説明

屈曲棒状金属粒子及びその製造方法、並びに屈曲棒状金属粒子含有組成物、及び導電性材料

【課題】可視光領域において高い透明性を有すると共に、表面抵抗が小さく、導電性に優れた導電性材料を得ることができる屈曲棒状金属粒子及び屈曲棒状金属粒子の製造方法、並びに屈曲棒状金属粒子含有組成物、及び導電性材料の提供。
【解決手段】少なくとも1つの屈曲点を有し、該屈曲点における屈曲角度が5°以上175°以下である屈曲棒状金属粒子とする。該屈曲点が、2つ以上の棒状金属粒子同士がその端面で接合して形成される態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲棒状金属粒子及びその製造方法、並びに屈曲棒状金属粒子含有組成物、及び導電性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可視光領域(400nm〜800nm)で透明な導電性材料として金属ナノワイヤーが研究されている。このような金属ナノワイヤーは導電性であるため、フィルム等の基材の表面に塗布して、導電層を形成でき、基材の表面抵抗を下げることができる。また、金属ナノワイヤーの直径が200nm以下と小さいため、可視光領域での光透過性が高く、ITO(Indium Tin Oxide)に代わる透明導電膜としての応用が期待されている。
例えば特許文献1及び2には、長軸が400nm以上であって、短軸が50nm以下であり、アスペクト比が20以上であるワイヤー状の金属を含有する組成物が提案されており、電磁波遮蔽フィルタ、電磁波遮蔽フィルム、電磁波遮蔽塗料、導電性ペースト、配線材料、電極材料、導電性フィルムなどに用いられることが開示されている。
また、特許文献3には、アスペクト比が10〜1000,000、直径500nm未満の銀ナノワイヤーを含有し、透過率が50%以上であり、表面抵抗が1.0×10Ω/□以下である透明導電性膜が提案されている。
また、非特許文献1には、直線状金属ナノワイヤーをポリオール法により合成する方法が開示されている。
【0003】
このように導電性材料における導電層は、金属ナノワイヤー含有組成物を基材表面に塗布して形成しており、導電ネットワークは金属ナノワイヤー同士が接合することにより形成されるので、直線状の金属ナノワイヤーの場合には、うまく絡ませて導電ネットワークを形成することが困難である。また、金属ナノワイヤーの凝集防止を図るため、金属ナノワイヤーは分散剤等の有機物で被覆されており、金属ナノワイヤー含有組成物を基材表面に塗布した後、アニール処理やプレス処理等を施すことにより、金属ナノワイヤー同士の接合を促進させて、導電性を高めているのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−196923号公報
【特許文献2】特開2005−317395号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0074316号明細書
【非特許文献1】Nano Lett., 2(2002)165−168
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光領域において高い透明性を有すると共に、表面抵抗が小さく、導電性に優れた導電性材料を得ることができる屈曲棒状金属粒子及び屈曲棒状金属粒子の製造方法、並びに屈曲棒状金属粒子含有組成物、及び導電性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、棒状金属粒子の接点をより効率良く形成する方法として、図1Aの透過型電子顕微鏡(TEM)写真及びその模式図である図1Bに示すように、少なくとも1つの屈曲点を有する屈曲棒状金属粒子を用いることにより、より効率よく導電ネットワークが形成できることを知見した。
実際に、屈曲棒状金属粒子と、直線状金属粒子とを同じ金属量となるようにして導電層を形成すると、図2Aに示す直線状金属粒子を用いた場合よりも、図2Bに示す屈曲棒状金属粒子を用いた場合の方が、金属粒子同士が互いに絡まりあい、より効率よく導電ネットワークが形成されることが分かった。また、屈曲棒状金属粒子ではあらかじめ接点が形成されている部分があるため、より表面抵抗値を下げられることを知見した。
【0007】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも1つの屈曲点を有し、該屈曲点における平均屈曲角度が5°以上175°以下であることを特徴とする屈曲棒状金属粒子である。
<2> 屈曲点が、2つの棒状金属粒子同士がその端面で接合して形成される前記<1>に記載の屈曲棒状金属粒子である。
<3> 短軸長さが1nm〜500nmであり、かつアスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)が10以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子である。
<4> ポリオール化合物を含む溶媒中に金属化合物及びポリビニルピロリドンを添加した反応液を、50℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱し、還元反応させて、棒状金属粒子を形成した後、該棒状金属粒子を含む反応液を、165℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱して得られる前記<1>から<3>のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子である。
<5> ポリオール化合物が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種を含む前記<4>に記載の屈曲棒状金属粒子である。
<6> 金属化合物における金属が、銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、及びコバルトから選択される少なくとも1種を含む前記<4>から<5>のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子である。
<7> 反応液中に塩化物イオンを含む前記<4>から<6>のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子である。
<8> ポリビニルピロリドンが、ピロリドンユニットの繰り返し数が2以上である前記<4>から<7>のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子である。
<9> ポリオール化合物を含む溶媒中に金属化合物及びポリビニルピロリドンを添加した反応液を、50℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱し、還元反応させて、棒状金属粒子を形成した後、該棒状金属粒子を含む反応液を165℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱することを特徴とする屈曲棒状金属粒子の製造方法である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子を含有することを特徴とする屈曲棒状金属粒子含有組成物である。
<11> 前記<10>に記載の屈曲棒状金属粒子含有組成物からなる導電層を少なくとも有することを特徴とする導電性材料である。
<12> 表面抵抗値が1.0×10Ω/□以下である前記<11>に記載の導電性材料である。
<13> 可視光領域での透過率が50%以上である前記<11>から<12>のいずれかに記載の導電性材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、可視光領域において高い透明性を有すると共に、表面抵抗が小さく、導電性に優れた導電性材料を得ることができる屈曲棒状金属粒子及び該屈曲棒状金属粒子の製造方法、並びに屈曲棒状金属粒子含有組成物、及び導電性材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(屈曲棒状金属粒子及び屈曲棒状金属粒子の製造方法)
本発明の屈曲棒状金属粒子は、少なくとも1つの屈曲点を有し、該屈曲点における平均屈曲角度が5°以上175°以下である。
本発明の屈曲棒状金属粒子の製造方法は、ポリオール化合物を含む溶媒中に金属化合物及びポリビニルピロリドンを添加した反応液を、50℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱し、還元反応させて、棒状金属粒子を形成した後、該棒状金属粒子を含む反応液を、165℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱する。
本発明の屈曲棒状金属粒子は、好ましくは本発明の屈曲棒状金属粒子の製造方法で製造される。
以下、本発明の屈曲棒状金属粒子の説明を通じて、本発明の屈曲棒状金属粒子の製造方法の詳細についても明らかにする。
【0010】
本発明の屈曲棒状金属粒子は、少なくとも1つ、好ましくは1〜10つの屈曲点を有する。
前記屈曲点は、図3に示すように、2つの棒状金属粒子同士がその端面で接合して、形成される。
前記屈曲棒状金属粒子は、2つの棒状金属粒子同士がその端面で金属接合しているため、屈曲棒状金属粒子の分散液調製、調製した分散液を基材上に塗布する操作によりばらばらに外れて、元の棒状金属粒子に戻ってしまうことはない。
【0011】
前記屈曲点における屈曲角度は、図1Aに示す本発明の屈曲棒状金属粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真の模式図である図1B中角度α、α’、α”で表される。
前記屈曲点における屈曲角度の平均値である平均屈曲角度は、5°以上175°以下である。
ここで、前記平均屈曲角度は、例えば屈曲状棒状金属粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができる。
【0012】
前記棒状金属粒子には、ワイヤー状乃至ロッド状の金属粒子が含まれ、短軸長さは1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましい。前記アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)は10以上が好ましく、20〜1000がより好ましい。
前記短軸長さ及びアスペクト比は、例えば屈曲棒状金属粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによりその短軸長さを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによりその長軸長さを測定して、算出することができる。
【0013】
本発明の屈曲棒状金属粒子は、ポリオール化合物を含む溶媒中に金属化合物及びポリビニルピロリドンを添加した反応液を、50℃以上該溶媒の沸点以下の温度(第1の温度)で加熱し、還元反応させて、棒状金属粒子を形成した後、該棒状金属粒子を含む反応液を、165℃以上該溶媒の沸点以下の温度(第2の温度)で加熱して得られることが好ましい。
前記第1の温度により棒状粒子の末端形状が決まり、前記第2の温度により棒状粒子同士の末端が融合して屈曲棒状粒子が得られると考えられる。この場合、屈曲棒状粒子の屈曲角度は、棒状粒子が融合するときの棒状粒子の末端の形状により変化するものと推測される。
前記第2の温度が165℃未満であると、棒状粒子同士の末端が融合できず、屈曲棒状粒子が得られない。
【0014】
−溶媒−
前記溶媒としては、ポリオール化合物を含むものが用いられ、ポリオール化合物以外の溶媒を含んでいてもよいが、ポリオール化合物のみ(100体積%)からなるものが特に好ましい。
前記ポリオール化合物としては、水酸基を2つ以上有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エチレングリコールが特に好ましい。
前記ポリオール化合物以外の溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、プロパノール、エタノール、メタノールなどが挙げられる。
【0015】
−金属化合物−
前記金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記金属化合物における金属としては、例えば銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、コバルト、などが挙げられ、これらの中でも、銀、金が特に好ましい。
前記金属塩を形成する酸としては、無機酸及び有機酸のいずれであってもよい。
前記無機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば硝酸;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸などが挙げられる。
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカルボン酸、スルホン酸などが挙げられる。
前記カルボン酸としては、例えば酢酸、酪酸、シュウ酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸、安息香酸などが挙げられる。
前記スルホン酸としては、例えばメチルスルホン酸などが挙げられる。
前記金属塩としては、例えば硝酸銀、塩化金酸、塩化白金酸などが挙げられる。
【0016】
前記金属錯体を形成するキレート剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアセチルアセトナート、EDTAなどが挙げられる。また、上記の金属塩と配位子とで錯体を形成してもよく、該配位子としては、例えばイミダゾール、ピリジン、フェニルメチルスルフィドなどが挙げられる。
なお、前記金属化合物には、金属イオンのハロゲン化錯体の酸(例えば塩化金酸、塩化白金酸など)、アルカリ金属塩(例えば塩化金酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウムなど)も含まれる。
【0017】
−ポリビニルピロリドン−
前記ポリビニルピロリドン(PVP)は、ピロリドンユニットの繰り返し数が2以上であることが好ましく、90以上がより好ましい。前記繰り返し数が2未満であると、PVPが金属粒子の特定の結晶面に吸着できずに、球状粒子となってしまうとなることがある。
前記ポリビニルピロリドン(PVP)と、前記金属化合物とのモル比(PVP/金属化合物)は、0.01〜100が好ましく、0.1〜20がより好ましい。
【0018】
−塩化物イオン−
前記反応液は塩化物イオンを含むことが好ましく、該塩化物イオンとしては、例えば塩酸、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0019】
本発明の屈曲棒状金属粒子の製造方法は、ポリオール化合物を含む溶媒中に金属化合物及びポリビニルピロリドン、必要に応じて塩化物イオンを添加した反応液を、50℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱し、還元反応させて、棒状金属粒子を形成した後、該棒状金属粒子を含む反応液を、165℃以上該溶媒の沸点以下の温度で1分間〜120分間加熱する。
前記加熱温度が50℃未満であると、反応時間が長くかかりすぎてしまうことがある。
【0020】
(屈曲棒状金属粒子含有組成物)
本発明の屈曲棒状金属粒子含有組成物は、本発明の前記屈曲棒状金属粒子を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0021】
前記その他の成分としては、例えば溶媒、分散剤などが挙げられる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の屈曲棒状金属粒子含有組成物は、本発明の前記屈曲棒状金属粒子を含有しており、種々の用途に用いることができるが、以下の導電性材料として特に好適に用いられる。
【0023】
(導電性材料)
本発明の導電性材料は、本発明の前記屈曲棒状金属粒子含有組成物からなる導電層を有してなり、基材、下塗り層、オーバーコート層、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0024】
−導電層−
前記導電層は、本発明の前記屈曲棒状金属粒子含有組成物からなる。
前記導電層は、本発明の前記屈曲棒状金属粒子含有組成物を基材上に塗布して、形成することができる。
前記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法などが挙げられる。
前記導電層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01〜100μmが好ましい。
【0025】
−基材−
前記基材としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状、フィルム状などが挙げられ、前記構造としては、例えば単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
前記基材の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれであっても好適に用いることができる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコンなどが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記導電性材料の表面抵抗値は、1.0×10Ω/□以下が好ましく、1.0〜10Ω/□がより好ましい。
ここで、前記表面抵抗値は、例えば四端子法により測定することができる。
前記導電性材料の可視光領域(400nm〜800nm)での透過率は50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
ここで、前記透過率は、例えば紫外可視分光計(V−560、日本分光株式会社製)により測定することができる。
【0027】
本発明の導電性材料は、可視光領域において高い透明性を有すると共に、表面抵抗が小さく、導電性に優れているので、導電性ペースト、配線材料、電極材料、導電性塗料、導電性塗膜、導電性フィルムなどに好適であり、例えば光学フィルタ、配線材料、電極材料、触媒、着色剤、インクジェット用インク、カラーフィルタ用色材、フィルタ、化粧料、近赤外線吸収材、偽造防止用インク、電磁波遮蔽膜、表面増強蛍光センサ、表面増強ラマン散乱センサ、生体用マーカー、記録材料、ドラッグデリバリー用薬物担体、バイオセンサ、DNAチップ、検査薬などに適用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
−屈曲棒状銀粒子の作製−
還流管を付けた三口フラスコ内に10mLのエチレングリコールを入れ、窒素ガスを5分間流した後、160℃で2時間還流した。その後、0.1mMの塩化白金酸六水和物エチレングリコール溶液を3mL添加し、160℃にて5分間加熱し、攪拌した。更に、50mMの硝酸銀(関東化学株式会社製)と、200mMのポリビニルピロリドン(PVP;質量平均分子量36万)のエチレングリコール溶液10mLを20分間かけて、反応液に添加した。その後、160℃にて60分間加熱し、攪拌した。棒状銀粒子が生成したことを確認した後、更に180℃にて60分間加熱し、攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、5倍量のアセトンを添加し、生成物を凝集させた。凝集した生成物を水10mLに分散させることにより、屈曲棒状銀粒子の分散液を作製した。
得られた屈曲棒状銀粒子の分散液を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、1200EX)観察用のグリッドに載せ、乾燥させた後にTEM観察を行った結果、図4(図中のスケールバーの長さは0.5μmを表す)及び図5(図中のスケールバーの長さは2μmを表す)に示すように棒状銀粒子同士が端面で接合した屈曲棒状銀粒子が確認できた。
TEM観察により求めた屈曲点における平均屈曲角度は110°であり、屈曲棒状銀粒子の短軸長さは40nm、アスペクト比は100であった。
【0030】
(実施例2)
−導電性フィルムの作製−
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)ベースに1.5質量%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を#10塗布バーを用いてバーコート塗布し、更に60℃にて5分間乾燥することにより、下塗り層を形成した。
PVA下塗り層を設けたPETベースに、実施例1で作製した0.3質量%の屈曲棒状銀粒子水分散液を、#10塗布バーを用いてバーコート塗布し、60℃で5分間乾燥することにより、屈曲棒状銀粒子含有層を形成した。更に120℃にて5分間アニール処理することにより、導電性を向上させた。
次に、屈曲棒状銀粒子含有層を形成したPETベース上に、更に1.0質量%のPVBメチルエチルケトン溶液を、#10塗布バーを用いてバーコート塗布し、60℃で5分間乾燥することにより、オーバーコート層を設けた。以上により、屈曲棒状銀粒子を含有する導電性フィルムを作製した。
作製した屈曲棒状銀粒子を含有する導電性フィルムの表面抵抗値を四端子法により測定したところ、10〜10Ω/□であった。また、作製した導電性フィルムの透過率を紫外可視分光器(日本分光株式会社製、V−560)で測定したところ、可視光領域(400nm〜800nm)での透過率は82%以上であった。
【0031】
(実施例3)
−屈曲棒状銀粒子の作製−
実施例1において、還流温度、0.1mMの塩化白金酸六水和物エチレングリコール溶液を3mL添加後の反応温度、及び50mMの硝酸銀(関東化学株式会社製)と200mMのポリビニルピロリドン(PVP;質量平均分子量36万)のエチレングリコール溶液10mL添加後の反応温度を、いずれも180℃とした以外は、実施例1と同様にして、屈曲棒状銀粒子を合成した。
得られた屈曲棒状銀粒子の分散液を実施例1と同様にしてTEM観察した結果、図6(図中のスケールバーの長さは2μmを表す)に示すように棒状銀粒子同士が端面で接合した屈曲棒状銀粒子が確認できた。
得られた屈曲棒状銀粒子をTEM観察により求めた屈曲点における平均屈曲角度は90°であり、屈曲棒状銀粒子の短軸長さは36nm、アスペクト比は110であった。
【0032】
(実施例4)
−導電性フィルムの作製−
実施例2において、実施例1で作製した屈曲棒状銀粒子水分散液の代わりに、実施例3で作製した屈曲棒状銀粒子水分散液を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例4の導電性フィルムを作製した。
作製した導電性フィルムについて、実施例1と同様にして測定した表面抵抗値は10〜10Ω/□であり、実施例1と同様にして測定した可視光領域(400nm〜800nm)での透過率は83%であった。
【0033】
(比較例1)
−直線状銀粒子の作製−
還流管を付けた三口フラスコ内に10mLのエチレングリコールを入れ、窒素ガスを5分間流した後、160℃にて2時間還流した。その後、0.1mMの塩化白金酸六水和物エチレングリコール溶液を3mL添加し、160℃にて5分間加熱し、攪拌した。更に、50mMの硝酸銀と200mMのポリビニルピロリドン(PVP;質量平均分子量36万)のエチレングリコール溶液10mLを20分間かけて、反応液に添加した。添加後、160℃にて60分間加熱し、攪拌した。直線状銀粒子が生成したことを確認後、更に160℃にて60分間加熱し、攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、5倍量のアセトンを添加し、生成物を凝集させた。凝集した生成物を水10mLに分散することにより、直線状銀粒子分散液を作製した。
得られた直線状銀粒子の分散液を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、1200EX)観察用のグリッドに載せ、乾燥させた後にTEM観察を行った。その結果、図7に示すように、主に分岐のない直線状銀粒子が確認された。
TEM観察した結果、屈曲点は観察されなかった。直線状銀粒子の短軸長さは40nm、アスペクト比は100であった。
【0034】
(比較例2)
−導電性フィルムの作製−
実施例2において、実施例1で作製した屈曲棒状銀粒子水分散液の代わりに、比較例1で作製した直線状銀粒子水分散液を用いた以外は、実施例2と同様にして、比較例2の直線状銀粒子含有導電性フィルムを作製した。
作製した直線状銀粒子含有導電性フィルムの表面抵抗値を四端子法により測定したところ、10〜10Ω/□であった。また、作製した導電膜の透過率を紫外可視分光器(日本分光株式会社製、V−560)で測定したところ、可視光領域(400nm〜800nm)での透過率は85%以上であった。
【0035】
(比較例3)
−直線状銀粒子の作製−
Chemical Physics Letters 380(1−2),2003,146−149の記載に基づいて、以下の追試を行った。
還流管を付けた三口フラスコ内に10mLのエチレングリコールを入れ、窒素ガスを5分間流した後、160℃にて2時間還流した。その後、0.1mMの塩化白金酸六水和物エチレングリコール溶液を3mL添加し、160℃にて5分間加熱し、攪拌した。更に、50mMの硝酸銀と200mMのポリビニルピロリドン(PVP;質量平均分子量4万)のエチレングリコール溶液10mLを20分間かけて、反応液に添加した。添加した後、160℃にて40分間加熱し、攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、5倍量のアセトンを添加し、生成物を凝集させた。凝集した生成物を水10mLに分散することにより、直線状銀粒子分散液を得た。
得られた直線状銀粒子分散液を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、1200EX)観察用のグリッドに載せ、乾燥させた後にTEM観察を行った結果、主に直線状銀粒子が確認された。
TEM観察した結果、屈曲点は観察されなかった。直線状銀粒子の短軸長さは250nm、アスペクト比は30であった。
【0036】
(比較例4)
−導電性フィルムの作製−
実施例2において、実施例1で作製した屈曲棒状銀粒子水分散液の代わりに、比較例3で作製した直線状銀粒子水分散液を用いた以外は、実施例2と同様にして、比較例4の直線状銀粒子含有導電性フィルムを作製した。
作製した直線状銀粒子含有導電性フィルムの表面抵抗値を四端子法により測定したところ、10〜10Ω/□であった。
また、作製した直線状銀粒子含有導電性フィルムの透過率を紫外可視分光器(日本分光株式会社製、V−560)で測定したところ、可視光領域(400nm〜800nm)での透過率は85%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の屈曲棒状金属粒子は、可視光領域において高い透明性を有すると共に、表面抵抗が小さく、導電性に優れているので、導電性ペースト、配線材料、電極材料、導電性塗料、導電性塗膜、導電性フィルムなどに好適に用いられる。
本発明の導電性材料は、例えば光学フィルタ、配線材料、電極材料、触媒、着色剤、インクジェット用インク、カラーフィルタ用色材、フィルタ、化粧料、近赤外線吸収材、偽造防止用インク、電磁波遮蔽膜、表面増強蛍光センサ、表面増強ラマン散乱センサ、生体用マーカー、記録材料、ドラッグデリバリー用薬物担体、バイオセンサ、DNAチップ、検査薬などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】図1Aは、本発明の屈曲棒状金属粒子の一例を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図1B】図1Bは、図1Aの模式図である。
【図2A】図2Aは、直線状金属粒子を含有する導電層を形成した状態を示す模式図である。
【図2B】図2Bは、屈曲棒状金属粒子を含有する導電層を形成した状態を示す模式図である。
【図3】図3の上図は、棒状金属粒子同士の端面が接合して屈曲棒状金属粒子が形成されている状態を示す図であり、図3の下図は、上図の模式図である。
【図4】図4は、実施例1で得られた屈曲棒状金属粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図5】図5は、実施例1で得られた屈曲棒状金属粒子の別の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図6】図6は、実施例3で得られた屈曲棒状金属粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図7】図7は、比較例1で得られた直線状金属粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの屈曲点を有し、該屈曲点における平均屈曲角度が5°以上175°以下であることを特徴とする屈曲棒状金属粒子。
【請求項2】
屈曲点が、2つの棒状金属粒子同士がその端面で接合して形成される請求項1に記載の屈曲棒状金属粒子。
【請求項3】
短軸長さが1nm〜500nmであり、かつアスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)が10以上である請求項1から2のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子。
【請求項4】
ポリオール化合物を含む溶媒中に金属化合物及びポリビニルピロリドンを添加した反応液を、50℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱し、還元反応させて、棒状金属粒子を形成した後、該棒状金属粒子を含む反応液を、165℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱して得られる請求項1から3のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子。
【請求項5】
ポリオール化合物が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種を含む請求項4に記載の屈曲棒状金属粒子。
【請求項6】
金属化合物における金属が、銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、及びコバルトから選択される少なくとも1種を含む請求項4から5のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子。
【請求項7】
反応液中に塩化物イオンを含む請求項4から6のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子。
【請求項8】
ポリビニルピロリドンが、ピロリドンユニットの繰り返し数が2以上である請求項4から7のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子。
【請求項9】
ポリオール化合物を含む溶媒中に金属化合物及びポリビニルピロリドンを添加した反応液を、50℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱し、還元反応させて、棒状金属粒子を形成した後、該棒状金属粒子を含む反応液を165℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱することを特徴とする屈曲棒状金属粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の屈曲棒状金属粒子を含有することを特徴とする屈曲棒状金属粒子含有組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の屈曲棒状金属粒子含有組成物からなる導電層を少なくとも有することを特徴とする導電性材料。
【請求項12】
表面抵抗値が1.0×10Ω/□以下である請求項11に記載の導電性材料。
【請求項13】
可視光領域での透過率が50%以上である請求項11から12のいずれかに記載の導電性材料。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−108407(P2009−108407A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246470(P2008−246470)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】