説明

屈曲した形状のホースを製造する方法

【課題】本発明は、ホースの曲げ工程が簡単で、未加硫ゴムに不用意な熱履歴を与えない屈曲した形状のホースの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にて、樹脂マンドレルRMを押出形成し、樹脂マンドレルRMの外周部に未加硫ゴムからなるホース中間体を形成し、ホース中間体および樹脂マンドレルRMを所定長さに順次切断する。その後、樹脂マンドレルRMの中空部RMaにヒータ30bを挿入して、樹脂マンドレルRMを加熱しつつ樹脂マンドレルRMおよびホース中間体を所定形状に曲げ、その後加硫する。加硫工程を経た樹脂マンドレルRMが加硫時の余熱または外部加熱により軟化した状態にて、ホース中間体から樹脂マンドレルRMを抜き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の温水配管、燃料配管、その他の機械に用いる屈曲した形状のホースを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の屈曲した形状のホースの製造方法は、以下の工程をとっている。すなわち、未加硫ゴムを押し出すことによりホース中間体を形成し、所定長さに切断し、その後、曲がり形状の金属製のマンドレルに挿入して加硫することでホースを形成し、さらに該ホースを金属製のマンドレルから抜き取る。こうした金属製のマンドレルを用いる工程では、ホース中間体をマンドレルへ挿入する作業や、マンドレルから加硫後のホースを抜き取る作業が面倒であるという課題がある。
【0003】
こうした課題を解決するための方法として、特許文献1の技術が知られている。すなわち、円柱状の樹脂製のマンドレルの外周部にホース中間体を形成し、さらに外周部に樹脂層を形成し、その後、変形可能な温度まで加熱して樹脂製のマンドレル、ホース中間体および樹脂層を曲げ、その後加硫を行なっている。しかし、この方法によると、樹脂製のマンドレルおよび樹脂層を軟化させるために、外部から加熱処理を施しているが、このような加熱処理は、未加硫のホース中間体に熱履歴を与えてしまうので、加硫後のホースが部分的に過加硫になったり、これを避けるための加硫条件の設定が面倒になるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、ホースの曲げ工程が簡単で、未加硫ゴムに不用意な熱履歴を与えない、屈曲した形状のホースを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、熱可塑性樹脂からなり中空部を有する円筒形状で可撓性の樹脂マンドレルを押出形成するマンドレル形成工程と、
上記樹脂マンドレルの外周部に、未加硫ゴムからなるホース中間体を形成するホース体形成工程と、
上記ホース体形成工程を経たホース中間体および樹脂マンドレルを所定長さに順次切断する切断工程と、
上記切断工程を経た樹脂マンドレルの中空部にヒータを挿入して、該樹脂マンドレルを加熱しつつ上記樹脂マンドレルおよびホース中間体を所定形状に曲げる曲げ工程と、
上記曲げ工程を経たホース中間体を加硫する加硫工程と、
上記加硫工程を経た樹脂マンドレルが加硫時の余熱または外部加熱により常温より高い温度で軟化している状態にて、上記ホース中間体から上記樹脂マンドレルを抜き取るマンドレル脱型工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
適用例1の方法では、屈曲した形状のホースを製造するのに、樹脂マンドレルの外周部に、未加硫ゴムのホース中間体を形成し、金属製のマンドレルを用いていないので、金属製のマンドレルにホース中間体を挿入する作業が不要になり、作業性を向上させることができる。
【0009】
また、直線状の樹脂マンドレルおよびホース中間体を曲げるのに、樹脂マンドレルの中空部にヒータを挿入して、樹脂マンドレルを加熱軟化しているから、ホース中間体が直接熱履歴を受けることがなく、後の加硫工程によって過加硫となることがない。
【0010】
[適用例2]
適用例2に記載のホース体成形工程は、上記樹脂マンドレルの外周に未加硫の内面ゴム層を押し出し成形する内面ゴム層形成工程と、上記内面ゴム層形成工程で形成された内面ゴム層の外周に繊維補強層を形成する補強層形成工程と、補強層形成工程で形成された繊維補強層の外周に未加硫の外面ゴム層を押し出し成形する外面ゴム層形成工程と、を備えている方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例にかかる屈曲した形状のホースを一部破断して示す側面図である。
【図2】ホースの断面図である。
【図3】屈曲した形状のホースを製造する方法を説明する説明図である。
【図4】ホースが成形されるまでの各断面を示す説明図である。
【図5】樹脂マンドレルの加熱工程を説明する説明図である。
【図6】ホース中間体の曲げ工程を説明する説明図である。
【図7】加硫工程を説明する説明図である。
【図8】マンドレル脱型工程を説明する説明図である。
【図9】マンドレル脱型工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1) 屈曲した形状のホースHの概略構成
図1は本発明の一実施例にかかる屈曲した形状のホースを一部破断して示す側面図、図2はホースの断面図である。ホースHは、例えば、ラジエータとエンジンとの接続する箇所に使用されるゴム製のホースであり、エンジンルーム内における配策経路にしたがって所定の形状に曲げられている。ホースHは、通路を形成する内層Haと、繊維補強層Hbと、外層Hcとを備え、これらを積層することにより形成されている。
【0013】
(2) ホースの製造方法
図3は屈曲した形状のホースを製造する方法を説明する説明図、図4はホースが形成されるまでの各断面を示す。図3において、最初にマンドレル形成工程を樹脂押出機12により行なう。樹脂押出機12は、例えば、熱可塑性ポリエステルを用いて、ホースH(図2)の内径と同じ外径の円筒を押し出すことにより、中空部RMaを有する樹脂マンドレルRM(図4(A))を形成する。続いて、樹脂マンドレルRMの外周部に3層のゴム成形体を形成する工程を行なう。ゴム成形体は、内面ゴム層形成工程、補強層形成工程および外面ゴム層形成工程を経ることにより形成される。内面ゴム層形成工程は、内層ゴム押出機14により行なう。内層ゴム押出機14は、樹脂マンドレルRMの外周部を覆うように未加硫のゴム材料(EPDM)を押し出すことにより、樹脂マンドレルRMの外周部に内面ゴム層Ha−nv(図4(B))を形成してホース中間体H1を得る。
【0014】
補強層形成工程は、ブレーダ16により行なう。ブレーダ16は、内面ゴム層Ha−nvの外周に補強糸を巻回することにより、内面ゴム層Ha−nv上に繊維補強層Hb(図4(C))を形成してホース中間体H2を得る。外面ゴム層形成工程は、外層ゴム押出機18により行なう。外層ゴム押出機18は、繊維補強層Hbを覆うように未加硫のゴム材料(EPDM)を押し出すことにより、外面ゴム層Hc−nv(図4(D))を形成してホース中間体H3を得る。
【0015】
続いて、ホース外径調節工程を行なう。ホース外径調節工程は、外径調節装置20により行なう。外径調節装置20は、赤外線センサを有する外径側定器21aと、コンベヤ式の引抜き機21bと、外径側定器21aの検出信号に基づいて引抜き機21bの駆動速度を制御する駆動制御装置21cとを備えている。外径側定器21aが外層ゴム押出機18から押し出されるホース中間体H3の外径を測定し、駆動制御装置21cを介して引抜き機21bの駆動速度を変更することにより、ホース中間体H3の外径を所定値に調節する。続いて、ホース中間体H3は、冷却装置24により冷却した後に、切断機26により所定長さに切断してホース中間体H4を得る。
【0016】
その後、ホース中間体H4を所定の形状に曲げる曲げ工程を行なう。ホース曲げ工程は、図5の加熱工程および図6の曲げ工程により行なう。図5において、加熱工程は、マンドレル加熱装置30により行なう。マンドレル加熱装置30は、有底の円筒である支持体30aと、支持体30aに埋設されたヒータ30bと、支持体30aを軸方向に進退させる駆動装置30cとを備えている。支持体30aをホース中間体H4の通路に位置合わせした状態で、駆動装置30cを駆動して支持体30aをホース中間体H4内に挿入し、ヒータ30bに通電発熱することにより、樹脂マンドレルRMを加熱軟化させる。そして、加熱された樹脂マンドレルRMは、図6の曲げ加工機32により曲げられる。曲げ加工機32は、ホース中間体H4の端部を掴むチャック32aと、ローラ32bと、曲げ軌跡に沿って移動可能であるガイド32cとを備えている。チャック32aでホース中間体H4の端部を掴んで、ガイド32cを所定の曲げ経路に沿って移動することにより、ホース中間体H4をローラ32bに沿わせて曲げることで、ホース中間体H5を得る。
【0017】
続いて、ホース中間体H5を加硫する加硫工程を行なう。加硫工程は、図7に示すようにホース中間体H5を支持台34a上にセットするとともに、支持具34bにより曲げ形状に位置決めし、これらを加硫釜に入れて150〜170℃で30分蒸気加熱することにより行なう。これにより、加硫されたホース中間体H6(図8参照)が得られる。続いて、図8に示すように、ホース中間体H6から樹脂マンドレルRMを抜くマンドレル脱型工程を行なう。マンドレル脱型工程は、マンドレル引抜機36を用いて行なう。図9は図8のマンドレル引抜機36を説明する説明図である。図9(A)において、マンドレル引抜機36は、引抜き部材36aと、引抜き部材36aを進退駆動する駆動装置36bとを備えている。引抜き部材36aは、先端部に歯体36cを有する2本の部材で構成されている。駆動装置36bを駆動して引抜き部材36aを樹脂マンドレルRMの中空部RMa内に挿入し、さらに引抜き部材36aを広げることにより歯体36cを樹脂マンドレルRMの内壁に食い込ませ、さらに図9(B)に示すように、駆動装置36bを駆動して引抜き部材36aをホース中間体H6に対して抜く方向へ移動することで樹脂マンドレルRMをホース中間体H6から抜き取る。これにより、図1および図2に示すホースHを得る。なお、マンドレル引抜機36によりホース中間体H6から抜き取られた樹脂マンドレルRMは、粉砕機((図示省略)で粉砕されることで、再度利用される。
【0018】
(3) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、上述した効果のほか、以下の効果を奏する。
(3)−1 屈曲した形状のホースHを製造するのに、樹脂マンドレルRMの外周部に、未加硫ゴムのホース中間体を形成し、金属製のマンドレルを用いていないので、金属製のマンドレルにホース中間体を挿入する作業が不要になり、作業性を向上させることができる。
【0019】
(3)−2 図5に示すように、直線状の樹脂マンドレルRMおよびホース中間体を曲げるのに、樹脂マンドレルRMの中空部RMaにマンドレル加熱装置30の支持体30aおよびヒータ30bを挿入して、樹脂マンドレルRMを加熱軟化しているから、ホース中間体H4が直接熱履歴を受けることがなく、後の加硫工程によって過加硫となることがない。
【0020】
(3)−3 従来の技術において、未加硫のホース中間体を、金属製の屈曲したマンドレルに対して挿入したり、抜き取るために、両者の摩擦力を低減するための助剤を用いていたが、本実施例では、樹脂マンドレルRMの外周部に、ホース中間体を直接形成している。こうした樹脂マンドレルRMは、弾性変形が容易であり、かつホースの内壁に対する摩擦係数も小さく、曲げられたホース中間体H6から容易に引き抜くことができるので、上述した助剤も不要である。
【0021】
(3)−4 図8に示すように、樹脂マンドレルRMは、加硫後のホース中間体H6から抜き取る際に、加硫時の余熱を利用して軟化させた状態で行なっているので、その抜き取り作業が容易である。
【0022】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
12…樹脂押出機
14…内層ゴム押出機
16…ブレーダ
18…外層ゴム押出機
20…外径調節装置
21a…外径側定器
21b…引抜き機
21c…駆動制御装置
24…冷却装置
26…切断機
30…マンドレル加熱装置
30a…支持体
30b…ヒータ
30c…駆動装置
32…曲げ加工機
32a…チャック
32b…ローラ
32c…ガイド
34a…支持台
34b…支持具
36…マンドレル引抜機
36a…引抜き部材
36b…駆動装置
36c…歯体
H…ホース
H1〜H6…ホース中間体
Ha…内層
Ha−nv…内面ゴム層
Hb…繊維補強層
Hc…外層
Hc−nv…外面ゴム層
RM…樹脂マンドレル
RMa…中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなり中空部(RMa)を有する円筒形状で可撓性の樹脂マンドレル(RM)を押出形成するマンドレル形成工程と、
上記樹脂マンドレル(RM)の外周部に、未加硫ゴムからなるホース中間体を形成するホース体形成工程と、
上記ホース体形成工程を経たホース中間体および樹脂マンドレル(RM)を所定長さに順次切断する切断工程と、
上記切断工程を経た樹脂マンドレル(RM)の中空部(RMa)にヒータ(30b)を挿入して、該樹脂マンドレル(RM)を加熱しつつ上記樹脂マンドレル(RM)およびホース中間体を所定形状に曲げる曲げ工程と、
上記曲げ工程を経たホース中間体を加硫する加硫工程と、
上記加硫工程を経た樹脂マンドレル(RM)が加硫時の余熱または外部加熱により常温より高い温度で軟化している状態にて、上記ホース中間体から上記樹脂マンドレル(RM)を抜き取るマンドレル脱型工程と、
を備えたことを特徴とする屈曲した形状のホースを製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の屈曲した形状のホースを製造する方法において、
上記ホース体成形工程は、
上記樹脂マンドレル(RM)の外周に未加硫の内面ゴム層(Ha−nv)を押出形成する内面ゴム層形成工程と、
上記内面ゴム層形成工程で形成された内面ゴム層(Ha−nv)の外周に繊維補強層(Hb)を形成する補強層形成工程と、
上記補強層形成工程で形成された繊維補強層(Hb)の外周に未加硫の外面ゴム層(Hc−nv)を押出形成する外面ゴム層形成工程と、
を備えている屈曲した形状のホースを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−221465(P2010−221465A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69709(P2009−69709)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】