説明

屈折率測定装置および糖分濃度測定装置並びにその方法

【課題】容易かつ高精度に測定対象物の屈折率を測定することができる屈折率測定装置を提供する。
【解決手段】入射させた照明光を内面反射させて端面まで導く導光ロッド10と、導光ロッド10の端面から所定位置における導光ロッド10からの光の光束径を測定するラインセンサー20と、ラインセンサー20により測定された光束径から導光ロッド10からの光の拡がり角を算出し、該拡がり角に基づいて導光ロッド10の側面に接触する試料Sの屈折率を算出するCPU30とを備える屈折率測定装置1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率測定装置およびこれを備える糖分濃度測定装置並びにその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屈折率が既知の物質と測定対象物とを光学的に接触させ、その境界面において全反射が起こる光の入射角(臨界角)を測定することで、測定対象物の屈折率を測定する屈折率測定装置が知られている(例えば、特許文献1から3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−162561号公報
【特許文献2】特開2005−257319号公報
【特許文献3】特開2003−322616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1から3に開示されている屈折率測定装置によれば、視野内において屈折率の境目を示す像を見つけ出し、鏡筒を動かしてこの境目を基準に合わせ、そのときの角度を基に屈折率を算出していた。このため、測定対象物の屈折率の測定に手間がかかっていた。また、その測定精度の誤差が大きいという不都合があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、容易かつ高精度に測定対象物の屈折率を測定することができる屈折率測定装置およびこれを備える糖分濃度測定装置並びにその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様は、入射させた照明光を内面反射させて端面まで導く導光ロッドと、前記導光ロッドの端面から所定位置における前記導光ロッドからの光の光束径を測定する測定部と、前記測定部により測定された光束径から前記導光ロッドからの光の拡がり角を算出し、該拡がり角に基づいて前記導光ロッドの側面に接触する試料の屈折率を算出する算出部とを備える屈折率測定装置である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、屈折率を測定する試料を導光ロッドの側面に接触させた状態で、導光ロッドに入射させた照明光が、導光ロッドの内側面を反射して端面まで導かれる。そして、導光ロッドの端面から光が射出され、該端面から所定位置における光の光束径が測定部により測定される。そして、算出部により、このように測定された光束径から導光ロッドからの光の拡がり角が算出され、該拡がり角に基づいて導光ロッドの側面に接触する試料の屈折率が算出される。
【0008】
この場合において、導光ロッドの端面から射出された光は、導光ロッドと試料との界面において複数回全反射されている。これにより、導光ロッドからの光の拡がり角の角度分布を急峻なものとすることができ、該拡がり角に基づいて算出される試料の屈折率の精度を向上させることができる。また、従来の屈折率測定装置のように、屈折率の境目を示す像を肉眼で見つけ出したり、鏡筒を動かす必要がない。すなわち、本発明の第1の態様によれば、容易かつ高精度に試料の屈折率を測定することができる。
【0009】
上記態様において、前記算出部が、前記所定位置における光の光束半径をh、前記導光ロッドの端面と前記所定位置との距離をf1、光の拡がり角をθとした場合に、以下の式に基づいて光の拡がり角を算出することとしてもよい。
h=f1×tanθ
【0010】
このようにすることで、光の拡がり角(光の光軸となす角)を容易に算出することができ、該拡がり角に基づいて導光ロッドの側面に接触する試料の屈折率を算出することができる。
【0011】
上記態様において、前記導光ロッドの端面に焦点位置が配置され、前記導光ロッドからの光を平行光にして前記所定位置に射出する光学系を備え、前記算出部が、前記所定位置における光の光束半径をh、前記光学系の焦点距離をf2、光の拡がり角をθとした場合に、以下の式に基づいて光の拡がり角を算出することとしてもよい。
h=f2×tanθ
【0012】
このようにすることで、光の拡がり角(光の光軸となす角)を容易に算出することができ、該拡がり角に基づいて導光ロッドの側面に接触する試料の屈折率が算出することができる。また、光学系により導光ロッドからの光を平行光にすることができるため、光束径を測定する位置(所定位置)を光軸方向において任意の位置にすることができるとともに、光束径を不要に拡げてしまうことを防止して、測定部による測定範囲を制限することができる。
【0013】
上記態様において、前記算出部が、前記導光ロッドからの光の拡がり角から前記導光ロッド内において全反射を起こす前記試料への入射角を算出し、以下の式に基づいて前記試料の屈折率を算出することとしてもよい。
θc=arcsin(n2/n1)
ここで、
θc:前記導光ロッド内において全反射を起こす前記試料への入射角
n1:前記導光ロッドの屈折率
n2:前記試料の屈折率
【0014】
このようにすることで、導光ロッドからの光の拡がり角から、導光ロッド内において全反射を起こす試料への入射角を算出し、試料の屈折率を容易に算出することができる。
【0015】
上記態様において、前記導光ロッドが、照明光を入射させる第1端面と、該第1端面とは他端側に配置され、内面反射して導かれてきた光を反射する第2端面とを有することとしてもよい。
【0016】
このように構成することで、第1端面から入射した照明光を、導光ロッドの内側面により反射を繰り返して第2端面まで導くとともに、第2端面により反射して再び第1端面まで導くことができる。このようにすることで、導光ロッドと試料との界面における全反射の回数を増加させることができる。これにより、導光ロッドからの光の拡がり角の角度分布を急峻なものとすることができ、該拡がり角に基づいて算出される試料の屈折率の精度を向上させることができる。また、導光ロッドの構造を簡易なものとすることができる。
【0017】
上記態様において、前記導光ロッドに入射させる照明光の波長を調節する波長調節部を備えることとしてもよい。
このように構成することで、導光ロッドに入射させる照明光の波長を波長調節部により調節しながら、波長毎の試料の屈折率を算出することができ、試料の屈折率の精度を向上させることができる。
【0018】
本発明の第2の態様は、上記の屈折率測定装置と、前記導光ロッドからの光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定部と、前記スペクトル測定部により測定された波長スペクトルおよび前記算出部により算出された前記試料の屈折率から、前記試料の糖分濃度を多変量解析により演算する演算部とを備える糖分濃度測定装置である。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、屈折率測定装置により試料の屈折率を算出するとともに、スペクトル測定部により導光ロッドからの光の波長スペクトルを測定することができる。そして、このように算出された波長スペクトルおよび試料の屈折率から、演算部により試料の糖分濃度を多変量解析により演算することができる。このように試料の糖分濃度を演算することで、単純に試料の屈折率から糖分濃度を演算する場合に比べて、その測定精度を向上することができる。
【0020】
本発明の第3の態様は、入射させた照明光を内面反射させて導光ロッドの端面まで導く導光ステップと、前記導光ロッドの端面から所定位置における前記導光ロッドからの光の光束径を測定する測定ステップと、前記測定ステップにより測定された光束径から前記導光ロッドからの光の拡がり角を算出し、該拡がり角に基づいて前記導光ロッドの側面に接触する試料の屈折率を算出する算出ステップとを含む屈折率測定方法である。
【0021】
本発明の第4の態様は、上記の屈折率測定方法と、前記導光ロッドからの光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、前記スペクトル測定ステップにより測定された波長スペクトルおよび前記算出ステップにより算出された前記試料の屈折率から、前記試料の糖分濃度を多変量解析により演算する演算ステップとを含む糖分濃度測定方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、容易かつ高精度に測定対象物の屈折率を測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る屈折率測定装置の全体構成図である。
【図2】屈折率の測定原理を説明する図である。
【図3】図1の屈折率測定装置の部分拡大図である。
【図4】導光ロッドから射出される光の角度特性についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】導光ロッド内における全反射角を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る糖分濃度測定装置の全体構成図である。
【図7】図6のCPUにより実行される処理を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の変形例に係る糖分濃度測定装置の全体構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る糖分濃度測定装置の全体構成図である。
【図10】本発明の第2の変形例に係る糖分濃度測定装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
以下に、本発明の第1の実施形態に係る屈折率測定装置1について、図1から図5を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る屈折率測定装置1は、図1に示されるように、光源25と、波長調節装置(波長調節部)35と、レンズL1と、ハーフミラー15と、導光ロッド10と、レンズL2と、ラインセンサー(測定部)20と、CPU(算出部)30と、モニタ31と、制御装置38を備えている。
【0025】
光源25は、広帯域な波長成分を有する照明光をハーフミラー15に向けて射出するようになっている。光源25の射出光軸上には、後述する波長調節装置35と、波長調節装置35からの照明光を集光するレンズL1とが配置されている。
【0026】
波長調節装置35は、光源25の射出光軸上に配置されたフィルタホイール36と、フィルタホイール36を光源25の射出光軸に沿う回転軸回りに回転させる回転部37とを備えている。フィルタホイール36は、互いに異なる波長帯域の光を透過させる複数のバンドパスフィルタが搭載されている。
【0027】
このような構成を有することで、波長調節装置35は、後述する制御装置38からの指令に基づいて回転部37によりフィルタホール36を回転させることにより、光源25からの照明光のうち所定の波長帯域の光をハーフミラー15に向けて射出するようになっている。
【0028】
ハーフミラー15は、光源25(波長調節装置35)からの照明光の一部を導光ロッド10の入射端面(第1端面)11に向けて反射するとともに、導光ロッド10からの光の一部をラインセンサー20に向けて透過させるようになっている。
【0029】
導光ロッド10は、例えばガラス等で形成された棒状のロッドであり、入射端面11から入射させた照明光を、内側面により内面反射させて入射端面11とは他端側に配置された反射端面(第2端面)12まで導くようになっている。反射端面12は、導光ロッド10内を導かれてきた光を反射するようになっている。
【0030】
このような構成を有することで、導光ロッド10は、入射端面11から入射した照明光を、導光ロッド10の内側面により反射を繰り返して反射端面12まで導くとともに、反射端面12により反射して再び入射端面11まで導くようになっている。
【0031】
また、導光ロッド10は、その外側面が、屈折率の測定対象である試料Sに接触して配置されている。具体的には、例えば試料Sとして生体試料を採用した場合には、入射端面11を生体外に露出させた状態で、導光ロッド10全体を生体内に挿入する。
【0032】
ラインセンサー20は、導光ロッド10の入射端面11から所定の間隔をあけて配置されており、導光ロッド10の入射端面11から所定位置における導光ロッド10からの光の光束径を測定するようになっている。
また、ハーフミラー15とラインセンサー20との間には、導光ロッド10からの光を集光するレンズL2が設けられている。
【0033】
CPU30は、ラインセンサー20により測定された光束径から導光ロッド10からの光の拡がり角を算出し、該拡がり角に基づいて導光ロッド10の外側面に接触する試料Sの屈折率を算出するようになっている。
【0034】
モニタ31は、CPU30より算出された試料Sの屈折率や、波長調節装置35により選択的に透過される照明光の波長等の情報を表示するようになっている。
制御装置38は、CPU30からの指令に基づいて回転部37を動作させて、波長調節装置35から射出する照明光の波長を制御するようになっている。
【0035】
ここで、本実施形態に係る屈折率測定装置1による屈折率の測定原理について以下に説明する。
図2に示すように、屈折率が異なる物質が接している界面では反射が起こる。物質A,物質Bの屈折率をそれぞれn1,n2としたとき、n1>n2のとき、ある角度以上の入射角θcで全反射が起こることが知られている。この全反射角は次式で与えられる。
θc=arcsin(n2/n1)
【0036】
上式に基づき、物質Aの屈折率n1が既知であれば、全反射角θcを測定することにより物質Bの屈折率n2を測定することができる。これがアッベ屈折率計の基本的な原理となっている。
【0037】
本実施形態に係る屈折率測定装置1では、図3に示すように、導光ロッド10に光を伝播させる場合には全反射を利用している。伝播できる光束の角度は、導光ロッド10の屈折率n1と、導光ロッド10の外側に配置された外側媒質の屈折率n2で決まる。
すなわち、導光ロッド10の屈折率n1が既知であれば、導光ロッド10を伝播できる光束の角度を測定することにより、外側媒質の屈折率n2を測定することができる。これが本実施形態に係る屈折率測定装置1による屈折率測定法の原理である。
【0038】
上記構成を有する本実施形態に係る屈折率測定装置1によれば、光束は導光ロッド10の内側面を何度も反射し、このことにより、光束強度の角度分布はより急峻となるため、全反射角の測定精度を向上することができる。
【0039】
上記の効果について、シミュレーション結果を用いて以下に説明する。
図4は外側媒質の屈折率n2=1.33,導光ロッド10の屈折率n1=1.38とした場合における反射率の角度特性を示したものである。横軸はラジアン(rad)表記の角度、縦軸は反射率を示す。反射率が1になる角度が全反射角(臨界角)である。
【0040】
図4において、ラインG1は一回反射のもの、ラインG2は10回反射のものである。10回反射を示すラインG2では、臨界角付近の傾きは急峻であり、臨界角の決定が容易になり、屈折率の測定精度が向上する。
【0041】
以上のことより、図5に示すように、導光ロッド10の屈折率n1と外側媒質(試料S)の屈折率n2で決まる全反射角θc以下の入射角の光束が含まれるように、導光ロッド10への入射光束の最大角度を決める。このように入射光束の最大角を決めると、導光ロッド10と外側媒質との界面へは全反射角以下の光と全反射角以上の光が含まれる。このうち、全反射角以上の角度で界面に入射した光が反射され、この反射光のみが導光ロッド10内を伝播することができる。
【0042】
ここで、導光ロッド10の入射端面11とは反対側の端面に反射端面12を設けておくと、導光ロッド10内を伝播した光は再び入射端面11に戻ってくる。この戻り光は、導光ロッド10と外側媒質の界面で全反射角以上の角度で入射した成分のみである。したがって、この戻り光の角度分布を測定すれば、外側媒質の屈折率を測定することができる。
【0043】
上記構成を有する本実施形態に係る屈折率測定装置1の作用について以下に説明する。
光源25から発せられた照明光は、波長調節装置35で分光され、レンズL1でハーフミラー15上に集光されて、入射端面11から導光ロッド10に導入される。導光ロッド10のもう一方の端面は反射端面12となっているため、導光ロッド10内を伝播する光束は入射端面11へ戻される。
【0044】
レンズL2は、図3に示すように、その前側焦点が導光ロッド10の入射端面11に位置し、後ろ側焦点にラインセンサー20が配置されている。レンズL2をこのような配置とすることで、導光ロッド10からの光を平行光にしてラインセンサー20の配置された面21に射出することができる。これにより、ラインセンサー20の配置された面21上に、導光ロッド10からの光の角度情報が現れる。
【0045】
具体的には、図3に示すように、面21上において光の光軸中心からの距離をh、レンズL2の焦点距離をf2、光の光軸となす角度(光の拡がり角)をθとすると、以下の式に表わす関係が成り立つ。
h=f2×tanθ
【0046】
ラインセンサー20により光軸中心からの距離hを測定し、上記の式に代入することで、光の拡がり角θを算出することができる。このようにラインセンサー10で戻り光の最大角度を測定することにより、導光ロッド10内での全反射角を知ることができ、外側媒質(試料S)の屈折率を測定することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る屈折率測定装置1によれば、屈折率を測定する試料Sを導光ロッド10の側面に接触させた状態で、導光ロッド10の入射端面11に入射させた照明光が、導光ロッド10の内側面および反射端面12により反射されて入射端面11まで再び導かれる。そして、導光ロッド10の入射端面11から光が射出され、入射端面11から所定位置における光の光束径が、ラインセンサー20により測定される。そして、CPU30により、このように測定された光束径から、導光ロッド10からの光の拡がり角が算出され、該拡がり角に基づいて導光ロッド10の側面に接触する試料Sの屈折率が算出される。
【0048】
この場合において、導光ロッド10の端面から射出された光は、導光ロッド10と試料Sとの界面において複数回全反射されている。これにより、導光ロッド10からの光の拡がり角の角度分布を急峻なものとすることができ、拡がり角に基づいて算出される試料Sの屈折率の精度を向上させることができる。また、従来の屈折率測定装置のように、屈折率の境目を示す像を肉眼で見つけ出したり、鏡筒を動かす必要がない。すなわち、本実施形態に係る屈折率測定装置1によれば、容易かつ高精度に試料Sの屈折率を測定することができる。
【0049】
また、レンズL2により導光ロッド10からの光を平行光にすることができるため、光束径を測定する位置(所定位置)を光軸方向において任意の位置にすることができる。また、光束径を不要に拡げてしまうことを防止して、ラインセンサー20の測定範囲を制限することができる。
【0050】
また、導光ロッド10が入射端面11の他端側に反射端面12とを有することで、入射端面11から入射した照明光を、導光ロッド10の内側面により反射を繰り返して反射端面12まで導くとともに、反射端面12により反射して再び入射端面11まで導くことができる。このようにすることで、導光ロッド10と試料Sとの界面における全反射の回数を増加させることができる。これにより、導光ロッド10からの光の拡がり角の角度分布を急峻なものとすることができ、拡がり角に基づいて算出される試料Sの屈折率の精度を向上させることができる。また、導光ロッド10の構造を簡易なものとすることができる。
【0051】
また、導光ロッド10に入射させる照明光の波長を調節する波長調節装置35を備えることで、導光ロッド10に入射させる照明光の波長を調節しながら、波長毎の試料Sの屈折率を算出することができ、試料Sの屈折率の精度を向上させることができる。
【0052】
なお、本実施形態に係る屈折率測定装置1において、レンズL2を設けずに、以下の式に基づいて光の拡がり角(光の光軸となす角)を算出することとしてもよい。
h=f1×tanθ
ここで、hは所定位置(図3の面21)における光の光束半径、f1は導光ロッド10の入射端面11と所定位置(図3の面21)との距離、θは光の拡がり角である。
【0053】
このようにすることで、レンズL2を設けることなく、光の拡がり角を容易に算出することができ、該拡がり角に基づいて導光ロッド10の側面に接触する試料Sの屈折率が算出することができる。
【0054】
なお、外側媒質の屈折率の範囲が既知の場合、その範囲の測定ができるだけの小さなラインセンサー20を用いることができる。これにより、装置の小型化を図ることができる。
また、導光ロッド10はその一部が試料Sに接していれば良く、大気中に突出している部分があってもよい。
【0055】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においては、前述の第1の実施形態に係る屈折率測定装置1を、例えば血糖値等を測定する糖分測定装置に適用した例について説明する。以下、本実施形態の糖分測定装置2について、第1の実施形態に係る屈折率測定装置1と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0056】
本実施形態に係る糖分測定装置2は、図6に示すように、第1の実施形態に係る屈折率測定装置1の構成(図1参照)に加えて、一部がラインセンサー20を通過してきた導光ロッド10からの光を集光するレンズL3と、レンズL3により集光された光を検出する光検出器(スペクトル測定部)40とを備えている。
【0057】
光検出器40は、波長調節装置35により選択的に透過された照明光の波長毎に、導光ロッド10内を内面反射して入射端面11から射出された光の強度を検出するようになっている。これにより、試料Sの吸収スペクトルを測定するようになっている。
【0058】
ここで、導光ロッド10内における全反射の現象では、全反射光は外側媒質側に少しだけ潜り込んで反射されるので、外側媒質に吸収があるとこの影響を受けて反射光のエネルギーが減少する。したがって、照明光の波長を種々変えることにより、あるいは反射光を分光することにより、外側媒質のスペクトルが得られる。これは減衰全反射法(ATR:attenuated total reflection)と呼ばれるスペクトル測定法である。
【0059】
上記構成を有する本実施形態に係る糖分測定装置2によれば、単一の導光ロッド10で外側媒質の屈折率とスペクトルの両方を測定することができる。
なお、ラインセンサー20は導光ロッド10からの光の一部を遮蔽するが、大部分の光はラインセンサー20以外の部分を透過するため、スペクトル測定への影響は少ない。
【0060】
本実施形態に係る糖分測定装置2において、CPU(算出部、演算部)30は、光検出器40により測定された吸収スペクトルおよびラインセンサー20により測定された光束径から算出された試料Sの屈折率から、試料Sの糖分濃度を多変量解析により演算するようになっている。
【0061】
上記演算における情報処理の流れは図7に示すようになる。本実施形態に係る糖分測定装置2によれば、アルコール類、糖類、脂肪酸、ポリマーなど広範囲な溶質の濃度測定が可能であるが、ここでは血糖値測定を例に説明する。減衰全反射法によるスペクトル測定値と屈折率測定値はPLS法などの回帰分析手法を含む演算処理を経て血糖値として最終的な値を得る。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る糖分測定装置2によれば、前述の実施形態に係る屈折率測定装置1により試料Sの屈折率を算出するとともに、光検出器40により導光ロッド10からの光の波長スペクトルを測定することができる。そして、このように算出された波長スペクトルおよび試料Sの屈折率から、CPU30により試料Sの糖分濃度を多変量解析により演算することができる。このように試料Sの糖分濃度を演算することで、単純に試料Sの屈折率から糖分濃度を演算する場合に比べて、その測定精度を向上することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る糖分測定装置2には可動部が無いため、安定した糖分測定が可能である。
また、測定対象の溶媒及び溶質の屈折率と濃度の変動幅が限定されている場合、導光ロッド10の屈折率を最適化してラインセンサー20上の光束径の変化を最大化することにより、屈折率の測定精度を高めることができる。
【0064】
また、導光ロッド10の径を細径化しても感度が落ちないため、径の細い導光ロッド10を生体内に設置して生体内の物質濃度を測定することが可能である。これにより、血糖値測定の際の侵襲を軽減することができる。
【0065】
[第1の変形例]
なお、本実施形態に係る糖分測定装置2の変形例として、図8に示すように、U字型の導光ロッド10を用いるとともに、図6のハーフミラー15に代えて、全反射ミラー16を採用することとしてもよい。
本変形例に係る糖分測定装置3によれば、ハーフミラーで生じる光の減衰を回避することができ、試料Sの屈折率および糖分濃度の測定精度を向上することができる。
【0066】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においては、前述の変形例に係る糖分測定装置3において、ラインセンサー20および光検出器40に代えて、2次元センサーを採用した例について説明する。以下、本実施形態の糖分測定装置4について、前述の実施形態に係る糖分測定装置2,3と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0067】
本実施形態に係る糖分測定装置3は、図9に示すように、光源25と、レンズL4と、導光ロッド10と、シリンドリカルレンズL5と、グレーティング41と、2次元センサー(測定部、スペクトル測定部)42と、CPU(算出部)30と、モニタ31とを備えている。
【0068】
光源25は、例えば中赤外線ランプであり、広帯域な波長成分を有する照明光を導光ロッド10の入射端面11に向けて射出するようになっている。光源25の射出光軸上には、光源25からの照明光を集光するレンズL4が配置されている。
【0069】
導光ロッド10は、例えばガラス等で形成されたU字型のロッドであり、入射端面11から入射させた照明光を、内側面により内面反射させて入射端面11とは他端側に配置された出射端面13まで導くようになっている。
【0070】
また、導光ロッド10は、その外側面が、屈折率の測定対象である試料Sに接触して配置されている。具体的には、例えば試料Sとして生体試料を採用した場合には、入射端面11および出射端面13を生体外に露出させた状態で、導光ロッド10全体を生体内に挿入する。
【0071】
導光ロッド10の射出光軸上には、シリンドリカルレンズL5と、グレーティング41とが配置されている。
シリンドリカルレンズL5は、導光ロッド10の出射端面13から射出された光を、光軸に直交する2次元方向のうち1次元方向にのみ集光するようになっている。これにより、導光ロッド10の出射端面13から射出された断面円形の光は、シリンドリカルレンズL5により、その横断面が長円形状にグレーティング41上に集光される。
【0072】
なお、導光ロッド10の出射端面13から射出された光の光束径は、試料Sの屈折率情報を有している。したがって、シリンドリカルレンズL5により長円形に集光された光の長径についても試料Sの屈折率情報を保持している。
【0073】
グレーティング41は、シリンドリカルレンズL5により長円形に集光された光を、その短径方向に波長帯域毎に分光して、2次元センサー42に向けて反射するようになっている。グレーティング41では、図9に示すように、長円形状の横断面を有する光が短径方向に波長成分毎に分解される。このように分光された光は、長径方向に屈折率情報、短径方向に波長スペクトル情報を有している。
【0074】
2次元センサー42は、グレーティング41からの分光された光について、その光束径および強度を検出するようになっている。より具体的には、2次元センサー42は、グレーティング41からの分光された光について、長径(屈折率情報)および波長毎の強度(波長スペクトル情報)を検出するようになっている。
【0075】
CPU30は、2次元センサー42により検出された光の光束径(長径)から試料Sの屈折率を算出し、該屈折率および2次元センサー42により検出された波長スペクトルから、試料Sの糖分濃度を多変量解析により演算するようになっている。
【0076】
モニタ31は、CPU30より算出された試料Sの屈折率や、2次元センサー42により検出された波長スペクトルや、これらより演算された試料Sの糖分濃度等の情報を表示するようになっている。
【0077】
上記構成を有する本実施形態に係る糖分測定装置4によれば、前述の実施形態に係る糖分測定装置2,3と同様の効果に加えて、試料Sの屈折率と波長スペクトルを単一のセンサーで測定できるため、装置の小型化を図ることができる。
【0078】
〔第2の変形例〕
なお、本実施形態に係る糖分測定装置4の変形例として、図10に示すように、U字型の導光ロッドに代えて棒状の導光ロッド10を用いるとともに、光源25の射出光軸と導光ロッド10からの射出光軸との交点にハーフミラー15を配置することとしてもよい。
本変形例に係る糖分測定装置5によれば、導光ロッド10を小さくすることができ、血糖値測定の際の侵襲を軽減することができる。
【0079】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態および各変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
L1,L2,L3,L4 レンズ(光学系)
L5 シリンドリカルレンズ
S 試料
1 屈折率測定装置
2,3,4,5 糖分測定装置
10 導光ロッド
11 入射端面(第1端面)
12 反射端面(第2端面)
13 出射端面(第2端面)
15 ハーフミラー
20 ラインセンサー(測定部)
25 光源
35 波長調節装置(波長調節部)
30 CPU(算出部)
31 モニタ
38 制御装置
40 光検出器(スペクトル測定部)
41 グレーティング
42 2次元センサー(測定部、スペクトル測定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射させた照明光を内面反射させて端面まで導く導光ロッドと、
前記導光ロッドの端面から所定位置における前記導光ロッドからの光の光束径を測定する測定部と、
前記測定部により測定された光束径から前記導光ロッドからの光の拡がり角を算出し、該拡がり角に基づいて前記導光ロッドの側面に接触する試料の屈折率を算出する算出部とを備える屈折率測定装置。
【請求項2】
前記算出部が、前記所定位置における光の光束半径をh、前記導光ロッドの端面と前記所定位置との距離をf1、光の拡がり角をθとした場合に、以下の式に基づいて光の拡がり角を算出する請求項1に記載の屈折率測定装置。
h=f1×tanθ
【請求項3】
前記導光ロッドの端面に焦点位置が配置され、前記導光ロッドからの光を平行光にして前記所定位置に射出する光学系を備え、
前記算出部が、前記所定位置における光の光束半径をh、前記光学系の焦点距離をf2、光の拡がり角をθとした場合に、以下の式に基づいて光の拡がり角を算出する請求項1に記載の屈折率測定装置。
h=f2×tanθ
【請求項4】
前記算出部が、前記導光ロッドからの光の拡がり角から前記導光ロッド内において全反射を起こす前記試料への入射角を算出し、以下の式に基づいて前記試料の屈折率を算出する請求項2または3に記載の屈折率測定装置。
θc=arcsin(n2/n1)
ここで、
θc:前記導光ロッド内において全反射を起こす前記試料への入射角
n1:前記導光ロッドの屈折率
n2:前記試料の屈折率
【請求項5】
前記導光ロッドが、照明光を入射させる第1端面と、該第1端面とは他端側に配置され、内面反射して導かれてきた光を反射する第2端面とを有する請求項1に記載の屈折率測定装置。
【請求項6】
前記導光ロッドに入射させる照明光の波長を調節する波長調節部を備える請求項1に記載の屈折率測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の屈折率測定装置と、
前記導光ロッドからの光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定部と、
前記スペクトル測定部により測定された波長スペクトルおよび前記算出部により算出された前記試料の屈折率から、前記試料の糖分濃度を多変量解析により演算する演算部とを備える糖分濃度測定装置。
【請求項8】
入射させた照明光を内面反射させて導光ロッドの端面まで導く導光ステップと、
前記導光ロッドの端面から所定位置における前記導光ロッドからの光の光束径を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにより測定された光束径から前記導光ロッドからの光の拡がり角を算出し、該拡がり角に基づいて前記導光ロッドの側面に接触する試料の屈折率を算出する算出ステップとを含む屈折率測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の屈折率測定方法と、
前記導光ロッドからの光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、
前記スペクトル測定ステップにより測定された波長スペクトルおよび前記算出ステップにより算出された前記試料の屈折率から、前記試料の糖分濃度を多変量解析により演算する演算ステップとを含む糖分濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−68461(P2013−68461A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205913(P2011−205913)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】