説明

屋根上散水配管構造

【課題】軒下から屋根上まで敷設される散水管の外観性が優れて建物の品質性が向上する屋根上散水配管構造を提供する。
【解決手段】軒樋27の底面27cに孔29が形成され、孔29に対応して貫通継手40が設けられる。散水管23は貫通継手40を介して軒樋27を貫通する。貫通継手40の上方のエルボ材33の上端部33bに接続された散水管23はけらば部材50の凹部50d内で屋根24の上方まで配置された後、けらば部材50から屋根24上に出て屋根上散水管25に接続される。けらば部材50は矩形筒状の上部材50aと下部材50bから成り、凹部50dは上部材50aの窪んだ一隅と下部材50bの上側面によって形成され、断面コ字状の化粧カバー51を備える。けらば部材50の前端部50cは軒樋27を覆うように形成されるので散水管23及びエルボ材33は前端部50cと軒樋27によって外側から見えないように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋根に散水するための屋根上散水配管構造に関し、詳しくは、建物下部から屋根上まで敷設される散水管の外観性が優れて建物の品質性が向上する屋根上散水配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の屋根上に積もった雪の除雪作業を頻繁に実施しないと雪の重みによって建築物が損傷するという問題があった。
【0003】
この問題を解決する方法が特許文献1に開示されている。図7に示すように、特許文献1の屋根上散水配管構造は、建物1に降った雨水は軒樋7から雨水回収管5によって貯水タンク4に回収されて溜められる。この溜めた雨水はポンプ9によって建物1の屋根6まで散水管8によって導かれて、屋根の上方に設けられた散水部10の図示しない複数の散水穴から散水される。この散水によって雪が溶けて、融雪水は軒樋7、雨水回収管5を経て再び貯水タンク4に戻るように循環方式が採用されている。
【0004】
なお、貯水タンク4には、加熱手段としてのヒーター20が取付けられ、このヒーター20によって貯水タンク4内の雨水を加熱して温水にすることができる。
【0005】
このように、屋根上散水配管構造は、建築物の屋根6上に積もった雪の除去作業を自動的に実施できるので雪の重みによって建築物が損傷することを防止できる。
【特許文献1】特開2002−30703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この屋根上散水配管構造では、散水管8が軒下から屋根6の上方まで屋根に沿って露出して敷設されるので散水管の外観性が損なわれるため建物の品質性が劣るという問題があった。
【0007】
そこで、本発明はかかる従来技術の問題に鑑みなされたものであって、軒下から屋根の上方まで敷設される散水管の外観性が優れて建物の品質性が向上する屋根上散水配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、建物の屋根に散水管を用いて散水する屋根上散水配管構造であって、前記散水管が建物の軒先に設けられる軒樋の底面を貫通するとともに前記散水管は屋根の上方までけらば部材の外側部に形成される凹部内に配置されることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の屋根上散水配管構造であって、前記凹部に前記散水管を覆う化粧カバーを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、前記散水管が建物の軒先に設けられる軒樋の底面を貫通するため散水管が軒下から屋根上まで軒樋の外側を横切らずに敷設されるので、散水管の外観性が損なわれないため建物の品質性が向上する。前記散水管は屋根の上方までけらば部材の外側部に形成される凹部内に配置されるので前記散水管がけらば部材の外側面から突出しないので散水管の外観性が損なわれないためさらに品質性が向上する。
【0011】
請求項2の発明によれば、前記凹部に前記散水管を覆う化粧カバーを備えるので、前記散水管が露出しないので、請求項1の効果がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<屋根上散水配管構造の構成>
以下に、本発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の屋根上散水配管構造21は建物の屋根24に散水する散水管の配管構造である。散水の方法は循環式で、貯水槽22に貯められた水が図示しないヒーターで温められて温水となり、温水は図示しない揚水ポンプで散水管23により軒樋27の一端部P側から屋根上に上げられる。さらに散水管23は屋根24の側端部のけらば部材50の外側部に形成される凹部50d内に配置されて屋根の上方まで導かれた後、けらば部材50を貫通して屋根24上に敷設された屋根上散水管25に接続される。屋根上散水管25のノズル25aから屋根24上に積もった雪24aに散水される。
【0014】
散水された温水と融雪水は軒樋27の他端部Q側の底面27cに連結された竪樋28を経て貯水槽22に戻るとともに、貯水槽22からオーバーフローする水は排水管22aから排出される。
【0015】
図2、図3、図4、図5に示すように、軒樋27は断面凹形状で略垂直の前面27aと後面27bと略水平の底面27cとから成り、前面27aの先端に前耳27dと後面27bの先端に後耳27eを備える。軒樋27はこの前耳27dと後耳27eを介して建物の軒先の鼻板26に固着された図示しない軒樋吊金具によって吊下げられる。
【0016】
軒樋27の一端部P側の底面27cに孔29が形成され、この孔29に対応して貫通継手40が設けられる。散水管23はこの貫通継手40を介して軒樋27を貫通する。
【0017】
貫通継手40の上方にエルボ材33が設けられ、エルボ材33の曲げ角度αは垂直軸から屋根24の傾斜角度βに合わせて傾斜した角度である。このエルボ材33の下端部33aと上端部33bに散水管23を連結する。なお、散水管23は矩形筒状で、この矩形筒状に対応してエルボ材33と貫通継手40も形成される。
【0018】
エルボ材33の上端部33bに接続された散水管23はけらば部材50の外側部に形成される凹部50d内に図示しない固着具によって固定配置されて屋根の上方まで導かれた後、屋根24上に出て矩形筒状の屋根上散水管25に接続される。
【0019】
より詳しくは、けらば部材50は矩形筒状の一隅を窪ませて成る上部材50aと矩形筒状の下部材50bが二段に重なった形状で、上部材50aの窪んだ一隅と下部材50bの上側面によって矩形溝状の凹部50dが形成される。この凹部50dに散水管23を覆うように断面コ字状で長尺の化粧カバー51がけらば部材50に取外し可能に固着される。
【0020】
なお、けらば部材50の前端部50cは軒樋27を覆うように上部材50aが張出して形成されているので散水管23及びエルボ材33は前端部50cと軒樋27によって外側から見えないように配置される。
【0021】
図6に示すように、貫通継手40は、底面27cの上面に取付けられる第一フランジ41に矩形筒状の短管42を立設して成る上部継手43と、底面27cの下面に取付けられる第二フランジ45に上下に突出する矩形筒状の連通管46を備えて成る下部継手47とで形成される。
【0022】
下部継手47の連通管46が底面27cの孔29を貫通して上部継手43の短管42に嵌入することによって第一フランジ41と第二フランジ45が底面27cを挟持した状態で上部継手43と下部継手47が固着される。より詳しくは、連通管46の上方部46aの外周に複数の溝46bが形成され、溝46bは上方部46aが短管42に固着する際に用いられる接着剤のための溜部である。
【0023】
屋根上散水配管構造21の各部材の材質は、ステンレスや亜鉛メッキをした金属、あるいは軽量化や耐腐食性を考慮して例えば硬質塩化ビニール樹脂等の合成樹脂材料で形成される。各部材間の接続は溶接又は接着剤を用いて水密的に固着される。
<屋根上散水配管構造の作用>
【0024】
散水管23が貫通継手40を介して軒樋27の底面27cを貫通するので散水管23が軒樋27の外側に露出せず、さらに散水管23が軒樋27から屋根24の上方までけらば部材50の凹部50d内に配置されるので、建物の外観性が良くなるため建物の品質性が向上する。凹部50dに散水管23を覆う断面コ字状の化粧カバー51を備えるので、確実に散水管23が覆われるので建物の品質性がさらに向上する。
【0025】
積雪、ひょうの落下による破損を防止するために屋根上に露出する屋根上散水管25がコストの高い金属製を使用する場合でも、散水管23が軒樋27から屋根24の上方までけらば部材50の凹部50d内に配置されるので安価な樹脂製を用いることができるためコストを下げることができる。
【0026】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0027】
例えば、散水管23と竪樋28を軒樋27の一端部P側に隣接して取付けると外観的に散水管23と軒樋27が一箇所に纏まるため建物の品質性がさらに向上する。散水管23と屋根上散水管25は円筒形状でもよく、互いに異なる断面筒状で異形管継手で連結する構成でもよい。貫通継手40は、上部継手43と下部継手47を上下逆勝手に取付けても構わない。また、本実施例の屋根上に散水する構成は真夏における建物の冷却用としても使用でき、その際には貯水槽22に貯められる水用のヒーターは不要である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態における、屋根上散水配管構造21を用いて建物の屋根24上に送られる散水管23の配置状態の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における、図1のA−詳細斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における、図2のB−B矢視図である。
【図4】本発明の実施形態における、図2のC−C矢視図である。
【図5】本発明の実施形態における、図2のD−D矢視図である。
【図6】本発明の実施形態における、貫通継手40の構成を示す斜視図である。
【図7】従来の屋根上散水配管構造で、溜めた雨水をポンプ9によって建物1の屋根6まで散水管8によって導かれて、屋根の上方に設けられた散水部10から散水される状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
23 散水管
24 屋根
25 屋根上散水管
27 軒樋
27c 底面
29 孔
33 エルボ材
33b 上端部
40 貫通継手
50 けらば部材
50a 上部材
50b 下部材
50c 前端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根に散水管を用いて散水する屋根上散水配管構造であって、
前記散水管が建物の軒先に設けられる軒樋の底面を貫通するとともに前記散水管は屋根の上方までけらば部材の外側部に形成される凹部内に配置されることを特徴とする屋根上散水配管構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根上散水配管構造であって、前記凹部に前記散水管を覆う化粧カバーを備えることを特徴とする屋根上散水配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−203612(P2009−203612A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43994(P2008−43994)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】