビタミンE)、酢酸トコフェロール(酢酸ビタミンE)、純化したパパイン抽出物、ベータ−カロチン、ポリフェノールが豊富な緑茶抽出物、ブドウの種やパイナップルの皮から得たプロシアニドリック低重合体の純化抽出物、D&Cオレンジなどのモノアゾイック染料、キサンチン染料(重ナトリウム塩)、桂皮酸、及びオクチルメトキシ桂皮酸。
【0064】
驚くべきことに、これらの物質はすべて、本発明の保護ゲル担体粒子に組み入れられる、第四アンモニウム基を含んだ変形でんぷんの抑制ポリマーに対して有効に結合可能で、局所的に施されるとき、それらの活性もしくは化粧品特性を保持しているように化粧品クリーム内に配合可能である。さらに、複数のかかる活性剤を、適切な抑制ポリマーに同じように結合して保護性ゲル担体粒子に組み入れ、例えば3つの着色剤で着色したビタミンCとEの抗酸化剤の組み合わせや、1つ以上の着色剤をパパインと組み合わせ、残りを好ましい活性剤と組み合わせたものなど、それぞれの所望な特性を局所的な配合でエンドユーザに付与することができる。
【0065】
活性剤の好ましい1つの種類は陰イオン性で、活性剤が結合する特に好ましい抑制ポリマーは、陽イオン性で多くの陰イオン性活性剤と安定なイオン結合を形成可能な第四アンモニウム基を含んだ変形多糖類である。
【0066】
<水:>
水も本発明の担体粒子の重要な成分であり、コロイド状の寒天粒子が分散して半固体または固体に近いゲルを与えるための媒体となる。場合によっては、その他の水性媒体である有極性アルコールやグリコールも水の代わりに使える。本発明の寒天ビーズを調製する際には、寒天とその他の成分を水と混合し、暖かい溶液または分散液として、滴を発生するように制御された速度でニードルを通して射出し、その後冷却してゲルに硬化させる。
【0067】
<比率:>
固体対水の比率は、固体を溶解または分散させるのに充分であると共に、滴が射出ニードルを出た後油媒体内で所望のゲルが形成されるまで、固体が溶解または分散したままの状態となるのを保証するのに充分な値とすべきである。
【0068】
固体は約0.5から約40重量パーセント、より好ましくは約1.5から約25重量パーセントの溶液または分散液からなるのが好ましい。抑制ポリマー14対寒天12の相対比率は1:10まで低くできるが、活性剤16(ヒアルロンなど、場合によってはそれ自体がポリマーである)の望ましい装填率を得るために抑制ポリマー14対寒天12の比として少なくとも1:1から約10:1までが望ましい。好ましくは、約2:1から約6:1までの比率が使われる。
【0069】
活性剤16を抑制ポリマー14に付加するものとすると、活性剤16の比率は通常、粒子の一体性に影響を及ぼさない範囲または保管中に許容し得ない不安定性を生じない範囲で、できるだけ高くする。望ましい対象物である活性剤の実際の最大装填率は、活性剤16の性質に応じてかなり変化すると共に、抑制ポリマー14の量と通常関連している。活性剤の有効性及びその物理的形態などその他の因子に応じて、活性剤対抑制ポリマーの比は約0.01:1から約10:1、好ましくは約0.1:1から約5.0:1までの範囲で取り得る。また活性剤は射出ニードルにおいて、約0.01から約20パーセント、より好ましくは約0.1から約10パーセントの溶液または分散液からなるのが好ましい。
【0070】
上記の相対比率は、前述したように重量を基準としており、また射出ニードルにおける溶液または分散液の成分に基づいている。適切な製造または生成手順を用いれば、多少の変動はあるとしても、上記の比率は最終製品である寒天複合体ゲルビーズそのものにほぼ反映されるはずである。
【0071】
<化粧品配合物:>
化粧品配合物、希釈液または化粧品媒介物は、身体表面を洗浄、美化、調整あるいは保護する目的で、皮膚や髪の毛、爪に外部から施される組成物である。化粧品配合物は、クリームまたはローション形状の油内水または水内油の乳状液、態様光線遮蔽剤、トナー、アストリンゼン(収斂剤)、顔面メーキャップ、パウダー、皮膚洗浄の各組成物を含むが、これらに限定されるものではない。かかる組成物の処方は当業者にとって周知であり、関連分野の多くの刊行物に見いだすことができる。本発明を実施する際に使用可能ないくつかの化粧品「希釈剤」の要約は、 Wolf らの米国特許 No.5,449,519、例えば第4欄25行目から第6欄56行目に記載されており、同特許の開示内容は参照によってここに包含されるものとする。本発明のゲル−複合体粒子は一般に、そのような化粧品組成物や「希釈液」内に組み入れるのに適しており、従って本発明は、例えば新たな活性成分、活性成分の新たな濃度、あるいは活性の損失がより少ない活性成分の単なるより良好な付与など、ゲル−複合物粒子の存在によってもたらされる有利な性質を有する、ゲル−複合物粒子を含んだ最終的に得られる組成物にも拡張される。
【0072】
本発明のゲルビーズは上記のような化粧品組成物において、施された際に有効量の活性剤を与える任意の所望な濃度または比率、例えば総組成物のうち約0.1から90重量パーセント、好ましくは1から50重量パーセント、より好ましくは5から25重量パーセントで用いることができる。
【0073】
<製 造:>
図3に示すように、低温でゲルを形成するのに有効な寒天対水の比率を用いて、寒天を溶解するのに充分な高温に加熱された脱イオン水または蒸留水中に粒状寒天を溶解し、熱い状態の寒天溶液を一般に約30℃である寒天溶液のゲル化点より高い適切な中間温度に冷却し、冷却した溶液を所望の寒天ビーズサイズに従って寸法決めされた射出ニードルを通して、寒天のゲル化点より低くビーズ形成に適する温度に維持された疎水性液中に、ビーズの形成に合うように制御された射出速度で射出することによって寒天ゲルビーズを製造することは知られている。図3の図示例に示してあるように、溶解寒天は約50℃に冷却されてから、例えばパラフィン浴など約25℃の油媒体中に射出される、射出ニードルから離れるに従って寒天ゲルビーズは固化する。
【0074】
本発明の方法では、適切な抑制ポリマーと該当があれば水または水性溶媒系内に溶解または分散した活性剤とを、疎水性液中への射出前に、寒天溶液と混合する。適切な抑制ポリマーと多くの活性剤は、一般に温度に対して安定であり、寒天粒状物と混合して高温に加熱し、全成分の透明な溶液を得ることができる。例えば酵素など安定性の低い活性剤は、中間温度の寒天−ポリマー溶液、好ましくは水性の溶液または懸濁液に導入可能である。
【0075】
寒天混合物とパラフィン浴の各温度は、製造するビーズの種類すなわちその成分に基づき、皮膚上でつぶして広げられる分離可能且つ注入可能なビーズを得るという目標に合わせて選択及び調整される。特に両者の温度は、熱い状態の寒天溶液の粘性が、射出ニードルを通して混合物をポンプ吐出可能な程度に充分低いことを保証するように調整される。粘性は異なるビーズ配合物に応じて変化し、イオン性活性剤の濃度を高めることによって増大する。
【0076】
ゼラチン状ビーズを形成するその他の方法は当業者にとって周知または自明であり、本発明の目的に応じて適応可能である。例えば、暖かい寒天溶液の滴を低温の油浴中へ射出する代わりに、暖かい寒天溶液を低温の油性媒体上に上方から滴下してもよい。最も効率的な方法は、暖かい寒天溶液を低温の混合しない油などの中で、攪拌機を使って機械的に分散することである。攪拌の速度あるいは度合いによって、製造されるゲルビーズのサイズが決まる。
【0077】
所望であれば、活性剤と抑制ポリマーを予備工程で予め混合し、抑制ポリマーに対する活性剤の結合を促進させることもできる。また所望であれば、予備の混合工程中に、脂肪親和性の溶媒を用いて脂肪親和性の酸を抑制ポリマーに結合することも可能で、この場合脂肪親和性の溶媒は寒天溶液との混合前に、蒸発またはその他の方法で除去される。
【0078】
こうして得られたビーズは、寒天マトリックス内に捕捉された、活性剤を含む抑制ポリマーの複合物から成る。ビーズは柔らかく、透明で、艶があり、無臭で美的にも優れ、pHに対し安定であると共に、約80℃までの温度に対しても安定である。ビーズの硬度もしくは軟度は、ビーズの成分に応じ処理パラメータを適切に選択することによって注意深く選定し、ビーズがドラムから配合容器などへ移すのに便利よく取り扱える程度に充分硬く、且つミキサーやホモジェナイザー内で破壊しない程度に充分硬い一方、皮膚上でつぶれる程度に充分柔らかく、さらには広がって「消失する」程度に充分柔らかくなるのが好ましい。
【0079】
硬度に影響を及ぼす主要なパラメータは寒天濃度(濃度が高いほどビーズは硬くなる)であるが、油性の活性剤はビーズを軟化させ、また抑制ポリマーの濃度と組成もビーズの硬度に影響を及ぼす。これらのパラメータは、ビーズがつぶれる際ソフトで心地よい感触をもたらす、所望の硬度を与えるように選択及び制御されるのが好ましい。
【0080】
図4に概略的に示した製造プロセスを参照すれば、寒天粒状物12,抑制ポリマー14、及び安定な活性剤16が用いられる場合はその活性剤を、混合工程24で脱イオン化水あるいは蒸留水中に溶解また必要に応じて分散し、この工程は高温、好ましくは約70℃と約100 ℃の間、より好ましくは約85℃と約95℃の間、つまり約90℃で行われる。これを加熱すると、懸濁液は透明な溶液になる。
【0081】
溶液または分散液は随意冷却工程26で、ゼラチンを沈殿させるためより少ない熱が溶液または分散液から消失するように、溶液または分散液のゲル化点より高い中間温度に冷却される。中間温度は約40℃から約70℃、好ましくは約50℃から約60℃の範囲とし得る。例えば酵素など、水中に溶解または分散されている安定性の低い活性剤は、高温の有害な影響を避けるため、中間温度で寒天−ポリマー溶液中に組み入れあるいは混合可能である。酵素を含む溶液は、ほぼ60℃の温度で生じる変性を避けるため、約50℃近くに保つべきである。
【0082】
好ましくは温度安定化工程28において、例えば約50℃の温度に維持された水ジャケットあるいは水浴を用い、溶液は中間温度で温度安定化される。
【0083】
その後油中射出工程30において、液状の溶液または分散液は、溶液または分散液のゲル化点より低い温度、つまり約30℃以下、好ましくは約25℃以下、さらに好ましくは0℃から10℃に維持され液状のパラフィン油浴中に浸漬されたニードルを通してポンプ吐出される。水と油は混合しないので、ポンプ吐出された寒天、ポリマー及び活性剤の暖かい溶液は、油中へ射出される際に滴を形成する。低い温度にある油が滴の形状を「凍結」して、寒天媒体をゲル化させ寒天−ポリマー複合体ビーズ10を形成する。あるいは、上記の混合工程24から直接、ビーズ形成に適切な冷却を与えるような速度で、熱い状態の寒天溶液を低温の油中に導入してもよい。
【0084】
その後分離工程32で、寒天−ポリマー複合体ビーズ10を分離し、洗浄してパラフィン油を取り除き、フィルタにかけて乾燥する。
【0085】
図5を参照すれば、図示した本発明の別の方法では、寒天−抑制ポリマー溶液を低温の油浴中にニードル射出する必要がない。混合工程24及びオプションの冷却工程26で熱いあるいは暖かい状態の寒天−ポリマー溶液を調製し、適切な時点で活性剤16を添加することは、図4に示したプロセスと同様である。その後、暖かい状態の水相寒天溶液(または分散液)を、例えば回転パドル(水掻き)で攪拌しながら、充分過剰な量の低温油中に導入する。油浴中に浸漬した中空のニードルを通して溶液を供給する場合の比較的遅く且つ難度の高いプロセスでなく、比較的速く且つ単純な注入工程で、水相を低温の油中に充分導入できる。2つの相の各成分は相互に混合不能に選択され、分散液を攪拌しながらビーズが形成されるようにする。ビーズの平均サイズは攪拌速度によって制御でき、好ましくは5mm以下、より好ましくは約2ミクロンから約1.5mmの範囲である。
【0086】
直径がほぼ2mmまでの大きいゲル粒子またはビーズは着色可能で、活性剤を充填でき、透明なゲルに形成可能で、着色剤及び活性剤は射出溶液または分散液中に組み入れられている。ニードルの直径あるいは油浴の攪拌速度を調整することで異なるサイズのビーズを製造でき、攪拌速度は高いほど小さいビーズが得られる。
【0087】
本発明の実施に関するいくつかの実施例を、以下例示として説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例1】
【0088】
ポリクウォータニウム24を用いた寒天複合体ビーズの調製
ゲル化点が約33℃の1.5gの寒天粒状物(OSI−仏国)と1.5gのポリクウォータニウム24[商標 QUATRISOFT LM-200、Union Carbide Corporation(Amerchol−仏国)]とを、97gの蒸留水と混合し、90℃に加熱する。懸濁液はその温度で透明な溶液となり、その後水浴中で50℃に冷却する。次いでその溶液を蠕動ポンプ(Bioblock−仏国)を用いニードルを通してポンプ吐出し、ニードルは5 ℃に維持された液状パラフィン油浴内に配置し、その間混合(250rpm)を続ける。油相内にゲルビーズが形成され、ビーズのサイズはニードルの内径に依存する。本実施例においては、2つの異なるサイズのニードル、すなわち0.45×12mmと0.8×50mm(内径×長さ)のニードルを用いた。ゲルビーズは0.2mmのスクリーンでフィルタにかけて分離し、水で充分に洗浄する。本実施例では、直径2mmのビーズが一般に形成される。より高い混合速度(例えば1200rpm)を用いればより小さいビーズが形成される一方、より小さい直径のニードルはビーズの小径を維持するのを助ける。形成されたゲルビーズは滑らかで、光沢があり、柔らかである。驚くべきことに、抑制ポリマーの存在は、油中で冷却されたときにゲル化して安定なビーズを形成する寒天の能力を有意に変化させていない。
【実施例2】
【0089】
陰イオン共重合体としてヒアルロン酸を用いた寒天複合体ビーズの調製
ポリクウォータニウム24に代えてヒアルロン酸(Soliance−仏国)を寒天に混合した点を除き、実施例1の手順に従った。この手順によって形成されたビーズは、ヒアルロン酸を付与する湿潤剤あるいはヒアルロン酸に付着または結合された陽イオン性活性剤用のデリバリーシステムとして用いるのに適している。
【実施例3】
【0090】
ステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロースを用いた寒天複合体ビーズの調製
ポリクウォータニウム24の代わりに、7.5gのステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロース(商標 CRODACEL QS、Croda, Inc.)とした点を除き、実施例1と同じ手順を用いた。5℃の油浴中への射出後、同様のビーズが得られる。
【実施例4】
【0091】
酵素パパインを含む寒天複合体ビーズの調製
1.5gの寒天と7.5gのステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロースとを、56gの蒸留水と混合し、混合しながら90℃に加熱して透明な溶液を得る。この混合物を60 ℃に冷却した後、30gの蒸留水中に溶解した5gのパパインを溶液に加える。混合物を水浴中で50℃に維持した後、5℃の液状パラフィン油内に混合(250rpm)しながら射出する。直径2mmのビーズが形成され、分離され、水で洗浄される。
【実施例5】
【0092】
着色剤を含む寒天複合体ビーズの調製
前記各実施例の手順に従い、1.5gの寒天、7.5gのステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロース、及び0.5gの FD&C Blue(Colorants Wackherr−仏国)を、90.5gの蒸留水中に一緒に分散する。直径2mmのビーズが油浴中に形成され、次いでビーズを分離し、水で洗浄する。
【実施例6】
【0093】
植物抽出物を含む寒天複合体ビーズの調製
前記各実施例の手順に従い、0.6gの寒天、0.2gのステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロース(商標)、1.0gのポリクウォータニウム24、及び1.0gの緑茶抽出物(Rahn AG−スイス国)を、30gの蒸留水中に分散し、混合しながら90℃に加熱する。直径2mmのビーズが油中に形成され、次いでビーズを分離し、水で洗浄する。
【実施例7】
【0094】
脂肪親和性活性剤のベータ−カロチンを含む寒天複合体ビーズの調製
1.5gの寒天を70.5gの水中に分散し、混合しながら90℃に加熱して透明な溶液を得、これを60℃に冷却する。その後、7.5gのステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロースと、予め油中に分散した0.5gの b−カロチン(Cooperation Pharmaceutique FranHaise−仏国)とを、20gの蒸留水中に分散し、上記の溶液と混合する。抑制ポリマーが、脂肪親和性 b−カロチンの分散を容易としている。混合物を50℃に維持した後、ニードル(0.45×12mm)を通して、5℃の液状パラフィン油内に混合しながら射出する。する。こうして得られた b−カロチンを含むビーズは、平均2mmの直径を有する。
【実施例8】
【0095】
親水性及び脂肪親和性活性剤であるビタミンCとビタミンEの両方を含む寒天複合体ビーズの調製
前記実施例7の手順に従い、1.5gの寒天、7.5gのステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロース、7.5gのアスコルビン酸(Cooperation Pharmaceutique FranHaise−仏国)、及び2.5gの a−トコフェノール(Fluka−スイス国)を、81gの蒸留水中に分散する。ビタミンCとビタミンEを含む直径2mmのビーズが油相中で得られ、次いでビーズを分離し、水で洗浄する。
【実施例9】
【0096】
顔料を含む寒天複合体ビーズの調製
前記実施例7の手順に従い、1.5gの寒天、1.5gのステアリン酸ジモニウム ヒドロキシエチルセルロース、5gの二酸化チタニウム(ADF Chimie−仏国)、及び2.5gの酸化鉄(Kobo Products−米国)を、89.5gの蒸留水と混合する。顔料を含む直径2mmのビーズが油相中に形成され、次いでビーズを分離し、水で洗浄する。
【実施例10】
【0097】
寒天複合体ビーズの調製方法の変形
前記各実施例の手順に従い、前記した各種の添加成分を含む透明な寒天溶液を50℃に維持してから、ニードルを通じてポンプ射出する。但し本実施例では、ニードルをパラフィン油浴の表面上方10cmの位置に配置する。個々の滴は空中で形成され、冷却した液中に落下してビーズを形成する。こうして得られたビーズは上記のビーズと同じ外観を有するが、平均サイズは油浴の攪拌速度にも依存する。同一種のニードルを用い、攪拌速度を100ppmから250ppmの範囲で変えることで、直径0.5mmから2mmのビーズを形成できる。形成されたゲルビーズは滑らかで、柔らかで、光沢がある。
【実施例11】
【0098】
攪拌下分散による寒天複合体ビーズの調製
1.5gの寒天と7.5gの水性 Crodacel-QS(1.5gのPG−ヒドロキシエチルセルロース ステアリン酸ジモニウム 塩化物を含む)とを、91gの水と混合し、90℃以上の温度で15分間加熱する。この混合物を50℃に冷却した後、10℃で350mLのパラフィン油を含んだ1000mLビーカーに注入し、その間油相はモータと約200rpmで回転するU字状のパドルを使って攪拌する。ほぼ1ミリの水相ビーズが油相中に形成され、油の低い温度がゲル化を誘起する。約10分後、500ミクロンのステンレス鋼製ふるいで油相をフィルタ分離した後、得られたビーズを充分に水で洗浄する。
【実施例12】
【0099】
攪拌下分散によるビタミンE入り寒天複合体ビーズの調製
本実施例では、捕捉される成分のビタミンEが感熱性で、80℃に加熱されると損傷する恐れがある。そこで、ビタミンEを加える前に寒天溶液を冷却する。1.5gの寒天を50gの水と混合し、80℃以上の温度で15分間加熱する。これとは別に、7.5gの水性 Crodacel-QS(1.5gのPG−ヒドロキシエチルセルロース ステアリン酸ジモニウム 塩化物を含む)を、2gのアルファ−トコフェノール(Roche−スイス国)及び39gの水と混合する。寒天混合物を約60℃に冷却した後、Crodacel-QS 混合物を加える。こうして得た混合物をさらに約50℃に冷却した後、10℃で350mLのパラフィン油を含んだ1000mLビーカーに注入し、その間油相はモータと約200rpmで回転するU字状のパドルを使って攪拌する。ほぼ1ミリの水相ビーズが油相中に形成され、油の低い温度がゲル化を誘起する。約10分後、500ミクロンのステンレス鋼製ふるいで油相をフィルタ分離した後、得られたビーズを充分に水で洗浄する。
【実施例13】
【0100】
ポリクウォータニウム11を用いた寒天複合体ビーズの調製
Crodacel-QSに代えて、ポリクウォータニウム11(Gafquat 755N)の20%水溶液を10g用いた点を除き、実施例11の手順を繰り返した。
【実施例14】
【0101】
陽イオン抑制ポリマーとしてのセテアリルアルコール及びベヘン酸トリモニウム塩化物と小麦の加水分解タンパク質との組み合わせを用いた寒天複合体ビーズの調製
1.5gの寒天を50gの水と混合し、この調製物を80℃を越える温度で15分間加熱する。1.5gの Incroquat Behenyl TMC(セテアリルアルコールと結合したベヘン酸トリモニウム 硫酸メチル)を80℃に加熱する。これとは別に6gの水を90℃に加熱し、溶解したIncroquat Behenyl TMC にゆっくりと加え、15分間混合して乳状液を得る。この乳状液に、0.5gの小麦の加水分解タンパク質を加えた後、50℃に冷却する。寒天溶液が60℃に冷却したら、これをタンパク質を含むIncroquat Behenyl TMC乳状液と混合する。40.5gの水をこれに加えて混合し、1000mlビーカー内に入れられた350mlのパラフィン油からなる油相中に、200rpmで混合しながら注入する。こうしてビーズが形成され、それを実施例11で説明したようにふるいにかけて分離する。
【0102】
実施例11−14の方法で形成されたゲルビーズは滑らかで、柔らかで、光沢があり、美的外観に優れ、臭いはほとんどないか全くない。それらゲルビーズは室温で安定で、皮膚上で簡単につぶすことができ、心地よいクールな感覚でビーズの中身を局所的に広げることを可能とする。
【0103】
<活性度テスト>
寒天複合体ビーズ内への捕捉後におけるアスコルビン酸の活性度
活性剤が混合した寒天ビーズ内への捕捉後も安定のままであるかどうかを判定するため、アスコルビン酸の活性度をDPPHテストによって測定した。このテストでは、525nm(紫色)に吸収帯を有する安定なフリーラジカル(遊離基)である 2,2 diphenyl-1-picrylhydrazyl (DPPH) を用い、抗フリーラジカル剤による減少によってその吸収帯が消えることを利用する。
【0104】
アスコルビン酸は混合する寒天ビーズ内に、実施例8の手順で述べたように捕捉される。それぞれアスコルビン酸を平均含有量で2.25mg含み、重量がほぼ30mgで、直径が2mmの3つのビーズを、3.5mlのメタノールDPPH溶液(DPPH濃度0.6x10−5モル)に加えた。
【0105】
各ビーズを試験管内でつぶしたところ、DPPHの呈していた紫色は数秒以内に消失した。この実験により、本発明に従って複合化した寒天ビーズ内に捕捉されたアスコルビン酸は、そのフリーラジカル捕獲作用を保持していることが実証された。
【0106】
以上本発明の新規なゲル粒子デリバリーシステムを含んだ組成物の局所的塗布について言及したが、そのようなゲルデリバリーシステムの一部は、身体の組織、例えば傷ついた組織や、その他、活性剤特に賦形剤中に分散された活性剤の抑制可能な放出保護が重要な環境、及び結合した活性物の放出を容易に開始可能な環境に対しても適用でき、有利な結果が得られることが理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は特に、例えばゲル−複合体ビーズを含むクリーム、ゲル(ジェル)及びローション、さらにはゲル−複合体ビーズそのものなどの新規な消費者用の化粧製品を提供している化粧品産業で用いるのに適している。
【0108】
さらに、本発明の寒天複合体ビーズが有している、不安定で生物学的に活性な物質を表皮に付与する能力によって、紫外線やその他の太陽光線による損害に対して3つの防御線を与える新規な抗光化学作用の化粧品組成物が企図と可能となる。第1の防御線は、例えば酸化亜鉛や二酸化チタニウム分散液など、紫外線やその他の望ましくない放射を遮蔽するフィルタ作用剤である。第2の防御線は、例えばビタミンCやビタミンEなど、分子レベルにおける損傷を補修あるいは防止するフリーラジカル捕獲物質である。第3の防御線は、遺伝子レベルにおける損傷を補修する前述したようなDNA補修酵素である。これら3つの防御剤は、本発明の別の観点によれば、個々の防御剤について有効なことが知られている各量で当業者にとって周知な賦形剤と配合した、単一の抗光化学作用組成物として提供可能となる。ここで説明した寒天−複合体ゲルビーズは、DNA補修酵素、さらに場合によってフリーラジカル捕獲物質、及びオプションとしての遮蔽剤用の特に好ましい付与媒介物を提供する。上記3つの防御剤全てを同じビーズ内に入れてもよいが、別の選択肢として、エンドユーザが皮膚上で複数のビーズをつぶして広げることにより活性剤の適切な混合物を発生可能なように、3つの防御剤が最終製品内にほぼ一様に分布されることを条件として、異なる防御剤毎に異なるビーズを用いたり、防御剤の適宜組み合わせを用いてもよい。そのような3つの防御線の抗光化学作用組成物で用いることのできる個々の防御剤の等価物、及びそれらをここで説明したゲルビーズ以外の化粧品や治療用組成物に付与するその他の手段は、当業者にとって自明であろう。
【0109】
以上本発明のいくつかの例示としての実施形態を説明したが、もちろん、上述した実施形態の各種変形及び等価物が当業者にとって自明であることは理解されるべきである。一部の等価物は当業者にとって容易に認識されるものである一方、他の等価物は慣例的な実験を必要とするに過ぎないあろう。かかる変形及び等価物も、添付の請求の範囲によってのみ制限され定義される発明の精神及び範囲内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】寒天ビーズの形をした、本発明に基づく化粧品ゲル粒子担体の実施の形態の概略図である。
【図2】使用者の皮膚上でつぶされている、図1に示した寒天ビーズのいくつかを示す概略図である。
【図3】寒天ゲルビーズを作製するための従来法の概略図である。
【図4】本発明に基づいて寒天−ポリマー複合ビーズを製造する一つの方法のブロック流れ図である。
【図5】本発明に基づいて寒天−ポリマー複合ビーズを製造する別の方法のブロック流れ図である。
【符号の説明】
【0111】
10…寒天粒子
12…寒天ゲル
14…抑制ポリマー
16…活性剤
18…ユーザ
20…皮膚細胞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくない放射を遮蔽するフィルタ遮蔽剤とフリーラジカル捕獲物質とを含む局所塗布用の抗光化学作用化粧品組成物であって、さらにDNA補修酵素を含むことを特徴とする抗光化学作用化粧品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−145859(P2007−145859A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28252(P2007−28252)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【分割の表示】特願平10−547877の分割
【原出願日】平成10年5月1日(1998.5.1)
【出願人】(502156364)コーボー プロダクツ インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】KOBO PRODUCTS INC.
【住所又は居所原語表記】690 Montrose Avenue, South Plainfield, NJ 07080, U.S.A.
【Fターム(参考)】